トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験




【発明の名称】 測量機の水平軸の軸受装置及びそのすべり軸受の製造方法
【発明者】 【氏名】三浦 正章

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 視準望遠鏡の光軸と直交する、該視準望遠鏡の鏡枠と一体の水平軸と;測量機枠体に支持した、この水平軸を回転自在に支持するすべり軸受と;を有する軸受装置において、断面円形のすべり軸受の軸受面の底部に、断面において左右対称に逃げ凹部を形成し、上記水平軸とすべり軸受とをこの逃げ凹部において非接触とし、該逃げ凹部の両端部において接触させることを特徴とする測量機の水平軸の軸受装置。
【請求項2】 請求項1記載の軸受装置において、すべり軸受の軸受面に、固体潤滑膜が形成されている測量機の水平軸の軸受装置。
【請求項3】 請求項2記載の軸受装置において、固体潤滑膜の厚さが0.002〜0.05mmであり、水平軸とすべり軸受の軸受面の呼び径の差が0.002〜0.02mmである測量機の水平軸の軸受装置。
【請求項4】 視準望遠鏡の光軸と直交する、該視準望遠鏡の鏡枠と一体の水平軸を回転自在に支持するすべり軸受の製造方法において、水平軸の金属材料と熱膨張係数が同一または近似した金属材料から断面円形の軸受面を有するすべり軸受基体を形成するステップ;このすべり軸受基体の軸受面に、断面において左右対称に逃げ凹部を形成するステップ;この軸受面及び逃げ凹部の内面に固体潤滑膜を塗布焼き付けするステップ;及び上記逃げ凹部を除く固体潤滑膜を仕上げ加工して水平軸との接触面を形成するステップ;を有することを特徴とする測量機の水平軸のすべり軸受の製造方法。
【請求項5】 請求項4記載の製造方法において、固体潤滑膜の塗布焼き付け時の厚さを0.02〜0.1mmとし、同固体潤滑膜の仕上げ加工後の厚さを0.002〜0.05mmとした測量機のすべり軸受の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【技術分野】本発明は、鉛直面内での測角機能を有する測量機の水平軸の軸受装置、及びそのすべり軸受の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術及びその問題点】セオドライトや光波測距機等の測角機能を有する測量機は、視準望遠鏡の光軸と直交する、該視準望遠鏡の鏡枠と一体の水平軸を、測量機枠体に支持したすべり軸受に往復回動自在に支持するという基本構造を有する。
【0003】このような鉛直面内での測角機能を有する測量機では、視準望遠鏡を正逆に回転するとき、水平軸とすべり軸受の間に存在するクリアランスにより、水平軸の中心の移動が避けられず、この水平軸の中心移動は、測定誤差を発生させる。この水平軸の中心移動を小さくするため、従来、水平軸とすべり軸受の間のクリアランスをできるだけ小さくする各種の試みがなされてきた。
【0004】また測量機は、−30℃程度の氷点下から+60℃程度の炎熱下の使用環境に対処できる仕様を要求される。このため、水平軸とすべり軸受は、熱膨張係数が同一または極めて近似した材料から構成しているが、、水平軸とすべり軸受を同一の材料から構成した上で、クリアランスを小さくすると、かじりが発生しやすくなるという問題点がある。
【0005】
【発明の目的】本発明は、視準望遠鏡を正逆に往復回動させるときの水平軸の移動が生じにくく、かつ広い温度範囲でかじりが発生しにくい測量機の水平軸の軸受装置を得ることを目的とする。
【0006】
【発明の概要】本発明の軸受装置は、単純にクリアランスを小さくするという発想ではなく、軸が水平軸であることを踏まえてすべり軸受の内面形状に改良を施すことにより、水平軸の水平移動が生じにくい軸受構造を得たものである。
【0007】本発明は、視準望遠鏡の光軸と直交する、該視準望遠鏡の鏡枠と一体の水平軸と;測量機枠体に支持した、この水平軸を回転自在に支持するすべり軸受と;を有する軸受装置において、断面円形のすべり軸受の軸受面の底部に、断面において左右対称に逃げ凹部を形成し、水平軸とすべり軸受の軸受面とをこの逃げ凹部において非接触とし、該逃げ凹部の両端部において接触させることを特徴としている。このすべり軸受の断面形状によると、水平軸が実質的に逃げ凹部の両端部においてすべり軸受に接触するため、水平軸を正逆いずれに回動させてもその軸心の移動を防止し、または最小にすることができる。
【0008】このすべり軸受の内面には、固体潤滑膜を形成することが望ましい。固体潤滑膜は、例えば、ポリイミド樹脂に、フッ素または二硫化モリブデンと、各種酸化金属とを混合した材料から形成することができる。この固体潤滑膜の厚さは、0.002〜0.05mmとし、水平軸とすべり軸受の呼び径の差を0.002〜0.02mmとすることが好ましい。呼び径の差は、より好ましくは、0.002〜0.01mmとするのがよい。
【0009】また、本発明は、視準望遠鏡の光軸と直交する、該視準望遠鏡の鏡枠と一体の水平軸を回転自在に支持するすべり軸受の製造方法の態様では、水平軸の金属材料と熱膨張係数が同一または近似した金属材料から断面円形の軸受面を有するすべり軸受基体を形成するステップ;このすべり軸受基体の軸受面に、断面において左右対称に逃げ凹部を形成するステップ;この軸受面及び逃げ凹部の内面に固体潤滑膜を塗布焼き付けするステップ;及び逃げ凹部を除く固体潤滑膜を仕上げ加工して水平軸との接触面を形成するステップ;を有することを特徴としている。「熱膨張係数が同一または近似」とは、水平軸の軸径が25〜30mm程度のとき、使用環境温度範囲での水平軸とすべり軸受のクリアランスの変化が0〜0.002mm以下となることを言う。
【0010】固体潤滑膜は、塗布焼き付け時には0.02〜0.1mmの厚さとし、これに研磨加工を施して、仕上げ加工後の厚さを0.002〜0.05mmの範囲で均一な厚さにすることが好ましい。塗布焼き付け時の厚さが、0.02mm未満では仕上げ研磨加工時の偏心によりすべり軸受基材が露出して固体潤滑膜層が残らない部分が出る可能性がある。また、0.1mmを超えると、仕上げ研磨加工時に砥石が目詰まりを起こしやすく、加工時間のロス、コストアップ要因となる。また仕上げ加工後の厚さが0.002mm未満では、長期に渡る安定した潤滑効果を期待できず、0.05mmを超えると、固体潤滑膜層の熱膨張係数と軸や軸受材の熱膨張係数の差から、使用温度環境でのクリアランスの変化が大きくなるので望ましくない。
【0011】固体潤滑膜は、単純な軸とすべり軸受の関係では、すべり軸受と軸のいずれか又は双方に形成することができるが、測量機の水平軸では、水平軸が連続回転するわけではなく、往復回動するだけである。このため局部的に接触負荷がかかり固体潤滑膜にへこみや傷が付く可能性があるので、すべり軸受側に形成することが必須である。仮に軸側に形成すると、固体潤滑膜に偏摩耗が発生し、円滑な回動ができない。これに対し、すべり軸受側に固体潤滑膜を形成すれば、仮に軸との接触部、つまり逃げ凹部の両端部に摩耗が生じても、軸の支持には影響を与えない。
【0012】
【発明の実施形態】図1は、測角機能を有する測量機として光波測距機(トータルステーション)10を示している。視準望遠鏡11の鏡枠には、その光軸に直交させて左右に水平軸12が固定されており、光波測距機10の枠体には、この水平軸12を回転自在に支持したすべり軸受20が固定されている。左右の水平軸12の一方には、スリット円板14が固定されており、光波測距機10の枠体にはこのスリット円板14と対をなしてエンコーダを構成するサブスケール15が固定されている。光波測距機10の枠体には、スリット円板14とサブスケール15を挟んで、図示しない発光素子と受光素子が固定されており、発光素子の光がスリット円板14とサブスケール15を透過した後、パルスとして受光素子で受光される。基準位置からのパルス数をカウントすることにより、水平軸12の回転角、つまりは視準望遠鏡11の回転角が測定される。これらの測角技術は、周知である。
【0013】図2は、本発明によるすべり軸受20の第一の実施形態を示している。すべり軸受20は、水平軸12と同じ金属材料、例えば機械構造用炭素鋼(SC材)から構成されており、その周囲に取付フランジ21を一体に有している。すべり軸受20の加工時には、まずその内周面に断面円形の軸受面20aが形成され、次に、その底部(下部)に、軸直交断面において左右対称に、逃げ凹部22が形成されている。この逃げ凹部22の大きさは、すべり軸受20内に挿入した水平軸12が該凹部22に接触することがなく、該逃げ凹部22の両端部22eにおいて水平軸12が接触する大きさである。図では、逃げ凹部22の大きさ、及び水平軸12の外径dとすべり軸受20の内径Dとの差を誇張して描いており、実際には、水平軸12の外径dが25〜30mmのとき、この外径dとすべり軸受20の軸受面20aの内径Dとの差(呼び径の差)は、0.002〜0.02mmに設定されている。この呼び径の差が0.002mm未満であると、かじりが発生しやすく、0.02mmを超えると、水平軸12のすべり軸受20内での遊びが問題になる。遊びを小さくするには、呼び径の差の上限を0.01mmとするのがよい。
【0014】以上の軸受装置によると、水平軸12は自重により常にすべり軸受20の逃げ凹部22の両端部22eに当接して支持される。このため、視準望遠鏡11を正逆に回転させても、水平軸12の軸心12xが移動する可能性は非常に小さい。
【0015】図3は、図2のすべり軸受20の内面に、固体潤滑膜23を形成した実施形態である。固体潤滑膜23は、例えば、フッ素または二硫化モリブデンを含む樹脂からなるもので、すべり軸受20の軸受面20aの内面加工及び逃げ凹部22の加工を施した後、軸受面20aと逃げ凹部22の内面に塗布され焼き付けされる。塗布は、具体的には、非塗布部をマスキングした上で、溶剤にて希釈した固体潤滑液をスプレーしたり、筆塗りで行うことができ、焼き付けは、焼き付け温度180℃、焼き付け時間60分程度の条件で行うことができる。
【0016】図4の一点鎖線23aは、固体潤滑膜23の塗布焼き付け時の形状を模式的に示している。この塗布焼き付け時の厚さtは、0.02〜0.1mmである。このように塗布され焼き付けられた固体潤滑膜23には、仕上げ加工後の厚さpが0.002〜0.05mmの範囲で均一な厚さとなるように、研磨加工が施される。
【0017】この実施形態では、水平軸12の外径dが25〜30mmのとき、この外径dとすべり軸受20の軸受面20a(固体潤滑膜23)の内径Dとの差(呼び径の差)は、0.002mm〜0.01mmに設定されている。固体潤滑膜23は、逃げ凹部22の内面にも塗布焼き付けされるが、固体潤滑膜23内面の仕上げ加工(研磨加工)においては、逃げ凹部22に塗布されている固体潤滑膜23に仕上げ加工を施す必要はない(施さない)。
【0018】すべり軸受20の内面に固体潤滑膜23を形成すると、水平軸12とすべり軸受20とが同一または同種金属からなるときにも、かじりが発生しにくく、かつ温度環境が−30℃〜+60℃に変化しても、かじりが発生しない。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、鉛直面内での測角機能を有する測量機において、視準望遠鏡を正逆に往復回動させるときの水平軸の移動が生じにくく、かつ広い温度範囲でかじりが発生しにくい軸受装置を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000116998
【氏名又は名称】旭精密株式会社
【出願日】 平成11年11月17日(1999.11.17)
【代理人】 【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
【公開番号】 特開2001−141458(P2001−141458A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−326858