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【発明の名称】 屈曲振動片、振動子および振動型ジャイロスコープ
【発明者】 【氏名】菊池 尊行

【氏名】今枝 美能留

【氏名】川口 竜生

【要約】 【課題】バイモルフ型の振動子を備えている振動型ジャイロスコープにおいて、検出信号の感度を向上させ、その雑音に対する比率を向上させる。

【解決手段】屈曲振動片1は、第一の軸Zの方向に向かって屈曲振動し、第一の軸に対して垂直な第二の軸Yに向かって延びており、圧電性材料からなる。屈曲振動片1は、第一の軸Zの正の方向に向かって圧電成分10Aを有する第一の領域4と、第一の軸Zの負の方向に向かって圧電成分10Bを有する第二の領域5A、5Bとからなり、第一の軸Zの方向に見たときに、第一の領域4のみからなる第一領域部分27と、第一の領域4および第二の領域5Bが共に存在する混在部分28とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】第一の軸の方向に向かって屈曲振動し、第一の軸に対して垂直な第二の軸に向かって延びている圧電性材料からなる屈曲振動片であって、第一の軸の正の方向に向かって圧電成分を有する第一の領域と、第一の軸の負の方向に向かって圧電成分を有する第二の領域とからなり、第一の軸の方向に見たときに、第一の領域のみからなる第一領域部分と、第一の領域および第二の領域が共に存在する混在部分とを備えていることを特徴とする、屈曲振動片。
【請求項2】第一の軸の方向に見たときに、第二の領域のみからなる第二領域部分を備えていることを特徴とする、請求項1記載の屈曲振動片。
【請求項3】前記第一領域部分と前記第二領域部分との間に前記混在部分が設けられていることを特徴とする、請求項2記載の屈曲振動片。
【請求項4】少なくとも二つの前記第一領域部分と少なくとも一つの前記混在部分とを備えており、二つの第一領域部分の間に混在部分が設けられていることを特徴とする、請求項1記載の屈曲振動片。
【請求項5】前記圧電性材料が圧電単結晶であることを特徴とする、請求項1−4のいずれか一つの請求項に記載の屈曲振動片。
【請求項6】回転角速度を検出するための振動型ジャイロスコープであって、請求項1−5のいずれか一つの請求項に記載の屈曲振動片、前記屈曲振動片に対して駆動振動を励起するための駆動手段、および屈曲振動片が回転したときに屈曲振動片に作用するコリオリ力および駆動振動に応じて屈曲振動片に励振される検出振動を検出するための検出手段を備えていることを特徴とする、振動型ジャイロスコープ。
【請求項7】回転角速度を検出するための振動型ジャイロスコープであって、請求項2、3または5記載の屈曲振動片、前記屈曲振動片に対して駆動振動を励起するための駆動手段であって、前記混在部分の表面に設けられている駆動手段、および屈曲振動片が回転したときに屈曲振動片に作用するコリオリ力および駆動振動に応じて屈曲振動片に励振される検出振動を検出するための検出手段であって、前記第一領域部分および前記第二領域部分の表面に設けられている検出手段を備えていることを特徴とする、振動型ジャイロスコープ。
【請求項8】回転角速度を検出するための振動型ジャイロスコープであって、請求項4または5記載の屈曲振動片、前記屈曲振動片に対して駆動振動を励起するための駆動手段であって、前記混在部分の表面に設けられている駆動手段、および屈曲振動片が回転したときに屈曲振動片に作用するコリオリ力および駆動振動に応じて屈曲振動片に励振される検出振動を検出するための検出手段であって、前記第一領域部分の表面に設けられている検出手段を備えていることを特徴とする、振動型ジャイロスコープ。
【請求項9】請求項1−5のいずれか一つの請求項に記載の屈曲振動片と、この屈曲振動片の少なくとも一方の端部を固定する固定部とを備えていることを特徴とする、振動子。
【請求項10】前記屈曲振動片と共振する他の屈曲振動片を備えていることを特徴とする、請求項9記載の振動子。
【請求項11】回転角速度を検出するための振動型ジャイロスコープであって、請求項9または10記載の振動子、振動子に対して駆動振動を励起するための駆動手段、および振動子が回転したときに振動子に作用するコリオリ力および駆動振動に応じて振動子に励振される検出振動を検出するための検出手段を備えていることを特徴とする、振動型ジャイロスコープ。
【請求項12】圧電性材料からなる少なくとも一対の屈曲振動片、およびこれらの屈曲振動片を結合する結合部を備えている振動子であって、一方の屈曲振動片が、互いに圧電軸の方向が異なる複数の領域からなり、他方の屈曲振動片が、所定方向の圧電軸を有する実質的に単一の領域からなることを特徴とする、振動子。
【請求項13】前記一方の屈曲振動片が第一の軸の方向に向かって振動し、一方の屈曲振動片が、第一の軸の正の方向に向かって圧電成分を有する第一の領域と、第一の軸の負の方向に向かって圧電成分を有する第二の領域とからなり、第一の軸の方向に見たときに、第一の領域および第二の領域が共に存在する混在部分を備えていることを特徴とする、請求項12記載の振動子。
【請求項14】前記他方の屈曲振動片が、前記第一の軸に対して垂直な面内で振動することを特徴とする、請求項13記載の振動子。
【請求項15】前記結合部に、前記一方の屈曲振動片と前記他方の屈曲振動片との間での電気的影響の伝達を防止するためのガード電極が設けられていることを特徴とする、請求項12−14のいずれか一つの請求項に記載の振動子。
【請求項16】前記圧電性材料が圧電性単結晶であることを特徴とする、請求項12−15のいずれか一つの請求項に記載の振動子。
【請求項17】回転角速度を検出するための振動型ジャイロスコープであって、請求項12−16のいずれか一つの請求項に記載の振動子、振動子に対して駆動振動を励起するための駆動手段、および振動子が回転したときに振動子に作用するコリオリ力および駆動振動に応じて振動子に励振される検出振動を検出するための検出手段を備えていることを特徴とする、振動型ジャイロスコープ。
【請求項18】回転角速度を検出するための振動型ジャイロスコープであって、請求項14−16のいずれか一つの請求項に記載の振動子、前記一方の屈曲振動片に対して前記第一の軸の方向の振動を駆動振動として励起するための駆動手段、および振動子が回転したときに振動子に作用するコリオリ力および駆動振動に応じて前記他方の屈曲振動片に励振される前記第一の軸に対して垂直な面内の振動を、検出振動として検出するための検出手段を備えていることを特徴とする、振動型ジャイロスコープ。
【請求項19】回転角速度を検出するための振動型ジャイロスコープであって、請求項14−16のいずれか一つの請求項に記載の振動子、前記他方の屈曲振動片に対して、前記第一の軸に対して垂直な面内の振動を駆動振動として励起するための駆動手段、および振動子が回転したときに振動子に作用するコリオリ力および駆動振動に応じて前記一方の屈曲振動片に励振される前記第一の軸の方向の振動を、検出振動として検出するための検出手段を備えていることを特徴とする、振動型ジャイロスコープ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧電性材料からなる振動子、および回転系内の回転角速度を検出する角速度センサ用の振動型ジャイロスコープに関するものである。
【0002】
【従来の技術】圧電振動型ジャイロスコープは、振動している物体に角速度が加わると、その振動と直角方向にコリオリ力が生じることを利用している。そして、その原理は力学的モデルで解析される(例えば、「弾性波素子技術ハンドブック」、オーム社、第491〜497頁)。そして、圧電型振動ジャイロスコープとしては、これまでに種々のものが提案されている。例えば、スペリー音叉型ジャイロスコープ、ワトソン音叉型ジャイロスコープ、正三角柱型音片ジャイロスコープ、円筒型音片ジャイロスコープ等が知られている。
【0003】圧電型ジャイロセンサーとしては、セラミックバイモルフを使用したジャイロセンサーが、特開平10−54726号公報に開示されている。これは、2枚の圧電性セラミック板を接着して振動子を作製し、各セラミック板の分極方向を逆にし、各セラミック板の表面にそれぞれ駆動電極を設ける。ここで一方のセラミック板上の駆動電極を分割する。各駆動電極に電圧を印加することによって、一方のセラミック板を伸長させ、他方のセラミック板を収縮させ、振動子を全体として屈曲振動させるものである。屈曲振動中の振動子を回転させると、振動子に作用するコリオリ力によって、屈曲振動の方向と垂直な方向へと向かって別の屈曲振動成分が発生するので、振動子の屈曲振動の方向が全体として変化する。この屈曲振動の方向の変化を、一方のセラミック板上の分割された駆動電極からの各出力信号の差として検出する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特開平10−54726号公報記載の振動型ジャイロスコープでは、基本的に振動子の一方向への屈曲振動を利用しており、コリオリ力による屈曲振動の方向のズレを、その屈曲振動を励起した駆動電極によって検出するものである。このため、基本的に感度が低くなる傾向があり、また、駆動電極に対して印加される駆動電圧(検出電圧よりもはるかに大きい)の影響によって雑音が大きくなる傾向がある。
【0005】本発明の課題は、バイモルフ型の振動子を備えている振動型ジャイロスコープにおいて、検出信号の感度を向上させ、その雑音に対する比率を向上させることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、第一の軸の方向に向かって屈曲振動し、第一の軸に対して垂直な第二の軸に向かって延びている圧電性材料からなる屈曲振動片であって、第一の軸の正の方向に向かって圧電成分を有する第一の領域と、第一の軸の負の方向に向かって圧電成分を有する第二の領域とからなり、第一の軸の方向に見たときに、第一の領域のみからなる第一領域部分と、第一の領域および第二の領域が共に存在する混在部分とを備えることを特徴とする。
【0007】また、本発明は、回転角速度を検出するための振動型ジャイロスコープであって、前記屈曲振動片、屈曲振動片に対して駆動振動を励起するための駆動手段、および屈曲振動片が回転したときに屈曲振動片に作用するコリオリ力および駆動振動に応じて屈曲振動片に励振される検出振動を検出するための検出手段を備えていることを特徴とする。
【0008】また、本発明は、前記屈曲振動片と、この屈曲振動片の少なくとも一方の端部を固定する固定部とを備えていることを特徴とする、振動子に係るものである。
【0009】また、本発明は、回転角速度を検出するための振動型ジャイロスコープであって、前記振動子、振動子に対して駆動振動を励起するための駆動手段、および振動子が回転したときに振動子に作用するコリオリ力および駆動振動に応じて振動子に励振される検出振動を検出するための検出手段を備えていることを特徴とする。
【0010】本発明の振動型ジャイロスコープは、種々の角速度センサーに利用できるが、例えば自動車の車体回転速度フィードバック式の車両制御方法に用いる回転速度センサーに特に好適に利用できる。
【0011】本発明について、図面を参照しつつ、更に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る屈曲振動片1および電極の構成を示す模式的斜視図であり、図2は、図1のII−II線断面図である。
【0012】屈曲振動片1は、細長い平板状または四角柱状を有している。屈曲振動片1は、第一の軸Zの方向に向かって屈曲振動し、第一の軸Zに対して垂直な第二の軸Yに向かって延びている。屈曲振動片1の4つの側面のうち、側面1aは第一の軸Zの正の方向を向いており、側面1bは軸Zの負の方向を向いており、側面1cは第三の軸Xの正の方向を向いており、側面1dは第三の軸Xの負の方向を向いている。ただし、ここで言う「正の方向」「負の方向」とは、各軸に平行な二方向を区別するために任意に指定した方向であり、互いに等価である。
【0013】屈曲振動片1は、第一の軸Zの正の方向に向かって圧電成分を有する第一の領域4と、第一の軸Zの負の方向に向かって圧電成分を有する第二の領域5A、5Bとからなり、第一の軸Zの方向に見たときに、第一の領域4のみからなる第一領域部分27と、第一の領域4および第二の領域5Bが共に存在する混在部分28と、第二の領域5Aのみからなる第二領域部分29とを備えている。領域28と29との間にも第一領域部分27が形成されている。
【0014】本例では、屈曲振動片1の側面1b上には、その全面を被覆するように駆動電極3Bが形成されている。屈曲振動片1の第二の領域5Bの表面には、電極3Bと対向する駆動電極3Aが設けられている。第一領域部分27の表面および第二領域部分29の表面に、駆動電極3Aを挟むように、一対の検出電極2A、2Bが形成されている。駆動電極3Aは交流電源6に接続されており、駆動電極3Bはアースされている。検出電極2A、2Bは、検出回路7を通して検出部8に接続されている。
【0015】図1、図2の例では、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶の場合のように、1つのa軸と1つのc軸とを有する単結晶を使用している。このタイプの単結晶は、a軸方向の圧電定数は0であり、a軸に垂直な平面内において、c軸から約140°離れた方向において、圧電定数が最大となる。c軸から90°離れた方向では圧電定数が0になる。図1、図2の例では、X軸方向(a軸方向)の圧電定数は0であり、c軸はY−Z面内にある。そして、Y−Z面内において、c軸との間の角度が約140°離れた方向において、圧電定数が最大となる。
【0016】駆動電極3Aと3Bとに交流電圧を印加すると、混在部分28に第一の軸Zの方向に電圧が印加される。第一の領域4内では、例えば矢印10Aに示すように、第二の軸Y、第一の軸Zの正の方向に圧電成分があり、第二の領域5A内では、例えば矢印10Bに示すように、第二の軸Y、第一の軸Zの負の方向に圧電成分がある。即ち、領域4と5Aとの間で、第一の軸Z方向に見ると、圧電成分の方向が反対になっている。この結果、第一の領域4の伸縮振動の位相と第二の領域3Aの伸縮振動の位相とが逆になるので、屈曲振動片1は第一の軸Zの方向に屈曲振動する。
【0017】屈曲振動片1を第二の軸Yの周りに回転させると、コリオリ力によって、屈曲振動片1が第三の軸Xの方向に屈曲振動する。第一の領域4および第二の領域5Aは、いずれも、第二の軸Yの方向に圧電成分があり、かつ圧電成分の方向は反対である。屈曲振動片1が第三の軸Xの方向に屈曲振動すると、第一領域部分27と第二領域部分29とは共に伸縮振動するので、各伸縮振動に応じて各検出電極2A、2Bに電圧が発生する。この際、第一領域部分27と第二領域部分29とにおいては、各伸縮振動の位相は当然逆になるが、第二の軸Y方向の圧電成分の方向も逆になるので、各検出電極2A、2Bに発生する電圧の位相は同じになる。従って、検出電極2A、2Bに発生する各電圧の和を検出し、この検出値から回転角速度を算出できる。
【0018】一方、第一の軸Z方向の駆動振動に応じて、第一領域部分27と第二領域部分29とには、それぞれ電圧が発生する。この際、第一領域部分27と第二領域部分29との間では、Z方向の圧電成分の方向が逆であるので、駆動振動に応じて発生する電圧の位相は逆になる。従って、各検出電極2A、2Bから発生する電圧を加算すると、駆動振動に応じて各検出電極2A、2Bに発生する電圧は相殺される。
【0019】以上の実施形態からも明らかなように、本発明によれば、混在部分と第一領域部分との間で、駆動手段と検出手段とを分配することができる。例えば、混在部分において駆動を行い、第一領域部分において検出を行うことによって、屈曲振動片の駆動振動による検出手段への影響をなくし、あるいは大きく低減することができる。この結果、検出信号の感度を向上させ、その雑音に対する比率を向上させることができる。
【0020】好適な実施形態においては、図1、図2に示したように、屈曲振動片1が、第一の軸Zの方向に見たときに、第二の領域5Aのみからなる第二領域部分29を備えている。
【0021】この際、特に好ましくは、図1、図2に示したように、第一領域部分27と第二領域部分29との間に混在部分28を設ける。この場合には、前述したように、第一領域部分27の表面および第二領域部分29の表面に検出手段を設け、各検出手段からの検出信号を加算することによって、第二の軸Yを中心とする回転角速度を検出できる。
【0022】圧電成分の方向と第二の軸Yとがなす角θは0−45°とすることが好ましい。
【0023】また、第一の軸Zと第三の軸XとからなるX−Z面内に圧電成分がある場合にも、本発明の屈曲振動片は有用である。この実施形態について、図3、図4を参照しつつ、説明する。
【0024】この例でも、1つのa軸と1つのc軸とを有する単結晶を使用している。図3、図4の例では、第二の軸Y方向(a軸方向)の圧電定数は0であり、c軸はX−Z面内にある。そして、X−Z面内において、c軸との間の角度が約140°離れた方向において、圧電定数が最大となる。従って、第一の領域4Aにおける圧電成分10Cは、第一の軸Zおよび第三の軸Xの正の方向を向いており、、第二の領域5C、5Dにおける圧電成分10Dは、第一の軸Zおよび第三の軸Xの負の方向を向いている。本例では、一対の検出電極2Aと2Bとの間の駆動電極3Aをアースし、駆動電極3Bを交流電源6に接続する。
【0025】駆動電極3Aと3Bとに交流電圧を印加すると、混在部分28に第一の軸Zの方向に電圧が印加される。この結果、前述したように、屈曲振動片1Aが第一の軸Zの方向に屈曲振動する。
【0026】屈曲振動片1Aを第二の軸Yの周りに回転させると、コリオリ力によって、屈曲振動片1Aが第三の軸Xの方向に屈曲振動する。第一の領域4Aおよび第二の領域5Cは、いずれも、第三の軸Xの方向に圧電成分があり、かつ圧電成分の方向は反対である。屈曲振動片1Aが第三の軸Xの方向に屈曲振動すると、電極2Aと3Aとの間、電極2Bと3Aとの間に、それぞれ第三の軸X方向に電圧が発生する。そして、この電圧の位相は一致する。従って、検出電極2A、2Bに発生する各電圧の和を検出し、この検出値から回転角速度を算出できる。前述したように、各検出電極2A、2Bから発生する電圧を加算すると、駆動振動に応じて各検出電極2A、2Bに発生する電圧は、相殺される。
【0027】圧電成分の方向と第一の軸Zとがなす角αは0−45°とすることが好ましい。
【0028】また、好適な実施形態においては、屈曲振動片が、少なくとも二つの第一領域部分と少なくとも一つの混在部分とを備えており、二つの第一領域部分の間に混在部分が設けられている。図5、図6は、この実施形態に係るものである。
【0029】屈曲振動片1Bは、第一の領域4と、第二の領域5Bとからなる。第一の軸Zの方向に見たときに、二つの第一領域部分27A、27Bと、一つ混在部分28とを備えており、二つの第一領域部分の間に混在部分28が挟まれている。屈曲振動片1の側面1b上には、その全面を被覆するように駆動電極3Bが形成されている。屈曲振動片1の混在部分28の表面には、電極3Bと対向する駆動電極3Aが設けられている。二つの第一領域部分27A、27Bの表面に、駆動電極3Aを挟むように、一対の検出電極2A、2Bが形成されている。駆動電極3Aは交流電源6に接続されており、駆動電極3Bはアースされている。
【0030】図5、図6の例でも、1つのa軸と1つのc軸とを有する単結晶を使用しており、X軸方向(a軸方向)の圧電定数は0であり、c軸はY−Z面内にある。そして、Y−Z面内において、c軸との間の角度が約140°離れた方向において、圧電定数が最大となる。
【0031】駆動電極3Aと3Bとに交流電圧を印加すると、前述したように、屈曲振動片1Bは、第一の軸Zの方向に屈曲振動する。この状態で、屈曲振動片1Bを第二の軸Yの周りに回転させると、屈曲振動片1Bが第三の軸Xの方向に屈曲振動する。これに対応して、二つの第一領域部分27A、27Bは、それぞれ伸縮振動し、各伸縮振動に応じて各検出電極2A、2Bに電圧が発生する。この際、二つの第一領域部分においては、各伸縮振動の位相は逆になり、第二の軸Y方向の圧電成分の方向は同じなので、各検出電極2A、2Bに発生する電圧の位相は逆になる。従って、検出電極2A、2Bに発生する各電圧の差を検出し、この検出値から回転角速度を算出できる。
【0032】一方、第一の軸Z方向の駆動振動に応じて、第一領域部分27Aと27Bとには、それぞれ電圧が発生する。この際、第一領域部分27Aと27Bとの間では、駆動振動の方向が同じであり、Z方向の圧電成分の方向が同じであるので、駆動振動に応じて発生する電圧の位相は同じになる。従って、各検出電極2A、2Bから発生する電圧の差を計算すると、駆動振動に応じて各検出電極2A、2Bに発生する電圧は相殺される。
【0033】なお、図5、図6に示すような実施形態において、図3、図4に示すように、Y軸の方向にa軸を一致させ、c軸をX−Z面内に位置させることができる。
【0034】屈曲振動片は、平板状であってよく、円柱状、角柱状のような柱状であってよいが、屈曲振動片の最大幅に対する長さの比率が1:5以上であることが好ましい。
【0035】第一の領域、第二の領域は、それぞれ、その表面に対して垂直な方向に垂直圧電成分を有しており、かつ平行圧電成分を有していることが好ましい。この垂直圧電成分の圧電定数は1C/m2 以上であることが好ましく、2C/m2 以上であることが更に好ましい。平行圧電成分の圧電定数は、0.5C/m2 以上であることが好ましく、1C/m2 以上であることが更に好ましい。
【0036】振動子の材質である圧電材料は、特に限定せず、圧電性セラミックスを利用できる。ただし、本発明は、振動子を圧電単結晶によって形成した場合に特に効果的である。
【0037】圧電性単結晶としては、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体、ランガサイト、リチウムテトラボレート、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、リラクサ化合物(一般式:Pb(A1/32/3 )O3 :ここでAはCd、Zn、Mgなどであり、BはNb、Ta、Wなどである)、チタン酸ジルコン酸鉛とリラクサ化合物との混晶系圧電単結晶を例示できる。
【0038】また、前記の屈曲振動片それ自体を振動子として使用することができるが、屈曲振動片を何らかの固定部に対して固定し、屈曲振動片と固定部とを備える振動子を作製することができる。
【0039】また、本発明は、圧電性材料からなる少なくとも一対の屈曲振動片、およびこれらの屈曲振動片を結合する結合部を備えている振動子であって、一方の屈曲振動片が、互いに圧電軸の方向が異なる複数の領域からなり、他方の屈曲振動片が、所定方向の圧電軸を有する実質的に単一の領域からなることを特徴とする。
【0040】また、本発明は、回転角速度を検出するための振動型ジャイロスコープであって、前記の振動子、振動子に対して駆動振動を励起するための駆動手段、および振動子が回転したときに振動子に作用するコリオリ力および駆動振動に応じて振動子に励振される検出振動を検出するための検出手段を備えていることを特徴とする。
【0041】このように、圧電軸が互いに異なる複数の領域を有する一方の屈曲振動片を設けることによって、この屈曲振動片を構成する各領域の圧電軸の方向の相違を利用して駆動励振や振動検出を行うことが可能となり、かつ、他の所定方向の圧電軸を有する屈曲振動片を固定部を介して一方の屈曲振動片から分離することによって、一方の屈曲振動片の振動による影響を遮断でき、これによって不要の振動の発生、そして検出感度の低下や信号/雑音比率の低下を防止できる。
【0042】好適な実施形態においては、一方の屈曲振動片が第一の軸の方向に向かって振動し、第一の軸の正の方向に向かって圧電成分を有する第一の領域と、第一の軸の負の方向に向かって圧電成分を有する第二の領域とからなり、第一の軸の方向に見たときに、第一の領域および第二の領域が共に存在する混在部分を備えている。この場合、好ましくは、他方の屈曲振動片が、第一の軸に対して垂直な面内で振動する。
【0043】図7は、この実施形態に係る振動子1Cを備えた振動型ジャイロスコープを示す概略斜視図であり、図8(a)は、図7の振動子のVIIIa−VIIIa線断面図であり、図8(b)は、図7の振動子のVIIIb−VIIIb線断面図である。
【0044】振動子1Cの結合部11が、支持台17の上に載置されている。結合部の上面側には、例えば一対の屈曲振動片12と13とが延設されている。屈曲振動片13、固定部11の全体は、第一の領域4Cからなる。一方の屈曲振動片12は、第一の領域4Dと第二の領域5Eとが共存する混在部分28をそなえており、かつ屈曲振動片12の先端側は、第一の領域4Cのみからなる第一領域部分27からなる。混在部分28においては、第一の領域4Dは、第一の軸Zの負の方向の側にあり、第二の領域5Eは、その反対側にあり、第一の領域4Dと第二の領域5Eとは共に平板状をしている。
【0045】特に図8(a)に示すように、他方の屈曲振動片13の+Z面上に、駆動電極3C、3Dが形成されており、−Z面側に駆動電極3E、3Fが形成されている。矢印10Aは圧電成分の方向を示すが、+Z方向および+Y方向を向いている。駆動電極3Cと3Fとはアースされており、駆動電極3Dと3Eとは交流電源6に接続されている。このため、駆動電極3D−3F間と、駆動電極3C−3E間とでは、互いに逆位相の交流電圧が印加される。これに応じて、駆動電極3D−3F間および3C−3E間が、それぞれ逆位相で屈曲振動するので、屈曲振動片13は第三の軸X方向に屈曲振動する。
【0046】図8(b)に示すように、一方の屈曲振動片12の+Z面上に、検出電極2Cが形成されており、−Z面側に検出電極2Dが形成されている。矢印10A、10Bに示すように、各領域4D、5Eにおける圧電成分10A、10Bの方向は、第一の軸Z方向に見ると逆方向である。振動子1Cを、第二の軸Yを中心として回転させると、屈曲振動片12が第一の軸Zの方向に屈曲振動する。この屈曲振動に応じて、第一の領域5Eおよび第二の領域4Dは、それぞれ伸縮振動し、各伸縮振動に応じてそれぞれ振動電圧が発生する。この際、第一の領域5Eと第二の領域4Dとでは、伸縮振動の位相が逆であり、かつ圧電成分の方向も第一の軸Z方向に見て逆であるので、各振動電圧の位相は同じになる。従って、検出電極2Cと2Dとの間に発生する振動電圧から、回転角速度を算出できる。なお、図7に示す15はリードであり、16は端子である。
【0047】また、固定部に、一方の屈曲振動片と他方の屈曲振動片との間での電気的影響の伝達を防止するためのガード電極を設けることが好ましい。
【0048】図9は、この実施形態に係る振動子1Dを示す斜視図である。固定部11には、アースされたガード電極19が設けられている。ガード電極19は、通常の電極と同様にして設けることができる。
【0049】
【実施例】図1、図2に示す振動型ジャイロスコープを作製した。具体的には、図10(a)に模式的に示すように、厚さ0.3mmのニオブ酸リチウムのZ板の基板21の表面に、所定パターンに応じてタンタル製マスク22を形成した。10Aは圧電成分の方向である。230℃に保持されたピロ燐酸中に、マスク22付きの基板21を約10時間浸漬し、図10(b)に模式的に示すプロトン交換層23を形成した。マスクを除去し、基板21を1000℃で10時間熱処理することによって、図10(c)に示すように、第二の領域5Bを形成した。
【0050】次いで、図11に示すように、基板の所定部分にタンタル製電極24を形成し、各電極を直流電源25に接続した。一対の電極24間に、約25kV/mmの電圧を印加し、電極24間を分極反転させ、第二の領域5Aを形成した。
【0051】次いで、図1、図2に示すように、メタルマスクを使用して、厚さ2000オングストロームのアルミニウム膜を電極膜として形成した。振動子1の寸法は、aが1.002mmであり、bが1.00mmであり、cが4mmであり、dが16mmであり、eが4mmであった。θは40°とした。この状態で、1°/秒当たりの感度を測定したところ、30mV/(deg/sec)であり、信号/雑音比率は3.65であった。
【0052】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、バイモルフ型の振動子を備えている振動型ジャイロスコープにおいて、検出信号の感度を向上させ、その雑音に対する比率を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
【出願日】 平成11年7月2日(1999.7.2)
【代理人】 【識別番号】100059258
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外2名)
【公開番号】 特開2001−12954(P2001−12954A)
【公開日】 平成13年1月19日(2001.1.19)
【出願番号】 特願平11−188494