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【発明の名称】 回転角検出装置
【発明者】 【氏名】中村 勉

【氏名】石原 稔久

【氏名】濱岡 孝

【要約】 【課題】磁気検出素子を用いた回転角検出装置において、回転角に対する磁気検出素子の出力変化特性を広い範囲で任意に設定できるようにする。

【解決手段】円筒ヨーク11の内周部の所定位置に磁石12を固定する。この磁石12と円筒ヨーク11との間に生じる磁界の中に、ロータに固定された磁気検出素子13を配置し、この磁気検出素子13の位置をロータの回転中心Pから所定寸法rずらす。この磁気検出素子13は、強磁性薄膜磁気抵抗素子を用い、該素子の出力が飽和する強度の磁界を与える。これにより、磁気検出素子13は、温度変化による磁界強度の変化の影響を受けずに、磁束の検出角度θs のみに依存した出力を発生する。この場合、磁気検出素子13の回転半径r及び/又は円筒ヨーク11の半径Rを任意に設定することで、磁気検出素子13の出力変化特性を直線、上に凸の曲線、下に凸の曲線のいずれにも設定できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一方向に着磁された磁石と、この磁石との間に磁界を生じさせるヨークと、前記磁界の中に配置した磁気検出素子とを備え、ロータと非回転部位のいずれか一方に、前記磁石及び前記ヨークを固定し、他方に前記磁気検出素子を固定し、被検出物の回転に連動させて前記ロータを回転させることで、前記磁気検出素子の出力信号に基づいて前記被検出物の回転角を検出する回転角検出装置であって、前記磁気検出素子を前記ロータの回転中心からずらした位置に配置したことを特徴とする回転角検出装置。
【請求項2】 一方向に着磁された磁石と、この磁石との間に磁界を生じさせるヨークと、前記磁界の中に配置した磁気検出素子とを備え、ロータと非回転部位のいずれか一方に、前記磁石を固定し、他方に前記ヨーク及び前記磁気検出素子を固定し、被検出物の回転に連動させて前記ロータを回転させることで、前記磁気検出素子の出力信号に基づいて前記被検出物の回転角を検出する回転角検出装置であって、前記磁気検出素子を前記ロータの回転中心からずらした位置に配置したことを特徴とする回転角検出装置。
【請求項3】 前記ヨークの形状は、円筒又は楕円筒、或はそれらの一部であり、前記磁石の片極が該ヨークの中心方向を向くように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角検出装置。
【請求項4】 前記ヨークには、前記磁石の反対側の極が接していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の回転角検出装置。
【請求項5】 前記磁気検出素子が検出する磁束の角度θs と前記ロータの回転角θm との関係がθs <θm となるように前記磁気検出素子の回転中心からのずれ量及び/又は前記ヨークの曲率半径を設定したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の回転角検出装置。
【請求項6】 前記ロータの回転角θm に対する前記磁気検出素子の出力変化特性が直線になるように前記磁気検出素子の回転中心からのずれ量及び/又は前記ヨークの曲率半径を設定したことを特徴とする請求項5に記載の回転角検出装置。
【請求項7】 前記ロータの回転角θm に対する前記磁気検出素子の出力変化特性が上に凸の曲線になるように前記磁気検出素子の回転中心からのずれ量及び/又は前記ヨークの曲率半径を設定したことを特徴とする請求項5に記載の回転角検出装置。
【請求項8】 前記ロータの回転角θm に対する前記磁気検出素子の出力変化特性が下に凸の曲線になるように前記磁気検出素子の回転中心からのずれ量及び/又は前記ヨークの曲率半径を設定したことを特徴とする請求項5に記載の回転角検出装置。
【請求項9】 前記磁気検出素子は、強磁性薄膜磁気抵抗素子により構成され、該素子の出力が飽和する強度の磁界を前記磁石によって生じさせることで、該素子に鎖交する磁束の角度に応じた出力を発生することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の回転角検出装置。
【請求項10】 前記ロータの回転中心を中心とする同一の円周上に前記磁気検出素子が複数個配置されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の回転角検出装置。
【請求項11】 被検出物の回転に伴って磁界又は複数の磁気検出素子を回転させ、その回転によって変化する前記複数の磁気検出素子の出力信号に基づいて前記被検出物の回転角を検出する回転角検出装置であって、前記複数の磁気検出素子は、出力変化特性が直線となる回転角の範囲が各磁気検出素子毎に異なるように配置され、回転角に応じて各磁気検出素子の直線領域の出力を選択して出力する出力切換手段が設けられていることを特徴とする回転角検出装置。
【請求項12】 前記出力切換手段で切り換えられた各磁気検出素子の出力が一直線につながるように各磁気検出素子の出力に対するオフセット量と増幅率の少なくとも一方を調整する出力調整手段が設けられていることを特徴とする請求項11に記載の回転角検出装置。
【請求項13】 前記出力切換手段は、前記各磁気検出素子の出力を積算し、その積算値に基づいて各磁気検出素子の出力を切り換える位置を判定することを特徴とする請求項11又は12に記載の回転角検出装置。
【請求項14】 一方向に着磁された磁石とヨークとの間に生じさせた磁界の中に前記複数の磁気検出素子を配置すると共に、ロータと非回転部位のいずれか一方に前記磁石を固定し、他方に前記複数の磁気検出素子を固定し、且つ、前記複数の磁気検出素子を前記ロータの回転中心からずらした位置に配置したことを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の回転角検出装置。
【請求項15】 被検出物の回転に伴って磁石又は磁気検出素子を回転させ、その回転によって変化する前記磁気検出素子の出力信号に基づいて前記被検出物の回転角を検出する回転角検出装置であって、検出精度が最も要求される回転角又はその付近で前記磁気検出素子の出力がゼロとなるように前記磁石と前記磁気検出素子が配置されていることを特徴とする回転角検出装置。
【請求項16】 回転角検出装置の出力変化特性を要求出力変化特性に一致させるように前記磁気検出素子の出力を増幅し且つオフセットして出力する出力調整手段が設けられていることを特徴とする請求項15に記載の回転角検出装置。
【請求項17】 一方向に着磁された磁石とヨークとの間に生じさせた磁界の中に前記磁気検出素子を配置すると共に、ロータと非回転部位のいずれか一方に前記磁石を固定し、他方に前記磁気検出素子を固定し、且つ、前記磁気検出素子を前記ロータの回転中心からずらした位置に配置したことを特徴とすることを特徴とする請求項15又は16に記載の回転角検出装置。
【請求項18】 前記被検出物はスロットルバルブであり、前記磁気検出素子の出力信号に基づいてスロットル開度を検出することを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の回転角検出装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気検出素子を用いて被検出物の回転角を検出する回転角検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の回転角検出装置においては、例えば、特開昭61−75213号公報(図22参照)に示すように、円筒形の磁石1を、その内部に平行磁界を作るように着磁すると共に、この磁石1の中心部に磁気検出素子2を配置し、被検出物の回転によって磁石1(平行磁界)を回転させることで、磁気検出素子2に鎖交する磁束量を変化させ、その磁束量に応じて、磁気検出素子2の出力信号が変化することで、磁気検出素子2の出力信号から被検出物の回転角θm を検出するようにしたものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このように、磁気検出素子2の出力信号から被検出物の回転角θm を検出する場合、回転角θm の検出範囲を広くするには、回転角θm に対する磁気検出素子2の出力変化特性をできるだけ広い範囲で直線(リニア)にする必要がある。
【0004】しかし、前記従来構成では、磁気検出素子2に対して平行磁界を回転させるため、回転角θm が大きくなるに従って、磁気検出素子2に鎖交する磁束量が三角関数的に減少し、その結果、回転角θm に対する磁気検出素子2の出力変化特性が直線から外れ、三角関数的に曲がってしまうことになる[図8(a)参照]。このため、前記従来構成では、回転角θm の狭い範囲で、疑似直線的な出力が得られるだけであり、回転角θm に対する磁気検出素子2の出力変化特性が悪く、回転角θm の検出可能範囲が狭いという欠点があった。
【0005】本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、回転角に対する磁気検出素子の出力変化特性を広い範囲で任意に設定でき、回転角の検出特性を向上できる回転角検出装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の請求項1の回転角検出装置は、磁石とヨークとの間に磁界を発生させ、この磁界の中に配置する磁気検出素子の位置をロータの回転中心からずらした構成としたものである。このように、磁気検出素子の位置をロータの回転中心からずらすと、磁気検出素子に鎖交する磁束の角度とロータの回転角との関係が変化し、この変化を利用することで、回転角に対する磁気検出素子の出力変化特性を広い範囲で任意に設定することが可能となり、回転角の検出特性を向上できる。
【0007】尚、請求項1では、ヨークを磁石と同じ側(ロータ又は非回転部位)に固定して、ヨークを磁石と一体的に回転又は非回転状態を維持するようにしたが、請求項2のように、ヨークを磁気検出素子と同じ側(ロータ又は非回転部位)に固定して、ヨークを磁気検出素子と一体的に回転又は非回転状態を維持するようにしても良い。例えば、ヨークの形状が円筒形等であれば、ヨークが回転しても回転しなくても、ヨークの内側の磁界の分布に影響を与えない。このため、ロータの回転に伴って磁石と磁気検出素子との相対的位置関係が変化すれば、ヨークの回転・非回転を問わず、回転角に応じて磁気検出素子に対する磁界の向きが変化し、磁気検出素子の出力から回転角を検出することができる。
【0008】この場合、請求項3のように、ヨークの形状を、円筒又は楕円筒、或はそれらの一部とし、磁石の片極が該ヨークの中心方向を向くように配置しても良い。このようにすれば、磁石とヨークとの間に生じる磁界の分布(方向・強さ)が、磁石とヨークの中心とを結ぶ中心線に関して対称となると共に、磁気検出素子の出力を確保するのに必要な強さの磁界を広い回転角の範囲に分布させることができる。
【0009】また、請求項4のように、磁石の反対側の極をヨークに接触させるようにすると良い。このようにすれば、磁石の反対側の極がヨークから離れている場合と比較して、磁気回路の磁気抵抗が小さくなり、その分、磁界強度の増加(又は磁石の小型化)が可能となる。
【0010】また、請求項5のように、磁気検出素子が検出する磁束の角度θs とロータ回転角θm との関係がθs <θm となるように、磁気検出素子の回転中心からのずれ量及び/又はヨークの曲率半径を設定することが好ましい。このようにすれば、ロータ回転角θm の変化に対して磁束の検出角度θs の変化を小さくすることができる。その結果、従来では磁気検出素子の出力が非線形領域に達するロータ回転角θm の大きい領域でも、磁束の検出角度θs が線形領域内に収まり、磁気検出素子の出力の直線性(線形性)が広い範囲で確保される。
【0011】この場合、ロータ回転角θm に対する磁気検出素子の出力変化特性は、ロータ回転角θm と磁束の検出角度θs との関係によって任意に設定でき、ロータ回転角θm と磁束の検出角度θs との関係は、磁気検出素子の回転中心からのずれ量r及び/又はヨークの曲率半径Rによって任意に設定できる。この関係から、ロータ回転角θm に対する磁気検出素子の出力変化特性は、磁気検出素子の回転中心からのずれ量r及び/又はヨークの曲率半径Rによって任意に設定できる。
【0012】一般的には、請求項6のように、ロータ回転角θm に対する磁気検出素子の出力変化特性が直線になるように設定することが好ましいが、非線形の出力が要求される場合には、請求項7,8のように、磁気検出素子の出力変化特性が上に凸の曲線又は下に凸の曲線になるように設定しても良い。このように、本発明では、磁気検出素子の回転中心からのずれ量r及び/又はヨークの曲率半径Rを任意に設定することで、磁気検出素子の出力変化特性を広い範囲で任意に設定できる利点がある。
【0013】また、磁気検出素子は、例えばホール素子、半導体磁気抵抗素子等を用いても良いが、請求項9のように、強磁性薄膜磁気抵抗素子を用いて、該素子の出力が飽和する強度の磁界を磁石によって生じさせるようにすると良い。強磁性薄膜磁気抵抗素子は、出力が飽和する飽和磁界以上の磁界強度であれば、磁束の角度θs のみに依存した出力を発生するようになる。この飽和領域では、磁石の温度変化によって磁界強度が変化しても、その磁界強度の変化の影響を受けずに磁束の角度θs を精度良く直接検出することができ、磁石の温度変化による磁界強度の変化を補正する必要がなくなる。
【0014】また、請求項10のように、ロータの回転中心を中心とする同一の円周上に磁気検出素子を複数個配置しても良い。このようにすれば、複数の磁気検出素子で検出した磁束の角度θs を互いに比較して異常がないか否かを確認しながらロータ回転角θm を検出することができる。
【0015】また、請求項11のように、複数の磁気検出素子を、出力変化特性が直線となる回転角の範囲が各磁気検出素子毎に異なるように配置し、回転角に応じて各磁気検出素子の直線領域の出力を出力切換手段によって選択して出力するようにしても良い。このように、異なる位置に配置された複数の磁気検出素子の直線領域の出力を選択すれば、磁気検出素子が1個の場合と比較して回転角検出装置の出力変化特性が直線となる回転角の範囲(検出角度範囲)を飛躍的に拡大することができる。
【0016】この場合、請求項12のように、出力切換手段で切り換えられた各磁気検出素子の出力が一直線につながるように各磁気検出素子の出力に対するオフセット量と増幅率の少なくとも一方を出力調整手段によって調整するようにすると良い。このようにすれば、全検出角度範囲で回転角検出装置の出力と回転角との関係を1つの一次関数で表すことができるため、各磁気検出素子の出力を切り換えても、回転角検出装置の出力を回転角に換算する定数を切り換える必要がなく、回転角検出装置の出力から回転角への換算が容易となる。
【0017】ところで、各磁気検出素子の出力は回転角に応じて波状に変化するため、請求項11に係る発明のように、検出角度範囲が広くなると、1つの磁気検出素子の出力が2か所の回転角で同一になる。このため、1つの磁気検出素子の出力のみでは、各磁気検出素子の出力の切換位置を誤判定するおそれがある。
【0018】この対策として、請求項13のように、各磁気検出素子の出力を積算し、その積算値に基づいて各磁気検出素子の出力を切り換える位置を判定するようにすると良い。このようにすれば、各磁気検出素子の出力の切換位置を簡単且つ精度良く判定することができる。
【0019】尚、上記請求項11〜13に係る発明は、請求項1又は2に係る発明と組み合わせて実施するようにしても良い(請求項14)。これにより、出力変化特性が直線となる回転角の範囲(検出角度範囲)を更に拡大することができる。
【0020】ところで、磁気検出素子を用いた回転角検出装置は、磁気検出素子の出力がゼロとなる付近で検出精度が最も良くなる。この理由は、磁気検出素子の出力がゼロとなる位置は、出力の直線領域の中心点であり、直線性が最も優れ、しかも、磁気検出素子の出力がゼロであれば、磁気検出素子の温度特性の影響が最も小さくなるためである。
【0021】この特性に着目し、請求項15のように、検出精度が最も要求される回転角又はその付近で磁気検出素子の出力がゼロとなるように磁石と磁気検出素子を配置すると良い。このようにすれば、検出精度が最も要求される回転角領域において、磁気検出素子の温度特性の影響を最も小さくすることができ、回転角の検出精度を向上することができる。
【0022】この場合、請求項16のように、回転角検出装置の出力変化特性を要求出力変化特性に一致させるように磁気検出素子の出力を出力調整手段によって増幅し且つオフセットして出力するようにすると良い。このようにすれば、回転角検出装置の最終的な出力変化特性を、該回転角検出装置を接続する外部の制御回路の仕様に合わせることができ、外部の制御回路の仕様を変更する必要がない。
【0023】尚、上記請求項15,16に係る発明は、請求項1又は2に係る発明と組み合わせて実施するようにしても良い(請求項17)。これにより、磁気検出素子の温度特性の影響を少なくしながら、出力変化特性が直線となる回転角の範囲(検出角度範囲)を拡大することができる。
【0024】以上説明した各請求項1〜17に係る発明は、種々の回転体の回転角検出装置に適用でき、例えば、請求項18のように、スロットル開度を検出するスロットル開度検出装置に適用しても良い。本発明の回転角検出装置は、スロットル開度の動作範囲を検出範囲として十分にカバーすることができ、スロットル開度の検出精度を向上することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態(1)を図1乃至図12に基づいて説明する。まず、図1に基づいて回転角検出装置の構造を説明する。ヨーク11は、パーマロイ、鉄等の磁性材料により円筒状に形成されている。この円筒ヨーク11の内周部の所定位置には、例えばフェライト磁石等の磁石12が固定されている。この磁石12は、円筒ヨーク11の径方向に着磁され、例えばS極が円筒ヨーク11の中心Pの方向を向き、N極が円筒ヨーク11に接している。尚、磁石12のS極とN極の位置は図1とは反対にしても良い。磁石12の厚みは、円筒ヨーク11の内径Rよりも薄く形成され、磁石12と円筒ヨーク11の中心Pとの間には十分な空間が確保されている。磁石12と円筒ヨーク11は、ハウジング等の非回転部位(図示せず)に固定され、円筒ヨーク11は、被検出物に連結されたロータ(図示せず)と同軸状に配置されている。
【0026】磁石12と円筒ヨーク11との間に生じる磁界の中に、ロータに固定された磁気検出素子13が配置されている。この磁気検出素子13の位置は、ロータの回転中心P(円筒ヨーク11の中心)から所定寸法rだけ離れている。この磁気検出素子13は、例えば図3に示すように強磁性薄膜磁気抵抗素子13aのブリッジ回路により構成され、該素子13aの出力が飽和する強度の磁界が与えられている。これにより、磁気検出素子13は、磁界の強度に関係なく、図4に示すように、磁束の検出角度θs のみに依存した出力を発生する。
【0027】尚、磁気検出素子13は、強磁性薄膜磁気抵抗素子に限定されず、ホール素子や半導体磁気抵抗素子等、一方向からの磁界の強度に応じた出力を発生する磁気検出素子を用いても良い。これらの素子を使う場合は、強磁性薄膜磁気抵抗素子と違って磁束の角度を直接検出できないので、2つの素子を直角に配置し、各素子の出力の比によって磁束の角度を算出すれば良い。
【0028】次に、磁石12と円筒ヨーク11との間に発生する磁界の分布について説明する。磁石12の片極(S極)から出た磁束は円筒ヨーク11に向かって広がる。磁石12はロータの回転中心P(円筒ヨーク11の中心)から離れた位置に配置されているため、図5に示すように、磁気検出素子13の回転軌跡上(回転中心Pを中心とする半径rの円周上)の磁界の角度θj は、ロータ回転角θm よりも小さくなる。このロータ回転角θm と磁界の角度θj との関係をグラフに表すと図6のようになる。以下の説明では、磁石12の中心と回転中心Pとを結ぶ直線上の位置をロータ回転角θm =0°として説明する。
【0029】次に、ロータを回転させて、その回転中心Pを中心とする半径rの円周上で磁気検出素子13を回転させた時の磁気検出素子13の出力変化特性を考察する。磁気検出素子13が強磁性薄膜磁気抵抗素子の場合は、鎖交する磁束の角度θsに応じて、sin2θs に比例した出力が得られる。この磁気検出素子13を半径rの円周上で回転させると、その回転角θm に応じて磁気検出素子13の向きも回転角θm だけ回転する。その結果、磁気検出素子13が実際に検出する磁束の角度θs は、磁気検出素子13の回転角θm から磁界角度θj を差し引いた値(θm −θj )となる。これにより、ロータ回転角θm と磁束検出角度θs との関係は、図7に示すグラフのようになり、磁束検出角度θs はロータ回転角θmよりも小さくなる。これが磁気検出素子13の出力の直線性を向上させるための第1のポイントとなる。尚、図6、図7の例では、ロータ回転角θm 、磁界角度θj 、磁束検出角度θs の大小関係は次のようになっている。
ロータ回転角θm >磁界角度θj >磁束検出角度θs【0030】前述したように、磁気検出素子13の出力は、sin2θs に比例するため、図4に示すように、磁束検出角度θs =0°の時に、磁気検出素子13の出力振幅値が0となり、0°<θs <45°の範囲では、磁束検出角度θs が大きくなるに従って、磁気検出素子13の出力振幅値が徐々に大きくなり、磁束検出角度θs =45°の時に、磁気検出素子13の出力振幅値が最大となる。
【0031】図22に示す従来構造のものは、ロータ回転角θm =磁束検出角度θs であり、磁気検出素子13の出力が三角関数(sin2θm )に比例する曲線となるため、図8(a)に示すように、ロータ回転角θm の狭い範囲で、疑似直線的な出力が得られるだけであり、ロータ回転角θm に対する磁気検出素子2の出力変化特性が悪く、ロータ回転角θm の検出可能範囲が狭いという欠点があった。
【0032】これに対し、本実施形態では、前述したように、磁束検出角度θs がロータ回転角θm よりも小さくなり(第1のポイント)、しかも、後述する理由により、磁気検出素子13の出力波形自体の直線性を改善できるため(第2のポイント)、従来よりもかなり広い範囲で磁気検出素子13の出力の直線性を確保できる[図8(b)参照]。
【0033】次に、磁気検出素子13の出力の直線性を向上させるための第2のポイントである出力波形自体の直線性の改善について説明する。仮に、磁束検出角度θs とロータ回転角θm との関係がθs =θm /3であるとすると(図9参照)、磁気検出素子13の出力は、sin(2・θm /3)に比例する三角関数の波形となる。これでも、ロータ回転角θm の検出可能範囲を拡大する効果は得られるが、疑似直線的な出力が得られるだけであり、厳密には出力の直線性を改善できているとは言えない。
【0034】その点、本実施形態のような磁気回路の構成によれば、図9に示すように、磁束検出角度θs とロータ回転角θm との関係が単純な比例関係ではなく、非線形の関係となり、ロータ回転角θm が小さいときは、磁束検出角度θs の変換率が大きく、ロータ回転角θm が大きいときに、磁束検出角度θs の変換率が小さくなる。このようになる理由は、図5に示すように、磁石12と円筒ヨーク11との間に発生する磁界の広がり方が一定でなく、ロータ回転角θm に応じて変化することによる。磁界の角度θj の変化量は、ロータ回転角θm の変化に対して最初は小さく、θm =90°に近付くに従って徐々に大きくなる傾向を示している。その結果、磁束検出角度θs (=ロータ回転角θm −磁界角度θj )は、ロータ回転角θm が小さい時は磁束検出角度θs の変換率が大きく、ロータ回転角θm が大きくなるほど、磁束検出角度θs の変換率が小さくなる。このことが磁気検出素子13の出力の直線性の向上につながる。
【0035】つまり、図10に示すように、従来の出力は三角関数で表されるため、直線領域Aの傾きが大きく、その両側の非線形領域B,Cの傾きが直線領域Aから離れるに従って徐々に小さくなるが、本実施形態では、上述した磁束検出角度θs の変化特性により、直線領域A’では、出力の傾きを従来より小さくするように磁束検出角度θs が変化し、この直線領域A’の両側の領域B’,C’では、領域A’から離れるに従って徐々に出力の傾きを従来より大きくするように磁束検出角度θs が変化する。これにより、直線領域A’の両側の領域B’,C’も直線領域A’と連続する直線領域となり、磁気検出素子13の出力の直線性を従来よりかなり広い範囲で確保でき、ロータ回転角θm の検出可能範囲を従来より大幅に拡大することができる。
【0036】ところで、ロータ回転角θm と磁束検出角度θs との関係は、磁気検出素子13の回転半径r(回転中心Pからのずれ量r)によって図11に示すように変化する。つまり、磁気検出素子13の回転半径rが大きくなるほど、磁束検出角度θs が小さくなり、それに応じて、磁気検出素子13の出力が大きくなるため、磁気検出素子13の回転半径rが変化すれば、磁気検出素子13の出力も変化する。従って、図12に示すように、磁気検出素子13の回転半径rを変化させることで、磁気検出素子13の出力変化特性を変化させることができる。これにより、出力変化特性を直線状にするのみでなく、場合によっては、出力変化特性が上に凸の曲線又は下に凸の曲線になるように設定することが可能となる。
【0037】また、ロータ回転角θm と磁束検出角度θs との関係は、磁気検出素子13の回転半径rの他に、円筒ヨーク11の半径Rによっても変化する。従って、磁気検出素子13の回転半径rと円筒ヨーク11の半径Rの少なくとも一方を任意に設定することで、磁気検出素子13の出力変化特性を直線、上に凸の曲線、下に凸の曲線のいずれにも設定することができる。
【0038】尚、上記実施形態(1)では、円筒形状のヨーク11を用いたが、例えば、図13、図14に示す実施形態(2),(3)のように、ヨーク14,15の内径X,Yの比を変えてその形状を楕円筒にしたり、或は、図15に示す実施形態(4)のように、ヨーク16の形状を円弧(円筒の一部)又は楕円弧(楕円筒の一部)としても良い。要は、ロータ回転角θm に応じて磁界の分布が徐々に変化するように、ヨークの内周面が緩やかな曲率の曲面になっていれば良い。尚、図15の例では、ヨーク16に立設した磁気回路構成部材17に磁石12の片極を固定し、この磁石12の他極をヨーク16の中央部に対向させている。
【0039】また、上記各実施形態では、ヨークの中心と磁気検出素子13の回転中心(ロータの回転中心)とを一致させたが、両者を必ずしも一致させる必要はない。但し、磁石12の片極がヨークの中心方向を向くように配置することが望ましい。このようにすれば、磁石12とヨークとの間に生じる磁界の分布(方向・強さ)が、磁石12とヨークの中心とを結ぶ中心線に関して対称となる利点がある。
【0040】また、上記各実施形態において、磁気検出素子13は、必ずしもヨークの内部空間に配置する必要はなく、図16に示す実施形態(5)のように、磁気検出素子13をヨーク18の前方近傍又は後方近傍に配置しても良く、要は、磁石12とヨーク18との間に生じる磁界の中に磁気検出素子13を配置すれば良い。
【0041】一般に、磁石12は、温度が変化すると、磁界強度が変化するが、磁束の角度θs は変化しない。但し、磁気検出素子の出力が温度変化による磁界強度の変化によって変化すると、その影響で磁束の角度θs の検出値に誤差が生じる。この場合は、磁石12の温度変化による磁界強度の変化を補正する必要があり、面倒である。
【0042】そこで、上記各実施形態においては、磁気検出素子13として、強磁性薄膜磁気抵抗素子を用いて、該素子の出力が飽和する強度の磁界を付与することが好ましい。強磁性薄膜磁気抵抗素子は、出力が飽和する強度の磁界を与えると、磁界の強度に関係なく、磁束の角度θs のみに依存した出力を発生するようになるため、磁石12の温度変化によって磁界強度が変化しても、その磁界強度の変化の影響を受けずに磁束の角度θs を精度良く直接検出することができ、磁石12の温度変化による磁界強度の変化を補正する必要がなくなる利点がある。
【0043】しかしながら、本発明は、例えばホール素子、半導体磁気抵抗素子等、一方向からの磁界の強度に応じた出力を発生する磁気検出素子を用いても良い。これらの磁気検出素子を使う場合は、強磁性薄膜磁気抵抗素子と違って磁束の角度を直接検出できないので、2つの磁気検出素子を直交させて配置し、各素子の出力の比によって磁束の角度を算出すれば良い。
【0044】また、上記各実施形態では、磁気検出素子をロータに固定して回転させるようにしたが、これとは反対に、ヨークと磁石をロータに固定して回転させるようにしても良い。
【0045】次に、本発明を更に具体化した実施形態(6)を図17乃至図20に基づいて説明する。回転角検出装置の本体ハウジング21には、スロットルバルブ等の被検出物の回転軸22(ロータ)が軸受23を介して回動自在に挿通支持されている。この回転軸22の先端部(右端部)には、カップ状の円筒ヨーク24がかしめ等により固定され、この円筒ヨーク24の内周部の所定位置には、例えばフェライト磁石等の磁石25が樹脂モールド等により固定されている。この磁石25は、円筒ヨーク24の径方向に着磁され、例えばS極が円筒ヨーク24の中心の方向を向き、N極が円筒ヨーク24に接している。尚、磁石25のS極とN極の位置は図17とは反対にしても良い。
【0046】また、円筒ヨーク24の左側面部には、磁束の短絡を防止するための複数の貫通孔26が回転軸22を取り巻くように形成されている(図20参照)。円筒ヨーク24の外周部は樹脂27でモールドされている。
【0047】本体ハウジング21の右側面部には、円筒ヨーク24の開口を覆うようにコネクタハウジング28が組み付けられている。このコネクタハウジング28の内側には、配線用の基板29が基板固定部31(図18参照)の樹脂成形又はかしめによって固定され、この基板29には、例えば2個の磁気検出素子30が実装されている。各磁気検出素子30は、円筒ヨーク24の回転中心を中心とする半径rの円周上に例えば90°の角度ピッチで配置され、且つ、磁石25と円筒ヨーク24との間に生じる磁界の中に配置されている。各磁気検出素子30は、前記実施形態と同じく、強磁性薄膜磁気抵抗素子が用いられ、該素子の出力が飽和する強度の磁界が与えられている。これにより、各磁気検出素子30は、磁界の強度に関係なく、磁束の検出角度θs のみに依存した三角関数状の出力を発生する。このように、2個の磁気検出素子30を設ければ、2個の磁気検出素子30で検出した磁束の角度θs を互いに比較して異常がないか否かを確認しながらロータ回転角θm を検出することができる。各磁気検出素子30の入出力端子は、基板29の配線パターンを介してコネクタハウジング28内のターミナル32に接続されている。
【0048】尚、図18は、磁石25と円筒ヨーク24を基板29に対して時計回り方向に回転させる場合の例を示し、図19は、磁石25と円筒ヨーク24を基板29に対して反時計回り方向に回転させる場合の例を示している。いずれの場合も、磁石25が基板29に接触しないように、基板29は、磁石25の回転範囲に対応する部分が切り欠かれた形状となっている。
【0049】以上説明した実施形態(6)では、2個の磁気検出素子30を半径rの円周上に90°の角度ピッチで配置したが、これ以外の角度ピッチで配置しても良い。また、磁気検出素子30の数も2個に限定されず、1個又は3個以上であっても良い。
【0050】次に、図21に基づいて本発明の他の具体例である実施形態(7)を説明する。但し、上記実施形態(6)と実質的に同じ部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0051】本実施形態(7)では、円筒ヨーク24と磁石25を樹脂でモールド成形することで、被検出物と連結するための回転レバー41が形成されている。この回転レバー41は、コネクタハウジング28にインサート成形により固定された非磁性材製の回転軸43に回転自在に挿通支持され、回転軸43の先端部に固定されたストッパプレート44によって、回転軸43から回転レバー41が抜け止めされている。このストッパプレート44と回転レバー41との間には、回転レバー41のスラスト方向の動きを規制するスプリングワッシャ45が挟み込まれている。回転レバー41は、ねじりコイルばね46によって所定の回転方向に付勢され、その付勢力によって初期位置まで自動的に復帰するようになっている。その他の構成は、前記実施形態(6)と実質的に同じである。
【0052】前記各実施形態においては、ヨークを磁石と同じ側(ロータ又は非回転部位)に固定して、ヨークを磁石と一体的に回転又は非回転状態を維持するようにしたが、ヨークを磁気検出素子と同じ側(ロータ又は非回転部位)に固定して、ヨークを磁気検出素子と一体的に回転又は非回転状態を維持するようにしても良い。以下、これを具体化した本発明の実施形態(8)を図23及び図24に基づいて説明する。但し、前記実施形態(6)の構造(図17)と実質的に同じ部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0053】本実施形態(8)では、円筒ヨーク24をコネクタハウジング28の内側にインサート成形等で固定し、この円筒ヨーク24を回転軸22と同軸状に配置している。回転軸22の先端に非磁性材製のアーム51を固定し、このアーム51の先端部側面に磁石25を接着等により固定し、この磁石25を円筒ヨーク24の内周面に小さなギャップを介して対向させている。この磁石25は、円筒ヨーク24の径方向に着磁され、例えばS極着磁面が円筒ヨーク24の中心Pの方向を向き、N極着磁面が円筒ヨーク24の内周面に近接している。磁石25のN極着磁面と円筒ヨーク24との間のギャップ(磁気抵抗)を小さくするために、磁石25のN極着磁面を円弧面に形成している。尚、磁石25のS極とN極の位置は図23とは反対にしても良い。一方、コネクタハウジング28の内側に固定された磁気検出素子30は、磁石25と円筒ヨーク24との間に生じる磁界の中に配置され、円筒ヨーク24の中心Pから所定寸法rだけ離れている。
【0054】本実施形態(8)のように、ヨーク24が円筒形であれば、ヨーク24が回転しても回転しなくても、ヨーク24の内側の磁界の分布に影響を与えない。従って、磁石25を円筒ヨーク24の内周面に近接させて、磁石25と円筒ヨーク24との間の磁気抵抗を小さくすれば、円筒ヨーク24に磁石25を固定した場合とほぼ同じ分布の磁界を作ることができる。これにより、回転角に応じて磁気検出素子30に対する磁界の向きが変化し、磁気検出素子30の出力から回転角を検出することができ、前記実施形態(1)と同じ効果を得ることができる。
【0055】尚、本実施形態(8)において、ヨークの形状は円筒形に限定されず、例えば、円筒の一部であっても良く、要は、検出角度範囲で回転角に応じて磁界の向きを変化させるような形状であれば良い。また、ヨークと磁気検出素子をロータに固定し、磁石をハウジング等の非回転部位に固定するようにしても良い。
【0056】次に、図25乃至図31に基づいて本発明の実施形態(9)を説明する。本実施形態(9)では、図25及び図26に示すように、磁石52が固定された円筒ヨーク53は、被検出物に連結されたロータ(図示せず)に同軸状に固定されている。一方、ハウジング等の非回転部位(図示せず)に固定された2個の磁気検出素子54,55は、円筒ヨーク53の回転中心Pを中心とする半径rの円周上に例えば90°の角度ピッチで配置され、且つ、磁石52と円筒ヨーク53との間に生じる磁界の中に配置されている。これにより、2個の磁気検出素子54,55は、出力変化特性が直線となる回転角の範囲(直線領域)が各磁気検出素子54,55毎に異なるように配置されている。
【0057】図25に示すように、一方の磁気検出素子54が中心線G−G上に位置する時の回転角を0°とし、反時計回り方向を正の回転角の方向とすると、図28に示すように、一方の磁気検出素子54の出力は、−90°で極小、0°で0、+90°で極大となる。これに対して、他方の磁気検出素子55の出力は、0°で極小、90°で0、+180°で極大となる。従って、2個の磁気検出素子54,55の出力は、位相が90°ずれた同一の波形となっており、一方の磁気検出素子54の出力の直線領域Aと他方の磁気検出素子55の出力の直線領域Bとは位相が90°ずれている。
【0058】図27に示すように、2個の磁気検出素子54,55の出力は、それぞれ増幅回路56,57で増幅される(図29参照)。各増幅回路56,57の増幅率(ゲイン)は同一に設定されている。各増幅回路56,57の出力(各磁気検出素子54,55の増幅出力)は、それぞれオフセット回路58,59でオフセット量a,bが加えられ、プラス電圧側にオフセットされる(図30参照)。各オフセット回路58,59の出力(各磁気検出素子54,55のオフセット後の出力)は、出力切換回路60(出力切換手段)でいずれか一方の出力が選択され、最終的なセンサ出力として出力される(図31参照)。各オフセット回路58,59のオフセット量a,bは、各磁気検出素子54,55のオフセット後の出力を出力切換回路60で切り換えた時に各磁気検出素子54,55のオフセット後の出力が一直線につながるように設定されている。出力切換位置は、2個の磁気検出素子54,55の直線領域A,Bの中間位置(+45°)である。従って、+45°以下の範囲では、一方の磁気検出素子54のオフセット後の出力が選択され、+45°以上の範囲では、他方の磁気検出素子55のオフセット後の出力が選択される。
【0059】ところで、各磁気検出素子54,55のオフセット後の出力は回転角に応じて波状に変化するため、本実施形態(9)のように、検出角度範囲が広くなると、1つの磁気検出素子のオフセット後の出力が2か所の回転角で同一になる。このため、1つの磁気検出素子のオフセット後の出力のみでは、各磁気検出素子54,55のオフセット後の出力の切換位置を誤判定するおそれがある。
【0060】そこで、本実施形態(9)では、出力切換回路60は、各磁気検出素子54,55のオフセット後の出力を積算し、その積算値を判定値S3と比較することで各磁気検出素子54,55のオフセット後の出力の切換位置を判定し、各磁気検出素子54,55のオフセット後の出力を切り換える。この場合、出力切換の判定値S3は、磁気検出素子55のオフセット後の出力の最大値に設定されている。従って、各磁気検出素子54,55のオフセット後の出力の積算値が判定値S3以下の場合は、一方の磁気検出素子54のオフセット後の出力を選択し、出力の積算値が判定値S3より大きい場合は、他方の磁気検出素子55のオフセット後の出力を選択する。尚、判定値S3は磁気検出素子55のオフセット後の出力の最大値に限定されず、例えば、出力切換位置(+45°)のセンサ出力を学習し、その学習値の2倍の値を判定値S3としても良い。以上説明した各磁気検出素子54,55の出力の増幅・オフセット・切換は、ハードウエアで実現しても良いし、マイクロコンピュータを搭載してソフトウエアで実現しても良い。
【0061】本実施形態(9)のように、異なる位置に配置された2個の磁気検出素子54,55の直線領域A,Bの出力を選択すれば、磁気検出素子が1個の場合と比較して回転角検出装置の出力変化特性が直線となる回転角の範囲(検出角度範囲)を飛躍的に拡大することができる。尚、異なる位置に配置された3個以上の磁気検出素子の直線領域の出力を選択するようにすれば、検出角度範囲を更に拡大することができる。
【0062】ところで、磁気検出素子を用いた回転角検出装置は、磁気検出素子の出力がゼロとなる付近で検出精度が最も良くなる。この理由は、磁気検出素子の出力がゼロとなる位置は、出力の直線領域の中心点であり、直線性が最も優れ、しかも、磁気検出素子の出力がゼロであれば、磁気検出素子の温度特性の影響が最も小さくなるためである。従来より、磁気検出素子の温度特性による出力誤差を温度補償素子により補償するようにしたものがあるが、磁気検出素子のばらつきや温度補償素子のばらつきによって温度特性による出力誤差を完全には0にすることは非常に困難である。従って、磁気検出素子の出力がゼロとなる位置が全検出角度範囲の中で最も検出精度が良い位置である。
【0063】この特性に着目し、図32乃至図36に示す本発明の実施形態(10)では、検出精度が最も要求される回転角(以下「精度要求点」という)で磁気検出素子54の出力がゼロとなるように磁石52と磁気検出素子54を配置している。更に、本実施形態(10)では、回転角検出装置(以下「センサ」という)の出力変化特性を要求出力変化特性に一致させるために、磁気検出素子54の出力を増幅回路61で増幅し(図35参照)、更に、増幅回路61の出力をオフセット回路62でオフセットし(図36参照)、このオフセット回路62の出力をセンサ出力としている。これら増幅回路61とオフセット回路62は、特許請求の範囲でいう出力調整手段として機能する。その他の構成は、前記実施形態(9)と同じである。
【0064】この場合、増幅回路61の増幅率は、次式で設定される。
増幅率={S(θmax)−S(θmin)}/{V(θmax)−V(θmin)}
S(θ):回転角θにおけるセンサの要求出力V(θ):回転角θにおける磁気検出素子54の出力θmax :最大検出回転角θmin :最小検出回転角従って、図35に示すように、増幅回路61の出力(磁気検出素子54の増幅出力)の変化特性の傾きは、センサの要求出力変化特性の傾きと同じになる。
【0065】更に、オフセット回路62のオフセット量cは、センサの要求出力と磁気検出素子54の増幅出力との差であり、このオフセット量cを磁気検出素子54の増幅出力に加算してプラス電圧側にオフセットさせることで、最終的なセンサ出力を要求出力に合わせる。このようにすれば、センサの最終的な出力変化特性を、該センサを接続する外部の制御回路の仕様に合わせることができ、外部の制御回路の仕様を変更する必要がない。
【0066】以上説明した本実施形態(10)の構成は、種々の回転体の回転角検出装置に適用でき、例えば、スロットル開度(スロットルバルブの回転角)を検出するスロットル開度検出装置に適用しても良い。スロットル開度検出装置は、検出範囲が全閉から全開まで100°程度であり、且つ、全閉位置である5°付近にアイドル運転時のスロットル開度が設定されており、このアイドル運転時のスロットル開度付近の検出精度が最も要求されている。従って、スロットル開度検出装置に適用する場合は、アイドル運転時のスロットル開度付近で、磁気検出素子54の出力がゼロとなるように磁石52と磁気検出素子54を配置すれば良い。このようにすれば、検出精度が最も要求されるアイドル運転時のスロットル開度付近において、磁気検出素子54の温度特性の影響を最も小さくすることができ、回転角の検出精度を向上することができる。
【0067】尚、図34の例では、5°付近を精度要求点としているが、利用範囲内であれば、任意の位置に設定できる。いずれの場合も、精度要求点は常に出力ゼロ点であり、利用範囲の位置が相対的に移動することになる。
【0068】また、前記各実施形態において、磁気検出素子に対する外来磁界の影響を排除するために、磁気遮蔽部材をヨークの開口部を覆うように配置しても良い。但し、磁気遮蔽部材をヨークに近付け過ぎると、磁気遮蔽部材とヨークとの間で磁気回路が形成されてヨーク内側の磁界の分布が変化してしまうため、磁気遮蔽部材とヨークとの間の間隔を磁気回路が形成されないように設定する必要がある。
【0069】その他、本発明は、スロットル開度検出装置に限定されず、種々の回転体の回転角検出装置に適用することができる。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
【出願日】 平成11年12月17日(1999.12.17)
【代理人】 【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
【公開番号】 特開2001−91208(P2001−91208A)
【公開日】 平成13年4月6日(2001.4.6)
【出願番号】 特願平11−358329