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【発明の名称】 歩数計
【発明者】 【氏名】伊東 新一

【要約】 【課題】身体の上下動を検知する従来方式に代えて、脚の前後の運び角度を検知する方式に基づく、より正確な歩数および歩行距離を計測できる歩数計を提供する。

【解決手段】歩行時における片脚の運びに伴う前後方向の振れ角度を、脚の前後の振りにより生じる加速度の影響を受けずに計測できる傾斜角センサを使用する。この歩数計を脚に装着歩行した時の脚の開脚角度の変化は、一種の周期的な時間関数となり、正負のピーク振れ角度の頻度から歩数の計数が可能になる。また、脚の振れ角度と移動幅とを関係づける評価式を演算処理・記録回路部に組み込んでおくことにより、右脚の運びに伴う移動幅を逐次計算し、その積算から歩行距離が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 歩行動作における片脚の運びに伴う脚の前後方向の振れ角度を、脚の運びにより生ずる加速度の影響を受けずに計測できる傾斜角センサと、傾斜角センサからの振れ角度の計測データを時系列的に取り込んで、データ処理する演算処理・記録回路部とからなる歩数計において、演算処理・記録回路部は、振れ角度データにおける正負のピーク角度を判別し、その頻度数から歩数を計算すること、片脚の前後方向の開脚角度に係わる隣り合う正負のピーク角度の各正接値の絶対値の和に、歩行者の脚長を乗ずることから得られる片脚の移動幅の積算から歩行距離を計算すること、さらに歩行運動による消費エネルギーを計算することを特徴とする歩数計。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】 本発明は、歩行時における片脚の運びに伴う脚の前後方向の振れ角度を、脚の前後の運びにより生じる加速度の影響を受けずに計測できる傾斜角センサ(特許第2897128号)を使って、歩行者の歩数及び歩行距離等を計測する歩数計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】 従来の全ての歩数計は、歩行時における身体の上下動を検知するセンサ、例えば、振り子型や加速度センサ型等により歩数を計測する方式である。そして、歩行距離は、歩行者自身の歩幅を事前に入力する方法や歩行運動の状態に対応した歩幅データから選択する方法等により計算される。また、入力設定を歩行状態に合わせてその都度変更する煩わしさを避けるために、例えば、特開平8−77322の場合のように、体動データを取り込んで歩幅データから自動的に選択する方式もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】 歩行時における身体の上下動を検知する方式に基づく従来の歩数計の場合、正確な歩数の計測をするためには、歩行者の歩き方(摺り足歩き、蹴りの強弱、走り歩き等)、歩行面の硬軟や着用する靴の形状材質などの条件に対応できるように、センサの検出感度を調整する機能が必要になる。近年、この様な調整機能を有する歩数計も提案されているが、上下動の全ての状態に自動的に対応できるようにすることは、困難であり、また少しでも感度性能の向上を図る場合でも、ハード及びソフトの面でシステム構成が複雑化することは避けられない。
【0004】 次に、歩行距離の計算は、一般には事前に入力設定する歩幅、もしくは複数の歩幅データからの選択による方式であるが、実際の歩幅は、歩行者の意志や外部条件によって様々に変化する故、歩行距離は実際とは違ってしまう。また、体動量の計測結果に基づいて歩幅を選択する方式も、歩幅に直接的に関係する体動量を計測しない限り様々な歩行状態の歩幅を適切に評価することは困難であり、従って、振り子型や加速度センサ型の方式では対応できない。
【0005】 本発明は、歩行時における片脚の運びに伴う前後方向の振れ角度を、脚の前後の運びにより生じる加速度の影響を受けずに計測できる傾斜角センサを使って、歩行者の歩数及び歩行距離等を計測する歩数計を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】 上記の目的を達成するために、請求項1記載の歩数計は、歩行時における片脚の運びに伴う前後方向の振れ角度を、脚の前後の運びにより生じる加速度の影響を受けずに計測できる傾斜角センサ(特許第2897128号)を使用して、片脚の前後の運びに伴う振れ角度の変化を時系列的に連続して取り込み、演算処理・記録回路部でデータ処理することにより歩数及び歩行距離等を算出することを特徴としている。
【0007】
【作用】 人の歩行は、2本の脚を前後にそして交互に動かすことにより可能になる。従って、この脚の動作を計測することが歩行状態を正しく把握することになる。本発明の歩数計を脚に装着して直立した時の傾斜角センサの指示値を基準とした場合、歩行開始とともに脚の前後の運びに合わせて傾斜角センサは基準値を中心として正負の角度を示す。即ち、脚の開脚角度の変化は、一種の周期的な時間関数となり、正のピーク振れ角度は、歩数計を装着した右脚を一歩踏み出して着地した場合に対応し、負のピーク振れ角度は、左脚を一歩踏み出し着地したことに伴って右脚が後方に振れ、足先が地面から離れる場合に対応している。その結果、正負のピーク振れ角度の頻度から歩数の計数が可能になる。また、右脚の前後の振れ角度の大きさは、右脚の各一歩で進みうる移動幅と密接に関連し、そして移動幅の大きさは、歩行者の脚長によって規定される。従って、脚の振れ角度と移動幅とを関係づける評価式を演算処理・記録回路部に組み込んでおくことにより、右脚の運びに伴う移動幅を逐次計算し、その積算から歩行距離が得られる。
【0008】
【実施例】 本発明の実施例について説明する。以下の説明に当たっては、必要により人体の脚をその上部から大腿部、下腿部、足とに分類するものとする。図1は、本発明の歩数計の基本システム構成を示す。図2(a)は、歩行開始からの左右の足の運びを図示したものであり、歩行時の足の動作位置は、歩行開始時の両足をそろえた状態から右足が一歩前に出て(右脚が利き足の場合)、次に左足が、続いて右足がという順序になるが、右足の運びのみに注目した場合、右足の各一歩の移動距離を移動幅と定義し、「SR」で示すものとする。通常使われている歩幅は、右足と左足間の足の位置の距離を意味し、同図における「S」で示すものである。
【0009】 次に、本発明の歩数計を右脚の大腿部に装着して歩行した場合に、傾斜角センサ1において計測される右脚の前後の運びに対応する振れ角度の時間変化の想定パターンは、図2(b)のようになる(参考のために左脚の場合も点線で図示)。即ち、同図(a)及び歩行時の脚の前後の運びを示す同図(c)との対比から、(1)歩行開始■とともに右脚が1歩進み■、着地した時〔(SR)〕には、右脚大腿部はすでに前方に振れており〔正方向のピーク角度:θ〕、(2)次に左足が地面を蹴って■前方に踏み出し■、着地した時■、右脚大腿部は後方に振れ〔負方向のピーク角度:θ〕、(3)次に右脚が地面を蹴って前方に踏み出して■、着地した時〔(SR)〕、右脚大腿部は前方に振れている〔正方向のピーク角度:θ〕ということを示している。このことから、図2(b)に示す右脚の振れ角度の時間変化において、正のピーク角度θは、右脚の歩行動作に対応し、負のピーク角度θは、左脚の歩行動作に伴う右脚の動作に対応している故、この正負のピーク角度の頻度が歩数を意味していることになり、従って歩数の計数は、振れ角度データにおける正負のピーク角度の有無を判別してこの頻度を計数すればよい。
【0010】 歩行距離(L)は、図2(a)より、L={Σ(SR)i}i=1、nと定義するものとし、次に、右脚のi番目の移動幅(SR)iは、右脚の前後方向の振れ角度に係わる一対の正負のピーク角度(θ)i及び(θ)iのtan成分の絶対値、即ち|tan(θ)i|及び|tan(θ)i|に密接に関連づけられることに着目する。それ故、歩行者の脚長をLhとすれば、移動幅(SR)iは、下式で近似できる。
(SR)i=K*Lh*{|tan(θ)|i+|tan(θ)i|} i=2,n−1K: 補正係数但し、i=1の場合、(SR)=K*Lh*{|tan(θ)i|}: 右脚の歩行開始の第1歩i=nの場合、(SR)n=K*Lh*{|tan(θ)i|}: 右脚の歩行終了の第n歩補正係数Kは、歩行者の歩き方の特徴、いわば、癖(例えば、足の下腿部や足首の使い方、歩く姿勢など)を反映させるためのものであり、個人差があると考える。従って、歩数計の使用者が自分に最適な補正係数Kを設定したい場合には、一定の短い距離を色々な歩行条件で、例えば移動幅や歩行ピッチを変化させて歩行試験をすることにより、補正係数Kを決めることが出来る。この場合、補正係数Kを一定値とすることや、歩行ピッチ依存にすることなど様々な表示形式が考えられる。他方、補正係数Kの簡易な設定方法を希望する使用者に対しては、歩数計の製造者側において上述した試験を、男女別、年齢別、脚長(又は、身長)別等に分類して実施し、各分類条件に対応した補正係数Kを事前に決定しておき、使用者は単に男女、年齢、身長などを入力するだけで補正係数Kを自動的に設定できるようにする。
【0011】 図1の演算処理・記録回路部2は、上述した歩数や歩行距離の計算処理、及び補正係数Kの計算処理を実行するとともに、これらの結果及び残すべき計測結果を記録保存するハードとソフトの機能を有し、データ入力部6は、条件設定するためのものであり、歩行試験により使用者固有の条件設定する場合と簡易設定する場合との選択ができる機能も含む。
【0012】 さらに、演算処理・記録回路部2は、正負のピーク角度の時間間隔から歩行ピッチの計算、及び通常のいわゆる歩幅(図2(a)のSとし,右脚:K*Lh*{|tan(θ)i|}、左脚:K*Lh*{|tan(θ)i|} と近似する)を各1歩ごとに計算をする機能を有するとともに、歩行運動による消費エネルギーの計算についても、様々な移動幅や歩行ピッチの消費エネルギーを事前に評価しておくことにより、従来の歩数計より実際に近い消費エネルギー計算が可能になると考える。また、ピーク角度の変化パターンを判別する機能を持たせることにより、階段の上り下りの有無についても認識できるようになるだろう。歩行者が歩行をやめて立ち止まったり、座ったり、もしくは腰掛けたりした場合については、一定時間を越えて特定の振れ角度を継続して計測した時、歩行状態に無いと判断する機能を持たせる。
【0013】 歩数計の形体としては、図1のシステム構成全体を一体化した「単一型」、及び傾斜角センサ1と演算処理・記録回路部2などを一体化して本体部とし、表示部3とデータ入力部6を一体化して表示操作部とした「分離型」の2種類の方式が考えられる。特に、後者は、本体部が小型になる故、装着が容易になる。その結果、この表示操作部のサイズを大きくすることが出来るため、表示画面が大きくなり色々なデータを同時に表示できる。また、メモリ容量を増やすことにより過去の歩行データの保存やウオーキングした場所を記録するための地図など収納するとともに、これらのデータを加工する機能も併せ持たせることが可能になる。その他の応用として、歩数計を携帯電話などとリンクさせ、得られる歩行データから歩行状態をリアルタイム分析することも考えられる。
【0014】 次に、歩数計の装着例を以下に示す。但し、装着のための必須条件は、計測に適した場所に簡単に装着できることである。
(1)例1(図3(a)) 伸縮性があり、かつ適度な締め付け力がある広幅のゴムバンド8の表側の一部に面ファスナー9を取り付け、他方、歩数計10にも面ファスナー9を取り付ける。このゴムバンド8を脚の大腿部に装着し、面ファスナー9が大腿部の外側(又は、内側)にくるようにする。そして、歩数計10の面ファスナー9側と対向させ、押しつけることにより固着する。この方式は、面ファスナー9の着脱が容易で、かつ比較的しっかりと固着できる点に着目したのであるが、この他にも色々な方法が考えられる。歩数計10は、本体部のみを装着すればよい「分離型」が、小型であるため適切である。さらに、脚の大腿部に装着するゴムバンド方式の場合、肌に密着させる必要がある小型の脈拍計や血圧計なども一緒に付属させ、計測することにより、歩行時の身体状況を多角的に把握できるようになる。また、大腿部にまで届く長いストッキング11を着用する場合、大腿部外側の位置に対応するストッキング11の一部分に小さな仮ポケット12を設け、そこに歩数計(分離型)を入れる方法も考えられる。この仮ポケット12は、ストッキング11に仮ポケット用の布片を粘着する(不要な場合には、剥がせる)などの方法により設ける。
【0015】 (2)例2(図3(b)) ズボンの脇ポケット13に装着する場合を示す。その時の好ましい位置は、脚の振れ角度を確実に計測するために図中に斜線で示した脇ポケット13内の領域とする。面ファスナー9は、上記領域の脇ポケット13内の布地に接着しておき、これに面ファスナー付きの歩数計を着脱する。この場合、必要に応じて歩数計をいつでも着脱して歩行状況を確認することが出来る。
【0016】
【発明の効果】 以上のように、本発明によれば、歩行時における片脚の運びに伴う前後方向の振れ角度を、脚の前後の振りにより生じる加速度の影響を受けずに計測できる傾斜角センサ(特許第2897128号)を使用して、片脚の前後の運びに伴う振れ角度の変化を時系列的に連続して取り込み、データ処理することにより、身体の上下動を検知する方式に基づく従来の歩数計に比較して、実際の歩行状態に近い歩数及び歩行距離等を計測することが出来る。
【出願人】 【識別番号】598071046
【氏名又は名称】伊東 新一
【出願日】 平成11年10月8日(1999.10.8)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−108479(P2001−108479A)
【公開日】 平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願番号】 特願平11−323080