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【発明の名称】 振動ジャイロおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】山本 泉

【氏名】柳沢 徹

【要約】 【課題】振動ジャイロの感度を向上し、小型化を容易にする。

【解決手段】一つの基部と基部から伸びる4本の脚を持つ水晶からなる4脚音叉を振動ジャイロとし、音叉の溝を脚幅の0.6倍以上とした。これにより、水晶の異方性の結果、駆動振動では駆動脚の振幅が大きく、検出振動では検出振動の振幅が大きくなるので、駆動脚に働くコリオリ力に基づく振動を拡大して検出できるようになり、感度が向上した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一つの基部と該基部から同方向に伸びる4本の脚を持ち水晶を材質とする音叉からなる振動ジャイロであり、隣合う脚の間隔が該脚の幅の0.6倍以上であることを特徴とする振動ジャイロ。
【請求項2】 請求項1記載の振動ジャイロであり、前記音叉の脚が伸びる方向が水晶の結晶軸のX軸方向に垂直でありY軸方向からZ軸方向へ向かって−10度乃至+10度回転した方向であることを特徴とする振動ジャイロ。
【請求項3】 請求項2記載の振動ジャイロであり、前記4本の脚を分離する2本の溝を有し、該溝の内XY’面に平行な溝aの方がY’Z’面に平行な溝bよりも深いことを特徴とする振動ジャイロ。
【請求項4】 請求項2又は3記載の振動ジャイロであり、前記溝aより−Z’側にある2本の脚の両方または一方を駆動し、前記溝aより+Z’側にある2本の脚の両方または一方を用いて検出を行うことを特徴とする振動ジャイロ。
【請求項5】 一つの基部と該基部から同方向に伸びる4本の脚を持つ音叉からなる振動ジャイロの製造方法であり、該音叉の隣り合う脚の間の溝を該溝の両端の研削を行った後に残部を研削することで形成すること特徴とする振動ジャイロの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、角速度を検出するために用いられる振動ジャイロおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】家庭用ビデオカメラの手ぶれ防止機構やカーナビゲーションシステムの位置検出機構などに、手ぶれの検出および車体の回転角度を検出するための振動ジャイロが用いられている。物理法則によれば、角速度Ωで回転する座標系から見て運動する物体にはその相対速度Vに比例したコリオリ力Fcが速度と直交する方向に作用し、その大きさと方向は次式で現される。
Fc=2mV×Ωここで、mはコリオリ力が作用する物体の質量である。
【0003】振動ジャイロは振動によって物体の運動を発生させることで、振動方向に直交する方向に作用するコリオリ力を捉えて回転を検出しようとする角速度センサであり、用いられる振動子には音片型、音叉型などの様々な形が提案されている。
【0004】このうち、発生させる振動である駆動振動とコリオリ力によって引き起こされる検出振動の双方が振動子の支持方法の影響を受けないものとして、一つの基部1と基部1から同一の方向に伸びる4本の脚3を持つ図12に示す様な4脚音叉が特開平4−324311号公報などで提案されている。
【0005】この様な4脚音叉は等方性材料を用いた場合図13〜図18に示す6個の振動モードを持つ。図は4脚音叉の脚部の断面を示したものであり、矢印はある瞬間の各脚の振動方向を表している。振動モードa(図13)は隣り合う2本の脚の振動面が直交するモードであり、隣り合う2本の脚が互いに近づく時はそれと直交する2本の脚は互いに離れるモードである。振動モードb(図14)は隣り合う2本の脚の振動面が直交するモードであり、隣り合う2本の脚が互いに近づく時はそれと直交する2本の脚も互いに近づき、脚が全体に近づいたり離れたりするモードである。振動モードc(図15)は隣り合う2本の脚の振動面が直交するモードであり、対角上の2本の脚が近づく時はそれと直交する2本の脚は離れるモードである。振動モードd(図16)は全ての脚の振動面が平行なモードであり、対角上の2本の脚は互いに同相であり、対角上の2本の脚の組とそれと直交する2本の脚の組は逆相のモードである。振動モードe(図17)は振動モードdの振動面を90度回転したモードである。振動モードdと振動モードeは、振動方向が異なるだけで双子のモードである。脚断面が正方形の特別な場合には振動モードdと振動モードeの振動面は図19、図20に示すように脚の対角線に平行となる。振動モードf(図18)は脚と基部が逆方向に回転する捻りモードである。
【0006】コリオリ力は駆動振動に直交して働くので駆動振動の振動面と検出振動の振動面は直交するように選ぶのが効率が良いことから、振動モードa(図13)と振動モードc(図15)の組合せ、あるいは振動モードd(図16)と振動モードe(図17)の組合せがそれぞれ駆動振動と検出振動として利用される。電気学会論文誌E,Vol.118−E,377−383(1998)にあるように、振動ジャイロの感度は振動体の共振周波数に反比例するので、同じ構造であれば振動体が小さいほど共振周波数は高くなるため感度は悪くなる。従って、必要な感度に対する大きさには制限があり、感度と大きさの両者を考慮して設計が行われる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の技術では感度が不十分であり、小型化が困難であるという課題があった。
【0008】上記課題を解決するため、本発明の目的は、感度が良く小型化が容易な振動ジャイロを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の振動ジャイロは、一つの基部と該基部から同方向に伸びる4本の脚を持ち水晶を材質とする音叉からなり、隣合う脚の間隔が該脚の幅の0.6倍以上であることを特徴とする。
【0010】本発明の振動ジャイロは音叉の脚が伸びる方向が水晶の結晶軸のX軸方向に垂直でありY軸方向からZ軸方向へ向かって−10度乃至+10度回転した方向であることを特徴とする。
【0011】本発明の振動ジャイロは、前記4本の脚を分離する溝を有し、該溝の内XY’面に平行な溝aの方がY’Z’面に平行な溝bよりも深いことを特徴とする。
【0012】本発明の振動ジャイロは、前記溝aより−Z’側にある2本の脚の両方または一方を駆動し、前記溝aより+Z’側にある2本の脚の両方または一方を用いて検出を行うことを特徴とする。
【0013】本発明の振動ジャイロの製造方法は、一つの基部と該基部から同方向に伸びる4本の脚を持ち水晶を材質とする音叉の製造方法であり、音叉の隣り合う脚の間の溝を該溝の両端の研削を行った後に残部を研削することで形成すること特徴とする。
【0014】本発明の様な構造をとると、水晶の弾性的な異方性の結果、駆動振動においては駆動脚の振幅の方が検出脚の振幅よりも大きくなり、また、コリオリ力が働いた場合に生じる検出振動においては駆動脚の脚の振幅よりも検出脚の振幅の方が大きくすることができるので、駆動脚に働いたコリオリ力によって生じる振動を検出脚では拡大して検出することができ感度が向上する。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明による実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】(実施例)図1は本発明による振動ジャイロの実施の形態を示す図であり、直方体からなる基部1に同一方向に伸びる4本の脚3を有す。材質は水晶である。水晶は良く知られるようにSiO2の単結晶で、4つの結晶軸を有する三方晶系に属する。結晶軸の一つはc軸と呼ばれ3回対称軸である。残りの三つはa軸と呼ばれ、c軸に垂直な面内に互いに120度の角度を成す2回対称軸である。ここでは、三つのa軸のいずれかをX軸とし、c軸をZ軸とし、X軸およびZ軸に直交する方向にY軸をとる。Z軸およびY軸をX軸の周りにY軸からZ軸の方向に向かって角度θ=−10度〜10度の範囲で回転させたものをZ’軸およびY’軸とすると、本発明の振動ジャイロは、4つの脚の伸びる方向がY’軸に平行であり、各辺がそれぞれY’軸、Z’軸、およびX軸に平行である。また、X方向から見た脚の長さは、Z’方向から見た脚の長さより5±3%程度長く形成されている。即ち、XY’面に平行な溝a5の方がZ’Y’面に平行な溝b7より深い。
【0017】水晶はその結晶的な異方性の結果として弾性係数が方向によって異なるため、弾性的な異方性を有することが知られている。このため、本発明の振動ジャイロでは幾何学的には溝a5および溝b7に対して対称であるにもかかわらず、振動状態が対称ではない振動モードが存在する。本発明はこの異方性を利用したものである。駆動振動として利用する振動モードαおよび検出振動として利用する振動モードβでの脚の動きを図2と図3にそれぞれ示す。図はY’軸から見た脚の動きを表現しており、矢印はある瞬間の変位の大きさと向きを現している。説明を簡単にするため各脚の呼び方を次のように定義する。溝aより−Z’側かつ溝bより−X側にある脚を第1の脚9、溝aより−Z側かつ溝bより+X側にある脚を第2の脚11、溝aより+Z’側かつ溝bより+X側にある脚を第3の脚13、溝aより+Z’側かつ溝bより−X側にある脚を第4の脚15と呼ぶことにする。前述したように振動モードαは駆動振動モードとして利用され、振動モードβは検出モードとして利用される。振動モードαと振動モードβは互いに隣り合うモードである。振動モードαは各脚の振動面がX軸方向に平行のモードであり、第1の脚9、第4の脚15と第2の脚11、第3の脚13が互いに逆相なモードである。振幅は第1の脚9、第2の脚11の方が第3の脚13、第4の脚15より大きい。一方、振動モードβはX方向の振動に関しては、第1の脚9、第2の脚11と第3の脚13、第4の脚15が互いに逆相であり、Z’方向の振動に関しては第1の脚9、第4の脚15と第2の脚11、第3の脚13が互いに逆相のモードである。振幅は第3の脚13、第4の脚15の方が第1の脚9、第2の脚11よりも大きい。
【0018】駆動振動の発振は第1、第2の脚を用いて行われ、検出振動の検出は第3、第4の脚を用いて行われる。図4に電極配置と回路ブロック図を示す。第1の脚にはY’Z’面に平行な電極17と電極19がある。電極19は溝bの中にあり、電極17は電極19と対向する面にある。また、第1の脚にはXY’面に平行な電極21と電極23を有す。電極23は溝aの中にあり、電極21は電極23と対向する面にある。第2の脚にはY’Z’面に平行な電極25と電極27がある。電極25は溝bの中にあり、電極27は電極25と対向する面にある。また、第2の脚にはXY’面に平行な電極29と電極31を有す。電極31は溝aの中にあり、電極29は電極31と対向する面にある。第3の脚にはZ’Y’に平行な電極33、電極35、電極37がある。電極37は溝bの中にあり、電極33と電極35は電極極37と対向する面にある。電極33は脚側面の中央より溝aに近い側にあり、電極35は外側にある。第4の脚にはZ’Y’に平行な電極39、電極41、電極43がある。電極39は溝bの中にあり、電極41と電極43は電極39と対向する面にある。電極41は脚側面の中央より溝aに近い側にあり、電極43は外側にある。これらの電極は互いに振動体内部で結ばれ端子D1、端子D2、端子S1、端子S2、端子Gの5つの端子として外部回路に接続される。電極17、電極19、電極29および電極31は互いに結ばれ端子D1に繋げられる。電極21、電極23、電極25および電極27は互いに結ばれ端子D2に繋げられる。電極33と電極41は互いに結ばれて端子S1に繋げられる。電極35と電極43は互いに結ばれて端子S2に繋げられる。電極37と電極39は端子Gに繋げられる。
【0019】外部回路との接続は次の様である。端子D1とD2は発振回路45に繋げられ、X方向への振動が励振される。発振回路45の信号は移相回路47を介して検波回路49に入力される。一方、コリオリ力によるZ’方向振動を検出する端子S1、端子S2は差動増幅回路51へ接続される。差動増幅回路51の出力は検波回路49へ入力され出力増幅回路53を経て角速度に比例した直流電圧が取り出される。また、端子Gは接地される。
【0020】前述したように、第1、第2の脚をX方向に励振した駆動振動(振動モードα)では、検出脚である第3、第4の脚の振動は小さい。その度合は脚幅Wに対する溝幅wの割合で異なり、図5に示すような依存性を示す。例えば脚幅Wと溝幅wの比が1:1では第1、第2の脚の振幅WD1と第3、第4の脚の振幅WD2の比は1:約0.2である。このように駆動振動では第1、第2の脚の振幅の方が大きいので、Y’軸まわりの角速度が発生した時に生じるコリオリ力は主に第1、第2の脚に作用して、第1の脚と第2の脚を互いに逆相にZ’方向に振動させる。一方、検出モードである振動モードβの第3、第4の脚の振幅WS2の第1、第2の脚の振幅WS1に対する割合も図5に示すような溝幅依存性を示すが、今の場合約21倍であり第1、第2の脚の振幅は第3、第4の脚では約21倍の振幅となって増幅される。従って、本発明のように水晶の弾性的な異方性を利用すると小さな角速度が作用しても検出信号を大きくとることができるので、感度が向上する。
【0021】感度向上の程度は上記の理由から、駆動振動における第3、第4の脚の振幅WD2の第1、第2の脚の振幅WD1に対する比の逆数(WD1/WD2)と検出振動における第3、第4の脚の振幅WS2の第1、第2の脚の振幅WS1に対する比(WS2/WS1)との積(以下、この積を感度係数と呼ぶことにする)に比例すると考えられる。感度係数は図5に示すような溝幅依存性がある。図5からわかるように、感度係数は溝幅が脚幅に対して0.5倍以下では小さく、0.5倍以上で急激に大きくなり0.7倍付近で最大となる。それ以上では逆に低下するが、1倍以上でほぼ一定となる。これらのことから、溝幅は脚幅に対して0.6倍以上が望ましく、0.6倍〜0.8倍であることが最も望ましい。
【0022】次に加工方法を説明する。上述したように本発明における溝幅は脚幅に対して0.6以上であることが良い。従って、脚幅を1mmとした場合溝幅は0.6mm以上が良いが、このような幅の溝を形成するには一般に音叉加工に使われているような鉄製のワイヤを用いたワイヤーソーではワイヤーの径が太すぎてワイヤの巻き取りが困難となるので現実的でない。また、ダイシングソーのような円盤状の砥石を用いた加工では加工に伴い砥石が摩耗するため溝幅が一定とならず量産性がない。以上の困難を解決するため、本発明では溝の形成をワイヤソーとダイシングソーの組み合わせで行う。以下、図6〜図11を基に加工手順を説明する。
【0023】まず、Y’軸を厚み方向に、縦、横の稜線をそれぞれZ’軸、X軸と平行として水晶板55を切り出して両面をラッピングする。続いて、水晶板55をガラス板57にワックスを用いて貼り付け、Z’軸がワイヤーと平行となるようにワイヤーソーにセットする。ワイヤー径dは溝幅wの2分の1以下、ワイヤーのピッチは(w−d)として溝の両端を所定の深さまで加工する(図7)。この時の加工深さがZ’方向から見た脚の長さとなる。次に、脚幅Wと溝幅wとの和(W+w)の距離だけ水晶板をX方向にずらして、水晶板が切断され、ガラス板が切断されない深さの加工を行う(図8)。このようにすると、ピッチ(w−d)の2本のワイヤーがピッチ(2W+2d)で繰り返されるようにワイヤーを張っておけば、脚幅Wの加工ができる。さらに、水晶板を90度回転して同様の加工を行ってX軸に平行な溝加工と切断を行う。その後、ワイヤーソーから外してダイシングソーにセットして、溝内の残部を研削して除去する。用いる砥石は円盤状で、厚みを残部の厚み(w−2d)より大きく、溝幅wより小さくする。例えば厚みを(w−d)にすると、位置ずれがdだけあっても加工が可能であり、ワイヤーソーからダイシングソーへの付け替えによる誤差を吸収することができる。ダイシングソーの加工の際に溝の残部の剛性が不足して加工途中で折れるなどの問題が生じる場合はワイヤーソーから外した後、ガラス板との接合に用いたワックスより融点が低いワックスを含浸させて補強を行うと良い。ワックスを溶剤により除去すると4脚音叉が多数個得られる(図11)。その後、スパッタリングあるいは真空蒸着によって電極の形成を行うと4脚音叉が完成する。
【0024】完成した4脚音叉は気密端子を備えたベースに取り付けられ音叉上の端子と気密端子との間の配線が行われる。配線はワイヤーボンディングで行われるのが一般的だが、FPCを用いて接合しても良い。この場合、音叉上の端子とFPCは異方性導電膜を用いて接合すると良い。最後に内部を真空にした状態でキャップが被せられる。真空封止された素子は配線基板に実装された上、ケースに収めれば振動ジャイロとして完成する。
【0025】以上述べたように、本実施例では駆動脚として第1、第2の脚の両方を用いた例を示したが、どちらか一方を用いても良い。また、本実施例では検出脚として第3、第4の脚の両方を用いた例を示したが、どちらか一方からの信号を用いても良い。また、本発明は駆動振動においては駆動脚を大きく、検出脚を小さく振動させ、角速度によって生じる検出振動においては検出脚の振動を駆動脚より大きくすることが本質であり、本実施例において示したような電極配置および駆動検出方法以外でも良いことは言うまでもないことである。
【0026】
【発明の効果】以上に記したように、本発明によれば、感度が良い振動ジャイロを実現でき、小型化できるという効果がある。また、精度の良い多数個の振動ジャイロを得ることができるという効果がある。
【出願人】 【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
【出願日】 平成11年10月26日(1999.10.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−124560(P2001−124560A)
【公開日】 平成13年5月11日(2001.5.11)
【出願番号】 特願平11−303874