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【発明の名称】 球体寸法測定方法
【発明者】 【氏名】佐藤 忠一

【要約】 【課題】従来の直径寸法不同及び直径寸法相互差の定義を見直して再定義し、斯かる再定義された直径寸法不同及び直径寸法相互差を使用して球体の寸法精度に関する評価行うことができるようにした。

【解決手段】駆動ローラ3を回転させながら第1及び第2のテーパコーン4、5を互いに逆方向となるように回転させ、スキューが生じない状態で転動体2での平均径寸法d0を計測する。次いで駆動ロ−ラ3を停止させて第1及び第2のテーパコーン4、5を同一方向に自転軸の変化分だけ回転させ、かつテーパコーン4、5を水平方向に対して角度βだけ傾斜させて新自転軸を形成し、斯かる位置で再度平均径寸法d0を計測する。斯かる動作を繰り返すことにより、数箇所以上に設定された各断面での平均径寸法d0を取得し、該平均径寸法d0に基づいて代表直径寸法Dや直径寸法不同Δd、直径寸法相互差ΔD等を算出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数個の球体相互間の寸法精度を計測する球体寸法測定方法において、個々の球体の一断面における直径寸法を計測すると共に、該直径寸法に基づいて前記個々の球体の一断面における平均径寸法を算出し、次いで、前記個々の球体の夫々について数箇所以上の断面を設定して各断面における前記平均径寸法を算出し、該平均径寸法の平均値を個々の球体の代表直径寸法とすると共に、前記平均径寸法の最大値と最小値との差又は前記平均径寸法を統計処理して得られたバラツキ6σ(σは標準偏差)を個々の球体の直径寸法不同とし、さらに、複数個の球体について算出された各代表直径寸法の最大値と最小値との差又は前記代表直径寸法を統計処理して得られたバラツキ6σを前記複数個の球体間の直径寸法相互差とし、前記各球体の直径寸法不同の最大値を前記複数個の球体間の直径寸法不同として、前記各球体相互間の直径寸法に関する精度を計測することを特徴とする球体寸法測定方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は球体寸法測定方法に関し、より詳しくは、転がり軸受の構成部品である転動体等の球体の寸法精度を計測するための球体寸法測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、転がり軸受の転動体等、球体の外径寸法は、図14に示すような寸法測定装置で計測されている。
【0003】すなわち、該寸法測定装置は、支持バー101が基台102に立設されると共に、該支持バー101からは電気マイクロメータ103を備えた測定ヘッド104が突設されている。そして、基台102に載置されたアンビル110と前記電気マイクロメータ103との間に転動体106を挿入又は通過させ、電気マイクロメータ103により転動体106の対角線上の2点間距離を測定して直径寸法を算出し、またマスターボールと比較することにより直径寸法の絶対値を算出している。
【0004】そして、従来は、転動体106を所定角度毎に回転させることにより、直径寸法を数箇所以上の測定点で計測し、1個の球体についての直径寸法の平均値を代表直径寸法D′とし、各直径寸法の最大値d′maxと最小値d′minとの差又は確率統計的なバラツキの管理限界である6σ(σ:標準偏差)(以下、「バラツキ6σ」と記す)を個々の転動体106についての直径寸法不同Δd′としている。また、転がり軸受では、複数個の転動体106を1組として組み込まれるが、各転動体106の代表直径寸法D′の最大値D′maxと最小値D′minの差又は前記代表直径寸法D′のバラツキ6σを前記複数の転動体106間における直径寸法相互差ΔD′とし、各転動体106の直径寸法不同Δd′の最大値を複数個の転動体間の直径寸法不同ΔD′maxとして算出し、転がり軸受に組み込まれる複数個の転動体相互間の寸法精度を評価している。
【0005】ところで、パーソナルコンピュータ(パソコン)等に搭載されるハードディスクドライブ(HDD)用転がり軸受では、回転によって周期的に発生する振動以外の成分を示す非繰返し回転成分(non-repeatable run out;以下「NRRO」という)が高精度であることが必要とされ、また回転部分から発生する音響が小さく、且つ低トルクであることが要求される。
【0006】そして、斯かる観点からNRROの精度を向上させる方策として、軌道輪及び転動体の「うねり」(waviness)の成分を小さく、特に転動体の偶数山成分を小さくした転がり軸受が既に提案されている(特開平8−247151号公報、特開平8−247153号公報)。
【0007】この従来技術によれば、例えば、転動体106の「うねり」の山数が偶数の場合は、図15(a)に示すように、転動体106の直径両端が同時に「うねり」の頂部又は底部に位置し、頂部間の直径寸法aと底部間の直径寸法bとの差が大きくなり、振動の発生する原因となる。一方、「うねり」の山数が奇数の場合は、図15(b)に示すように、転動体106の直径両端のうちの一端が「うねり」の頂部に位置し他端が「うねり」の底部に位置するため、各直径寸法r1、r2、r3の差が殆ど無く、回転精度に影響しない。
【0008】すなわち、「うねり」の山数が奇数の場合は回転精度への影響は比較的小さいが、「うねり」の山数が偶数の場合は直径寸法aと直径寸法bの差が大きいため振動等の発生源になり易く、このため「うねり」の偶数山成分を小さくすることによりNRROの精度を向上させることができると考えられている。
【0009】また、前記NRROに最も大きな影響を及ぼす成分は、転動体106の公転周期成分(=保持器の回転成分;以下、「Fc成分」という)であることが知られており、転動体106の直径寸法のバラツキのFc成分への影響についても種々の解析・実験により解明されている。
【0010】すなわち、例えば、図16に示すように、外輪107と内輪108の間に8個の転動体106が組み込まれる場合、転動体106の直径寸法の大きい順番にNo.1〜No.8とすると、図16(a)に示すように、複数個の転動体間で直径寸法の差が最小となる転動体106同士が対角線上に互いに配設された場合は外輪溝の中心と内輪溝の中心の偏心が小さいため、転動体公転同期の振れであるFc成分は最小値δminとなる。一方、図16(b)に示すように、複数個の転動体間で直径寸法の差が最大となる転動体106同士が対角線上に互いに配設された場合は外輪溝の中心と内輪溝の中心の偏心が最大となってFc成分は最大値δmaxとなる。
【0011】したがって、多数の転がり軸受に対し転動体106を適当に組み込んだ場合、Fc成分の確率密度関数は図17(a)に示すような正規分布を示し、直径寸法相互差ΔD′とFc成分とは図17(b)に示すような関係を有する。
【0012】すなわち、直径寸法相互差ΔD′が大きくなればなる程、正規分布の分布範囲が拡がることとなってFc成分は大きくなる。したがって、直径寸法相互差ΔD′を小さくすることによって最大値δmaxと最小値δminが接近し、これによりFc成分を小さくすることができると考えられる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記直径寸法不同Δd′は、上述したように転動体106の直径寸法d′の最大値d′maxと最小値d′minや直径寸法d′のバラツキ6σに基づいて算出されているため、静止状態における球体の特性を表しているが、転動体106は回転中は時間の経過と共にスキュー運動をしながら転動する。
【0014】すなわち、転がり軸受においては、図18に示すように、転動体106は、外輪107の軌道溝107aと内輪108の軌道溝108aの2接触点で転動すべく自転軸c(接触角γ)を有しており、転動体106は時間の経過と共に少しづつスキューして行き、自転軸cの傾きを逐次変化させながら該自転軸c上を回転する。
【0015】したがって、Fc成分は、短時間的には上記図17に示したように転動体106の直径寸法d′の組み合わせによって決定されるが、長時間的にはスキュー運動に起因する回転軸cの変化による直径寸法の変化、つまり、直径寸法不同Δd′により変化する。すなわち、Fc成分は、転動体106の組み合わせ順序を規格化する直径寸法相互差ΔD′と直径寸法不同Δd′により影響される。
【0016】しかしながら、上述の如く直径寸法不同Δd′を転動体106の直径寸法d′の最大値d′maxと最小値d′minの差として算出した場合、斯かる直径寸法不同Δd′は外輪107に対する外接球と内輪108に対する内接球との差に近く、したがって自転軸cの変化するスキュー運動の過程においては、上記算出された直径寸法不同Δd′はFc成分について直接的に関係付けられるものではないという問題点があった。
【0017】本発明は斯かる問題点に鑑みなされたものであって、従来の直径寸法不同及び直径寸法相互差の定義を見直して再定義し、斯かる再定義された直径寸法不同及び直径寸法相互差を使用して球体の寸法精度に関する評価を行うことができる球体寸法測定方法及びその測定装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】転がり軸受に組み込まれる球体としての転動体2は、図1に示すように微視的には外周面が凹凸状に形成されており、従来の直径寸法不同Δd′は、一般に転動体2の最大値d′maxと最小値d′minとの差、すなわち、数式(1)で定義されている。
【0019】Δd′=d′max−d′min …(1)
一方、転がり軸受では、外輪が回転し、内輪が停止しているときの転動体2の自転速度Nbは、外輪の回転速度をNe、転がり軸受のピッチ円径(PCD)をdmとすると数式(2)で表され、また、保持器の回転速度Ncは数式(3)で表されることが知られている。
【0020】
【数1】

【0021】ここで、γは転動体2の接触角である。
【0022】したがって、数式(2)より数式(4)が成立し、数式(3)より数式(5)が成立する。
【0023】Nb>Ne …(4)
Ne>Nc …(5)
因って、数式(4)、(5)より数式(6)が成立する。
【0024】Nb>Nc…(6)
すなわち、従来の直径寸法不同Δd′は転動体2の回転速度Nbを支配する値であって、保持器の回転速度Nbを支配する値ではなく、しかも、転動体2の回転速度Nbは保持器の回転速度Ncよりもかなり大きい。
【0025】したがって、従来のように2点間距離を測定して直径寸法不同Δd′を算出した場合、該直径寸法不同Δd′は静止状態における転動体2の特性を表すものであり、時間の経過と共に転動体2がスキュー運動して行く過程においてFc成分の影響について直接的に関連付けるものではなく、保持器の回転成分であるFc成分の転がり軸受への影響を直接的に評価するためには直径寸法不同の算出方法(定義)を見直す必要があると考えられる。
【0026】そこで、本発明者が鋭意研究した結果、転動体の回転面、すなわち断面を通るように測定した転動体2の平均径寸法d0からの「ずれ」が振動を支配し、したがってFc成分に最も影響を及ぼすことが判明した。
【0027】すなわち、個々の転動体2について、数箇所以上の各断面で平均径寸法d0を算出し、該算出した平均径寸法d0の平均値を個々の転動体2の代表直径寸法Dとし、該平均径寸法d0の最大値dmaxと最小値dminとの差(又はバラツキ6σ)を直径寸法不同Δdとすることによりスキュー運動時におけるFc成分の影響を直接的に評価することができる。そして、斯かる新たに定義された代表直径寸法D及び直径寸法不同Δdに基づいて複数個の転動体2の直径寸法相互差ΔD及び複数個の転動体2に対する直径寸法不同ΔDmaxを定義し直すことによりスキュー運動時における転動体2の特性を適切に評価することができる。
【0028】したがって、本発明に係る球体寸法測定方法は、複数個の球体相互間の寸法精度を計測する球体寸法測定方法において、個々の球体の一断面における直径寸法を計測すると共に、該直径寸法に基づいて前記個々の球体の一断面における平均径寸法を算出し、次いで、前記個々の球体の夫々について数箇所以上の断面を設定して各断面における前記平均径寸法を算出し、該平均径寸法の平均値を個々の球体の代表直径寸法とすると共に、前記平均径寸法の最大値と最小値との差又は前記平均径寸法を統計処理して得られたバラツキ6σ(σは標準偏差)を個々の球体の直径寸法不同とし、さらに、複数個の球体について算出された各代表直径寸法の最大値と最小値との差又は前記代表直径寸法を統計処理して得られたバラツキ6σを前記複数個の球体間の直径寸法相互差とし、前記各球体の直径寸法不同の最大値を前記複数個の球体間の直径寸法不同として、前記各球体相互間の直径寸法に関する精度を計測することを特徴としている。
【0029】具体的には、上記図1において、角度θにおける転動体2の直径寸法dは、数式(7)で表される。
【0030】
【数2】

【0031】ここで、d0は平均径寸法、φnは位相を示す。
【0032】したがって、数式(7)を0〜π間で積分すると、右辺第2項は「0」となるため、数式(8)が成立する。
【0033】
【数3】

【0034】したがって、転動体2の一断面における平均径寸法d0は数式(9)となる。
【0035】
【数4】

【0036】そして、上述の如く数式(7)の右辺第2項が半周積分により「0」となることから、平均径寸法d0は当該断面における直径寸法dを示すこととなる。
【0037】また、HDD用転がり軸受においては、転動体2の直径寸法は小さいため(例えば、直径2mm)、転動体2を同軸上で複数回転(例えば、5〜10回転)させて得られた値を平均径寸法d0とするのが望ましい。したがって、数式(9)は数式(10)のように書き換えることができる。
【0038】
【数5】

【0039】ここで、mは転動体2を回転させた場合の回転回数である。
【0040】次に、転動体2をスキューさせて数箇所以上の断面設定を行い、各断面での平均径寸法d0(直径寸法d)を計測する。
【0041】具体的には、転動体2の自転軸をI−I軸とし、図2のxyz座標軸においてI−I軸のxy面への投影がx軸となす角度をθx、I−I軸のz軸となす角度をθzとすると、I−I軸は角度θx、θzのパラメータとなる。
【0042】したがって、角度θx、θzは夫々0°〜180°(0〜πラジアン)の間で任意の組み合わせが可能となり、前記角度θx、θzを決めてn個の断面で直径寸法dを計測し、該直径寸法dから平均径寸法d0を算出することができる。
【0043】また、従来では、直径寸法dは、図3に示すように、xy平面を回転軸面Aとし、経線状の測定軌跡Bを描くようにして2点間距離、すなわち直径寸法d′を測定していたが、本発明のように数箇所以上の断面を設定し各断面を通るようにして各断面での直径寸法dを得るためには、三次元的に直径寸法dの測定を行う必要があり、そのためには図4に示すような手毬状の測定軌跡Cを描くようにして直径寸法dを得る必要がある。
【0044】そして、このようにn箇所での平均径寸法d0の平均値d0aveが転動体2の代表直径寸法Dとなる。すなわち、転動体2の代表直径寸法Dは、数式(11)のようになる。
【0045】
D=d0ave=Σd0/n …(11)
そして、n箇所での平均径寸法d0の最大値dmaxと最小値dminとの差を直径寸法不同Δdとすると共に、複数個の転動体2の各々について、上述と同様にして代表直径寸法Dを算出し、次いで、該代表直径寸法Dの最大値Dmaxと最小値Dminの差又は統計処理して得たバラツキ6σを直径寸法相互差ΔDと再定義し、さらに個々の転動体2についての直径寸法不同Δdの最大値を複数個の転動体2についての直径寸法不同ΔDmaxとし、これら新たに定義された代表直径寸法D、個々の転動体2についての直径寸法不同Δd、複数個の転動体間の直径寸法相互差ΔD、複数個の転動体についての直径寸法不同ΔDmaxを算出し、これによりスキュー運動により自転軸が時間の経過と共に逐次変化しても、転がり軸受におけるFc成分の妥当な評価が可能となる。
【0046】尚、手毬状の測定軌跡を描くためには、第1及び第2のテーパ部材と駆動ローラとで転動体2を支持し、次いで駆動ローラを回転させながら第1及び第2のテーパ部材を同一速度で互いに逆方向となるように回転させ、スキューが生じない状態で転動体2の回転軸(図2ではy軸)で直径寸法d、すなわち平均径寸法d0を計測し、この後、駆動ロ−ラを停止させて第1及び第2のテーパ部材を同一方向に同一速度で自転軸の変化分だけ回転させ、かつテーパ部材を水平方向に対して角度βだけ傾斜させて新たな自転軸を形成し、斯かる位置で上述と同様に平均径寸法d0(直径寸法d)を計測する。
【0047】そして、このような動作を繰り返すことにより、数箇所以上に設定された各断面での平均径寸法d0(直径寸法d)を得ることができ、該平均径寸法d0に基づいて代表直径寸法Dや直径寸法不同Δd、直径寸法相互差ΔD等、Fc成分に影響を及ぼすデータを得ることができる。
【0048】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図面に基づき詳説する。
【0049】図5は本発明に係る球体寸法測定方法の一実施の形態を示す斜視図であって、被測定物である転動体2は、回転速度N1で矢印D方向に回転駆動可能とされた駆動ローラ3と、回転速度N2で矢印E方向(正逆両方向)に回転駆動可能とされた第1のテーパコーン4と、回転速度N3で矢印F方向に回転駆動可能とされた第2のテーパコーン5とで支持されている。
【0050】すなわち、転動体2の中心を原点Oとしたxyz座標軸(直交座標軸)において、第1及び第2のテーパコーン4、5は、該テーパコーン4、5間の中心線uと傾斜角度αを有するように配設されると共に、x軸に対して傾斜角度βを有するように配設され、さらにz軸上には上下1対の測定子(第1及び第2の測定子6、7)が転動体2に軽触可能に配設されている。
【0051】そして、本測定方法においては、まず、スキュー運動が生じていない状態での転動体2の直径寸法dを計測する。
【0052】すなわち、駆動ロール3を矢印D方向に回転速度N1で回転させると共に、第2のテーパコーン5を矢印F方向(時計方向)に回転速度N3で回転させ、さらに第1のテーパコーン4を第2のテーパコーン5と逆方向(反時計方向)且つ第2のテーパコーン4と同一回転速度で回転させると(N3=−N2)、転動体2はy軸の周りにm回転だけ自転する。そして、この断面形状における直径寸法dを第1及び第2の測定子6、7で計測することにより、数式(10)から該断面における平均径寸法d0が算出される。
【0053】次に、転動体2をスキューさせる。
【0054】すなわち、駆動ロール3の回転を停止し(N1=0)、第2のテーパコーン5を矢印F方向に回転速度N3で回転させると共に、第1のテーパコーン4を第2のテーパコーン5と同方向且つ第1のテーパコーン4と同一回転速度(N3=N2)でもって転動体2をz軸の周りに角度θzだけ回転させて該転動体2をスキューさせる(第1のスキュー操作)。
【0055】そして、このように転動体2をz軸の周りに角度θzだけ回転させスキューさせた状態で上述と同様に直径寸法dを計測する。
【0056】これにより、図6に示すように第1回目は転動体2はy軸を自転軸とした断面形状2′で直径寸法dを計測することができ、第2回目では角度θzだけ回転したy′軸を自転軸とした断面形状2″での直径寸法dを計測することができる。
【0057】次に、駆動ロール3を矢印D方向、第2のテーパコーン5を矢印F方向(時計方向)に回転速度N3で回転させ、さらに第1のテーパコーン4を第2のテーパコーン5と同方向(時計方向)、且つ第2のテーパコーン5と同一速度で回転させ転動体2を複数回回転させると、第1及び第2のテーパコーン4、5のx軸に対する傾斜角度βの効果により最初の測定状態に対して自転軸はθxだけxy平面内でずれることになる(第2のスキュー操作)。
【0058】したがって、第1のスキュー操作と第2のスキュー操作とを組合わせることにより転動体2の自転軸を三次元的に変えることが可能となる。そしてこの場合、傾斜角度βは小さいので(例えば、5°〜10°)、角度θxと角度θzをほぼ独立に調整することができる。
【0059】このような計測を数箇所以上の断面形状について行って平均径寸法d0を算出して平均径寸法d0の平均値を転動体2の代表直径寸法Dとして算出し、各断面での平均径寸法d0の最大値dmaxと最小値dminとの差を直径寸法不同Δdとすると共に、複数個の転動体2の各々について、上述と同様にして代表直径寸法Dを算出する。そして、算出された代表直径寸法Dの最大値Dmaxと最小値Dminの差又は統計処理して得たバラツキ6σを直径寸法相互差ΔDとし、さらに個々の転動体2についての直径寸法不同Δdの最大値を複数個の転動体2についての直径寸法不同ΔDmaxとする。
【0060】そして、このように新たに定義された代表直径寸法D、個々の転動体2についての直径寸法不同Δd、複数個の転動体間の直径寸法相互差ΔD、複数個の転動体についての直径寸法不同ΔDmaxにより、スキュー運動により自転軸が時間の経過と共に逐次変化しても、転がり軸受におけるFc成分の妥当な評価が可能となる。
【0061】図7は上記測定方法に使用される球体寸法測定装置の平面図であり、図8は図7の正面図である。
【0062】図7及び図8において、駆動ロール3は駆動ロールスピンドル8の回転軸8aに嵌合され、さらに駆動ロールスピンドル8はカップリング9を介してサーボモータ10と連接されている。また、駆動ロールスピンドル8には駆動ローラ3の位置を上下方向(図8中、矢印Gで示す)に調節する楔形状のローラ位置調整機構26が付設されている。
【0063】第1のテーパコーン4はテーパコーンスピンドル11の回転軸11aに嵌合され、さらにテーパコーンスピンドル11はカップリング12を介してサーボモータ13と連接されている。
【0064】同様に、第2のテーパコーン5はテーパコーンスピンドル14の回転軸14aに嵌合され、さらにテーパコーンスピンドル14はカップリング15を介してサーボモータ16と連接されている。
【0065】テーパコーンスピンドル11、14は第1及び第2のテーパコーン4、5が矢印H、I方向に往復運動可能となるようにコーン位置調整機能(不図示)が付設され、また傾斜角度αの調整が可能な傾斜角度調整機能(不図示)が付設されている。尚、本実施の形態ではテーパコーンのx軸との傾斜角度βは固定されている(例えば、5°)また、第1及び第2の測定子6、7は測定ヘッド19、23に装着されると共に、該測定ヘッド19、23にはアーム部22、25が連接され、さらに測定ヘッド19、23は矢印J方向に往復運動可能となるようにスライド17に結合させて該スライド17をサーボモータ(不図示)に接続し、さらに図9に示すように、転動体2の中心に対して対称形をなす多孔質空気軸受18により支持されている。
【0066】さらに、測定ヘッド19、23には、図10に示すように、Z字形状の平行バネ機構21と弾性トルク伝達機構34が設けられ、弾性駆動方式により該測定ヘッド19、23の上下方向への位置調整が行われる。
【0067】また、転動体2の第1及び第2の測定子6、7の接触部分においては、高精度な平面度と平行度が要求されため、図11に示すように、該第1及び第2の測定子6、7の先端にはダイヤモンドコーティング部6a、7aが形成されている。
【0068】さらに、HDD用転がり軸受に使用される転動体2は、直径寸法が約2mm程度と小さいため、図12に示すように、真空ポンプ(不図示)に接続された吸引パイプ35で転動体2を吸引させながら該転動体2が所定位置に搬送されるように構成されている。尚、この場合、転動体2の直径寸法が上述のように小さいため温度変化に敏感であり、したがって構造全体を断熱透明部材で覆ったり、熱膨張係数の小さい材料を使用するのが好ましい。
【0069】このように構成された球体寸法測定装置においては、吸引パイプ35により吸引された転動体2を所定位置に搬送すると共に、第1及び第2のテーパコーン4、5を夫々矢印H方向及び矢印I方向に移動させて第1及び第2のテーパコーン4、5の位置調整を行い、さらにローラ位置調整機構26を操作して駆動ローラ3の位置を調整する。そして、測定ヘッド19、23を矢印J方向及び上下方向に調節し第1及び第2の測定子6、7が転動体2と接触可能となるように位置調整を行う。
【0070】そして、この後、第1及び第2のテーパコーン4、5及び駆動ローラ3の動作を制御することにより、転動体2を少しづつスキューさせて行き、上述のように手毬状の測定軌跡を描きながら測定断面で直径寸法dを計測することができる。
【0071】尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0072】図13は球体寸法測定装置の他の実施の形態を示す要部拡大図であって、本他の実施の形態では、上述した傾斜角度αを「0」とし、且つ第1及び第2のテーパコーン4、5に代えて第1及び第2のテーパディスク41、42を使用したものであり、上述と同様、第1及び第2のテーパディスク41、42、及び駆動ローラ3の駆動を制御することにより、数箇所以上の断面形状において手毬状の測定軌跡を得ることができ、スキュー運動にも適切に対応した寸法精度の評価を行うことができる。
【0073】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係る球体寸法測定方法は、個々の球体の一断面における直径寸法を計測すると共に、該直径寸法に基づいて前記個々の球体の一断面における平均径寸法を算出し、次いで、前記個々の球体の夫々について数箇所以上の断面を設定して各断面における前記平均径寸法を算出し、該平均径寸法の平均値を個々の球体の代表直径寸法とすると共に、前記平均径寸法の最大値と最小値との差又は前記平均径寸法を統計処理して得られたバラツキ6σ(σは標準偏差)を個々の球体の直径寸法不同としているので、前記直径寸法不同は直接的にFc成分を反映したものtなり、時間の経過と共に球体の自転軸が変化しても、該直径寸法不同により球体の振動の影響に関し適正な評価が可能となる。したがって、Fc成分の影響は、短時間的には直径寸法相互差で評価する一方で、長時間的には直径寸法不同により適切に評価することができる。
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成11年11月16日(1999.11.16)
【代理人】 【識別番号】100081880
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 敏彦
【公開番号】 特開2001−141440(P2001−141440A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−325704