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【発明の名称】 評価面の粗さ測定方法および評価面の粗さ測定装置
【発明者】 【氏名】川西 哲也

【要約】 【課題】試料の評価面の粗さを示す2つのパラメータである表面粗さと相関距離を個別に測定可能な評価面の粗さ測定装置を提供する。

【解決手段】試料22にレーザ光源21から入射角θ0 でP偏波成分のみからなるレーザを照射し、散乱ブリュースタ角ΘB1における散乱波を偏光ビームスプリッタ23で受け、S偏波成分を第1光検出器24で取得し、P偏波成分を第2光検出器25で取得し、第1,第2光検出器24,25から取得されたS偏波成分の強度とP偏波成分の強度との比に基づいてコンピュータ26が相関距離を演算し、更にその相関距離と当該試料22の散乱強度とに基づいて表面粗さを演算する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 評価面の粗さ測定の試料である誘電体の評価面へP偏波の電磁波を照射した際に、その入射角θ0 と電磁波照射側媒質に対する誘電体の相対屈折率nに応じて、電磁波の照射側媒質における散乱ブリュースタ角ΘB1が、【数1】

を満たす条件下で、散乱ブリュースタ角ΘB1において取得される散乱波のP偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比に基づいて、評価面の相関距離を求めるようにしたことを特徴とする評価面の粗さ測定方法。
【請求項2】 散乱ブリュースタ角ΘB1において取得される散乱波のP偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比に基づいて求めた相関距離と、試料表面からの電磁波散乱強度に基づいて、評価面の表面粗さを求めるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の評価面の粗さ測定方法。
【請求項3】 評価面の粗さ測定の試料である誘電体の評価面へP偏波の電磁波を照射した際に、その入射角θ0 と電磁波照射側媒質に対する誘電体の相対屈折率nに応じて、電磁波が入射する誘電体側における散乱ブリュースタ角Θ′B2が、【数2】

を満たす条件下で、散乱ブリュースタ角Θ′B2において取得される散乱波のP偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比に基づいて、評価面の相関距離を求めるようにしたことを特徴とする評価面の粗さ測定方法。
【請求項4】 散乱ブリュースタ角Θ′B2において取得される散乱波のP偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比に基づいて求めた相関距離と、試料内部への電磁波散乱強度に基づいて、評価面の表面粗さを求めるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の評価面の粗さ測定方法。
【請求項5】 評価面の粗さ測定の試料である誘電体の評価面へP偏波の電磁波を照射する電磁波照射手段と、上記電磁波照射手段から照射される電磁波の入射角θ0 と電磁波照射側媒質に対する誘電体の相対屈折率nに応じて、電磁波の照射側媒質における散乱ブリュースタ角ΘB1が、【数3】

を満たす条件下で、散乱ブリュースタ角ΘB1において散乱波のS偏波成分を取得する第1散乱波取得手段と、散乱ブリュースタ角ΘB1において散乱波のP偏波成分を取得する第2散乱波取得手段と、上記第2散乱波取得手段により取得したP偏波成分の強度と第1散乱波取得手段により取得したS偏波成分の強度との比に基づいて、評価面の相関距離を演算する粗さ演算手段と、からなることを特徴とする評価面の粗さ測定装置。
【請求項6】 上記粗さ演算手段は、P偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比に基づいて求めた相関距離と、試料表面からの電磁波散乱強度とに基づいて、評価面の表面粗さを演算するものとしたことを特徴とする請求項5に記載の評価面の粗さ測定装置。
【請求項7】 評価面の粗さ測定の試料である誘電体の評価面へP偏波の電磁波を照射する電磁波照射手段と、上記電磁波照射手段から照射される電磁波の入射角θ0 と電磁波照射側媒質に対する誘電体の相対屈折率nに応じて、電磁波の入射する誘電体側における散乱ブリュースタ角Θ′B2が、【数4】

を満たす条件下で、散乱ブリュースタ角Θ′B2において散乱波のS偏波成分を取得する第1散乱波取得手段と、散乱ブリュースタ角Θ′B2において散乱波のP偏波成分を取得する第2散乱波取得手段と、上記第2散乱波取得手段により取得したP偏波成分の強度と第1散乱波取得手段により取得したS偏波成分の強度との比に基づいて、評価面の相関距離を演算する粗さ演算手段と、からなることを特徴とする評価面の粗さ測定装置。
【請求項8】 上記粗さ演算手段は、P偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比に基づいて求めた相関距離と、試料内部への電磁波散乱強度とに基づいて、評価面の表面粗さを演算するものとしたことを特徴とする請求項7に記載の評価面の粗さ測定装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、試料の評価面の粗さを示す「表面粗さ」と「相関距離」を個別に求めることが可能な評価面の粗さ測定方法と、それを具現化する評価面の粗さ測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、評価面の粗さを測定する場合、プローブを評価面に近接させて3次元形状を実測し、この3次元形状のデータに基づいて、評価面の粗さを表す2つのパラメータである表面粗さ(評価面の凹凸である高さの二乗平均の平方根)と相関距離(相関の大きさがe-1となる距離)を求めていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の如く3次元形状測定装置による実測データから表面粗さと相関距離を演算すれば、評価面の粗さを高精度に求めることができる反面、高コストとなってしまうし、3次元形状の実測に比較的長時間を要するため、全数検査が必要な用途には向いていない。例えば、0.1μm程度(光の波長以下)の凹凸が問題となるハードディスクの磁気記録面などを評価する場合には、短時間で全数検査できることが望ましく、評価面の粗さの指標となる「表面粗さ」と「相関距離」の各パラメータのみを短時間で効率良く測定できる方法や装置が必要とされている。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1に係る評価面の粗さ測定方法は、評価面の粗さ測定の試料である誘電体の評価面へP偏波の電磁波を照射した際に、その入射角θ0 と電磁波照射側媒質に対する誘電体の相対屈折率nに応じて、電磁波の照射側媒質における散乱ブリュースタ角ΘB1が、【数5】

を満たす条件下で、散乱ブリュースタ角ΘB1において取得される散乱波のP偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比に基づいて、評価面の相関距離を求めるようにしたことを特徴とする。
【0005】また、請求項2に係る評価面の粗さ測定方法は、上記請求項1において、散乱ブリュースタ角ΘB1において取得される散乱波のP偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比に基づいて求めた相関距離と、試料表面からの電磁波散乱強度に基づいて、評価面の表面粗さを求めるようにしたことを特徴とする。
【0006】また、請求項3に係る評価面の粗さ測定方法は、評価面の粗さ測定の試料である誘電体の評価面へP偏波の電磁波を照射した際に、その入射角θ0 と電磁波照射側媒質に対する誘電体の相対屈折率nに応じて、電磁波が入射する誘電体側における散乱ブリュースタ角Θ′B2が、【数6】

を満たす条件下で、散乱ブリュースタ角Θ′B2において取得される散乱波のP偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比に基づいて、評価面の相関距離を求めるようにしたことを特徴とする。
【0007】また、請求項4に係る評価面の粗さ測定方法は、上記請求項3において、散乱ブリュースタ角Θ′B2において取得される散乱波のP偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比に基づいて求めた相関距離と、試料内部への電磁波散乱強度に基づいて、評価面の表面粗さを求めるようにしたことを特徴とする。
【0008】また、請求項5に係る評価面の粗さ測定装置は、評価面の粗さ測定の試料である誘電体(22)の評価面へP偏波の電磁波を照射する電磁波照射手段(21)と、上記電磁波照射手段から照射される電磁波の入射角θ0 と電磁波照射側媒質に対する誘電体の相対屈折率nに応じて、電磁波の照射側媒質における散乱ブリュースタ角ΘB1が、【数7】

を満たす条件下で、散乱ブリュースタ角ΘB1において散乱波のS偏波成分を取得する第1散乱波取得手段(24)と、散乱ブリュースタ角ΘB1において散乱波のP偏波成分を取得する第2散乱波取得手段(25)と、上記第2散乱波取得手段により取得したP偏波成分の強度と第1散乱波取得手段により取得したS偏波成分の強度との比に基づいて、評価面の相関距離を演算する粗さ演算手段(26)と、からなることを特徴とする。
【0009】また、請求項6に係る評価面の粗さ測定装置は、上記請求項5において、粗さ演算手段が、P偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比に基づいて求めた相関距離と、試料表面からの電磁波散乱強度とに基づいて、評価面の表面粗さを演算するものとしたことを特徴とする。
【0010】また、請求項7に係る評価面の粗さ測定装置は、評価面の粗さ測定の試料である誘電体(32)の評価面へP偏波の電磁波を照射する電磁波照射手段(31)と、上記電磁波照射手段から照射される電磁波の入射角θ0 と電磁波照射側媒質に対する誘電体の相対屈折率nに応じて、電磁波の入射する誘電体側における散乱ブリュースタ角Θ′B2が、【数8】

を満たす条件下で、散乱ブリュースタ角Θ′B2において散乱波のS偏波成分を取得する第1散乱波取得手段(34)と、散乱ブリュースタ角Θ′B2において散乱波のP偏波成分を取得する第2散乱波取得手段(35)と、上記第2散乱波取得手段により取得したP偏波成分の強度と第1散乱波取得手段により取得したS偏波成分の強度との比に基づいて、評価面の相関距離を演算する粗さ演算手段(36)と、からなることを特徴とする。
【0011】また、請求項8に係る評価面の粗さ測定装置は、上記請求項7において、粗さ演算手段が、P偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比に基づいて求めた相関距離と、試料内部への電磁波散乱強度とに基づいて、評価面の表面粗さを演算するものとしたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】次に、添付図面に基づいて、本発明に係る評価面の粗さ測定方法と、この方法を具現化し得る評価面の粗さ測定装置の実施形態を説明する。それに先立ち、本件発明者が特願平10−267451号により提案した誘電体の表面評価を非接触に行える方法および装置について、その原理と概要を説明する。
【0013】図1に示す如く、空気中から透光性の試料に入射角θ0 で光を照射したとき、照射面の粗さが小さければ、入射側媒質(空気)へ反射される散乱波と、透過側媒質(透光性の試料)へ透過する透過波とには、散乱光のP偏波成分がゼロに等しくなる散乱ブリュースタ角ΘB1および散乱ブリュースタ角Θ′B2が生ずる。
【0014】
【数9】

【0015】
【数10】

【0016】上記した二式において、nは試料の空気に対する相対屈折率である。また、このような現象は微小な不規則構造を持つ誘電体表面に電磁波を照射した場合等に見られるものである。なお、試料に対する透過・非透過は電磁波の波長や強度によっても異なるので、可視光領域では不透明な誘電体であっても、上述した性質を呈する場合がある。
【0017】また、光の照射や散乱は三次元立体的に把握されるが、図1では説明を簡単にするため、光は試料の照射面に垂直な平面内で照射するものとし、散乱ブリュースタ角ΘB1および散乱ブリュースタ角Θ′B2も同一平面内に現れるようにしてある。すなわち、光の入射方向に対する方位角(φS )は、散乱ブリュースタ角ΘB1においてはφS =0゜、散乱ブリュースタ角Θ′B2においてはφs =180゜となる。
【0018】ここで、散乱波は一般に1次、2次、3次、・・・などの成分に分けて考えることが可能であり、1次散乱強度は表面粗さの2乗に、2次は4乗に、3次は6乗に依存することから、表面の粗さが小さい場合には1次散乱が支配的となり、表面の凹凸が顕著な場合(粗さが大きい場合)には高次の散乱が支配的となるという性質を有している。そして、散乱ブリュースタ角ΘB1では、P偏波成分の1次散乱強度がゼロになる。
【0019】従って、表面の粗さが小さい試料に電磁波を照射すると、散乱波の性質は1次散乱が支配的となって散乱ブリュースタ角ΘB1における散乱光のP偏波成分の減少が顕著となり、表面が粗い試料に電磁波を照射すると、高次散乱が支配的となって散乱ブリュースタ角ΘB1における散乱光のP偏波成分の減少が目立たなくなる。これと同様に、表面の粗さが小さい試料に電磁波を照射すると、散乱ブリュースタ角Θ′B2へ散乱される散乱波の性質も1次散乱が支配的となって散乱光のP偏波成分の減少が顕著となり、表面の粗さが粗い試料に電磁波を照射すると、散乱ブリュースタ角Θ′B2へ散乱される散乱波の性質も高次散乱が支配的となって散乱光のP偏波成分の減少が目立たなくなる。
【0020】すなわち、電磁波照射面の粗さが小さい場合、試料表面からの散乱波のS偏波成分は図2(a)に示すように散乱強度分布が滑らかな変化となるが、P偏波成分においては図2(b)に示すように散乱角θS が散乱ブリュースタ角ΘB1の時にP偏波成分が消えるという現象が生ずる。一方、電磁波照射面が粗い場合には、S偏波成分およびP偏波成分共に、図3に示すような散乱強度分布を示し、散乱ブリュースタ角ΘB1においてもP偏波成分が消失することはない。なお、この性質は散乱ブリュースタ角Θ′B2への散乱光でも同様に見いだされるものである。
【0021】従って、上記した散乱ブリュースタ角ΘB1もしくは散乱ブリュースタ角Θ′B2への散乱強度のP偏波成分が、誘電体表面の粗さに応じて変化するという普遍的な現象を利用し、測定対象に依存することなく汎用性のある安定した表面粗さの評価を行うことが可能なのである。
【0022】なお、このP偏波成分の特性を利用した第1の評価方法としては、S偏波成分とP偏波成分とを含む電磁波を誘電体の評価面へ照射して、散乱ブリュースタ角ΘB1もしくは散乱ブリュースタ角Θ′B2への散乱光からS偏波成分とP偏波成分とを各々取得し、P偏波成分の減少の度合いをS偏波成分とP偏波成分と比率から判定する方法がある。すなわち、P偏波成分の比率が低いほど表面の粗さは小さく、逆にP偏波成分の比率が高いほど表面の粗さは大きいという性質に基づき、評価面の表面粗さを評価するのである。
【0023】図4に示すのは、第1の評価方法を具現化する非接触表面粗さ評価装置であり、45度に偏波したレーザ光(S偏波およびP偏波を含む電磁波)を照射する電磁波照射手段としてのレーザ光源1と、該レーザ光源1から試料2の表面に対して照射されたレーザの散乱光を散乱ブリュースタ角ΘB1で受けるように配置した偏光ビームスプリッタ3と、該偏光ビームスプリッタ3により分離されたS偏波成分を取得する第1散乱波取得手段としての第1光検出器4と、上記偏光ビームスプリッタ3により分離されたP偏波成分を取得する第2散乱波取得手段としての第2光検出器5と、これら第1,第2光検出器4,5より取得したS偏波成分とP偏波成分とに基づいて試料2の評価面の粗さを判定するコンピュータ6とからなる。
【0024】上記コンピュータ6による判定には、予め評価基準となるデータを記憶させておき、このデータに基づいて評価時に取得したS偏波成分とP偏波成分との比率から表面評価を行うのである。
【0025】また、P偏波成分の特性を利用した第2の評価方法としては、P偏波成分のみを含む電磁波を誘電体の評価面へ照射し、散乱ブリュースタ角ΘB1もしくは散乱ブリュースタ角Θ′B2への散乱光の散乱強度と、この散乱ブリュースタ角ΘB1および散乱ブリュースタ角Θ′B2とは異なる方向(評価基準角θ1 )へ散乱光の散乱強度とを各々検出し、散乱ブリュースタ角ΘB1におけるP偏波成分の減少の度合い若しくは散乱ブリュースタ角Θ′B2におけるP偏波成分の減少の度合いを両散乱強度の比率(「θ1 :ΘB1」もしくは「θ1 :Θ′B2」)として判定する方法がある。すなわち、散乱ブリュースタ角ΘB1もしくは散乱ブリュースタ角Θ′B2における散乱強度の比率が低いほど表面の粗さは小さく、逆に散乱ブリュースタ角ΘB1もしくは散乱ブリュースタ角Θ′B2における散乱強度の比率が高いほど表面の粗さは大きいという性質に基づき、評価面の粗さを評価するのである。
【0026】図5に示すのは、第2の評価方法を具現化する非接触表面粗さ評価装置であり、P偏波を主成分とする電磁波を照射する電磁波照射手段としてのレーザ光源11と、該レーザ光源11から試料12の表面に対して照射されたレーザの散乱光を散乱ブリュースタ角ΘB1とは異なる評価基準角θ1 における散乱強度を検出するように配置した第1散乱強度検出手段としての第3光検出器13と、上記レーザ光源11から試料12の表面に対して照射されたレーザの散乱光を散乱ブリュースタ角ΘB1で受けるように配置した第4光検出器14と、これら第3,第4光検出器13,14により検出した評価基準角θ1 における散乱強度と散乱ブリュースタ角ΘB1における散乱強度とに基づいて試料12の評価面の粗さを判定するコンピュータ15とからなる。
【0027】上記コンピュータ15による判定には、予め評価基準となるデータを記憶させておき、このデータに基づいて評価時に取得した評価基準角θ1 における散乱強度と散乱ブリュースタ角ΘB1における散乱強度との比率から表面評価を行うのである。
【0028】しかしながら、上記のような散乱ブリュースタ角ΘB1による表面評価は、評価面の粗さ測定における2つのパラメータの一方である「表面粗さ」のみに基づいて試料表面を評価しているに過ぎず、他方のパラメータである「相関距離」についての測定は行えない。すなわち、評価面の粗さ測定において要求される2つのパラメータを測定できるものではないのである。
【0029】そこで、本発明においては、散乱ブリュースタ角ΘB1への散乱波の特質を利用して、表面粗さと相関距離を個別に測定できるような方法と、これを具現化できる装置を提供するものとした。以下に、その原理と実施形態を詳述する。
【0030】先ず、表面粗さの小さい評価面において、散乱ブリュースタ角ΘB1でP偏波成分がゼロとなる現象が生ずるのは、上述した如く、一次散乱の特性が支配的となるからである。しかし、厳密には高次散乱(多重散乱)の効果を考慮する必要があるため、共偏波成分(入射波の偏波と同じ偏波の成分:P偏波)と交差偏波成分(入射波の偏波と直交する偏波の成分:S偏波)が検出されることとなる。そして、二次散乱の性質として、上記した数9の関係式が成り立つ散乱ブリュースタ角ΘB1で取得される共偏波成分の強度と交差偏波成分の強度は、表面粗さと相関距離に応じて変化するが、共偏波成分の強度と交差偏波成分の強度との比は表面粗さに依存することなくほぼ一定となる。これを示すのが、図6(a)と図6(b)の特性曲線図である。
【0031】図6(a),(b)は、評価対象である試料と光入射側媒質との相対屈折率nが1.51となる環境下において、P偏波成分の光を試料表面に照射した場合の散乱を数値シミュレーションしたものである。なお、各図の横軸は散乱角、縦軸はP偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比(S/P)である。また、lは相関距離、σは表面粗さ、kは入射波の波数である。
【0032】そして、図6は、相関距離lを2.0/kに固定して、表面粗さσを0.05/k、0.1/k、0.3/k、0.5/kに変えた場合の各特性を示しており、散乱ブリュースタ角(ΘB1=53.3度)においては、表面粗さσの値に依存することなく、S/Pは一定値となっている。一方、図7は、表面粗さσを0.1/kに固定して、相関距離lを2.0/k、3.0/k、4.0/k、8.0/kに変えた場合の各特性を示しており、散乱ブリュースタ角(ΘB1=53.3度)においては、相関距離lに応じてS/Pが異なる値をとっている。
【0033】すなわち、散乱ブリュースタ角ΘB1の方向で取得される散乱波は、共偏波成分と交差偏波成分の比(例えば、S/P)が相関距離lのみに依存し、表面粗さσには依存しないという現象が生ずるのである。
【0034】従って、1次散乱が支配的となって散乱ブリュースタ角ΘB1における散乱光のP偏波成分の減少が顕著となる程度に表面の粗さが小さい試料にP偏波成分の電磁波を照射し、P偏波成分とS偏波成分とを散乱ブリュースタ角ΘB1において取得すれば、P偏波成分の強度とS偏波成分の強度との比に基づいて、評価面の相関距離を直接測定することが可能となる。
【0035】なお、散乱強度などの測定可能なデータは、一般に、表面粗さと相関距離の両方のパラメータに依存するので、上述した如く相関距離を求めれば、当該試料表面からの電磁波散乱強度に基づいて表面粗さを特定することができる。すなわち、相関距離と表面粗さの関係に基づいて散乱強度が定まるので、測定された散乱強度を得るための表面粗さと相関距離の組み合わせの中から、相関距離が特定されれば、必然的に表面粗さも特定できるのである。具体的には、「散乱強度」と「表面粗さ」と「相関距離」の組み合わせからなる参照テーブルを予め用意しておき、この中から条件を満たすものを抽出すれば良い。斯くして、本発明に係る評価面の粗さ測定方法によれば、評価面の粗さを示す2つのパラメータである「表面粗さ」と「相関距離」とを個別に求めることができ、実質的に評価面の粗さを測定することが可能となる。
【0036】図7に示すのは、散乱ブリュースタ角ΘB1への散乱波を利用した評価面の粗さ測定方法を具現化する評価面の粗さ測定装置の第1実施形態であり、P偏波成分のみを含む電磁波を照射する電磁波照射手段としてのレーザ光源21と、該レーザ光源21から試料22の表面に対して照射されたレーザの散乱光を散乱ブリュースタ角ΘB1で受けるように配置した偏光ビームスプリッタ23と、該偏光ビームスプリッタ23により分離されたS偏波成分を取得する第1散乱波取得手段としての第1光検出器24と、上記偏光ビームスプリッタ23により分離されたP偏波成分を取得する第2散乱波取得手段としての第2光検出器25と、これら第1,第2光検出器24,25より取得したP偏波成分の強度とS偏波成分の強度との比に基づいて試料22の評価面の相関距離を求め、更にその相関距離と試料22表面からの電磁波散乱強度とに基づいて表面粗さを求める粗さ演算手段としてのコンピュータ26と、からなる。
【0037】上記コンピュータ26による相関距離や表面粗さの演算には、予め記憶させた近似的な演算式を利用させても良いし、評価対象の素材に応じた対照表を利用するようにしても良い。また、表面粗さを求めるために必要となる試料表面からの電磁波散乱強度は、相関距離を求める際に測定した値を利用しても良いし、これとは別途に測定するようにしても良い。
【0038】なお、散乱ブリュースタ角Θ′B2の方向で取得される散乱波も、共偏波成分と交差偏波成分の比(例えば、S/P)が相関距離lのみに依存し、表面粗さσには依存しないという現象が生ずる。従って、1次散乱が支配的となって散乱ブリュースタ角Θ′B2における散乱光のP偏波成分の減少が顕著となる程度に表面の粗さが小さい試料にP偏波成分の電磁波を照射し、P偏波成分とS偏波成分とを散乱ブリュースタ角ΘBにおいて取得すれば、P偏波成分の強度とS偏波成分の強度との比に基づいて、評価面の相関距離を直接測定することが可能となる。そして、この相関距離と試料内部への電磁波散乱強度から表面粗さを求めることができるのも同様である。
【0039】図8に示すのは、散乱ブリュースタ角Θ′B2への散乱波を利用した評価面の粗さ測定方法を具現化する評価面の粗さ測定装置の第2実施形態であり、P偏波成分のみを含む電磁波を照射する電磁波照射手段としてのレーザ光源31と、該レーザ光源31から試料32の表面に対して照射されたレーザの散乱光を散乱ブリュースタ角Θ′B2で受けるように配置した偏光ビームスプリッタ33と、該偏光ビームスプリッタ33により分離されたS偏波成分を取得する第1散乱波取得手段としての第1光検出器34と、上記偏光ビームスプリッタ33により分離されたP偏波成分を取得する第2散乱波取得手段としての第2光検出器35と、これら第1,第2光検出器34,35より取得したP偏波成分の強度とS偏波成分の強度との比に基づいて試料32の評価面の相関距離を求め、更にその相関距離と試料22内部への電磁波散乱強度とに基づいて表面粗さを求める粗さ演算手段としてのコンピュータ36と、からなる。
【0040】この第2実施形態に係る評価面の粗さ測定装置においても、上述した第1実施形態と同様に、評価面の粗さを示す2つのパラメータである「表面粗さ」と「相関距離」とを個別に求めることができ、実質的に評価面の粗さを測定することが可能となる。なお、この第2実施形態においては、試料32の上面32aから入射されて内部で散乱した散乱波は、試料32の下面32bを透過することとなるため、下面32bでの散乱が無視できる程度に滑らかであることが必要条件となる。
【0041】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に係る評価面の粗さ測定方法によれば、数9の関係式が成り立つ散乱ブリュースタ角ΘB1で取得される共偏波成分の強度と交差偏波成分の強度は、表面粗さと相関距離に応じて変化するが、共偏波成分の強度と交差偏波成分の強度との比は表面粗さに依存することなくほぼ一定となるという基本的な性質を利用し、散乱ブリュースタ角ΘB1において取得される散乱波のP偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比に基づいて、評価面の相関距離を演算できる。
【0042】更に、請求項2に係る評価面の粗さ測定方法によれば、散乱ブリュースタ角ΘB1において取得される散乱波のP偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比に基づいて演算した相関距離と、当該試料表面からの電磁波散乱強度とに基づいて表面粗さを演算できる。
【0043】また、請求項3に係る評価面の粗さ測定方法によれば、数10の関係式が成り立つ散乱ブリュースタ角Θ′B2で取得される共偏波成分の強度と交差偏波成分の強度は、表面粗さと相関距離に応じて変化するが、共偏波成分の強度と交差偏波成分の強度との比は表面粗さに依存することなくほぼ一定となるという基本的な性質を利用し、散乱ブリュースタ角Θ′B2において取得される散乱波のP偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比に基づいて、評価面の相関距離を演算できる。
【0044】更に、請求項4に係る評価面の粗さ測定方法によれば、散乱ブリュースタ角Θ′B2において取得される散乱波のP偏波成分の強度に対するS偏波成分の強度の比に基づいて演算した相関距離と、当該試料内部への電磁波散乱強度とに基づいて表面粗さを演算できる。
【0045】また、請求項5に係る評価面の粗さ測定装置によれば、数9の関係式が成り立つ散乱ブリュースタ角ΘB1で取得される共偏波成分の強度と交差偏波成分の強度は、表面粗さと相関距離に応じて変化するが、共偏波成分の強度と交差偏波成分の強度との比は表面粗さに依存することなくほぼ一定となるという基本的な性質を利用し、P偏波の電磁波を電磁波照射手段から照射して評価面で散乱した散乱波から、第1散乱波取得手段によりS偏波成分を、第2散乱波取得手段によりP偏波成分を各々取得し、これらP偏波成分の強度とS偏波成分の強度との比に基づいて粗さ演算手段が評価面の相関距離を演算できる。
【0046】更に、請求項6に係る評価面の粗さ測定装置によれば、P偏波成分の強度とS偏波成分の強度との比に基づいて粗さ演算手段が演算した相関距離と、当該試料表面からの電磁波散乱強度とに基づいて、演算手段が表面粗さを演算できる。
【0047】また、請求項7に係る評価面の粗さ測定装置によれば、数10の関係式が成り立つ散乱ブリュースタ角Θ′B2で取得される共偏波成分の強度と交差偏波成分の強度は、表面粗さと相関距離に応じて変化するが、共偏波成分の強度と交差偏波成分の強度との比は表面粗さに依存することなくほぼ一定となるという基本的な性質を利用し、P偏波の電磁波を電磁波照射手段から照射して試料内部で散乱した散乱波から、第1散乱波取得手段によりS偏波成分を、第2散乱波取得手段によりP偏波成分を各々取得し、これらP偏波成分の強度とS偏波成分の強度との比に基づいて粗さ演算手段が評価面の相関距離を演算できる。
【0048】更に、請求項8に係る評価面の粗さ測定装置によれば、P偏波成分の強度とS偏波成分の強度との比に基づいて粗さ演算手段が演算した相関距離と、当該試料内部への電磁波散乱強度とに基づいて、演算手段が表面粗さを演算できる。
【出願人】 【識別番号】391027413
【氏名又は名称】郵政省通信総合研究所長
【出願日】 平成11年11月12日(1999.11.12)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−141436(P2001−141436A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−322433