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【発明の名称】 スケール装置
【発明者】 【氏名】澤 正章

【氏名】新井 栄作

【要約】 【課題】スケールの分散配置を可能にするとともに、不要な2相パルス信号を出力することがなく検出精度を向上させるスケール装置を提案する。

【解決手段】このスケール装置1は、検出ヘッド2の移動経路上に複数分散して配置されたスケール6に対して、分散スケール6の存在しない場所で不要なパルス信号を出力することなく、1のスケール端部の目盛と他の1のスケール端部の目盛が切れ目無く接合するかのように電気的に目盛を連結し、複数の分散スケール6をあたかも連続した一本のスケールのように電気的に処理するようにするために、分散スケール6のみを検出する分散スケール検出手段4を設けたので、不要な2相パルス信号を出力することがなく検出精度を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の周期で周囲の環境に対して識別可能な目盛を形成したスケールと、その目盛を読み取り上記目盛の周期で正弦波状の2相電圧信号を出力する検出ヘッドと、2相の電圧信号を入力して上記目盛の周期に対して電気的細分化を施しパルス信号を出力する内挿回路とを有するスケール装置において、上記検出ヘッドの移動経路上に複数分散して配置されたスケールに対して、上記分散スケールの存在しない場所で不要なパルス信号を出力することなく、1のスケール端部の目盛と他の1のスケール端部の目盛が切れ目無く接合するかのように電気的に目盛を連結し、複数の上記分散スケールをあたかも連続した一本のスケールのように電気的に処理ようにするために、上記分散スケールのみを検出する分散スケール検出手段を設けたことを特徴とするスケール装置。
【請求項2】 請求項1記載のスケール装置において、上記分散スケール検出手段は、入力信号の所定信号レベルを検出する信号レベル検出手段を有し、上記内挿回路に対して、上記所定信号レベルに対して信号レベルが低下したとき入力信号から検出した上記目盛と上記検出ヘッドの相対位置を表す位相情報を一時的に保持させると共に、上記パルス信号の出力を停止させ、動作可能となる信号レベルに達したときの位相情報と上記一時的に保持した位置情報とを比較させ、その位相変位に比例したパルス信号を出力させるようにしたことを特徴とするスケール装置。
【請求項3】 請求項1または2記載のスケール装置において、上記スケールの目盛がN極とS極を交互に配置した磁石であることを特徴とするスケール装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スケール装置に関するもので、工作機械、自動倉庫、エレベータや無人搬送車の精密な位置決め及び液面や機械位置のストローク検出に適用することができる。
【0002】
【従来の技術】[スケールシステムの概要]従来のスケール装置の構造を図9に示す。インクリメンタルスケールシステムとしてのスケール装置90は、基本的にスケール96と、スケールヘッド91と、ディテクター94で構成される。さらに、後述するようにディテクター94の出力部において、カウンタ95を設けることにより、変位をカウント値で計数できる。
【0003】図9aは、スケール96とスケールヘッド91の構造を示す。スケール96は、磁石媒体に一定間隔でN極とS極を交互に着磁したものであり、着磁面の空間に正弦波状の磁束密度分布を発生する。図9において、λが目盛の1波長を表す。λを大きくするほど磁束の広がりが大きくなり、スケールヘッド91の検出距離を大きく設定することができる。図9におけるスケール96の場合、λは20mm、検出距離は3〜12mmである。このため、スケール96とスケールヘッド91は、完全に非接触で使用できる。
【0004】スケールヘッド91は、2組の磁気センサー(A,B)92と調整回路93で構成されている。磁気センサー(A,B)92は、スケール96上の磁束密度を電圧信号に変換する。各磁気センサー(A,B)92は、出力信号の位相差が90°( λ/4) になるよう配置してある。調整回路93は、各磁気センサー(A,B)92のゲインをそろえオフセット電圧をゼロにする。また、電気的に位相の微調整を行い、正確に90°の位相差にあわせる。このようにしてスケールヘッド91は、スケール96との位置に対応したサインとコサインの関数で表される2相の電圧信号を出力する。
【0005】ディテクター94は、図10aに示すサインとコサインの2相電圧信号を入力して、電気的な細分化を施し、図10b,cに示す2相パルス信号に変換する装置である。
【0006】図10aに示す2相パルス信号は、A相とB相の2 つの位相差を持つ信号からなる。A相とB相の位相差は、スケールヘッド91の移動方向に応じて90°または−90°になる。また、各信号のそれぞれの立ち上がりと立ち下がりの両エッジでパルス数の分解能を定義する。
【0007】スケール96の目盛の細分化を内挿と呼び、細分化の分解能を内挿数と呼ぶ。ディテクター94は、必要な内挿数に設定された内挿回路で構成される。ディテクター94からの出力パルスを可逆カウンタ95に接続することで、スケールヘッド91の移動距離をスケール96の目盛より高分解能で測定できる。
【0008】[内挿回路の概要]図9において、スケールヘッド91がスケール96上を移動するときのA相出力電圧VaとB相出力電圧Vbは、次式で表される。
【0009】
【数1】Va=Acosθ【0010】
【数2】Vb=Asinθただし、【0011】
【数3】θ=2πx/λ,A=振幅定数x=スケールヘッドの位置λ=スケール目盛の1波長【0012】VaとVbの合成ベクトルは、スケールヘッド91の移動に応じて図9bに示す円の軌跡を描く。図9aにおいてスケールヘッド91が左から右に移動すると、図9bの矢印で示す合成ベクトルは、反時計方向に回転する。円の半径は出力電圧の大きさ「A」を表し、検出距離が小さいほど大きくなる。また、位相「θ」は、VaとVbの比率が保たれていれば出力電圧の大きさ「A」に影響されない。
【0013】内挿回路は、図10aに示す入力信号VaとVbから逆に位相θを検出し、次にθの変化に対応して図10bまたは図10cに示す2相パルス信号を出力する。この位相θを検出する手段には各種方式があるが、上述したディテクター94は、位相変調方式を採用している。通信技術で用いる位相変調方式とは厳密な点で異なるが、類似した技術である。位相変調は、次のように行う。
【0014】先ず、内挿回路内でキャリヤ信号、sinωt,cosωt、ただし、ω= 2πFcry、Fcry=キャリヤ周波数、を生成する。
【0015】次に、三角関数の加法定理を用いて入力信号Va=cosθ,Vb=sinθ(A=1とした)との間で次の演算を行う。
【0016】
【数4】sinωt・cosθ−cosωt・sinθ=sin(ωt−θ)
【0017】数4式の演算結果が位相変調信号(sin(ωt−θ))である。即ち、スケールヘッド91の位置がキャリヤ信号と位相変調信号との位相差(時間差)に変換できたことになる。また、スケール96とスケールヘッド91間の相対位置に対して位相θの値は、λの周期で同じ値を示すが、λの波長内では一義的な値が定まる。
【0018】内挿回路は、位相変調信号の位相θを内挿数で決まる所定の分解能で検出する。内挿数をNとすると、位相の分解能は、2π/Nである。
【0019】最後に内挿回路は、位相θの変化量に比例した2相パルス信号を出力する。スケールヘッド91の変位ΔXに対する2相パルス信号のパルス数Pxは、以下の数5式となる。
【0020】
【数5】Px=NΔX/λ【0021】ただし、パルス数は、2相パルス信号のA,B各相の立ち上がりと立ち下がりの両エッジを数える。また、変位の方向に応じてA,B相の位相差が反転する。
【0022】[内挿回路の動作原理(従来型)]図11は、従来の位相変調方式内挿回路の構成を示すブロック図である。上述した位相変調方式内挿回路の具体的動作原理を図11を用いて説明する。なお、内挿数は、N=16と仮定する。
【0023】[キャリヤ信号の生成]2相のキャリヤ信号(sinωt、cosωt)は、クロック周波数Fclkを分周回路(DIV)104で分周したデジタル信号である。内挿数N、キャリヤ周波数Fcry、クロック周波数Fclkの関係は次の数6式のように設定する。
【0024】
【数6】N=Fclk/Fcry【0025】数6式が示すように、図11に示す位相変調方式内挿回路は、キャリヤ周波数とクロック周波数の比率だけで任意の内挿数を設定できる。
【0026】[位相変調信号の生成]数4式の演算は、乗算回路(1)(MUL1)102,乗算回路(2)(MUL2)103と減算回路(1)(SUB1)105で行う。乗算回路102,103は、アナログ信号(A入力)とデジタル信号(B入力)の掛け算を行う。前者は、スケールヘッド91から端子100,101を介した入力信号であり、後者は、キャリヤ信号である。具体的には、入力信号をキャリヤ信号の周期で交互に極性反転する(1と−1を交互に掛けることに相当する)スイッチング回路で構成している。デジタル信号(矩形波)との掛け算により高調波が発生するので、ローパスフィルター(LPF)106を通して基本波成分のみ取り出し、位相変調信号(sin(ωt−θ))を得る。位相変調信号は、ゼロクロスコンパレータ(COMP)107とフリップフロップ(FF)108により、クロックCLKに同期したデジタル信号に変換する。フリップフロップ(FF)108の出力信号の立ち上がり点が、位相変調信号における位相比較の基準点(サンプリング点)である。
【0027】[位相検出]キャリヤ信号は位相変調信号を生成するためだけに使用し、位相比較をするための基準信号には、別に用意したN進カウンタ(CNT)109を使用する。N進カウンタは、クロック信号CLKに同期してカウントアップし、計数値は0からN−1の値を取る。また、計数値は、数6式の関係からキャリヤ信号と同じ周期で循環する。即ち、N進カウンタの計数値は、図12aに示すように、1/Nの分解能でキャリヤ信号の位相を表している。その一方で、レジスタ(1)(REG1)110は、位相変調信号のサンプリング毎に、N進カウンタの計数値をラッチする。従って、レジスタ(1)(REG1)110が保持する計数値(D’)は、位相変調信号の位相θに比例した値を示す。
【0028】[位相変位の検出]レジスタ(2)(REG2)111は、レジスタ(1)(REG1)110の前回の値を保持する。このため、レジスタ(1)とレジスタ(2)の差を演算することで、位相θの変化Δθに対応する差分データΔD’が求まる。差の演算は、減算回路(2)(SUB2)112で行う。図12を参照しながら動作を検証してみよう。
【0029】先ず、図12aに示すA点で、図12dに示すようにレジスタ(1)(REG1)110は、N進カウンタの計数値4をセットする。次のサンプリングでレジスタ(1)(REG1)110は、B点の計数値2をセットする。この時点で図12fに示す減算回路(2)(SUB2)112による差の演算値ΔD’は、−2となる。
【0030】前回のサンプリングから位相の変化がなかったと仮定すると、次のサンプリング点は、A’点である。従って、これに対して−2カウント位相変調信号の位相が進んだという判断になり、図から読みとれる値と演算結果が一致する。
【0031】更に位相が進み、図12aに示すC点でサンプリングを行い、図12dに示すレジスタ(1)(REG1)110は13を、図12eに示すレジスタ(2)(REG2)111は2をセットする。また、このときの図12fに示す減算値ΔD’は、11となる。前回のサンプリングを仮定する点がB’点であるから、図12bに示すように、C点との間の時間的な差は、−5カウントである。この場合、期待値が−5であるの対して演算値が11となり不整合が生じた。これは、図を見て判断できるように、N進カウンタの桁上がりを含めて演算したのが原因である。また、このケースとは逆に、位相変調信号の位相が遅れる場合でも、同様の問題が生じる。
【0032】[差分データの補正]この問題を解決するために、補正回路(ADJ)113を設け、次のように補正する。図13に補正回路(ADJ)113のフローチャートを示す。
【0033】位相変化Δθが、数7式の範囲にあることを前提にすると、差分データΔD’が、数8式の範囲なら、ステップS1からステップS3へ進み、さらにステップS5で入力値を出力値とするので、補正は必要ない。
【0034】
【数7】−π≦△θ<π【0035】
【数8】−N/2≦△D’<N/2【0036】差分データΔD’が数8式の範囲を超える場合は、N進カウンタの桁上がりが原因なので、ステップS1からステップS2へ進み入力値に−Nのオフセットを加算して出力値とするか、またはステップS1からステップS3へ進み、さらにステップS4で入力値にNのオフセットを加算して出力値とする。以上のことをまとめると、図13に示すアルゴリズムになる。
【0037】この結果、補正後の差分データΔDは、数9式の範囲に収まる。
【0038】
【数9】−N/2≦△D<N/2【0039】レジスタ(1)(REG1)110が更新する値は、位相θが2πの整数倍だけ離れた位置でも同じになる。例えば、図12aのC点を通り過ぎてC’点でサンプリングする遅れ位相(図12cの破線)の場合がこれに当たる。C’点の場合、前回のサンプリングを仮定するB’点からの時間的な差(ΔD’)は、11である。この値は、位相変化Δθに換算すると数7式の範囲を超えている。しかし、レジスタ(1)(REG1)110とレジスタ(2)(REG2)111はC点の場合と同じ値を保持しているため、C点とC’点の区別は付かない。従って、補正回路は、C’点に対してC点と同じ補正結果を返す。この結果、本来の位相変化に比較して、2πの誤差(位置変位に換算するとλの誤差)が生じる。図12gに補正回路(ADJ)113の出力を示す。
【0040】[2相パルス信号の生成]補正後の差分データΔDは、並列直列変換回路(P/S)114で2相パルス信号に変換する。並列直列変換回路の具体例を図14に示す。
【0041】微分回路(DIF)143において端子(LD)141に入力されるフリップフロップ108の出力信号から立ち上がり微分信号を生成し、アップダウンカウンタ(CNT)144に差分データΔDをLOAD端子にロードする。ΔD=0の場合は、ゼロ検出回路(ZERO)145が1を出力し、アップダウンカウンタ(CNT)144は停止したままである。ΔD≠0の場合は、ΔDの符号をアップダウンカウンタ(CNT)144の最上位ビット(MSB)から判別して、アップダウンカウンタ(CNT)144がアップまたはダウンカウントを開始する。ΔDの値だけカウントした後、アップダウンカウンタ(CNT)144の値がゼロになり、カウントを停止する。アップダウンカウンタ(CNT)144の動作と同期して、ステートマシン(SM)147も動作の開始と停止を実行する。ステートマシン(SM)147は、図15に示す150〜153の4つの状態を持ち、アップダウンカウンタ(CNT)144に同期して2相パルス信号を出力する。図12h,12iに並列直列変換回路(P/S)114の出力を示す。
【0042】
【発明が解決しようとする課題】[従来の内挿回路の問題点]上述した通常のスケールシステムの用途では、スケール96とスケールヘッド91の検出距離はなるべく大きく取れることが望ましい。従って、微少な信号レベルに対応するため、位相検出回路のコンパレータ107は、高感度に設計してある。ところが、スケール分散配置の用途では、スケール96からスケールヘッド91が離れるため、この高感度コンパレータ107が動作不安定の原因となる。
【0043】即ち、コンパレータ107は、ノイズレベルにまで低下した位相変調信号に対して位相検出を試みる。この結果、図11の内挿回路は無意味な位相データを検出し、不要な2相パルス信号を出力してしまう。再度信号レベルが上昇し、内挿回路の動作が確実になった場合でも、誤差を累積しているため、元の状態には復元できないという不都合があった。
【0044】[スケール分散配置技術]
[定点位置決めへの応用]立体自動倉庫を例に、スケール装置を用いた位置決め技術の問題点と課題を検討してみよう。図16は、スタッカークレーン式立体自動倉庫の例である。駆動装置163を用いてスタッカークレーン160が横方向に移動し、荷台165を昇降して物品166をラック167に収納する。ハッチングで示してあるのが横用スケール161および縦用スケール162である。スタッカークレーン160の横方向と荷台165の上下方向を制御装置164で制御して物品166の移載位置を位置決めする。図9に示したスケール装置90の採用によって、リミットスイッチとドグを使用した従来の方式と比較して格段に位置決め精度が向上する。また、機械的摩耗による破損と経年変化の問題もなくなりメンテナンスが不要になる。しかしながら、図16に示すようにラック167の全長にわたって横用スケール161および縦用スケール162を敷設する必要があり、コストの問題が生じるという不都合があった。
【0045】[スケール分散配置の考え方]スケールのコストを抑える手段として、位置決めの必要な範囲だけスケールを配置する方法が考えられる。例えば、棚が縦横とも2mピッチで4×8個配置されていると仮定する。また、荷台の位置決め範囲が幅で100mm必要と仮定する。この場合、従来の方法では縦用が約6.1m(2m×(4−1)+0.1)、横用が約14.1m(2m×(8−1)+0.1)の各スケールを用意する必要がある。ところが前述の考え方を適用すれば、有効長100mmのスケールを2mピッチで4×8個配置するだけですみ、スケールの総延長を大幅に短縮できる。実際の位置に対して計数値も大幅に短縮されるが、この問題は換算を行うことで容易に解決できる。即ち、制御装置側では、縦用約400mm、横用約800mmの連続した各スケール上に100mmピッチで位置決め点が存在するようにプログラムする。このように、スケールを分散して配置する方式は、定点位置決め箇所が多数存在する用途で効果を発揮する。
【0046】[従来技術を用いたスケール分散配置の問題点]しかし、従来のディテクター94を用いた場合、スケール96の途切れたところで動作が不安定になり、再現性のある位置制御は不可能である。通常のスケール装置の使い方は、スケール96からスケールヘッド91が離れることを想定していない。このためディテクター94は、スケールヘッド91からの信号が極端に低下したとき動作が不安定になる。
【0047】この問題を解決するために、次の方法を考察してみよう。インクリメンタルスケールシステムでは位置の初期値を決めるために原点設定を行うが、これを分散した各スケール毎に実施することを考える。具体的には、スケールの近くに原点磁石を設け、スケールヘッド91側に配置した原点検出スイッチ(磁気近接スイッチ)の信号で毎回カウンタの初期化を行う。この方法は従来から多く用いられているが、次に述べる問題がある。
【0048】第1に、ディテクター94の出力パルスと原点検出スイッチの信号は非同期であり、移動速度によって原点位置がずれる。
【0049】第2に、原点磁石と原点検出スイッチの検出距離が変動すると原点位置がずれる。
【0050】第3に、毎回原点設定が必要になり、制御装置側の処理が煩雑になる。特に、両方向から位置決めを行う場合は、原点磁石がスケール96の両端に2個必要になる。このため、位置決め方向に対応して原点設定値を選択的に2種類持つ必要がある。
【0051】第4に、原点磁石と原点検出スイッチが別途必要となり、コストと配置スペースが増大する。
【0052】以上のことから、多くの問題が残り、完全な方法とは言えない。前述した考え方、つまり、スケールを分散して配置する方法を完璧に実現するためには、ディテクターの不安定動作を解決し、不連続なスケールを連続的なスケールとして扱えるような技術が必要である。
【0053】[スケール分散配置技術の必要性]複数の常に決まった点で位置決めを行う用途(定点位置決め)は、立体自動倉庫の例に限らず、多数存在する。例えば、軌道台車の位置決め、コンベア上を移動するパレットの位置決め、エレベータの昇降口の位置決めなどである。
【0054】そこで、本発明は、これらの用途・目的に対して効果的な解決方法を提供するために、スケールの分散配置を可能にするとともに、不要な2相パルス信号を出力することがなく検出精度を向上させるスケール装置を提案することを課題とする。
【0055】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するため本発明のスケール装置は、所定の周期で周囲の環境に対して識別可能な目盛を形成したスケールと、その目盛を読み取り目盛の周期で正弦波状の2相電圧信号を出力する検出ヘッドと、2相の電圧信号を入力して目盛の周期に対して電気的細分化を施しパルス信号を出力する内挿回路とを有するスケール装置において、検出ヘッドの移動経路上に複数分散して配置されたスケールに対して、分散スケールの存在しない場所で不要なパルス信号を出力することなく、1のスケール端部の目盛と他の1のスケール端部の目盛が切れ目無く接合するかのように電気的に目盛を連結し、複数の分散スケールをあたかも連続した一本のスケールのように電気的に処理するようにするために、分散スケールのみを検出する分散スケール検出手段を設けたものである。
【0056】この発明のスケール装置によれば、以下の作用をする。分散スケール検出手段は、スケールの存在しないところで、内挿回路における累積誤差となる不要な出力パルスを出さないように作用する。また、分散スケール検出手段は、内挿回路に対して、不連続に配置されているスケールをあたかも1 本の連続したスケールであるかのように、スケールの端ともう一方のスケールの端が電気的に連結するように処理させる。
【0057】
【発明の実施の形態】以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態のスケール装置の構成および動作を詳述する。
【0058】[概略説明]図1は、本実施の形態のスケール装置の概略構成および動作を示す図である。本実施の形態のスケール装置の新機能を回路技術的な側面と利用技術の面から簡単に説明するとそれぞれ次のようになる。
【0059】第1に、スケール目盛連結機能である。これは、図1Aに示すように、被計測面8上で物理的に離れている分散スケール6(L1,L2,・・・,Ln:有効目盛長、検出波長λの整数倍)の目盛を分散スケール検出手段4により電気的に連結し、分割されたスケール6を、図1Bに示す、検出されるスケール7(L1+L2+・・・+Ln)のように、連続した1 本のスケールとして認識する技術である。
【0060】また第2に、スケール分散配置技術である。即ち、スケール6を分割可能にして必要な範囲だけ配置できる技術である。例えば、2m毎に5カ所位置決めポイントがあり、それぞれのポイントで幅100mmの計測範囲が必要と仮定する。従来ならば、約8.1m(2m×(5−1)+0.1)のスケール長が必要であるが、この機能を使うと長さ100mmのスケールを2m毎に5カ所配置するだけでよい。このように、スケール分散配置技術は、複数箇所の定点位置決めに効果を発揮する。スケールとスケールヘッドが非接触・分離型である特徴を生かした使い方と言える。
【0061】なお、図1Aにおけるヘッド2は図9aのスケールヘッド91に対応し、ディテクターを構成する内挿回路3はディテクター94に対応し、カウンタ5はカウンタ95に対応する。本実施の形態のスケール装置の新機能を理解する上で、内挿回路3の基礎知識は不可欠である。このため、従来技術の図11において詳しく解説した内挿回路の構成および動作を適宜参照されたい。
【0062】[スケール分散配置技術に必要な機能]スケール分散配置技術に必要な機能を以下にまとめた。まず、スケールとスケールヘッドについては以下の第1〜第3の機能が必要である。第1に、スケールとスケールヘッドは完全に分離できる構造であること。第2に、スケールとスケールヘッドは実用上ある程度以上の検出距離が必要である。第3に、スケールヘッドはスケールの存在しないところを通過するので、スケールの目盛は周辺の環境に対して識別容易な媒体であること。
【0063】次に、ディテクター(内挿回路)については以下の第1〜第2の機能が必要である。第1に、スケールの存在しないところで不要な(累積誤差となる)出力パルスを出さないこと。第2に、不連続に配置されているスケールをあたかも1 本の連続したスケールであるかのように取り扱えること。即ち、スケールの端ともう一方のスケールの端が電気的に連結する機能を持つこと。
【0064】上記の中で、スケールとスケールヘッドの項目は、すでに図9で述べた従来の磁気スケールとスケールヘッドが必要機能を満たしている。ディテクターの機能に関しては、従来の内挿回路に対して後述する分散スケール検出手段を付加することにより対処可能とした。具体的内容は、以下に詳しく述べる。
【0065】[スケール目盛連結機能に対応した内挿回路]
[信号レベル検出機能]以下、本実施の形態の分散スケール検出手段4を内挿回路3における信号レベル検出機能として構成した場合について説明する。
【0066】図2は、本実施の形態の内挿回路および分散スケール検出手段の構成を示すブロック図である。図2は、図11の内挿回路に対応する。図2の内挿回路3において、分散スケール検出手段4が付加された以外は、図11の構成と同様である。
【0067】分散配置されたスケール6が存在しない箇所でディテクターを構成する内挿回路3が誤動作しないようにするためには、信号レベル検出機能が必要である。図2において破線で示した部分が従来の内挿回路に追加したものであり、分散スケール検出手段4を構成する信号レベル検出回路である。
【0068】まず、この分散スケール検出手段4を構成する信号レベル検出回路の接続関係を説明する。コンパレータ(COMP)17の出力端子はダイオード(D1)18のアノードに接続され、ダイオード(D1)18のカソードは抵抗器(R2)19の一端と接続され、抵抗器(R2)19の他端はコンパレータ(COMP)17の非反転入力端子(+)に接続される。また、抵抗器(R2)19の他端は抵抗器(R1)20の一端と接続され、抵抗器(R1)20の他端はアースに接続される。
【0069】これにより、抵抗器(R1)20、抵抗器(R2)19、ダイオード(D1)18は、コンパレータ(COMP)17にしきい値電圧とヒステリシスを与える。ダイオード(D1)の効果により、しきい値電圧は、0〔V〕とVth〔V〕とに設定される。即ち、コンパレータ(COMP)17の出力がハイレベル(H)の場合、ダイオード(D1)18は順方向にバイアスされ、コンパレータ(COMP)17の出力電圧を抵抗器(R1)20と抵抗器(R2)19で分圧してVth〔V〕を発生する。また、コンパレータ(COMP)17の出力がローレベル(L)の場合、ダイオード(D1)18は逆方向にバイアスされ、抵抗器(R1)20と抵抗器(R2)19の中点は、ゼロボルトになる。しきい値Vth〔V〕は、信号レベルの低下を判定する値であり、この値以下の信号レベルで位相検出の機能を停止する。しきい値0Vは、位相検出の基準点(サンプリング点)を定める。
【0070】図3は、位相変調信号(sin(ωt−θ))とコンパレータ(COMP)17の動作波形を示す。図3aおよび図3bに示す実線は、信号レベル低下時の動作波形を示している。また、参考のために図3aおよび図3cに通常動作時の波形を破線で示した。図3bに示すコンパレータ(COMP)17の出力波形において、矢印の立ち上がり点は、位相検出のサンプリング点である。コンパレータ(COMP)17のしきい値が0〔V〕であるため、信号レベルが低下してもサンプリング点が変動することはない。図3aに示す信号レベルがしきい値Vth〔V〕より低下すると、コンパレータ(COMP)17の出力はハイレベル(H)を保ったままになる。従って、信号レベルが低下している間、図3bにおけるa点に示す付近の区間ではレジスタ(1)(REG1)23は更新されない。図3aに示す信号レベルがしきい値Vth〔V〕を越えると、内挿回路は通常の動作を再開する。
【0071】要するに、通常内挿回路は位相変調信号の周期で毎回サンプリングを行っているが、図3aに示す信号レベルが低下している間だけサンプリングを中断すると言うことである。また、コンパレータ(COMP)17以降の回路は、サンプリングに同期して信号の処理をするため、サンプリングが実行されない限り動作を停止している。
【0072】[スケール目盛連結の詳細]
[スケール目盛の連結]スケール目盛の連結とは、スケールの端ともう一方のスケールの端が連続した目盛波長λの延長上にあるかのように内挿回路3が機能することである。これは、前述した信号レベル検出機能によって実現できる。即ち、スケールから離れたときサンプリング(位相検出)を一時保留にし、次のスケールに進入したときにサンプリングを再開することによって、スケール目盛の連結が完了する。
【0073】この問題に関しては、スケール端部の加工法、配置方法や、スケール端部におけるスケールヘッド出力信号の乱れを考慮する必要がある。この点をふまえて、以下に個々の例を示しながら詳しく説明する。
【0074】[スケール上でスケールヘッドが一旦離れる場合]第1に、スケールヘッドがスケールから一旦離れ再び復帰する場合の動作を図4を使用して説明する。図4bは、スケールヘッドが移動する経路を示す。図9で示したスケールヘッド検出面の中央部がたどる経路である。図4aで示す粗い斜線で示す範囲は、信号レベルがしきい値Vth以下になる領域である。図4dは、スケールヘッド出力信号のベクトル軌跡である。A相用磁気センサーが図4cで示すN極磁気目盛の中央部、B相用磁気センサーが図4bにおけるa点で示す目盛の境界部になる点を始点とした。また、各図で相対する点には、同じ記号を使用した。
【0075】先ず、図4bにおける実線で示すスケールヘッドの経路を説明する。a点からb点までの変位(計測方向の変位を指し、検出距離方向(スケールから離隔する方向)の変位は含まない、以下同様)は、5λ/8であり、通常の動作範囲である。内挿回路3は、数5式により5N/8個の2相パルス信号を変位に応じて順次出力する。図4aで示す信号レベルがしきい値Vth以下になるb点でサンプリングを保留し、b点の位相データをレジスタ(1)(REG1)23に保持する。b−c−dの区間ではλ/4移動しているが、図4aで示す信号レベルがしきい値Vth以下になるため、サンプリングを保留しているので、2相パルス信号は出力しない。図4aで示す信号レベルがしきい値Vth以上になるd点でサンプリングを再開し、b−c−dの区間で図4dの実線で示す位相変位+θ1を得る。内挿回路3は、目盛波長λ内では位相の絶対値を検出できるので、スケールから一旦スケールヘッドが離れたとしても位相θを正しく再現できる。+θ1はλ/4の変位を示すので、この点でN/4個の2相パルス信号を瞬時に(内挿回路3のクロックCLK周期で)出力する。続いて、d点からe点まで5λ/8変位し、5N/8個の2相パルス信号を変位に応じて順次出力する。a点からe点までの総変位は3λ/2である。また、2相パルス信号のパルス総数は3N/2となり、変位とパルス数の関連が一致する。
【0076】次に、図4bにおける破線で示したスケールヘッドの経路を説明する。a点からb点までは、実線の経路と同じ動作である。b−c−fの区間では5λ/8移動しているが、図4aで示す信号レベルがしきい値Vth以下になるため、サンプリングを保留しているので、2相パルス信号は出力しない。この区間の移動距離に相当する位相変位は、図4dの破線で示す+θ2であるが、内挿回路3は、b点とf点の位相変位を−θ2’( +θ2−2π) であると判断する。
【0077】これは、上述した図11に示した補正回路(ADJ)113,図2に示した補正回路(ADJ)26の問題と同じである。即ち、図12aのC点とC’点の関係は、図2dにおける−θ2’と+θ2の関係に一致する。内挿回路3は、図4aで示す信号レベルがしきい値Vth以上になるf点でサンプリングを再開するとき、b点から+θ2の経路をたどったのか、または−θ2’の経路をたどったのか判別できない。つまり、図4dで示すb点とf点で示す位相の値だけを問題にし、この値を元に位相変位を演算する。この場合、補正回路(ADJ)26は、数7式の前提条件に合致する−θ2’を出力する。図4dで示すようなベクトル軌跡上で2点間の位相変位を考えるとき、補正回路(ADJ)26が判定するのは、常に中心角が小さい方である。
【0078】この結果、内挿回路3は、f点で図4dで示す+θ2−2π=−θ2’の位相差に相当する5N/8−N=−3N/8個(−符号はA相とB相が逆位相であることを表す)の2相パルス信号を瞬時に出力する。続いて、f点からg点までλ/4変位し、N/4個の2相パルス信号を変位に応じて順次出力する。結局、a点からg点までのパルス総数はN(5/8−3/8+1/4)=N/2となり、変位とパルス数の関連が不一致になる。上記で示した実線の経路と比較すると、パルス数の差は、N/2−3N/2=−Nである。
【0079】破線の経路で2相パルス信号の出力数に誤差が生じたのは、スケールヘッドが離れている間の変位が数7式の条件を超えたためである。言い換えれば、スケールヘッドが離れている間の位相変位(移動距離)が数7式の条件を超えない限り、位相情報が正しくに再現され、誤差が生じることはない。また、このときの誤差は、図13に示す補正アルゴリズムにより必ずNまたは−Nのパルス数(λまたは−λの変位に相当)になる。
【0080】[スケール目盛連結(対向する目盛の極性が逆の場合)]第2に、分割されたスケールの間をスケールヘッドが移動する場合の対向する目盛の極性が逆の場合の動作を図5を用いて説明する。図5cに示すように、2つのスケールは、対向する磁極が逆極性になるように目盛の配列を決めてある。その他の条件は、上述した図4に関する記述と同じである。
【0081】図4に示したようにスケールヘッドが垂直方向に移動してスケールから離れる場合と、図5に示すように水平方向に移動してスケールから離れる場合とでは、空間的な経路は異なるものの、スケールヘッド出力信号の振る舞いは類似している。即ち、どちらも信号レベルが徐々に小さくなることでサンプリングを停止することに変わりはない。言い換えれば、図4で示した動作解析を図5のケースに適用することで理解を容易にできる。そこで、図5cに示すスケール1の端とスケール2の端を連結した、図5fに示す仮想の連結スケールを定義し、これと図4を対比しながら動作説明をする。
【0082】スケール1とスケール2を通過するスケールヘッド出力信号の図5hに示すベクトル軌跡は、図5dに示す磁束密度分布から次のようになる。先ず、図5bに示すスケールヘッドの移動経路におけるb点付近の図5hに示すベクトル図は、A,B相共にマイナス電圧の状態からA相からB相の順でゼロに向かうので、図5hにおけるb点を通過する。次に、c点付近の図5hに示すベクトル図は、A,B相共にゼロからA相からB相の順で徐々にプラス電圧に向かうので、図5hにおけるc点を通過する。このようにして、図5hに示す実線のベクトル軌跡を得る。図形が乱れているのは、目盛が途切れることによる、磁束密度分布の乱れが原因である。
【0083】一方、図5fに示す仮想連結スケール上で図5eに示す仮想連結スケールヘッドの移動経路が次のようになる場合を考える。即ち、図5fに示す仮想連結スケール上でP点の手前で検出距離が大きくなり、P点を過ぎた点で検出距離が近付くと仮定する。このように考えると、スケールヘッド出力信号は、図5hに示す濃い破線のベクトル軌跡を描く。
【0084】図5hにおける2つのベクトル軌跡の類似性から判断して、スケールヘッドが図5cに示すスケール1とスケール2の間を図5bに示すスケールヘッドの移動経路上でa−b−c−dの経路で移動する問題は、図5eに示す仮想連結スケール上の移動経路上でa’−b’−c’−d’の経路で移動する問題に置き換えることができる。即ち、後者が正しく動作することを説明できれば、前者の問題は、解決したことになる。
【0085】ところで、後者の問題は、図4で扱った問題と同じである。このため、内挿回路3は誤差を生じないで図5hに示すb’点とc’点の位相変位を正しく認識できる。従って、前者の問題は、連続したスケール上でスケールが一旦離れた場合と同様に機能し、スケールの連結が正しく行われたことになる。
【0086】内挿回路3は、あくまでも目盛波長の1周期を1/Nに分割するのであって、目盛波長の実際の長さを問題としない。ただし、目盛波長の長さが、前提としている波長からずれた場合は、2相パルス信号の出力間隔が不均一になる。図5fに示す仮想連結スケールのP点(連結部)付近では、見かけの目盛波長が図5dに示す磁束密度分布の乱れによって変化するであろうが、目盛そのものが消失したり増えたりはしない。つまり、内挿回路3は、P点付近の目盛に対しても1波長当たり必ずN個の2相パルス信号を出力する。例えば、図5eにおけるa’点とd’点の間の目盛波長は図5fにおける3λ/2に相当するので、この区間の出力パルス数は、3N/2となる。このように、内挿回路3が出力する2相パルス信号は、図5fに示す仮想連結スケールのP点付近(実際にはスケールの端の部分)では出力間隔が不均一になるが、スケールの目盛に対するパルス数では再現性が確保できている。
【0087】[スケール目盛連結(対向する目盛の加工精度が不正確な場合)]第3に、対向する目盛の加工精度が不正確な場合の動作を図6を用いて説明する。図6は、図5のケースと同じであるが、スケールの端を目盛ピッチに対して不正確に加工した場合を想定している。その他の条件は、図4に関する記述と同じである。
【0088】図6cに示すようにスケール1の端部とスケール2の端部を目盛ピッチより短く加工したスケールについて、同様に図6eに示す仮想の連結スケールを考える。この場合、図6eに示すように、連結部分の目盛波長が短縮された形になる。しかし、内挿回路3は、この短縮された目盛に対しても1波長当たりN個の2相パルス信号を出力するので、2つのスケール間の連結は問題なく達成される。
【0089】このように、スケール端部の加工精度がスケールピッチに対して不正確であってもスケール間の連結は正しく機能する。ただし、2 相パルス信号の出力パルス間隔は、上述した図5の場合より不均一になる。
【0090】[スケール目盛連結(対向する目盛の極性が同じ場合)]第4に、2つのスケールの対向する目盛が同極性で連結する場合について図7を用いて考察する。その他の条件は、図4に関する記述と同じである。
【0091】図7bに示すスケールヘッドの移動経路におけるa点からb点までの経路の図7cに示すスケールの磁極は、図5bにおけるa点からb点までの経路の図5cに示すスケールの磁極に対して目盛が逆極性である。このため、図7hにおけるa点からb点までのベクトル軌跡は、図5hにおけるa点からb点までのベクトル軌跡に対してπだけ位相がずれる。このようにして、図7hに示すベクトル軌跡を得る。
【0092】スケールヘッドがスケール2へ進入するときに検出する図7dに示す磁束密度分布のP点は、スケール1の磁束密度分布Q点と同じ傾向を示す。即ち、P点でサンプリングを再開したときに検出する位相は、Q点に相当する値になる。図7fで示す仮想の連結スケールを考えれば、スケール1とスケール2の両端の目盛がオーバーラップした形で連結されることになる。また、スケール1の端とスケール2の端で磁束密度分布の合成を考えれば、図7gに示す合成した磁束密度分布のようになる。従って、図7bに示すスケールヘッドの移動経路a−b−c−dは、図7eで示す仮想連結スケール上の移動経路a’−b’−c’−d’に置き換えることができる。このため、内挿回路3は、図7hに示すように位相が戻る方向に位相変位を判定し、c点で逆方向の2相パルス信号を出力する。この結果、図7bにおけるa点からd点までの出力パルス総数は、図5のケースと比較して、目盛のオーバーラップ分と等しいN/2個だけ少なくなる。
【0093】このようにスケールの端と端の目盛が同極性であっても、目盛の連結は正しく行われる。つまり、スケール連結時におけるパルス数の再現性が確保されている。ただし、連結部で瞬間的に逆方向の2相パルス信号を発生する。また、逆極性の目盛で連結する場合に比べて、N/2個だけパルス数が少なくなる。
【0094】[スケール目盛連結(スケールの存在しない箇所で外乱磁界がある場合)]第5に、スケールの存在しない箇所で外乱磁界がある場合について、図8を用いて説明する。スケールヘッドの移動する経路には、磁気を発生するもの、例えばモーターや電力ケーブルなど、を近付けてはならない。測定精度に影響を与えたり、測定値にふらつきが生じたりするだけでなく、スケールの目盛に恒久的なダメージを与えかねないからである。しかしながら、これらのことを考慮して周囲環境に注意を払ったとしても意図しないところで不要な磁界が発生している場合がある。即ち、強磁性体の残留磁化による不要磁界である。鉄板などの強磁性体に電気溶接をしたり、マグネットスタンドを接触させたりすることで部分的に磁石が形成される現象である。
【0095】以上のことを想定して、スケールヘッドの移動経路に外乱磁界がある場合を検討する。図8cに示すように、スケール1とスケール2の間に配置した外乱磁石は、外乱磁界を想定したものである。また、スケール1とスケール2の連結方法は図5と同じである。
【0096】スケール1とスケール2の連結方法が同じであるため、図8hに示すベクトル軌跡において、a点からb点までとe点からf点までの軌跡は、図5hにおけるa点からb点までとc点からd点までの軌跡と同じである。また、図8cの外乱磁石によって図8hにc点からd点のベクトル軌跡が追加されている。その他の条件は、図5に関する記述と同じである。
【0097】図8bにおいてc点に向けて図8cの外乱磁石に進入するときの状況は、スケール2のe点に向かうときと同じである。このため、図8hにおけるc点付近のベクトル軌跡はe点におけるものと類似する。また、図8cの外乱磁石から抜け出る図8bにおけるd点付近は、図8bにおけるb点付近と類似である。従って、図8hにおけるd点付近は、図8hにおけるb点付近と類似であって位相のみがπだけ異なる。このようにして、外乱磁石を通り過ぎるときのベクトル軌跡は、図8hに示すようにループを描く。
【0098】図8cにおけるスケール1の端と外乱磁石は、逆極性間の目盛連結と同じ状況である。このため、この部分は、図5と同様に目盛の端と外乱磁石の端を連結できる。また、外乱磁石とスケール2の端の部分は、図7における同極性間の目盛連結と同じ状況である。このため、外乱磁石とスケール2の端の目盛は、図7と同様にオーバーラップして連結できる。この状況を図8dに示す磁束密度分布上で考えると、図8dのP,Q,R,Sの各点は、図8fの合成した磁束密度分布に示すように合成できる。これらの状況は、図5と図7で解説したとおり正しく連結が機能する。このように、外乱磁石を目盛の一部として考え次々と連結を行い、最終的に外乱磁石が存在しなかったのと同様にスケールの連結が完了する。即ち、図8cにおけるb点から直接e点に連結したのと同じ結果が得られる。以上のように、スケールヘッド移動経路の途中に外乱磁界がある場合でも最終的にその存在が無視される形でスケールの連結が行われる。外乱磁界はその途中経路にいくつあってもかまわず、また、N極でもS極の外乱磁界であってもかまわない。ただし、N極とS極の外乱磁界がスケールの目盛と区別付かないように分布した場合は、その波長λ分に相当する誤差が生じる。
【0099】本実施の形態のスケール装置は、所定の周期で周囲の環境に対して識別可能な目盛を形成したスケール6と、その目盛を読み取り目盛の周期で正弦波状の2相電圧信号を出力する検出ヘッド2と、2相の電圧信号を入力して目盛の周期に対して電気的細分化を施しパルス信号を出力する内挿回路3とを有するスケール装置1において、検出ヘッド2の移動経路上に複数分散して配置されたスケール6に対して、分散スケール6の存在しない場所で不要なパルス信号を出力することなく、1のスケール端部の目盛と他の1のスケール端部の目盛が切れ目無く接合するかのように電気的に目盛を連結し、複数の分散スケール6をあたかも連続した一本のスケールのように電気的に処理するようにするために、分散スケール6のみを検出する分散スケール検出手段4を設けたので、不要な2相パルス信号を出力することがなく検出精度を向上させることができ、特に、定点位置決め箇所が多数存在する位置決め検出においてスケールを分散配置して検出精度を向上させることができる。
【0100】また、本実施の形態のスケール装置は、上述において、分散スケール検出手段4は、入力信号の所定信号レベルを検出する信号レベル検出手段を有し、内挿回路3に対して、所定信号レベルに対して信号レベルが低下したとき入力信号から検出した目盛と検出ヘッド2の相対位置を表す位相情報を一時的に保持させると共に、パルス信号の出力を停止させ、動作可能となる信号レベルに達したときの位相情報と一時的に保持した位置情報とを比較させ、その位相変位に比例したパルス信号を出力させるようにしたので、信号レベルがしきい値より低下すると、信号レベルが低下している間だけサンプリングを中断し、サンプリングが実行されない限り動作を停止して、信号レベルがしきい値を越えると、所定周期で毎回サンプリングを行って動作を再開することにより、信号レベルを検出することにより分散スケールを検出することができる。
【0101】また、本実施の形態のスケール装置は、上述において、スケール6の目盛がN極とS極を交互に配置した磁石であるので、分散されたスケールが、たとえ同じ極が対向したりまたは外乱磁界があっても、分散されたスケール目盛を端部で連結して分散スケールを検出することができる。
【0102】
【発明の効果】本発明のスケール装置は、所定の周期で周囲の環境に対して識別可能な目盛を形成したスケールと、その目盛を読み取り上記目盛の周期で正弦波状の2相電圧信号を出力する検出ヘッドと、2相の電圧信号を入力して上記目盛の周期に対して電気的細分化を施しパルス信号を出力する内挿回路とを有するスケール装置において、上記検出ヘッドの移動経路上に複数分散して配置されたスケールに対して、上記分散スケールの存在しない場所で不要なパルス信号を出力することなく、1のスケール端部の目盛と他の1のスケール端部の目盛が切れ目無く接合するかのように電気的に目盛を連結し、複数の上記分散スケールをあたかも連続した一本のスケールのように電気的に処理するようにするために、上記分散スケールのみを検出する分散スケール検出手段を設けたので、不要な2相パルス信号を出力することがなく検出精度を向上させることができ、特に、定点位置決め箇所が多数存在する位置決め検出においてスケールを分散配置して検出精度を向上させることができるという効果を奏する。
【0103】また、本発明のスケール装置は、上述において、上記分散スケール検出手段は、入力信号の所定信号レベルを検出する信号レベル検出手段を有し、上記内挿回路に対して、上記所定信号レベルに対して信号レベルが低下したとき入力信号から検出した上記目盛と上記検出ヘッドの相対位置を表す位相情報を一時的に保持させると共に、上記パルス信号の出力を停止させ、動作可能となる信号レベルに達したときの位相情報と上記一時的に保持した位置情報とを比較させ、その位相変位に比例したパルス信号を出力させるようにしたので、信号レベルがしきい値より低下すると、信号レベルが低下している間だけサンプリングを中断し、サンプリングが実行されない限り動作を停止して、信号レベルがしきい値を越えると、所定周期で毎回サンプリングを行って動作を再開することにより、信号レベルを検出することにより分散スケールを検出することができるという効果を奏する。
【0104】また、本発明のスケール装置は、上述において、上記スケールの目盛がN極とS極を交互に配置した磁石であるので、分散されたスケールが、たとえ同じ極が対向したりまたは外乱磁界があっても、分散されたスケール目盛を端部で連結して分散スケールを検出することができるという効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000137340
【氏名又は名称】株式会社マコメ研究所
【出願日】 平成11年7月12日(1999.7.12)
【代理人】 【識別番号】100080883
【弁理士】
【氏名又は名称】松隈 秀盛
【公開番号】 特開2001−21380(P2001−21380A)
【公開日】 平成13年1月26日(2001.1.26)
【出願番号】 特願平11−197818