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【発明の名称】 巻尺の製造方法
【発明者】 【氏名】藤井忠晴

【氏名】河本誠

【要約】 【課題】焼入鋼帯にアクリル酸系樹脂塗料やエポキシ樹脂塗料を焼付塗装し、表面に目盛及び数字や標識等を印刷した後に熱可塑性樹脂で被覆した巻尺は、目盛及び数字や標識等が焼付塗装した樹脂面上にあるので目盛等の精度や耐摩耗性が良い反面、焼付塗料や印刷インキ等と熱可塑性樹脂との相溶性の悪いものが多く、両者間に接着剤を介して密着力を得る必要があった。

【解決手段】焼入鋼帯に隠ぺい性を有する例えば白色のアクリル酸系樹脂塗料を塗装し、印刷用インキで目盛・数字・標識等を印刷した巻尺帯を、コロナ処理、またはフレーム処理、あるいは紫外線処理等の装置で巻尺帯の表面処理を施した後、熱可塑性樹脂で被覆する。この方法によって、塗料及び印刷インキと熱可塑性樹脂との間に接着剤を介することなく密着力が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 焼入鋼帯に隠ぺい性を有する塗料で塗装し、印刷用インキで印刷した巻尺帯を、コロナ処理、または、フレーム処理、あるいは、紫外線処理等の装置で巻尺帯の表面処理を施した後、熱可塑性樹脂で被覆することを特徴とする巻尺の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は焼入鋼帯に隠ぺい性のある塗料を焼付塗装し、印刷インキで印刷した目盛及び数字や標識等を熱可塑性樹脂で被覆する方法において、塗料及び印刷インキと熱可塑性樹脂との間に接着剤を介することなく密着力を有する巻尺の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】元来、金属でなる巻尺は、次の特性を有する必要がある。
(1) 目盛が鮮明で読み取りが容易であること。
(2) 目盛精度が高く、温度や湿度の影響で目盛等の伸縮が少ないこと。
(3) 耐摩耗性があり、目盛等が容易に剥落しないこと。
(4) 充分な防錆性を有すること。
(5) 安価であること。
等である。
【0003】しかるに従来の鋼芯巻尺は、焼入鋼帯にアクリル酸系樹脂塗料やエポキシ樹脂塗料を焼付塗装した表面に目盛及び数字や標識等を印刷し、同系統の透明樹脂塗料を被覆したものは、安価であるが耐摩耗性が悪く、塗装被膜の摩耗による発錆する等により充分な使用耐久性が得られない。そこで、耐摩耗性を良くする手段として透明樹脂塗料の硬度を上げると樹脂と鋼帯の剥離やひび割れにより、逆に発錆の要因となることがある。又、焼入鋼帯にポリアミド樹脂を被覆し、その上に目盛及び数字や標識等を印刷した巻尺は、ポリアミド樹脂の温度や湿度変化による目盛精度が悪くなる場合がある。
【0004】さらに、焼入鋼帯にアクリル酸系樹脂塗料やエポキシ樹脂塗料を焼付塗装した表面に目盛及び数字や標識等を印刷した鋼帯に熱可塑性樹脂で被覆した巻尺は、目盛及び数字や標識等が焼付塗装した樹脂面上にあり、目盛等の精度や耐摩耗性も良いものである。しかしながら焼付塗料や印刷インキ等と熱可塑性樹脂との相溶性の悪いものが多く、対策として塗料やインキ及び熱可塑性樹脂に相溶性の良好な合成樹脂接着剤を使用することが多い。また合成樹脂接着剤を介さない場合は、生産速度を遅くする必要があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかるに本発明は接着剤を介することなく生産性にも富む方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本発明は、焼入鋼帯に隠ぺい性を有する塗料で塗装し、印刷用インキで印刷した巻尺帯を、コロナ処理、または、フレーム処理、あるいは、紫外線処理等の装置で巻尺帯の表面処理を施した後、熱可塑性樹脂で被覆するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】以下実施例により説明するが、該実施例により制限されるものではない。金属巻尺の素材である焼入鋼帯の表面を脱脂洗浄の後乾燥した鋼帯に、隠ぺい性を有する塗料、例えば白色のアクリル酸系樹脂塗料を常法に従い塗布し焼付塗装を行う。次に、紫外線硬化用印刷インキにより目盛・数字・標識等を印刷した後、紫外線を照射しインキを硬化する。
【0008】ここで云う隠ぺい性を有する塗料とは、酸化チタンの含有するアクリル酸系樹脂塗料やエポキシ樹脂塗料・フッ素樹脂塗料等の有機溶剤系の塗料でも良く、同系統の水溶性塗料でも良い。また、環境問題を考慮すれば紫外線硬化塗料でも良く、色相についても、白色及び黄色を多く使用するが、その範囲を制限するものではない。
【0009】また、印刷用インキについても、塗料と同様で有機溶剤型や紫外線硬化型・熱硬化型・水溶性インキ等があり、色相については、通常黒色及び赤色が多く用いられるが、蛍光色やメタリック色等その範囲を制限するものではない。
【0010】次いで、本発明を図によって説明する。第1図は従来の熱可塑性樹脂を被覆する製造過程の概略図であり、第2図は本発明の表面処理装置を備えた製造過程の概略図の一例である。第2図に示す如く、焼付塗装及び印刷インキで印刷した鋼帯1はフレーム処理装置2を装備した熱風オーブン3で表面処理を行うと同時に加熱する。その後押出機5で溶融した熱可塑性樹脂を金型6から押出しつつある金型を通し、引き続き冷却ロール8で徐冷しつつ、成形用プレスロール7で成形し巻尺9となる。
【0011】表面処理の方法としては、コロナ処理装置、または、フレーム処理装置、あるいは、紫外線処理装置等があり、単独の装置による表面処理でも良く、複数の表面処理を組み合わせても良くその範囲を制限するものではない。
【0012】鋼帯の加熱方法としては、熱風オーブンのような熱風を直接焼付塗装した鋼帯に吹き付ける方法や高周波誘導加熱装置のような鋼帯を直接誘導電流で加熱する方法等があり、表面処理をフレーム処理装置で行う場合、加熱方法としては熱風オーブンを用いる方法がフレーム処理の際に使用する熱量を無駄なく使用することになり、省エネ対策として有利である。
【0013】次に、鋼帯を被覆する熱可塑性樹脂はポリアミド樹脂、または飽和ポリエステル系樹脂を多く使用する。ポリアミド樹脂としては、一般に知られているナイロン6やナイロン66・ナイロン610・ナイロン11・ナイロン12等があり、飽和ポリエステル系樹脂は、一般に知られている結晶性ポリエステル樹脂で良く、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)・ポリ1,4シクロへキシルジメチレンテレフタレート(PCT)・ポリエチレンナフタレート(PEN)等が考えられるが、一般に知られる押出機で溶融できる熱可塑性樹脂であればその範囲は制限するものではない。
【0014】さらに、被覆する熱可塑性樹脂は、押出機を用いて溶融し、金型により鋼帯と袋状押出流に合流するが、金型の形状は、プレッシャーダイやクロスヘッドダイが考えられる。金型を介して鋼帯の表面に被覆した樹脂は、冷却ロールによって徐冷及び成形を行うが、樹脂の被覆表面は、梨地状の艶消しでも良く、鏡面状の光沢のあるものでも良く、使用用途により選ぶべきである。
【0015】本発明で生産した巻尺は、焼付塗料や印刷インキ表面の極浅い部分(数ミクロン以下)をコロナ処理、または、フレーム処理、あるいは、紫外線処理等の装置で表面処理することにより、該表面に凹凸もしくは微細孔が出来る、あるいはコロナ処理の場合は高分子の一部がイオン化するため、焼付塗装面や印刷面の凹凸によるアンカー効果で熱可塑性樹脂との密着力が上がるものと考えられ、焼付塗装や印刷インキと被覆する熱可塑性樹脂の間に相溶性の良好な合成樹脂接着剤を介さなくても密着力の良い巻尺を得ることが出来る有効な方法である。
【0016】本発明で得られる巻尺は、焼入鋼帯を熱可塑性樹脂で完全に被覆しているので防錆性にも優れている。また、耐油性・耐溶剤性に優れ、ほとんどの薬品に侵されず、摩擦・摩耗特性に優れ、前述の金属でなる巻尺が具備しなければならない事項を具備した理想的なものである。
【0017】本発明は、上記の如く優れた金属でなる巻尺を大量に生産できるので生産コストを著しく低減できる方法である。さらに、焼入鋼帯を被覆する樹脂を吸水率の極めて低い樹脂、例えば飽和ポリエステル系樹脂を使用すれば、精度の高い目盛が温度や湿度の影響をほとんど受けることなく錆にも強い良質の巻尺を多量にしかも安価に供給することができる極めて有効な製造方法を提供するものである。
【0018】
【実施例1】13mm巾焼入平鋼帯(SK材)の表面を脱脂一洗浄一乾燥の工程を経て、白色アクリル樹脂塗料(A社アクリルホワイト)を常法に従い塗布し焼付塗装を行った。次に紫外線硬化用インキ(B社黒色UVインキ)で目盛を印刷し、同インキ(B社赤色UVインキ)で数字及び標識を印刷した後、紫外線照射炉で固着した。
【0019】次いで、フレーム処理を有する熱風オーブン装置で上記の焼入塗装した巻尺帯の表面処理と同時に230℃に加熱し、押出機で溶融したPBTで充満する金型(クロスヘッドダイ)の間を通し、引き続き梨地表面の冷却ロールで徐冷し、50m/分の速度で成型被覆した。得られた巻尺は厚さ約50μmのPBTで全体を覆ったものであった。
【0020】クロスカットテストでセロテープ剥離の結果、100/100で焼付塗料とPBTとの密着も良く、巻尺ケースに入れ1,000回に引き出しテストを行ったが、表面の傷も見られず、180日の屋外暴露テストを行ったが異常は見られなかった。
【0021】
【実施例2】半円形を有する19mm巾焼入鋼帯(SK材)を常法で脱脂洗浄乾操を行った後、表に黄色アクリル樹脂塗料(A社アクリルイエロー)裏に白色アクリル樹脂塗料(A社アクリルホワイト)を塗布し焼付塗装を行った。次に紫外線硬化用インキ(B社黒色UVインキ)で目盛を印刷し、同インキ(B社赤色UVインキ)で数字及び標識を印刷した後、紫外線照射炉で固着させた。
【0022】次いで、コロナ処理装置を用い3Aの電圧でコロナ放電をし、高周波誘電加熱で170℃に加熱した上記鋼帯を押出機で溶融したナイロン12で充満する金型(クロスヘッドダイ)の間を通し、引き続き梨地表面の冷却ロールで徐冷し25m/分で成型披覆した。得られた巻尺は厚さ約70μmのナイロン12で全体を覆ったものであった。
【0023】クロスカットテストでセロテープ剥離の結果、99/100と僅かな剥離は見られたが相対的には焼付塗料とナイロンとの密着も良く、巻尺ケースに入れ1,000回に引き出しテストを行ったが、表面の傷も見られず、180日の屋外暴露テストを行ったが異常は見られなかった。
【0024】
【比較例1】半円形を有する19mm巾焼入鋼帯(SK材)を常法で脱脂洗浄乾燥を行った後、白色アクリル樹脂塗料(A社アクリルホワイト)を塗布し焼付塗装を行った。次に紫外線硬化用インキ(B社黒色UVインキ)で目盛を印刷し、同インキ(B社赤色UVインキ)で数字及び標識を印刷した後、紫外線照射炉で固着させた。
【0025】次いで、熱風オーブンで170℃に加熱した上記鋼帯を押出機で溶融したナイロン12で充満する金型(クロスヘッドダイ)の間を通し、引き続き梨地表面の冷却ロールで徐冷し25m/分で成型被覆した。得られた巻尺は厚さ約70μmのナイロン12で全体を覆ったものであった。
【0026】クロスカットテストでセロテープ剥離の結果、47/100の剥離が見られ、塗料や印刷インキと樹脂との密着が悪く、長期使用には耐えがたい巻尺であった。
【0027】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、焼付塗料や印刷インキ表面の極浅い部分を表面処理することにより、焼付塗装や印刷インキと被覆する熱可塑性樹脂の間に相溶性の良好な合成樹脂接着剤を介さなくても密着力の良い巻尺が得られる。
【0028】本発明で得られる巻尺は、焼入鋼帯を熱可塑性樹脂で完全に被覆しているので防錆性にも優れている。また、耐油性・耐溶剤性に優れ、ほとんどの薬品に侵されず、摩擦・摩耗特性に優れ、前述の金属でなる巻尺が具備しなければならない事項を具備した理想的なものである。本発明は、このように優れた性質を有する巻尺を大量に生産できるので生産コストを著しく低減できる方法である。
【出願人】 【識別番号】000161943
【氏名又は名称】株式会社ケイディエス
【出願日】 平成11年6月25日(1999.6.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−4302(P2001−4302A)
【公開日】 平成13年1月12日(2001.1.12)
【出願番号】 特願平11−180077