トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験




【発明の名称】 光干渉角速度計
【発明者】 【氏名】岡田 健一

【要約】 【課題】折り返し雑音の影響を小さくする光干渉角速度計を提供する。

【解決手段】光ファイバコイル4を互いに逆回りに伝播する左右周回光の干渉光強度により入力された回転角速度を検出する光干渉角速度計において、光ファイバコイル4を伝播する左右周回光間に互いに逆極性の光位相差バイアシングを交互に印加する光位相変調器33を具備し、干渉光強度を検出する受光器5、受光器5から得られる電気信号を入力する電気的フィルタ51、電気的フィルタ51のアナログ出力信号のピーク値をサンプリングするピークサンプリング回路52より成るアナログ信号処理部5’を具備し、アナログ信号処理部5’の出力信号をディジタル信号に変換するADコンバータ6を具備し、入力角速度に対応する出力信号を取り出すディジタル信号処理部7を具備する光干渉角速度計。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 光ファイバコイルを互いに逆回りに伝播する左右周回光の干渉光強度により光ファイバコイル軸周りに入力された回転角速度を検出する光干渉角速度計において、光ファイバコイルを伝播する左右周回光間に互いに逆極性の光位相差バイアシングを交互に印加する光位相変調器を具備し、干渉光強度を検出する受光器、受光器から得られる電気信号を入力して特定範囲の周波数成分を取り出す電気的フィルタ、電気的フィルタのアナログ出力信号の正および負のピーク値をサンプリングするピークサンプリング回路より成るアナログ信号処理部を具備し、アナログ信号処理部の出力信号をディジタル信号に変換するADコンバータを具備し、ADコンバータのディジタル出力信号を処理し入力角速度に対応する出力信号を取り出すディジタル信号処理部を具備することを特徴とする光干渉角速度計。
【請求項2】 請求項1に記載される光干渉角速度計において、電気的フィルタは電気的帯域通過フィルタより成り、電気的帯域通過フィルタの中心周波数は光位相差バイアシングの周波数に一致していることを特徴とする光干渉角速度計。
【請求項3】 請求項1および請求項2の内の何れかに記載される光干渉角速度計において、光位相変調器による光位相差バイアシングは両周回光間に±π/2の光位相差を交互に印加するものであることを特徴とする光干渉角速度計。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、光干渉角速度計に関し、特に、受光器から出力される検出信号にAD変換を施すに際して折り返し雑音の影響を小さくしてジャイロ出力のランダムノイズを減少する光干渉角速度計に関する。
【0002】
【従来の技術】図4を参照して従来例を説明する。図4はクローズドループ型光干渉角速度計の従来例を示す。図4において、光源1出射した光は、光カプラ2、光集積回路3の偏光子部31、Y分岐部32を経て、光学路としての光ファイバコイル4の両端に右回り光(CW光)、左回り光(CCW光)として入射される。光ファイバコイル4を伝播するCW光、CCW光は、Y分岐部32の片端に配置した光位相変調器33および光位相変調器34により位相変調される。即ち、光位相変調器33に位相変調信号を印加して光ファイバコイル4の一方の端部においてCW光およびCCW光を位相変調する。これに対して、光位相変調器34にフィードバック位相信号を印加して光ファイバコイル4の他方の端部において両光間の位相差を常にゼロに打ち消す制御をしている。位相変調されたCW光ファイバコイル4の一方のファイバ端に入射する一方、CCW光は、光ファイバコイル4の他方のファイバ端に入射する。CW光は光ファイバコイル4を時計方向に巡回伝播してその他方のファイバ端を介して出射し、光集積回路3に再び送り込まれる。CCW光も、光ファイバコイル4を反時計方向に巡回伝播してその一方のファイバ端を介して出射し、光集積回路3に再び送り込まれる。ここで、光ファイバコイル4の中心軸に関して角速度が入力されると、サニャック効果に基づいてCW光とCCW光の間にサニャック位相差が発生するので、光ファイバコイル4を伝播後の再び光集積回路3に送り込まれたCW光およびCCW光は光集積回路3のY分岐部32において相互に干渉して干渉縞を発生を発生する。この干渉光は偏光子部31、光カプラ2を経て光電変換器である受光器5に受光され、その干渉縞の干渉光強度を電気信号に変換する。この電気信号に基づいて光ファイバコイル4の中心軸回りに入力される角速度を検知することができる。この光干渉角速度計は、CW光およびCCW光に対して入力角速度に基づいて発生したサニャック位相差を打ち消す向きにフィードバック位相を与え、光ファイバコイル4の両光間の位相差を常にゼロに制御するクローズドループ制御が実施され、与えたフィードバック量を測定してこれを入力角速度として検知している。これにより、クローズドループ光干渉角速度計は光源出射光量の変動、光学部伝送損失の変動その他の変動の影響を殆ど受けない。
【0003】ここで、フィードバック位相の与え方について説明する。光電変換された入力角速度に対応する電気信号は受光器5において適切な値に増幅されてからADコンバータ6に供給される。ADコンバータ6においてAD変換されたディジタル電気信号は、ディジタル信号処理部7の同期検波回路72によりクローズドループにおける制御誤差信号が取り出される。
【0004】同期検波回路72から出力されるフィードバック信号は、積分器73により積分され、その積分出力はディジタルフェーズランプ発生回路74に入力され、積分出力に対応した繰り返し周波数の階段状鋸歯状波が生成される。次いで、階段状鋸歯状波はDAコンバータ9においてDA変換され、アナログ量のフィードバック位相信号として光集積回路3に設置される光位相変調器34に印加され、光ファイバコイル4の左右両光間にフィードバック位相差Δφf が発生する。
【0005】このフィードバック位相信号としては、図5に示される如く光ファイバコイル4の光の位相差が2πになったところでリセットされる階段状鋸歯状波(ディジタルフェーズランプ)が利用される。この階段状鋸歯状波の一段の階段の幅は、光フィバコイル4を伝播する光の通過時間τに合わせて設定され、一段の階段の高さは、入力角速度に比例して現われる。光フィバコイル4を伝播する左右両光が受ける階段状鋸歯状波の位相偏移は、互いにτ時間ずれているので両光間に一段の階段の高さに等しい量のフィードバック位相差Δφf が付与される。このフィードバック位相差Δφf はクローズドループ作動状態においてサニャック位相差Δφs と極性が正反対で絶対量が等しいものとして現われる。一方、階段状鋸歯状波の繰返し周波数fは、f=2RΩ/nλ・・・・・・・・(1)
ここで、R:光ファイバコイルの半径n:光ファイバ屈折率λ:光の波長フィードバック位相信号として、図6に示される鋸歯状波を利用することもできる。鋸歯状波の繰返し周波数は、式(1)式と同じであり、入力角速度Ωと比例関係にある。そこで、この周波数のパルス出力をジャイロ出力として取り出すことができる。
【0006】図7を参照して位相差バイアシングの付与について説明する。以上のクローズドループ型光干渉角速度計において、τ時間のパルス幅の矩形波で、+π/4と−π/4の位相変調が交互に加えられる。干渉光の変化率の最大である+π/2と−π/2の点に着目して、両光間には図7(b)に示される如くに+π/2と−π/2が交互に与えられる矩形波状の位相差バイアシングが付与される。
【0007】図7(b)のIの領域は、クローズドループ制御における制御エラーが0の場合、即ち、両光間の位相差が0であることを示す。IIの領域は制御エラーが生じて両光間に位相差Δφε(=Δφs −Δφf )が生じた場合を示す。その結果、図4における受光器5に到達する干渉光Iは位相差バイアシングのΦ1 、Φ2 ・・・・・・、Φ8 に対応して、I1 、I2 ・・・・・・、I8 として現われてくる。Iの領域においてはΦ1 に対応するI1 、Φ2 に対応するI2 、Φ3 に対応するI3 、Φ4 に対応するI4 の間にレベル差はないが、IIの領域においてはΦ5 、Φ7 に対応するI5 、I7 とΦ6 、Φ8 に対応するI6 、I8 間にレベル差が生じる。
【0008】ここで、I1 、I3 、I5 、I7 に対応する干渉光出力をIA として、I2 、I4 、I6 、I8 に対応する干渉光出力をIB とすると、図7(c)の受光光量のグラフを参照して、IA 、IB は次式で表わすことができる。
A =−(P0 /2)sinΔφε・・・・・・・・(2)
B = (P0 /2)sinΔφε・・・・・・・・(3)
A とIB の差ΔIを求めるとΔI=IA −IB=−P0 sinΔφε・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
ここで、P0 :受光器に到達する干渉光の最大値Δφε:制御誤差(位相=Δφs −Δφf
Δφs :サニャック位相差Δφf :フィードバック位相差となる。式(4)は、ΔIを知れば、制御誤差Δφεを知ることができることを示している。この干渉光は、受光器5において光電変換され、増幅器50により増幅された後、ADコンバータ6に入力される。ADコンバータ6においては、干渉光I1 、I2 ・・・・・・に対応した電気信号をそれぞれ逐次読み込み、ディジタル信号に変換する。同期検波回路72はエンコードされたディジタル信号を逐次減算処理し、式(4)に対応するディジタル量を出力する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】検出された干渉光に対応する光電変換されたアナログ信号をADコンバータ6に入力してサンプリングする場合、通常、元のアナログ信号を復元する必要上、サンプリング定理に従って、サンプリング周波数fs は元のアナログ信号の最高周波数fc に対してfs >2fc に設定される。
【0010】ところが、上述した光ファイバジャイロの従来例の場合、図7に示される如くI2 、I2 ・・・・・・で示される受光光量のレベルを読み取るに際して、矩形波のアナログ信号ができる限り変形しないことを必要とする。これには、受光器5からADコンバータ6の前段までに挿入されている図示されない低域通過フィルタ(LPF)のカットオフ周波数fLPF を、サンプリング周波数fs より充分大きく、fLPF >10fs に設計している。従って、ノイズを含むアナログ信号は、サンプリング周波数fs より高い周波数成分を有することになる。従って、サンプリング周波数fs より高い周波数成分についてはアンダサンプリング状態にあり、これにより折り返し雑音が発生する。この折り返し雑音の発生はジャイロ出力としてのランダムノイズの増をもたらす。ここで、この低域通過フィルタは、これを1次遅れの低域通過フィルタにより構成すると、等価雑音帯域fn は、次で表わされる。
【0011】
n ≒1.6fLPF ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
一方、受光器5から出力される雑音をVn [Vrms /√(Hz)]とすると、ADコンバータ6に入力されるアナログ信号に含まれるランダム雑音成分Vn1[Vrms ]は、次式で表わされる。
n1=Vn √(fn )=Vn √(1.6fLPF ・・・・(6)
ここで、fLPF =10fs とすると、式(6)はn1=4Vn √(fs ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(7)
となる。ところで、折返し雑音の発生しない限界の条件は、c =(1/2)fsであるので、折返し雑音のない時のランダム雑音成分Vn2は、式(6)より、Vn2=Vn √(fn/2)・・・・・・・・・・・・・・・・・・(8)
となる。ところで、ランダム雑音の最大周波数成分fc は低域通過フィルタの等価雑音帯域fn と同一である。
【0012】ここで、アンダサンプリング状態の時と折返し雑音のない時の雑音レベルの比を取ってみる。
n1/Vn2=4√(2)=5.66・・・・・・・・・・(9)
即ち、光ファイバジャイロの従来例は、本来の光ファイバジャイロが含むランダムノイズと比較して、5. 66倍のノイズをアンダーサンプリングにより発生していることになり、この折り返し雑音の発生は光ファイバジャイロの精度を向上する際の障害となっている。そして、受光器5および増幅器50より成るアナログ信号処理部5’において、増幅器50の増幅度を上昇すると、これに対応して当然に雑音も増幅されるし、増幅器50およびADコンバータ6の入力範囲に制限され、必要充分な増幅度をとることができない場合も生ずる。特に、受光器5に到達する光量が少ない場合に必要充分な増幅度をとることができない。
【0013】受光器5に到達する光量を少なく抑制する必要のある場合としては以下の如き場合がある。
■ 光ファイバジャイロを高温作動させ、或いは長寿命用途に供する場合、光ファイバジャイロの光源の光量をしぼって使用する。
■ 1個の光源から多軸の光ファイバジャイロに光を分配して使用する。
【0014】以上の光ファイバジャイロの従来例は、これら■および■の場合の用途に供することは困難であった。この発明は、上述の問題を解消した光干渉角速度計を提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】請求項1:光ファイバコイル4を互いに逆回りに伝播する左右周回光の干渉光強度により光ファイバコイル軸周りに入力された回転角速度を検出する光干渉角速度計において、光ファイバコイル4を伝播する左右周回光間に互いに逆極性の光位相差バイアシングを交互に印加する光位相変調器33を具備し、干渉光強度を検出する受光器5、受光器5から得られる電気信号を入力して特定範囲の周波数成分を取り出す電気的フィルタ51、電気的フィルタ51のアナログ出力信号の正および負のピーク値をサンプリングするピークサンプリング回路52より成るアナログ信号処理部5’を具備し、アナログ信号処理部5’の出力信号をディジタル信号に変換するADコンバータ6を具備し、ADコンバータ6のディジタル出力信号を処理して入力角速度に対応する出力信号を取り出すディジタル信号処理部7を具備する光干渉角速度計を構成した。
【0016】そして、請求項2:請求項1に記載される光干渉角速度計において、電気的フィルタは電気的帯域通過フィルタ51より成り、電気的帯域通過フィルタ51の中心周波数は光位相差バイアシングの周波数に一致している光干渉角速度計を構成した。また、請求項3:請求項1および請求項2の内の何れかに記載される光干渉角速度計において、光位相変調器33による光位相差バイアシングは両周回光間に±π/2の光位相差を交互に印加するものである光干渉角速度計を構成した。
【0017】
【発明の実施の形態】実施の形態を図1を参照して説明する。図1において、図4における部材と共通する部材には共通する参照符号を付与している。図1の実施例は、図4において、アナログ信号処理部5’を、増幅器50の後段に電気的帯域通過フィルタ51を接続し、電気的帯域通過フィルタ51の後段にピークサンプリング回路52を接続したものに相当する。そして、ピークサンプリング回路52の出力端をADコンバータ6の入力端に接続している。この電気的帯域通過フィルタ51は、その中心周波数f0 が位相変調周波数fp に等しく設定されている。位相変調周波数fp は、±π/2の矩形波状位相差バイアシングを生じさせる必要から、通常、fp =1/2τに設定される。その理由は、±π/4の位相変調信号を位相変調器に印加して左右両回り光に±π/2の位相差を持った矩形波状バイアシングを生じさせるには矩形波の片幅がτである必要があることによる。但し、左右両回り光が光ファイバコイル中を伝播する時間:τ=nL/c、nは光ファイバコイルの屈折率、cは光速、Lは光ファイバコイルの長さである。ここで、図8を参照するに、図8(b)は矩形波の片幅がτではない場合を示す。この場合、位相差バイアシングは点線の丸印で包囲されるところで不連続であり、全体として矩形波とはならない。図8(c)は矩形波の片幅がτである場合を示す。この場合、位相差バイアシングは実線により示される如く全体として矩形波となる。
【0018】電気的帯域通過フィルタ51の利得特性は図2に示される如く設計することができる。
選択度:Q=f0 /(f2−f1)、fs=f0、Q=5とすると、電気的帯域通過フィルタ51の等価雑音帯域Bは、1.2fs/5=0.24fsとなる。これは折り返し雑音が発生するfs>2fcの条件を充分に満足する。
【0019】ここで、図3をも参照して説明するに、干渉光に対応する光電変換されたアナログ信号は図3(a)に示されるが如き信号であり、これを増幅器50において必要な電圧に増幅してから、電気的帯域通過フィルタ51を通過せしめられる。電気的帯域通過フィルタ51を通過した出力信号は、図3(b)に示される如く干渉光の強度変化に伴って正弦波形状の波形となる。この正弦波形状の波形は、ピークサンプリング回路52に入力される。ピークサンプリング回路52においては、干渉光出力I1 、I2 ・・・・に対応する光位相変調の各位相バイアシングの時間のの中点において図3(b)の波形をサンプリングし、この波形の正のピーク値および負のピーク値を取得し、これをサンプルホールドする。図3(c)はエンコードするクロックパルス列である。ピークサンプリング回路52にサンプルホールドされた正のピーク値および負のピーク値は、次いで、ADコンバータ6に入力され、AD変換される。
【0020】
【発明の効果】以上の通りであって、この発明によれば、ADコンバータの前段に電気的帯域通過フィルタを設けたことにより、等価雑音帯域を大幅に小さくすることができる。これにより、データサンプリングにより発生する折返し雑音の影響を小さくすことができ、最終的に光干渉角速度計の出力ノイズを小さく抑制することに貢献する。そして、アナログ信号に含まれる雑音の大きさを小さくしたことによりアナログ信号処理部の増幅度を要求に応じて高くすることができ、受光器に到達する光量を少なく抑制する必要のある場合にも増幅度を要求に応じて高くして対処することができる。
【0021】また、この発明はディジタル位相変調信号処理をする光ファイバジャイロにおける折り返し周波数雑音を除去するものであることは上述した通りであるが、ピークサンプリング回路を具備してアナログの電気的帯域通過フィルタを介して得られる正弦波状の信号のピークサンプリングをすることにより、ディジタル型の不連続な光位相差バイアシングに伴うリンギング、受光器で発生する雑音、外部から混入するスパイク雑音その他の雑音に対しても、有効にこれを除去する効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
【出願日】 平成11年7月12日(1999.7.12)
【代理人】 【識別番号】100066153
【弁理士】
【氏名又は名称】草野 卓 (外1名)
【公開番号】 特開2001−21363(P2001−21363A)
【公開日】 平成13年1月26日(2001.1.26)
【出願番号】 特願平11−197244