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【発明の名称】 ジャイロスコープおよびこれを用いた入力装置
【発明者】 【氏名】阿部 宗光

【氏名】江刺 正喜

【要約】 【課題】デバイスの小型化、検出感度の向上、駆動電圧の低減等が図れるジャイロスコープを提供する。

【解決手段】本発明のジャイロスコープ1は、3本の脚9と支持部10とを有する音叉2と、音叉2を挟持する上側ガラス基板7、下側ガラス基板8と、各脚9の基端側と対向して両ガラス基板7,8上に設けられた駆動用固定電極4a,4bと、各脚9の先端部の上面および下面に設けられ、凹凸加工された凸部からなる6個の検出用可動電極5a,5bと、これと対向して両ガラス基板7,8上に設けられた6個の検出用固定電極6a,6bとを有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 導電性材料からなり、基端側が支持部とされた振動片と、該振動片の支持部を支持する基材と、該振動片を駆動する駆動手段と、前記振動片の先端側の駆動方向と垂直かつ変位検出方向と平行な面の少なくとも一部が凹凸加工され、この凹凸加工されてなる複数の凸部からなり、該凸部の各々が前記振動片の変位検出方向の振幅以上の幅を有し、互いに並列接続された複数の検出用可動電極と、該複数の検出用可動電極との間で容量を形成するよう前記複数の検出用可動電極と対向配置されて前記基材に設けられ、各々が前記振動片の変位検出方向の振幅以上の幅を有し、互いに並列接続されて前記振動片の変位を検出する複数の検出用固定電極とを有することを特徴とするジャイロスコープ。
【請求項2】 導電性材料からなり、基端側が支持部とされた振動片と、該振動片の支持部を支持する基材と、該振動片を駆動する駆動手段と、前記振動片の先端側の駆動方向と垂直かつ変位検出方向と平行な面の少なくとも一部が凹凸加工され、この凹凸加工されてなる複数の凸部からなり、該凸部の各々が前記振動片の変位検出方向の振幅以上の幅を有し、互いに並列接続された複数の検出用可動電極と、それぞれ複数の電極を有する2つの電極群からなり、該2つの電極群のそれぞれの電極が前記複数の検出用可動電極のいずれかの電極との間で容量を形成するよう前記複数の検出用可動電極と対向配置されて前記基材に設けられるとともに、前記2つの電極群の一方の電極群をなす各電極の外端が該各電極と対向する前記検出用可動電極の一方の外端よりも前記変位検出方向の最大振幅以上外側にはみ出しており、他方の電極群をなす各電極の外端が該各電極と対向する前記検出用可動電極の他方の外端よりも前記変位検出方向の最大振幅以上外側にはみ出しており、前記各電極が前記振動片の変位検出方向の最大振幅以上の幅を有する検出用固定電極とを有してなり、前記検出用固定電極のうちの一方の電極群とこれと対向する前記複数の検出用可動電極との間で形成される容量の和と、前記検出用固定電極のうちの他方の電極群とこれと対向する前記複数の検出用可動電極との間で形成される容量の和との差を検出することを特徴とするジャイロスコープ。
【請求項3】 前記振動片の凹凸加工部が、前記支持部の上面から前記複数の検出用可動電極をなす複数の凸部の上面に至る面を面一状態のまま残して、隣接する前記検出用可動電極の間の領域が凹部とされたことを特徴とする請求項1または2に記載のジャイロスコープ。
【請求項4】 前記振動片の凹凸加工部が、前記検出用可動電極をなす凸部の上面を残して、隣接する前記検出用可動電極の間の領域、および少なくとも前記複数の検出用可動電極の形成領域と前記支持部との間の領域が凹部とされたことを特徴とする請求項1または2に記載のジャイロスコープ。
【請求項5】 前記支持部の上面を、前記検出用可動電極をなす凸部の上面とともに面一状態のまま残したことを特徴とする請求項4に記載のジャイロスコープ。
【請求項6】 前記導電性材料がシリコンであることを特徴とする請求項1または2に記載のジャイロスコープ。
【請求項7】 請求項1ないし7のいずれか一項に記載のジャイロスコープを用いたことを特徴とする入力装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ジャイロスコープとこれを用いた入力装置に関し、特に角速度入力時の音叉の脚の変位を容量の変化で検出するタイプのジャイロスコープとこれを用いた入力装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、導電性を有するシリコン等の材料で形成された音叉を用いたジャイロスコープが知られている。この種のジャイロスコープは、音叉の脚を一方向に振動させ、振動中に脚の長手方向を中心軸とする角速度が入力された際にコリオリ力によって生じる前記振動方向と垂直な方向の振動を検出するものである。コリオリ力により生じる振動の大きさは角速度の大きさに対応するので、このジャイロセンサを角速度センサとして用いることができ、例えばパソコンの座標入力装置等に適用することができる。
【0003】図15は、従来のジャイロスコープの主要部である音叉の構成を示す図である。この図に示す通り、この例の音叉100は、3本の脚101と各脚101の基端側を連結する支持部102とを有しており、導電性を付与したシリコンで形成されている。音叉100は、基板103上に支持部102で固定されており、各脚101の下方にあたる箇所には駆動用電極(図示略)がそれぞれ設けられている。したがって、駆動用電極に電圧を印加した際に生じる静電引力によって各脚101が鉛直方向に振動する構成となっている。
【0004】このジャイロスコープにおいて、鉛直方向振動中に脚101の長手方向を回転軸とする角速度が入力されると水平方向の振動が生じるが、この水平方向の振動は各脚101の両側方に配置された一対の検出用電極104で検出している。すなわち、脚101が水平方向に変位した際、脚101の一方側に配置された検出用電極104と脚101との間隔が狭まると、他方側に配置された検出用電極104と脚101との間隔が広がり、各検出用電極104と脚101とで構成される2組の静電容量が変化する。この静電容量の変化から、入力された角速度の大きさを検出することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記構成のジャイロスコープは、各脚101の両側方に検出用電極104が配置されているため、脚101と脚101との間隔(以下、脚間ギャップという)をあまり狭くすることができなかった。すなわち、検出用電極104の幅をx1、検出用電極104と脚101との間隔および検出用電極104同士の間隔をx2とすると、脚間ギャップGはG=2x1+3x2となり、一般的な半導体デバイス製造技術を利用したシリコン加工におけるx1、x2の加工限界から、脚間ギャップGの縮小化にも限界があった。
【0006】その一方、3脚型の音叉において脚間ギャップGを小さくすると、この種のデバイスの共振の大きさを表す性能指標である「Q値」が大きくなることがわかった。Q値を大きくすることができれば、角速度の検出感度が向上することに加えて、デバイスに入力する電気エネルギーから振動エネルギーへの変換効率が向上するため、駆動電圧の低減を図ることができる。
【0007】ところが上述したように、脚間ギャップが縮小化できれば、デバイスの小型化、検出感度の向上、駆動電圧の低減等、種々の利点が得られることが予想されながらも、従来のジャイロスコープは脚間ギャップの縮小化に限界があったため、その実現が不可能であった。
【0008】本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、上記種々の利点が得られ、高品質、低コストのジャイロスコープ、およびこのジャイロスコープを利用した入力装置の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明のジャイロスコープは、導電性材料からなり、基端側が支持部とされた振動片と、該振動片の支持部を支持する基材と、該振動片を駆動する駆動手段と、前記振動片の先端側の駆動方向と垂直かつ変位検出方向と平行な面の少なくとも一部が凹凸加工され、この凹凸加工されてなる複数の凸部からなり、該凸部の各々が前記振動片の変位検出方向の振幅以上の幅を有し、互いに並列接続された複数の検出用可動電極と、該複数の検出用可動電極との間で容量を形成するよう前記複数の検出用可動電極と対向配置されて前記基材に設けられ、各々が前記振動片の変位検出方向の振幅以上の幅を有し、互いに並列接続されて前記振動片の変位を検出する複数の検出用固定電極とを有することを特徴とするものである。
【0010】本発明のジャイロスコープの検出原理も従来と同様、音叉の振動片(先に述べた「脚」に相当)の振動を容量変化で検出するものである。通常、容量Cは、C=ε・(S/d) ……(1)
(ε:誘電体の誘電率、S:電極の面積、d:電極間のギャップ)
で表される。ところが、従来のジャイロスコープが、振動時における脚と検出用電極との間隔の変化、上記(1)式で言えば、電極間ギャップdの変化による容量変化を検出するのに対し、本発明のジャイロスコープは、振動時における検出用電極同士の対向面積の変化、上記(1)式で言えば、電極面積Sの変化による容量変化を検出する点で相違している。
【0011】すなわち、本発明のジャイロスコープにおける検出用電極は、振動片側に設けられた複数の検出用可動電極と基材側に設けられた複数の検出用固定電極とが対向配置されてなるものである。そして、複数の検出用可動電極は、振動片の先端側の駆動方向と垂直かつ変位検出方向と平行な面の少なくとも一部が凹凸加工されて形成された複数の凸部からなり、該凸部の各々が前記振動片の変位検出方向の振幅以上の幅を有し、互いに並列接続されている。複数の検出用固定電極は、各々が前記振動片の変位検出方向の振幅以上の幅を有し、互いに並列接続されている。特に本発明では、振動片の表面に金属薄膜等を用いて検出用可動電極を形成するのではなく、シリコン等の導電性材料からなる振動片自体の先端を凹凸加工してできた凸部を検出用可動電極とすることを特徴としている。つまり、凹部に対して検出用固定電極に接近した側に位置する凸部が電極として機能することになる。
【0012】この構成としたことにより、駆動手段により音叉の振動片を振動させた状態で振動片の長手方向を回転軸とする角速度が入力されると、コリオリ力によって前記振動方向と直交する方向の振動が生じる。この時、振動片側の検出用可動電極と基材側の検出用固定電極とが対向した位置にあり、振動片の振動に伴って検出用可動電極と検出用固定電極との対向面積が変化するため、容量変化が生じる。この容量変化を検出することで角速度を検出することができる。なお、各検出用電極の幅が振動片の変位検出方向の最大振幅以上であるとしたのは、仮に各検出用電極の幅が振動片の最大振幅よりも小さかったとすると、振動片が大きな角速度を受けて振動片が最大に振動した場合、振動片側の検出用可動電極と基材側の検出用固定電極とが対向しない状態が生じ、容量検出が不可能となってしまうからである。ここで言う「振幅」とは、「変位検出方向の振幅」と記載したように、あくまでも角速度入力時のコリオリ力によって生じる振動の振幅のことであり、駆動手段による振動の振幅のことではない。
【0013】つまり、本発明のジャイロスコープでは、振動片の基端部を基材に支持した場合、その基材上に振動片側の検出用可動電極と対向するように検出用固定電極を設ければよく、従来のように脚と脚の間に検出用電極を設ける必要がなくなる。その結果、脚間ギャップを音叉を構成する材料、例えばシリコンの加工限界程度にまで小さくすることができるため、Q値を大きくすることができ、検出感度の向上、駆動電圧の低減を図ることができる。勿論、デバイスの小型化を図ることも可能である。
【0014】また本発明の他のジャイロスコープは、導電性材料からなり、基端側が支持部とされた振動片と、該振動片の支持部を支持する基材と、該振動片を駆動する駆動手段と、前記振動片の先端側の駆動方向と垂直かつ変位検出方向と平行な面の少なくとも一部が凹凸加工され、この凹凸加工されてなる複数の凸部からなり、該凸部の各々が前記振動片の変位検出方向の振幅以上の幅を有し、互いに並列接続された複数の検出用可動電極と、それぞれ複数の電極を有する2つの電極群からなり、該2つの電極群のそれぞれの電極が前記複数の検出用可動電極のいずれかの電極との間で容量を形成するよう前記複数の検出用可動電極と対向配置されて前記基材に設けられるとともに、前記2つの電極群の一方の電極群をなす各電極の外端が該各電極と対向する前記検出用可動電極の一方の外端よりも前記変位検出方向の最大振幅以上外側にはみ出しており、他方の電極群をなす各電極の外端が該各電極と対向する前記検出用可動電極の他方の外端よりも前記変位検出方向の最大振幅以上外側にはみ出しており、前記各電極が前記振動片の変位検出方向の最大振幅以上の幅を有する検出用固定電極とを有してなり、前記検出用固定電極のうちの一方の電極群とこれと対向する前記複数の検出用可動電極との間で形成される容量の和と、前記検出用固定電極のうちの他方の電極群とこれと対向する前記複数の検出用可動電極との間で形成される容量の和との差を検出することを特徴とするものである。
【0015】本発明の他のジャイロスコープは、容量変化の検出方法として、2つの電極群からなる検出用固定電極のうちの一方の電極群の各電極とこれらと対向する複数の検出用可動電極との間で形成される複数の容量の和と、検出用固定電極のうちの他方の電極群の各電極とこれらと対向する複数の検出用可動電極との間で形成される複数の容量の和との差を検出することを特徴としている。言い換えると、上記構成の本発明の他のジャイロスコープでは、容量変化量の検出に差動検出法を用いている。
【0016】上記の構成であると、振動片がいずれか一方向に変位した場合、検出用固定電極の一方の電極群の各電極とこれと対向する検出用可動電極との対向面積が増えて容量が増加する方向に変化したとすると、他方の電極群の各電極とこれと対向する検出用可動電極との間では逆に対向面積が減り、容量が減少する方向に変化することになる。そこで、容量検出時に、2つの電極群からなる検出用固定電極のうちの一方の電極群側で形成される複数の容量の和と他方の電極群側で形成される複数の容量の和との差分をとると、変位が無いときの初期容量値は等しいために消去され、一方側の容量変化量は正、他方側の容量変化量は負となるので、容量変化量のみが残る。したがって、初期容量値の中に含まれるノイズ成分をキャンセルすることができるので、検出精度を向上させることができる。
【0017】前記駆動手段の具体的構成としては、例えば基材側に振動片に対向するように駆動用電極を設ければよい。その場合、駆動用電極を、振動片の延在方向に延ばして形成し、駆動用電極と検出用電極との間の寄生容量の発生を防ぐためにこれら電極を離間させて設けることが望ましい。仮に駆動用電極と検出用電極との間で寄生容量が発生すると、角速度を検知し、検出用電極との間に生じた容量変化を検出する際、この寄生容量をも検知してしまい、これがノイズ成分となり、SN比が低下するという不具合が生じるが、駆動用電極と検出用電極とを離間させて配置すれば、このような不具合の発生が防止される。
【0018】また、検出側の電極の形成位置に関しては、振動片の上面、下面のいずれにも設けることができる。この場合、検出容量が大きくとれるとともに、電極の形成が容易になる。
【0019】凹凸加工による検出用可動電極を有する振動片の形態には、例えば次の3つが考えられる。
(1) 支持部の上面から複数の検出用可動電極をなす複数の凸部の上面に至る面を面一状態のまま残して、隣接する検出用可動電極の間の領域を凹部としたもの。
(2) 複数の検出用可動電極をなす凸部の上面を残して、隣接する検出用可動電極の間の領域、および少なくとも複数の検出用可動電極の形成領域と支持部との間の領域を凹部としたもの。
(3)(2)の構成とした上で、支持部の上面を、検出用可動電極をなす凸部の上面とともに面一状態のまま残したもの。
【0020】上記(1)、(2)、(3)の構成にはそれぞれ特徴点があり、(1)の場合、振動片の支持部と基材とを接合する際に支持部の表面が凹部に加工されていないので、接合が容易となる。また駆動手段として、平坦な基材の表面に振動片に対向させて駆動用電極を設ける場合、支持部の上面から検出用可動電極をなす凸部の上面に至る面を全て面一状態のまま残しているので、駆動用電極と振動片の表面を充分に接近させることができ、駆動電圧を下げることができるという利点を有している。(2)の場合、隣接する検出用可動電極の間の領域が凹部となるのは勿論のこと、検出用可動電極の形成領域と支持部との間の領域も凹部となっており、振動片の中央部に対して先端側の重量が重くなるので、振動片がより振動しやすくなり、検出感度を向上させることができる。(3)の場合、上記(2)の効果に加えて、振動片の支持部が面一状態のまま残っているので、振動片の支持部と基材との接合が容易となる。
【0021】また、各検出用可動電極と各検出用固定電極の位置関係としては、各検出用可動電極と各検出用固定電極の振動片の変位検出方向における端部同士を、振動片の変位検出方向の最大振幅以上の距離ずらして配置することが望ましい。
【0022】その理由は、一般に、振動片がその長手方向を回転軸とする角速度を受けた場合、その角速度の向きが右回りであるか、左回りであるかによって、駆動方向と直交する方向における振動片の振動の向きが変わる。そこで、各検出用可動電極と各検出用固定電極をずらして配置すると、振動片がいずれか一方向に変位した場合、各検出用可動電極と各検出用固定電極との対向面積が増え、容量が増加する方向に変化したとすると、振動片が先の方向と逆方向に変位した場合には、必ず、各検出用可動電極と各検出用固定電極の対向面積が減り、容量が減少する方向に変化することになる。したがって、容量の変化量の正負を見ることによって角速度の向きも検知できるため、各検出用可動電極と各検出用固定電極をずらして配置するのが好ましいのである。つまり、各検出用可動電極と各検出用固定電極の端部同士を揃えて配置したとすると、振動片がいずれの方向に変位しても各検出用可動電極と各検出用固定電極の対向面積が減る方向にしか変化しないため、角速度の絶対値は検出できても角速度の向きが検知できない。それに、各検出用可動電極と各検出用固定電極の端部同士を揃えることは、製造上難しいという問題もある。
【0023】本発明の入力装置は、上記本発明のジャイロスコープを用いたことを特徴とするものである。本発明のジャイロスコープの使用により、例えばパソコンの座標入力装置等の小型の機器を実現することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】[第1の実施の形態]以下、本発明の第1の実施の形態を図1ないし図6を参照して説明する。図1は本実施の形態のジャイロスコープの全体構成を示す分解斜視図、図2はその平面図(ただし、電極構成は上側ガラス基板の下面を示している)、図3は図2のIII−III線に沿う断面図、図4は図2のIV−IV線に沿う断面図(脚1本分を示す拡大図)、図5および図6はジャイロスコープの製造方法を示す工程断面図であって、図5は上側ガラス基板の製造方法を示す工程断面図、図6はジャイロスコープ全体の製造方法を示す工程断面図である。図中符号2は音叉、4a,4bは駆動用固定電極、5a,5bは検出用可動電極、6a,6bは検出用固定電極、7は上側ガラス基板(基材)、8は下側ガラス基板(基材)である。
【0025】本実施の形態のジャイロスコープ1は、図1および図2に示すように、3本の脚9(振動片)とこれらの基端側を連結する支持部10とを有する3脚型の音叉2が用いられている。また、音叉2の周囲には枠部11が設けられており、これら音叉2と枠部11とは、元々は厚さ200μm程度の導電性を有する1枚のシリコン基板から形成されている。図3に示すように、支持部10は上側ガラス基板7と下側ガラス基板8との間に挟持されて固定されるとともに、2枚のガラス基板7、8の内面のうち、音叉2の上方および下方に位置する領域は10μm程度の深さの凹部7a、8aとなっており、各ガラス基板7、8と音叉2との間に10μm程度の間隙が形成されることで音叉2の各脚9が宙に浮いた状態となり、振動可能となっている。
【0026】図1および図2に示すように、上側ガラス基板7の下面の脚9の基端側と対向する位置には、各脚9に1個ずつの駆動用固定電極4aが脚9の長手方向に延在するように設けられている。駆動用固定電極4aは膜厚300nm程度のアルミニウム膜またはクロム膜、もしくは白金/チタン膜等から形成されており、駆動用固定電極4aに駆動信号を供給するための配線(図示略)が電極と同じレイヤーのアルミニウム膜またはクロム膜、もしくは白金/チタン膜等により一体的に形成されている。同様に、下側ガラス基板8の上面の脚9の基端側と対向する位置にも、各脚9に1個ずつの駆動用固定電極4bが脚9の長手方向に延在するように設けられている。本実施の形態の場合、脚9が導電性を有するシリコンで形成されているので、脚9側には特に駆動用電極を形成する必要がなく、脚9自身と駆動用固定電極4a,4bとの容量結合により脚9の駆動手段が構成されている。
【0027】図2および図3に示すように、各脚9の上面の先端寄りの領域には、脚9の長手方向に延びる溝9b(凹部)が形成されており(凹凸加工)、隣接する溝9b間の凸部9aとなる領域が検出用可動電極5a,5bとして機能する。これにより、各脚9の上面に対して6個ずつの検出用可動電極5aが脚9の長手方向に延在するように設けられている。なお、これら6個の検出用可動電極5aは脚と一体に形成されているため、互いに並列接続されたことと等価であり、図示しない検出信号取り出し用の配線が形成されている。同様に、各脚9の下面にも6個ずつの検出用可動電極5bが脚9の長手方向に延在するように設けられている。図3に示すように、音叉2の部分は、支持部10の上面から複数の検出用可動電極5aをなす複数の凸部9aの上面に至る面にわたって元々のシリコン表面が面一状態のまま残っており、隣接する検出用可動電極5aの間の領域のみが凹部9bとなっている。下面側も同様である。
【0028】一方、図3に示すように、上側ガラス基板7の下面の駆動用固定電極4aの形成位置よりも脚9の先端寄りの位置には、脚9の上面の検出用可動電極5aと対向するように各脚9に対して6個ずつの検出用固定電極6aが設けられている。検出用固定電極6aも駆動用固定電極4aと同様、アルミニウム膜またはクロム膜、もしくは白金/チタン膜等から形成されている。これら6個の検出用固定電極6aは互いに並列接続されており、検出信号取り出し用の配線(図示略)が形成されている。同様に、下側ガラス基板8の上面の駆動用固定電極4bの形成位置よりも脚9の先端寄りの位置にも、脚9の下面の検出用可動電極5bと対向するように各脚9に対して6個ずつの検出用固定電極6bが設けられている。
【0029】図4に示すように、各脚9上面の検出用可動電極5aと上側ガラス基板7の検出用固定電極6a、各脚9下面の検出用可動電極5bと下側ガラス基板7の検出用固定電極6bとはそれぞれ対向配置されているが、検出用可動電極5a,5bと検出用固定電極6a,6bの脚9の変位検出方向の端部同士が揃うように完全に対向配置されているわけではなく、検出用可動電極5a,5bの端部と検出用固定電極6a,6bの端部が、脚9の変位検出方向の最大振幅以上の距離ずれた状態に配置されている。また、各検出用可動電極5a,5bの幅W1および各検出用固定電極6a,6bの幅W2自体は、脚9の最大振幅以上の寸法に設定されている。
【0030】ここで、各部の寸法の一例を示すと、1つの脚9の幅Wが200μm、各検出用可動電極5a,5bの幅W1および各検出用固定電極6a,6bの幅W2が20μm、検出用可動電極5a,5b間の間隙G1および検出用固定電極6a,6b間の間隙G2がともに10μm、検出用可動電極5a,5bの端部と検出用固定電極6a,6bの端部のずれ量Zが5μm、である。なお、この脚9の変位検出方向の最大振幅は1μmに設定している。
【0031】さらに、ジャイロスコープ1の機能上は特に必要ではなく、後述する製造上の都合により必要なものであるため、ここでは図示を省略するが、実際には、駆動用固定電極4a,4bおよび検出用固定電極6a,6bが設けられた領域以外の上側ガラス基板7の内面側、および下側ガラス基板8の内面側に、駆動用固定電極4a,4bおよび検出用固定電極6a,6bと同一のアルミニウム膜またはクロム膜、もしくは白金/チタン膜等からなる同電位パターンが設けられている。
【0032】次に、上記構成のジャイロスコープ1を製造する方法の一例を説明する。最初に上側ガラス基板7、下側ガラス基板8の製造方法を図5を用いて説明する。図5Aに示すように、ガラス基板13を用意し、洗浄後、図5Bに示すように、両面にクロム膜14をスパッタする。次いで、レジストパターン15を形成し、このレジストパターン15をマスクとしてクロム膜14をエッチングする。次に、図5Cに示すように、このレジストパターン15およびパターニングされたクロム膜14をマスクとしてガラス基板13表面のフッ酸エッチングを行い、ガラス基板13上の音叉の位置に対応する領域に深さ10μm程度の凹部13aを形成する。その後、図5Dに示すように、レジストパターン15およびクロム膜14のパターンを除去する。次に、図5Eに示すように、膜厚300nm程度のアルミニウム膜、クロム膜等の金属膜16をガラス基板13の一面にスパッタした後、その上にレジストパターン14を形成し、これをマスクとして金属膜16のエッチングを行うことにより駆動用固定電極4a、検出用固定電極6aおよび同電位パターンを形成する。以上の工程により、上側ガラス基板7および下側ガラス基板8が完成する。
【0033】次に、図6Aに示すように、シリコン基板17を用意し、図6Bに示すように、隣接する検出用可動電極5b間の溝9bとなる部分以外を覆うレジストパターン14を片面に形成し、シリコン基板17のエッチングを行うことにより隣接する検出用可動電極5b間の溝9bを形成する。これにより、隣接する溝9bの間の領域から支持部10に至る領域にわたってシリコン基板17表面がそのまま面一状態で残り、隣接する溝9bの間の凸部9aが検出用可動電極5bとなる。次にレジストパターン14を剥離した後、図6Cに示すように、シリコン基板17の下面と下側ガラス基板8とを陽極接合法を用いて接合する。この際、シリコン基板17の溝9bを形成した側の面が下側ガラス基板8に対向するように両基板17,8を配置し、シリコン基板17のうち、後で支持部10となる部分が接合されるようにする。陽極接合法ではシリコン基板に正、ガラス基板に負の電位を印加してシリコンとガラスを容易に接合することができるが、シリコン基板17が音叉2となる部分では下側ガラス基板8表面との間隙が10μm程度しかないため、陽極接合時の静電引力によりシリコン基板17が撓んで下側ガラス基板8と接触すると、その部分も接合されてしまい、振動可能な音叉2を形成できなくなる。したがって、下側ガラス基板8に接合すべきでない部分が接合されてしまうのを防止する目的で下側ガラス基板8のその部分をシリコン基板17と同電位とするために、下側ガラス基板8表面に同電位パターンを形成しておく。この点は上側ガラス基板7についても同様である。
【0034】次に、図6Dに示すように、シリコン基板17の上面に隣接する検出用可動電極5a間の溝9bとなる部分以外を覆うレジストパターン14を形成し、シリコン基板14のエッチングを行うことにより隣接する検出用可動電極5a間の溝9bを形成し、検出用可動電極5aを形成する。これにより、脚9となる部分の上面、下面の双方に検出用可動電極5a,5bが形成されたことになる。なお、本実施の形態では、脚9の下面側の検出用可動電極5bの形成、陽極接合、脚9の上面側の検出用可動電極5aの形成という工程順で行っているが、この手順に代えて、陽極接合前に脚9の下面側の検出用可動電極5bの形成、上面側の検出用可動電極5aの形成を順次行っておき、その後、陽極接合を行う手順を採ってもよい。
【0035】次にレジストパターン14を剥離した後、図6Eに示すように、シリコン基板17表面にレジストパターン19を形成する。この際のレジストパターン19の平面形状は、図2に示すような音叉2、支持部10、枠部11等、シリコンを残す部分の形状とする。このレジストパターン19をマスクとして、反応性イオンエッチング等の異方性エッチングを用いてシリコン基板17を貫通するエッチングを行う。これにより、音叉2、支持部10、枠部11がそれぞれ形成され、音叉2の部分は下側ガラス基板8の上方で宙に浮いた状態となる。その後、レジストパターン19を剥離する。
【0036】次に、図6Fに示すように、下側ガラス基板8に接合されたシリコン基板17の上面と上側ガラス基板7とを陽極接合法を用いて接合する。この際、この図に示すように、シリコン基板17の音叉の支持部10が上側ガラス基板7に接合されることになる。以上の工程により、本実施の形態のジャイロスコープ1が完成する。
【0037】本実施の形態のジャイロスコープ1を使用する際には、駆動用固定電極4a,4bの配線に駆動源としての発振器を接続するとともに、検出用可動電極5a,5bの信号取出用配線と検出用固定電極6a,6bの信号取出用配線との間に容量検出器を接続する。発振器を駆動して音叉2−駆動用固定電極4a,4b間に数kHz程度の周波数の電圧を印加すると、音叉2の各脚9が鉛直方向に振動する。その状態で、脚9の長手方向を回転軸とする角速度が入力されると、入力された角速度の大きさに応じた水平方向の振動が生じる。この時、音叉2の各脚9の検出用可動電極5a,5bと上側ガラス基板7の検出用固定電極6a、下側ガラス基板8の検出用固定電極6bが対向した状態にあり、脚9の水平振動に伴って検出用可動電極5a,5bと検出用固定電極6a,6bの対向面積が変化するため、容量変化が生じる。この容量変化を容量検出器で検出することにより角速度の大きさを検出することができる。
【0038】さらに、本実施の形態の場合、図4に示したように、互いに対向する検出用可動電極5a,5bと検出用固定電極6a,6bの端部をずらして配置しているため、例えば図4において脚9がガラス基板7、8に対して右方向(矢印Aで示す方向)に変位した場合、各検出用可動電極5a,5bと各検出用固定電極6a,6bとの対向面積が増え、容量が増加する方向に変化する。また、脚9がガラス基板7、8に対して左方向(矢印Bで示す方向)に変位した場合には、各検出用可動電極5a,5bと各検出用固定電極6a,6bの対向面積が減り、容量が減少する方向に変化する。よって、容量の変化量の正負を検知することによって角速度の向きも検知することができる。
【0039】したがって、本実施の形態のジャイロスコープ1では、従来のジャイロスコープのように脚と脚の間に検出用電極を設ける必要がなくなる。その結果、脚間ギャップをシリコン基板の加工限界近く、例えば数十μm程度にまで小さくすることができ、Q値を大きくすることができる。例えば脚幅が200μmのジャイロスコープにおいて、脚間ギャップが300μm〜400μm程度であるとQ値は1000前後であるが、脚間ギャップを数十μm程度にまで狭めるとQ値は2000前後と、約2倍に増大することができる。このQ値の増大により、角速度センサとしての検出感度の向上、駆動電圧の低減を図ることができる。さらに、デバイスの小型化を図ることもできる。
【0040】本出願人は、本発明の目的を達成するために、他の構成のジャイロスコープを既に出願している。本発明のジャイロスコープは既出願のジャイロスコープの改良版であって、既出願のジャイロスコープに対して以下のような利点を有している。図13は既出願のジャイロスコープの全体構成を示す分解斜視図、図14は図13のXVI−XVI線に沿う断面図である。なお、図13および図14において、図1〜図4に示した本実施の形態のジャイロスコープと共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0041】図13および図14に示すジャイロスコープ21は、上記実施の形態のジャイロスコープ1と異なり、上側ガラス基板7の下面に1本の脚9に対して2個ずつの検出用固定電極6aが設けられている。そして、導電性シリコンからなる脚9そのものを電極として機能させているため、各脚9には駆動用電極も検出用電極も設けられていない。
【0042】本実施の形態のジャイロスコープ1の場合、1つの脚9に対して全部で12個の検出用可動電極5a,5bおよび検出用固定電極6a,6bが設けられており、検出用可動電極5a,5b同士、検出用固定電極6a,6b同士は互いに並列接続されている。対向する検出用可動電極5a,5bと検出用固定電極6a,6bの合計12個の電極対で形成される容量をそれぞれC1、C2、…、C12とする。脚9に対して角速度が入力されず、コリオリ力が働かずに変位が0の時(初期状態)の1脚あたりの容量をCdt1とすると、Cdt1=C1+C2+…+C12 ……(2)
と表される。次に、脚9に対して任意の角速度が入力され、コリオリ力が働いて変位が生じた時の全体の容量をCdt2とすると、dt2=(C1+ΔC1)+(C2+ΔC2)+…+(C12+ΔC12 ……(3)
(ただし、ΔC1、ΔC2、…、ΔC12は各容量における容量変化量)と表され、これを変形すると次の(4)式となる。
【数1】

より一般的に1つの脚に対してn個の検出用電極を設けると、次の(5)式となる。
【数2】

具体的な容量値の一例として、Cdt1は1pF程度、ΔCiは0.01〜0.1pF程度に設定される。
【0043】図13、図14に示した既出願のジャイロスコープ21の場合、1つの脚9に対して2個の検出用電極6aが設けられているため、(5)式におけるnが2であり、例えば1脚あたりの容量変化量は0.02〜0.2pF程度となる。これに対して、本実施の形態のジャイロスコープ1の場合、(5)式におけるnが12であり、例えば1脚あたりの容量変化量は0.12〜1.2pF程度となる。したがって、脚9が同じ大きさの角速度を受け、同じ大きさの変位が生じたとしても、本実施の形態のジャイロスコープ1では既出願のジャイロスコープ21に比べて6倍の容量変化、言い換えると、6倍の感度を得ることができる。よって、1つの脚9に対してn個の検出用電極を設けると、既出願のジャイロスコープ21に比べて(n/2)倍の感度を得ることができる。このように、本実施の形態のジャイロスコープ1によれば、検出感度をより向上させることができる。
【0044】ここで、本実施の形態の検出用可動電極5a,5bを形成する際の凸部9aの高さについて考察する。図4に示したように、検出用可動電極5a,5bと検出用固定電極6a,6bとが対向した部分の面積をS、初期状態で検出用可動電極5a,5bと検出用固定電極6a,6bとが対向していない部分の面積をS’、検出用可動電極5a,5bと検出用固定電極6a,6bの間のギャップをd1、検出用可動電極5a,5bをなす凸部9aの高さをd2、とする。脚9の変位がない初期状態での電極1個あたりの容量C0は、0=ε0ε・(S/d1)+ε0ε・(S’/(d1+d2)) ……(6)
面積増加分がS’となるように脚9が変位した後の容量1は、1=ε0ε・(S/d1)+ε0ε・(S’/d1) ……(7)
(ただし、ε0εは電極間の空間の誘電率)よって、電極1個あたりの容量変化量ΔCは、(6)、(7)式より、 ΔC=C1−C0 =ε0ε・(S’/d1)−ε0ε・(S’/(d1+d2))
=ε0εS’・[(1/d1)−{1/(d1+d2)}] ……(8)
【0045】図13、図14に示した既出願のジャイロスコープにおける容量変化量よりも本発明のジャイロスコープにおいてn個の電極を設けた場合の容量変化量の方が大きくなる条件は、(8)式より、 n・[(1/d1)−{1/(d1+d2)}]>2×(1/d1) …(9)
となる。本実施の形態の場合、n=6であるから、 6×[(1/d1)−{1/(d1+d2)}]>2×(1/d1
2>1/2・d1 ……(10)
したがって、検出用可動電極となる凸部の高さd2はd1の1/2以上、すなわち、検出用可動電極5a,5bと検出用固定電極6a,6bの間のギャップの半分以上とすることが望ましい。例えば検出用可動電極5a,5bと検出用固定電極6a,6bの間のギャップを10μmとすると、凸部9aの高さ(言い換えると溝9b(凹部)の深さ、凹凸加工時のエッチング量でもある)は5μm以上とすることが望ましい。
【0046】また、本実施の形態のジャイロスコープ1は、音叉2が2枚のガラス基板7、8の間に挟持されているため、ガラス基板7、8によって音叉2の部分が保護され、取り扱いやすいものとなっている。さらに、音叉2の部分に塵埃が入りにくい構造であるから、外乱が抑制され、センサ精度を向上することができる。また、真空封止も行える構造であり、これによれば更にQ値を向上させることができる。
【0047】なお、本実施の形態においては、脚9の上面、下面の両面に検出用可動電極5a,5bを形成し、検出用可動電極の数をより多くした例を示したが、この例に限らず、検出用可動電極は脚9の上面、下面のいずれか一面のみに形成しても良い。
【0048】[第2の実施の形態]以下、本発明の第2の実施の形態を図7を参照して説明する。図7は本実施の形態のジャイロスコープの脚1本分の電極構成を示す拡大図である。本実施の形態のジャイロスコープの基本的な構成は第1の実施の形態と全く同様であり、本実施の形態のジャイロスコープが第1の実施の形態と異なる点は、脚1本あたりの電極の構成のみである。以下では、図4と共通の構成要素に同一の符号を付した図7を用いて異なる部分のみを説明し、共通部分の説明は省略する。
【0049】第1の実施の形態においては、1本の脚9に対して、脚9の上面および下面、上側ガラス基板7の下面および下側ガラス基板8の上面に、検出用可動電極5a,5b、検出用固定電極6a,6bがそれぞれ6個ずつ設けられていた。これに対して、本実施の形態のジャイロスコープ23では、脚9の上面および下面にそれぞれ3個ずつの検出用可動電極24a,24bが設けられ、上側ガラス基板7の下面および下側ガラス基板8の上面に6個ずつの検出用固定電極6a,6b,6c,6dが設けられている。
【0050】すなわち、各脚9の上面の先端寄りの位置には、各脚9に対して3個の凸部9aからなる検出用可動電極24aが、脚9の長手方向に延在するように設けられている。同様に、下面側にも3個の検出用可動電極24bが脚9の長手方向に延在するように設けられている。一方、上側ガラス基板7の下面の駆動用固定電極4aの形成位置よりも脚9の先端部寄りの位置には、各検出用可動電極24aと対向するように各検出用可動電極24aに対して2個ずつ(1対)、各脚9に対して6個ずつ(3対)の検出用固定電極6a,6cが設けられている。これら1脚あたり6個の検出用固定電極6a,6cは、1個おきにそれぞれ並列接続された2つの電極群(6aからなる群と6cからなる群)からなり、並列接続された各電極群から検出信号取出用の配線(図示略)がそれぞれ延びている。すなわち、本実施の形態では、検出用固定電極6a,6c側が2つの電極群で構成されており、検出用固定電極6a,6cの各電極群の電極数(3個)が、検出用可動電極24aの電極数(3個)と同一であって、検出用固定電極6a,6cの各電極群内の電極が互いに並列接続された構成である。同様に、下側ガラス基板8の上面にも、各検出用可動電極24bと対向するように各検出用可動電極24bに対して2個ずつ(1対)の検出用固定電極6b,6dが設けられている。
【0051】図7に示すように、各脚9上の検出用可動電極24a,24bと上側ガラス基板7、下側ガラス基板8上の1対の検出用固定電極6a,6b,6c,6dとは対向配置されているが、脚9の変位検出方向における検出用可動電極24a,24bの両外端(図7における左端と右端)と1対の検出用固定電極6a,6c、6b,6dの各々の外端が揃うように完全に対向配置されているわけではなく、1対の検出用固定電極6a,6c、6b,6dをなす各電極の外端が各検出用可動電極24a,24bの両外端よりも脚9の最大振幅以上外側にはみ出している。また、各検出用可動電極24a,24bの幅W1および各検出用固定電極6a,6b,6c,6dの幅W2は、脚9の最大振幅以上の寸法に設定されている。
【0052】ここで、各部の寸法の一例を示すと、1つの脚9の幅Wが200μm、各検出用可動電極24a,24bの幅W1が35μm、検出用可動電極24a,24b間の間隔G1が15μm、各検出用固定電極6a,6b,6c,6dの幅W2が20μm、検出用固定電極6a,6b,6c,6d間の間隔G2が5μm、一対の検出用固定電極6a,6c、6b,6dの各々の外端の検出用可動電極24a,24b外端からのはみ出し量Zが5μm、である。なお、この脚9の変位検出方向の最大振幅は1μmに設定している。本例では、一対の検出用固定電極6a,6c、6b,6dのうち、一方の検出用固定電極6a,6bの外端の検出用可動電極24a,24b外端からのはみ出し量と、他方の検出用固定電極6c,6dの外端の検出用可動電極24a,24b外端からのはみ出し量とを同じにしているが、これらのはみ出し量はともに脚9の最大振幅以上の寸法にすればよく、必ずしも同じでなくても良い。
【0053】本実施の形態のジャイロスコープ1を使用する際には、音叉2と駆動用固定電極の配線との間に駆動源としての発振器を接続し、検出用可動電極24a,24bの配線と一方の電極群の検出用固定電極6a,6bの配線との間に第1の容量検出器を接続するとともに、検出用可動電極24a,24bの配線と他方の電極群の検出用固定電極6c,6dの配線との間に第2の容量検出器を接続する。発振器を駆動して音叉2−駆動用固定電極間に数kHz程度の周波数の電圧を印加すると、音叉2の各脚9が鉛直方向に振動する。その状態で、脚9の長手方向を回転軸とする角速度が入力されると、入力された角速度の大きさに応じた水平方向の振動が生じる。この時、音叉2の各脚9の各検出用可動電極24a,24bと上側ガラス基板7の1対の検出用固定電極6a,6cおよび下側ガラス基板8の1対の検出用固定電極6b,6dとが対向した状態にあり、脚9の水平振動に伴って各検出用可動電極24a,24bと各検出用固定電極6a,6b,6c,6dの対向面積が変化するため、容量変化が生じる。この時の容量変化量を第1の容量検出器および第2の容量検出器で差動検出することにより角速度の大きさを検出することができる。
【0054】よって、本実施の形態のジャイロスコープ23では、従来のジャイロスコープのように脚と脚の間に検出用電極を設ける必要がなくなり、脚間ギャップが小さくできるため、Q値を大きくすることができる。このQ値の増大により、角速度センサとしての検出感度の向上、駆動電圧の低減、デバイスの小型化が図れる、といった第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、従来のジャイロスコープに比べて検出感度が向上する点も第1の実施の形態と同様である。
【0055】さらに、本実施の形態では差動検出法を採用しているが、各電極群毎の初期容量値の和が互いに等しいため、差分をとると初期容量値分が消去され、容量変化量のみが残る。したがって、初期容量値の中に含まれるノイズ成分をキャンセルすることができるので、検出精度を向上させることができる。また本実施の形態の場合、検出用固定電極6a,6b,6c,6d側が2つの電極群で構成されており、検出用固定電極6a,6b,6c,6dの各電極群の電極数(3個)が、検出用可動電極24a,24bの電極数(3個)と同一であり、2つの電極群を構成する各検出用固定電極6a,6b,6c,6dを、これと対向する1つの検出用可動電極24a,24bに対して互いに対となる構成としているので、脚9の幅方向を最も有効に利用することができる。
【0056】[第3の実施の形態]以下、本発明の第3の実施の形態を図8を参照して説明する。図8は本実施の形態のジャイロスコープを示す断面図であり、第1の実施の形態における図3に相当している。本実施の形態および次に説明する第4の実施の形態のジャイロスコープの基本構成は第1、第2の実施の形態と全く同様であって、異なる点は、検出用可動電極を形成するに際して脚を凹凸加工するが、脚表面のどの領域まで凸部(または凹部)とするかという点のみである。以下では、図3と共通の構成要素に同一の符号を付した図8を用いて異なる部分のみを説明し、共通部分の説明は省略する。
【0057】図3に示した第1の実施の形態の場合、音叉2の部分は支持部10の上面から検出用可動電極5aをなす凸部9aの上面にわたって元々のシリコン表面が面一状態のまま残っており、隣接する検出用可動電極5aの間の領域のみが溝状の凹部となっていた。これに対して、本実施の形態では、図8に示すように、脚27における検出用可動電極5c,5dをなす凸部9aの上面のみが元々のシリコン表面を残した部分であり、それ以外の箇所、すなわち隣接する検出用可動電極5c,5dの間の領域、検出用可動電極5c,5dの形成領域と支持部10との間の領域、支持部10の領域を全てエッチングし、凹部9cとした。
【0058】特に本実施の形態の場合、隣接する検出用可動電極5c,5dの間の領域が凹部となるのは勿論のこと、検出用可動電極5c,5dの形成領域と支持部10との間の領域も凹部9cとなっており、脚27の中央部に対して先端側の重量が重くなるので、脚27がより振動しやすくなり、検出感度を向上させることができる。
【0059】[第4の実施の形態]以下、本発明の第4の実施の形態を図9を参照して説明する。以下では、図3と共通の構成要素に同一の符号を付した図9を用いて異なる部分のみを説明し、共通部分の説明は省略する。
【0060】第3の実施の形態では、検出用可動電極5c,5dをなす凸部9aの上面のみを元々のシリコン表面のまま残し、それ以外の領域を全てエッチングして凹部9cとした。これに対して、本実施の形態では、脚29における検出用可動電極5c,5dをなす凸部9aの上面に加えて、支持部10の部分も元々のシリコン表面のまま残し、隣接する検出用可動電極5c,5dの間の領域、検出用可動電極5c,5dの形成領域と支持部10との間の領域をエッチングして凹部9dとした。
【0061】本実施の形態の場合も第3の実施の形態と同様、脚29の中央部に対して先端側の重量が重く、脚29がより振動しやすくなるので、検出感度が向上する。それに加えて、脚29の支持部10の表面は元々のシリコン表面が残っているので、陽極接合の際にシリコンとガラス基板とが接合されやすく、強固な接合が実現される。
【0062】[第5の実施の形態]以下、本発明の第5の実施の形態を図10ないし図12を参照して説明する。本実施の形態は第1〜第5の実施の形態のジャイロスコープを用いた入力装置の例であり、具体的にはパソコンの座標入力装置であるペン型マウスに適用した例である。
【0063】本実施の形態のペン型マウス30は、図10に示すように、ペン型のケース31の内部に第1〜第5の実施の形態で示したようなジャイロスコープ32a、32bが2個収容されている。2個のジャイロスコープ32a、32bは、図11に示すように、ペン型マウス30を上から見たとき(図10の矢印A方向から見たとき)に各ジャイロスコープ32a、32bの音叉の脚の延在方向が直交するように配置されている。また、各ジャイロスコープ32a、32bを駆動し、回転角を検出するための駆動検出回路33が設けられている。その他、ケース31内に電池34が収容されるとともに、一般のマウスのスイッチに相当する2つのスイッチ35a、35b、マウス本体のスイッチ36等が備えられている。
【0064】使用者は、このペン型マウス30を持ち、所望の方向にペン先を移動させることによって、パソコン画面上のカーソル等をペン先の移動方向に応じて動かすことができる。すなわち、ペン先を図10中の紙面37のX軸方向に沿って移動させると、ジャイロスコープ32bが回転角θ1を検出し、紙面37のY軸方向に沿って移動させると、ジャイロスコープ32aが回転角θ2を検出する。それ以外の方向に移動させた場合には回転角θ1と回転角θ2の組み合わせとなる。したがって、パソコン側では回転角θ1および回転角θ2に対応した信号をペン型マウス30から受け取って、図12に示すように、画面38上のカーソル39等の移動前の点から画面38上でのX’軸、Y’軸に対応させて回転角θ1、θ2の大きさに対応する距離だけカーソル39を移動させる。このようにして、このペン型マウス30は、光学式エンコーダ等を用いた一般のマウスと同様の動作を実現することができる。
【0065】ここで用いた本発明のジャイロスコープ32a、32bは、小型、低駆動電圧、高感度という特徴を持っているため、本実施の形態のペン型マウス30のような小型の座標入力機器に好適に使用することができる。また、ナビゲーションやヘッドマウントディスプレイなど、角速度を検知する一般の入力装置に応用が可能である。
【0066】なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記の実施の形態のジャイロスコープにおける電極の数は任意に設定してかまわない。しかしながら、感度向上の面からは、加工が可能である限り、多くすることが望ましい。また、検出用電極の形成位置は、3本の脚で例えば上面側、下面側、上面側というように異なる面側に設けてもよい。また、上記実施の形態では3脚型の音叉を用いた例を示したが、脚の数も変更が可能であり、1本でも良い。
【0067】また、シリコンからなる音叉を2枚のガラス基板で挟持するのではなく、上側ガラス基板がない構成としてもよい。この場合、より簡易な構造のジャイロスコープとなる。また、陽極接合法による張り合わせを考慮すると、シリコンとガラスの相性がよいが、ガラス基板に関しては任意の基材の表面にガラスを融着したものでも代用できる。また、音叉の材料としてシリコンに代えて、カーボンを用いることも可能である。さらに、音叉とこれを挟む基材からなる3枚の基板を陽極接合法を用いて容易に接合しようとすると、第1〜第4の実施の形態で示したように、音叉の材料としてシリコンを用い、基材としてガラス基板を用いるのが好適である。しかしながら、3枚の基板の接合法として陽極接合法にこだわらないならば、3枚の基板を全てシリコンで構成することも可能である。その他、各種構成部材の材料、寸法等の具体的な記載は上記実施の形態に限ることなく、適宜変更が可能である。
【0068】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明のジャイロスコープにおいては、従来のように音叉の脚と脚との間に検出用電極を設ける必要がなくなるため、Q値を大きくすることができ、検出感度の向上、駆動電圧の低減、デバイスの小型化を図ることができる。このジャイロスコープの使用により、例えばパソコンの座標入力装置等の小型の機器を実現することができる。
【出願人】 【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
【識別番号】000167989
【氏名又は名称】江刺 正喜
【出願日】 平成11年11月9日(1999.11.9)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外7名)
【公開番号】 特開2001−141461(P2001−141461A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−318873