| 【発明の名称】 |
液膜の厚さ測定方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】太田 和明
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| 【要約】 |
【課題】測定装置のセンサ等を劣化させず、簡便にかつ精度良く液槽の壁面等に付着した液膜の厚さを求めることができる。
【解決手段】液槽の壁面に形成される液膜の厚さを測定するには、先ず液体14に分析可能な元素13を添加し液体中の元素の濃度Cを求める。次いで液槽の壁面と同一の表面を有する試験片16を用意し、この試験片を元素が添加された液体に浸漬した後に取出して試験片の表面に液膜12を形成する。次に試験片の液体への浸漬表面積Sを求めた後にこの試験片を洗浄して液膜中に含まれる元素を回収し、この回収された元素の重量Wを求める。更に回収された元素の重量Wと試験片の浸漬表面積Sと液体中の元素の濃度Cを用いて試験片の表面に形成された液膜の厚さTを式T=W/(S×C)に基づき算出することにより液槽の壁面の液膜の厚さを求める。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 液槽の壁面又は構造体の表面に液体(14)との濡れにより形成される液膜の厚さを測定する方法において、前記液体(14)に分析可能な元素(13)を添加し前記液体(14)中の元素(13)の濃度(C)を求める工程と、前記液槽の壁面又は前記構造体の表面と同一の表面を有する試験片(16)を用意しこの試験片(16)を前記元素(13)が添加された液体(14)に浸漬した後に取出して前記試験片(16)の表面に液膜(12)を形成する工程と、前記試験片(16)の前記液体(14)への浸漬表面積(S)を求める工程と、前記試験片(16)を洗浄して前記液膜(12)中に含まれる前記元素(13)を回収する工程と、前記回収された元素(13)の重量(W)を求める工程と、前記回収された元素(13)の重量(W)と前記試験片(16)の浸漬表面積(S)と前記液体(14)中の元素(13)の濃度(C)を用いて次式(1)に基づき前記試験片(16)の表面に形成された前記液膜(12)の厚さ(T)を算出することにより前記液槽の壁面又は前記構造体の表面の液膜の厚さを求める工程とを含むことを特徴とする液膜の厚さ測定方法。 T=W/(S×C) …… (1)【請求項2】 回収された元素の重量が化学分析法又は放射線分析法により求められた請求項1記載の液膜の厚さ測定方法。 【請求項3】 分析可能な元素が短寿命の放射性同位元素である請求項1又は2記載の液膜の厚さ測定方法。 【請求項4】 試験片のエッジ部の曲率半径が前記試験片の厚さの1/2である請求項1ないし3いずれか記載の液膜の厚さ測定方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、液槽の壁面や構造体の表面に液体の濡れにより形成される液膜の厚さを測定する方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、この種の液膜の厚さの測定方法として、レーザ光を用いて液槽の壁面や構造体の表面の液膜を直接測定する方法が知られている。この方法では、先ずレーザ光を液槽の壁面等に照射して、液膜の表面及び壁面で反射したレーザ光をセンサ部により受け、反射光の特性より液膜の厚さが測定される。 【0003】一方、板状材に存在する液膜に予めトレーサを混入させ、この板状材の上方よりX線を照射して上記液膜中のトレーサに当て、このトレーサ元素特有の蛍光X線を発生させてこの蛍光X線の量を測定し、この蛍光X線量に基づいて液膜の厚さを測定する板状材上の液膜厚測定方法が開示されている(特開昭63−85307)。この板状材上の液膜厚測定方法では、トレーサを混入した液膜にX線を液膜中のトレーサに当てると、トレーサ元素特有の蛍光X線が液膜の厚さに応じて発生することを利用したものであり、これにより板状材上に存在する液膜の厚さの測定が可能となる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来のレーザ光やX線を用いた測定方法では、液槽の壁面等に形成された液膜を直接測定するため、測定が大掛かりになって測定時間が長くなり、測定中に液膜からの蒸発が進み、測定装置が高価であるにも拘らず精度良く測定できない不具合があった。また液膜を形成する溶液が強い酸化力を有する硝酸や硫酸等の場合には、この蒸気により測定装置のセンサ部が劣化する問題点があった。また核燃料物質を取り扱う施設では、精度良い在庫量の評価が重要であるが、この核燃料の溶液を所定の液槽に入れ、この溶液の重量や体積や核燃料の濃度を測定して核燃料の重量を算出する場合において、この液槽の壁面に核燃料を含む液膜が付着するため、在庫推定の誤差を与える一要因となっていた。本発明の目的は、測定装置のセンサ部等を劣化させず、簡便にかつ精度良く液槽の壁面等に付着した液膜の厚さを求めることができる液膜の厚さ測定方法を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、図1に示すように液槽の壁面又は構造体の表面に液体14との濡れにより形成される液膜の厚さを測定する方法の改良である。その特徴ある構成は、液体14に分析可能な元素13を添加し液体14中の元素13の濃度Cを求める工程と、液槽14の壁面又は構造体の表面と同一の表面を有する試験片16を用意しこの試験片16を元素13が添加された液体14に浸漬した後に取出して試験片16の表面に液膜を形成する工程と、試験片16の上記液体14への浸漬表面積Sを求める工程と、試験片16を洗浄して液膜12中に含まれる元素13を回収する工程と、回収された元素13の重量Wを求める工程と、回収された元素13の重量Wと試験片16の浸漬表面積Sと液体14中の元素13の濃度Cを用いて次式(1)に基づき試験片16の表面に形成された液膜12の厚さTを算出することにより液槽の壁面又は構造体の表面の液膜の厚さを求める工程とを含むところにある。 T=W/(S×C) …… (1)この請求項1に記載された液膜の厚さ測定方法では、液槽の壁面等に付着した液膜の厚さを直接測定するのではなく、液槽の壁面等と同一の表面を有する試験片16に液膜12を付着させ、この液膜12に含まれる元素13を回収してその重量を測定し、試験片16に形成された液膜12の厚さを算出することにより、液槽の壁面等に付着した液膜の厚さを求める。この結果、試験片16表面の液膜12を形成する液が蒸発しても、精度良く液槽の壁面等に付着した液膜の厚さを求めることができる。 【0006】請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に回収された元素の重量が化学分析法又は放射線分析法により求められたことを特徴とする。この請求項2に記載された液膜の厚さ測定方法では、比較的簡便に元素の重量を測定できる。請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、更に分析可能な元素が短寿命の放射性同位元素であることを特徴とする。この請求項3に記載された液膜の厚さ測定方法では、放射性物質の管理が比較的容易になる。 【0007】請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれかに係る発明であって、更に試験片のエッジ部の曲率半径が試験片の厚さの1/2であることを特徴とする。この請求項4に記載された液膜の厚さ測定方法では、エッジ部に形成される付着液の盛り上がりを防止でき、均一な液膜を形成できるので、液膜の厚さの測定精度を更に向上できる。 【0008】 【発明の実施の形態】次に本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、所定の液槽の壁面に形成された液膜の厚さは次の方法により求められる。先ず微量の分析可能な元素13(以下、トレーサという)を添加した液体14を上記液槽とは別の受入槽11に貯留し、この液体14に試験片16を浸漬する(図1(a))。この液体14中のトレーサ13の濃度C(g/cm3又はBq/cm3)は添加したトレーサ13の重量又は放射能及び液体14の体積を測定することにより求められる。トレーサ13としては放射性物質を用いる場合、238U等を用いてもよいが、32P,35S,47Sc,51Cr,59Fe,58Co,86Rb,85Sr,103Ru,124Sb,131Ba,141Ce,147Nd,169Yb,175Yb,181Hf,191Os,198Au,199Au,203Hg等の短寿命の放射性同位元素を用いてもよく、更に上記より短寿命の放射性同位元素を用いてもよい。これらの短寿命の放射性同位元素を用いることにより、放射性物質の管理が比較的容易になる。 【0009】試験片16は上記液槽の壁面と同一の表面を有する、即ち試験片16は液槽の側壁と同一材料により形成されかつ同一の表面粗さを有する。試験片16の上記液体14への浸漬時間は液体14による液槽の側壁の濡れ時間と同一の濡れ時間とし、試験片16の表面を液体14に十分なじませることが好ましい。更に試験片16のエッジ部の曲率半径は試験片16の厚さの1/2であることが好ましい。これはエッジ部に形成される付着液の盛り上がりを防止するためである。 【0010】次いで液体14から試験片16を取出して、試験片16下面の液溜まりを十分に除去した後に(図1(b))、この試験片16の液体14への浸漬表面積S(cm2)を求め、この試験片16を所定の洗浄液17によって洗浄して試験片16に形成された液膜12中に含まれるトレーサ13を回収容器18に回収する(図1(c))。このとき試験片16の表面に付着した液は蒸発していても或いは蒸発していなくてもよく、試験片16の表面に付着したトレーサ13を全て回収できればよい。次にこの回収されたトレーサ13の重量Wを化学分析法のうちの重量法により求める(図1(d)〜図1(f))。即ち回収液19に所定の試薬21を滴下して(図1(d))トレーサ13を沈殿させた後に(図1(e))、この回収液19を電気炉等で加熱して蒸発させると、トレーサ13が粉末として残るので(図1(f))、この粉末の重量を測定することによりトレーサ13の重量W(g)が求まる。更にこのトレーサ13の重量Wと試験片16の浸漬表面積Sと液槽に貯留された液体14中のトレーサ13の濃度Cを用いると、次式(1)より試験片16の表面に形成された液膜12の厚さTが算出される。 T=W/(S×C) …… (1)この結果、試験片16の表面の液膜12の厚さTを液槽の壁面の液膜の厚さとして求めることができる。 【0011】なお、この実施の形態では、トレーサを添加した液体を、液膜の厚さを求めるための所定の液槽とは別の受入槽に貯留したが、トレーサを添加した液体を所定の液槽に貯留し、この液体に試験片を直接浸漬してもよい。また、この実施の形態では、液槽の壁面に形成された液膜の厚さを求めたが、表面をコーティングする必要がある構造体であって、この構造体の表面にコーティングにより形成された液膜の厚さを求める場合にも応用できる。 【0012】図3は本発明の第2の実施の形態を示す。図3において図1と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、回収されたトレーサ13の重量を化学分析法のうちの蛍光X線法により求める(図3(d)及び図3(e))ことを除いて、上記第1の実施の形態と同様の方法で試験片16の液膜12の厚さが測定される。蛍光X線法によりトレーサ13の重量を測定するには、先ず回収液19を1〜10cc濾紙32に滴下し(図3(d))、この濾紙32を蛍光X線分析装置33に入れてX線管33aからX線を濾紙32に照射し、濾紙32中のトレーサ13で反射したこのトレーサ13特有の蛍光X線を検出器33bで受けて(図3(e))、そのトレーサ13の濃度を測定する。次にこのトレーサ13の濃度に回収液19の液量を掛けることによりトレーサ13の重量が求まる。上記トレーサ13の濃度は検量線法や実験的補正係数法や基本パラメータ法等により測定される。なお、第1及び第2の実施の形態では、トレーサの重量を化学分析法により求めたが、極めて薄い液膜の厚さを測定する場合には、更に感度の高い放射線検出器(放射線分析法)により測定してもよい。 【0013】 【実施例】次に本発明の実施例を説明する。 <実施例1〜3>図1(a)、図1(b)、図3(a)及び図3(b)に示すように、液槽の壁面に形成される液膜を求めるために、試験片16と、上記液槽とは別の受入槽11に貯留された液体14とを用意した。上記液槽の壁面の表面粗さはRmax 6.3Sであった。液体14に浸漬される試験片16は上記液槽と同一の材質及び表面粗さを有し、長さ×幅×厚さが750mm×100mm×5mmとした。また試験片16のエッジ部の曲率半径は2.5mmとした。この試験片16を3本用意し、それぞれ上記液体に10分間浸漬して取出し、浸漬深さ及び浸漬表面積Sを測定した。上記液体14は硝酸ウラニル溶液からなる液体であり、硝酸にトレーサ13、即ちウラン(238U)を添加することにより作製した。この硝酸ウラニル溶液のウラン13濃度Cは180gU/リットルであり、ウラン13と結合していないフリーの硝酸の濃度は6.57Nであった。これらの試験片16をそれぞれ実施例1〜3とした。また液体14の密度及び粘性を測定した。これらの測定値を表1に示す。 【0014】<実施例4〜6>液膜を測定する液体として、ウラン濃度Cが260gU/リットルであり、ウランと結合していないフリーの硝酸の濃度が3.1Nである硝酸ウラニル溶液を用いた。この濃度の点を除いて液体は実施例1〜3と同一に構成した。また実施例1〜3と同一の試験片を3本用意し、それぞれ上記硝酸ウラニル溶液からなる液体に10分間浸漬して取出し、浸漬深さ及び浸漬表面積Sを測定した。これらの試験片をそれぞれ実施例4〜6とした。また上記硝酸ウラニル溶液からなる液体の密度及び粘性を測定した。これらの測定値を表1に示す。 【0015】<実施例7〜9>液膜を測定する液体として、ウラン濃度Cが325gU/リットルであり、ウランと結合していないフリーの硝酸の濃度が0.5Nである硝酸ウラニル溶液を用いた。この濃度の点を除いて液体は実施例1〜3と同一に構成した。また実施例1〜3と同一の試験片を3本用意し、それぞれ上記硝酸ウラニル溶液からなる液体に10分間浸漬して取出し、浸漬深さ及び浸漬表面積Sを測定した。これらの試験片をそれぞれ実施例7〜9とした。また上記硝酸ウラニル溶液からなる液体の密度及び粘性を測定した。これらの測定値を表1に示す。 【0016】 【表1】
【0017】<評価>実施例1〜9の試験片16の表面に希硝酸17を流して(図1(c)及び図3(c))、これらの試験片16に付着したウラン13をそれぞれ回収し、これらの回収液19の液量をそれぞれ測定した。次にこれらの回収液19中のウラン13の重量を蛍光X線法及び重量法により測定した。蛍光X線法では、先ずこれらの回収液19を5ccずつ濾紙32にそれぞれ滴下し、蛍光X線法により上記回収液19の濃度をそれぞれ測定した(図3(d)及び図3(e))。次にこれらのウラン13濃度に上記回収液19の液量を掛けてウラン13の重量Wをそれぞれ算出し、試験片16の表面に形成された液膜12の厚さTを式T=W/(S×C)より求めた。 【0018】一方、重量法では、先ず回収液19にアンモニア21を5cc滴下して(図1(d))ウラン13を沈殿させた後に(図1(e))、この回収液19を電気炉に入れて800℃で加熱して蒸発させた(図1(f))。次に粉末として残ったウラン13の重量Wを測定し、試験片16の表面に形成された液膜12の厚さTを式T=W/(S×C)より求めた。 【0019】 【表2】
【0020】表2から明らかなように、実施例1〜9の液膜の厚さのばらつきは少なく、それぞれの試験条件で5μm程度の液膜の厚さを精度良く得ることができた。 【0021】 【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、分析可能な元素を添加した液体中の元素の濃度Cを求め、液槽の壁面等と同一表面を有する試験片を上記液体に浸漬した後に取出して試験片の表面に液膜を形成し、試験片の液体への浸漬表面積Sを求めた後にこの試験片を洗浄して液膜中に含まれる元素を回収し、更に回収された元素の重量Wを求めて試験片の表面に形成された液膜Tの厚さを式T=W/(S×C)に基づき算出することにより液槽の壁面等の液膜の厚さを求めたので、測定が大掛かりになって測定時間が長くかつ測定精度の低い従来のレーザ光やX線を用いて液膜の厚さを直接測定する方法と比較して、本発明では簡便にかつ精度良く液槽の壁面等に付着した液膜の厚さを求めることができる。また試験片表面に付着したトレーサを回収することにより液槽の壁面等に形成された液膜の厚さを求めるため、試験片を液体から取出した後の試験片の濡れの状況、即ち試験片の表面に付着した液の蒸発に影響されずに、精度良く測定できる。特に、本発明の液膜の厚さ測定方法は、核燃料物質の在庫量の精度良い推定が必要となる原子力分野、或いは金属表面へのコーティングにおいて液膜の精度よい測定が必要となる分野において極めて有効である。 【0022】また回収された元素の重量を化学分析装置又は放射線分析装置により求めれば、比較的簡便に元素の重量を測定できる。また分析可能な元素として短寿命の放射性同位元素を用いれば、放射性物質の管理が比較的容易になる。更に試験片のエッジ部の曲率半径を試験片の厚さの1/2とすれば、エッジ部に形成される付着液の盛り上がりを防止でき、均一な液膜を形成できるので、液膜の厚さの測定精度を更に向上できる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006264 【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年11月11日(1999.11.11) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100085372 【弁理士】 【氏名又は名称】須田 正義
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| 【公開番号】 |
特開2001−141439(P2001−141439A) |
| 【公開日】 |
平成13年5月25日(2001.5.25) |
| 【出願番号】 |
特願平11−321654 |
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