| 【発明の名称】 |
磁気式エンコーダ |
| 【発明者】 |
【氏名】田中 志津枝
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| 【要約】 |
【課題】磁気抵抗素子と磁気スケールの取付時のギャップや取付角度の調整も容易に行え、かつ出力電圧も常に安定したものが得られる磁気式エンコーダを提供することを目的とする。
【解決手段】強磁性金属膜と非磁性金属膜とを交互に積層した人工格子多層膜を用いてパターン形成された磁気抵抗素子23と、この磁気抵抗素子23を保持するホルダ22と、前記磁気抵抗素子23に近接して配設され、かつ所定ピッチで着磁された磁気スケール21とにより磁気式エンコーダを構成したものである。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 強磁性金属膜と非磁性金属膜とを交互に積層した人工格子多層膜を用いてパターン形成された磁気抵抗素子と、この磁気抵抗素子を保持するホルダと、前記磁気抵抗素子に近接して配設され、かつ所定ピッチで着磁された磁気スケールとを備えた磁気式エンコーダ。 【請求項2】 強磁性金属膜と非磁性金属膜とを交互に積層した人工格子多層膜を用いてパターン形成された磁気抵抗素子における人工格子多層膜の検出パターンを、検出する磁界の方向と略平行にパターンの長手方向が配置されるようなつづら折り形状にパターン形成したことを特徴とする請求項1記載の磁気エンコーダ。 【請求項3】 磁気スケールとして、樹脂フィルム上に磁性塗料を200μm以下の微細ピッチに着磁してなるものを用いたことを特徴とする請求項1記載の磁気式エンコーダ。 【請求項4】 磁気スケールを帯状に構成したことを特徴とする請求項1記載の磁気式エンコーダ。 【請求項5】 磁気スケールを円板状に構成したことを特徴とする請求項1記載の磁気式エンコーダ。 【請求項6】 磁気抵抗素子からの出力信号を基準電圧と比較して、磁気スケールの位置を矩形波出力として取り出すことを特徴とする請求項1記載の磁気式エンコーダ。 【請求項7】 磁気抵抗素子からの出力信号を基準電圧を中心として増幅し、磁気スケールの位置を正弦波出力として取り出すことを特徴とする請求項1記載の磁気式エンコーダ。 【請求項8】 ホルダをポリアセタールで構成したことを特徴とする請求項1記載の磁気式エンコーダ。 【請求項9】 磁気スケールをポリエチレンテレフタレート樹脂で構成したことを特徴とする請求項1記載の磁気式エンコーダ。 【請求項10】 磁気スケールに塗布される磁気インクとして、フェライト系の磁性体を用いたことを特徴とする請求項1記載の磁気式エンコーダ。 【請求項11】 磁気スケールに塗布されている磁気インクの保持力を1500Oe以上としたことを特徴とする請求項1または10記載の磁気式エンコーダ。 【請求項12】 磁気スケールに塗布される磁気インクの厚みを20μm以下に設定したことを特徴とする請求項1,10,11のいずれかに記載の磁気式エンコーダ。 【請求項13】 磁気スケールに塗布される磁気インクとして、磁気的な配向を持たないものを用いたことを特徴とする請求項1または5記載の磁気式エンコーダ。 【請求項14】 人工格子多層膜における強磁性金属膜をNi,Fe,Coのいずれか2種類以上で構成したことを特徴とする請求項1記載の磁気式エンコーダ。 【請求項15】 人工格子多層膜における非磁性金属膜をCuで構成したことを特徴とする請求項1記載の磁気式エンコーダ。 【請求項16】 人工格子多層膜における強磁性金属膜の厚みを15〜30Åの範囲に設定したことを特徴とする請求項1,14,15のいずれかに記載の磁気式エンコーダ。 【請求項17】 人工格子多層膜における非磁性金属膜の厚みを15〜25Åの範囲に設定したことを特徴とする請求項1,14,15のいずれかに記載の磁気式エンコーダ。 【請求項18】 人工格子多層膜における強磁性金属膜をNi,Fe,Coの合金で構成し、かつその組成比は、Niが約80%、Feが約10%、Coが約10%となるようにしたことを特徴とする請求項1,14,15,16,17のいずれかに記載の磁気式エンコーダ。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、精密機器の駆動部分の位置検出や制御に用いられる磁気抵抗素子を備えた磁気式エンコーダに関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、直線上を移動する部材の位置を検出する磁気式エンコーダの一例として、特開平4−339670号公報に開示されているような記録装置に用いられる磁気式エンコーダがある。この磁気式エンコーダは、Fe−Cr−Co磁石を細い丸棒材に構成し、かつその表面に位置検出のための磁極パターンを形成してなる磁気スケール(磁気媒体)と、この磁気スケールの磁極パターンを検出する検出素子を保持するとともに、この検出素子と前記磁気スケール間のギャップ(隙間)を一定に保ちながら、磁気スケールの外周面全体を案内部として挿通可能なホルダとを備えた構造となっていた。 【0003】また、別の構造として、特開平8−14810号公報に開示される磁気式エンコーダのように、磁気スケールとして帯状の薄板材を用い、この磁気スケールを長方形の挿通孔を有するスライダに挿通し、かつ磁気スケールと微小な隙間を介して略平行に対向するように検出素子をスライダに保持した構造を有するものも提案されている。 【0004】すなわち、図11は上記別の構造の磁気式エンコーダの斜視図を示したもので、1は平板状の磁気スケール、2は磁気スケール1と微小な隙間を介して略平行に対向するように樹脂製のスライダ3に保持された磁気抵抗素子からなる検出素子である。前記スライダ3は前記磁気スケール1を挿通させる挿通孔4を有している。5は検出素子2の電圧印加と出力検出を行うリード線、6は磁気抵抗素子からなる検出素子2の検出パターンである。7はスライダ3または磁気スケール1の挿通方向を示している。そしてこの図11に示す構造の磁気式エンコーダは、磁気抵抗素子からなる検出素子2と磁気スケール1とのギャップ(隙間)が小さいときは、出力値としては50mV程度しか得られないものであり、従って、前記検出素子2を構成する磁気抵抗素子は強磁性金属膜を使用した磁気抵抗素子と考えられる。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した前者のような磁気式エンコーダの場合、検出素子が平板状で、かつ磁気スケールが丸棒状であるため、検出素子と磁気スケールとのギャップは、両者の最も接近した近接点で最も小さく、そしてこの点から離れるに従い徐々に大きくなるものであり、従って、スペーシング損失も大きくなり、平板状の磁気スケールと平板状の検出素子とを対向させる場合に比べ、出力が半分程度しか得られなかった。 【0006】また、後者のような磁気式エンコーダにおいては、強磁性金属膜からなる磁気抵抗素子が使用されているため、磁気抵抗素子の磁気抵抗変化率が磁気飽和状態で2〜3%と小さく、さらに磁気スケールの着磁ピッチが小さくなるほど磁気抵抗素子に印加される磁界が小さくなるため、微細着磁された磁気スケールに取り付けたときの磁気抵抗素子からの出力電圧は小さいものであった。そのため、磁気抵抗素子を磁気スケールに近接させて取り付ける必要があり、その結果、取付ギャップの高精度の調整が必要となっていた。特開平8−14810号公報に開示された磁気式エンコーダにおいて、磁気抵抗素子で磁気スケールの着磁パターンを読み取るためには、着磁体のピッチ70μm以下の検出に対して、着磁体への磁気抵抗素子の取付ギャップを±10μm程度に保つ必要があった。 【0007】また、強磁性金属膜からなる磁気抵抗素子の磁気抵抗変化は図12に示すように、磁気抵抗素子の検出パターンの長手方向に対し垂直方向に磁界を印加したときと、磁気抵抗素子の検出パターンの長手方向に対し平行方向に磁界を印加したときとで異方性をもっている。図12(a)は、磁気抵抗素子の検出パターンの長手方向に対し垂直方向に磁界を印加したときの磁気抵抗変化率を示したものであり、また図12(b)は、磁気抵抗素子の検出パターンの長手方向に対し平行方向に磁界を印加したときの磁気抵抗変化率を示したものである。磁気抵抗素子のパターンと磁気スケールの着磁方向が傾いたとき、すなわち、磁気抵抗素子のパターンに対する磁界の印加方向が傾いたとき、磁気抵抗素子の抵抗値変化率は低下する。図13に磁気抵抗素子の検出パターンの長手方向に対して30°の角度で磁界を印加したときの抵抗値変化を示す。このように磁気スケールに対する磁気抵抗素子の取付角度が出力電圧に影響を与えるため、特開平8−14810号公報においては、同一ギャップにおける出力ばらつきが非常に大きく、ギャップが20μm以下でも出力min値は10〜20mV程度であり、その結果、この取付角度に対しても高精度の調整が必要であった。 【0008】そのために、使用する磁気スケールとしては、変形し難いワイヤ等の強固な材質を使用したり、磁気抵抗素子に20μm,30μmの隙間寸法に調整されたスライダや挿通穴を取り付けて磁気スケールを摺動させたりして、磁気スケールと磁気抵抗素子とのギャップや取付角度等を精度良く調整する等の方法を用いて取付時の調整を高精度に行う必要があった。 【0009】また、磁気式エンコーダによる回転検出としては、一般的には外周面に着磁されたドラム型の着磁体が使用されるもので、この場合も、磁気抵抗素子との取付ギャップや取付角度を一定状態に保つことが必要であった。 【0010】さらに、実際に使用する時には磁気抵抗素子から得られる出力波形を矩形波処理したり、正弦波処理する必要がある。 【0011】磁気抵抗素子から得られる出力を矩形波処理する場合のコンパレータの入力波形と出力波形の関係を図6(a)(b)に示す。この図6(a)(b)において、11は磁気抵抗素子の出力電圧、12は基準電圧、13はコンパレータからの出力波形である。このように、矩形波処理の場合は、磁気抵抗素子の出力電圧11の電位と基準電圧12の電位によって波形のデューティが決まってくるため、波形のデューティ精度を合わせるために基準電圧12の電位を調整する必要がある。このとき、磁気抵抗素子の出力電圧が小さいと、基準電圧12の電位調整を高精度に調整する必要があるため、調整が非常に困難であるという課題があった。 【0012】また、磁気抵抗素子の出力電圧そのものが小さいため、正弦波処理をする場合は出力電圧に対するノイズが大きく良好な正弦波が得にくいという課題があった。そしてまた、取付角度によっても出力電圧が変動するため、磁気スケールのわずかな位置変動によって磁気抵抗素子に対する印加磁界の角度が変化し、その結果、正弦波処理後の出力電圧のばらつきが発生しやすいという課題があった。 【0013】本発明は上記従来の課題を解決するもので、磁気抵抗素子と磁気スケールの取付時のギャップや取付角度の調整も容易に行え、かつ出力電圧も常に安定したものが得られる磁気式エンコーダを提供することを目的とするものである。 【0014】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明の磁気式エンコーダは、強磁性金属膜と非磁性金属膜とを交互に積層した人工格子多層膜を用いてパターン形成された磁気抵抗素子と、この磁気抵抗素子を保持するホルダと、前記磁気抵抗素子に近接して配設され、かつ所定ピッチで着磁された磁気スケールとを備えたもので、この構成によれば、磁気抵抗素子と磁気スケールの取付時のギャップや取付角度の調整も容易に行え、かつ出力電圧も常に安定したものが得られるものである。 【0015】 【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明は、強磁性金属膜と非磁性金属膜とを交互に積層した人工格子多層膜を用いてパターン形成された磁気抵抗素子と、この磁気抵抗素子を保持するホルダと、前記磁気抵抗素子に近接して配設され、かつ所定ピッチで着磁された磁気スケールとを備えたもので、この構成によれば、強磁性金属膜と非磁性金属膜とを交互に積層した人工格子多層膜を用いてパターン形成された磁気抵抗素子を備えているため、この磁気抵抗素子に所定ピッチで着磁された磁気スケールを近接して配設した場合における磁気抵抗素子からの出力電圧は常に大きいものが得られ、その結果、強磁性金属膜からなる磁気抵抗素子を用いたもののように、磁気抵抗素子と磁気スケールの取付時のギャップを高精度に調整するという必要もなく、またこの構成においては、取付角度による影響も小さいため、磁気抵抗素子と、磁気スケールの取付時のギャップや取付角度の調整も容易に行え、かつ出力電圧も常に安定したものが得られるという作用を有するものである。 【0016】請求項2に記載の発明は、強磁性金属膜と非磁性金属膜とを交互に積層した人工格子多層膜を用いてパターン形成された磁気抵抗素子における人工格子多層膜の検出パターンを、検出する磁界の方向と略平行にパターンの長手方向が配置されるようなつづら折り形状にパターン形成したもので、この構成によれば、磁気抵抗素子の磁気抵抗変化が略等方性となるため、磁気抵抗素子と磁気スケールとの取付角度の影響がさらに小さくなるという作用を有するものである。 【0017】請求項3に記載の発明は、磁気スケールとして、樹脂フィルム上に磁性塗料を200μm以下の微細ピッチに着磁してなるものを用いたもので、この構成によれば、磁気スケールをホルダに保持した際に、この磁気スケールがホルダに接触したときのホルダの摩耗を軽減することができるとともに、磁気スケールを安価に製造することができるという作用を有するものである。 【0018】請求項4に記載の発明は、磁気スケールを帯状に構成したもので、この構成によれば、小型・軽量で安価なリニアエンコーダ用磁気スケールを得ることができるという作用を有するものである。 【0019】請求項5に記載の発明は、磁気スケールを円板状に構成したもので、この構成によれば、小型・軽量で安価なロータリーエンコーダ用磁気スケールを得ることができるという作用を有するものである。 【0020】請求項6に記載の発明は、磁気抵抗素子からの出力信号を基準電圧と比較して、磁気スケールの位置を矩形波出力として取り出すようにしたもので、この構成によれば、デューティ精度の良い矩形波が得られるという作用を有するものである。 【0021】請求項7に記載の発明は、磁気抵抗素子からの出力信号を基準電圧を中心として増幅し、磁気スケールの位置を正弦波出力として取り出すようにしたもので、この構成によれば、出力電圧の安定した良好な正弦波出力波形を得ることができるという作用を有するものである。 【0022】請求項8に記載の発明は、ホルダをポリアセタールで構成したもので、この構成によれば、ポリアセタールの物性である自己潤滑性により摺動特性に優れたホルダを構成することができ、これにより、摺れあうホルダと磁気スケールの材料同士の摩耗を防ぐことができるため、磁気式エンコーダ自身の長寿命化と高信頼性を確保できるという作用を有するものである。 【0023】請求項9に記載の発明は、磁気スケールをポリエチレンテレフタレート樹脂で構成したもので、この構成によれば、磁気スケールの動作中のばたつきによる出力変動が少なくなるため、安価な磁気式エンコーダが得られるという作用を有するものである。 【0024】請求項10に記載の発明は、磁気スケールに塗布される磁気インクとして、フェライト系の磁性体を用いたもので、この構成によれば、安価な磁気スケールが得られるという作用を有するものである。 【0025】請求項11に記載の発明は、磁気スケールに塗布されている磁気インクの保持力を1500Oe以上としたもので、この構成によれば、高い出力が得られるという作用を有するものである。 【0026】請求項12に記載の発明は、磁気スケールに塗布される磁気インクの厚みを20μm以下に設定したもので、この構成によれば、50μm以下のピッチの着磁が可能になるという作用を有するものである。 【0027】請求項13に記載の発明は、磁気スケールに塗布される磁気インクとして、磁気的な配向を持たないものを用いたもので、この構成によれば、円板状の磁気スケールの出力を安定して検出できるという作用を有するものである。 【0028】請求項14に記載の発明は、人工格子多層膜における強磁性金属膜をNi,Fe,Coのいずれか2種類以上で構成したもので、この構成によれば、GMR特性に及ぼすヒステリシスの影響を除去して、検出信号の出力波形の揺らぎを抑制することができるため、安定した信号出力特性と温度特性が得られるという作用を有するものである。 【0029】請求項15に記載の発明は、人工格子多層膜における非磁性金属膜をCuで構成したもので、この構成によれば、安価でかつ高感度なGMR特性による高い信号出力特性が得られ、かつS/N比が大きくなり、検出回路が簡略化できるという作用を有するものである。 【0030】請求項16に記載の発明は、人工格子多層膜における強磁性金属膜の厚みを15〜30Åの範囲に設定したもので、この構成によれば、GMR特性に及ぼす強磁性金属膜の厚みの影響を考慮して、強磁性金属膜の厚みを15〜30Åにコントロールしているため、磁気抵抗素子の異方性磁界強度をセンサとして最適な20〜60Oeにすることができ、これにより、安定した高い信号出力特性が得られるという作用を有するものである。 【0031】請求項17に記載の発明は、人工格子多層膜おける非磁性金属膜の厚みを15〜25Åの範囲に設定したもので、この構成によれば、GMR特性に生じるRKKY振動の第2ピークの特性が得られる非磁性金属膜の膜厚の領域15〜25Åを用いて、適度な非磁性金属膜の膜厚の人工格子多層膜としているため、100℃以上の温度領域での各金属層の拡散が生じることはなく、これにより、製造の加熱工程中でもGMR特性に影響なく生産することができ、また100℃以上の高温雰囲気中での信号出力検出も可能になるという作用を有するものである。 【0032】請求項18に記載の発明は、人工格子多層膜における強磁性金属膜をNi,Fe,Coの合金で構成し、かつその組成比は、Niが約80%、Feが約10%、Coが約10%となるようにしたもので、この構成によれば、人工格子多層膜の強磁性金属膜中にCoを含有しているため、強磁性金属膜と非磁性金属膜の層間の拡散が生じることはなくなり、その結果、磁気抵抗素子が100℃以上の耐熱性を確保できるという作用を有するものである。 【0033】以下、本発明の一実施の形態における磁気式エンコーダについて、図面を参照しながら説明する。 【0034】図1は本発明の一実施の形態における磁気式エンコーダの外観斜視図である。 【0035】図1において、21は所定ピッチで着磁された帯状の磁気スケールである。22はポリアセタール等からなる樹脂または真鍮やアルミニウム合金等の非磁性金属で構成されたホルダで、このホルダ22には前記磁気スケール21を摺動自在に案内するガイド部22aを設けている。そしてこのガイド部22aの空間部の高さは磁気スケール21の厚みより大きく取っているもので、その高さは磁気スケールの厚み+0.05mm以下が好ましい。23は磁気スケール21の着磁面に略平行に対向するようにホルダ22に保持された人工格子膜を用いてなる磁気抵抗素子で、この磁気抵抗素子23は前記磁気スケール21上に着磁された磁極パターンを検出するものである。 【0036】図2は前記磁気抵抗素子23のチップ部分の外観斜視図、図3は図2のA−A線断面図である。 【0037】図2,図3において、31はアルミナなどの絶縁基板、32はガラスグレーズなどの材質からなる平滑膜で、この平滑膜32は絶縁基板31の表面に平滑面を作るために形成されているものである。33は図1に示した磁気スケール21の着磁ピッチを検出できるようにパターン形成された人工格子多層膜、34は人工格子多層膜33を保護するための保護膜で、SiOやSiO2などの無機材料やエポキシあるいはフェノールなどの有機材料が使用される。35は人工格子多層膜33と外部端子(図示せず)とを接続するためのAg−Pd等からなる電極膜である。また、図2の36は人工格子多層膜33の検出パターンの一例を示したものである。 【0038】前記人工格子多層膜33は、強磁性金属膜をNi約80%、Fe約10%、Co約10%で構成し、かつその厚みを15〜30Åとし、そして非磁性金属膜をCuで構成し、かつその厚みを15〜25Åとしているもので、前記強磁性金属膜と非磁性金属膜とを交互に積層して構成しているものである。GMR特性は強磁性金属膜の交換結合によって生じるが、その交換結合は強磁性金属膜の層間の膜厚と強磁性金属膜自身の膜厚に大きく依存するため、特に各層の金属膜の膜厚管理が重要である。なお、非磁性金属膜はCu以外のAg,Ru,Ptでもよく、また強磁性金属膜の各金属の組成比も内部応力を除去する割合、例えばNi約83%、Fe約17%であれば磁気抵抗効果は若干劣るが、十分に使用できるものである。 【0039】人工格子多層膜33と従来の強磁性金属膜との違いは、その磁気抵抗変化率の大きさと、磁気異方性にある。磁気抵抗変化率は強磁性金属膜では2〜3%程度であるが、人工格子多層膜33では8%以上の磁気抵抗変化率を得ることができる。また、強磁性金属膜では、パターン形成による形状異方性があるため、磁気抵抗素子の検出パターンの長手方向に対し垂直方向に磁界を印加したときと平行方向に磁界を印加したときとでは磁気抵抗変化に違いが発生することは従来例の図12(a)(b)に記述した通りであるが、人工格子多層膜33では形状異方性がほとんど発生しない。図4は人工格子多層膜を使用した磁気抵抗素子の磁気抵抗特性を示したもので、図4(a)は、磁気抵抗素子の検出パターンの長手方向に対し垂直方向に磁界を印加したときの磁気抵抗変化、図4(b)は、磁気抵抗素子の検出パターンの長手方向に対し平行方向に磁界を印加したときの磁気抵抗変化であり、それぞれ横軸に磁界強度を、縦軸に磁気抵抗変化率を示している。このように、人工格子多層膜33を使用した磁気抵抗素子では、磁気飽和点に幾分の違いがあるものの、ほとんど類似の磁気抵抗変化を示すものである。 【0040】以上のように構成された磁気式エンコーダについて、以下にその動作を図面を参照しながら説明する。 【0041】図5は磁気抵抗素子の出力波形から、図6(a)(b)のような出力波形を得るための矩形波処理回路の一例を示したものである。 【0042】図5において、23は磁気抵抗素子、41は矩形波処理をするためのコンパレータ、42,43は矩形波処理時の基準電圧を提供するための抵抗器、44はプルアップ抵抗である。 【0043】図6(a)(b)は磁気抵抗素子23から得られる出力波形を矩形波処理する場合のコンパレータ41の入力波形と出力波形の関係を示したもので、11は磁気抵抗素子23の出力電圧、12は基準電圧、13はコンパレータ41からの出力波形である。 【0044】磁気抵抗素子23の電源端子に5Vの電圧を印加し、対向する磁気スケールを動作させたとき、特開平8−14810号公報に示された従来の磁気抵抗素子では、磁気抵抗素子と磁気スケールとのギャップが30μmの時は、出力min値が30mV〜40mV程度の出力しか得られず、また取付角度が少しでも傾くとさらに出力は低下し、出力min値は20mV程度の出力しか得ることができなかった。しかしながら、人工格子多層膜33を用いた磁気抵抗素子23では120〜160mVの出力を得ることができ、取付時のわずかな傾きによる出力変動はほとんど発生しないものである。 【0045】この磁気抵抗素子23からの出力を図5に示した矩形波処理回路のコンパレータ41に入力し、抵抗器42,43における基準電圧の電位と磁気抵抗素子23の出力電圧との差を調整して合わせることにより、コンパレータ41からの矩形波出力のデューディが決まってくる。 【0046】人工格子多層膜33からなる磁気抵抗素子23と従来の強磁性金属膜からなる磁気抵抗素子の矩形波処理条件を試算すると次の通りとなる。磁気抵抗素子と磁気スケールの位置を同一としたとき、すなわち、磁気抵抗素子に同程度の磁界が印加されたとき、強磁性金属膜からなる磁気抵抗素子で出力が20mV得られるとすると、人工格子多層膜33からなる磁気抵抗素子23では出力は80mVとなる。デューティ±5%で調整するとき、強磁性金属膜からなる磁気抵抗素子に使用する基準電圧は、磁気抵抗素子の出力の中心電位に対して±1.55mV以下で調整する必要があるが、人工格子多層膜33からなる磁気抵抗素子23に使用する基準電圧は、磁気抵抗素子23の出力の中心電位に対して±6.2mV以下の調整で可能である。 【0047】また逆に基準電圧を同一の±1.55mVで調整すると、人工格子多層膜33からなる磁気抵抗素子23では、強磁性金属膜からなる磁気抵抗素子に印加される磁界の約1/2の磁界が印加された時に同じデューティを得ることができる。これは、同様の取付を行ったときは発生磁界の小さい狭着磁ピッチの検出が可能となり、さらに磁気式エンコーダの分解能の向上につながるものである。 【0048】そしてまた強磁性金属膜を使用すると、取付角度の傾きによっても出力電圧の低下が大きいため、磁気スケールの摺動時のわずかな角度ずれがあっても出力低下が発生しやすいが、人工格子多層膜33では磁気抵抗変化が略等方性であるため、磁気スケールの角度ずれによる出力低下も発生しにくく、安定した特性を得ることができる。 【0049】以上のように本発明の一実施の形態における磁気式エンコーダは、ホルダ22に設けられ、かつ磁気スケール21を摺動自在に案内するガイド部22aの空間部の高さを磁気スケール21の厚みより大きくとっているため、取付時は磁気スケール21を容易にガイド部22aに挿入することができ、また前述したように、取付角度のばらつきにも強いため、概略の位置合わせで安定した出力を得ることができる。さらに矩形波処理を行ったときのデューティも安定しているという効果を有するものである。 【0050】なお、上記本発明の一実施の形態においては、磁気抵抗素子23を構成する人工格子多層膜33の検出パターンを図2の36のように直線状としたものについて説明したが、図7に示すように、人工格子多層膜33の検出パターン37をつづら折り形状にパターン形成しても良いもので、この方がより効果的である。図8につづら折り形状のパターン形成時の磁気抵抗変化を示す。図8(a)は、磁気抵抗素子の検出パターン37の上下方向(図2における長手方向)に対し垂直方向に磁界を印加したときの磁気抵抗変化、図8(b)は、磁気抵抗素子の検出パターン37の上下方向(図2における長手方向)に対し平行方向に磁界を印加したときの磁気抵抗変化である。このように、人工格子多層膜33の検出パターン形状をつづら折り形状にすることによって、磁気抵抗変化がさらに等方性に近くなるため、磁気抵抗素子23と磁気スケール21との取付角度の影響がさらに小さくなるものである。 【0051】また本発明の一実施の形態においては、人口格子多層膜33における強磁性金属膜をNi,Fe,Coのいずれか2種類以上で構成しているため、GMR特性に及ぼすヒステリシスの影響を除去して、検出信号の出力波形の揺らぎを抑制することができ、これにより、安定した信号出力特性と温度特性が得られるものである。 【0052】さらに前記人工格子多層膜33における非磁性金属膜はCuで構成しているため、安価でかつ高感度なGMR特性による高い信号出力特性が得られ、かつS/N比が大きくなり、その結果、検出回路が簡略化できるものである。 【0053】さらにまた前記人工格子多層膜33における強磁性金属膜の厚みは15〜30Åの範囲に設定しているため、磁気抵抗素子23の異方性磁界強度をセンサとして最適な20〜60Oeにすることができ、これにより、安定した高い信号出力特性が得られるものである。 【0054】また前記人工格子多層膜33における非磁性金属膜の厚みを15〜25Åの範囲に設定しているため、GMR特性に生じるRKKY振動の第2ピークの特性が得られ、これにより、100℃以上の温度領域での各金属層の拡散が生じることはないため、製造の加熱工程中でもGMR特性に影響なく生産することができ、また100℃以上の高温雰囲気中での信号出力検出も可能になるものである。 【0055】そしてまた前記人工格子多層膜33における強磁性金属膜はNi,Fe,Coの合金で構成し、かつその組成比は、Niが約80%、Feが約10%、Coが約10%となるようにしているもので、人工格子多層膜33を構成する強磁性金属膜中にCoを含有しているため、強磁性金属膜と非磁性金属膜の層間の拡散が生じることはなくなり、その結果、磁気抵抗素子23が100℃以上の耐熱性を確保できるものである。 【0056】また帯状の磁気スケール21を構成する方法としては、Ni合金などの金属板に直接着磁する方法や、樹脂フィルムや非磁性金属等の帯状基材上に保持力1200Oe以上の磁気インクを印刷、硬化させて磁性層を形成し、その上に一定間隔に着磁を行う方法などがあるが、ポリエチレンテレフタレート樹脂のフィルム上に磁性塗料である磁気インクを塗布し、そしてこの磁性塗料上に保護膜を塗布し、さらにこの保護膜の上に前記磁気インクを微細ピッチに着磁したものを使用した場合は、磁気スケール21が変形しにくく、そしてこの磁気スケール21をホルダ22に保持した際に、この磁気スケール21がホルダ22に接触したときのホルダ22の摩耗を軽減することができるとともに、磁気スケール21を安価に製造することができるという効果を有するものである。この場合の磁気インクとしては、安価で加工が容易なフェライト系の磁性体により構成したものを用いるが、より強い信号磁界が必要な場合は希土類金属を添加してもよく、また磁気インクの保持力が1500Oe以上のものであれば、磁気抵抗素子23から高出力を得ることができるため、波形処理後の安定した出力を得ることができるものである。 【0057】また磁気スケール21に塗布される磁気インクが厚過ぎた場合、微小なピッチを着磁すると、磁気インク自身の中で磁気ループを構成し、十分な信号磁界を得ることができないため、50μm以下の着磁ピッチをする場合は、磁気インクの厚みは20μm以下の厚みでなければならないものである。 【0058】なお、磁気スケールとして、帯状の磁気スケール21を使用した場合は、リニアエンコーダとして使用することができる。 【0059】また、磁気スケールとして、円板状の磁気スケールを使用した場合は、ロータリーエンコーダとして使用することができる。このような円板状の磁気スケールを用いて回転体の位置検出を行う場合は、円板状の磁気スケールの縁側の部分に回転方向に着磁を行うため、磁気インクは360°のどの方向への着磁に対しても同じ強度の信号磁界になっていることが必要である。従って、磁気インクとして、どの方向に対しても磁気的な配向を持たないものを用いることによって、円板状の磁気スケールの円周上のどの位置も安定した信号出力を得ることが可能となるものである。 【0060】そしてまた本発明の一実施の形態においては、処理回路として矩形波処理回路を用いたものについて説明したが、正弦波処理を行う場合について、以下に説明する。 【0061】図9は磁気抵抗素子の出力波形から、図10(a)(b)のような出力波形を得るための正弦波処理回路の一例を示したものである。 【0062】図9において、23は磁気抵抗素子、51は正弦波処理をするためのオペアンプ、52,53は正弦波処理時の基準電圧を提供するための抵抗器、54は増幅率を決めるための抵抗である。 【0063】図10(a)(b)は磁気抵抗素子23から得られる出力波形を正弦波処理する場合のオペアンプ51の入力波形と出力波形の関係を示したもので、図10(a)(b)において、61は磁気抵抗素子23の出力電圧、62は基準電圧、63はオペアンプ51からの出力波形である。 【0064】このような正弦波処理をする場合は、従来の磁気抵抗素子のように出力電圧が小さいと、出力電圧に対するノイズ成分が大きくなり、そして増幅時には出力と共にノイズも増幅されるため、良好な正弦波が得られにくい。しかるに、本発明の一実施の形態のように人工格子多層膜33からなる磁気抵抗素子23を使用した場合は、3〜4倍の出力電圧を得ることができるため、ノイズ成分の影響も1/3〜1/4に軽減することができるものである。 【0065】 【発明の効果】以上のように本発明の磁気式エンコーダは、強磁性金属膜と非磁性金属膜とを交互に積層した人工格子多層膜を用いたパターン形成された磁気抵抗素子と、この磁気抵抗素子を保持するホルダと、前記磁気抵抗素子に近接して配設され、かつ所定ピッチで着磁された磁気スケールとを備えたもので、この構成によれば、強磁性金属膜と非磁性金属膜とを交互に積層した人工格子多層膜を用いてパターン形成された磁気抵抗素子を備えているため、この磁気抵抗素子に所定ピッチで着磁された磁気スケールを近接して配設した場合における磁気抵抗素子からの出力電圧は常に大きいものが得られ、その結果、強磁性金属膜からなる磁気抵抗素子を用いたもののように、磁気抵抗素子と磁気スケールの取付時のギャップを高精度に調整するという必要もなく、またこの構成においては、取付角度による影響も小さいため、磁気抵抗素子と、磁気スケールの取付時のギャップや取付角度の調整も容易に行え、かつ出力電圧も常に安定したものが得られるという効果を有するものである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005821 【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年6月22日(1999.6.22) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100097445 【弁理士】 【氏名又は名称】岩橋 文雄 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−4404(P2001−4404A) |
| 【公開日】 |
平成13年1月12日(2001.1.12) |
| 【出願番号】 |
特願平11−174997 |
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