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【発明の名称】 樹脂材の厚み測定方法及びその装置
【発明者】 【氏名】飯塚 幸理

【氏名】上杉 満昭

【要約】 【課題】固相と液相とを含む樹脂材の厚みを高い精度で測定する。

【解決手段】本発明は、固相と液相とを含む樹脂材10の厚みdを超音波11を用いて測定する樹脂材の厚み測定方法において、超音波11が樹脂材10の固相及び液相の各相をそれぞれ伝搬する伝搬時間Δt1、Δt2を測定し、操業パラメータから樹脂材の各相の厚み方向の温度分布T1(x)、T2(x)を算出し、この厚み方向の温度分布から各相を伝搬する超音波の音速を補正し、この補正された各相の音速C1、C2と測定した各相の伝搬時間とで各相の厚みd1、d2を求め、この求めた各相の厚みを加算して樹脂材10全体の厚みdを得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 固相と液相とを含む樹脂材の厚みを超音波を用いて測定する樹脂材の厚み測定方法において、前記超音波が樹脂材の固相及び液相の各相をそれぞれ伝搬する伝搬時間を測定し、操業パラメータから前記樹脂材の各相の厚み方向の温度分布を算出し、この厚み方向の温度分布から各相を伝搬する超音波の音速を補正し、この補正された各相の音速と前記測定した各相の伝搬時間とで前記各相の厚みを求め、この求めた各相の厚みを加算して前記樹脂材の厚みを得ることを特徴とする樹脂材の厚み測定方法。
【請求項2】 固相と液相とを含む樹脂材の厚みを超音波を用いて測定する樹脂材の厚み測定方法において、前記超音波が樹脂材の固相及び液相の各相をそれぞれ伝搬する伝搬時間を測定し、操業パラメータから前記樹脂材の各相の厚み方向の温度分布を算出し、この厚み方向の温度分布と前記樹脂材内における音速の温度特性とから前記各相の厚み方向の音速分布を算出し、この各相の厚み方向の音速分布の平均音速を算出し、この各相の平均音速と前記測定した各相の伝搬時間とで前記各相の厚みを求め、この求めた各相の厚みを加算して前記樹脂材の厚みを得ることを特徴とする樹脂材の厚み測定方法。
【請求項3】 固相と液相とを含む樹脂材の厚みを超音波を用いて測定する樹脂材の厚み測定装置において、前記樹脂材に印加された超音波が前記樹脂材の厚み方向を往復する過程で発生する表面エコーと固相と液相との境界面エコーと底面エコーとから、前記超音波が固相及び液相の各相をそれぞれ伝搬する伝搬時間を測定する伝搬時間測定手段と、操業パラメータから前記樹脂材の固相及び液相の各相の厚み方向の温度分布を算出する温度分布算出手段と、この温度分布算出手段で算出された各相の温度分布から各相を伝搬する超音波の音速を補正する音速補正手段と、この音速補正手段で補正された各相の音速と前記伝搬時間測定手段で測定された各相の伝搬時間とで各相の厚みを求めて、この求めた各相の厚みを加算して前記樹脂材の厚みを得る厚み算出手段とを備えたことを特徴とする樹脂材の厚み測定装置。
【請求項4】 固相と液相とを含む樹脂材の厚みを超音波を用いて測定する樹脂材の厚み測定装置において、前記樹脂材に印加された超音波が前記樹脂材の厚み方向を往復する過程で発生する表面エコーと固相と液相との境界面エコーと底面エコーとから、前記超音波が固相及び液相の各相をそれぞれ伝搬する伝搬時間を測定する伝搬時間測定手段と、操業パラメータから前記樹脂材の固相及び液相の各相の厚み方向の温度分布を算出する温度分布算出手段と、前記樹脂材を伝搬される超音波の音速の温度特性を記憶する音速温度特性記憶部と、前記温度分布算出手段で算出された各相の厚み方向の温度分布と前記音速温度特性記憶部から読出した音速の温度特性から前記各相の厚み方向の音速分布を算出する音速分布算出手段と、この音速分布算出手段で算出された各相の厚み方向の音速分布の平均音速を算出する平均音速算出手段と、この平均音速算出手段で算出された各層の平均音速と前記伝搬時間測定手段で測定された各相の伝搬時間とで各相の厚みを求めて、この求めた各相の厚みを加算して前記樹脂材の厚みを得る厚み算出手段とを備えたことを特徴とする樹脂材の厚み測定装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂材の製造工程において超音波を用いてこの樹脂材の厚みを測定する樹脂材の厚み測定方法及び樹脂材の厚み測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレン管や被覆装鋼管の製造工程においては、樹脂材を押出しダイスから引き抜いて冷却することにより該当ポリエチレン管や被覆装鋼管を製造する。この製造工程において、製造された製品である樹脂材の厚み(管の肉厚)を目標値に制御することは重要な管理項目である。オンラインで連続して製造されている樹脂材(管)の厚み制御は、押出し機(押出しダイス)の下流において測定した厚みを基に、押出し温度・押出しダイスの間隔・押出し速度を適切な値に設定して行なわれる。
【0003】一般的に管の厚み(肉厚)を外周面から測定する測定装置として超音波厚み測定法が用いられる。この超音波厚み測定法においては、測定対象の樹脂材の外側に超音波探触子を配置し、樹脂材に超音波を印加して、樹脂材の表面エコーと底面エコー、またはその多重反射エコーの往復の伝播時間Δtを測定する。樹脂材内を伝搬する超音波の音速をCとすると、樹脂材の厚みdは、(1)式で求まる。
【0004】
d=C・Δt/2 …(1)ここで、樹脂材内を伝搬する超音波の音速Cは樹脂材の種類や温度によって異なるので、一般に値を変更できるようになっており、樹脂材の種類やサイズに応じた値を設定して測定を開始する。
【0005】さて、製造製品である樹脂材の厚みを制御し、製品の歩留りや材料原単位を低く抑えるためには、できる限り押出しダイスの近くで厚みを測定する必要がある。しかし、押出しダイスの近くでは測定対象である樹脂材の温度が高く、また引き抜き速度や冷却時間により温度が一定でない。
【0006】一般的に、樹脂材内における超音波の音速Cは温度に大きく依存するため、温度が不安定であると厚みの測定精度が低くなる問題がある。
【0007】このような不都合を解消するために、測定対象である樹脂材の表面温度を測定する手法が提唱されている(特開昭58−186010号公報)。
【0008】例えば、図6に示すように、ポリエチレン管からなる測定対象の樹脂材1の外周面に垂直型の超音波探触子2を取付け、この超音波探触子2に超音波送受信器3からパルス信号を超音波探触子2へ送出して、超音波送受信器3で超音波探触子2からのエコー信号aを検出して、伝搬時間検出部4で、エコー信号aにおける表面エコーb1と底面エコーb2との時間差で示される往復の伝搬時間Δtが求まる。検出された伝搬時間Δtは厚み算出部5へ入力される。
【0009】一方、温度検出器6は、樹脂材1の表面温度TSを測定して、音速補正部7へ送出する。音速補正部7は、入力された表面温度TSで音速Cを補正して、補正後の音速Cを厚み算出部5へ送出する。厚み算出部5は補正後の音速Cを用いて、前述した(1)式を用いて、樹脂材1の厚みdを算出する。
【0010】しかしながら、図6に示す手法では、樹脂材1の厚みが厚い場合には樹脂材1の厚み方向に大きな温度分布があるため、表面温度TSで樹脂材1全体の温度を代表させることは困難である。したがって、算出された樹脂材1の厚みdの算出精度はあまり向上しない。
【0011】さらに、このような不都合を解消するために、特開昭61−251707号公報に、操業パラメータを用いて測定対象である樹脂材内の厚み方向の温度分布を求め、この温度分布から平均温度Tmを求めてその時の音速Cを用いて前述した(1)式で樹脂材の厚みdを算出するようにしている。
【0012】なお、操業パラメータとは、樹脂材における測定位置の表面温度、または材料の押出し温度、公称厚み、冷却時間、滞留時間等である。そして、これらを基に樹脂材内の厚み方向の温度分布を推定する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この操業パラメータを用いて温度分布を求めて、さらに平均温度Tmを求める手法においても未だ解消すべき次のような課題があつた。
【0014】すなわち、測定対象の樹脂材が樹脂管のように測定すべき部分の肉厚が厚く、しかも押出しダイス直後の冷却開始直後の位置で厚みを測定する場合には、樹脂管内部における冷却している外周面近傍は固相となっていても内周面近傍はまだ液相である。
【0015】樹脂材内を伝搬する超音波の音速は固相を伝搬する場合と液相を伝搬する場合とで大きく異なるため、平均温度Tmに相当する音速Cで厚みdを測定したとしても、その測定精度をある程度上昇させることはできない。
【0016】図7は樹脂材内を伝搬する超音波の音速の温度特性を示す図である。図示するように、温度Tが低下して、液相から固相を変化する融点温度TM近傍で音速Cが急激に変化していることが理解できる。温度Tが固相内のみで変化するならばほぼ音速Cは温度Tに対して直線となっており、樹脂材が固相の場合は平均温度Tmの時の音速Cを用いて厚みを求めても問題はない。
【0017】しかしながら、樹脂材に液相も含まれている場合は、例えば平均温度が100℃位とすると、上述した処方によると固相の音速を用いて厚みを求めることとなるが、液相の部分の音速Cが非常に遅いため、超音波の伝播時間には大きな影響があり、実際の平均音速は平均温度に相当する音速とはならない。この理由は、正確には、超音波の伝播時間Δtは(2)式のように、音速C(x)の逆数を積分した形で表されるためである。
【0018】
【数1】

【0019】以上のように、上述した各測定手法においては、樹脂材の厚み測定において、測定対象の樹脂材に液相が含まれていると測定精度が大幅に低下する問題があった。
【0020】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、固相と液相とで個別に厚みを求めることにより、たとえ測定対象の樹脂材に液相が含まれるとしても、樹脂材の厚みを高い精度で測定できる樹脂材の厚み測定方法及び樹脂材の厚み測定装置を提供することを目的とする。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、固相と液相とを含む樹脂材の厚みを超音波を用いて測定する樹脂材の厚み測定方法に適用される。そして、上記課題を解消するために、本発明の請求項1の樹脂材の厚み測定方法においては、超音波が樹脂材の固相及び液相の各相をそれぞれ伝搬する伝搬時間を測定し、操業パラメータから樹脂材の各相の厚み方向の温度分布を算出し、この厚み方向の温度分布から各相を伝搬する超音波の音速を補正し、この補正された各相の音速と測定した各相の伝搬時間とで各相の厚みを求め、この求めた各相の厚みを加算して樹脂材の厚みを得るようにしている。
【0022】また、請求項2の樹脂材の厚み測定方法においては、超音波が樹脂材の固相及び液相の各相をそれぞれ伝搬する伝搬時間を測定し、操業パラメータから樹脂材の各相の厚み方向の温度分布を算出し、この厚み方向の温度分布と樹脂材内における音速の温度特性とから各相の厚み方向の音速分布を算出し、この各相の厚み方向の音速分布の平均音速を算出し、この各相の平均音速と測定した各相の伝搬時間とで各相の厚みを求め、この求めた各相の厚みを加算して樹脂材の厚みを得るようにしている。
【0023】さらに、本発明は固相と液相とを含む樹脂材の厚みを超音波を用いて測定する樹脂材の厚み測定装置に適用される。
【0024】そして、上記課題を解消するために、本発明の請求項3の樹脂材の厚み測定装置においては、樹脂材に印加された超音波が樹脂材の厚み方向を往復する過程で発生する表面エコーと固相と液相との境界面エコーと底面エコーとから、超音波が固相及び液相の各相をそれぞれ伝搬する伝搬時間を測定する伝搬時間測定手段と、操業パラメータから樹脂材の固相及び液相の各相の厚み方向の温度分布を算出する温度分布算出手段と、この温度分布算出手段で算出された各相の温度分布から各相を伝搬する超音波の音速を補正する音速補正手段と、この音速補正手段で補正された各相の音速と伝搬時間測定手段で測定された各相の伝搬時間とで各相の厚みを求めて、この求めた各相の厚みを加算して樹脂材の厚みを得る厚み算出手段とを備えている。
【0025】請求項4の樹脂材の厚み測定装置においては、樹脂材に印加された超音波が樹脂材の厚み方向を往復する過程で発生する表面エコーと固相と液相との境界面エコーと底面エコーとから、超音波が固相及び液相の各相をそれぞれ伝搬する伝搬時間を測定する伝搬時間測定手段と、操業パラメータから樹脂材の固相及び液相の各相の厚み方向の温度分布を算出する温度分布算出手段と、樹脂材を伝搬される超音波の音速の温度特性を記憶する音速温度特性記憶部と、温度分布算出手段で算出された各相の厚み方向の温度分布と音速温度特性記憶部から読出した音速の温度特性から各相の厚み方向の音速分布を算出する音速分布算出手段と、この音速分布算出手段で算出された各相の厚み方向の音速分布の平均音速を算出する平均音速算出手段と、この平均音速算出手段で算出された各層の平均音速と伝搬時間測定手段で測定された各相の伝搬時間とで各相の厚みを求めて、この求めた各相の厚みを加算して樹脂材の厚みを得る厚み算出手段とを備えている。
【0026】このように構成された請求項1、3の厚み測定方法及び厚み測定装置においては、超音波が測定対象の樹脂材の固相及び液相を伝搬する各伝搬時間が測定される。その手法を説明する。樹脂材の固相の音響インピーダンスと液相の音響インピーダンスとでは微小ながら差がある。したがって、超音波が固相と液相との堺を通過する時に境界面エコーが発生する。表面エコーと底面エコーとは元々発生するので、表面エコーと底面エコーと境界面エコーとの発生時間間隔から、固相及び液相を伝搬する各伝搬時間が求まる。
【0027】そして、操業パラメータから樹脂材全体の厚み方向の温度分布が算出される。なお、操業パラメータとは、前述したように、樹脂材における測定位置の表面温度、または材料の押出し温度、公称厚み、冷却時間、滞留時間等である。樹脂材の融点温度は既知であるので、樹脂材全体の温度分布が求まると、各相の概略の温度分布が求まる。各相を伝搬する超音波の音速は温度に依存するので、各相の概略の温度分布が求まると、各相を伝搬する超音波の音速を補正することができる。
【0028】したがって、各相の伝搬時間と各相の音速とで各相の厚みが算出されるので、各相の厚みを加算することによって樹脂材全体の厚みが得られる。
【0029】このように、超音波の音速が大きく異なる固相と液相との各相における音速を個別に求め、各相の厚みを個別に求めている。したがって、樹脂材全体の厚みをより正確に測定できる。
【0030】また、請求項2、4の厚み測定方法及び厚み測定装置においては、各相の温度分布と音速の温度特性とから樹脂材の各相の厚み方向の各位置における音速が正確に得られる。
【0031】したがって、各相の各厚み方向位置の平均音速が求まる。この各相の平均音速と測定した各相の伝搬時間とで各相の厚みが算出される。各相の厚みを加算することによって樹脂材全体の厚みが得られる。
【0032】このように、樹脂材の各相の厚み方向の平均音速が高い精度で求まるので、最終の樹脂材の厚みが高い精度で算出される。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。
(第1実施形態)図1は本発明の第1実施形態に係る樹脂材の厚み測定方法が適用された樹脂材の厚み測定装置の概略構成を示すブロック図である。この実施形態の樹脂材の厚み測定装置は、例えば、ポリエチレン管の製造ラインの押出しダイスの近傍位置に設置されている。
【0034】ポリエチレン管等の測定対象の樹脂材10の外周面10aに微小間隔を開けて配設された垂直型の超音波探触子12は超音波送受信器13からパルス信号が印加されると、樹脂材10に対して超音波11を送出すると共に、表面(外周面10a)及び底面(内周面10b)で反射された各反射波をエコー信号aとして、超音波送受信器13へ送信する。
【0035】超音波送受信器13は、この超音波探触子12へパルス信号を送出して、この超音波探触子12からエコー信号aを受信して、固相伝搬時間算出部14a及び液相伝搬時間算出部14bへ送出する。エコー信号aには、図示するように、樹脂材10の表面(外周面10a)で反射される表面エコーb1と底面(内周面10b)で反射される底面エコーb2との他に、信号レベルは小さいが、固相と液相との境界面で反射される境界面エコーb3とがある。なお、管状の樹脂材10において、冷却過程で固相と液相とが存在する場合、冷却効果が大きい外側が固相となり、冷却効果が小さい内側が液相となる。
【0036】固相伝搬時間算出部14aは、入力されたエコー信号aにおける表面エコーb1と境界面エコーb3との時間差で示される固相の往復の伝搬時間Δt1を算出して次の固相厚み算出部15aへ送出する。同様に、液相伝搬時間算出部14bは、入力されたエコー信号aにおける境界面エコーb3と底面エコーb2との時間差で示される液相の往復の伝搬時間Δt2を算出して次の液相厚み算出部15bへ送出する。
【0037】なお、各相の伝播時間Δt1、Δt2の測定方法としては、表面エコーb1と底面エコーb2と境界面エコーb3について予め設定されたしきい値をエコーが超えた時間間隔をクロックで測定する方法が一般的である。なお、その他、エコー信号aをA/D変換して二つのエコーのピーク間隔を求めたり相互相関を求めたりしてもよい。ここで、境界面エコーb3は表面エコーb1や底面エコーb2と比べるとそのレベルが非常に小さいので、しきい値を使う方法の場合は、表面エコーb1または底面エコーb2を検出する際に比較して、境界面エコーb3を検出する際は1/10以下の値とする。また、境界面エコーb3の部分のみ超音波送受信器13の増幅率を高めてもよい。
【0038】表面温度計16は測定対象の樹脂材10の厚み測定位置での表面温度を測定して操業パラメータ入力部18へ送出する。また、冷却時間カウンタ17aは押出しダイスから樹脂材10が押し出されて厚み測定位置に達するまでの時間で示される冷却時間を計測して操業パラメータ入力部18へ送出する。具体的には、冷却時間は樹脂材10の搬送速度で定まる。
【0039】さらに、滞留時間カウンタ17bは樹脂材10の押出しダイス内の滞留時間を測定して操業パラメータ入力部18へ送出する。また操業パラメータ入力部18には操作者が設定する公称厚み(目標厚み)dSが入力される。操業パラメータ入力部18は、入力された表面温度、冷却時間、滞留時間、公称厚みdSを操業パラメータとして、例えば1秒周期で、固相温度分布算出部19a及び液相温度分布算出部19bへ送出する。
【0040】固相温度分布算出部19a及び液相温度分布算出部19bは1秒周期で入力される操業パラメータを用いて、図2に示す測定対象の樹脂材10の厚み方向の温度分布T(x)を算出する。但し、変数xは樹脂材10の表面からの厚み方向の距離である。具体的には、温度分布T(x)は熱伝導計算により容易に計算できる。例えば、樹脂料10の熱伝導率、比熱、密度、押出し温度、冷却時の熱伝達係数を初期値として、冷却時間が経過していく時の温度分布は、熱伝導方程式を差分法などで解けばよい。
【0041】融点温度TMは樹脂材10の材質が定まれば、ほぼ一義的に定まるので、固相範囲の温度分布T1(x)と液相範囲の温度分布T2(x)とが求まる。
【0042】固相温度分布算出部19a、液相温度分布算出部19bは、1秒周期で算出した図2に示す樹脂材10における固相範囲の温度分布T1(x)、液相範囲の温度分布T2(x)をそれぞれ固相平均温度算出部20a、液相平均温度算出部20bへ送出する。
【0043】固相平均温度算出部20a、液相平均温度算出部20bは、1秒周期で入力された固相範囲の温度分布T1(x)、液相範囲の温度分布T2(x)における固相平均温度Tm、液相平均温度Tm2を算出して固相音速補正部21a、液相音速補正部21bへ送出する。具体的には、各相の温度分布T1(x)、液相範囲の温度分布T2(x)の中間温度を各平均温度Tm、Tm2とする。図2の例では、各平均温度はTm=87.8℃、Tm2=146.4℃である。
【0044】固相音速補正部21a、液相音速補正部21bは、1秒周期で入力された固相平均温度Tm、液相平均温度Tm2を用いて、固相及び液相内を伝搬する超音波11の各音速を補正して、補正後の各音速C1、C2を固相厚み算出部15a、液相厚み算出部15aへ送出する。
【0045】具体的には、図7に示した音速の温度特性C(T)において、固相の音速は室温から120℃の融点温度TMまでほぼ直線なので、中間の70℃の値である2234m/sを固相における基準音速CS1とする。また、液相においては、120℃の融点温度TMから通常の押出し温度200℃までほぼ直線なので、中間の160℃の値である1178m/sを液相における基準音速CS2とする。
【0046】そして、測定された各平均温度Tm、Tm2と各中間の温度70℃、160℃との差で各基準音速CS1、CS2を補正して、固相及び液相の各音速C1、C2を得る。
【0047】固相厚み算出部15aは、固相伝搬時間算出部14aから入力された伝搬時間Δt1と固相音速補正部21aから入力された音速C1から(3)式を用いて固相の厚みd1を算出する。
1=C1Δt1/2 …(3)同様に、液相厚み算出部15bは、液相伝搬時間算出部14bから入力された伝搬時間Δt2と液相音速補正部21bから入力された音速C2から(4)式を用いて液相の厚みd2を算出する。
2=C2Δt2/2 …(4)厚み算出部22は固相厚み算出部15aで算出された固相の厚みd1と液相厚み算出部15bで算出された液相の厚みd2とを加算して測定対象の樹枝材10全体の厚みdを算出して、出力部23を介して出力する。
【0048】
d=d1+d2 …(5)このように構成された第1実施形態の樹枝材の厚み測定装置においては、超音波11が測定対象の樹脂材10の固相及び液相を伝搬する各伝搬時間Δt1、Δt2が測定される。そして、操業パラメータから樹脂材10の固相及び液相の厚み方向の温度分布T1(x)、T2(x)が算出され、固相及び液相の平均温度Tm1、Tm2が算出される。各相を伝搬する超音波11の音速C1、C2がこの平均温度Tm1、Tm2で補正される。次に、各相の伝搬時間と各相の音速とで各相の厚みd1、d2が算出されるので、各相の厚みを加算することによって樹脂材10全体の厚みdが得られる。
【0049】このように、超音波11の音速Cが大きく異なる固相と液相との各相における音速C1、C2を個別に求め、各相の厚みd1、d2を個別に求めている。したがって、樹脂材10全体の厚みdをより正確に測定できる。
【0050】ここで、厚みd=10mm、押出しダイス直後の200℃のポリエチレン管を管の外周面から150秒間冷却した時点における厚みdの測定結果について検証する。
【0051】樹枝材10の固相における超音波11の伝播時間はΔt1=5.071μs、液相の伝播時間はΔt2=8.033μsであり、上記の設定した基準音速CS1=2234m/s、CS2=1178m/sから、固相の厚みはd1=5.66mm、液相の厚みはd2=4.73mm、樹枝材10全体の厚みd=10.39mmと算出される。
【0052】さらに、操業パラメータから温度分布を求めると、図2のようであった。図2の計算では計算の基礎となる厚みを公称厚みdSである10mmとして扱っているが、固相と液相の平均温度を求めるにはこれで十分である。
【0053】図2から、固相の平均温度はTm=87.8℃、液相の平均温度はTm2=146.4℃である。これを基に、固相の音速の温度係数―7.5m/s℃、液相の温度係数―2.3m/s℃で厚み補正を行うと、固相の厚みはd1=5.66×(2234-7.5×(87.8-70))/2234=5.33mm液相の厚みはd2=4.73×(1178-2.3×(146.4-160))/1178=4.86mm、樹枝10全体の厚みd=10.19mmとなり、正確な値である厚み10mmにより近い値が得られた。
【0054】一方、固相、液相を考慮しない従来法について示すと、図2より平均温度は116.3℃であり、この時の音速Cは図7より1856m/sとなる。伝播時間はΔt=13.104μsであるので、厚みはd=12.16mmとなり、非常に誤差が多い結果であった。
【0055】(第2実施形態)図3は本発明の第2実施形態に係る樹脂材の厚み測定方法が適用された樹脂材の厚み測定装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示す第1実施形態の樹脂材の厚み測定装置と同一部分には同一符号を付して重複する部分の詳細説明を省略する。
【0056】この第2実施形態の厚み測定装置においては、固相温度分布算出部19a及び液相温度分布算出部19bは、入力される操業パラメータを用いて、1秒周期で、図2に示す樹脂材10における固相範囲の温度分布T1(x)、液相範囲の温度分布T2(x)をそれぞれ算出して、固相音速分布算出部24a、液相音速分布算出部24bへ送出する。
【0057】音速温度特性記憶部25内には、前述した図7に示す測定対象の樹脂材10内を伝搬される超音波11の音速の温度特性C(T)が記憶されている。具体的には、図7に示すように、融点温度TM近傍で特性が大きく変化するS字波形を示すので、この温度特性C(T)を、固相の温度特性C1(T)と液相の温度特性C2(T)とに分けて個別に記憶している。そして、それそれ例えば(6)式で示すような5次の多項式で表している。
【0058】
1(T)=a11T+a212+a313+a414+a5152(T)=a12T+a222+a323+a424+a525 …(6)11,a21,a31,a41,a51…係数12,a22,a32,a42,a52…係数なお、融点温度TMの値に応じて各係数a11〜a51、a12〜a52は大きく変化するので、測定対象の樹脂材10毎にこの音速の温度特性C1(T)、C2(T)が記憶保持されている。この音速の温度特性C1(T)、C2(T)は固相音速分布算出部24a、液相音速分布算出部20bへ送出される。
【0059】固相音速分布算出部24aは、1秒周期で、固相温度分布算出部19aから出力された図2に示す樹脂材10内における固相の厚み方向の温度分布T1(x)と音速温度特性記憶部25内に記憶された図7に示す温度特性C1(T)とから、図4の左側に示すような、樹脂材10内における固相の厚み方向の各位置xにおける音速の分布を示す音速分布Cd1(x)を算出する。固相音速分布算出部24aは、1秒周期で、算出した固相の音速分布Cd1(x)を固相平均音速算出部26aへ送出する。
【0060】同様に、液相音速分布算出部24bは、1秒周期で、液相温度分布算出部19bから出力された図2に示す樹脂材10内における液相の厚み方向の温度分布T2(x)と音速温度特性記憶部25内に記憶された図7に示す温度特性C2(T)とから、図4の右側に示すような、樹脂材10内における液相の厚み方向の各位置xにおける音速の分布を示す音速分布Cd2(x)を算出する。液相音速分布算出部24bは、1秒周期で、算出した液相の音速分布Cd2(x)を液相平均音速算出部26aへ送出する。
【0061】固相平均音速算出部26aは、1秒周期で、(7)式を用いて、図2に示す温度分布T(x)から得られる概略の厚みdM1を有する固相の厚み方向の平均音速Cm1を算出する。
【0062】
【数2】

【0063】固相平均音速算出部26aは、1秒周期で、算出した厚み方向の平均音速Cmを固相厚み算出部15aへ送出する。
【0064】同様に、液相平均音速算出部26bは、1秒周期で、(8)式を用いて、図2に示す温度分布T(x)から得られる概略の厚みdM2を有する液相の厚み方向の平均音速Cm2を算出する。なお、樹枝材10の公称厚みはdSである。
【0065】
【数3】

【0066】液相平均音速算出部26bは、1秒周期で、算出した厚み方向の平均音速Cm2を液相厚み算出部15bへ送出する。
【0067】固相厚み算出部15aは、固相伝搬時間算出部14aから入力された伝搬時間Δt1と固相平均音速算出部26aから入力された平均音速Cm1とから(9)式を用いて固相の厚みd1を算出する。
1=Cm1Δt1/2 …(9)同様に、液相厚み算出部15bは、液相伝搬時間算出部14bから入力された伝搬時間Δt2と液相平均音速算出部26bから入力された音速Cm2とから(10)式を用いて液相の厚みd2を算出する。
2=Cm2Δt2/2 …(10)厚み算出部22は固相厚み算出部15aで算出された固相の厚みd1と液相厚み算出部15bで算出された液相の厚みd2とを加算して測定対象の樹枝材10全体の厚みdを算出して、出力部23を介して出力する。
【0068】
d=d1+d2 …(11)このように構成された第2実施形態の樹脂材の厚み測定装置においては、操業パラメータから樹脂材10の固相と液相との各相の厚み方向の各温度分布T1(x)、T2(x)が算出され、この各温度分布T1(x)、T2(x)と音速の温度特性C1(T)、C2(T)とから樹脂材10の固相と液相との各相の厚み方向の各位置xにおける音速Cd1(x)、Cd2(x)が正確に得られる。したがって、(7)、(8)式に示すように、固相と液相との各相の各厚み方向位置xの各音速Cd1(x)、Cd2(x)を累積して、この累積値を図2に示す温度分布T(x)から得られる概略の厚み,dM1、dM2で除算することによって、各相の 厚み方向の平均音速Cm1、Cm2が求まり、この平均音速Cm1、Cm2と伝搬時間Δt1、Δt2とで樹脂材10固相と液相との各相の厚みd1、d2が算出され、これらを加算して樹枝材10全体の厚みdが求まる。
【0069】このように、たとえ樹脂材10内に固相と液相とが存在したとしても、固相と液相との各相の厚み方向の平均音速Cm1、Cm2が高い精度で求まるので、最終の樹脂材10の厚みdがより一層高い精度で算出される。
【0070】図5は、様々の冷却時間で厚みdを従来手法と本発明の実施形態手法とで測定して、その各手法における測定誤差を示す図である。この図5においては、冷却時間が短くなり液相が含まれ始める領域において、従来手法では大きな誤差が生ずるが、本発明の実施形態手法によれば少ない誤差で測定可能である。
【0071】なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、樹脂材10の厚みdを(1)式の代りに(2)式を用いることも可能である。この場合、(2)式を解くためには数値積分を行なえばよく、いくつかの厚みに対して伝播時間を計算し、その値が伝播時間の測定値と等しくなる厚みを探索するようにすればよい。
【0072】また、各実施形態では固相と液相の2相の場合について示したが、3相ないしはそれ以上の相となっている場合でも全く同様に適用できる。
【0073】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の樹脂材の厚み測定方法及び樹脂材の厚み測定装置においては、エコー信号に含まれる境界面エコーを用いて、樹脂材における固相と液相との各相毎に温度分布及び音速を算出して、各相毎に厚みを測定して、後からこれらを加算して樹脂材全体の厚みとしている。
【0074】したがって、たとえ測定対象の樹脂材に液相が含まれるとしても、樹脂材の厚みを高い精度で測定できる。その結果、この厚み測定装置が組込まれた製造ラインで均一な厚みを有した樹脂材を製造できる。また、測定位置を押出しダイスの近くに設置できるため、製造される樹脂材の歩留りを向上できる。
【出願人】 【識別番号】000004123
【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
【出願日】 平成12年1月11日(2000.1.11)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外4名)
【公開番号】 特開2001−194135(P2001−194135A)
【公開日】 平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願番号】 特願2000−2620(P2000−2620)