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【発明の名称】 マイクロメータ
【発明者】 【氏名】西沖 暢久

【要約】 【課題】フレームの変形に基づく測定誤差を低減できるとともに、コストダウンまたは軽量化をも達成できるマイクロメータを提供すること。

【解決手段】測定の際にフレーム11に測定圧が加わると、フレーム11にたわみ変形が生じる。このとき、フレーム11を略S字状に形成したので、中心点11Cを境にフレーム11の両側でほぼ同量の外側方向へのたわみ変形が生じ、フレーム11のアンビル保持部位とスピンドル保持部位とが平行に保たれる。従って、アンビル保持部位及びスピンドル保持部位にそれぞれ保持されたアンビル12及びスピンドル15の姿勢も互いに平行が維持され、アンビル面12A及びスピンドル面15A間には相対的な傾きが生じない。これにより、被測定物を常に同じ姿勢でアンビル12及びスピンドル15間に挟むことができ、フレーム11の変形に基づく測定誤差を低減できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フレームと、このフレームの一端側に設けられたアンビルと、フレームの他端側に前記アンビルに対して進退可能に設けられたスピンドルとを備えたマイクロメータにおいて、前記フレームは、一端と他端との中間に中心点を有するとともに一端と中心点との間及び他端と中心点との間の部分が略同一形状かつスピンドルを挟んで両側に位置する形状に形成され、前記フレームの中心点には前記スピンドルの基点からの進退方向への変位量を検出する第1変位検出器が、前記フレームの中心点を挟んでアンビルの被測定物当接面の中心と対称な位置には前記スピンドルの基点からの進退方向への変位量を検出する第2変位検出器がそれぞれ設けられていることを特徴とするマイクロメータ。
【請求項2】 請求項1に記載のマイクロメータにおいて、前記第1変位検出器及び第2変位検出器からそれぞれ検出された変位量L1,L2を用いて、被測定物の寸法値Xを求める演算手段を備えていることを特徴とするマイクロメータ。
【請求項3】 請求項1または請求項2に記載のマイクロメータにおいて、前記フレームは、前記中心点を通る軸を対称軸とした回転対称な略S字状に形成されていることを特徴とするマイクロメータ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロメータに係り、詳しくは、被測定物の長さや厚み等の寸法を測るマイクロメータに関する。
【0002】
【背景技術】図3(a)に従来のマイクロメータ100を示す。マイクロメータ100は、略U字状のフレーム101と、このフレーム101の一端に設けられたアンビル102と、前記フレーム101の他端に送り機構103(通常、送りねじ等)を介して前記アンビル102に対して進退可能に設けられたスピンドル104とを含んで構成されている。測定に際しては、被測定物をアンビル102とスピンドル104の間に挟み、このときのスピンドル104の進退方向への変位量を読み取れば、被測定物の寸法値を求めることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このようなマイクロメータ100による測定において、フレーム101には、被測定物を挟むアンビル102及びスピンドル104を介して、測定圧がかかる。すると、図3(b)に示すように、フレーム101の一端(アンビル102側)と他端とが互いに離れる方向へたわむ結果、測定値に誤差が生じる。このような測定誤差を低減させるために、種々の定圧機構(たとえば、ラチェット式定圧機構やフリクション式定圧機構等)をマイクロメータ100に設けることで、フレーム101にかかる測定圧の低減とその一定管理が行われてきた。しかしながら、このような定圧機構を用いて測定誤差を低減させることができても、従来のマイクロメータ100の形態では、フレーム101にかかる測定圧の値をゼロにしない限り、測定誤差を無くすことはできず、より高精度な測定を求められる領域においては、マイクロメータ100の使用が制限される。
【0004】また、フレーム101にたわみ変形が生じると、必然的に、フレーム101の両端にそれぞれ固定されたアンビル102及びスピンドル104の姿勢も変化してしまい、被測定物を挟むアンビル面102A及びスピンドル104A面間に相対的な傾きが生じる。これにより、図4に示すように、アンビル102とスピンドル104とで挟まれた被測定物の姿勢が不安定となるため、繰り返し測定を行っても測定値にばらつきが生じ、測定値の再現性が低下するという問題がある。
【0005】本発明の目的は、フレームの変形に基づく測定誤差を低減できるとともに、コストダウンまたは軽量化をも達成できるマイクロメータを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のマイクロメータは、上記目的を達成するため、次の構成を採用する。請求項1に記載のマイクロメータは、フレームと、このフレームの一端側に設けられたアンビルと、フレームの他端側に前記アンビルに対して進退可能に設けられたスピンドルとを備えたマイクロメータにおいて、前記フレームは、一端と他端との中間に中心点を有するとともに一端と中心点との間及び他端と中心点との間の部分が略同一形状かつスピンドルを挟んで位置する形状に形成され、前記フレームの中心点には前記スピンドルの基点からの進退方向への変位量を検出する第1変位検出器が、前記フレームの中心点を挟んでアンビルの被測定物当接面の中心と対称な位置には前記スピンドルの基点からの進退方向への変位量を検出する第2変位検出器がそれぞれ設けられていることを特徴とするものである。
【0007】このような発明によれば、測定の際にフレームに測定圧が加わると、フレームにたわみ変形が生じる。このとき、フレームは、一端と他端との中間に中心点を有するとともに一端と中心点との間及び他端と中心点との間の部分が略同一形状かつスピンドルを挟んで両側に位置する形状に形成されているので、中心点を境にフレームの両側でほぼ同量の外側方向へのたわみ変形が生じ、フレームのアンビル保持部位とスピンドル保持部位とが平行に保たれる。このため、アンビル保持部位及びスピンドル保持部位にそれぞれ保持されたアンビル及びスピンドルの姿勢も互いに平行が維持され、アンビル面及びスピンドル面間には相対的な傾きが生じない。これにより、被測定物を常に同じ姿勢でアンビル及びスピンドル間に挟むことができ、この状態において、第1及び第2変位検出器からそれぞれ検出されたスピンドルの各変位量を用いて被測定物の寸法値を求めることで、フレームの変形に基づく測定誤差を低減できる。また、フレームのたわみ変形の大きさに関わらず、フレームの一端側と他端側とは常に平行に保たれているので、フレームへの高剛性の要求が低減され、これにより、フレームの材質や製造方法の制限が緩和され、マイクロメータのコストダウンまたは軽量化(たとえば、フレームをプラスチック樹脂で形成)を達成できる。
【0008】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマイクロメータにおいて、前記第1変位検出器及び第2変位検出器からそれぞれ検出された変位量L1,L2を用いて、被測定物の寸法値Xを求める演算手段を備えていることを特徴とするものである。この発明によれば、第1変位検出器及び第2変位検出器からそれぞれ検出された変位量L1,L2を用いて、被測定物の寸法値Xを求める演算手段、具体的には、X=2×L1−L2を演算することで寸法値Xを求める演算手段を備えているから、フレームにたわみ変形が生じても、その影響を受けることなく、被測定物の寸法値Xを求めることができる。
【0009】請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のマイクロメータにおいて、前記フレームは、前記中心点を通る軸を対称軸とした回転対称な略S字状に形成されていることを特徴とするものである。このような場合、フレームは略S字状に形成されているから、フレームの形成を容易にできる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1において、マイクロメータ1は、略S字状のフレーム11と、このフレームの一端11A側に固定されたアンビル12と、フレーム11の他端11B側に案内機構13(ベアリング等)及び送り機構14(送りねじ等)を介してアンビル12に対して進退可能に設けられたスピンドル15とを含んで構成されており、送り機構14を回転させることで、スピンドル15は、アンビル12に対して進退する。
【0011】フレーム11は、その一端11Aと他端11Bとの中間に中心点11Cを有するとともに、一端11Aと中心点11Cとの間及び他端11Bと中心点11Cとの間の部分が略同一形状に形成されている。また、スピンドル15を挟んで位置する形状に形成されており、具体的には、フレーム11の中心部位に形成された適宜な寸法の孔11Dにスピンドルが貫通されている。つまり、測定の際には、フレーム11の一端11Aと中心点11Cとの間で、被測定物は、アンビル面12A及びこのアンビル面12Aに対して平行なスピンドル面15Aに挟まれる。
【0012】さらに、フレーム11の中心点11Cにはスピンドル15の基点からの進退方向への変位量L1を検出する第1変位検出器111が、フレーム11の中心点11Cを挟んでアンビル12の被測定物当接面(以下、アンビル面)12Aの中心と対称な位置にはスピンドル15の基点からの進退方向への変位量L2を検出する第2変位検出器112がそれぞれ設けられている。
【0013】第1及び第2変位検出器111,112には、検出された変位量L1,L2を用いて、X=2×L1−L2を演算することで被測定物の寸法値Xを求める演算手段16が設けられており、この演算手段16は、図示は省略するが、上記演算を行う演算部と、この演算部での演算結果を表示する表示部とを含んで構成されている。なお、演算手段16は、マイクロメータ1と一体的に設けられていてもよいし、別個に設けられていてもよい。
【0014】次に、本実施形態の作用を説明する。たとえば、寸法値Xの被測定物を測定する場合、まず、何も挟まない状態で、アンビル面12Aとスピンドル面15Aとを互いに当接させる。これにより、第1及び第2変位検出器111,112におけるスピンドル15の基点をそれぞれ設定する。次に、図2(b)に示すように、被測定物をアンビル12とスピンドル15とで挟むが、この際、アンビル12とスピンドル15を介して、フレーム11には、測定圧がかかりたわみ変形が生じる。フレーム11は、中心点11Cを境にフレーム11の両側で、同量の外側方向へのたわみ変形が生じる。すなわち、フレーム11の変形前(図2(a)参照)と比べて、一端11A及び他端11Bは、スピンドル15の軸方向において、中心点11Cから距離ΔLだけそれぞれ離れる。このとき、フレーム11の上述した形状から、フレーム11のアンビル保持部位及びスピンドル保持部位は平行に保たれるため、アンビル保持部位及びスピンドル保持部位にそれぞれ保持されたアンビル12及びスピンドル15の姿勢も互いに平行が維持され、アンビル面12A及びスピンドル面15A間には相対的な傾きが生じず、被測定物の姿勢が安定した状態で測定が行われる。
【0015】この状態では、フレーム11の一端11A側において、フレーム11の一端11Aが中心点11Cから距離ΔL移動するので、フレーム11の一端11A側に固定されたアンビル12も中心点11Cから距離ΔL移動する。アンビル12及びスピンドル15間には、被測定物が挟持されているので、中心点11Cに設けられた第1変位検出器111からみると、スピンドル15は中心点11Cから距離ΔLだけ外側に移動しており、第1変位検出器111により検出される変位量L1は、L1=X−ΔLとなる。
【0016】また、フレーム11の他端11B側において、スピンドル15がアンビル12側に距離ΔL移動しているうえに、フレーム11の他端11Bが中心点11Cから距離ΔL移動しているので、第2変位検出器112からみると、スピンドル15はさらに中心点11C側に距離ΔL移動している。従って、第2変位検出器112により検出される変位量L2は、L2=X−2×ΔLとなる。
【0017】これらの計算式L1=X−ΔL及びL2=X−2×ΔLを演算すると、X=2×L1−L2となる。従って、演算手段16では、第1及び第2変位検出器111,112からそれぞれ検出された変位量L1,L2を用いて、X=2×L1−L2を演算することで被測定物の寸法値Xを求め、これを表示する。
【0018】上述のような本実施形態によれば、次のような効果がある。すなわち、本実施形態において、測定の際にフレーム11に測定圧が加わると、フレーム11にたわみ変形が生じる。このとき、フレーム11は、略S字状に形成されているので、中心点11Cを境にフレーム11の両側でほぼ同量の外側方向へのたわみ変形が生じ、フレーム11のアンビル保持部位とスピンドル保持部位とが平行に保たれる。このため、アンビル保持部位及びスピンドル保持部位にそれぞれ保持されたアンビル12及びスピンドル15の姿勢も互いに平行が維持され、アンビル面12A及びスピンドル面15A間には相対的な傾きが生じない。これにより、被測定物を常に同じ姿勢でアンビル12及びスピンドル15間に挟むことができ、フレーム11の変形に基づく測定誤差を低減できる。このため、フレーム11は高剛性を要求されないうえ、略S字状の単純な形状でよいので、フレーム11の材質や製造方法の制限が緩和され、マイクロメータ1のコストダウンまたは軽量化を達成できる。また、フレーム11は、一端11Aと中心点11Cとの間及び他端11Bと中心点11Cとの間が同一形状で連結されているから、測定圧によるフレーム11の変形だけでなく、手の熱によるフレーム11の変形の影響をも排除することができる。
【0019】第1変位検出器111及び第2変位検出器112からそれぞれ検出された変位量L1,L2を用いて、X=2×L1−L2を演算することで被測定物の寸法値Xを求める演算手段16を備えているから、フレーム11にたわみ変形が生じても、その影響を受けることなく、被測定物の寸法値Xを容易に求めることができる。
【0020】なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は、本発明に含まれるものである。たとえば、前記実施形態では、第1及び第2変位検出器111,112からそれぞれ検出された変位量L1,L2を用いて、X=2×L1−L2を演算することで、測定値(寸法値)Xを求めているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の適宜な演算式により測定値Xを求めてもよい。
【0021】また、前記実施形態では、フレーム11は略S字状に形成されているが、本発明に係るフレームはこれに限定されるものではなく、たとえば、略∞字状に形成されてもよく、要するに、一端と他端との中間に中心点を有するとともに一端と中心点との間及び他端と中心点との間の部分が略同一形状かつスピンドルを挟んで位置する形状に形成されてればよい。
【0022】
【発明の効果】本発明によれば、フレームの変形に基づく測定誤差を低減できるとともに、コストダウンまたは軽量化をも達成できるマイクロメータを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
【出願日】 平成11年11月10日(1999.11.10)
【代理人】 【識別番号】100079083
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 實三 (外2名)
【公開番号】 特開2001−141403(P2001−141403A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−319641