| 【発明の名称】 |
衛星SAR画像に基づく移動体の移動情報検出方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】長谷 光敏
【氏名】渡邊 義明
【氏名】山田 剛
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| 【要約】 |
【課題】人工衛星の合成開口レーダによって撮影された地球表面の画像から検出した船舶画像について船舶の速度と航行方向を自動的かつ正確に検出する。
【解決手段】あらかじめ陸地部分の除去処理がされた衛星SAR海面画像データ1の画素振幅比とスレッショルドを基に船舶検出部4により船舶を検出し、さらに航跡検出部5により検出した船舶の上側、下側のハフ変換を用いて航跡検出し、船舶側検出部6により航跡位置と船舶位置のずれ量からドップラシフトを算出して船舶の速度を検出することで、衛星SAR画像から船舶の速度と航行方向を正しく検出する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 衛星SAR画像上から移動体の画像を検出し、移動体の画像のドップラシフトを考慮した捜索範囲における周辺画素の振幅情報を解析処理することにより移動体の移動軌跡を検出し、その移動軌跡の方向に基づいて移動方向を検出することを特徴とする衛星SAR画像に基づく移動体の移動情報検出方法。 【請求項2】 請求項1に記載の衛星SAR画像に基づく移動体の移動情報検出方法において、検出した移動軌跡の始点位置と移動体の位置のずれからドップラシフトと船舶のレンジレートを算出し、これと検出した移動航跡の方向に基づいて移動体の移動速度を検出することを特徴とする衛星SAR画像に基づく移動体の移動情報検出方法。 【請求項3】 請求項1または2に記載の衛星SAR画像に基づく移動体の移動情報検出方法において、上記移動体は船舶であり、上記移動軌跡として船舶航跡を検出することを特徴とする衛星SAR画像に基づく移動体の移動情報検出方法。 【請求項4】 請求項1または2に記載の衛星SAR画像に基づく移動体の移動情報検出方法において、上記移動体は車両であり、上記移動軌跡として轍、道路または線路を検出することを特徴とする衛星SAR画像に基づく移動体の移動情報検出方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、人工衛星の搭載する合成開口レーダ(:Synthetic Aperture Radar、以下衛星SARと呼ぶ)によって撮影された移動体の移動情報を検出する衛星SAR画像に基づく移動体の移動情報検出方法に関し、移動体として、例えば海上の船舶または陸上の車両の移動速度と移動方向を検出するものである。 【0002】 【従来の技術】衛星SARは、衛星に搭載したアンテナから送信波を地球表面に照射し、地球表面からの反射波を衛星に搭載した受信機で受信信号処理した後、地上局にデータ送信する。地上局では、衛星からそのデータを受信し、必要な信号処理を施して、衛星SAR画像と呼ばれる画像データを作成する。この衛星SAR画像は、衛星運用機関によりCD−ROM、磁気テープ等の媒体に収納され、またはデータ通信手段によって利用者に提供されている。 【0003】この衛星SAR画像は、静止画像データとして得られるため、従来の技術では例えば海上を航行する船舶の様な移動体について、撮像時点の位置の検出は可能であるものの、速度を検出することができなかった。 【0004】また、従来の技術では、衛星SAR画像に映った船舶の航跡の長さから船舶の速度を推定することが研究されて来たが、航跡の長さは、船舶の速度以外にも船舶の大きさ、船舶の形状、船舶の推進機関、海流、水深、海洋風等の条件によって左右されるが、衛星SAR画像からはこれらの諸条件を特定することができないため、船舶の速度を正しく推定することができなかった。 【0005】上記以外の方法として、1シーンの衛星SAR画像がルックと呼ばれる観測タイミングの異なる複数の画像の重ね合わせとして作られることを利用して、このルック画像を比較評価し、船舶等の移動体の速度と航行方向を検出する方法が研究されているが、この方法は、ルック間の時間差が小さく、この時間差の間の漁船等の低速の船舶の移動量が衛星SAR画像の距離分解能よりも小さく、結果として速度が検出されないという問題があった。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】公海や200海里水域等の広い海域における船舶の行動の監視・取締り等を行う等の目的で海上の捜索を行う際に、捜索用の航空機や船舶では、十分な捜索範囲が得られないこと、気象条件や飛行・航行範囲に対する制約を受けること等の理由によって、人工衛星に搭載された撮像装置によって海面の画像を得、その画像を解析することによって船舶の動静を把握する必要が起こってきた。その際に、従来の技術では、船舶の位置は検出できるものの、船舶の速度・航行方向が検出できないために、船舶の操業行動・航行状況等の把握、その後の動静の予測において、支障が発生していた。 【0007】この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、静止画である衛星SAR画像から移動体の移動情報を正しく検出することができる衛星SAR画像に基づく移動体の移動情報検出方法を提供することを目的としている。 【0008】 【課題を解決するための手段】この発明に係る衛星SAR画像に基づく移動体の移動情報検出方法は、衛星SAR画像上から移動体の画像を検出し、移動体の画像のドップラシフトを考慮した捜索範囲における周辺画素の振幅情報を解析処理することにより移動体の移動軌跡を検出し、その移動軌跡の方向に基づいて移動方向を検出することを特徴とするものである。 【0009】また、検出した移動軌跡の始点位置と移動体の位置のずれからドップラシフトと船舶のレンジレートを算出し、これと検出した移動航跡の方向に基づいて移動体の移動速度を検出することを特徴とするものである。 【0010】また、上記移動体は船舶であり、上記移動軌跡として船舶航跡を検出することを特徴とするものである。 【0011】さらに、上記移動体は車両であり、上記移動軌跡として轍、道路または線路を検出することを特徴とするものである。 【0012】 【発明の実施の形態】実施の形態1.図1は、この発明の実施の形態1に係るものでであり、衛星SAR画像上の船舶の速度と航行方向を検出する方法を実行する装置の全体構成図である。図1において、1は衛星運用機関からCD−ROM、磁気テープ等の媒体にて提供される衛星SAR画像である。本実施の形態において、処理対象とする衛星SAR画像は海面画像とし、陸地を含む衛星SAR画像については、あらかじめ陸地の除去処理が行われていることを前提とする。2は衛星SAR画像データ1を媒体から読みこみ、表示装置3に対しこの画像を表示させ、また、この装置の各部の処理において必要となる船舶および航跡データベース7の検索・登録処理を行い、さらに、本装置にて検出した船舶の速度・航行方向等の船舶諸元データを出力する入出力制御部である。 【0013】3は入力した衛星SAR画像データ、処理結果等を表示するための表示装置である。4は衛星SAR画像上に映っている船舶を検出し、船舶の位置を特定する船舶検出部、5は船舶検出部4にて検出した各船舶についてそれらの船舶が航行することにより発生した航跡を衛星SAR画像から検出し、これにより航跡の始点の位置と方向を検出する航跡検出部、6は船舶検出部4で特定した各船舶の位置と、航跡検出部5で検出した対応する航跡の始点の位置と方向から各船舶の速度と航行報告を検出する船舶速度検出部である。7は船舶検出部4の処理結果、航跡検出部5の処理結果を登録管理し、また、各処理の必要に応じてそれらの検索を行うための船舶および航跡データベース、8は本装置の処理結果の出力であり、衛星SAR画像から検出された各船舶の速度、進行方向等の諸元データである。 【0014】次に上記実施の形態の動作を、図2ないし図7に示すフローチャート参照しながら説明する。図2は船舶検出部4、図3は航跡検出部5、図4は航跡検出部5の一部を構成する船舶下側の航跡捜索処理、図5は航跡検出部5の一部を構成する船舶上側の航跡捜索処理、図6は航跡検出部5の一部を構成する航跡候補選択処理、図7は船舶速度検出部6の動作を示すフローチャートである。 【0015】図2に示すフローチャートを参照して船舶検出部4の動作を説明する。まず、走査開始位置の設定処理9において、衛星SAR海面画像の左上の位置を走査開始位置に設定する。ここで、衛星SAR海面画像の座標系は、図8に示すように、レンジ方向63、アジマス方向64から構成される。アジマス方向64は衛星65の進行方向66と平行な方向、レンジ方向63はこれと直交する方向である。衛星SARのアンテナはアジマス方向に平行に取り付けられており、レンジ方向を中心として送信を行う。 【0016】なお、衛星を基準として計測するレンジは衛星位置が0となるが、本装置の処理の説明においては、図8の衛星SAR海面画像において、左上の位置のレンジ、アジマス座標をX_RNG=1、Y_RNG=1と定義することとし、アジマス方向については上から下へ、レンジ方向については左から右へ衛星SAR画像のピクセルに対応して座標値をカウントするものとして、以下記述する。従って、衛星からの距離の増大方向と、この座標系でのレンジの増大方向とは逆になっている。 【0017】次に、図2に示す船舶検出ゲート処理10において、衛星SAR画像上の現在の走査位置を中心として、図9に示す船舶検出ゲートを設定する。図9において、目標検出ゲート67の中心が現在の走査位置である。目標検出ゲートは外枠と内側と2つの部分から構成する。この船舶検出ゲート処理10においては、この外枠に位置する画素の振幅の平均(mean_Gate_out)と内側の画素の振幅の平均(mean_Gate_in)をそれぞれ算出し、その比(Gate_Ratio)を算出する。 【0018】この衛星SAR画像に適用する船舶検出ゲートは、レーダにおいて使用されている図10に示す如く目標検出回路を2次元化したものである。図10に示す目標検出回路において、目標検出ゲートの外枠に相当するのが、レンジビン遅延回路69であり、目標検出ゲートの内側に相当するのが検出範囲のレンジビン70である。レーダの目標検出回路においても、これらの比が算出され、閾値と比較される。 【0019】次に、図2に示す船舶検出判定処理11において、船舶検出ゲート処理10において算出した比(Gate_Ratio)について、図10に示したレーダの目標検出回路と同様に、船舶検出判定のスレッショルド(Threshold)を超えているかを評価する。その結果により、現在の走査位置に船舶が存在するか否かを判定する。 【0020】この船舶判定処理11において、現在の走査位置に船舶が存在すると判定した場合には、新規検出船舶登録処理12において、現在の走査位置のレンジ、アジマス位置を、船舶および航跡データベース7に新規検出船舶位置として登録する。 【0021】図2に示す新規検出船舶登録処理12の終了後、または、船舶検出判定処理11において船舶を検出できなかった場合には、レンジ方向走査終了確認処理13において、現在の走査位置がレンジ方向の端(右端)に達しているかを判定する。 【0022】右端に達していない場合には、図2に示すレンジ方向走査の継続処理14において、走査位置をレンジ方向に進めた後、船舶検出ゲート処理10への移行を繰り返し処理する。 【0023】他方、右端に達していた場合には、図2に示すアジマス方向走査終了確認処理15において現在の走査位置がアジマス方向の端(下端)に達しているかを確認する。 【0024】下端に達していない場合には、アジマス方向の継続処理16において、走査位置をアジマス方向に進めた後、レンジ方向を初期位置(左端)に設定する。 【0025】次に、図3に示すフローチャートを参照して航跡検出部5の動作を説明する。航跡検出部5においては、船舶検出部4において検出した船舶の周辺海面を捜索し、その航跡を検出する。 【0026】衛星SAR画像は、図8に示したように、衛星の進行方向を基準としてレンジ方向とアジマス方向とからなっている。衛星SARは既存のものであるので、その画像化の原理の詳細の説明は省略するが、その概略は以下の通りである。 【0027】衛星SARは、地球表面上の物体からの反射波を処理し画像化する際に、レーダ波の送信から物体からの反射波の到着時間によりレンジ方向の位置決めを行い、反射波のドップラ周波数により物体のアジマス位置を定めることにより、衛星SAR画像上にその物体の画像の位置付けを行う。具体的には、物体のアジマス方向の位置は、その物体からの反射波のドップラー周波数が0となった時点の衛星の位置に正対する方向として定められる。 【0028】図11に示すように、地球表面上の固定目標71は、衛星73が軌道上を進行する間、衛星SARのビーム幅の範囲においてレーダ波72の照射を受け、その反射波を衛星SARが受信する。反射波は、衛星と目標との相対速度に対応したドップラ効果を受けるため、受信波のドップラ周波数74は、衛星が目標に対して接近する間はプラスのドップラ周波数、離遠する際にはマイナスのドップラ周波数を持ち、衛星が固定目標に対して再接近した時点、即ち、固定目標が衛星SARのアンテナの中心軸方向に位置したときに、ドップラ周波数は0となり、先の説明の通り、目標のアジマス位置を正しく検出することができる。 【0029】これに対して、図12に示すように、地球表面上を移動する目標75については、受信波ドップラ周波数において、衛星の進行に起因するドップラ周波数に加えて、目標が移動することにより発生するドップラ周波数が重畳される。この目標の運動に起因して受信波のドップラ周波数を変化させる成分はドップラシフト76である。 【0030】このドップラシフト76の結果、ドップラシフトの影響を受ける以前の受信波ドップラ周波数77に対して、ドップラシフト後の受信波ドップラ周波数78は0点の位置がΔAZ79だけずれる結果となる。その結果、移動目標は衛星SAR画像上、ΔAZずれた位置に現れる。 【0031】ΔAZの正負は、目標の移動方向が衛星に対して接近する方向であるか、離遠する方向であるかにより定まり、接近の場合、プラス(衛星画像の下方向)、離遠の場合、マイナス(衛星画像の上方向)となる。 【0032】ΔAZはドップラ効果の物理法則から、以下のように算出される。まず、固定目標の反射波が持つドップラ周波数は下式で与えられる。 fSATd=2・VSAT・sinθAZ (1) ここで、fSATdは、固定目標からの受信波について、衛星の運動に起因して発生するドップラ周波数であり、VSATは衛星が進行する速度、θAZは衛星から見た固定目標のアジマス角であり、衛星の進行により時間的に変化する。 【0033】これに対して、目標の移動により発生するドップラ周波数は下式で与えられる。 fTGTd=(2・VR・cosθAZ)+(2・VAZ・sinθAZ) (2) ただし、VRは移動目標のレンジ方向の速度、VAZはアジマス方向の速度を示すものとする。 【0034】ΔAZの位置においては、目標の移動による式(2)に示すドップラ周波数と固定目標に対して衛星の進行により発生するドップラ周波数が相殺するので、式(1)の右辺と式(2)の右辺を等しいとおくことにより、下式が得られる。 2・VSAT・sinθAZ=(2・VR・cosθAZ) +(2・VAZ・sinθAZ) (3) 【0035】これを整理すると、下式が得られる。 (VSAT−VAZ)・sinθAZ=VR・cosθAZ (4) 式(4)において、VSATに比してVAZが小さいことにより、 tanθAZ=VR/VSAT (5) ここで、左辺は、衛星と移動目標間の距離Rに対して、以下の関係がある。 tanθAZ=ΔAz/R (6) 式(5)及び(6)から、 ΔAz=(VR・R)/VSAT (7) となる。 【0036】ここで、衛星と移動目標間の距離Rは、以下のようにして算出することができる。まず、衛星から衛星SAR画像のレンジ方向の右端と左端までのそれぞれの距離を衛星の軌道高度、水平線とSARのレーダビーム軸の成す角から算出する。この計算は、既知の内容であるので詳細の説明を省略する。次に、衛星SAR画像上の目標のレンジに対応して、右端位置と左端位置のまでの衛星からの距離を補間することによりRが得られる。 【0037】ドップラ効果の影響は、目標からの反射波の到達時間を変化させるものではないので、移動目標のレンジは本来の位置に現れる。 【0038】航行する船舶は、以上の説明における移動目標にあたり、ドップラシフトの結果船舶が航行する速度の衛星軌道に直交する成分に比例して、本来の位置からアジマス方向にΔAZずれた位置に画像として現れる。これに対して、この船舶が作る航跡は、海面上にほぼ静止しているため、船舶のようなドップラシフトの影響をほとんど受けないため、ほぼ本来の位置に画像が現れる。 【0039】航跡検出部5の図3に示す航跡捜索アジマス範囲設定処理17は、図2に示すフローチャートに従って船舶検出部4において検出した船舶について、それが発生した航跡を捜索すべきアジマス範囲を設定するものである。航跡は、船舶の位置に対してΔAZずれた位置にあるが、このΔAZの値は、式(7)の各要素より定まるが、VSATとRは衛星の軌道諸元から定まるパラメータであるので、ΔAZの取りうる範囲は、VRの範囲により定まる。VRは、船舶が航行する速度のレンジ方向の成分であり、船舶の最大速度を超えることは無い。 【0040】従って、航跡を捜索する範囲は、本装置が解析の対象とする船種の最大船速(とする)に対して、下式の範囲とすれば良い。 0≦ΔAZ≦(VMAX・R)/VSAT=WIDTH (8) なお、船舶が衛星に対して接近する方向の航行するか、遠ざかる方向に航行するかによって、船舶は航跡に対して上または下に現れるので、船舶周辺の航跡を捜索する際には、上下(アジマス方向)それぞれについて式(8)の範囲を捜索しなければならない。図3に示す航跡捜索アジマス範囲設定処理17では、式(8)に基づいて、航跡を捜索する範囲WIDTHの値を航跡の捜索アジマス範囲として設定する。なお、このアジマス方向のシフトΔAZは上下両方向に発生し得るので、式(8)で定めた航跡を捜索する範囲WIDTHは、実際には航跡の捜索範囲の片幅となる。 【0041】航跡の捜索は、図2に示すフローチャートに従って船舶検出部4で検出し、船舶および航跡データベース7に登録したすべての船舶について実施する。図3に示す航跡捜索開始処理18では、この船舶の中から任意に1隻を選択し、航跡の捜索を開始する。 【0042】船舶の航跡の捜索は、船舶下側の航跡捜索処理19、船舶上側の航跡捜索処理20の順にて実施する。船舶と航跡の位置関係は、図13、図14に示すように、船舶が衛星軌道に対して遠ざかっている場合には、航跡は船舶の下側に現れ、船舶が衛星軌道に対して近づいている場合には、航跡は船舶の上側に現れる。これらの処理の時点では、船舶が衛星軌道に対して近づいているか遠ざかっているかが未定であるので、航跡は船舶の上下に渡って捜索する。逆に、これらの処理にて航跡を捜索した結果から、船舶が衛星航跡に対して近づいているか遠ざかっているかが判別される。これらの内容については、図4および図5を参照して後に説明する。 【0043】船舶下側の航跡捜索処理19と船舶上側の航跡捜索処理20においては、それぞれ該当の船舶の航跡と目される候補を検出する。この候補(複数)に対して、評価を行い、航跡を特定する処理が航跡候補選択処理21である。この航跡候補選択処理については、図6を参照して後述する。 【0044】航跡候補選択処理21の結果、現在選択している船舶の航跡が確定した後、航跡捜索終了確認処理22において、現在選択している船舶が、船舶および航跡データベース7に登録された最後の船舶であるかどうかを確認する。これが最後の船舶であれば、航跡検出部の処理は終了する。これが最後の船舶でなければ、航跡捜索継続処理23において、次の船舶を選択し、処理19以降の航跡捜索の一連の処理を繰り返し実行する。 【0045】次に、図4に示すフローチャートを参照して航跡検出部5の船舶下側の航跡捜索処理について説明する。船舶の下側に航跡が発生するのは、図13に示すように、船舶が衛星軌道に対して遠ざかる方向に航行している場合である。この際、船舶と航跡の衛星画像上の位置には、ΔAZに相当するアジマス方向の位置ずれが発生する。このずれの範囲は、式(8)で求めたように、0からWIDTHまでの範囲となる。 【0046】まず、船舶下側の航跡捜索開始処理24においては、航跡の捜索をアジマス方向の最下点から開始することとし、この最下点を始点とする航跡の有無を確認する。そのため、捜索の始点位置のレンジ座標(RNG_ORIGIN)とアジマス座標(AZ_ORIGIN)をそれぞれ、下式のように設定する。 RNG_ORIGIN=SHIP_RNG AZ_ORIGIN=SHIP_AZ_WIDTH (9) ここで、SHIP_AZ、SHIP_RNGとあるのは、それぞれ現在航跡の捜索対象としている船舶のアジマス位置とレンジ位置である。 【0047】次に、ハフ変換処理25において、衛星SAR画像上において設定した航跡捜索始点からその周辺に対して捜索角範囲に渡って捜索角度刻み毎にハフ変換を実施し、直線成分の検出評価を行う。図15は衛星SAR画像上で行うハフ変換の位置関係を示すものである。ハフ変換は、航跡捜索始点82から、航跡捜索方向角αの方向に向けてハフ変換積分長Lの長さの範囲に渡り、衛星SAR画像の振幅の積分を行う操作である。α方向のハフ変換結果H(α)は、下式(10)により与えられる。 【0048】 【数1】
【0049】ここで、A(X_RNG,Y_AZ)は、衛星SAR画像の(X_RNG,Y_AZ)位置の振幅を表すものとする。また、lは0からLまでの積分要素である。変換積分長Lは、衛星SAR画像上に現れる航跡長の調査結果に基づいて設定する必要があるが、一般に数100mから数kmの範囲で設定する。ハフ変換処理では、0≦α<2πの範囲の航跡捜索方向角αについて、式(10)に基づく変換を行う。なお、航跡捜索方向角αの刻みは、船舶の航行方向を特定したい所要分解能と計算処理時間の制約から定める。また、近辺の方向については、船舶の像の影響を受けるため、船舶の座標(SHIP_RNG,SHIP_AZ)をハフ変換の範囲から除外して処理を行う。 【0050】ハフ変換統計解析結果処理26においては、現在の航跡捜索始点について、その周辺を各航跡捜索方向角についてハフ変換を行った結果H(α)(0≦α<2π)についてその平均μと標準偏差σを算出する。 【0051】衛星SAR画像上の船舶と航跡の明暗のイメージを図16に示す。船舶85は海面に比してSARレーダ波の反射率が高いため、衛星SAR画像上、周辺の海面よりも明るく(白く)映る。これに対して、航跡は、明るい(白い)航跡86と暗い(黒い)航跡87の2つの部分に分かれて映るのが一般的である。これは、航跡も海面上に完全に静止しているのではなく、船舶の航行方向と同じ方向に若干の速度を持つため、船舶像と同様にアジマス方向に位置がシフトするために起こるものである。 【0052】図16のように、船舶が衛星軌道から遠ざかる方向に航行し、船舶像が上方向にシフトしている場合には、航跡像も上方向にシフトする。航跡像がシフトすることにより、本来の航跡位置は振幅が低下し暗い航跡として現れる。逆に、航跡像がシフトした先においては、本来の海面反射の振幅と航跡像の振幅が重畳されるため明るい航跡として現れる。以上が明るい航跡と暗い航跡が現れる航跡画像のメカニズムであり、衛星SAR画像上、両者を検出処理することが必要である。なお、上記の航跡画像の発生のメカニズムから、航跡の本来の位置は暗い航跡であり、暗い航跡の始点が本来の船舶の位置である。 【0053】暗い航跡検出判定処理27は、暗い航跡の上でハフ変換を行った結果が一般の海面の上でハフ変換を行った結果に対して低い値(H(α))を示すことを利用して暗い航跡の検出を行う。ハフ変換は、線分上の衛星SAR画像の振幅の総和を求める変換処理であるので、暗い航跡上では各点の振幅が低いために、総和も一般の海面に比して小さくなることを利用している。 【0054】前述したハフ変換結果統計解析処理26においては、現在の捜索始点の周囲を全周にわたってハフ変換した結果から平均μと標準偏差σを算出しているが、この統計的集団において、μ−kσを下回るハフ変換結果があった場合には、その結果は集団において特異的に低い値を持つと結論することができる。これを暗い航跡の候補とする。なお、ここで、kの値は、特異値を検出するためのスレッショルドに相当するものであるが、検出成績と勘案して設定するが、通常3程度に設定する。 【0055】暗い航跡方向判定処理28は、暗い航跡検出判定処理27において、同一の航跡捜索始点に対して複数の暗い航跡の候補が検出された際に、その検出状況を評価して、最も確からしい暗い航跡方向を定める処理である。 【0056】前述した暗い航跡検出判定処理27において、暗い航跡の候補が1つのみ検出された場合に、暗い航跡方向判定処理28では、これを直ちに暗い航跡方向の判定結果とする。他方、前述した暗い航跡検出判定処理27において、暗い航跡の候補が複数検出された場合に、暗い航跡方向判定処理28では、0≦α<2πの角度範囲にて暗い航跡候補が最も多く分布する方向を特定(各角度刻み毎の航跡候補の度数を評価)し、まず、その角度域内の候補に絞り込んだ上で、その中の中央値を暗い航跡方向の判定結果とする。 【0057】暗い航跡登録処理29においては、前述した暗い航跡方向判定処理28において判定結果として得た航跡方向を、船舶および航跡データベース7の航跡候補テーブルに登録する。このテーブルは、各船舶について構成するものである。このテーブルは、暗い航跡登録処理29で候補として登録する船舶下側の暗い航跡以外に、明るい航跡登録処理32、航跡検出部5の図5に示す船舶上側の航跡捜索処理における暗い航跡登録処理40、明るい航跡登録処理43において、それぞれ該当の船舶に対する航跡の候補を登録し、航跡検出部5の図6に示す航跡候補選択処理において、それら候補より最終的に航跡を選び出すためのテーブルである。 【0058】登録する情報は、航跡候補種類:「暗い航跡」、航跡候補始点:現時の航跡捜索始点、航跡候補方向:暗い航跡方向判定処理28で得た航跡捜索方向角α、航跡候補得点:|航跡方向おけるハフ変換結果H(α)−μ|/σである。ここで、航跡候補得点は、航跡検出部5の図6に示す航跡候補選択処理で検出した航跡候補(複数)から1つを選択する際の基準とするものであり、検出した航跡候補の振幅が周辺の海面の振幅に対して、どれだけ偏差を持つかを表す指標である。 【0059】前述した暗い航跡検出判定処理27において、暗い航跡の候補が検出されなかった場合は、次に、明るい航跡検出判定処理30において明るい航跡の候補の検出を行う。検出は、暗い航跡検出判定処理27と同様に実施するが、ハフ変換結果が明るい側に偏差を持つ方向を検出するため、μ+kσを上回るハフ変換結果があった場合に明るい航跡の候補とする。 【0060】続いて、明るい航跡方向判定処理31、明るい航跡登録処理32は、それぞれ暗い航跡方向判定処理28、暗い航跡登録処理29と同様の処理であるので、説明を省略する。 【0061】図5に示す航跡検出部5による船舶上側の航跡捜索処理は、図3に示す航跡検出部5によるフローチャートにおいて、船舶下側の航跡捜索処理に続けて実施する処理である。船舶上側の航跡捜索処理は、図4に示す船舶下側の航跡捜索処理とほぼ同じ処理であるが、航跡の捜索範囲を船舶位置の上側とするため、船舶上側の航跡捜索開始処理35において、航跡捜索始点のアジマス位置を下式のように設定する。 AZ_ORIGIN=SHIP_AZ+WIDTH図5に示した船舶上側の航跡捜索処理の内容は、図4の船舶下側の航跡捜索処理とほぼ同じであるので、詳細な説明は省略する。 【0062】次に、図6に示す航跡検出部5による航跡候補選択処理は、図4に示す船舶下側の航跡捜索処理と図5に示す船舶上側の航跡捜索処理のそれぞれにおいて検出した航跡候補から、最も確からしい航跡を選択する処理である。航跡候補は、暗い航跡と明るい航跡があり、船舶が発生する本来の航跡の位置は暗い航跡位置である。従って、暗い航跡が検出可能できた場合には、その暗い航跡を優先して航跡位置とする。暗い航跡が検出できなかった場合には、明るい航跡を船舶の航跡として選択する。 【0063】暗い航跡が複数ある場合、暗い航跡が無く明るい航跡のみが複数ある場合には、同種の航跡の間での選択を行う必要があるが、その際には、図4に示す船舶下側の航跡捜索処理と図5に示す船舶上側の航跡捜索処理のそれぞれにおいて航跡候補に対して付与した得点(海面の平均振幅からの航跡候補の振幅の偏差の程度の評価結果)を参照し、最も得点の高い(海面の平均振幅からの偏差が最も大きい)航跡候補を選択する。 【0064】航跡候補選択処理の流れは以上の通りであり、これに基づいてフローチャートを展開したものが図6である。以上の流れに基づいて一連の処理を実行することにより、最も確からしい航跡の始点位置、航跡方向、航跡種類を特定する。 【0065】まず、図4に示す船舶下側の航跡捜索処理と図5に示す船舶上側の航跡捜索処理において航跡候補テーブルに登録した暗い航跡と明るい航跡をリストアップする処理46を行い、判定処理47において暗い航跡があるか否かを判定する。暗い航跡がある場合は、選択処理48において暗い航跡の中で最も得点の高いものを現在の処理対象船舶の航跡として選択し、続く設定処理49において、船舶および航跡データベース7に現在の処理対象の船舶について航跡有りと設定し、また、航跡始点位置、航跡方向、航跡種類に、選択した航跡候補の値を設定する。 【0066】他方、判定処理47において暗い航跡がないと判定された場合は、判定処理50において明るい航跡があるか否かを判定する。明るい航跡がある場合は、選択処理51において明るい航跡の中で最も得点の高いものを現在の処理対象船舶の航跡として選択し、続く設定処理52において、船舶および航跡データベース7に現在の処理対象の船舶について航跡有りと設定し、また、航跡始点位置、航跡方向、航跡種類に、選択した航跡候補の値を設定する。 【0067】判定処理50において明るい航跡がないと判定された場合は、処理53において現在の処理対象船舶には航跡なしと判定し、続く設定処理54において、船舶および航跡データベース7に現在の処理対象の船舶について航跡無しと設定し、また、航跡始点位置、航跡方向、航跡種類は設定しない。このようにして、最も確からしい航跡の始点位置、航跡方向、航跡種類を特定する。 【0068】次に、図7に示すフローチャートを参照して船舶速度検出部6の動作について説明する。船舶速度検出部6は、図6に示す航跡検出部5による航跡候補選択処理で特定した航跡の始点位置、航跡方向から、船舶の速度と進行方向を検出する処理である。この船舶速度検出部6では、図2に示す船舶検出部4による船舶検出処理で検出し、図6に示す航跡検出部5による航跡候補選択処理により船舶および航跡データベース7に登録した全ての船舶のそれぞれについての速度の検出を行う。 【0069】そのために、まず、航跡速度検出開始処理55において船舶および航跡データベース7から任意に1隻の船舶を選択し、処理を開始する。次に、選択した船舶について、航跡有無確認処理56において、その船舶について図3に示す航跡検出部5による船舶検出処理において航跡が検出されているか否かを確認する。 【0070】確認の結果、航跡が発見されていない場合には、船舶速度検出不能判定処理57において、推定船舶速度を検出不能として設定し、その設定結果を船舶および航跡データベース7に登録した後、船舶速度検出終了確認処理61を行う。 【0071】他方、航跡有無確認処理56において、その船舶について図3に示す航跡検出部4による航跡検出処理において航跡が検出されていると確認した場合は、アジマスシフト・レンジ方向速度算出処理58を実施する。アジマスシフトΔAZは船舶が航行することにより、船舶の像が本来の船舶の位置からアジマス方向に移動した距離であり、船舶の本来の位置は航跡の始点位置から定めることができる。よって、アジマスシフトは下式で算出する。 ΔAZ=AZ_ORIGIN_SHIP_AZ (11) ここで、AZ_ORIGINは、船舶および航跡データベース7から読み出した現在処理中の船舶の航跡始点位置のアジマス座標である。また、SHIP_AZは、同じく船舶のアジマス座標である。 【0072】次に、このアジマスシフトと船舶のレンジ方向速度VRは式(7)の関係があるので、これを逆に解くことにより下式が得られ、これに基づいて船舶のレンジ方向の速度VRを算出する。 VR=(ΔAZ・VSAT)/R (12) なお、式(7)と同様に、Rは衛星と船舶までの距離、VSATは衛星の進行する速度である。 【0073】アジマスシフト・レンジ方向速度算出処理58において得た船舶のレンジ方向速度VRは、船舶の航行速度ベクトルを衛星SAR画像のレンジ方向に投影した長さに一致する。従って、船舶速度算出処理59により、そのレンジ方向速度VRを船舶の航行方向に逆投影変換することにより、船舶の速度を検出することができ、その計算式は下式で与えられる。 VSHIP=VR/cosα (13) ここで、αは船舶の航行方向角であり、VSHIPは船舶の航行速度である。 【0074】続く船舶速度・航行方向登録処理60では、船舶速度算出処理59で検出した船舶の速度航行方向を船舶および航跡データベースに登録し、現在選択している船舶に関する船舶速度検出処理を完了する。 【0075】船舶速度検出終了確認処理61においては、船舶およぼ航跡データベースに登録した全ての船舶について処理が完了したか否かを確認する。処理が完了していれば、船舶速度検出部の処理は完了する。 【0076】未処理の船舶がある場合は、船舶速度検出継続処理62において、次の船舶を選択し、航跡有無確認処理56以降の処理を、全船舶について繰り返し実行する。 【0077】なお、上記実施の形態1では、移動体として船舶、移動軌跡として船舶航跡を例にして説明したものであるが、移動体として車両、移動軌跡として轍、道路、または線路を検出する場合にも本発明を適用できるのは勿論である。 【0078】 【発明の効果】以上のように、この発明によれば、衛星SAR画像上から移動体の画像を検出し、移動体の画像のドップラシフトを考慮した捜索範囲における周辺画素の振幅情報を解析処理することにより移動体の移動軌跡を検出し、その移動軌跡の方向に基づいて移動方向を検出するようにしたので、静止画である衛星SAR画像から移動体の移動方向を正しく検出することができる。 【0079】また、検出した移動軌跡の始点位置と移動体の位置のずれからドップラシフトと船舶のレンジレートを算出し、これと検出した移動航跡の方向に基づいて移動体の移動速度を検出するようにしたので、静止画である衛星SAR画像から移動体の移動速度を正しく検出することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】591102095 【氏名又は名称】三菱スペース・ソフトウエア株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年6月25日(1999.6.25) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100057874 【弁理士】 【氏名又は名称】曾我 道照 (外6名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−4398(P2001−4398A) |
| 【公開日】 |
平成13年1月12日(2001.1.12) |
| 【出願番号】 |
特願平11−180048 |
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