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【発明の名称】 板厚測定方法および装置
【発明者】 【氏名】小池 正浩

【氏名】松井 祐二

【氏名】永島 良昭

【要約】 【課題】精度の良いオーバーラップ法を用いて板厚を測定する場合において、オーバーラップ法での板厚測定が難しくなることがある板厚急変部においても、板厚を測定できる板厚測定方法および装置を提供する。

【解決手段】オーバーラップ法により板厚を測定し、該板厚が予め設定している許容範囲(例えば設計板厚)から外れた場合には、他の測定方法で板厚を測定する。また、任意の測定位置における評価板厚と周囲の評価板厚を比較し、周囲の評価板厚と異なる場合には、前記任意の測定位置における評価板厚を、周囲の評価板厚の平均値などとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 音響のパルス反射法を用いた板厚測定方法において、多重反射波を用いての伝搬時間測定法であるオーバーラップ法による板厚測定と他の板厚測定方法とを組合せて板厚を測定することを特徴とした板厚測定方法。
【請求項2】 請求項1記載の板厚測定方法において、他の板厚測定方法として、音響波形の2個のピーク強度間の時間差を用いた測定方法であることを特徴とした板厚測定方法。
【請求項3】 請求項1記載の板厚測定方法において、他の板厚測定方法として、音響波形の2個の反射波の立ち上がり時間差を用いた測定方法であることを特徴とした板厚測定方法。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項記載の板厚測定方法において、板厚の特異点除去方法を設けたことを特徴とした板厚測定方法。
【請求項5】 音響のパルス反射法を用いた板厚測定方法において、多重反射波を用いての伝搬時間測定法であるオーバーラップ法による板厚測定と板厚の特異点除去方法とを組合せて板厚を測定することを特徴とした板厚測定方法。
【請求項6】 材料中へ音響を送信する手段と、前記材料中を伝搬してきた音響を受信する手段とを設け、受信信号から前記材料の板厚を測定する装置において、オーバーラップ法により板厚を評価する手段と、他の方法により板厚を評価する手段と、オーバーラップ法での評価板厚と予め決めた許容範囲とを比較するための比較手段と、比較結果に基づいてオーバーラップ法による評価板厚と他の方法による評価板厚を切替える手段とを備えたことを特徴とする板厚測定装置。
【請求項7】 請求項4記載の板厚測定装置において、測定位置における評価板厚を記憶する手段と、複数の評価板厚に基づいて板厚の特異点を除去する手段とを備えたことを特徴とする板厚測定装置。
【請求項8】 材料中へ音響を送信する手段と、前記材料中を伝搬してきた音響を受信する手段とを設け、受信信号から前記材料の板厚を測定する装置において、オーバーラップ法により板厚を評価する手段と、測定位置における評価板厚を記憶する手段と、複数の評価板厚に基づいて板厚の特異点を除去する手段とを備えたことを特徴とする板厚測定装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、音響を用いて材料の厚さ(板厚)を測定する方法および装置に係わり、特に、材料の減肉等を測定するのに好適な方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】音響を用いて板厚を測定する方法は、日本工業規格(JIS)Z2355「超音波パルス反射法による厚さ測定方法」等に記載されている。
【0003】材料中を伝わる音響の速度(音速)は、材料固有のものであることから、音響が材料中を伝搬した時間を測定することにより、伝搬時間tと音速vとの積から、音響が伝搬した距離を求めることができる。図7に示すように、材料1の表面に音響センサ2を設置して、該音響センサ2から音響3を送信し、該材料1の底面で反射した音響3を、該音響センサ2で受信した場合には、材料1の板厚Tを、式(1)から求めることができる。
【0004】
【数1】T=v×t/2 (1)
すなわち、音響を用いて板厚を測定することは、材料中の伝搬時間tを測定すれば良いことになる。
【0005】図7(a)に示す体系においては、図7(b)に示すような受信波形(RF信号とそれを処理した検波信号)が得られる。このような受信波形から、伝搬時間を測定する方法には、音響を送信してから受信するまでの時間を測定する方法や、材料1の底面からの1回目の反射波と2回目の反射波(3回目や4回目でも良い)との時間差を測定する方法等がある。また、1回目の反射波と2回目の反射波との時間差を測定する方法として、反射波(受信波)のピーク強度間の時間差を測定する方法、受信波の立ち上がり時間差を測定する方法(ゼロクロス法)や、予め設定した任意のしきい値を越えた時間差を測定する方法がある。さらに、1回目と2回目の反射波同士の相関係数が最も良くなるように、2回目の反射波を時間軸上で移動させて、その移動量から伝搬時間を測定する方法(オーバーラップ法)などがある。一般的には、これらの測定方法のうち、1つの測定法を用いて材料の板厚を測定している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】オーバーラップ法は、他の音速測定法に比べて、一般的に伝搬時間を精度良く測定できる方法である。しかし、図8に示すように、板厚が急激に変化している部分においては、材料1の厚い部分からの反射波3a、薄い部分からの反射波3b、角の部分からの反射波3cとが干渉して受信波形が乱れる。そのため、1回目と2回目の反射波同士の相関係数が乱れ、伝搬時間差を精度良く測定されない場合がある。
【0007】本発明の目的は、精度の良いオーバーラップ法を用いた場合において、板厚が急激に変化している部分においても、板厚を測定できる板厚測定方法および装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を解決するため、オーバーラップ法により板厚を測定し、該板厚があらかじめ設定している許容範囲(例えば設計板厚)から外れた場合には、他の測定法で伝搬時間を測定する。これによって、オーバーラップ法で測定が難しい板厚変化が急激な部分でも伝搬時間が測定でき、板厚を評価できる。
【0009】また、任意の測定位置における評価板厚と周囲の評価板厚を比較し、周囲の評価板厚と異なる場合には、前記任意の測定位置における評価板厚を、周囲の評価板厚の平均値などとする。これによって、オーバーラップ法で測定が難しい板厚変化が急激な部分でも板厚を評価できる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の各実施例について図面を用いて説明する。
【0011】図1は、本発明に係る板厚測定方法の一例を示す図である。音響を送受信するためのセンサを目的の測定開始位置に設置し(図1のステップ100)、音響を送信および受信する(ステップ101)。次に受信した音響波形(受信波形)を用いて、オーバーラップ法により伝搬時間を算出し、式(1)に基づいて板厚を評価する(ステップ102)。オーバーラップ法では、板厚が急激に変化する部分で、板厚を正確に評価できない場合があるので、オーバーラップ法での板厚評価結果が間違っていないかどうかを判定するため、予め決めておいた許容範囲(例えば、設計板厚)を読み込む(ステップ103)。評価した板厚と該許容範囲とを比較し(ステップ104)、もし、評価板厚が大きい場合には、ゼロクロス法などの他の測定方法で板厚を評価する(ステップ105)。板厚を評価後、予め決めておいた測定すべき最終位置(最終測定位置)を読み込み(ステップ106)、現在の測定位置と最終測定位置とを比較する(ステップ107)。最終測定位置に達していない場合には、音響センサを次の測定位置に移動し(ステップ108)、ステップ101以下の流れを行う。
【0012】図2は、図1の板厚測定方法を実施するための装置構成の一例をしました図である。図2において、1は板厚を測定する材料(被検査体)である。音響センサ2を材料1表面の目的の位置に設置する。送信器4からの信号に基づいて、音響センサ2から材料1内に音響3を送信する。材料1底面で反射した音響を該音響センサ2および受信器5で受信する。受信した音響信号(受信波形)を波形記憶器6に記憶する。オーバーラップ法信号処理器7では、記憶した受信波形に基づいて、材料1底面からのm回目の反射波とn回目の反射波との時間差(例えば、m=1、n=2)を、オーバーラップ法で測定し、材料1の音速と該時間差から板厚を評価する。オーバーラップ法による評価板厚を板厚比較器9に送り、該板厚比較器9では、該評価板厚と予め許容範囲記憶器8に記憶しておいた許容範囲とを比較する。オーバーラップ法による評価板厚が該許容範囲内であれば、板厚比較器9から、オーバーラップ法による評価板厚が、切替え器11、測定位置比較器13を経由して表示器14に送られる。測定位置比較器13では、駆動制御器16から送られてくる現在の測定位置と、予め決めて最終測定位置記憶器12に記憶しておいた最終測定位置を比較し、現在の測定位置が最終測定位置に達していない場合には、駆動制御装置16、駆動機構15とにより、音響センサ2を次の測定位置に移動する。
【0013】オーバーラップ法による評価板厚が該許容範囲外である場合には、板厚比較器9から、ゼロクロス法信号処理器10に処理開始の信号、切替え器11にゼロクロス法信号処理器10と表示器12とを接続する切替え信号が送られる。ゼロクロス法信号処理器10では、該処理開始信号に基づいて、材料1底面からのm回目の反射波とn回目の反射波との時間差(例えば、m=1、n=2)を、ゼロクロス法で測定し、材料1の音速と該時間差から板厚を評価する。ゼロクロス法による評価板厚は、切替え器11を経由して表示器12に送られる。
【0014】表示器12では、材料1の断面図(横軸に位置、縦軸に板厚を取って表示した図)等を表示させることができる。
【0015】駆動機構15、駆動制御器16を設けずに、音響センサ2を手動走査することも可能である。
【0016】図3は、図1の実施例に、現在の測定位置における評価板厚を記憶するステップ(ステップ109)と、複数の測定位置における評価板厚を用いた特異点除去処理(ステップ110)を追加した一実施例である。この実施例は、ステップ105までは図1と同じである。ステップ102もしくは105で評価した板厚を、仮の板厚として記憶する(ステップ109)。最終測定位置までの板厚評価が終了した後に、該仮の板厚を用いて、特異点除去処理を実施して、各測定位置における板厚を決定する(ステップ110)。ステップ110で実施する特異点除去処理としては、例えば、任意の測定位置の板厚をTiが、その前後の測定位置での板厚Ti-1、Ti+1と異なる場合には、特異点として除去してTi=Ti-1とする方法や、前後数点の平均値から標準偏差のn倍(n>0)以上異なる場合に特異点として除去して、Ti=(平均値)とする方法などがある。また、比較データとして、前の数点、後ろの数点との比較でも良い。さらに、Median Filterなどを用いて、特異点を除去しても良い。
【0017】図4は、図3の板厚測定方法を実施するための装置構成の一例をしました図である。図4中の1〜16の番号は、図1と同じ装置を示す。オーバーラップ法信号処理器7もしくはゼロクロス法信号処理器10で評価した板厚を、現在の位置での仮の板厚として、板厚記憶器17に、現在の測定位置とともに記憶する。駆動制御器16から送られてくる現在の測定位置と、予め決めて最終測定位置記憶器12に記憶しておいた最終測定位置とを、測定位置比較器13で比較する。もし、現在の測定位置が最終測定位置に達していない場合には、駆動制御装置16、駆動機構15とにより、音響センサ2を次の測定位置に移動する。最終測定位置に達した場合には、特異点除去処理器18において、前後測定位置での板厚との比較などにより、特異点を除去する。
【0018】図3、4では、特異点除去処理を測定位置比較の後に配置しているが、測定位置比較の前に配置して、特異点除去処理に必要な測定点数が終了したたびごとに実施する構成にすることも可能である。
【0019】さらに、特異点除去処理を追加した場合には、オーバーラップ法による板厚評価のみを行い、他の板厚評価方法を用いなくても、同様な効果が得られる。すなわち、図5に示すように、ステップ103〜105を省くことができ、図6に示すように、8〜11の装置を省くことができる。これにより、処理や装置を簡素化できる効果がある。
【0020】
【発明の効果】本発明によれば、オーバーラップ法と他の測定方法とを組合せることにより、急激な板厚変化部分でオーバーラップ法による板厚評価が難しくなった場合においても、板厚が評価できる効果がある。
【0021】請求項3もしくは6によれば、オーバーラップ法による板厚評価後に板厚の特異点を除去する処理を実施することにより、急激な板厚変化部分でオーバーラップ法による板厚評価が難しくなった場合においても、周囲の評価板厚から板厚を評価できる効果がある。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成11年6月24日(1999.6.24)
【代理人】 【識別番号】100075096
【弁理士】
【氏名又は名称】作田 康夫
【公開番号】 特開2001−4355(P2001−4355A)
【公開日】 平成13年1月12日(2001.1.12)
【出願番号】 特願平11−177765