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【発明の名称】 位置検出装置
【発明者】 【氏名】後藤 忠敏

【氏名】坂元 和也

【氏名】坂本 宏

【要約】 【課題】検出装置の小型化。微小変位でも高分解能での検出可能化。

【解決手段】コイル部10は同相励磁される複数のコイル区間LA〜LDを変位方向に順次配列してなる。磁性体又は導電体等からなる磁気応答部材11のコイル部に対する相対的位置が検出対象位置に応じて変化する。この相対的位置に応じてコイル区間のインダクタンスが変化し、該部材11の端部11aが1つのコイル区間の一端から他端まで変位する間で該コイル区間の両端間電圧が漸増又は漸減する。アナログ演算回路20,21では、各コイル区間から取り出した電圧を加算及び/又は減算することにより、検出対象位置に応じてサイン及びコサイン関数特性に従う振幅をそれぞれ示す2つの交流出力信号を生成する。該交流出力信号における振幅値の相関関係から該振幅値を規定するサイン及びコサイン関数における特定の位相値θを検出し、検出対象の位置検出データを生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 交流信号で励磁される複数のコイルを配置してなるコイル部と、前記コイル部に対して相対的に変位するよう配置された磁気応答部材であって、検出対象の変位に応じて該部材と前記コイル部との相対的位置が変化し、この相対的位置に応じて各コイルのインピーダンスを変化させ、このインピーダンス変化に基づき前記相対的位置が所定の範囲にわたって変化する間で各コイルに生じる電圧が変化するようにしてなり、この各コイルに生じる電圧は前記検出対象位置の変化に対応して各コイル毎に特有の変化パターンを示すものと、前記各コイルに生じる電圧を取り出し、それらを組み合わせて演算することにより、所定の周期的関数特性を振幅係数として持つ少なくとも1つの交流出力信号を生成するアナログ演算回路とを具えた位置検出装置。
【請求項2】 所定の交流信号によって励磁される複数のコイル区間を検出対象の変位方向に沿って順次配列してなるコイル部と、前記コイル部に対して相対的に変位するよう配置された磁気応答部材であって、検出対象位置に応じて該部材と前記コイル部との相対的位置が変化し、この相対的位置に応じて各コイル区間のインダクタンスを変化させ、前記部材が1つのコイル区間の一端から他端まで変位する間で該コイル区間に生じる電圧が漸増又は漸減するようにしたものと、前記各コイル区間の電圧をそれぞれ取り出し、それらを組み合わせて演算することにより、前記検出対象位置に応じて所定の周期的関数特性に従う振幅を示す少なくとも1つの交流出力信号を生成するアナログ演算回路とを具えた位置検出装置。
【請求項3】 前記磁気応答部材は、所定の基材上において検出対象位置の変位方向に沿って面積が漸増又は漸減する区間を有する所定のパターンで配置されてなるものであり、検出対象位置に対して示す漸増又は漸減のパターンが各コイル毎に異なっている請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項4】 所定の基準電圧を発生する手段を更に具え、前記アナログ演算回路は、前記各コイル若しくは各コイル区間からの電圧に前記基準電圧を組み合わせて演算する請求項1乃至3のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項5】 前記アナログ演算回路は、複数の前記交流出力信号を生成するものであり、各交流出力信号の振幅を規定する前記周期的関数特性は所定位相だけずれている請求項1乃至4のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項6】 前記生成された複数の交流出力信号を入力し、該交流出力信号における振幅値の相関関係から該振幅値を規定する前記所定の周期関数における特定の位相値を検出し、検出した位相値に基づき前記検出対象の位置検出データを生成する振幅位相変換部を更に具えた請求項5に記載の位置検出装置。
【請求項7】 前記複数の交流出力信号は、検出対象位置に応じてサイン関数特性に従う振幅を示す交流出力信号と、検出対象位置に応じてコサイン関数特性に従う振幅を示す交流出力信号とからなる請求項5又は6に記載の位置検出装置。
【請求項8】 前記磁気応答部材は、磁性体又は導電体の少なくとも一方を含む請求項1乃至7のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項9】 前記磁気応答部材は永久磁石を含み、前記コイル部は磁性体コアを含む請求項1乃至7のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項10】 前記コイル部が磁性体を含むボビン部に巻設されている請求項1乃至9のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項11】 前記ボビン部は非磁性体からなる筒部と、該筒部内に収納された1又は複数の磁性体棒とを含む請求項10に記載の位置検出装置。
【請求項12】 前記ボビン部における磁性体又は磁性体棒は、その表面に導電体被膜が形成されてなることを特徴とする請求項10又は11に記載の位置検出装置。
【請求項13】 前記コイル部は、前記検出対象の変位方向に沿って延びた実質的に1つのコイルからなり、この1つのコイルの所定の中間位置から出力端子をそれぞれ導き出すことで、該1つのコイルによって前記複数のコイル区間が形成されてなる請求項1乃至12のいずれかに記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、交流励磁されるコイルとこのコイルに対して相対的に変位する磁性体又は導電体とを含んで構成される位置検出装置に関し、所定範囲での直線位置または回転位置の検出に適したものであり、特に、1相の交流で励磁される1次コイルのみを使用して複数相の振幅関数特性を示す出力交流信号を検出対象位置に応じて生成するものに関する。
【0002】
【従来の技術】LVDTといわれる誘導型直線位置検出器が知られている。2ワイヤタイプLVDTは、1個の1次コイルと1個の2次コイルとからなり、磁性体からなる可動部のコイル部への侵入量に応じて1次2次コイル間の誘導結合が変化し、それに応じた電圧レベルの誘導出力信号を2次コイルに生成する。3ワイヤタイプLVDTは、1個の1次コイルと逆相直列接続された2個の2次コイルとからなる差動トランス構成であり、この場合は、所定長の磁性体からなる可動部が逆相2次コイルのどちらかへの侵入量に応じて1次2次コイル間の誘導結合がバランス的に変化し、それに応じた電圧レベルの誘導出力信号を2次コイルに生成する。このLVDTの2次出力信号をアナログ的に加算または減算する演算を行うことで、可動部の位置に応じたサイン特性の出力信号とコサイン特性の出力信号とを生成し、これらのサイン特性の出力信号とコサイン特性の出力信号とをRDコンバータで処理して、可動部の位置を検出したディジタルデータを生成する。また、別のタイプの位置検出器として、励磁コイルのみを設け、可動磁性体コアの変位に応じたその自己インダクタンスの変化をR−L回路による移相量を測定することで検出するようにしたものも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来知られたLVDTは、1次コイルと2次コイルが必要であるため、部品点数が多くなり、製造コストを低廉にするのに限界があった。また、小型化するにも限界があった。また、可動部の位置に応じたサイン特性及びコサイン特性の出力信号における利用可能な位相角範囲は、2ワイヤタイプLVDTでは45度程度、3ワイヤタイプLVDTでは90度程度と比較的狭く、検出可能位相角範囲を拡大することは困難であった。また、3ワイヤタイプLVDTでは、可動部がコイル部の中央に位置する状態を基準にしてその左右に変位する位置しか検出することができないため、応用の際に、使い勝手が悪いという問題があった。また、検出対象の微小変位に対する検出分解能が悪かった。一方、励磁コイルの自己インダクタンスを測定するタイプの位置検出器では、コイル数を減らすことができるが、検出対象の変位に応じた移相量が狭い範囲でしか得られないため、実際はその移相量の測定が困難であり、また、検出分解能が悪く、実用化には不向きであった。また、周辺環境温度の変化に付随してコイルのインピーダンスが変化すると、移相量も変化してしまうため、温度特性の補償を行うことができなかった。
【0004】本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、小型かつシンプルな構造を持つと共に、利用可能な位相角範囲を広くとることができ、また、検出対象の変位が微小でも高分解能での検出が可能であり、温度特性の補償も容易な、位置検出装置を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る位置検出装置は、交流信号で励磁される複数のコイルを配置してなるコイル部と、前記コイル部に対して相対的に変位するよう配置された磁気応答部材であって、検出対象の変位に応じて該部材と前記コイル部との相対的位置が変化し、この相対的位置に応じて各コイルのインピーダンスを変化させ、このインピーダンス変化に基づき前記相対的位置が所定の範囲にわたって変化する間で各コイルに生じる電圧が変化するようにしてなり、この各コイルに生じる電圧は前記検出対象位置の変化に対応して各コイル毎に特有の変化パターンを示すものと、前記各コイルに生じる電圧を取り出し、それらを組み合わせて演算することにより、所定の周期的関数特性を振幅係数として持つ少なくとも1つの交流出力信号を生成するアナログ演算回路とを具えたものである。
【0006】磁気応答部材は、典型的には、磁性体及び導電体の少なくとも一方を含んでなるものである。磁気応答部材が磁性体からなる場合は、該部材のコイルに対する近接の度合いが増すほど、該コイルの自己インダクタンスが増加して、該コイルの電気的インピーダンスが増加し、該コイルに生じる電圧、つまり端子間電圧(若しくは電圧降下)、が増加する。反対に、該磁気応答部材のコイルに対する近接の度合いが減少するほど、該コイルのインダクタンスが減少して、該コイルの電気的インピーダンスが減少し、該コイルに生じる電圧、つまり端子間電圧、が減少する。こうして、検出対象の変位に伴い、コイルに対する磁気応答部材の相対的位置が所定の範囲にわたって変化する間で該コイルに生じる電圧、つまり端子間電圧は、増加若しくは減少変化することになる。
【0007】例えば、典型的には、コイルに対する磁気応答部材の相対的位置が所定の範囲にわたって変化する間で該コイルの端子間電圧が示す漸増変化カーブは、サイン関数における0度から90度までの範囲の関数値変化になぞらえることができる。複数のコイルが設けられており、これら各コイルに対する磁気応答部材の位置が、検出対象の変位に応じて相対的に変位するにつれ、各コイルの端子間電圧の漸増(又は漸減)変化が異なる態様で起こる。例えば、或る所定区間で或るコイルの出力電圧が漸増変化カーブ特性を示し、それに続く別の所定区間で別のコイルの出力電圧が漸増変化カーブ特性を示すとすると、1番目のコイルの出力電圧から2番目のコイルの出力電圧を減算するように組み合わせ演算を行うと、振幅電圧が漸増したのち漸減するような、サイン関数における0度から180度までの範囲の関数特性を得ることができる。このような各コイル出力電圧の組合せ演算は、また、その減算演算による相殺効果によって、温度ドリフト補償を自動的に行うことができるので、精度のよい位置検出を簡便な構成で実現することができる。
【0008】こうして、各コイルで生じた電圧(端子間電圧)の漸増(又は漸減)変化を、所定周期的関数の部分的位相範囲での変化に見立ててこれらを適宜組み合わせて演算(加算及び/又は減算)することにより、検出対象位置に応じて所定の周期wg関数特性に従う振幅をそれぞれ示す複数の交流出力信号を生成することができる。すなわち、各コイル区間の両端間電圧をそれぞれ取り出し、それらを加算及び/又は減算して組合わせることにより、検出対象位置に応じて所定の周期的関数特性に従う振幅係数を持つ1又は複数の交流出力信号を生成することができる。生成される複数の交流出力信号は、各交流出力信号の振幅を規定する周期的関数特性は所定位相だけずれているものであることが好ましい。そうすれば、例えば、レゾルバのように、検出対象位置に応じてサイン関数特性に従う振幅係数を持つ交流出力信号と、コサイン関数特性に従う振幅係数を持つ交流出力信号とを生成することができる。
【0009】本発明に係る位置検出装置は、所定の交流信号によって励磁される複数のコイル区間を検出対象の変位方向に沿って順次配列してなるコイル部と、前記コイル部に対して相対的に変位するよう配置された磁気応答部材であって、検出対象位置に応じて該部材と前記コイル部との相対的位置が変化し、この相対的位置に応じて各コイル区間のインダクタンスを変化させ、前記部材が1つのコイル区間の一端から他端まで変位する間で該コイル区間に生じる電圧が漸増又は漸減するようにしたものと、前記各コイル区間の電圧をそれぞれ取り出し、それらを組み合わせて演算することにより、前記検出対象位置に応じて所定の周期的関数特性に従う振幅を示す少なくとも1つの交流出力信号を生成するアナログ演算回路とを具えたものである。
【0010】この場合も、上述の通り、磁気応答部材が磁性体からなる場合は、該部材の各コイル区間に対する近接又は侵入の度合いが増すほど該コイル区間の自己インダクタンスが増加し、該磁気応答部材部材の端部が1つのコイル区間の一端から他端まで変位していく間で該コイル区間に生じる電圧(つまり両端間電圧若しくは端子間電圧)が漸増する。複数のコイル区間が検出対象の変位方向に沿って順次配列されてなることにより、これら各コイル区間に対する磁気応答部材の位置が、検出対象の変位に応じて相対的に変位するにつれ、各コイル区間の両端間電圧の漸増(又は漸減)変化が順番に起こる。よって、このコイル端子間電圧の漸増(又は漸減)変化を、所定周期関数の部分的位相範囲での変化に見立ててこれらを組み合わせて利用することにより、検出対象位置に応じて所定の周期関数特性に従う振幅をそれぞれ示す複数の交流出力信号を生成することができる。すなわち、各コイル区間の両端間電圧をそれぞれ取り出し、それらを加算及び/又は減算して組合わせることにより、検出対象位置に応じて所定の周期関数特性に従う振幅をそれぞれ示す複数の交流出力信号を生成することができる。
【0011】例えば、典型的には、磁気応答部材の端部が1つのコイル区間の一端から他端まで変位する間に生じる該コイル区間の両端間電圧の漸増変化カーブは、例えばサイン関数における0度から90度までの範囲の関数値変化になぞらえることができる。また、この漸増変化カーブは、その振幅を負に反転して、所定レベル(オフセットレベル)を加算する電圧シフトを行なえば、所定レベルから漸減する漸減変化カーブに変換することができる。このような漸減変化カーブは、例えばサイン関数における90度から180度までの範囲の関数値変化になぞらえることができる。かくして、順番に並んだ4つのコイル区間における、順番に起こる、それらの両端間電圧の漸増変化は、必要に応じて適宜の加算及び/又は減算を施すことにより、サイン関数における0度から90度までの範囲の関数値変化、90度から180度までの範囲の関数値変化、180度から270度までの範囲の関数値変化、270度から360度までの範囲の関数値変化、にそれぞれなぞらえることができる。各範囲におけるカーブの傾斜方向や電圧シフトのオフセットレベルは、適切なアナログ演算により、適宜コントロールすることができる。しかして、検出対象位置に応じてサイン関数特性に従う振幅を示す第1の交流出力信号を生成することができ、また、このサイン関数に対して90度位相ずれた同一特性の周期関数つまりコサイン関数の特性に従う振幅を示す第2の交流出力信号を生成することもできる。
【0012】このように、好ましい一実施形態として、検出対象位置に応じてサイン及びコサイン関数特性に従う振幅をそれぞれ示す2つの交流出力信号を生成することができる。例えば、検出対象位置を角度θに置き換えて示すと、概ね、サイン関数特性を示す振幅を持つ交流出力信号は、sinθsinωtで示すことができるものであり、コサイン関数特性を示す振幅を持つ交流出力信号は、cosθsinωtで示すことができるものである。これは、レゾルバといわれる位置検出器の出力信号の形態と同様のものであり、極めて有用なものである。例えば、前記アナログ演算回路で生成された前記2つの交流出力信号を入力し、該2つの交流出力信号における振幅値の相関関係から該振幅値を規定する前記サイン及びコサイン関数における位相値を検出し、検出した位相値に基づき前記検出対象の位置検出データを生成する振幅位相変換部を具備するようにするとよい。
【0013】なお、磁気応答部材として、銅のような良導電体を使用した場合は、渦電流損によってコイルの自己インダクタンスが減少し、磁気応答部材の端部が1つのコイル区間の一端から他端まで変位する間で該コイル区間の両端間電圧が漸減することになる。この場合も、上記と同様に検出することが可能である。磁気応答部材として、磁性体と導電体を組合わせたハイブリッドタイプのものを用いてもよい。別の実施形態として、磁気応答部材として永久磁石を含み、コイル部は磁性体コアを含むようにしてもよい。この場合は、コイル部の側の磁性体コアにおいて永久磁石の接近に応じて対応する箇所が磁気飽和又は過飽和となり、該磁気応答部材すなわち永久磁石が1つのコイル区間の一端から他端まで変位する間で該コイル区間の両端間電圧が漸減することになる。
【0014】かくして、この発明によれば、1次コイルのみを設ければよく、2次コイルは不要であるため、小型かつシンプルな構造の位置検出装置を提供することができる。また、複数のコイルを検出対象の変位方向に沿って順次配列してなり、磁気応答部材の端部が1つのコイル区間の一端から他端まで変位する間で該コイル区間の両端間電圧が漸増(又は漸減)する特性の変化が、各コイル間で順番に起こるので、各コイル区間の電圧をそれぞれ取り出してそれらを加算及び/又は減算して組合わせることにより、検出対象位置に応じて所定の周期関数特性に従う振幅をそれぞれ示す複数の交流出力信号(例えばサイン及びコサイン関数特性に従う振幅をそれぞれ示す2つの交流出力信号)を容易に生成することができ、利用可能な位相角範囲を広くとることができる。例えば、上記のように、0度から360度までのフルの位相角範囲で検出を行うことも可能である。同じ温度特性を示す複数のコイル区間の出力電圧を加算又は減算して組合わせて所定の周期関数特性に従う振幅をそれぞれ示す複数の交流出力信号を生成するので、温度特性が自動的に補償されることとなり、温度変化の影響を排除した位置検出を容易に行うことができる。更に、これら複数の交流出力信号における振幅値の相関関係から該振幅値を規定する所定周期関数(例えばサイン及びコサイン関数)における位相値を検出することで、検出対象の変位が微小でも高分解能での位置検出が可能である。
【0015】この発明の別の観点に従えば、所定の基準電圧を発生する手段を更に具え、前記アナログ演算回路は、前記各コイル若しくは各コイル区間からの電圧に前記基準電圧を組み合わせて演算するようにしてもよい。コイル若しくはコイル区間の数が少ない場合、磁気応答部材の端部が1つのコイル区間の一端から他端まで変位する間に生じる該コイル区間の両端間電圧の漸増(又は漸減)変化カーブは少ししか発生されない。そこで、別途発生した基準電圧と各コイルの出力電圧とを組合わせて演算することで、検出対象位置に応じて所定の周期関数特性に従う振幅をそれぞれ示す複数の交流出力信号、典型的には、検出対象位置に応じてサイン及びコサイン関数特性に従う振幅をそれぞれ示す2つの交流出力信号、を生成することができるようにしている。基準電圧を発生する手段としては、任意の構成のダミーのインピーダンス要素を用いてよい。例えば、抵抗素子でもよいし、コイルのようなインダクタンス手段でもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照してこの発明の実施の形態を詳細に説明しよう。図1は、サイン及びコサイン関数特性を示す振幅をそれぞれ持つ2つの交流出力信号において、電気角で0度から360度までのフルの範囲での振幅変化が得られるようにする実施例を示す。図1(A)は、この実施例に係る位置検出装置におけるコイル部10と磁気応答部材11との物理的配置関係の一例を外観略図によって示すもの、同図(B)はそのコイル軸方向断面略図、同図(C)は該コイル部10の電気回路の一例を示す図である。図1に示す位置検出装置は、検出対象の直線位置を検出するものであり、例えば、コイル部10が相対的に固定されており、磁気応答部材11が検出対象の変位に応じて相対的に直線変位する。この逆に、磁気応答部材11を相対的に固定し、コイル部10を検出対象の変位に応じて相対的に変位させてもよいのは勿論である。コイル部10は、所定の1相の交流信号によって励磁される複数のコイル区間(図示例では6個のコイル区間Lα,LA,LB,LC,LD,Lβ)を、検出対象の変位方向に沿って順次配列してなる。例えば、各コイル区間Lα,LA,LB,LC,LD,Lβは、巻数、コイル長等の性質が同等であるとする。磁気応答部材11は、例えば棒状の鉄のような磁性体からなり、コイル部10のコイル空間内に侵入する。一例として、図の右方向に磁気応答部材11が進行するとき、磁気応答部材11の先端11aが、最初にコイル区間Lαに侵入し、次に、コイル区間LA,LB,LC,LDの順に侵入していき、最後にコイル区間Lβに侵入する。2点鎖線11’は最後のコイル区間Lβにまで侵入した磁気応答部材11を示している。
【0017】真中の4つのコイル区間LA,LB,LC,LDに対応する範囲が有効検出範囲である。1つのコイル区間の長さをKとすると、その4倍の長さ4Kが有効検出範囲となる。有効検出範囲の前後に1づつ設けられたコイル区間Lα,Lβは補助コイルである。補助コイルLα,Lβは、コサイン関数特性を忠実に得ることができるようにするために設けたものであり、精度をそれほど追及しない場合は、省略可能である。
【0018】図1(C)に示すように、各コイル区間Lα,LA,LB,LC,LD,Lβは、交流電源12から発生される所定の1相の交流信号(仮にsinωtで示す)によって定電圧又は定電流で励磁される。各コイル区間Lα,LA,LB,LC,LD,Lβの両端間電圧をそれぞれVα,VA,VB,VC,VD,Vβで示すと、このそれぞれの電圧Vα,VA,VB,VC,VD,Vβを取り出すために、端子13〜19が設けられている。容易に理解できるように、各コイル区間Lα,LA,LB,LC,LD,Lβは、物理的に切り離された別々のコイルである必要はなく、一連のコイルの全長を6分割する位置に端子13〜19を設けるだけでよい。すなわち、端子13,14間のコイル部分がコイル区間Lαとなり、端子14,15間のコイル部分がコイル区間LA、端子15,16間のコイル部分がコイル区間LB、端子16,17間のコイル部分がコイル区間LC、端子17,18間のコイル部分がコイル区間LD、端子18,19間のコイル部分がコイル区間Lβ、となる。各コイル区間の出力電圧Vα,VA,VB,VC,VD,Vβは、アナログ演算回路20及び21に所定の組み合わせで入力され、所定の演算式に従って加算又は減算されることで、各アナログ演算回路20及び21から検出対象位置に応じたサイン及びコサイン関数特性を示す振幅をそれぞれ持つ2つの交流出力信号(つまり互に90度位相のずれた振幅関数特性を持つ2つの交流出力信号)が生成される。例示的に、アナログ演算回路20の出力信号をsinθsinωtで示し、アナログ演算回路21の出力信号をcosθsinωtで示す。アナログ演算回路20及び21は、オペアンプOP1,OP2と抵抗回路群RS1,RS2とを含んで構成される。
【0019】勿論、上記に限らず、各コイル区間Lα,LA〜LD,Lβとして物理的に別々のコイルを使用し、これらを直列接続して所定の1相の交流信号によって一括励磁するか、若しくは所定の1相の交流信号によって別々の励磁回路を介して同相励磁するようにしてもよい。しかし、最初に述べたような1つのコイルを所要の複数の各コイル区間に対応して複数の中間位置で分けて使用する実施形態が最もシンプルである。なお、以下、各コイル区間Lα,LA〜LD,Lβを、単に「コイル」という。
【0020】以上の構成により、磁気応答部材11の各コイルに対する近接又は侵入の度合いが増すほど該コイルの自己インダクタンスが増加し、該部材の端部が1つのコイルの一端から他端まで変位する間で該コイルの両端間電圧が漸増する。複数のコイルLα,LA,LB,LC,LD,Lβが検出対象の変位方向に沿って順次配列されてなることにより、これらコイルに対する磁気応答部材の位置が、検出対象の変位に応じて相対的に変位するにつれ、図2(A)に例示するように、各コイルの両端間電圧Vα,VA,VB,VC,VD,Vβの漸増変化が順番に起こる。図2(A)において、或るコイルの出力電圧が傾斜している区間において、当該コイルの一端から他端に向かって磁気応答部材11の端部が変位していることになる。典型的には、磁気応答部材11の端部が或る1つのコイルの一端から他端まで変位する間に生じる該コイルの両端間電圧の漸増変化カーブは、サイン又はコサイン関数における90度の範囲の関数値変化になぞらえることができる。そこで、各コイルの出力電圧Vα,VA,VB,VC,VD,Vβをそれぞれ適切に組み合わせて加算及び/又は減算することにより、検出対象位置に応じたサイン及びコサイン関数特性を示す振幅をそれぞれ持つ2つの交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtを生成することができる。
【0021】すなわち、アナログ演算回路20では、コイルLA,LB,LC,LDの出力電圧VA,VB,VC,VDを下記式(1)のように演算することで、図2(B)に示すようなサイン関数特性の振幅カーブを示す交流出力信号を得ることができ、これは、等価的に「sinθsinωt」で示すことができる。
(VA−VB)+(VD−VC) …式(1)
【0022】また、アナログ演算回路21では、コイルLα,LA,LB,LC,LD,Lβの出力電圧Vα,VA,VB,VC,VD,Vβを下記式(2)のように演算することで、図2(B)に示すようなコサイン関数特性の振幅カーブを示す交流出力信号を得ることができる。なお、図2(B)に示すコサイン関数特性の振幅カーブは、実際はマイナス・コサイン関数特性つまり「−cosθsinωt」であるが、サイン関数特性に対して90度のずれを示すものであるからコサイン関数特性に相当するものである。従って、これをコサイン関数特性の交流出力信号といい、以下、等価的に「cosθsinωt」で示す。
(VA−Vα)+(VB−VC)+(Vβ−VD) …式(2)
なお、式(2)の演算に代えて、下記の式(2')の演算を行なってもよい。
(VA−Vα)+(VB−VC)−VD …式(2')
【0023】なお、式(2)で求めたマイナス・コサイン関数特性の交流出力信号「−cosθsinωt」を電気的に180度位相反転処理することで、実際に、cosθsinωtで示される信号を生成し、これをコサイン関数特性の交流出力信号としてもよい。しかし、後段の位相検出回路(振幅位相変換回路)22で、例えば、コサイン関数特性の交流出力信号を「−cosθsinωt」の形で減算演算に使用するような場合は、マイナス・コサイン関数特性の交流出力信号「−cosθsinωt」のままで使用すればよい。なお、式(2)の演算に代えて、下記の式(2'')の演算を行なえば、実際にコサイン関数特性の交流出力信号「cosθsinωt」を生成することができる。
(Vα−VA)+(VC−VB)+(VD−Vβ) …式(2'')
【0024】各交流出力信号の振幅成分であるサイン及びコサイン関数における位相角θは、検出対象位置に対応しており、90度の範囲の位相角θが、1個のコイルの長さKに対応している。従って、4Kの長さの有効検出範囲は、位相角θの0度から360度までの範囲に対応している。よって、この位相角θを検出することにより、4Kの長さの範囲における検出対象位置をアブソリュートで検出することができる。
【0025】ここで、温度特性の補償について説明すると、温度に応じて各コイルのインピーダンスが変化し、その出力電圧Vα,VA,VB,VC,VD,Vβも変動する。例えば、図2(A)で実線のカーブに対して破線で示すように各電圧が一方向に増加または減少変動する。しかし、これらを加減算合成したサイン及びコサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおいては、図2(B)で実線のカーブに対して破線で示すように正負両方向の振幅変化として表れる。これを振幅係数Aを用いて示すと、Asinθsinωt及びAcosθsinωtとなり、この振幅係数Aが周辺環境温度に応じて変化することとなり、この変化は2つの交流出力信号において同じように現われる。ここから明らかなように、温度特性を示す振幅係数Aは、それぞれのサイン及びコサイン関数における位相角θに対して影響を及ぼさない。従って、この実施形態においては、自動的に温度特性の補償がされていることとなり、精度のよい位置検出が期待できる。
【0026】サイン及びコサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおける振幅関数sinθ及びcosθの位相成分θを、位相検出回路(若しくは振幅位相変換手段)22で計測することで、検出対象位置をアブソリュートで検出することができる。この位相検出回路22としては、例えば本出願人の出願に係る特開平9−126809号公報に示された技術を用いて構成するとよい。例えば、第1の交流出力信号sinθsinωtを電気的に90度シフトすることで、交流信号sinθcosωtを生成し、これと第2の交流出力信号cosθsinωtを加減算合成することで、sin(ωt+θ)およびsin(ωt−θ)なる、θに応じて進相および遅相方向に位相シフトされた2つの交流信号(位相成分θを交流位相ずれに変換した信号)を生成し、その位相θを測定することで、ストローク位置検出データを得ることができる。あるいは、公知のレゾルバ出力を処理するために使用されるR−Dコンバータを、この位相検出回路22として使用するようにしてもよい。
【0027】なお、図2(B)に示すように、サイン及びコサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおける振幅特性は、角度θと検出対象位置xとの対応関係が線形性を持つものとすると、真のサイン及びコサイン関数特性を示していない。しかし、位相検出回路22では、見かけ上、この交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtをそれぞれサイン及びコサイン関数の振幅特性を持つものとして位相検出処理する。その結果、検出した位相角θは、検出対象位置xに対して、線形性を示さないことになる。しかし、位置検出にあたっては、そのように、検出出力データ(検出した位相角θ)と実際の検出対象位置との非直線性はあまり重要な問題とはならない。つまり、所定の反復再現性をもって位置検出を行なうことができればよいのである。また、必要とあらば、位相検出回路22の出力データを適宜のデータ変換テーブルを用いてデータ変換することにより、検出出力データと実際の検出対象位置との間に正確な線形性を持たせることが容易に行なえる。よって、本発明でいうサイン及びコサイン関数の振幅特性を持つ交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtとは、真のサイン及びコサイン関数特性を示していなければならないものではなく、図2(B)に示されるように、実際は三角波形状のようなものであってよいものであり、要するに、そのような傾向を示していればよい。つまり、サイン等の三角関数に類似した周期関数であればよい。なお、図2(B)の例では、観点を変えて、その横軸の目盛をθと見立ててその目盛が所要の非線形目盛からなっているとすれば、横軸の目盛をxと見立てた場合には見かけ上三角波形状に見えるものであっても、θに関してはサイン関数又はコサイン関数ということができる。
【0028】サイン及びコサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおける振幅関数sinθ及びcosθの位相成分θの変化範囲は、上記実施例のような0度から360度までのフル範囲での変化に限らず、それよりも狭い限られた角度範囲での変化であってもよい。その場合は、コイルの構成を簡略化することができる。微小変位検出を目的とする場合などは有効検出範囲は狭くてもよいので、そのような場合に、検出可能位相範囲は360度未満の適宜の範囲であってよい。その他、検出目的に応じて、検出可能位相範囲が360度未満の適宜の範囲であってよい場合が種々あるので、そのような場合に適宜応用可能である。以下、それらの変形例について示す。
【0029】図3は、0度から180度までの範囲での位相変化を生じさせることができる実施例を示す。この場合、コイル部10は、有効検出範囲に対応する2つのコイルLA,LBとその前後に1づつ設けられた補助コイルLα,Lβとによって構成される。アナログ演算回路23では、各コイルの端子間電圧Vα,VA,VB,Vβを入力し、例えば、下記式(3)のように演算することでサイン関数特性の振幅カーブを示す交流出力信号sinθsinωtを生成し、下記式(4)のように演算することでコサイン関数特性の振幅カーブを示す交流出力信号cosθsinωtを生成する。
VA−VB …式(3)
(VA−Vα)+(VB−Vβ) …式(4)
【0030】前出の図2を併せて参照すれば容易に理解できるように、式(3)の演算により、0度〜180度の範囲についての、サイン関数特性の振幅カーブを示す交流出力信号sinθsinωtを生成することができる。また、式(4)の演算により、−90度〜0度〜90度〜180度〜270度の範囲についての、コサイン関数特性の振幅カーブを示す交流出力信号cosθsinωtを生成することができる。補助コイルLβを省略できること前述と同様である。この場合、振幅関数の位相角成分θを検出することにより、2つのコイルLA,LBのコイル長2Kに相当する長さの範囲における検出対象位置をアブソリュートで検出することができる。なお、演算式は上記に限らず、適宜設定可能である。すなわち、180度の幅の位相変化をどの角度範囲で生じさせるかによって、適宜演算式を変更することができる。例えば、180度から360度の角度範囲に対応して有効な位相変化を生じさせる場合は、「(Vα−VA)+(Vβ−VB)」の演算式によってサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωtを生成し、「VB−VA」の演算式によってコサイン関数特性の交流出力信号cosθsinωtを生成することができる。
【0031】図4は、0度から90度までの範囲での位相変化を生じさせることができる実施例を示す。この場合、コイル部10は、有効検出範囲に対応する1つのコイルLAとその前後に1づつ設けられた補助コイルLα,Lβとによって構成される。アナログ演算回路24では、各コイルの端子間電圧Vα,VA,Vβを入力し、例えば、下記式(5)のように演算することでサイン関数特性の振幅カーブを示す交流出力信号sinθsinωtを生成し、下記式(6)のように演算することでコサイン関数特性の振幅カーブを示す交流出力信号cosθsinωtを生成する。
VA−Vβ …式(5)
VA−Vα …式(6)
【0032】これも、前出の図2を併せて参照すれば容易に理解できるように、式(5)の演算により、0度〜90度〜180度の範囲についての、サイン関数特性の振幅カーブを示す交流出力信号sinθsinωtを生成することができる。また、式(6)の演算により、−90度〜0度〜90度の範囲についての、コサイン関数特性の振幅カーブを示す交流出力信号cosθsinωtを生成することができる。よって、有効検出範囲として0度〜90度の範囲を確保することができる。この場合も、演算式は上記に限らず、適宜設定可能である。すなわち、90度の幅の位相変化をどの角度範囲で生じさせるかによって、適宜演算式を変更することができる。
【0033】以上の実施例では、有効検出範囲の前後にそれぞれ補助コイルLα,Lβを設けているが、これらの補助コイルLα,Lβを省略することもできる。図5は、その一例を示し、0度から180度までの範囲での位相変化を生じさせることができる実施例を示す。この場合、コイル部10は、有効検出範囲に対応する2つのコイルLA及びLBによって構成される。前述と同様に、各コイルLA,LBが検出対象の変位方向に沿って順次配列されてなることにより、これらコイルに対する磁気応答部材11の位置が、検出対象の変位に応じて相対的に変位するにつれ、図5(B)に例示するように、各コイルの両端間電圧VA,VBの漸増変化が順番に起こる。ここで、コイル内に磁気応答部材11が全く入っていないときに得られる電圧がVo(最小電圧)であるとし、コイル内に磁気応答部材11がフルに入り込んだときに得られる電圧をVN(最大電圧)とすると、該電圧VoとVNの加算値「VN+Vo」に相当する交流(sinωt)の定電圧を基準電圧として、適宜の定電圧発生回路27から発生する。各コイルの出力電圧VAとVBの加算値から該定電圧「VN+Vo」を減算すると、得られる電圧「VA+VB−VN−Vo」は、図5(B)に示すように0度から180度の範囲でのコサイン関数特性(若しくはマイナス・コサイン関数特性)を示す。一方、電圧VAからVBを減算すると、得られる電圧「VA−VB」は、図5(B)に示すように0度から180度の範囲でのサイン関数特性を示す。
【0034】従って、図5(A)において、コイルLA,LBの両端間電圧VA,VBを減算回路25で減算することにより、その減算結果「VA−VB」として、サイン関数特性の交流出力信号sinθsinωtを生成することができる。また、コイルLA,LBの出力電圧VA,VBを演算回路26で加算し、その加算結果VA+VBから定電圧発生回路27から発生した基準電圧「VN+Vo」を減算回路28で減算することにより、その減算結果「VA+VB−(VN+Vo)」(つまり「VA+VB−VN−Vo」)として、コサイン関数特性の交流出力信号cosθsinωtを生成することができる。ここで、定電圧発生回路27から発生する基準電圧「VN+Vo」が、コイルLA,LBの温度特性変化と同じように温度特性を持って変化するようにするものとする。そのために、定電圧発生回路27は、コイルLA又はLBと同等の特性を持つダミーコイルを用いて構成し、同じ励磁交流信号によって励磁するようにすればよい。例えば、そのようなダミーコイルに、磁気応答部材11と同じ特性の磁性体コアを常時挿入しておけば、コイル内に磁気応答部材11がフルに入り込んだときに得られる最大電圧VNと同様の定電圧VNを、温度特性をもたせながら常時発生することができる。また、そのようなダミーコイルに磁性体コアを挿入しなければ、最小電圧Voと同様の定電圧Voを得ることができる。
【0035】上記のような定電圧発生回路27は、コイル数が2個の場合に限らず、その他適宜の数のコイルを使用する場合においても、適用できる。例えば、3個のコイルLA,LB,LCを順次縦続接続して、3Kの有効検出範囲につき、0度から270度までの範囲での位相変化を生じさせることができるようにする場合は、定電圧発生回路27から前記定電圧VNとVoを別々の基準電圧として発生し、各コイルの出力電圧VA,VB,VCと定電圧発生回路27からの基準電圧VN,Voとを用いて、「VA−VB−VC+Vo」なる演算によってサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωtを生成することができ、また、「VA+VB−VC−VN」なる演算によってコサイン関数特性の交流出力信号cosθsinωtを生成することができる。
【0036】別の実施例として、有効検出範囲に対応して1個のコイルのみを設けるようにしてもよい。その場合、1個のコイルのコイル長Kに対応する有効検出範囲の位相変化幅は、90度未満となる。図6はその一例を示すもので、同図(A)に示すように、1個のコイルLAを設けてなり、該コイルLAに直列に抵抗素子R1を接続してなる。これにより、磁気応答部材11の変位に応じてコイルLAの端子間電圧VAの振幅成分が図6(B)に示すように漸増変化すると、これに応じて抵抗素子R1の端子間の電圧降下VRの振幅成分が図6(B)に示すように漸減変化する。抵抗素子R1の端子間電圧VRをサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωtとみなし、コイルLAの端子間電圧VAをコサイン関数特性の交流出力信号cosθsinωtとみなせば、図6(C)に示すようにサイン関数とコサイン関数とがクロスする或る90度未満の幅の角度範囲における特性に対応づけることができる。よって、これらの交流出力信号を位相検出回路22に入力することにより、該当する90度未満の幅の角度範囲における位相角θをアブソリュート検出することができる。
【0037】図7は、図6の変形例であり、抵抗素子R1に代えてダミーコイルLNを設けたものである。このダミーコイルLNは、磁気応答部材11の変位の影響を受ける検出用コイルLAに直列に接続されているが、該磁気応答部材11の変位の影響を受けないようになっており、コイルLA内に磁気応答部材11がフルに入り込んだときに得られる最大電圧VNと同じ定電圧VNを、温度特性をもたせながら常時発生することができるようになっている。よって、磁気応答部材11の変位に応じたコイルLAの端子間電圧VAとダミーコイルLNの端子間電圧VNとは、図7(B)のように生成される。演算回路29はこれら電圧VA,VNを所定の演算式に従って演算し、例えば図7(C)に示すように、「VA+VN」なる演算によってサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωtを生成し、「VA−VN」なる演算によってコサイン関数特性の交流出力信号cosθsinωtを生成する。これは、図7(D)に示すように或る90度未満の幅の角度範囲における特性に対応づけることができる。よって、これらの交流出力信号を位相検出回路22に入力することにより、該当する90度未満の幅の角度範囲における位相角θをアブソリュート検出することができる。なお、図7(A)のような直列接続に限らず、図7(E)のように、ダミーコイルLNを検出用コイルLAに並列に接続するようにしてもよい。
【0038】なお、上記各実施例では、コイル部10において各コイルの軸が略一致するように配置されており、コイルの中心空間内に磁気応答部材11が侵入する構成からなっているが、これに限らず、コイル部10と磁気応答部材11との配置関係はどのようなものでもよい。例えば図8に例示するように、コイル部10において各コイルLα,LA〜LD,Lβの軸線が横並びに並列するように配置し、該コイルの端部の近傍を磁気応答部材11が通過する構成からなっていてもよい。その場合、各コイルLα,LA〜LD,Lβは鉄心に巻かれたものを用いるとよい。
【0039】また、図1の例のようにコイル部10において各コイルの軸が略一致するようにした配置の場合であっても、コイルの中心空間内に磁気応答部材11が侵入しないような構成としてもよい。図9(A)は、その一例を示すもので、コイル部10の軸心方向に平行にその近傍を磁気応答部材11が通過する構成からなっている。その場合、各コイルLα,LA〜LD,Lβの軸心空間に鉄心コア30を挿入しておくのがよい。これによって、コイルの外周への磁束の出方がよくなり、その外周近傍に近接する磁気応答部材11に対する感度が良くなり、検出精度が良好となる。図9(B)は、その別の一例を示すもので、磁気応答部材11が中空の円筒形状からなっており、コイル部10が該磁気応答部材11の中空円筒空間内に入り込むようになっている。この場合も、各コイルLα,LA〜LD,Lβの軸心空間に鉄心コア30を挿入しておき、コイルの外周への磁束の出方をよくするとよい。
【0040】図10は、コイル部10及び磁気応答部材11の別の構成例を示す側面及び断面図である。この場合、各コイルLα,LA〜LD,Lβの相互の配置間隔は、図1の例と同様に、Kであるが、各コイルの長さが短くなっている。すなわち、隣接する各コイルLα,LA〜LD,Lβは図1のように密接している必要はなく、適宜離隔していてもよい。磁気応答部材11の先端11aは、とがった、先細りの形状をしている。例えば、ほぼKぐらいの長さの先端部分が先細りの形状をしている。これにより、磁気応答部材11の先端11aの移動にともなうコイルのインダクタンス変化を滑らかな漸増(若しくは漸減)変化特性とすることができる。勿論、図1のように各コイルLα,LA〜LD,Lβが密接して配置されている場合も、磁気応答部材11の先端11aを適宜先細りの形状としてもよい。
【0041】更に別の例として、コイル部10の各コイルは、分離配置された複数のコイル部分からなっていてもよい。図11は、その一例として、1個のコイルLAについて、その分離配置例を示している。図11においては、分離配置された4つのコイル部分LA1,LA2,LA3,LA4によって、Kの範囲をカバーする1個のコイルLAが構成されている。各コイル部分LA1,LA2,LA3,LA4は直列接続され、コイルLAの端子間電圧VAが出力される。この場合、各コイル部分LA1,LA2,LA3,LA4の巻数は、共通していてもよいし、適宜異なっていてもよい。また、各コイル部分LA1,LA2,LA3,LA4の配置の離隔間隔は均等であってもよいし、適宜異なっていてもよい。これら、コイル巻数や離隔間隔などを不均一(非線形)にすることにより、サイン関数またはコサイン関数のカーブにより近い特性の自己インピーダンス変化を引き起こすことができる。そうすれば、前述した検出位相角θと実際の検出対象距離(位置)との関係の非線形性を改善することができる。同様に、図1のように隣接するコイルLα,LA〜LD,Lβを密接して配置する場合も、1つのコイルの全長Kの範囲でその巻数を均一にせずに、不均一にしてもよい。これによっても、サイン関数またはコサイン関数のカーブにより近い特性の自己インピーダンス変化を引き起こすことができ、前述した検出位相角θと実際の検出対象距離(位置)との関係の非線形性を改善することができる。
【0042】また、本発明に係る位置検出装置は、完全にまっすぐな直線位置の検出に限らず、所定の範囲で円弧状または曲線状に変位する検出対象の位置検出にも適用することができる。図12はその一例を示すもので、コイル部10の各コイルLA〜LDが所定の角度範囲ψにおいて円弧状に順次配置されており、磁気応答部材11が軸Cを中心にして該角度範囲ψにわたって揺動するように配置されている。さらに、回転における所定範囲の角度を検出する検出装置として本発明の位置検出装置を構成することも可能である。
【0043】また、上記各実施例において、磁気応答部材11としては、磁性体に限らず、銅やアルミニウムのような非磁性良導電体を使用してもよい。その場合は、磁気応答部材11の近接につれて渦電流損によりコイル端子間電圧が漸減することとなる。また、磁性体と導電体とを組み合わせたハイブリッドタイプとしてもよい。その場合、例えば、図13に示すように、磁気応答部材11の先端部分11aにおいて、非磁性良導電体11bの先細り形状を構成し、先細りによる非磁性良導電体11bの減少を補うように磁性体11cを配置するとよい。
【0044】別の実施形態として、磁気応答部材11として永久磁石を含み、コイル部10の各コイルには鉄心コアを含むようにしてもよい。図14は、その一例を示すもので、磁気応答部材11として機能する永久磁石11Mは、例えば中空リング状をなしており、このリング空間内にコイル部10が入り込むようになっている。コイル部10の各コイルLα,LA〜LD,Lβの軸心空間には鉄心コア31が挿入されている。永久磁石11Mが、いずれかのコイルに接近するとその近接箇所に対応する鉄心コア31が部分的に磁気飽和ないし過飽和状態となり、該コイルの端子間電圧が低下する。永久磁石11Mが1つのコイルの一端から他端まで変位する間で該コイルの両端間電圧が漸減するように、該永久磁石11Mの長さは少なくともコイル長Kに相当する長さを持つ。このように、磁気応答部材11として永久磁石11Mを使用する場合も、上記非磁性良導電体11bを用いる場合と同様に、磁気応答部材11つまり永久磁石11Mが1つのコイルの一端から他端まで変位する間で該コイルの両端間電圧の漸減変化を引き起こさせることができる。ただし、図14の例では、或るコイルの箇所を永久磁石11Mが通り過ぎてしまうと、また非飽和状態に戻るが、後段のアナログ演算を適切に行なうことで所望のサイン及びコサイン関数特性の出力振幅レベル変化が得られるようにすればよい。あるいは、磁気応答部材11として永久磁石11Mを連続的に複数配置することにより、磁気飽和ないし過飽和状態が持続するようにしてもよい。永久磁石11Mはリング状のものに限らず、棒状等その他形状であってもよい。その場合、図9(A)の例と同様に、軸心方向に平行にその近傍を永久磁石11Mからなる磁気応答部材11が通過する配置構成からなる。なお、鉄心コア31は磁気飽和を起こし易いように比較的細い形状等とするとよい。
【0045】図15は、図9(B)におけるコイル部10の各コイルの配置の変形例であり、隣接コイル間でのクロストークを防いで検出精度を向上させることができるようにしたものである。図15(A)においては、各コイルLα,LA〜LD,Lβの間に磁性体スペーサ32が配置されている。これにより、個々のコイルで発生した磁束の通り道が拡散されずに、個々のコイルの内部から直近端部(磁性体スペーサ32の箇所)を通り、外周を通り、直近端部(磁性体スペーサ32の箇所)を通り、内部に戻るという、図示のΦに示すようなルートを通ることになる。よって、クロストークを防ぎ、各コイルの外周に対して近接する磁気応答物質11の存在に対する個々のコイルの応答性(インピーダンス変化)を極めて良好にし、検出精度を向上させることができる。図15(A)では隣接コイル間に設ける磁性体スペーサ32は1個であるが、図15(B)のように、隣接コイル間に2個の磁性体スペーサ32a,32bを幾分分離させて配置するようにしてもよい。この場合、コイルのボビンとして鉄心コア30に代えて非磁性体を用いてもよい。図15に示された変形のように、磁性体スペーサ32,32a,32bによって各コイルを区画することは、図14の実施例においても適用可能である。
【0046】図16は、本発明に係る位置検出装置の別の実施例を示す断面図である。磁気応答部材11がコイル部10に侵入していくにつれて、コイルのインダクタンスが漸減するようになっている。図17(A)は図16におけるコイル部10と磁気応答物質11との配置を外観斜視略図によって示すもの、(B)はそのコイル軸方向断面略図、(C)は該コイル部10の電気回路の一例を示す図である。図16の構成は、図9(B)や図14の例と同様に、磁気応答部材11が中空の円筒形状を成しており、コイル部10が磁気応答部材11の中空円筒空間内に入り込むようになっている。
【0047】図16において、コイル部10は、ボビン部40に複数のコイル(図示例では4個のコイルLA,LB,LC,LD)を順次巻設してなり、その外周を非磁性および非導電性の保護チューブ(若しくはコーテングあるいはモールド)41によってカバーしてなるものである。保護チューブ41としてはいかなる材質のものを用いてもよいが、例えば、絶縁性樹脂からなる熱収縮チューブを用いると安価である。
【0048】ボビン部40は、非磁性の中空筒からなり、その内部に1又は複数の磁性体棒42が収納されている。磁性体棒42は、コイル部10の全長にわたって延びており、該コイル部10の全長にわたるインダクタンス値すなわちインピーダンス値を設定する。ボビン部40内に収納する磁性体棒42の太さあるいは数を適宜調節することにより、コイル部10の全長にわたるインダクタンス値の設定変更を行うことができる。なお、磁性体棒42として、その周囲に銅めっき等を施して導電性被膜を形成したものを用いるとよい。そうすれば、温度ドリフト特性の補償に役立つ。ボビン部40は、非磁性であればよく、金属あるいは樹脂等からなっていてもよい。この位置検出装置を適用する装置が大型建設機械等大きな荷重が加わる用途に使用される場合は、十分な強度を確保するために金属を用いるのがよい。例えば、ボビン部40は非磁性のステンレス等を用いて構成する。そうでない小型の装置の場合は、樹脂を用いるのが安価で軽量である。
【0049】図16の実施例による位置検出動作つき、図17を参照して説明する。なお、図17では、図示の便宜上、1本の磁性体棒42のみ図示し、ボビン部40は図示省略した。コイル部10は、巻数、コイル長等の性質が同等の4つのコイルLA,LB,LC,LDを、直線変位方向に沿って順次配列してなる。検出対象の変位に応じた、コイル部10と磁気応答部材11との相対的位置関係の変化は、図1の実施例と同様である。すなわち、検出対象の変位に応じて、図の右方向に磁気応答部材11が進行するとき、磁気応答部材11の先端11aが、最初にコイルLAの磁場に侵入し、次に、コイルLB,LC,LDの順にその磁場に侵入していく。2点鎖線11’は最後のコイルLDにまで侵入した磁気応答部材11を示している。4つのコイルLA,LB,LC,LDに対応する範囲4Kが有効検出範囲となるが、実際は範囲4Kの両端では精度が落ちるため、その部分は使用しないものとし、実際の有効検出範囲は4Kよりも少し狭くなる。勿論、有効検出範囲4Kでフルに検出可能にするには、前記実施例と同様に、前後に補助コイルLα,Lβを設ければよい。
【0050】各コイルLA,LB,LC,LDはその芯部に全長にわたって1又は数本の磁性体棒42が挿入された状態となっており、磁気応答部材11が近接していない限り、そのインダクタンス値は最大である。磁気応答部材11の各コイルの磁場に対する近接又は侵入の度合いが増すほど該コイルの自己インダクタンスが減少し、該磁気応答部材11の端部11aが1つのコイルの一端から他端まで変位する間で該コイルの両端間電圧が漸減する。すなわち、磁気応答部材11が磁性体である場合は、磁性体がコイル外周にかぶさる格好になるため、コイル芯部の磁性体コアつまり42にのみ集中していた磁束が外側にかぶさった磁気応答部材11の方に漏洩し、コイルの自己インダクタンスが減少する。また、磁気応答部材11が導電体である場合は、導電体がコイル外周にかぶさる格好になり、磁界によるうず電流損が生じ、コイルの自己インダクタンスが減少する。このように、図16の実施例では、磁気応答部材11として磁性体と導電体のどちらを用いても、コイル部10に対する磁気応答部材11の近接に応じて、コイルの自己インダクタンスが減少する。外周の導電体のうず電流損によるインダクタンス減少率の方が、外周の磁性体による磁束漏洩によるインダクタンス減少率よりも大であるので、より好ましい実施態様は磁気応答部材11として導電体を使用することである。なお、磁気応答部材11として導電体は、表皮効果を生ずるものであればよいので、薄い層であってよい。その場合は、例えば、中空の円筒形状の適宜のベース部材(可動体)の円筒空間周壁に、導電体を配置する(銅めっき等であってもよい)ことで磁気応答部材11を形成するとよい。
【0051】図17(C)に示すように、各コイルLA,LB,LC,LDは、交流電源12から発生される所定の1相の交流信号(仮にsinωtで示す)によって定電圧又は定電流で励磁される。各コイルLA,LB,LC,LDの両端間電圧をそれぞれVA,VB,VC,VDで示すと、このそれぞれの電圧VA,VB,VC,VDを取り出すために、端子14〜18が設けられている。容易に理解できるように、各コイルLA,LB,LC,LDは、物理的に切り離された別々のコイルである必要はなく、一連のコイルの全長を4分割する位置に中間端子14〜18を設けるだけでよい。すなわち、端子14,15間のコイル部分がコイルLAとなり、端子15,16間のコイル部分がコイルLB、端子16,17間のコイル部分がコイルLC、端子17,18間のコイル部分がコイルLD、となる。各コイルの出力電圧VA,VB,VC,VDは、アナログ演算回路20及び21に所定の組み合わせで入力され、所定の演算式に従って加算又は減算されることで、各アナログ演算回路20及び21から検出対象位置に応じたサイン及びコサイン関数特性を示す振幅をそれぞれ持つ2つの交流出力信号sinθsinωt,cosθsinωtが生成される。
【0052】上述のように、磁気応答部材11の各コイルの磁場に対する近接又は侵入の度合いが増すほど該コイルの自己インダクタンスが減少し、該磁気応答部材11の端部11aが1つのコイルの一端から他端まで変位する間で該コイルの両端間電圧が漸減する。ここで、複数のコイルLA,LB,LC,LDが検出対象の変位方向に沿って順次配列されてなることにより、これらコイルに対する磁気応答部材の位置が、検出対象の変位に応じて相対的に変位するにつれ、図18(A)に例示するように、各コイルの両端間電圧VA,VB,VC,VDの漸減変化が順番に起こる。図18(A)において、或るコイルの出力電圧が傾斜している区間において、当該コイルの一端から他端に向かって磁気応答部材11の端部11aが変位していることになる。典型的には、磁気応答部材11の端部11aが或る1つのコイルの一端から他端まで変位する間に生じる該コイルの両端間電圧の漸減変化カーブは、サイン又はコサイン関数における90度の範囲の関数値変化になぞらえることができる。そこで、各コイルの出力電圧VA,VB,VC,VDをそれぞれ適切に組み合わせて加算及び/又は減算することにより、検出対象位置に応じたサイン及びコサイン関数特性を示す振幅をそれぞれ持つ2つの交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtを生成することができる。
【0053】すなわち、アナログ演算回路20では、コイルLA,LB,LC,LDの出力電圧VA,VB,VC,VDを下記式(7)のように演算することで、図18(B)に示すようなサイン関数特性の振幅カーブを示す交流出力信号を得ることができ、これは、等価的に「sinθsinωt」で示すことができる。
(VB−VA)−(VD−VC)−Vo …式(7)
なお、Voは最少インダクタンス値(磁気応答部材11が1つのコイルの全体をカバーしたときのインダクタンス値)に対応する基準電圧であり、0レベルにオフセットするためのものである。
【0054】また、アナログ演算回路21では、コイルLA,LB,LC,LDの出力電圧VA,VB,VC,VDを下記式(8)のように演算することで、図18(B)に示すようなコサイン関数特性の振幅カーブを示す交流出力信号を得ることができる。これは等価的に「cosθsinωt」で示すことができる。
VA+(VB−VC)+(Vp−VD)−Vo …式(8)
Vpは最大インダクタンス値(磁気応答部材11が1つのコイルにまったく近接していないときのインダクタンス値)に対応する基準電圧であり、出力電圧VDをオフセットするためのものである。なお、温度ドリフトを考慮すると、各コイルLA〜LDの温度ドリフトと同等の温度ドリフト特性で各基準電圧Vo,Vpが生成されるようにするために、適宜のダミーコイルを介在させて各基準電圧Vo,Vpを生成するのがよい。勿論、他の温度補償手段を用いてもよい。
【0055】各交流出力信号の振幅成分であるサイン及びコサイン関数における位相角θは、検出対象位置に対応しており、90度の範囲の位相角θが、1個のコイルの長さKに対応している。従って、4Kの長さの有効検出範囲は、位相角θの0度から360度までの範囲に対応している。よって、この位相角θを検出することにより、4Kの長さの範囲における検出対象位置をアブソリュートで検出することができる。サイン及びコサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおける振幅関数sinθ及びcosθの位相成分θを、前述と同様に、位相検出回路(若しくは振幅位相変換手段)22で計測することで、検出対象位置をアブソリュートで検出することができる。
【0056】ここで、図16の実施例における温度特性の補償について説明すると、温度に応じて各コイルのインピーダンスが変化し、その出力電圧VA,VB,VC,VDも変動する。例えば、図2の場合と同様に、図18(A)で実線のカーブに対して破線で示すように各電圧が一方向に増加または減少変動するが、これらを加減算合成したサイン及びコサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおいては、図18(B)で実線のカーブに対して破線で示すように正負両方向の振幅変化として表れるので、それぞれのサイン及びコサイン関数における位相角θに対して影響を及ぼさず、温度ドリフト特性の補償がされていることとなり、精度のよい位置検出が期待できる。さらに、前述のように、コイル部10の磁性体コアに相当する磁性体棒42の外周に銅めっき等を施して導電体被膜を形成することにより、温度補償を行うことができる。すなわち、この磁性体棒42の表面の導電体被膜はそこに生じるうず電流損によって磁気回路のインダクタンスを減少させるものであるが、例えば温度上昇時に、各コイルのインピーダンスが上昇するとき(これは本来、自己インダクタンスの減少を招くが)、導電体被膜のうず電流損が減少して相対的に磁気回路のインダクタンスを上昇させ、コイルのインダクタンスの温度ドリフトを補償する。同様の理由で、ボビン部40の非磁性金属として多少なりとも導電性を持つものを用いると、同様の温度ドリフト補償効果が期待できる。
【0057】更に、上記各実施例においては、サイン及びコサイン関数の振幅特性を持つ2つの出力交流信号sinθsinωt及びcosθsinωtを生成する例(いわばレゾルバタイプの2相出力を生ずる例)について説明したが、これに限らず、所定位相ずれを示す3以上の三角関数の振幅特性を持つ3以上の出力交流信号(例えば、sinθ・sinωt、sin(θ−120°)・sinωt及びsin(θ−240°)・sinωt)を出力するように構成してもよい。なお、配置するコイルLA〜LDの数は4以上であってもよい。
【0058】また、図19に示すように、コイルLα,LA〜LD,Lβのグループと別のコイルLα’,LA’〜LD’,Lβ’のグループ(更に多くのコイルグループがあってもよい)とを所定距離dだけずらして並列配置し、両グループをカバーするような幅を磁気応答部材11が持っているように構成してもよい。各グループのコイルはすべて同相の交流信号(例えばsinωt)によって励磁される。このずれdが90度未満の適宜の位相差に対応することなり、これらの各コイルの出力電圧を適宜加算及び/又は減算して組み合わせることにより、例えば、sinθ・sinωtとsin(θ−120°)・sinωt及びsin(θ−240°)・sinωtのように、90度以外の位相差を持つ複数の三角関数(サインとコサイン以外の関係の三角関数)に従う振幅を示す複数の交流出力信号を生成することができる。
【0059】上記各実施例において、磁気応答部材は、ロッドや板等の基材の表面にめっき等の表面加工技術によって、所定のパターンで形成されたものであってもよい。図20は、その一例を略示するもので、(A)は概略斜視図、(B)ロッド基材とコイルを横断面にて示す図、(C)はロッド基材の表面に形成された磁気応答部材のパターンの一例を示す展開図、である。例えばシリンダピストンロッドのようなロッド状の基材66の表面において漸増又は漸減する三角形のような所定形状のパターンで、異なる2つの磁気応答部材11a,11bが形成配置される。磁気応答部材11a,11bと基材66の材質の磁気的性質は異なる。例えば、基材66が鉄のような磁性体の場合、磁気応答部材11a,11bは銅のような非磁性の良導電体からなる。あるいは磁気応答部材11a,11bが鉄のような磁性体の場合、基材66は非磁性体からなるか、あるいは磁性体であっても凸部として形成された磁気応答部材11a,11bに対して、凹みとして形成されたものからなる。
【0060】コイル部10では各パターンに対応して個別にコイルL1,L2が設けられる。コイル部10は、全体としてリング状であって、そのリング内にロッド状の基材66をその軸方向に直線移動可能に挿入している。コイル部10におけるリングの半円部分に第1コイルL1が配置され、もう一方の半円部分に第2コイルL2が配置される。磁気応答部材11a,11bは2つのパターンからなっており、第1のパターン11aは図において、左から右に向かって漸増する三角形状を成しており、第2のパターン11bはそれとは逆に左から右に向かって漸減する逆三角形状を成している。第1コイルL1はパターン11aの配置領域をカバーしており、第2コイルL2はパターン11bの配置領域をカバーしている。基材66に設けられた磁気応答部材11a,11bの漸増又は漸減のパターンの範囲Kが検出可能範囲Kに対応する。すなわち、検出対象の変位に応じてロッド状の基材66が変位すると、各コイルL1,L2に対応する磁気応答部材11a,11bの位置が変化し、該各コイルL1,L2に対応している磁気応答部材11a,11b面積に応じた自己インダクタンスすなわちインピーダンスが各コイルL1,L2に生じ、検出対象位置に対応する出力電圧Va,Vbが各コイルL1,L2から得られる。
【0061】図21の(a)は、図20の各コイルL1,L2に関連する電気回路図、(b)及び(c)はその検出動作説明図である。各コイルL1,L2の出力電圧Va,Vbの特性は、図21(b)に示すように逆特性である。よってこれら出力電圧Va,Vbの変化は、サイン関数又はコサイン関数における90度未満の適宜の範囲の関数値変化になぞらえることができる。よってこれら出力電圧Va,Vbを適当なアナログバッファ回路100を介して取り出すことにより、図21(c)に示すように、検出対象位置に応じたサイン及びコサイン関数特性を示す振幅をそれぞれ持つ2つの交流出力信号(典型的にはsinθsinωt及びcosθsinωt)を生成することができる。
【0062】図22にコイル構成の変更例を示す。同図(a)は斜視図、(b)は各コイルと磁気応答部材パターンの対応関係を示す展開図である。この場合は、コイルの中心空間内に磁気応答部材11a,11bを配置したロッド状基材66にが侵入する構成になっており、コイルの内部磁束の向きはロッドの軸方向つまり検出対象の直線変位方向を指向している。パターン11aに対応するコイルL1及びパターン11bに対応するコイルL2は、巻数、コイル長等の性質が同等の2つのコイルを隣接配置してなるものである。各コイルの内周の半面(ほぼ180度の範囲)には、例えば銅等の良導電体でマスキングMA,MBを施す。これによりマスキングが施されていない半面においてのみ対応している磁気応答部11a,11bの対応面積に応じた出力電圧が各コイルL1,L2から生じることになる。コイルL1におけるマスキングMAはパターン11bに対応する半面に施されており、コイルL1はパターン11bに応答せず、パターン11aにのみ応答する。コイルL2におけるマスキングMBはパターン11aに対応する半面に施されており、コイルL2はパターン11aに応答せず、パターン11bにのみ応答する。よって、パターン11aのコイル対応面積の漸減に対応してコイルL1からの出力電圧が漸増し、パターン11bのコイル対応面積の漸増に対応してコイルL2からの出力電圧が漸減し、前述と同様に図21のように検出動作を行うことができる。
【0063】図23は、0度から180度までの位相変化を生じさせることができる実施例を示す。図23(a)はロッド状基材66の表面における磁気応答部材11a〜11fのパターン配置例を示す展開図である。磁気応答部材は6つのパターン11a,11b,11c,11d,11e,11fからなり、これらをピストンロッド4の側面を円周方向に6分割した範囲に対応して並列的に配置してなる。パターン11a,11c及び11eは互いに共通なパターンであり、パターン11b,11d及び11fも互いに共通なパターンである。パターン11a,11c及び11eは、同図(a)においてロッド状基材66の長さ方向の左半分の区間で、左から右に向かって、磁気応答部材の面積が漸減し、右半分の区間では磁気応答部材を有さないパターンである。パターン11b,11d及び11fは、同図(a)においてロッド状基材66の長さ方向の右半分の区間で、左から右に向かって、磁気応答部の面積が漸減し、左半分の区間では全面が磁気応答部材からなるパターンである。全体としてリング状のコイル部10は各パターン11a,11b,11c,11d,11e,11fにそれぞれ対応するコイルL1,L2,L3,L4,L5,L6を含んでおり、リングの円周方向を6分割した略各60度の範囲にそれぞれ対応するように配置されている。
【0064】矢印x方向へロッド状基材66が変位すると、そのストロークのほぼ前半の区間において、パターン11b,11d,11fとそれに対応するコイルL2,L4,L6との対応面積が漸増し、各コイルL2,L4,L6の出力電圧V2,V4,V6が漸減変化する。この前半区間では、他のパターン11a,11c,11eに対応するコイルL1,L3,L5の出力電圧V1,V3,V5は、磁気応答部材(例えば導電体)がないため、最大レベルを維持する。漸減変化パターンがそれぞれ共通である出力電圧V1,V3及びV5さらに基材66が変位すると、そのストロークのほぼ後半の区間において、パターン11a,11c,11eとそれに対応するコイルL1,L3,L5との対応面積が漸増し、各コイルL1,L3,L5の出力電圧V1,V3,V5が漸減変化する。この後半区間では、他のパターン11b,11d,11fに対応するコイルL2,L4,L6の出力電圧V2,V4,V6は、磁気応答部材(例えば導電体)が常に存在するため、最小レベルを維持する。変化パターンがそれぞれ共通である出力電圧V1,V3及びV5は図23(b)における平均化回路102で加算合成され、出力VAを得る。また出力電圧V2,V4及びV6も平均化回路102で加算合成され、出力VBを得る。各合成出力VA、VBの一例を図24(a)に示す。このように第一の共通パターン11a,11c,11eと第二の共通パターン11b,11d,11fとを交互に配置し、それぞれの出力を加算合成した理由は、ロッド状基材66の回転、軸芯ずれの悪影響を受けないようにするためである。
【0065】図5の例と同様に、コイル出力電圧の最小電圧をVo、最大電圧をVNとすると、これに対応する定電圧VN+Voを定電圧発生回路27から、図24(a)に示すように、発生させる。出力電圧VAとVBの加算値から該定電圧VN+Voを減算すると、得られる電圧「VA+VB−VN−Vo」は、図24(b)に示すように、ほぼ0度から180度範囲内に納まる範囲のコサイン関数特性になぞらえることができる。一方、電圧VAからVBを減算すると、得られる電圧「VA−VB」は、同図(b)に示すように、ほぼ0度から180度範囲内に納まる範囲のサイン関数特性になぞらえることができる。図23(b)の各演算回路25,26,28は、図5(A)の同一符号の回路と同一の演算機能を果たす。よって、前述の図5の例と同様な検出動作を行うことができる。
【0066】図25は、ほぼ0度から360度までのフルの位相変化を実現できる例を示す。図25(A)は磁気応答部材11によって基材66上に形成される4系列の異なるパターン11a,11b,11c,11dを示す展開図である。各パターン11a〜11dは、ロッド状の基材66の側面を円周方向に4分割した範囲に対応して配置される。説明の便宜上、同図において、ロッド状の基材66を長さ方向に4分割し、4分の1の各区間をそれぞれP1,P2,P3,P4と称する。例えばパターン11aは、図において左から右に向かって、P1区間で面積が漸増する三角形状のパターンを成し、P4区間で面積は漸減する三角形状のパターンを成し、P2及びP3区間では全域が磁気応答部材11からなる。他のパターンは図示の通り順次異なっている。
【0067】図25(B)は横軸方向の検出対象位置に対する各コイルL1〜L4の出力電圧V1〜V4の漸増及び漸減変化を示す。図25(D)は各コイルL1〜L4に関連する電気回路図であり、アナログ演算回路101で「V1−V3」なる演算と「V2−V4」なる演算を行う。図25(C)は演算結果として得られる出力信号を示すグラフである。出力電圧V1からV3を減算して得られる電圧「V1−V3」は、ほぼ0度から360度範囲内に納まる範囲のコサイン関数特性になぞらえることができる。一方、電圧V2からV4を減算して得られる電圧「V2−V4」は、ほぼ0度から360度範囲内に納まる範囲のサイン関数特性になぞらえることができる。よって、図25(C)に示すような、ほぼ360度の範囲にわたるサイン関及びコサイン関数特性の交流出力信号(典型的にはsinθsinωtとcosθsinωt)に相当する信号を生成することができる。
【0068】上記各実施例において、基材66は、ロッド状のものに限らず、平板状であってもい。その場合は、板面上に形成された磁気応答部材11a,11b,…に対向するようにコイルL1,L2,…が配置される。
【0069】更に、本発明の変形例として、例えば、図1(C)において、一方のアナログ演算回路20のみを用いて1つの交流出力信号sinθ・sinωtのみを生成するようにしてもよい。その場合は、位相検出回路22は用いずに、1つの交流出力信号sinθ・sinωtの振幅電圧レベルから位置検出データを得るように構成することになる。この場合でも、2次コイルを省略した簡素な位置検出装置を提供することができる。
【0070】なお、上記変形例のような1つの交流出力信号sinθ・sinωtのみを生成する位置検出装置を、図19のように2個併設すると、公知の位相シフト型位置検出原理に従う検出装置を構成することもできる。すなわち、公知の位相シフト型位置検出原理に従う検出装置では、2相交流信号(例えばsinωtとcosωt)を用いて複数相の1次コイルを励磁し、各相の2次コイルの合成出力信号として、位置に対応する位相角θだけ位相シフトした出力交流信号(例えばsin(ωt+θ))を得るようにしている。そのような位相シフト型位置検出原理を採用する検出装置において、本発明のアイデアを適用してもよい。そのためには、図14の例のように、2つのコイルグループを並列配置し、各グループ毎に位相の異なる交流信号(例えばsinωtとcosωt)によってそれぞれ該グループ内のコイルを共通に励磁し、一方のコイルグループでcosθsinωtを形成し、他方のコイルグループでsinθcosωtを形成するようにし、両出力を加算又は減算すればよい。
【0071】上記各実施例において、磁気応答部材11の方を固定し、コイル部10の方を検出対象の変位に応じて移動させるようにしてもよいのは勿論である。なお、この発明において、コイルに生じる電圧若しくはコイルの端子間電圧とは、必ずしも電圧検出タイプの回路構成に限定されるものではなく、広義に解釈されるべきであり、電流検出タイプの回路構成を採用するものも範囲に含まれる。要するにコイルのインピーダンス変化に応じたアナログ電圧または電流を生じ、これを検出することのできる回路構成であればよい。
【0072】
【発明の効果】以上のとおり、この発明によれば、1次コイルのみを設ければよく、2次コイルは不要であるため、小型かつシンプルな構造の位置検出装置を提供することができる。また、複数のコイル区間を検出対象の変位方向に沿って順次配列してなり、磁気応答部材が1つのコイル区間の一端から他端まで変位する間で該コイルの両端間電圧が漸増(又は漸減)する特性の変化が、各コイル区間毎に順番に起こるので、各コイル区間の電圧をそれぞれ取り出してそれらを加算及び/又は減算して組合わせることにより、検出対象位置に応じて所定の周期関数特性に従う振幅をそれぞれ示す複数の交流出力信号(例えばサイン及びコサイン関数特性に従う振幅をそれぞれ示す2つの交流出力信号)を容易に生成することができ、利用可能な位相角範囲を広くとることができる。更に、これら複数の交流出力信号における振幅値の相関関係から該振幅値を規定する所定周期関数(例えばサイン及びコサイン関数)における位相値を検出することで、検出対象の変位が微小でも高分解能での位置検出が可能である。
【出願人】 【識別番号】591054196
【氏名又は名称】後藤 忠敏
【出願日】 平成12年3月14日(2000.3.14)
【代理人】 【識別番号】100077539
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 義仁
【公開番号】 特開2001−141410(P2001−141410A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願2000−70326(P2000−70326)