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【発明の名称】 タッチ信号プローブの着座機構
【発明者】 【氏名】古賀 聡

【氏名】西沖 暢久

【要約】 【課題】復帰動作に伴う着座ずれ誤差を高精度に修正可能なタッチ信号プローブの着座機構を提供する。

【解決手段】固定要素31と、可動要素41と、固定要素上に設けられた硬球34と、可動要素上に設けられ硬球34と当接する円柱体44と、硬球34と円柱体44とを相対摺動させる圧電素子33を有する。円柱体44の外周面が円錐面形状を有していることから、円柱体44側の接触点及び硬球34側の接触点は、双方ともそれぞれ相対摺動の間に位置を変化させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】固定要素と、スタイラスが取り付けられた可動要素と、前記固定要素上に設けられた固定要素側着座要素と、前記可動要素に設けられ前記固定要素側着座要素と互いに離隔した3箇所のそれぞれにおいて2点一対の接触点で接触する可動要素側着座要素とを有し、前記スタイラスに外部から力が作用したとき前記固定要素に対する前記可動要素の変位を許容し、かつ、前記スタイラスに作用する外力がなくなったとき付勢力により前記可動要素を静止位置に復帰させるタッチ信号プローブの着座機構において、前記固定要素側における前記接触点及び前記可動要素側における前記接触点を、それぞれ少なくとも所定距離変化させる接触点変位手段を有することを特徴とするタッチ信号プローブの着座機構。
【請求項2】請求項1に記載のタッチ信号プローブの着座機構において、前記所定距離は、前記固定要素と前記可動要素との前記接触点に生じるヘルツの弾性変形に基づく変形量の範囲よりも大きく設定されていることを特徴とするタッチ信号プローブの着座機構。
【請求項3】請求項1または2に記載のタッチ信号プローブの着座機構において、前記接触点変位手段は、前記可動要素側着座要素と前記固定要素側着座要素との何れか一方に形成される曲面と、前記何れか他方に形成される前記スタイラス軸線の放射方向に対して傾斜する斜面と、前記可動要素側着座要素と前記固定要素側着座要素とを相対変位させる駆動源とを含むことを特徴とするタッチ信号プローブの着座機構。
【請求項4】請求項3に記載のタッチ信号プローブの着座機構において、前記可動要素側着座要素及び前記固定要素側着座要素の前記何れか一方は2つの硬球であり、前記何れか他方は円錐面形状の外周面を有する円柱体であることを特徴とするタッチ信号プローブの着座機構。
【請求項5】請求項3に記載のタッチ信号プローブの着座機構において、前記可動要素側着座要素及び前記固定要素側着座要素の前記何れか一方はV字状に配された2本の円柱体であり、前記何れか他方は円錐面形状の外周面を有する円柱体であることを特徴とするタッチ信号プローブの着座機構。
【請求項6】請求項3に記載のタッチ信号プローブの着座機構において、前記可動要素側着座要素及び前記固定要素側着座要素の前記何れか一方は一つの硬球であり、前記何れか他方は前記スタイラス軸線の放射方向に対し傾斜する端面を有するV溝であることを特徴とするタッチ信号プローブの着座機構。
【請求項7】請求項3から6のいずれかに記載のタッチ信号プローブの着座機構において、前記接触点変位手段は、前記可動要素に作用する外力がなくなった後、前記固定要素に対する前記可動要素の接触状態を保ちつつ、前記可動要素側着座要素と前記固定要素側着座要素との各接触点において前記可動要素側着座要素と前記固定要素側着座要素とを相対変位させ、最終的に前記静止位置に復帰させる変位発生機構を含み、前記変位発生機構は前記駆動源を兼ねることを特徴とするタッチ信号プローブの着座機構。
【請求項8】請求項7に記載のタッチ信号プローブの着座機構において、前記変位発生機構は、各前記固定要素と各前記可動要素とをそれぞれ一方向にのみ相対変位させることを特徴とするタッチ信号プローブの着座機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、三次元測定機などに装着されるタッチ信号プローブの着座機構に関する。より詳しくは、固定要素と可動要素とを備え、可動要素に外部から力が作用したとき固定要素に対する可動要素の変位を許容し、かつ、可動要素に作用する力がなくなった後に可動要素を正確に静止位置に復帰させるタッチ信号プローブの着座機構に関する。
【0002】
【背景技術】三次元測定機では、接触検出にあたりタッチ信号プローブが広く用いられている。このようなタッチ信号プローブを用いた三次元測定機では、固定台上に置かれたワークに対して、三次元方向に移動可能なプローブを接触させ、プローブがワークに接触した瞬間を電気的なトリガとして各軸(三次元方向の各軸)の送り座標値を読み取り、これらの座標値を基にワークの寸法や形状を求める。このため、プローブとワークとの接触状態を電気的なタッチ信号として位置を検出することができる。
【0003】図5は従来のタッチ信号プローブを示している。同図において、スタイラス1は可動要素2に固定されている。スタイラス1の先端には接触球4が設けられている。可動要素2の周囲には、3本の円柱体3が、スタイラス1の軸線に対して直角な面内で、かつ、スタイラス1の軸線を中心として120度間隔で放射状に突設されている。一方、固定要素5には、2つの硬球6が3組、可動要素2の円柱体3と対応する位置にそれぞれ固定されている。ここに、円柱体3と硬球6とは、固定要素5と可動要素2との相対位置を一義的に定める着座要素を構成している。
【0004】このような構成において、可動要素2を付勢要素(図示せず)による付勢力Fの作用により固定要素5に押圧し、着座要素を介して可動要素2を固定要素5に強制的に接触させる。スタイラス1の先端に被測定物からの押圧力が付与されていない状態では、可動要素2は固定要素5に6ヶ所の接触点で静止している。つまり、可動要素2の各円柱体3が硬球6と2点、全体として6点で静止している。従って、これを6点接触型着座機構と呼ぶ。
【0005】このような6点接触型着座機構では、可動要素が逃げ動作を行った後の復帰位置が一義に定まる。すなわち、スタイラス1が、可動要素側着座要素及び固定要素側着座要素の接触を保ちつつスタイラス1の静止位置の軸線方向と平行に各接触点方向に変位することを仮定した場合、前記スタイラスの先端の描く各軌跡は前記スタイラスの前記静止位置における軸線と交叉することになる。このような構成によれば、被測定物からの押圧力によって可動要素2が逃げ動作を行った後の復帰動作時に、付勢力Fによって各接触点との接触を回復するのみでスタイラス1は一義的な静止位置に復帰し、スタイラス1の静止位置を一定に保つことが可能である。
【0006】この6点接触型着座機構では、6点の接触により固定要素に対する可動要素の位置が一義的に決まるため、着座状態での耐振動剛性が高い。また、どの方向から押圧力が加えられた場合でも、例えば10μm単位の比較的粗いオーダーで見たときには高い復帰能力を有している。
【0007】ところが、前述のような6点接触型着座機構では、さらに細かい単位、例えば1μm単位で見たとき、接触後の復帰動作の際に、可動要素の逃げ動作の際に可動要素がワークに押し込まれ固定要素に対して相対変位を起こすことによる誤差(着座ずれ誤差)が生じていた。
【0008】すなわち、図6(A)のように、従来の着座機構において接触球4が被測定物Wと接触すると、図6(B)に示すように、スタイラス1は図中左方向へ移動する。この時、可動要素2と固定要素の間にはほとんど逆向きの抗力が生じず、わずかではあるものの可動要素2が図中左方向に摺動する。そして図6(C)のように被測定物Wと可動要素2に連結したスタイラス1が接触しなくなると、可動要素2は付勢力Fにより復帰動作を行うが、前述の摺動により可動要素2の軸位置にずれを生じる。このずれは、プローブの測定精度に直接影響する。
【0009】このような復帰動作後の着座位置ずれを修正する着座機構として図7に示される着座機構が本願出願人によって提案されている(特願平7−246066号)。これは、圧電素子を用いて着座機構の可動要素と固定要素との接触点に作用する摩擦力の方向を管理することにより着座ずれを修正しようとするものである。
【0010】この着座機構は、固定要素11と、可動要素21と、この可動要素21に外部から力が作用したとき固定要素11に対する可動要素21の変位を許容し、かつ、可動要素21に作用する力がなくなったとき可動要素21を静止位置に復帰させる付勢力発生手段(図示せず)とを備える。
【0011】可動要素21には被測定物と接触する接触球24を有するスタイラス22が突設されており、スタイラス22の軸方向に対し120度間隔で放射状に固定要素11と接触する3本の円柱体23を有する。
【0012】固定要素11は、その中心部分がプローブのハウジング(図示せず)に固定されており、スタイラス22の軸を中心に120度間隔で放射状に延びた3本の腕部12を有し、その各腕部12の先端上面に2つの硬球13が配置されている。また、各腕部12において、硬球13より内側部分に変位発生機構としての圧電素子14がスタイラス22の軸線に対し放射方向に略沿って伸縮するように配置されている。
【0013】ここで各圧電素子14に電圧を印加すると、各圧電素子14は同期して変位し、各硬球13はスタイラス22の軸を中心に略放射方向に変位する。なお、ここでいう変位とは静的な変位であり、圧電素子による運動が微細に反復される振動とは異なるものである。この変位により、円柱23と硬球13の各接触点での摩擦力の方向が一定に揃い、付勢力によって静止位置に復帰するように着座位置が調整される。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記の装置では、軸方向ずれ、すなわち円柱23の軸方向への着座ずれ誤差は効果的に修正できるものの、周方向ずれ、すなわち、スタイラス22の軸線を中心とする周方向への着座ずれ誤差は必ずしも十分に修正できなかった。
【0015】すなわち、図8(A)(図7上方から見た状態)及び図8(B)(円柱23の軸線上外側から見た状態)に示すように、被測定物にスタイラス22が接触した後、可動要素21が復帰動作をした段階では、円柱23はスタイラス22の軸線を中心とする周方向にずれて硬球13の一方にのみ支持されていることがある。このように周方向ずれを生じた状態で円柱23をその軸線方向に変位させても、図8(C)から(H)に示すように円柱23は周方向のずれを保ったまま軸方向に摺動し、周方向ずれは十分に解消されなかった。
【0016】この現象は、硬球13表面の歪エネルギーのために周方向ずれを解消しようとする付勢力の作用が妨げられたため、と考えられる。すなわち、可動要素側の着座要素である円柱23と固定要素側の着座要素である硬球13との各接触点P1には、円柱23側、硬球13側双方で微細なレベルの弾性変形が生じる。スタイラス22と被測定物との接触が解消し、可動要素21が復帰動作を行った直後の状態では、可動要素側の着座要素である円柱23と固定要素側の着座要素である硬球13との各接触点P1a、P1bでの弾性変形の向き及び各接触点に作用する力にバラツキが生じている。この弾性変形部分によって、極めてわずかではあるものの、可動要素21及び固定要素11の相対的な摺動が受けられ、付勢力による復帰動作を妨げることになる。
【0017】この状態で各圧電素子14に同期して変位電圧を付加すると、各硬球13は静止位置に対してスタイラス22の軸線の放射方向に突出・後退するように動作する。このため、円柱23は軸方向に一時的に硬球13に対し相対摺動する。そして、円柱23上の接触点は図8(A)のP1a、図8(C)のP2,図8(E)のP3、図8(G)のP4と移動することとなる。このため、各円柱23側の接触点での弾性変形の向き及び接触点に作用する力が平準化され、軸方向ずれについては解消することができる。
【0018】しかし、図8(B)、図8(D)、図8(F)、図8(H)に示されるように、硬球23上の接触点P1bは円柱23が摺動しても一点にとどまり、弾性変形が平準化されることがない。このため、硬球23側の接触点P1bでは依然として円柱23の周方向への復帰を妨げようとする歪エネルギーが作用する。このために周方向ずれが解消されないと考えられる。そして、周方向ずれが残ることで、極めて高精度な着座ずれの修正は不可能であった。
【0019】本発明の目的は、可動要素の復帰動作後に、高精度に着座ずれ誤差の修正を可能にするタッチ信号プローブの着座機構を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明にかかるタッチ信号プローブの着座機構は、固定要素と、スタイラスが取り付けられた可動要素と、前記固定要素上に設けられた固定要素側着座要素と、前記可動要素に設けられ前記固定要素側着座要素と互いに離隔した3箇所のそれぞれにおいて2点一対の接触点で接触する可動要素側着座要素とを有し、前記スタイラスに外部から力が作用したとき前記固定要素に対する前記可動要素の変位を許容し、かつ、前記スタイラスに作用する外力がなくなったとき付勢力により前記可動要素を静止位置に復帰させるタッチ信号プローブの着座機構において、前記固定要素側における前記接触点及び前記可動要素側における前記接触点を、それぞれ少なくとも所定距離変化させる接触点変位手段を有することを特徴とする。
【0021】本発明によれば、可動要素が復帰動作を行う際に、固定要素上の接触点と可動要素上の接触点との双方の何れもが位置を変化させることになる。したがって、変位の間、従来のように固定要素又は可動要素の一方の接触点が弾性変形した状態を維持することがなく、弾性変形による歪エネルギーは変位によって解消されることになる。このため、固定要素上の接触点または可動要素上の接触点上に静止位置への復帰を妨げようとする力が作用しなくなり、着座ずれ誤差を効果的に修正することが可能となる。
【0022】前述のタッチ信号プローブの着座機構において、前記所定距離は、前記固定要素と前記可動要素との前記接触点に生じるヘルツの弾性変形に基づく変形量の範囲よりも大きく設定されているのが好ましい。このような構成によれば、可動要素側及び固定要素側双方の接触点の移動量がヘルツの弾性変形量の範囲を超えるため、弾性変形により歪エネルギーが十分に解消され、ずれ修正機能を効果的に発揮できる。
【0023】以上において、前記接触点変位手段は、前記可動要素側着座要素と前記固定要素側着座要素との何れか一方に形成される曲面と、前記何れか他方に形成される前記スタイラス軸線の放射方向に対して傾斜する斜面と、前記可動要素側着座要素と前記固定要素側着座要素とを相対変位させる駆動源とを含むのが好ましい。
【0024】このような構成によれば、一つの駆動源によって可動要素側の接触点と固定要素側の接触点との双方の位置を変化させることができる。したがって、着座機構の構造を簡略化することができる。
【0025】具体的には、前記可動要素側着座要素及び前記固定要素側着座要素の前記何れか一方は2つの硬球であり、前記何れか他方は円錐面形状の外周面を有する円柱体であるのがよい。あるいは、前記可動要素側着座要素及び前記固定要素側着座要素の前記何れか一方はV字状に配された2本の円柱体であり、前記何れか他方は円錐面形状の外周面を有する円柱体であってもよい。あるいは、前記可動要素側着座要素及び前記固定要素側着座要素のいずれか一方は硬球であり、他方は前記スタイラス軸線の放射方向に対し傾斜する端面を有するV溝であってもよい。あるいは、前記可動要素側着座要素及び前記固定要素側着座要素の前記何れか一方は一つの硬球であり、前記何れか他方は前記スタイラス軸線の放射方向に対し傾斜する端面を有するV溝であってもよい。
【0026】このような形状であれば、単に従来着座機構の部品の一部を変更するのみで本発明の効果を奏することができる。したがって、従来の製造設備・部品・製造工程を流用することが可能であり、生産コストを増大させることがない。また、簡易に精度の高い部品を製造することが可能であり、本発明の効果を容易に実現することができる。
【0027】以上において、前記接触点変位手段は、前記可動要素に作用する外力がなくなった後、前記固定要素に対する前記可動要素の接触状態を保ちつつ、前記可動要素側着座要素と前記固定要素側着座要素との各接触点において前記可動要素側着座要素と前記固定要素側着座要素とを相対変位させ、最終的に前記静止位置に復帰させる変位発生機構を含み、前記変位発生機構は前記駆動源を兼ねるのが好ましい。
【0028】本発明では、例えば可動要素が復帰動作を行う際の微少な摺動動作において、固定要素側及び可動要素側双方の接触点の位置を変動させることで、変位発生機構を設けなくとも復帰動作時点で周方向ずれを修正することも可能である。この場合、前記駆動源は、可動要素を初期姿勢に復帰させる機構となる。また、例えば、復帰動作時に固定要素側着座要素及び可動要素側着座要素の少なくとも一方を回転させることで固定要素と可動要素とを相対変位させることなく固定要素側及び可動要素側双方の接触点の位置を変動させることも可能である。この場合、この回転機構が前記駆動源にあたる。しかし、このように固定要素と可動要素とを復帰動作後に人工的に相対変位させる変位発生機構を設けることで、簡易な構成により、高い精度で周方向ずれを修正することが可能となる。
【0029】以上において、前記変位発生機構は、各前記固定要素と各前記可動要素とをそれぞれ一方向にのみ相対変位させるのが好ましい。
【0030】前述のような本発明は、複数の異なる方向に変位する圧電素子を設けるなどの構成によっても実現可能であるが、構造が複雑化する。本発明の構成によれば各固定要素及び可動要素につき一つの圧電素子などの変位発生機構を設けるのみで本発明の効果をあげることができる。したがって、生産コストを大幅に上昇させることなく着座機構の構造簡易化が可能である。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図を参照しながら詳細に説明する。ここで、各実施形態中、同一構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略化する。
【0032】(第一実施形態)図1は本発明の第一実施形態を示す。第一実施形態にかかるタッチ信号プローブ10は固定要素31と、スタイラス42を有する可動要素41と、固定要素31及び可動要素41間の着座機構10Aとを有する。
【0033】固定要素31はスタイラス42が挿通される貫通孔35を有する基部と、基部から120度間隔でスタイラス軸線から放射状に延びる3本の支持腕32を有する。各支持腕32上には、先端近傍に二つの硬球34が設けられ、更に硬球34と基部との間に電圧を付加することによって支持腕を伸縮させる圧電素子33が取り付けられている。以上において、硬球34が本発明の固定要素側着座要素、圧電素子33が変位発生機構を構成する。
【0034】スタイラス42の先端には被測定物と接触する接触球43が設けられる。また、可動要素41には120度間隔でスタイラス42の軸線の放射方向に延び基端側に比べて先端側が狭くなっている外周面を有する3本の円柱体44が、前記2個の硬球34の中心に対応配置されて設けられている。この円柱体44が本発明の可動要素側着座要素となる。
【0035】以上において、接触球43と被測定物との接触状態が解消され、可動要素41が復帰動作を行うと、可動要素41は付勢力の作用によって固定要素31との接触を回復する。この際、この復帰動作に伴い、各円柱体44は、各硬球34に対し被測定物と接触していた方向と略反対向きに相対摺動し、ずれを生じることとなる。
【0036】しかし、各円柱体44がテーパ面を有していることで、摺動動作に際し、円柱体44側及び硬球34側の接触点がそれぞれ位置を移動する。したがって、それぞれの接触点での弾性変形により付勢力の作用に基づく復帰作用が妨げられることが少なく、高精度に周方向ずれを防止することができる。
【0037】上記の復帰動作後、各圧電素子33に同期して変位運動を行うよう変位電圧を加える。変位電圧が加えられると、各圧電素子は同期してスタイラス42の軸線に対し略放射方向に変位する。このときの変位量はヘルツの弾性変形量を超えるものとなっている。なお、ここでいう変位とは静的な変位であり、圧電素子による運動が微細に反復される振動とは異なるものである。この変位に伴い、各硬球34も圧電素子の変位方向に変位し、対応する円柱体44との間で相対摺動運動を行う。
【0038】この摺動運動により、各硬球34と各円柱体44とは、図2に示されるように相対変位する。すなわち、図2(A)に示すように各圧電素子33に変位電圧が加えられる直前に周方向ずれを生じており、円柱体44が2つの硬球34の一方(図中右側)に支持されているとする。このとき、図2(B)に示すように、円柱体44と硬球34の一方とは、接触点P1で接触している。
【0039】各圧電素子33に変位電圧が加えられて固定要素31の基部から硬球34に向けて伸びるように変形すると、図2(C)のように円柱体44は硬球34に対してスタイラスの軸線の放射方向に相対的に後退する。このとき、円柱体44側の接触点は円柱体44の相対後退動作によって図中のP1からP2に移動する。また、図2(D)に示すように、硬球34側の接触点P1もP3に移動する。これは、可動要素41に加えられている付勢力を受けて円柱体44のテーパ面が周方向(図中D方向)に摺動するためである。なお、この時点では、初期周方向ずれの程度によって他方の硬球34(図中左側)と円柱体44とは接触しない可能性がある。
【0040】この後、各圧電素子33が硬球34側から固定要素31の基部に向けて縮むように変形すると、図2(E)に示すように、円柱体44は硬球34に対してスタイラスの軸線の放射方向に相対的に突出する。このとき、図2(F)のように可動要素41に加えられている付勢力を受けて円柱体44のテーパ面は更にD方向に相対摺動し、円柱体44と2つの硬球34双方とが接触する。そして、円柱体44側の接触点は円柱体44の相対後退動作によって図中のP2からP4に移動する。また、図2(D)に示すように、硬球34側の接触点P3もP5に移動する。
【0041】この後、変位電圧が加えられなくなり円柱体44と硬球34とが静止した時点では、図2(G)、図2(H)に示すように、円柱体44と硬球34とが2点において接触した状態が保持されるようになっている。
【0042】本実施形態によれば、圧電素子33による円柱体44と硬球34との相対摺動動作にともなって、円柱体44側及び硬球34側の接触点がそれぞれ位置を変化することになる。このため、円柱体44は、硬球34との接触点での弾性変形によって、その軸方向のみならず、周方向への摺動を規制されることがない。したがって、圧電素子33による変位動作によって、高精度に着座ずれ誤差を修正することが可能である。
【0043】また、円柱体44はその先端側が基端側よりも狭くなっているテーパ面を有しているため、圧電素子33による相対摺動動作の間に付勢力の作用を受けて周方向ずれを修正するように動作する。したがって、一方向のみに変位する圧電素子33を用いるのみでさらに高精度な着座ずれ誤差の修正が可能である。また、円柱体44以外の部品は従来の製品と同一の構成を流用できるため、製造工程・設備を流用でき、生産コストを増加させることもない。
【0044】(第二実施形態)図3は、本発明の第二実施形態を示す図である。本実施形態は、第一実施形態の円柱体44に代えて、可動要素側着座要素として基端側に比べて先端側が広がっているいわゆる逆テーパ面を有する逆テーパ円柱体45を用いた点が前記第一実施形態と異なっている。
【0045】本実施形態でも、可動要素側着座要素としての逆テーパ円柱体45の外周テーパ面によって、逆テーパ円柱体45側及び硬球34側双方の接触点が、それぞれの要素上で位置を変えつつ移動する構成となっている。したがって、前述の第一実施形態で述べたと同様の効果を奏することが可能である。
【0046】(第三実施形態)図4は本発明の第三実施形態を示す図である。本実施形態では、可動要素側着座要素として、可動要素の固定要素側の面に設けられた1個の硬球47を用いる。また、固定要素側着座要素として、支持腕32の先端側に突出する突出部に設けられ、圧電素子33による変位方向に対して傾斜する端面を有するV溝36を用いる。
【0047】本実施形態でも、V溝36の端面がスタイラス42の軸線に対する放射方向に対して傾斜するため、硬球47側及びV溝36側の接触点は、それぞれ位置を変えることになる。
【0048】したがって、各接触点での弾性変形により可動要素の着座ずれ誤差を妨げる力が生じることがなく、高精度に着座ずれ誤差を修正することが可能である。
【0049】また、V溝36は圧電素子33による変位方向に対して傾斜する端面を有しているため、圧電素子33による相対摺動動作の間に、硬球47は付勢力の作用を受けて周方向ずれを修正するように動作する。したがって、一方向のみに変位する圧電素子33を用いるのみでさらに高精度な着座ずれ誤差の修正が可能である。
【0050】(変形例)なお、本発明の範囲は前記各実施形態に述べられた事項に限らず、本発明の目的を達成することができる範囲内で、以下の変形例をも含む。
【0051】本発明の可動要素の形状は、前記各実施形態の形状に限られず、固定要素31の支持腕の長さと同径、または径の大きな円盤でもよく、三角形などの多角形でもよい。さらに、固定要素31の形状も、径の小さな基部に支持腕を設けた構造に限らず、中心に貫通孔を設けた三角形などの多角形でもよい。要するに、固定要素側着座要素に対応するように可動要素側着座要素を支持可能な構造であれば、どのような固定要素及び可動要素の形状も採用できる。
【0052】前記第一及び第二実施形態では固定要素側着座要素として2個の硬球を用いていたが、これに代えてV字状に配された2本の円柱を用いてもよい。また前記第三実施形態では、可動要素側着座要素として硬球47,固定要素側着座要素としてV溝36を用いていたが、可動要素側着座要素及び固定要素側着座要素の組み合わせとして2個一対の硬球及びV字状等の断面形状を有する突起を用いてもよい。あるいは、可動要素側着座要素及び固定要素側着座要素の組み合わせは、1個の硬球及びスタイラスの軸線から遠ざかるにつれて付勢力方向に傾斜する底部基線を有するくさび状の溝であってもよい。
【0053】要するに、本発明の範囲は、固定要素と可動要素とが相対変位する際に、固定要素側の接触点位置と可動要素側の接触点位置との双方がそれぞれ変化する構成を全て含むものである。
【0054】前記各実施形態では、駆動源としてスタイラス軸線に対し略放射方向に変位する圧電素子33を用いた変位発生機構を使用していた。しかし、本発明の駆動源はこのような変位発生機構を用いたものに限られない。例えば、駆動源としては可動要素と被測定物とが接触した後、復帰動作を行う場合の摺動機構を用いても良く、変位を起こさず可動要素側着座要素と固定要素側着座要素を回転させる機構を用いても良い。
【0055】また、本発明に変位発生機構を適用した場合にも、変位発生機構は圧電素子に限られない。例えば、励磁コイルを用いてもよく、静電力、空圧、油圧などの駆動手段を用いても良い。また、変位方向もスタイラス軸線に対する略放射方向に限られず、スタイラス軸線の平行線に直交する方向であっても良い。例えば、第一実施形態における2つの硬球34の中間に変位発生機構を設けるような構成も可能である。また、前記各実施形態では各固定要素側着座要素と可動要素側着座要素との組み合わせについて、一個の変位発生機構を用いていたが、それぞれの組み合わせにつき複数の変位発生機構を設けることも可能である。さらに、前記各実施形態では固定要素側に変位発生機構を設けていたが、可動要素側に変位発生機構を設けてもよい。要するに、本発明の変位発生機構としては、固定要素側着座要素と可動要素側着座要素との間に相対的変位を生じる構成全てを採用することができる。
【0056】
【発明の効果】本発明のタッチ信号プローブの着座機構によれば、復帰動作によって生じる着座ずれ誤差を高精度に修正することが可能である。
【出願人】 【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
【出願日】 平成11年6月16日(1999.6.16)
【代理人】 【識別番号】100079083
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 實三 (外1名)
【公開番号】 特開2001−4356(P2001−4356A)
【公開日】 平成13年1月12日(2001.1.12)
【出願番号】 特願平11−169713