トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験




【発明の名称】 測尺装置
【発明者】 【氏名】西 英一

【要約】 【課題】スライダの走行方向以外に向かう力学的ベクトルを発生させないようにスライダとキャリアとを連結し、戻り誤差の防止や繰り返し精度の改善を図り、測定誤差を低減する。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 位置検出のための目盛が長手方向に沿って設けられた平板かつ長尺のスケールと、上記スケール上を走行しかつ上記目盛を読み取って位置検出信号を得る検出ヘッドが設けられたスライダと、上記スライダと連結されかつ上記スライダを上記スケールの長手方向に沿って走行させるキャリアとを備える測尺装置において、上記キャリアには、上記スライダの走行方向に沿って上記スライダ側に突出形成されるとともに上記スライダと対向する端部が球面とされる第1の軸受け部が設けられ、上記スライダには、上記第1の軸受け部と対向しかつ上記第1の軸受け部の球面を受ける略円錐状の凹部を有する第2の軸受け部が配設され、上記キャリアと上記スライダとは、上記球面の中心を通る上記スライダの走行方向と平行をなす直線上の一点又は上記直線を挟んで対称に位置する複数点で上記スライダに係止されるとともに、上記スライダの走行方向と平行な向きの付勢力を上記キャリアに対して付与する弾性部材で上記第1の軸受け部の球面が上記第2の軸受け部の凹部に対して押圧されて連結されることを特徴とする測尺装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、相対的に直線移動する可動部を有する工作機械や産業機械、精密測定機器等の機械本体に対して取り付けられ、該可動部の相対移動距離や相対移動位置等の測定に使用される測尺装置に関する。
【0002】
【従来の技術】測尺装置は、工作機械や産業機械、精密測定機器等(以下、単に機械本体と称する。)において相対的に直線移動する相対向する可動部に取り付けられ、例えば該可動部の相対移動位置や相対移動距離等の測定に用いられる。
【0003】従来の測尺装置は、上述した可動部における直線移動の際の位置検出用の目盛が設けられた長尺のスケールが可動部の一方に取り付けられ、このスケールに設けられた目盛を読み取る検出ヘッドが配設された検出ユニットが可動部の他方に取り付けられる。検出ユニットは、スケール上に位置して配設され検出ヘッドにて目盛の変位を読み取るスライダと、このスライダと連結され機械本体の他方の可動部とともに移動するキャリアとが連結部を介して連結されてなる。
【0004】上述した構成の測尺装置においては、機械本体の可動部の直線移動に伴いキャリアが移動すると、スライダがキャリアとの連結部を介して牽引又は押進されてスケール上をその長手方向に沿って走行する。測尺装置は、上述したようなスライダの走行により、該スライダに配設された検出ヘッドにて目盛の変位を読み取って、相対移動位置や相対移動距離の測定を行う。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の測尺装置においては、上述したように取り付けられる機械本体の可動部の直線移動に伴ってキャリアが移動し、その移動は機械本体の蛇行やうねりに追従する。また、測尺装置においては、スライダがスケールに接して配設され、スケールの平面度、具体的にはその蛇行やうねりに追従して走行する。すなわち、測尺装置においては、異なる運動に拘束されるスライダとキャリアとによって相対移動位置や相対移動距離の測定が行われ、スライダとキャリアとの位置が測定の際の移動に伴ってずれるおそれがある。このスライダとキャリアとの位置ずれは、連結部を介してスライダに伝達される。
【0006】従来の測尺装置においては、スライダとキャリアとの連結部における接点とは無関係にスライダ又はキャリアに対して力を加えることにより、両者を連結しているため、上述したような位置ずれによりスライダの走行方向以外の方向、換言するとスライダの直線移動を阻害する方向の力学的ベクトルが生じ、戻り誤差や繰り返し精度の低下に起因する測定誤差が発生するという問題がある。
【0007】測尺装置においては、特に高性能、高分解能を達成するほどスライダとキャリアとの連結部分において生じる力学的ベクトルによる接触摩擦力が運動を阻害する力となって繰り返し精度、戻り誤差に影響を与える。
【0008】そこで、本発明は、スライダの走行方向以外に向かう力学的ベクトルを発生させないようにスライダとキャリアとを連結し、戻り誤差の防止や繰り返し精度の改善を図り、測定誤差の低減を達成する測尺装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成する本発明に係る測尺装置は、位置検出のための目盛が長手方向に沿って設けられた平板かつ長尺のスケールと、スケール上を走行しかつ目盛を読み取って位置検出信号を得る検出ヘッドが設けられたスライダと、スライダと連結されかつスライダをスケールの長手方向に沿って走行させるキャリアとを備え、スライダの走行方向に沿ってスライダ側に突出形成されるとともにスライダと対向する端部が球面とされる第1の軸受け部がキャリアに設けられ、第1の軸受け部と対向しかつ第1の軸受け部の球面を受ける略円錐状の凹部を有する第2の軸受け部がスライダに配設される。キャリアと上記スライダとは、球面の中心を通るスライダの走行方向と平行をなす直線上の一点又はこの直線を挟んで対称に位置する複数点でスライダに係止されるとともに、スライダの走行方向と平行な向きの付勢力をキャリアに対して付与する弾性部材で第1の軸受け部の球面が第2の軸受け部の凹部に対して押圧されて連結されることを特徴とする。
【0010】上述した構成を有する本発明に係る測尺装置によれば、スライダとキャリアとの連結を球面を有する第1の軸受け部と、この球面を受ける凹部を有する第2の軸受け部とを介して連結し、凹部において回転する球面の中心とスライダからキャリアに対して付勢力を付与する点又は付勢力を付与する複数点間の中点とを、スライダの走行方向と平行な直線上に位置させ、スライダの走行方向と平行に引っ張り付勢を付与することで、スケール又は機械本体の蛇行やうねりによるスライダとキャリアとの位置ずれを吸収して、スライダの走行方向以外に向かう力学的ベクトルの発生を防止して、戻り誤差の発生や繰り返し精度の低下を防ぎ、相対移動位置や相対移動距離の測定における測定誤差の低減を可能とする。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る測尺装置の具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態に係る測尺装置1は、図1に示すように、産業機械、工作機械等(以下、機械本体50と称して説明する。)の一部として構成されかつ相対的に直線移動する可動部50a、50bの相対移動位置や相対移動距離を測定するものであり、略矩形の筒状を呈する筐体2と、検出ユニット3とを備えて構成される。測尺装置1は、上述した筐体2が機械本体50の一方の可動部50aに、また検出ユニット3の駆動部であり詳細を後述するキャリアが他方の可動部50bに対して取り付けられる。
【0012】筐体2は、その内部に平板かつ長尺形状を呈するスケール4が、その長手方向と筐体2の長手方向とが一致するように収納される。筐体2は、その一側面、具体的には配設された検出ユニット3と対向する側面が、その長手方向にわたって切り欠かれてスリット5が形成されている。測尺装置1においては、スリット5から後述するように検出ユニット3の検出部たるスライダと駆動部たるキャリアとを連結する連結部を構成するアームが筐体2の内部に進入する。
【0013】スケール4は、筐体2の長手方向の両端部に配設された一対のブラケット6により、その両端が支持されて筐体2内の所定位置に固体される。スケール4は、図2に示すように、その一方主面(以下、スケール面と称する。)4a上に、位置検出用の目盛4bが設けられている。目盛4bは、スケール4の長手方向に沿って所定間隔で連続して記録された位置信号であり、その形態としては例えば所定の間隔でピットやマークが形成されたものやスケール面4a上にグレーティングが施されたもの、また外観上目盛としてはあらわれないが所定の記録波長で極性が反転する磁気信号が着磁されたもの等がある。スケール4は、後述するように目盛4bを読み取り位置信号を検出する検出ヘッドの種類によりその材料を代えて成形され、例えば検出ヘッドに光学系の検出ヘッドを用いる場合にはガラス等の硝材材料、磁気ヘッドを検出ヘッドとして用いる場合には金属材料により成形される。
【0014】検出ユニット3は、図2に示すように、スケール面4aに設けられた目盛4bの変位を読み取って位置信号を検出する検出部となるスライダ7と、このスライダ7に連結されかつスライダ7を牽引又は押進して走行させる駆動部となるキャリア8とを備えて構成される。
【0015】スライダ7は、スケール4上に、すなわち筐体2の内部に配設され、スケール4のスケール面4a上をその長手方向に沿って走行する。スライダ7には、スケール4上を走行する際に、スケール面4a上に設けられた目盛4bの変位を読み取って、この目盛4bの変位を位置信号として検出する検出ヘッド9が目盛4bと対向する位置に配設される。検出ヘッド9は、上述したスケール4の材料や目盛4bの形態に応じて、磁気ヘッドや光学系の検出ヘッド等を使用する。
【0016】スライダ7は、筐体2内において弾性部材、例えば図3に示す押圧バネ10によって、スケール4と垂直をなす筐体2の内壁2aの方向に対して押圧されている。また、スライダ7は、上述した内壁2aの方向に対する押圧と同様に、詳しい図示は省略するが弾性部材、例えば押圧バネによってスケール4のスケール面4aの方向に対して押圧される。さらに、スライダ7は、上述した筐体2の内壁2a及びスケール4のスケール面4aと複数の転がり軸受け11を介して接している。スライダ7は、上述したように筐体2の内壁2a及びスケール4のスケール面4aに対して弾性部材で押圧されかつ押圧されている部位に対して転がり軸受け11を介して接することにより、スケール面4aの平面度、具体的にはそのうねりや蛇行に追従して、円滑に走行する構造とされる。なお、測尺装置1においては、詳しい図示を省略するがスライダ7が走行する際の摩耗を低減し、また転がり軸受け11が接する内壁2aの平面度を担保するため、転がり軸受け11が内壁2aに接する位置にスチール製のガイドバーを埋め込み、このガイドバー上を転がり軸受け11が移動する構成としてもよい。
【0017】キャリア8は、筐体2の外部に配設されるとともに、筐体2及びスケール4の長手方向に沿って上述した機械本体50の他方の可動部50bに対して取り付けられる。キャリア8には、スライダ7の検出ヘッド9が目盛4bを読み取って検出した位置信号を図示を省略する制御装置に対して供給する信号ケーブル12が接続されている。
【0018】キャリア8は、上述したように機械本体50の他方の可動部50bに対して取り付けられているため、機械本体50を構成する可動部50bとともに筐体2の長手方向に沿って直線移動する。すなわち、キャリア8は、可動部50bを有する機械本体50自体の蛇行やうねりに追従して移動する構造とされる。
【0019】検出ユニット3においては、上述した構成を有するスライダ7とキャリア8とが連結部13により連結され、この連結部13を介して上述したキャリア8がスライダ7を牽引又は押進して、スライダ7を走行させる。連結部13は、キャリア8に設けられるとともに筐体2のスリット5から筐体2内部に進入するアーム14と、このアーム14から突出形成される第1の軸受け部材15と、スライダ7側に設けられ第1の軸受け部材15と対向して配設される第2の軸受け部材16とにより構成される。
【0020】第1の軸受け部15は、アーム14からスライダ7の走行方向に沿ってスライダ7側に突出形成され、そのスライダ7側の先端部分が球面15aとされた球面軸受けである。第1の軸受け部15には、球面15aに開口しかつ球面15aをその外周面の一部として有する球の中心(以下、単に球面15aの中心と称して説明する。)に相当する位置まで達する第1のバネ通し穴15bが形成されている。
【0021】第2の軸受け部16は、スライダ7側に配設され、上述した第1の軸受け部15の球面15aを受ける略円錐状の凹部16aが設けられてなる自動調芯軸受けである。第2の軸受け部16には、略中央にスライダ7側から凹部16aの底面に貫通し、詳細を後述するコイルバネが挿通される第2のバネ通し孔16bが形成されている。
【0022】検出ユニット3は、キャリア8側に設けられた第1の軸受け部15の球面15aがスライダ7側に引張り付勢され、スライダ7に配設された第2の軸受け部16の凹部16aに押圧されて、この第1の軸受け部15と第2の軸受け部16とが連結部13とされて連結される。連結部13は、一端がスライダ7に設けられた係止ピン17に係止され、他端が第2のバネ通し孔16b及び第1のバネ通し孔15bに挿通されて球面15aの中心に相当する位置に係止されたコイルバネ18により第1の軸受け部15に対してスライダ7側に引張り付勢力が付与されている。連結部13は、上述したコイルバネ18が球面15a、具体的にはキャリア8をスライダ7側に引っ張る方向が、スライダ7の走行方向である図3に示す矢印A方向と平行をなすようにスライダ7とキャリア8とを連結する。換言すると、測尺装置1は、スライダ7側でコイルバネ18を係止する係止ピン17が、コイルバネ18の他端側を係止する球面15aの中心を通りかつスライダ7の走行方向と平行な直線上に設けられ、この係止ピン17からキャリア8に対して引張り付勢力が付与されている。
【0023】測尺装置1においては、上述した構成を有する連結部13によりスライダ7とキャリア8とを連結しかつ連結部13を介してキャリア8によりスライダ7を牽引又は押進して走行させることにより、スケール4又は機械本体50から異なる拘束を受けて共に移動するスライダ7とキャリア8との位置がずれた場合でも、スライダ7のスケール4の矢印A方向への走行を阻害する方向に向かう力学的ベクトルが発生しない。すなわち、測尺装置1は、例えば図4に示すように機械本体50側の位置ずれにより、可動部50bに取り付けられたキャリア8の位置がずれた場合でも、凹部16aの円錐状を呈する内周面で球面15aがその中心を回転中心として回転して凹部16a内を滑り、球面15aの中心位置を変位させずにずれを吸収する。このため、測尺装置1は、スライダ7からキャリア8に対して引張り付勢力を付与するコイルバネ18を係止する位置が変わらず、キャリア8に付与される引張り付勢力の方向をスライダ7の走行方向と平行に維持され、スライダ7の走行方向以外に向かう力学的ベクトルがキャリア8のずれによって発生しない。
【0024】上述したように測尺装置1においては、ずれを吸収する第1の軸受け部材15の球面15aの回転中心とキャリア8に対して引張り付勢力を付与するコイルバネ18のスライダ側の係止点とをスライダ7の走行方向と平行な直線上に位置させ、かつスライダ7とキャリア8とを連結するための引張り付勢力の方向をスライダ7の走行方向と平行に維持することで、スライダ7の走行方向以外の力学的ベクトルが発生せず、重要な性能の一つである戻り誤差の発生が防止され、相対移動位置や相対移動距離の測定における測定誤差の軽減が図られる。
【0025】なお、本実施の形態においては、測尺装置1を上述した構成を有するものとして説明したが、これに限定されないことは勿論であり、例えば図5に示す形状の第2の軸受け部20を使用してスライダ7とキャリア8とを連結してもよい。第2の連結部20は、上述した第2の連結部16と同様に略円錐状の凹部20aで第1の連結部15の球面15aを受けてスライダ7とキャリア8とを連結するものであり、スライダ7により近い位置での連結を可能とする。
【0026】また、図6に示す測尺装置30の如く、スライダ7側からキャリア8に対して引張り付勢力を付与する位置を変更し、連結部13と別の位置にコイルバネ18を配設してもよい。測尺装置30においては、スライダ7と、スライダ7に設けられた切欠き部7aに突き出て設けられたキャリア8の係止棒31とにコイルバネ18の両端部がそれぞれ係止されることにより、スライダ7からキャリア8に対して引張り付勢力が付与されている。なお、測尺装置30においても、スライダ7側でコイルバネ18を係止してキャリア8を引っ張る点と、第1の軸受け部15の球面15aの中心とが、スライダ7の走行方向と平行な直線上に位置して配設される。
【0027】さらに、図7に示す測尺装置40の如く、第1の軸受け部15とスライダ7とに棒状の係止バー41a、41bがそれぞれ配設され、この係止バー41a、41b同士を2本のコイルバネ18で繋ぐことにより、スライダ7からキャリア8に引張り付勢力を付与するして連結するものでもよい。このような場合、測尺装置40においては、キャリア8を引っ張るスライダ7上の2点の中点xが、第1の軸受け部15の球面15aの中心を通るスライダ7の走行方向と平行な直線上に位置するように2本のコイルバネ18が配設される。
【0028】さらにまた、上述した各本実施の形態においては、コイルバネ18を用いてキャリア8に引張り付勢力を付与しているが、これに限定するものではなく、コイルバネ18に代えて他の弾性部材、例えばゴム等を用いてキャリア8に対して引張り付勢力を付与してもよい。また、上述した各本実施の形態においては、キャリア8に引張り付勢力を付与してスライダ7とキャリア8とを連結しているが、コイルバネや板バネ、棒バネ、ゴム等の弾性部材の付勢力を利用してキャリア8をスライダ7方向に押圧してスライダ7とキャリア8とを連結する構成としてもよい。
【0029】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように本発明に係る測尺装置によれば、スライダとキャリアとの連結を球面とこの球面を受ける凹部とを介して連結し、凹部において回転する球面の中心とスライダからキャリアに対して付勢力を付与する点又は付勢力を付与する複数点間の中点とを、スライダの走行方向と平行な直線上に位置させ、スライダの走行方向と平行に引っ張り付勢を付与することで、スケール又は機械本体の蛇行やうねりによるスライダとキャリアとの位置ずれを吸収しつつ、スライダの走行方向以外に向かう力学的ベクトルが発生することを防止して、戻り誤差の発生や繰り返し精度の低下を防ぎ、相対移動位置や相対移動距離の測定誤差を低減することができる。
【出願人】 【識別番号】000108421
【氏名又は名称】ソニー・プレシジョン・テクノロジー株式会社
【出願日】 平成11年6月18日(1999.6.18)
【代理人】 【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃 (外2名)
【公開番号】 特開2001−4360(P2001−4360A)
【公開日】 平成13年1月12日(2001.1.12)
【出願番号】 特願平11−173328