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【発明の名称】 振動系、振動子および振動型ジャイロスコープ
【発明者】 【氏名】菊池 尊行

【氏名】大杉 幸久

【要約】 【課題】所定面に沿って延び、少なくとも一対の屈曲振動片を備える振動子において、一対の屈曲振動片の共振周波数の温度ドリフトを低減する。

【解決手段】振動系25は、細長い支持部9、支持部9の一方の側面9b側に突出し、所定面内で屈曲振動する一方の屈曲振動片3A、支持部9の他方の側面9c側に突出し、所定面内で一方の屈曲振動片3Aと共振する他方の屈曲振動片3B、一方の屈曲振動片3Aと他方の屈曲振動片3Bから見て支持部9と反対側に支持部9の延長線上に設けられる延長部5、支持部の一方の側面と一方の屈曲振動片との間に設けられる第一のテーパー部7A、支持部の他方の側面と他方の屈曲振動片との間に設けられる第二のテーパー部7B、延長部の一方の側面側に設けられている第三のテーパー部12Aおよび延長部の他方の側面側に設けられる第四のテーパー部12Bを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】所定面に沿って形成されており、所定面に対して平行な一対の主面と所定面に対して略垂直な側面とを備えている振動系であって、振動系が、細長い支持部、この支持部の一方の側面側に突出し、所定面内で屈曲振動する一方の屈曲振動片、支持部の他方の側面側に突出し、所定面内で一方の屈曲振動片と共振する他方の屈曲振動片、一方の屈曲振動片および他方の屈曲振動片から見て支持部と反対側において支持部の延長線上に設けられている延長部、支持部の一方の側面と一方の屈曲振動片との間に設けられている第一のテーパー部、支持部の他方の側面と他方の屈曲振動片との間に設けられている第二のテーパー部、延長部の前記一方の側面側に設けられている第三のテーパー部および延長部の前記他方の側面側に設けられている第四のテーパー部を備えていることを特徴とする、振動系。
【請求項2】前記支持部の長手方向に対する前記第一のテーパー部のテーパー面の角度と、前記支持部の長手方向に対する前記第二のテーパー部のテーパー面の角度との差が20°以下であることを特徴とする、請求項1記載の振動系。
【請求項3】前記支持部の長手方向に対する前記第一のテーパー部のテーパー面の角度と、前記支持部の長手方向に対する前記第三のテーパー部のテーパー面の角度との差が20°以下であり、前記支持部の長手方向に対する前記第二のテーパー部のテーパー面の角度と、前記支持部の長手方向に対する前記第四のテーパー部のテーパー面の角度との差が20°以下であることを特徴とする、請求項2記載の振動系。
【請求項4】請求項1−3のいずれか一つの請求項に記載の振動系、および前記支持部の末端を固定する固定部を備えていることを特徴とする、振動子。
【請求項5】前記振動系を複数備えており、更に複数の振動系の各支持部を固定する固定部を備えていることを特徴とする、請求項4記載の振動子。
【請求項6】前記複数の振動系において、前記各支持部の長手方向に対する前記各第一のテーパー部の各テーパー面の各角度の偏差が20°以下であり、前記各支持部の長手方向に対する前記各第二のテーパー部の各テーパー面の各角度の偏差が20°以下であり、前記各支持部の長手方向に対する前記各第三のテーパー部の各テーパー面の各角度の偏差が20°以下であり、前記各支持部の長手方向に対する前記各第四のテーパー部の各テーパー面の各角度の偏差が 20°以下であることを特徴とする、請求項5記載の振動子。
【請求項7】複数の振動系が一方の振動系と他方の振動系とを含んでおり、一方の振動系における前記支持部の長手方向に対する前記第一のテーパー部のテーパー面の角度と、他方の振動系における支持部の長手方向に対する前記第三のテーパー部のテーパー面の角度との偏差が10°以下であり、一方の振動系における支持部の長手方向に対する第三のテーパー部のテーパー面の角度と、他方の振動系における支持部の長手方向に対する第一のテーパー部のテーパー面の角度との偏差が10°以下であることを特徴とする、請求項5記載の振動子。
【請求項8】一方の振動系における前記支持部の長手方向に対する前記第二のテーパー部のテーパー面の角度と、他方の振動系における支持部の長手方向に対する前記第四のテーパー部のテーパー面の角度との偏差が10°以下であり、一方の振動系における支持部の長手方向に対する第四のテーパー部のテーパー面の角度と、他方の振動系における支持部の長手方向に対する第二のテーパー部のテーパー面の角度との偏差が10°以下であることを特徴とする、請求項7記載の振動子。
【請求項9】圧電性単結晶からなることを特徴とする、請求項4−8のいずれか一つの請求項に記載の振動子。
【請求項10】前記振動子がエッチングによって成形されており、前記第一のテーパー部のテーパー面、前記第二のテーパー部のテーパー面、前記第三のテーパー部のテーパー面および前記第四のテーパー部のテーパー面に、それぞれ突起が形成されていることを特徴とする、請求項9記載の振動子。
【請求項11】回転角速度を検出するための振動型ジャイロスコープであって、請求項1−10のいずれか一つの請求項に記載の振動子、この振動子に対して駆動振動を励振するための駆動手段、および前記所定面内で振動子を回転させたときにこの回転の角速度および駆動振動に応じて振動子内に励起される検出振動を検出するための検出手段を備えていることを特徴とする、振動型ジャイロスコープ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回転系内の回転角速度を検出するために使用される角速度センサに用いられる振動子および振動型ジャイロスコープに関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近、振動型ジャイロスコープを自動車に搭載し、自動車の車体の方向の制御に使用することが検討されている。例えば自動車の車体回転速度フィードバック式の車両制御方法に用いる回転速度センサーに振動型ジャイロスコープを使用するときには、操舵輪の方向自身は、ハンドルの回転角度によって検出する。これと同時に、実際に車体が回転している回転速度を振動ジャイロスコープによって検出する。そして、操舵輪の方向と実際の車体の回転速度を比較して差を求め、この差に基づいて車輪トルク、操舵角に補正を加えることによって、安定した車体制御を実現する。
【0003】通常、測定したい回転系の回転軸は、振動型ジャイロスコープの装着部に対して垂直である。従って、このようなジャイロスコープを実装する際、ジャイロスコープの低背化を達成すること、即ち、振動型ジャイロスコープを回転軸方向に見たときの寸法を減少させることができなかった。この問題を解決するためには、回転軸に対して垂直な所定面に沿って延び、主として所定面内で振動する振動子を備えた振動型ジャイロスコープを開発することが必要である。
【0004】本発明者は、この問題を解決するために、特開平11−72334号公報において、略T字形の形状を有する平面型振動子を使用し、振動型ジャイロスコープを構成することを開示した。この振動子は、一対の屈曲振動片を備えており、一対の屈曲振動片が共振する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、こうした振動子を実際にエッチングやレーザー加工によって成形する際には、製造時の誤差によって、各振動子において、一対の屈曲振動片の共振周波数にバラツキが発生する。このため、振動子を成形した後に、各屈曲振動片の付け根部分や支持部をレーザー加工によって除去し、一対の屈曲振動片の共振周波数を一定値に調節する必要がある。
【0006】ところが、例えば車載用などの用途においては、振動型ジャイロスコープの使用温度範囲がきわめて広く、例えば、−40℃−+85℃の温度範囲において安定に動作することが要求される。そして、室温において、一対の屈曲振動片の共振周波数を一定値に調節していても、周囲温度が高温や低温に大きく変化したときには、共振周波数の変動やバラツキが大きくなることがある。
【0007】本発明の課題は、所定面に沿って延び、少なくとも一対の屈曲振動辺を備える振動子において、一対の屈曲振動片の共振周波数の温度ドリフトを低減することである。
【0008】また、本発明の課題は、振動型ジャイロスコープにおいて、振動子に対して所定面内の回転を与えたときに、この回転の角速度を検出し、かつその検出値の温度ドリフトを低減することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、所定面に沿って形成されており、所定面に対して平行な一対の主面と所定面に対して略垂直な側面とを備えている振動系であって、振動系が、細長い支持部、この支持部の一方の側面側に突出し、所定面内で屈曲振動する一方の屈曲振動片、支持部の他方の側面側に突出し、所定面内で一方の屈曲振動片と共振する他方の屈曲振動片、一方の屈曲振動片および他方の屈曲振動片から見て支持部と反対側において支持部の延長線上に設けられている延長部、支持部の一方の側面と一方の屈曲振動片との間に設けられている第一のテーパー部、支持部の他方の側面と他方の屈曲振動片との間に設けられている第二のテーパー部、延長部の一方の側面側に設けられている第三のテーパー部および延長部の他方の側面側に設けられている第四のテーパー部を備えていることを特徴とする。
【0010】また、本発明は、回転角速度を検出するための振動型ジャイロスコープであって、前記の振動子、振動子に対して駆動振動を励振するための駆動手段、および所定面内で振動子を回転させたときにこの回転の角速度および駆動振動に応じて振動子内に励起される検出振動を検出するための検出手段を備えていることを特徴とする。
【0011】以下、図面を参照しつつ、本発明について更に説明する。
【0012】図1は、本発明の一実施形態に係る振動系25および振動子1を示す平面図であり、図2は、図1の要部拡大図である。
【0013】振動子1は、固定部23と振動系25とを備えている。振動系25は、細長い支持部9と、支持部9の先端部4の一方の側面9bから突出する一方の屈曲振動片3Aと、先端部4の他方の側面9cから突出する他方の屈曲振動片3Bとを備えている。9aは支持部9の固定部23への付け根である。支持部9の付け根9aには、テーパー部10A、10Bが形成されており、テーパー面11A、11Bが設けられている。
【0014】この振動子1を、所定面(X−Y面)内で回転させる。言い換えると、振動子1を所定面に対して交差する回転軸を中心として回転させる。所定面と回転軸とがなす角度は、60−120度とすることが好ましく、85−95度とすることが好ましく、直交していることが一層好ましい。
【0015】このとき、一対の屈曲振動片3A、3Bに、付け根3aを中心として、矢印Aのように屈曲振動を励起する。3bは屈曲振動片の先端である。この際、一対の屈曲振動片を同位相で共振させる。すると、各屈曲振動片3A、3Bの各屈曲振動に応じてコリオリ力が作用し、支持部9が、その付け根9aを中心として、矢印Bのように屈曲振動する。支持部9に、図示しない検出手段を設けることによって、この屈曲振動Bを検出することができる。
【0016】こうした形態の振動子においては、各屈曲振動片3Aと3Bとを中心として見たときに、+X方向(図1において右方向)と−X方向(図1において左方向)とが非対称である。各屈曲振動片は、+X方向に振動しやすく、−X方向には相対的に振動しにくい。前記の共振周波数には、こうした各屈曲振動片の周囲の形態の非対称性に依存する成分が含まれている。そして、こうした非対称性存成分の寄与は、温度依存性が大きく、温度ドリフトに寄与する傾向がある。
【0017】本発明者は、この知見に立ち、図1、図2に示すように、一方の屈曲振動片3Aおよび他方の屈曲振動片3Bから見て、支持部9と反対側において支持部9の延長線上に、延長部5を形成した。これに共に、支持部9の一方の側面9bと一方の屈曲振動片3Aとの間に第一のテーパー部7Aを設け、支持部9の他方の側面9cと他方の屈曲振動片3Bとの間に第二のテーパー部7Bを設け、延長部5の一方の側面側に第三のテーパー部12Aを設け、延長部5の他方の側面側に第四のテーパー部12Bを設けた。なお、5aは延長部5の先端平坦面である。
【0018】これによって、各屈曲振動片3A、3BをX軸方向に見たときに、屈曲振動の対称性が向上すると共に、テーパー部7A、7B、12A、12Bを設けたことから、X、Yいずれの方向についても対称性が向上し、かつ温度が変化したときに、各屈曲振動片の振動状態の変化が小さくなる。この結果、一対の屈曲振動片の共振周波数の温度ドリフトが著しく減少した。
【0019】支持部9の長手方向Gに対する、第一のテーパー部7Aのテーパー面8Aの角度θA、長手方向Gに対する第二のテーパー部7Bのテーパー面8Bの角度θB、長手方向Gに対する第三のテーパー部12Aのテーパー面6Aの角度θC、および長手方向Gに対する第四のテーパー部12Bのテーパー面6Bの角度θDは、それぞれ、前記共振周波数の温度ドリフトを低減するという観点からは、20°以上とすることが好ましい。また、駆動振動の振幅を大きくし、検出感度を向上させるという観点からは、70°以下とすることが好ましい。
【0020】また、長手方向Gに対する第一のテーパー部7Aのテーパー面8Aの角度θAと、長手方向Gに対する第二のテーパー部7Bのテーパー面8Bの角度θBの差は、Y方向の屈曲振動の対称性を一層向上させるという観点からは、5°以下とすることが好ましい。
【0021】長手方向Gに対する第一のテーパー部7Aのテーパー面8Aの角度θAと、第三のテーパー部12Aのテーパー面6Aの角度θCとの差は、温度ドリフトを一層低減するという観点から、20°以下とすることが好ましい。長手方向Gに対する第二のテーパー部7Bのテーパー面8Bの角度θBと、第四のテーパー部12Bのテーパー面6Bの角度の差θDとの差は、温度ドリフトを一層低減するという観点から、20°以下とすることが好ましい。
【0022】本発明の振動子は、好ましくは、振動系を複数備えており、更に複数の振動系の各支持部を固定する固定部を備えている。図3は、この実施形態に係る振動子1Aを示す平面図である。
【0023】固定部23Aは、振動子の重心GOを中心として、4回対称の正方形をしている。固定部23Aの四辺23a、23b、23c、23dから、四方に向かって放射状に、二つの駆動振動系25A、25B、および二つの検出振動系15A、15Bが突出しており、各振動系は互いに分離されている。駆動振動系25Aと25Bとは、重心GOを中心として2回対称であり、検出振動系15Aと15Bとは、重心GOを中心として2回対称である。固定部23Aの中央の重心GOの近傍に、支持孔14が形成されており、図示しない支持手段にによって支持孔14またはその近傍を支持する。
【0024】各駆動振動系25A、25Bは、支持部9A、9B、先端部4A、4B、各屈曲振動片3C、3D、3E、3F、および延長部5A、5Bを備えている。これらの各構成部分の形態、機能は、前述したとおりである。本例では、各屈曲振動片3C、3D、3E、3Fには、図示しない駆動手段が設けられており、各検出振動片15A、15Bには図示しない検出手段が設けられている。
【0025】駆動振動モードにおいては、各屈曲振動片3C、3D、3E、3Fを、先端部4A、4Bへの付け根付近を中心として矢印Cのように屈曲振動させる。この際、屈曲振動片3Cと3Dとの位相は同位相であり、屈曲振動片3Eと3Fとの位相は同位相であり、屈曲振動片3C、3Dと3E、3Fとの位相は逆位相であり、全体として所定の共振周波数で共振する。
【0026】この状態で、振動子1Aを、Z軸を中心として回転させると、各支持部9A、9Bが、矢印Dのように、付け根9aを中心として屈曲振動し、これに応じて、各検出振動片15A、15Bが、矢印Eのように屈曲振動する。
【0027】この検出振動モードを、図5に示す。支持部9A、9Bが固定部23Aへの付け根を中心として周方向に屈曲振動し、これに対応して、検出振動片15A、15Bが屈曲振動していることがわかる。
【0028】図4(a)、(b)を参照しつつ、各テーパー面の好適形態について説明する。図3に示す振動子のように、本発明の振動系を複数備えている場合には、各振動系において、対応する各テーパー面が、複数の振動系25Aと25Bとの中心線22に対して線対称か、線対称に近いことが好ましい。言い換えると、好ましくは、各支持部9A、9Bの長手方向Gに対する各第一のテーパー部7C、7Eの各テーパー面8C、8Eの各角度θAの偏差が10°以下であり、長手方向Gに対する各第二のテーパー部7D、7Fの各テーパー面8D、8Fの各角度の偏差θBが10°以下であり、長手方向Gに対する各第三のテーパー部12C、12Eの各テーパー面6C、6Eの各角度θCの偏差が10°以下であり、長手方向Gに対する各第四のテーパー部12D、12Fの各テーパー面6D、6Fの各角度θDの偏差が10°以下である。これらの各偏差は、更に5°以下であることが好ましい。これによって、一方の駆動振動系25Aにおいて一対の屈曲振動片3C、3Dが互いに共振するときの固有共振周波数およびその温度変化を、他方の駆動振動系25Bにおいて一対の屈曲振動片3E、3Fが互いに共振するときの固有共振周波数およびその温度変化に近づけることができる。
【0029】また、本発明の好適な形態においては、振動子が少なくとも一方の振動系25Aと他方の振動系25Bとを備えており、一方の振動系25Aにおける支持部の長手方向Gに対する第一のテーパー部7Cのテーパー面8Cの角度θAと、他方の振動系25Bにおける長手方向Gに対する第三のテーパー部12Eのテーパー面6Eの角度θCとの偏差が10°以下であり、一方の振動系25Aにおける長手方向Gに対する第三のテーパー部12Cのテーパー面6Cの角度θCと、他方の振動系25Bにおける長手方向Gに対する第一のテーパー部7Eのテーパー面8Eの角度θAとの偏差が10°以下である。更に好ましくは、一方の振動系25Aにおける長手方向Gに対する第二のテーパー部7Dのテーパー面8Dの角度θBと、他方の振動系25Bにおける長手方向Gに対する第四のテーパー部12Fのテーパー面6Fの角度θDとの偏差が10°以下であり、かつ、一方の振動系25Aにおける長手方向Gに対する第四のテーパー部12Dのテーパー面6Dの角度θDと、他方の振動系25Bにおける長手方向Gに対する第二のテーパー部7Fのテーパー面8Fの角度θBとの偏差が10°以下である。
【0030】これらの各偏差は、更に5°以下であることが好ましい。これによって、一方の駆動振動系25Aにおいて一対の屈曲振動片3C、3Dが互いに共振するときの固有共振周波数およびその温度変化を、他方の駆動振動系25Bにおいて一対の屈曲振動片3E、3Fが互いに共振するときの固有共振周波数およびその温度変化に近づけることができる。
【0031】本発明の振動子においては、振動系が所定面に沿って延びているが、これは厚さにして1mm以下の範囲内に振動系が形成されている場合を含む。また、振動系以外の部分は、所定面から突出することもありえるが、振動子の全体が所定面内に形成されていることが好ましい。
【0032】本発明の振動子の変位は、所定面内で生ずる。このため、振動子の全体を、同一の圧電単結晶によって形成することができる。この場合には、まず圧電単結晶の薄板を作製し、この薄板をエッチング、研削により加工することによって、振動子を作製できる。振動子の各部分は、別の部材によってそれぞれ形成することもできるが、一体で構成することが特に好ましい。
【0033】振動子の材質は特に限定しないが、水晶、LiNbO3 、LiTaO3 、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体(Li(Nb,Ta)O3)単結晶、ホウ酸リチウム単結晶、ランガサイト単結晶等からなる圧電単結晶を使用することが好ましい。
【0034】音叉型の振動子を使用した角速度センサとしては、例えば特開平8−128833号公報に記載された圧電振動型ジャイロスコープがある。しかし、こうした振動子においては、振動子が2つの方向に向かって振動する。このため、振動子を特に圧電単結晶によって形成した場合には、圧電単結晶の2方向の特性を合わせる必要がある。しかし、現実には圧電単結晶には異方性がある。
【0035】一般に圧電振動型ジャイロスコープでは、測定感度を良好にするために、駆動の振動モードの固有共振周波数と検出の振動モードの固有共振周波数との間に、一定の振動周波数差を保つことが要求されている。しかし、圧電単結晶は異方性を持っており、結晶面が変化すると、振動周波数の温度変化の度合いが異なる。例えば、ある特定の結晶面に沿って切断した場合には、振動周波数の温度変化がほとんどないが、別の結晶面に沿って切断した場合には、振動周波数が温度変化に敏感に反応する。従って、振動子が2つの方向に向かって振動すると、2つの振動面のうち少なくとも一方の面は、振動周波数の温度変化が大きい結晶面になる。
【0036】これに対して、本発明におけるように振動子の全体を所定面内で振動するようにし、かつ振動子を圧電単結晶によって形成することで、単結晶の最も温度特性の良い結晶面のみを振動子において利用できるようになった。
【0037】即ち、振動子の全体が所定平面内で振動するように設計されていることから、圧電単結晶のうち振動周波数の温度変化がほとんどない結晶面のみを利用して、振動子を製造することができる。これによって、きわめて温度安定性の高い振動型ジャイロスコープを提供できる。
【0038】本発明の振動子を圧電性材料によって形成した場合には、この振動子に駆動電極および検出電極を設ける。圧電性材料としては、圧電単結晶の他に、PZT等の圧電セラミックスがある。
【0039】また、本発明の振動子を、エリンバー等の恒弾性金属によって形成することもできる。この場合には、振動子の所定箇所に圧電体を取り付ける必要がある。
【0040】平板形状の材料、例えば水晶等の圧電単結晶の平板状の材料から、エッチングプロセスによって振動子を形成する場合には、振動子の各屈曲振動片に細長い突起が生成することがある。このような突起は、厳密には設計時に予定された振動子の対称性を低下させる原因となる。
【0041】例えば、水晶のZ板によって、図3に示す振動子をエッチングプロセスによって成形したものとする。ただし、この際、図6(a)、(b)に示すように、延長部5A、5Bを設けないものとする。この場合には、各テーパー部7C、7D、7E、7Fにおいて、+X方向のテーパー面8E、8F上の突起20E、20Fの方が、−X方向のテーパー面8C、8D上の突起20C、20Dよりも大きい。また、+Y方向のテーパー面8C、8Eの突起20C、20Eの方が、−Y方向のテーパー面8D、8F上の突起20D、20Fよりも大きい。これらの各突起は、特に各屈曲振動片の振動の温度特性に強く影響する傾向がある。この結果、室温において、一方の振動系25Aにおける一対の屈曲振動片3Cと3Dとの固有共振周波数を、他方の振動系25Bにおける一対の屈曲振動片3Eと3Fとの固有共振周波数と一致させた場合であっても、温度が変化すると、両固有共振周波数の差が大きくなり、この結果、駆動振動の全体の固有共振周波数の温度ドリフトが発生する。
【0042】このため、本発明の好適な実施形態においては、振動子がエッチングによって成形されており、第一のテーパー部のテーパー面、第二のテーパー部のテーパー面、第三のテーパー部のテーパー面および第四のテーパー部のテーパー面に、それぞれ突起が形成されている。
【0043】例えば、図7に示すように、一方の振動系25Aにおいて、第一のテーパー部7Cのテーパー面8C、第二のテーパー部7Dのテーパー面8D、第三のテーパー部12Cのテーパー面6Cおよび第四のテーパー部12Dのテーパー面6Dに、それぞれ突起20C、20D、21C、21Dが形成されている。また、図8に示すように、他方の振動系25Bにおいて、第一のテーパー部7Eのテーパー面8E、第二のテーパー部7Fのテーパー面8F、第三のテーパー部12Eのテーパー面6Eおよび第四のテーパー部12Fのテーパー面6Fに、それぞれ突起20E、20F、21E、21Fが形成されている。
【0044】この結果、各振動系25A、25Bの各屈曲振動片3C、3D、3E、3Fの各付け根付近における形態が相似形になるので、振動系25Aにおける一対の屈曲振動片の固有共振周波数と、振動系25Bにおける一対の屈曲振動片の固有共振周波数との各温度変化が近くなる。この結果、振動子全体の駆動振動の共振周波数の温度ドリフトも小さくなる。
【0045】
【実施例】(本発明例)図3−図5、図7、図8に示す振動型ジャイロスコープを作製した。具体的には、厚さ0.3mmの水晶のZ板のウエハーに、スパッタ法によって、所定位置に、厚さ200オングストロームのクロム膜と、厚さ5000オングストロームの金膜とを形成した。ウエハーの両面にレジストをコーティングした。
【0046】このウエハーを、ヨウ素とヨウ化カリウムとの水溶液に浸漬し、余分な金膜をエッチングによって除去し、更に硝酸セリウムアンモニウムと過塩素酸との水溶液にウエハーを浸漬し、余分なクロム膜をエッチングして除去した。温度80℃の重フッ化アンモニウムに20時間ウエハーを浸漬し、ウエハーをエッチングし、振動子の外形を形成した。メタルマスクを使用して、厚さ2000オングストロームのアルミニウム膜を電極膜として形成した。
【0047】得られた振動子の固定部23Aの寸法は6.0mm×6.0mmであり、各検出振動片15A、15Bの寸法は、幅1.0mm×長さ6.0mmであった。各検出電極の寸法は、幅0.6mm×長さ2.8mmであり、検出振動片の付け根から1.2−4.0mmの位置に形成されていた。
【0048】図3に示すように、振動子の中央部に0.75mm×0.75mmの正方形の支持孔14を形成し、この支持孔14に直径0.6mmの金属ピンを通し、金属ピンに対して振動子をシリコーン樹脂接着剤によって接着した。
【0049】各屈曲振動片3C−3Fの寸法は、幅0.6mm×長さ2.8mmであった。各テーパー面8C、8Dの長手方向Gに対する角度θA、θBは、それぞれ、28.2°、28.0°であった。各テーパー面8E、8Fの長手方向Gに対する角度θA、θBは、それぞれ、27.4°、27.6°であった。各テーパー面6C、6Dの長手方向Gに対する角度θC、θDは、それぞれ、27.4°、27.6°であった。各テーパー面6E、6Fの長手方向Gに対する角度θC、θDは、それぞれ、28.2°、28.0°であった。突起5A、5Bの屈曲振動片からの突出高さは0.5mmであった。
【0050】(比較例)本発明例において、突起5A、5Bおよびテーパー部12C、12D、12E、12Fを形成しなかった。他は本発明例と同様にして振動子を作製した。
【0051】(測定)各振動型ジャイロスコープについて、振動子の検出角度の測定値の温度ドリフトを測定した。各振動子をそれぞれ利用した各振動型ジャイロスコープについて、検出信号の測定値の−45℃より+85℃の温度域におけるゼロ点信号の温度変動を測定したところ、突起のある振動子を利用した振動型ジャイロスコープの温度変動は、いずれも±1°/secの範囲であったが、突起のない振動子を利用した振動型ジャイロスコープの温度変動は、もっとも大きいものでも、4°/secの範囲であった。
【出願人】 【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
【出願日】 平成11年7月1日(1999.7.1)
【代理人】 【識別番号】100059258
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外2名)
【公開番号】 特開2001−12952(P2001−12952A)
【公開日】 平成13年1月19日(2001.1.19)
【出願番号】 特願平11−187840