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【発明の名称】 赤外線サーモグラフィーにおける1点補正手段の自己診断装置
【発明者】 【氏名】土本 耕三

【要約】 【課題】1点補正のための基準熱源が光学系の光路に挿入されたか否かの診断ができ、しかも格別な空間を要せず設置できる装置を提供する。

【解決手段】図1における横軸は、2次元赤外線センサーにおける赤外線感知素子の配列中心oを通り、赤外線感知素子配置平面にある1本の線上に配列された1列の赤外線感知素子の位置に対応している。1点補正では、図1(A)の1点補正データで画素データを補正している。1点補正データは、2次元赤外線センサーにおける赤外線感知素子ごとの感度のバラツキ成分〔図1(B)〕と迷光成分〔図1(C)〕という2つの誤差成分の和を表している。この迷光成分の分布を2次元の分布パターンで表すと、赤外線感知素子配置平面では図1(D)の如く等高線で表される。この等高線が中心oに関し対称であるとき、基準熱源が光学系の光路に挿入されていると診断する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】光学系の赤外線光路に基準熱源を短時間だけ挿入し、該光路を遮断するとともに該基準熱源の輻射赤外線を2次元赤外線センサーに入射させ、該2次元赤外線センサーにおける各赤外線感知素子の出力を基に該各赤外線感知素子に関する補正データを生成し、該補正データを記憶手段に記憶し、該記憶手段に記憶された該補正データと該補正データに対応する該赤外線感知素子の出力との加減算により1点補正をする赤外線サーモグラフィーに設けられ、該基準熱源が該光路に挿入されたか否かの診断をする装置において、前記記憶手段に記憶された前記補正データに含まれる情報を基に前記診断をすることを特徴とする赤外線サーモグラフィーにおける1点補正手段の自己診断装置。
【請求項2】対象物の温度を表す熱画像を生成する赤外線サーモグラフィーに設けられる装置であり、前記赤外線サーモグラフィーは、多数の赤外線感知素子を平面的に配列してなる2次元赤外線センサー、入射赤外線を該2次元赤外線センサーに集光し前記対象物の像を該2次元赤外線センサーに結ぶ光学系および1点補正手段を有し、前記1点補正手段は、基準熱源と、該基準熱源の温度を検知する手段と、前記光学系における赤外線の光路に該基準熱源を挿入し前記入射赤外線を遮断するべきことを命令する挿入命令または該光路から該基準熱源を脱出させるべきことを命ずる脱出命令に応じ該基準熱源の挿脱をする挿脱手段と、該挿脱手段により該基準熱源を該光路に挿入したときにおける前記赤外線感知素子の出力及び該温度検知手段で検知した該基準熱源の温度に基づき該赤外線感知素子ごとの補正データを生成する補正データ生成手段と、該補正データ生成手段で生成した該補正データを記憶する記憶手段と、前記補正データの生成を要するときに前記挿入命令を出力し、該挿入命令の出力より後に前記脱出命令を出力する挿脱制御手段と、前記赤外線感知素子の出力を対応する該補正データで補正することにより補正出力を生成する補正手段とを有し、前記補正手段は、前記挿脱手段により前記基準熱源を前記光路から除き、前記入射赤外線を前記赤外線感知素子に入射させたときにおける該赤外線感知素子の出力と前記記憶手段から読み出した前記補正データとの加減演算により前記補正出力を生成し、前記挿入命令に応じた前記挿脱手段の作動により前記基準熱源が前記光路に挿入されたか否かの診断をする赤外線サーモグラフィーにおける1点補正手段の自己診断装置において、前記記憶手段に記憶された前記補正データに含まれる情報を基に前記診断をすることを特徴とする赤外線サーモグラフィーにおける1点補正手段の自己診断装置。
【請求項3】前記赤外線感知素子の感度不揃いに基づく誤差成分を前記補正データから減じることにより、前記光学系の鏡筒などから輻射される赤外線成分である迷光成分を生成し、該赤外線感知素子それぞれに関する前記迷光成分を、対応する該赤外線感知素子の配置と同じに配置したときに形成される迷光成分の2次元分布パターンにおける等高線が該赤外線感知素子の配置中心に関し対称形状をなすときに、前記基準熱源が前記光路に挿入されたと判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の赤外線サーモグラフィーにおける1点補正手段の自己診断装置。
【請求項4】前記2次元分布パターンにおいて前記配置中心から等角度で伸びる複数の放射線を仮想し、かつ該配置中心に関し同心の複数の円環を仮想したとき、該各放射線と該円環との交点から最近位置にある前記迷光成分を抽出し、該配置中心について対称位置にある該交点対に関する該迷光成分相互の差を複数の交点対において求め、該差が所定の閾値以下であるとき前記対称形状をなすと判定することを特徴とする請求項3に記載の赤外線サーモグラフィーにおける1点補正手段の自己診断装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多数の赤外線感知素子を平面的に配置した2次元赤外線センサーで対象物の熱画像を生成する赤外線サーモグラフィーに関し、更に詳しくは、1点補正データを取得するために、基準熱源を光学系の光路に挿入する手段を有する赤外線サーモグラフィーにおいて、該基準熱源が光路に挿入されたか否かを診断する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】2次元赤外線センサーを赤外線検知手段とする赤外線サーモグラフィーについては、例えば特開平10−115557に開示されている。この種の赤外線サーモグラフィーでは迷光による影響を除くことが重要である。特開平10−115557の図1に示されているように、2次元赤外線センサーを赤外線検知手段とする赤外線サーモグラフィーでは、開口絞りやレンズの鏡筒から輻射される赤外線B、カメラヘッドの筐体内壁から輻射される赤外線C、および2次元赤外線センサーのケースから輻射される赤外線Dが、開口絞りの開口を光路として通った赤外線(測定対象物や外気等から輻射され、光学系の開口から入射し、光学系内部の開口絞りの開口を通過した赤外線)Aに加えて2次元赤外線センサーに入射する。赤外線サーモグラフィーで検知したい赤外線はAだけであり、それらB,C,Dの赤外線全体は不要な迷光である。
【0003】2次元赤外線センサーにおける迷光の影響度は、光学系の光軸と2次元赤外線センサーにおける赤外線感知素子配置平面との交点を赤外線感知素子の配置の中心とするとき、該中心からの距離が大きいほど大きい。したがって、2次元赤外線センサーにおける迷光の大きさを該2次元赤外線センサーの表面に等高線で描くならば、等高線は同心円となる。
【0004】また、2次元赤外線センサーは、多数の赤外線感知素子を平面的に配置してなるので、それら赤外線感知素子相互の感度に不揃いが生ずることは不可避である。そこで、2次元赤外線センサーを赤外線検知手段とする赤外線サーモグラフィーでは、赤外線感知素子相互の感度の不揃いに起因する赤外線感知誤差の補正をすることも必要である。
【0005】そこで、2次元赤外線センサーで対象物の熱画像を生成する赤外線サーモグラフィーでは、赤外線感知素子ごとの感度の不揃い及び迷光に起因して、赤外線感知素子相互の入出力特性に生じる不揃いを補正するために、1点補正(NON-UNIFORMITY CORRECTION)と称される補正が各赤外線感知素子についてなされる。また、1点補正のために各赤外線感知素子の出力と加減算されるデータを1点補正データと称する(本明細書では、各赤外線感知素子ごとの補正データであることが明瞭なときは、1点補正データを単に補正データと記すこともある)。
【0006】2次元赤外線センサーで対象物の熱画像を生成する赤外線サーモグラフィーでは、2次元赤外線センサーにおける各赤外線感知素子が該熱画像における画素にそれぞれ対応する。そこで、以下では、それら赤外線感知素子の出力を画素データ、この画素データを1点補正データで補正したデータを補正画素データ、画素データ全体の集合で構成されるデータを画像データ、補正画素データ全体の集合で構成されるデータを補正画像データと称する。
【0007】1点補正データを各赤外線感知素子について取得し、各画素データにその1点補正データを加減算して補正画素データを生成する手段を1点補正手段と称することにする。1点補正手段では、1点補正データを取得するために、光学系における赤外線の光路に基準熱源を挿入する機構および基準熱源の温度を検知する温度センサーを備える。1点補正手段では、光路に基準熱源を挿入し、各画素データ及び温度センサーの出力から1点補正データを算出する。基準熱源の輻射赤外線を受けた赤外線感知素子の出力である画素データと1点補正データとを加減算することにより、基準熱源に関する補正画素データが得られる。基準熱源の温度は均一であるから、補正画素データも均一になる。各赤外線感知素子の入出力特性は一様でないから、各赤外線感知素子ごとの1点補正データも一様ではない。
【0008】1点補正手段は、取得した1点補正データを記憶部に記憶する。そして、1点補正手段は、基準熱源を光路から除き、光学系の入射開口に受けた赤外線を2次元赤外線センサーに入射させ、該赤外線に基づく画素データと記憶部から読み出した1点補正データとの加減算を演算部で行い、補正画素データを生成する。
【0009】図5は、1点補正手段における1点補正の原理を説明する図である。本図における横軸は、2次元赤外線センサーにおける赤外線感知素子の配列中心oを通り、赤外線感知素子配置平面にある1本の線上に配列された一列の赤外線感知素子の位置に対応している。そして、図5(A)の縦軸は赤外線感知素子の出力、即ち画素データを表し、同図(B)の縦軸は1点補正データを表す。同図(C)の縦軸は、赤外線感知素子の出力を1点補正データで補正して得たデータ、即ち補正画素データを表す。図5における横軸上の点oは赤外線感知素子の配列中心oに対応している。図5は、光路に基準熱源が挿入されたときに得られるデータを表している。
【0010】基準熱源は、温度分布を一様にした板状体でなるから、赤外線感知素子ごとの感度の不揃い及び迷光がないならば、画素データは画素の位置に拘わらず一定であり、図5(C)における如くに分布するはずである。ところが、図5(A)に示すように、画素データは、赤外線感知素子ごとの感度の不揃いに起因して赤外線感知素子ごとに相違し、また迷光が赤外線感知素子に入射することに起因して、中心に関し対称に変化する。図5は、光学系の筐体などの温度が基準熱源の温度より高く、ひいては迷光成分の赤外線エネルギーが基準熱源の赤外線エネルギーより大きく、2次元赤外線センサーの中心より周辺の領域に高い赤外線エネルギーが入射している場合を示している。図5(A),(B)における小さな波は前述の赤外線感知素子ごとの感度の不揃いに起因する成分に対応している。
【0011】図5(A),(B)における小さな波におけるピーク位置の間隔は、赤外線感知素子の配列間隔に対応している。実際の2次元赤外線センサーにおいて1列に配列される赤外線感知素子の数は数千以上であるが、作図上の都合から、図5では、1列に配列された赤外線感知素子の数が30余である場合を示している。
【0012】図5(B)の1点補正データを得るには、まず基準熱源を光路に挿入し、2次元赤外線センサーから同図(A)の画素データを得るとともに、温度センサーから基準熱源の温度受け、この温度を基に演算により同図(C)の補正画素データを得る。そして、図5(A)の画素データから同図(C)の補正画素データを減ずることにより、同図(B)の1点補正データが得られる。
【0013】1点補正データは、前述のとおり、赤外線感知素子ごとの感度の不揃いと迷光という2つの誤差成分の和を表している。これらの誤差成分は、環境温度が或る程度以上変化したとき、観測するシーンに応じて光学フィルターを挿入したり、或いは光学系の焦点距離を変更したときは変動する。そこで、これらの誤差成分の変動があったときには1点補正データを変更する必要が生じる。新たな1点補正データを取得するためには、その都度基準熱源を光路に挿入しなければならない。
【0014】基準熱源を光路に挿入する機構は、モーターで基準熱源プレートを半回転させる機構か、或いはシャッターである。これらは何れも可動機構であるから、電子回路に比べ故障し易い。赤外線サーモグラフィーにおける唯一の可動機構がこの基準熱源挿入機構である。この挿入機構が故障すると、1点補正ができず、赤外線サーモグラフィーによる熱画像の一様性が失われる。
【0015】そこで、挿入機構の故障を検出する手段が従来から赤外線サーモグラフィーに備えられている。従来の挿入機構の故障検出手段は、マイクロスイッチ、フォトセンサー、ポテンショメーター、ロータリーエンコーダである。これら従来の故障検出手段は、挿入機構または基準熱源の機械的な移動の有無を検知するセンサーであった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】基準熱源が光学系の光路に挿入されたか否かを診断する従来の手段は、上述のとおり、挿入機構または基準熱源の機械的な移動の有無を検知するセンサーであった。これら従来の診断手段を赤外線サーモグラフィーに備えるには、センサー部品自体、駆動回路および配線、さらにはこれらを設置するための機構や空間を光学系の周辺に設ける必要がある。したがって、挿入機構の作動の良否を診断する従来の手段は、赤外線サーモグラフィーの小型化の障害となり、また製造費の増大を招いていた。
【0017】そこで、本発明は、1点補正手段を有する赤外線サーモグラフィーに設けられて、設置のための格別な空間を要せず、またさしたる製造費の増大を招かずに、基準熱源が光学系の光路に挿入されたか否かを診断できる自己診断装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するために本発明は次の手段を提供する。
【0019】(1)光学系の赤外線光路に基準熱源を短時間だけ挿入し、該光路を遮断するとともに該基準熱源の輻射赤外線を2次元赤外線センサーに入射させ、該2次元赤外線センサーにおける各赤外線感知素子の出力を基に該各赤外線感知素子に関する補正データを生成し、該補正データを記憶手段に記憶し、該記憶手段に記憶された該補正データと該補正データに対応する該赤外線感知素子の出力との加減算により1点補正をする赤外線サーモグラフィーに設けられ、該基準熱源が該光路に挿入されたか否かの診断をする装置において、前記記憶手段に記憶された前記補正データに含まれる情報を基に前記診断をすることを特徴とする赤外線サーモグラフィーにおける1点補正手段の自己診断装置。
【0020】(2)対象物の温度を表す熱画像を生成する赤外線サーモグラフィーに設けられる装置であり、前記赤外線サーモグラフィーは、多数の赤外線感知素子を平面的に配列してなる2次元赤外線センサー、入射赤外線を該2次元赤外線センサーに集光し前記対象物の像を該2次元赤外線センサーに結ぶ光学系および1点補正手段を有し、前記1点補正手段は、基準熱源と、該基準熱源の温度を検知する手段と、前記光学系における赤外線の光路に該基準熱源を挿入し前記入射赤外線を遮断するべきことを命令する挿入命令または該光路から該基準熱源を脱出させるべきことを命ずる脱出命令に応じ該基準熱源の挿脱をする挿脱手段と、該挿脱手段により該基準熱源を該光路に挿入したときにおける前記赤外線感知素子の出力及び該温度検知手段で検知した該基準熱源の温度に基づき該赤外線感知素子ごとの補正データを生成する補正データ生成手段と、該補正データ生成手段で生成した該補正データを記憶する記憶手段と、前記補正データの生成を要するときに前記挿入命令を出力し、該挿入命令の出力より後に前記脱出命令を出力する挿脱制御手段と、前記赤外線感知素子の出力を対応する該補正データで補正することにより補正出力を生成する補正手段とを有し、前記補正手段は、前記挿脱手段により前記基準熱源を前記光路から除き、前記入射赤外線を前記赤外線感知素子に入射させたときにおける該赤外線感知素子の出力と前記記憶手段から読み出した前記補正データとの加減演算により前記補正出力を生成し、前記挿入命令に応じた前記挿脱手段の作動により前記基準熱源が前記光路に挿入されたか否かの診断をする赤外線サーモグラフィーにおける1点補正手段の自己診断装置において、前記記憶手段に記憶された前記補正データに含まれる情報を基に前記診断をすることを特徴とする赤外線サーモグラフィーにおける1点補正手段の自己診断装置。
【0021】(3)前記赤外線感知素子の感度不揃いに基づく誤差成分を前記補正データから減じることにより、前記光学系の鏡筒などから輻射される赤外線成分である迷光成分を生成し、該赤外線感知素子それぞれに関する前記迷光成分を、対応する該赤外線感知素子の配置と同じに配置したときに形成される迷光成分の2次元分布パターンにおける等高線が該赤外線感知素子の配置中心に関し対称形状をなすときに、前記基準熱源が前記光路に挿入されたと判定することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の赤外線サーモグラフィーにおける1点補正手段の自己診断装置。
【0022】(4)前記2次元分布パターンにおいて前記配置中心から等角度で伸びる複数の放射線を仮想し、かつ該配置中心に関し同心の複数の円環を仮想したとき、該各放射線と該円環との交点から最近位置にある前記迷光成分を抽出し、該配置中心について対称位置にある該交点対に関する該迷光成分相互の差を複数の交点対において求め、該差が所定の閾値以下であるとき前記対称形状をなすと判定することを特徴とする前記(3)に記載の赤外線サーモグラフィーにおける1点補正手段の自己診断装置。
【0023】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態を挙げ、本発明を一層詳しく説明する。
【0024】図3は、1点補正手段を有する一般的な赤外線サーモグラフィーの要部の構成を示す図である。図において、1は光学系、2は2次元赤外線センサー、2aは2次元赤外線センサー2のケース、3は基準熱源、4は挿脱手段、5はA/D(アナログディジタル)変換器、6は演算部、7は記憶部、8は映像処理部、9は温度センサー、100は入射赤外線、101は収束赤外線、102は2次元赤外線センサー2の出力、104は挿脱命令、105はA/D変換器5の出力、106は補正出力、107は補正データ、108は映像信号、109は温度センサー9の出力の温度データである。図3では、光学系1、2次元赤外線センサー2、赤外線センサー2のケース2a、基準熱源3および挿脱手段4は模式的に描いてある。
【0025】入射赤外線100は、光学系1の入射開口から入射し、光学系1の絞り開口を通過した赤外線であり、絞り開口の視野に入る観察対象物や外気の赤外線を表している。収束赤外線101は、観察対象物の赤外線像を2次元赤外線センサー2に結ぶように、入射赤外線100を光学系1で収束した赤外線である。2次元赤外線センサー2には、収束赤外線101だけではなく、迷光が入射する。迷光は、前述のとおり、開口絞りやレンズの鏡筒から輻射された赤外線、カメラヘッドの筐体内壁から輻射された赤外線、および2次元赤外線センサーのケース2aから輻射された赤外線を加算したものである。
【0026】2次元赤外線センサー2は、多数の赤外線感知素子をマトリックス状に平面的に配列してなる。赤外線感知素子が配列された平面の中心は光学系1の光軸に一致している。A/D変換器5は、2次元赤外線センサー2の出力102をディジタルの出力105に変換する。2次元赤外線センサー2の出力102は、多数の赤外線感知素子の出力を順次に取り出し、時間軸上に配列した信号である。各赤外線感知素子の出力は前述の画素データであり、アナログ形式の信号である。ディジタルの出力105はディジタル形式の画素データである。
【0027】演算部6は、CPU(Central Processing Unit),ROM,RAM等のハードウエア並びにROM及びRAMに記憶されているソフトウエアで構成され、パーソナルコンピュータの本体と同様な機能を備える。CPUはマイクロプロセッサである。ROM及びRAMには、CPUで演算処理をするのに必要なデータ、その演算処理の手順を示すプログラムが記録されている。前述の補正データ生成手段、挿脱制御手段および補正手段は、CPU,ROM,RAM等のハードウエア並びにROM及びRAMに記憶されているソフトウエアでなっている。演算部6は、補正データ更新時に補正データ107を生成し、記憶部7へ記憶するとともに、観測対象の熱画像を生成するときは記憶部7から補正データ107を読み出し、ディジタルの出力105に補正データ107を加算し、補正出力106を生成する。補正出力106は前述の補正画素データである。記憶部7はRAMでなる。
【0028】映像処理部8は、補正出力106(補正画素データ)につき画像処理を施し、液晶表示装置へ表示するのに適したカラーの熱画像信号を生成し、映像信号108として出力する。基準熱源3は、板状の熱源であり、全面を均等な温度に保持され、挿脱手段4により光学系1の赤外線光路に挿入され、又はその光路から脱出される。基準熱源3が赤外線光路に挿入されたとき、光学系1における基準熱源3より入射開口側の赤外線は、基準熱源3で遮断される。従って、基準熱源3が赤外線光路に挿入されたとき、2次元赤外線センサー2に入射する赤外線は、基準熱源3から輻射された赤外線および迷光である。
【0029】挿脱命令104は、演算部6における挿脱制御手段から出力され、挿入命令および脱出命令でなる。挿脱手段4は、挿入命令を受けると基準熱源3を光学系1の赤外線光路に挿入し、脱出命令を受けると基準熱源3を光学系1の赤外線光路から外す。挿脱手段4は、前述の挿入機構に相当し、挿脱命令104に応じ駆動信号を生成する駆動部と駆動信号で制御されるモーターとでなる。モーターの軸には基準熱源3が固定してあり、モーターが半回転すると、基準熱源3が光学系1の光路に挿入され、更に半回転すると、基準熱源3が光学系1の光路から除かれる。図3では、光学系1の光路に挿入された基準熱源3を破線で示し、光学系1の光路から脱出した状態の基準熱源3を実線で示す。温度センサー9は、基準熱源3に固定され、基準熱源3の温度を検知し、演算部6の補正データ生成手段へ温度データ109を供給する。
【0030】次に図3の赤外線サーモグラフィーで1点補正を行う方法を説明する。1点補正では、前述のとおり、2次元赤外線センサー2の赤外線感知素子それぞれにつき1点補正データを生成する。この1点補正データは、環境温度が或る程度以上変化したとき、観測するシーンに応じて光学フィルターを挿入したり、或いは光学系の焦点距離を変更したときに更新する必要がある。
【0031】図1は、1点補正データを構成する成分、及び基準熱源が光学系の光路に挿入されたか否かを本実施の形態の自己診断装置で診断できる原理を示す図である。本図(A),(B),(C)における横軸は、2次元赤外線センサーにおける中心oを通り、赤外線感知素子配置平面にある1本の線上に配列された一列の赤外線感知素子の位置に対応している。図1における横軸上の点oは、2次元赤外線センサー2における赤外線感知素子の配列中心oに対応している。
【0032】図1(A)は、1点補正データを示す図であり、図5(B)に例示した図を転記した図である。1点補正データは、赤外線感知素子の出力における誤差成分に同じである。赤外線感知素子の出力(画素データ)における誤差成分は、前述のとおり、赤外線感知素子ごとの感度の不揃いに起因して赤外線感知素子ごとに相違する第1の成分と、迷光が赤外線感知素子に入射することに起因して、中心oに関し対称に変化する第2の成分でなる。
【0033】図1(B)は、赤外線感知素子の出力における第1の成分を示し、赤外線感知素子ごとの感度の不揃いに起因して赤外線感知素子ごとに相違する成分(センサーの感度バラツキ成分)である。センサーの感度バラツキ成分は、環境温度などによっては変らず、一定である。図1(C)は、赤外線感知素子の出力における第2の成分を示し、迷光が赤外線感知素子に入射することに起因して、中心oに関し対称に、かつ滑らかに変化する成分(迷光成分)である。迷光成分は、環境温度や入射する赤外線に応じて変動する。
【0034】図1(B)のセンサーの感度バラツキ成分を得る方法は幾つかある。例えば、赤外線サーモグラフィーを恒温槽に入れ、基準熱源3を光路に挿入し、基準熱源3の温度制御を停止し、赤外線サーモグラフィー全体の温度を一様に安定化させ、2次元赤外線センサー2の出力102を測定する。このとき、基準熱源3と光学系1の鏡筒などの迷光源の温度は同じになるから、図5(A)に示すセンサー(赤外線感知素子)出力は図2(A)の如くになり、このとき基準熱源3の赤外線及び迷光成分の和は図2(B)の如く画素位置に拘わらず一定となる。温度データ109に基づき、図2(B)の基準熱源3の赤外線及び迷光成分を演算部6の補正データ生成手段で計算により求め、図2(A)に示すセンサー出力から該計算値を減ずる。この方法によれば、図2(C)のセンサーの感度バラツキ成分が生成される。
【0035】なお、図2(D)は、2次元赤外線センサーにおける赤外線感知素子配置平面に図2(B)の基準熱源及び迷光成分を表現した図である。後に説明する図1(D)との対比で明らかなように、図2(B)の基準熱源及び迷光成分は全平面で一様であり、等高線で表現しようとしたとき等高線は現れない。
【0036】赤外線サーモグラフィーを恒温槽に入れて、図1(B)のセンサーの感度バラツキ成分を得る方法において、上記の方法を僅かに変形することもできる。この変形方法では、図2(A)に示すセンサー出力からその平均値を求め、図2(A)のセンサー出力からその平均値を減ずる。この減算により、図6に示すセンサーの感度バラツキ成分が生成される。センサー出力からその平均値を除去すれば、センサーの感度バラツキ成分はゼロレベルを中心に変動する(図6)。
【0037】図1(B)は、センサーの感度バラツキ成分を示す図2(C)を転記した図である。本実施の形態では、上述の如くにして求めた図1(B)のセンサーの感度バラツキ成分を図1(A)の1点補正データから減じ、図1(C)の迷光成分を得る。図1(B)のセンサーの感度バラツキ成分は、1次元に配列された赤外線感知素子に関するデータであるが、本実施の形態では2次元に配列された全ての赤外線感知素子に関する感度バラツキ成分を上記の方法で製造段階で予め取得し、演算部6のROMに記憶しておく。
【0038】図1(C)における横軸は、2次元赤外線センサーにおける中心を通り、赤外線感知素子配置平面にある1本の線上に配列された一列の赤外線感知素子の位置に対応しており、図1(C)は迷光成分の1次元分布図である。図1(D)は、2次元赤外線センサーにおける赤外線感知素子配置平面に図1(C)の迷光成分パターンを表現した図である。従って、図1(D)は、迷光成分を等高線(等しいレベルの点を結んだ線)で表現しており、迷光成分の2次元分布図である。
【0039】迷光成分の2次元分布パターンは、図1(D)に示すように、中心oに関し対称である。図1は、図5と同じく、光学系1の鏡筒などの温度が基準熱源3の温度より高く、ひいては迷光成分の赤外線エネルギーが基準熱源3の赤外線エネルギーより大きく、2次元赤外線センサー2の中心oより周辺の領域に高い赤外線エネルギーが入射している場合を示している。
【0040】本実施の形態である1点補正手段の自己診断装置は、演算部6の挿脱制御手段から挿入命令を挿脱手段4へ送出したとき、迷光成分の2次元分布パターンが中心oに関し対称であるとき、基準熱源3が光学系1の光路に挿入されたと判定し、1点補正手段における基準熱源挿入手段は正常であると診断する。
【0041】基準熱源3が光学系1の光路に挿入されていなければ、2次元赤外線センサー2には光学系1へ入射した外界の赤外線が入力するから、図5(A)のセンサー出力は光学系1に入射した外界の赤外線エネルギーを表す。外界の赤外線エネルギー分布は一般に光学系1の光軸に関し非対称であるから、図5(A)のセンサー出力は2次元赤外線センサー2の中心o〔図5(A)の横軸における点oに対応〕に関して非対称となる。
【0042】本実施の形態においては、図5(B)の1点補正データは次の方法で算出する。演算部6の補正データ生成手段において、基準熱源3の温度データ109を受け、温度データ109に対応した2次元赤外線センサー2の入力赤外線エネルギーを算出し、更に誤差成分がないときの2次元赤外線センサー2の出力、即ち図5(C)の補正出力を演算し、この図5(C)の補正出力を図5(A)のセンサー出力から減算することにより、図5(B)の1点補正データが得られる。前述のとおり、図1(A)の1点補正データは図5(B)を転記したものである。
【0043】図1(C),(D)の迷光成分分布パターンは、前述のとおり、図1(A)の1点補正データを加工して生成したものであるから、基準熱源3が光学系1の光路に挿入されていなければ中心oに関し対称にならないことは、以上に説明したところから明らかである。かくして、本実施の形態では、演算部6の挿脱制御手段から挿入命令を挿脱手段4へ送出したとき、図1(D)に示した迷光成分の2次元分布パターンが中心oに関し対称であるときは、基準熱源3は正常に光路に挿入されており、非対称であれば基準熱源3は正常に光路に挿入されておらず、1点補正手段における基準熱源挿脱手段4が故障であると診断できる。
【0044】図4は、図1(D)に示した迷光成分の2次元分布パターンが中心oに関し対称であるか否かを、演算部6で判定する方法の一例を示す図である。この図4は、図1(D)の迷光成分の2次元分布パターンに、赤外線感知素子の配置中心oから等角度(45度)で伸びる8本の仮想放射線を描き、かつ該配置中心oに関し同芯の仮想円環a,b,c,dを描いてなる。8本の仮想放射線は点A,B,C,D,E,F,G,Hと配置中心oとを結ぶ線である。演算部6は、該各放射線と該円環a,b,c,dとの交点から最近位置にある赤外線感知素子に関する迷光成分を抽出し、配置中心oについて対称位置にある2つの交点を交点対とし、該交点対に関する該迷光成分相互の差を複数の交点対において求め、該差が所定の閾値以下であるとき、迷光成分の2次元分布パターンが中心oに関し対称であると判定する。P1,P2は、配置中心oについて対称位置にある交点対の一例である。
【0045】上述のように、本実施の形態では、従来から知られている1点補正手段に格別なハードウエアを加えることなく、演算部6でなされるデータ処理を僅かに増やすだけで実現できる。従って、本実施の形態である1点補正手段の自己診断装置は、設置のための格別な空間を要せず、またさしたる製造費の増大を招かずに、基準熱源3が光学系1の光路に挿入されたか否かを診断できる。
【0046】なお、以上には実施の形態を挙げ、本発明を具体的に説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。例えば、図1(A)の1点補正データを得るのに、図5を参照し、図5(C)の補正出力に相当するデータを基準熱源3の温度のデータ109を用いたが、本発明では図5(C)の補正出力に相当するデータを次の別の方法で求めても差し支えない。その別の方法では、図5(A)のセンサー出力における最低レベルを同図(C)の補正出力と仮定して、その最低レベルを同図(A)のセンサー出力から減算することによって、同図(B)の1点補正データを得て、この1点補正データに基づき図1(D)の迷光成分分布パターンを生成し、この迷光成分分布パターンの等高線が中心oに関し対称であるか否かで、基準熱源3が光路に挿入されているか否かを診断する。この方法で診断しても、診断の結果は前述の実施の形態によるものと変わらない。
【0047】
【発明の効果】本発明によれば、以上に実施の形態を挙げ詳しく説明したように、1点補正手段を有する赤外線サーモグラフィーに設けられて、設置のための格別な空間を要せず、又さしたる製造費の増大を招かずに、基準熱源が光学系の光路に挿入されたか否かを診断できる1点補正手段の自己診断装置を提供できる。
【出願人】 【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
【出願日】 平成11年10月26日(1999.10.26)
【代理人】 【識別番号】100087790
【弁理士】
【氏名又は名称】尾関 伸介
【公開番号】 特開2001−124629(P2001−124629A)
【公開日】 平成13年5月11日(2001.5.11)
【出願番号】 特願平11−304644