| 【発明の名称】 |
トルク検出装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】西部 祐司
【氏名】塚田 厚志
【氏名】太田 則一
【氏名】山寺 秀哉
【氏名】野々村 裕
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| 【要約】 |
【課題】簡便・低コストでかつ信頼性に優れ、高い検出分解能を有するトルク検出装置の実現。
【解決手段】シャフト12のトルク検出部位は周面に段差を構成する円筒体14により構成し、円筒の中空内に円柱体などからなるフープ応力発生部材16をはめ込み、円筒体周面に部材16により円周方向の引っ張り応力(フープ応力)を発生させる。シャフト12がトルク伝達のみの機能を発揮し、フープ応力発生部材16は円筒体周面へのフープ応力付与機能を発揮するだけで、過大トルク印加時にシャフト中空内面と部材16とで滑りが発生しても、印加トルクは滑りに影響を受けずトルク検出部位に伝達される。円筒体周面のフープ応力もはめ込まれた部材16の存在により付与され部材16と中空界面との滑りの影響を受けないので、過大トルク印加時でも再現性良い検出特性が得られ、装置のダイナミックレンジが拡大する。磁界検出素子11には磁気インピーダンス素子を用いる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 印加トルクに応じてシャフトのトルク検出部位に発生する磁界を該トルク検出部位近傍に配置された磁界検出素子によって検出するトルク検出装置であって、前記シャフトは、少なくとも前記トルク検出部位において円筒体により構成され、該円筒体の中空内には、該円筒体の周面に円周方向のフープ応力を発生させるフープ応力発生部材がはめ込まれ、該フープ応力発生部材のはめ込まれた位置において該円筒体の周面が着磁されていることを特徴とするトルク検出装置。 【請求項2】 請求項1に記載のトルク検出装置において、前記トルク検出部位における前記円筒体は、シャフトの他の部位との間で外径差によりシャフト周面に段差を形成していることを特徴とするトルク検出装置。 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載のトルク検出装置において、前記トルク検出部位における前記円筒体の周面には、着磁方向の異なる複数の着磁領域が形成されており、各着磁領域に対応してそれぞれ前記磁界検出素子が設けられていることを特徴とするトルク検出装置。 【請求項4】 請求項1又は請求項2に記載のトルク検出装置において、前記トルク検出部位における前記円筒体の周面には、着磁方向の異なる複数の着磁領域が形成され、かつ、各着磁領域の境界には前記円筒体の周面から突出する突起部が形成され、該突起部に対応する位置に前記磁界検出素子が設けられていることを特徴とするトルク検出装置。 【請求項5】 請求項1〜請求項4のいずれか一つに記載のトルク検出装置において、前記磁界検出素子は、基板上に、所定方向に磁気異方性の与えられた磁性体層と、表面の少なくとも一部が前記磁性体層に接するように形成されかつ高周波電源に接続される導電体層と、を備え、前記トルク検出部位における磁界変化を磁気インピーダンス変化として検出する磁気インピーダンス素子であることを特徴とするトルク検出装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自動車分野や工業用ロボット、製鉄圧延機、生産機械、OA機器等のメカトロニクス分野において、トルク制御のために回転シャフトのトルク検出に関するものである。特に、磁歪の逆効果を有する回転シャフトからのトルクによる磁界変化を磁界検出素子で検出する小型トルクセンサに関するものである。 【0002】 【従来の技術】回転シャフト表面にトルク印加に伴って発生する歪みを磁歪の逆効果を利用してトルクを検出する方法は、1960年に O.Dahle(ASEA Journal,Vol.32,pp.23-32) により提案されて以来、各社様々な磁歪式トルクセンサが発表されている。これらのセンサは、磁気特性に優れた被測定材(例えば、高透磁率な磁歪部)を実現するために、被測定材であるシャフトに工夫を凝らしている。例えば、シャフトにアモルファス薄帯を貼り付ける方法、レーザによりシャフトの表面改質を行う方法、プラズマ溶射、スパッタリング、メッキにより磁性層をシャフトの表面に形成する方法などがある。検知素子部については、シャフトに巻線を施した同軸タイプのものとコの字形のコアに巻線を施した磁気ヘッド型タイプのものが大部分である。このような磁歪式トルクセンサの原理・原則、検知部は、公知の事実として良く知られており、現在、技術開発は、より特性の優れたセンサ実現のため、シャフトの構成、材料に工夫を加えることに着目されている。 【0003】ところで、6,7年程前にトルク印加による直流微少磁界の変化を磁界検出素子で検出する簡便な方式のトルクセンサが Garshelis ら(米国)により提案された(IEEE Trans.Magn.,vol.28,NO.5,pp2202-2204,1992)。このトルクセンサの外観を図15(a)に、また断面図を図15(b)に示す。図示するトルクセンサは、鋼材ベースのシャフトに磁気特性に優れた磁歪リングを圧入した後、シャフトに大電流をパルス通電することで、リング円周方向に磁気異方性を誘導している。更に、ホール素子を磁歪リングの端部側方に設置している。そして、このホール素子によって磁歪リングの端部にトルクに比例して発生する磁極の強さを非接触で検出しており、この方式は、以前とは異なった検出方法として注目されている。そして、提案されたこの方式においては、シャフトに装着する磁歪リングの材料として優れた磁気特性を示すと考えられるFeとCoとの合金であるパーメンジュール、あるいはNi合金であるマルエージング鋼などが用いられている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】従来の磁歪式トルクセンサでは、検知部としてシャフトに巻線を施した同軸タイプやコの字形のコアに巻線を施した磁気ヘッド形タイプが多用されており、被測定部は、シャフトにアモルファス薄帯を貼着したり、プラズマ溶射、スパッタリング、メッキにより磁性層をシャフトの表面に形成するタイプが多用されている。 【0005】しかし、こうした磁歪式トルクセンサは、信頼性、低コストという面で問題がある。さらに、同軸タイプの場合には、装着の時にシャフトの接続を切断する必要があることより、装着の簡便性という点で問題となる。磁気ヘッド形タイプの場合には、外づけ可能であることより装着性の問題はないが、シャフト上での検出領域が限定されるのでシャフトの周面上で磁気特性のバラツキがあると軸回転に伴って出力が変動するという問題が生じる。 【0006】一方、図15に示すI.J.Garshelis らの提案するトルクセンサは、シャフトにはめ込んだ磁歪リングからの漏洩磁界を検出する方式を採用しており、簡便性に優れるという特徴がある。自動車用のトルクセンサへの適用を考えた場合、この簡便性や信頼性、あるいは量産が容易で低コストという面が重要となる。従って、図15の方式は自動車用トルクセンサとして有望である。 【0007】しかし、I.J.Garshelis らが提案するトルクセンサは、磁歪リングの圧入など特殊な加工技術を用い、磁歪リングをシャフトにはめ込んでいる。従って、シャフトへの高トルク印加時に、磁歪リングとシャフトとの界面において滑りが生ずるという問題がある。この滑りは、センサ特性にヒステリシスを発生させてしまう。また、検出感度が低くかつ温度特性が悪いホール素子を磁界検出素子として用いるため、トータルでのセンサ精度が低下するという問題等がある。特に磁歪リングとシャフトとの界面での滑りの発生は、検出できる印加トルク範囲を低下させ、許容トルク範囲が制限されるという問題がある。 【0008】本発明は、簡便・低コストでかつ信頼性に優れ、高い検出分解能を有する、自動車応用を主とするトルクセンサを実現することを目的とする。 【0009】具体的には、高分解能、優れた温度特性、許容トルク範囲の拡大(ダイナミックレンジの拡大)等、トータルでのトルク検出精度の向上を目的とし、また磁界検出素子のみならず、非測定部材であるシャフト側の性能面の向上を図り、トータルで精度向上を実現することを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明は、印加トルクに応じてシャフトのトルク検出部位に発生する磁界を、該トルク検出部位近傍に配置された磁界検出素子によって検出するトルク検出装置であり、シャフトが少なくとも前記トルク検出部位において円筒体により構成されており、円筒体の中空内に、円筒体周面において円周方向のフープ応力を発生させるフープ応力発生部材がはめ込まれ、該フープ応力発生部材のはめ込まれた位置において該円筒体周面が着磁されている。 【0011】フープ応力を発生させる方法としては、従来技術で見られるように、シャフト(トルク伝達軸)に円筒状の磁歪リングを圧入し、磁歪リング周面に円周方向にフープ応力を発生させる手法がある。しかし、この手法では、シャフトが圧入リングにフープ応力を発生させる機能と、磁歪リングへトルクを伝達する機能との両方を受け持っているので、過大トルクが印加された場合に磁歪リングとシャフトの表面との界面で滑りが発生し、磁歪リングへのトルク伝達効率が低減し、特性の再現性が悪化する。 【0012】これに対し本発明ではシャフトのトルク検出部位において、円筒体の中空内に円筒体や円柱体などから構成できるフープ応力発生部材をはめ込むことで、シャフトの中空内壁部を外側に押圧する。そして、この押圧力、つまり、該応力発生部材によって円筒シャフトに生ずる内圧によって、シャフト周面に円周方向の応力、即ち本発明でいうフープ応力(特に引っ張り応力)を発生させている。つまり、シャフトはトルク伝達のみの機能を持ち、シャフト中空内にはめ込んだフープ応力発生部材はシャフトの周面にフープ応力を発生させる機能のみを有すればよい。このため、シャフトに過大トルクが印加され、シャフトの中空部内面と圧入部材との界面で滑りが発生しても、印加トルクは滑りに影響を受けることなくトルク検出部位を構成するシャフトと一体の円筒体に伝達される。一方、トルク検出部位でのフープ応力は中空内に応力発生部材がはめ込まれていることにより発生するため、応力発生部材と中空との界面での滑りの影響を受けない。従って過大トルクが印加され、シャフトの中空部内面と応力発生部材との界面で滑りが発生しても、再現性の良い検出特性が得られ、トルク検出装置のダイナミックレンジを拡大することができる。 【0013】また、シャフトの中空内に例えば圧入などの方法によってはめ込まれたフープ応力発生部材が中空内壁を外側に押し上げることで、シャフトの周面に円周方向のフープ応力が発生し、この応力により、シャフト円筒の周面には磁気異方性が付与され、円筒状のトルク検出部位の円周方向における磁化特性において角形比が著しく改善される。角形比が向上すると、円周方向への着磁後におけるシャフト周面での残留磁化量を増加させ、これに伴い円周方向の磁気モーメントの大きさが向上する。磁気モーメントの向上はトルク印加によってシャフトの検出部位から出る磁界の大きさの増加につながり、最終的にはトルク検出感度を向上させることになる。 【0014】また、本発明において、シャフトは、トルク検出部位において円筒体によって構成されており、この円筒体は、シャフトの他の部位との間で外径差によりシャフト周面に段差を形成する。段差があれば、トルクがシャフトに印加された際、漏洩する磁界の強度が高まる。そこで、磁界検出素子を円筒体付近に設置して、漏洩磁界を検出すれば高感度でトルク検出することが可能となる。 【0015】また、本発明において、前記磁界検出素子として、基板上に、所定方向に磁気異方性の与えられた磁性体層と、表面の少なくとも一部が前記磁性体層に接するように形成されかつ高周波電源に接続される導電体層と、を備え、シャフトのトルク検出部位における磁界変化を磁気インピーダンス変化として検出する磁気インピーダンス素子を用いることを特徴とする。 【0016】磁界検出素子としては、ホール効果を利用したホール素子や磁気抵抗効果を利用したMR素子などを用いることも可能であるが、磁気インピーダンス素子を用いれば高感度のトルク検出が可能となる。磁気インピーダンス素子では、基板平面に平行な被検出磁界(トルク検出部位からの漏洩磁界)が印加されると素子の磁性体層の磁化状態が変化し、素子の幅方向での透磁率が変化し、これに応じて磁気インピーダンスが変化する。透磁率の変化に応じたインピーダンス変化は被検出磁界に対応しているので、上記磁気インピーダンス素子を用いてインピーダンスの変化量を検出することで、被検出磁界、ひいてはシャフトに印加されたトルクを検出することができる。そして、素子での透磁率変化に対する磁気インピーダンスの変化は、数百%にもなるため、磁気インピーダンス素子を用いることにより精度・分解能に非常に優れた高感度のトルク検出装置を実現することが可能となる。 【0017】また、I.J.Grashelis らの提案では、上述のようにシャフトにはめ込む磁歪リングの磁気特性を優れたものにするために磁歪を有し高飽和磁化材料であるパーメンジュール(Fe−Co合金)、マルエージング鋼を用いている。本発明でも、シャフト(トルク検出部位を構成する円筒体)をこれらの材料によって形成することができる。しかし、これらの材料は加工性に乏しく高コストであるためシャフトの材料としては必ずしも最適ではない。またその他の高飽和磁化材料であるケイ素鋼板、電磁ステンレス鋼などについてもコスト面の問題があり、これらの材料は自動車応用としては問題となる。このような加工性やコストの問題を解決するには、本発明においてシャフトと一体のトルク検出部位の円筒体材料として、安価な鋼材ベースで作製することを可能とする必要が出てくる。しかし、一般的に鋼材では機能性よりも機械強度が重視されているので、当然高飽和磁化材料と比較すると磁気特性はかなり劣り、鋼材よりなるトルク検出部位からトルク印加により漏洩する磁界は小さくなる。この場合、磁界検出素子としてホール素子等を利用すると感度不十分である。また、高感度な磁界検出素子としては磁芯に巻線を施したフラックスゲート型センサがあるが、この場合にはコスト高を招くことになり自動車用としてはふさわしくなく、リード線の取り出し等装着性に関しても薄膜素子ではないので面倒である。このようにシャフトの材料がトルク検出のために優れた磁気特性を有する材料でない場合であっても、磁界検出素子として上述の高感度な磁気インピーダンス素子を用いれば、十分な検出感度を得ることが可能となる。 【0018】また、本発明において、上記磁気インピーダンス素子は、基板上に磁性体層、導電層を積層しパターニングすることで作成でき、その素子形状、素子配置の自由度が高く、シャフトへの装着性にすぐれ、またコスト面でも非常に有利である。 【0019】本発明において、トルク検出感度をより向上させるためには、トルク検出部位における前記円筒体の周面に、着磁方向の異なる複数の着磁領域を形成し、各着磁領域に対応してそれぞれ前記磁界検出素子を設けることが適切である。 【0020】このように隣り合う着磁領域の着磁方向が互いに反対方向としておけば、各着磁領域の境界においては隣り合う着磁領域からの漏洩磁界が加算されて2倍の強度の漏洩磁界になるため、通常の場合と比較して検出感度を2倍向上させることができる。 【0021】また、トルク検出部位における前記円筒体の周面に着磁方向の異なる複数の着磁領域を形成し、かつ、各着磁領域の境界にシャフト周面から突出する突起部を形成し、突起部と対向する位置に前記磁界検出素子を設けることで、より一層検出感度を向上することが可能となる。 【0022】着時領域の境界に突起部を設けると、突起部が磁気レンズ機能を発現するため、磁界検出素子がより効率よく漏洩磁界を検出することができるからである。特に、強磁性材料からなる突起部を設けると漏洩磁界を望ましくない方向に漏らすことなく磁界検出素子に導くことが可能となる。突起部はシャフトが強磁性体でできているならば一体で形成してもよく、また、軟磁気特性を示す磁性層をシャフト周面(円筒体周面)に成膜することで形成してもよい。 【0023】更に、複数形成した着磁領域に対応して複数の磁界検出素子を設ける場合において、素子をフルブリッジ又はハーフブリッジ接続すれは、検出感度の向上と、外乱磁界や温度変化による各素子の出力変動をキャンセルすることができ、高精度で高感度のトルク検出装置を得ることができる。 【0024】 【発明の実施の形態】本発明の好適な実施の形態(実施形態という)について以下に図を用いて説明する。 【0025】[実施形態1]本発明の実施形態1に係るトルク検出装置は、図1及び図2に示すように、磁界検出素子11と、トルク伝達軸であるシャフト12と、シャフト12のトルク検出部位での中空部内にはめ込まれたフープ応力発生部材16により構成されている。 【0026】シャフト12は中空シャフトか、または少なくともトルク検出部位において中空の円筒体14により構成される。シャフト12は、トルク検出部位である円筒体14と他の部位とで外径差が与えられており、シャフトの回転軸方向での円筒体両側端に段差が形成されている。そして、この段差により、印加トルクに応じた磁界がシャフト周面に漏洩しやすくなり、漏洩磁界の強度が高まる。 【0027】本実施形態では、トルク検出部位におけるシャフト中空内に、圧入や焼きばめ等の方法によりシャフト12とは別部材の部材16をはめ込むことで、トルク検出部位におけるシャフト周面、つまり円筒体14の周面にフープ応力を発生させている。トルク印加により発生する応力はシャフト12を介してこのシャフト12と一体の円筒体14に伝達され、また、フープ応力発生部材16により円筒体14の周面にはフープ応力が付与される。つまり、本実施形態1では、トルク伝達はシャフト12が受け持ち、フープ応力の発生はフープ応力発生部材16が受け持つ。従って、仮にシャフト12の中空内面とフープ応力発生部材16との界面で滑りが発生しても、印加トルクはトルク検出部位を構成する円筒体14に確実に伝達され、かつフープ応力も円筒体14に確実に加わる。このため、円筒体14の中空内面とフープ応力発生部材16との界面で滑りが発生しても、円筒体14の周面に円周方向の磁気異方性が付与され、かつ円筒体14にトルクが伝達され、トルク検出範囲が拡大する。 【0028】シャフト12の材質は基本的には強磁性体であり、加工性を重視してFeベースの鋼材が用いられる。もちろん、コスト、加工性の面ではFeベースの鋼材よりは劣るが、磁気特性に優れるパーメンジュール、あるいはマルエージング鋼を用いてもよい。なお、Feベースの実用鋼材の中では、磁気特性が良好な、焼き入れ、焼き戻し処理を施したクロムモリブデン鋼、あるいはニッケルクロムモリブデン鋼を用いてもよい。さらには、ショットピーニング処理を施した鋼材を用いてもよい。 【0029】フープ応力発生部材16は、円筒部材や円柱部材から構成でき、その材料としては、シャフト12と同じFe系の強磁性体である鋼材を用いることができる。また、ステンレス等の非磁性鋼材を用いても良い。トルク検出感度の向上を重視するならば、この応力発生部材16の材料としては非磁性鋼材を用いることが望ましい。 【0030】シャフト12のフープ応力発生部材16がはめ込まれた部位は、上述のように両側端に段差を有する円筒体14より構成されており、この円筒体周面は、円周方向に着磁されシャフト12のトルク検出部位となっている。円周方向への着磁は、シャフト12にパルス電流を通電する方法や、ヘッド型磁石を用いた着磁処理によって行うことができる。なお、本実施形態1では円筒体14の周面は単一着磁領域により構成されているが、後述する実施形態のように、多数(例えば、3つ、あるいは4つ)の着磁領域に分割され、隣り合う着磁領域は各々反対に円周方向に着磁されていてもよい。 【0031】磁界検出素子11は、着磁領域に対向するようシャフト周面に対して所定間隙を設けて配置されおり、トルク印加により着磁領域から発生する微弱な漏洩磁界を検出する。 【0032】磁界検出素子11は印加トルクに応じた漏洩磁界を検出する素子であり、シャフト12のトルク検出部位である円筒体14の近傍に配置されている。本実施形態1においては、この素子11として、高感度の磁気インピーダンス素子(MI素子)を用いる。磁気インピーダンス素子は、基板上に磁性体層及び導電体層が積層されて構成されたものであり、例えば図3に示すような構造を有している。図3(a)は素子の平面構成を概念的に示しており、図3(b)は、図3(a)の3−3線に沿った断面構成を示している。 【0033】図3の例では、磁気インピーダンス素子111は、基板213上に外層211と中間層212とが積層され、中間層212は外層211によりその上下面及び側面が覆われている。また、外層211と中間層212の積層体からなる細線は、基板上において複数回折れ曲がったつづら折り状パターンに形成されている。 【0034】外層211の材料は、磁性体材料、例えばFeCoSiB、CoSiB等のアモルファス軟磁性体、或いはその他NiFe、CoNbZr等、保磁力が1 Oe(1 Oe≒79A/m)以下の軟磁性材料を用いることができる。中間層212には、Cu、Al等、外層211に比べて導電率が1桁以上高い導電体材料や、Fe、Co等の導電体材料を用いることができる。外層及び中間層は、真空蒸着法、スパッタリング法等の薄膜作成技術により作成することができる。また外層211は、素子の幅方向に直流磁場を印加した状態で作製され、素子の幅方向(素子の細線幅方向)が外層211の容易磁化方向となっている。 【0035】磁気インピーダンス素子111の端部には、図3に示すように中間層212の両端から引き出された端子が形成されており、この端子間には高周波電源101、インピーダンス検出回路102が接続されている。 【0036】以上のような構成の磁気インピーダンス素子111は、基板213の平面方向に平行な外部磁界Hextが印加されると、素子111の外層(磁性体層)211の磁化状態が変化し、素子の幅方向での透磁率μが変化する。ここで、高周波電源101から中間層(導電体層)212に交流電流が供給され、素子細線の長手方向にこの交流電流が印加されると、透磁率μの変化に応じて素子の両端(端子)において数百%以上にもなるインピーダンスZの変化が発生する。そこで、素子111は、シャフト12のトルク検出部位からの漏洩磁界の方向に対して、その素子基板平面方向が平行になるように円筒体周面近傍に配置し、インピーダンス検出回路102によりインピーダンス変化を検出することで、外部磁界(印加トルクに応じた漏洩磁界)Hextの変化を高感度に検出することができる。 【0037】磁気インピーダンス素子111は、上記図3のような構造の他、例えば図4のような構造でもよい。図4に示す磁気インピーダンス素子111は、基板213の上に、外層211(下層)、中間層212、外層211(上層)がこの順で積層され、かつ3層が同一パターンに形成されている。そして、上記図3に示した素子とは異なり、中間層212の周囲を外層211が完全に覆う断面構造ではなく、中間層212の上下を外層211が挟むサンドイッチ構造である。この図4の素子は、真空蒸着、あるいはスパッタリングにより、下層、中間層、上層を順に成膜し、三層目の上層を成膜した後、レーザートリミング装置を用いて、レーザー描画によるパターニングを行うことで三層を一度にパターニングすることができる。このような作製方法はフォトリソグラフィ技術によるパターン作製と比較すると簡便な手法であり、素子量産化を考えた場合有効である。 【0038】なお、以上に説明した磁気インピーダンス素子111では、素子基板213としてガラスが用いられるが、ガラスの他にはプラスチックなどの可撓性材料からなる基板を用いることもできる。可撓性基板を用いた場合には、シャフト12のトルク検出部位である円筒体14の周面の全周に沿って磁気インピーダンス素子111を配置することも可能である。 【0039】[実施形態2]上記実施形態1のトルク検出装置では、シャフト12のトルク検出部位を構成する円筒体14の周面が単一の着磁領域により構成されているが、本実施形態2では該シャフト12の円筒体周面の着磁領域を複数領域に分割している。更に、分割され隣り合う着磁領域は、磁化モーメントの向きが互いに反対になるようそれぞれ円周方向に着磁している。 【0040】図5は、本実施形態2に係るトルク検出装置の構成を示している。図5に示す例では、シャフト12の円筒体14の周面の着磁領域は4分割されており(14a、14b、14c、14d)、隣り合う着磁領域が各々反対に円周方向に着磁されている。また、各着磁領域14a〜14dに対応させて4つの磁界検出素子(素子A、素子B、素子C、素子D)11を配置している。 【0041】各磁界検出素子11としては、上記実施形態1において説明した図3または図4のような構造の磁気インピーダンス素子111を用いている。また、4つの磁気インピーダンス素子111(素子A〜素子D)は、図6に示すように各着磁領域から発生する漏洩磁界が各素子基板の平面方向と平行になるよう着磁領域上方に配置されており、シャフト12への印加トルクにより発生した磁界の水平成分を検出する。 【0042】また、本実施形態2では、4つの磁気インピーダンス素子(素子A〜素子D)は、図7に示すようにフルブリッジ接続され、ブリッジ回路(ホイートストンブリッジ)を構成している。素子Aと素子Cに例えば正磁界(左から右に向かう磁界)が印加されたときには、素子Bと素子Dに負磁界(右から左に向かう磁界)が加わるように接続配置され、シャフト12へトルクが印加されて漏洩磁界が変化すると、素子Aと素子Cとで、また素子Bと素子Dとが同じ挙動を示す。このため、素子Aと素子Cの出力変化の方向と、素子Bと素子Dの出力変化の方向が反対となり、ブリッジバランスが崩れ、単一の磁気インピーダンス素子111でインピーダンス変化を検出する場合と比較すると、4倍の感度で検出することができる。さらにブリッジ回路構成とすることで、外乱磁界が発生しても、各素子111に対し一様に外乱磁界が加わり各素子が同じ出力変化を示すため、ブリッジバランスは崩れない。このため、ブリッジ回路から外乱磁界に対応した出力が生じることはなく、各素子のオフセット出力はキャンセルされる。さらに各素子のオフセット出力が温度変化とともにドリフトする傾向を有している場合でも、各素子の温度変化によるオフセット出力は一様に同じ挙動を示すのでブリッジバランスが崩れることはない。したがって、フルブリッジ型とすることにより、温度変化によるオフセット出力変化の影響を除去することも可能である。 【0043】なお、着磁領域の分割数は4には限らず、2分割、3分割、又は5以上に分割することも可能であり、各着磁領域にそれぞれ対応して磁気インピーダンス素子を設けることが適切である。 【0044】(実施例1)上記実施形態2のトルク検出装置の実施例について以下に説明する。 【0045】シャフト12にはトルク検出部位となる円筒体14を一体加工により形成している。シャフト112の材質はマルエージング鋼である。シャフト12は中空シャフトである。シャフト中空部にはフープ応力発生部材16が圧入され、両端に段差を持つ円筒体14の部分まで押し込んでいる。フープ応力発生部材16としては非磁性体であるステンレス鋼SUS304を用いた。圧入により円筒体には円周方向に磁気異方性が付与される。検出部となる円筒状部位には4分割された着磁領域が形成されている。着磁方向は円周方向であり隣り合う領域は各々逆方向に着磁されている。図6に示すように、トルクに応じて各着磁領域から漏洩磁界が発生する。 【0046】4つの磁界検出素子11(素子A、B、C、D)としては、磁気インピーダンス素子111をそれぞれ用い、各素子111は、シャフト12の円筒体14の周面に対し一定のクリアランスで、シャフト12の軸方向と素子細線長手方向とが平行となるように装着した(図6参照)。磁気インピーダンス素子111には、上述の図3に示す構成を用いており、ガラス基板213上に外層211及び中間層212をフォトリソグラフィー技術を利用して形成した。中間層212にはCuを用い、その膜厚は3μmとした。また、外層211には、FeCoSiBを用い、その膜厚は2μmとし、磁化容易軸は図3に示すように線幅方向に付与した。 【0047】図8(a)は、比較例であり、磁歪リングが圧入された非中空のシャフトと単一磁界検出素子からなる従来のトルクセンサにおいて、過大トルク(30kgm)印加時の出力特性を示す。図8(b)は、同じ過大トルク印加時における実施例1のトルクセンサの出力特性を示す。従来のトルクセンサでは図8(a)に示されるように、出力特性にヒステリシスが発生しているが、実施例1のトルクセンサでは、ヒステリシスは発生せず、従来のセンサと比較して過大トルクに対する検出出力特性が向上していることが分かる。 【0048】図9(a)は、図8(a)と同じ磁歪リングを圧入した非中空シャフトと単一磁界検出素子からなる従来のトルクセンサにおけるオフセット出力の温度特性を示している。図9(b)は、実施例1のトルクセンサのオフセット出力の温度依存性を示す。図9(a)と図9(b)の比較から明らかなように、本実施例1のセンサの温度依存性は、従来のセンサと比較して低くなっており、オフセット出力の温度特性が向上していることが分かる。 【0049】[実施形態3]本実施形態3では、実施形態2と同様にシャフト12のトルク検出部位における円筒体14の着磁周面を複数領域に分割する。実施形態2と相違する点は、着磁方向が互いに逆の隣り合う着磁領域の境界にシャフト周面から径の外側に向かって突出する突起部を形成していることである。 【0050】図10は、本実施形態3に係るトルク検出装置の構成を示している。図10に示すように、シャフト12のトルク検出部位、即ち中空部にフープ応力発生部材16が圧入されている円筒体14において、その周面は円周方向に着磁され、互いに着磁方向(磁化モーメントの方向)の異なる領域が隣接するように形成されている。そして、着磁方向の異なる着磁領域の境界に円筒体周面から突出する突起部20が形成されている。突起部20は各着磁領域から発生する漏洩磁界を集中させる磁気レンズの役割を果たすため、突起部を設けない場合よりも磁気検出感度を向上させることが可能となる。 【0051】また、磁界検出素子11は、突起部20からシャフト半径方向に漏洩する磁界を検出するために、突起部20の上方に配置している。磁界検出素子11としては、上述の図3又は図4のような磁気インピーダンス素子111を用いることが好適であるが、この素子111は、上述のように基板平面方向の磁界の変化をインピーダンス変化として検出するため、素子基板平面方向がシャフト12の径方向に平行となるよう突起部20の上方に配置する(図10参照)。 【0052】円筒体14の周面を3分割された着磁領域より構成する場合、円筒体14の周面に形成する突起部20は図11及び図12に示すように2つとなる。そして2つの突起部20に対向するようにそれぞれ磁界検出素子(素子A、素子B)11を突起部20の上方に配置する。磁界検出素子11として磁気インピーダンス素子111を用いる場合に、図10と同様、シャフト径方向の漏洩磁界に素子基板平面方向が平行となるよう各突出部20の上方に磁気インピーダンス素子111を配置する。 【0053】各突起部20の上方に配置される2つの磁界検出素子11(素子A、素子B)は、図13に示すように、ブリッジ回路の内のハーフブリッジを構成するように接続する。図13のようなハーフブリッジを構成すれば、突起部20からの漏洩磁界を差動検出することができ、単一素子のみで検出する場合と比較して2倍の感度を得ることができる。さらに、実施形態2において説明したようにフルブリッジ型にする場合と同様に、外乱磁界の影響、各素子の温度変化によるオフセット出力変化の影響を除去することができる。なお、円筒体14の着磁領域を5領域とし、4カ所に突起部を設け、対応して設ける4つの磁界検出素子11を図7に示すようなフルブリッジ接続すれば、検出感度は単一素子で検出した場合の4倍とすることができる。 【0054】(実施例2)実施形態3に係るトルクセンサの実施例2について以下説明する。実施例2は図11及び図12に示す構成のトルクセンサであり、シャフト12は中空シャフトを用い、中空内に円柱状のフープ応力発生部材16が圧入され、段差を有する円筒体14の部位まで押し込まれている。シャフト12、及び圧入された応力発生部材16としては、この実施例2ではFe系の鋼材、具体的にはニッケルクロムモリブデン鋼を用いた。 【0055】検出部位における着磁領域は図11に示すように3つに分割し、各着磁領域の境界部には円筒体14の全周にわたって円筒体と一体で突起部20を形成した。また、シャフト12にパルス電流を通電し、シャフト12の検出部位の円筒体14を円周方向に着磁した。各突起部20に対向して配置する磁界検出素子(素子A、素子B)11としては、上述の実施形態1において説明した図4の磁気インピーダンス素子111を用いた。素子111は、ガラス基板213上に、外層(下層)211、中間層212、外層(上層)211が三層積層され、上下層の外層211は、熱安定性に優れた軟磁性体であるCoNbZrを用い、中間層212としては、低抵抗のCuを用いた。 【0056】図14(a)は、比較例であり、図11の構成で円筒体周面に突起部20のないトルクセンサのトルク検出出力特性、図14(b)は、突起部20を設けた実施例2に係るトルクセンサのトルク検出出力特性を示す。 【0057】印加トルクに応じた突起部20からの漏洩磁界は、各着磁領域からの漏洩磁界の2倍の強度を有する。従って、突起部を設けることにより、図14(a)と(b)の比較から明らかなように、突起部を設けない場合に比べてトルク検出感度を2倍程度向上させることが可能となっている。 【0058】また、素子Aと素子Bとをハーフブリッジ接続しているため、単一素子により磁界検出した場合と比較して磁界感度は2倍になり、かつ外乱磁界の影響、オフセット出力の温度ドリフトの影響等が除去できる。 【0059】 【発明の効果】以上説明したように本発明のトルク検出装置では、トルク検出部位にて少なくとも中空のシャフトの中空部にフープ応力発生部材をはめ込み、トルク検出部位でのシャフト円筒体の周面に円周方向の引っ張り応力(フープ応力)を発生させる。この引っ張り応力は、シャフト円筒体の円周方向への磁気異方性を発生させ、円周方向磁化特性の角形比が向上し、円筒体周面着磁後の残留磁化量を増加させる。このため、トルク検出部位において、着磁による円周方向の磁化モーメントが大きくなり、トルク印加に応じて円筒体から発生する漏洩磁界が大きくなり、トルク検出装置としての検出感度の向上を図ることができる。 【0060】また、従来のようにシャフトに磁歪リングをはめ込んで応力を発生させた場合には、シャフトに過大トルクが印加されると磁歪リングとシャフトとの界面で滑りが発生し、磁歪リングへのトルク伝達が困難となる。しかし、本発明ではトルク伝達はシャフトが受け持ち、フープ応力の発生は応力発生部材が受け持つというように機能分離されるため、フープ応力発生部材とトルク検出部位でのシャフト円筒体の内壁とで滑りが発生しても、トルク検出部位へのトルク伝達性が損なわれることがない。従って、シャフトへの過大トルク印加時においても、安定し、再現性の高いセンサ出力を得ることができ、検出トルク範囲が広がる。 【0061】更に、複数に分割された円周方向着磁領域をシャフトの表面に形成し、隣り合う着磁領域の着磁方向を各々反対とすれば、漏洩磁界の強度を高めることが可能となる。また、複数の着磁領域の境界に突起部を設ければ、突起部により隣り合う2つの着磁領域からの漏洩磁界を集中させることができ(厳密には足し合わされ2倍になる)、シャフトへの印加トルクに対する漏洩磁界の変化が増加し、トルク検出装置における更なる感度向上が可能となる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003609 【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
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| 【出願日】 |
平成11年9月16日(1999.9.16) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100075258 【弁理士】 【氏名又は名称】吉田 研二 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−83025(P2001−83025A) |
| 【公開日】 |
平成13年3月30日(2001.3.30) |
| 【出願番号】 |
特願平11−262799 |
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