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【発明の名称】 巻尺とその製造方法
【発明者】 【氏名】藤井忠晴

【氏名】河本誠

【要約】 【課題】焼入鋼帯にアクリル酸系樹脂塗料やエポキシ樹脂塗料を焼付塗装し、表面に目盛及び数字や標識等を印刷して同系統の透明樹脂塗料で被覆した巻尺は、安価であるが耐摩耗性が悪く、塗装皮膜の摩耗で発錆する等により充分な耐久性が得られない。焼入鋼帯にポリアミド樹脂を被覆し、その上に印刷した巻尺は、ポリアミド樹脂の温度や湿度変化によって目盛精度が悪くなる。

【解決手段】隠ぺい性を有する塗料で焼付塗装した焼入鋼帯に目盛及び数字や標識等を印刷し、または、金属面に目盛及び数字や標識等を印刷した巻尺帯を、予め160〜280℃の範囲で加熱した後、溶融した飽和ポリエステル系樹脂で被覆するので、剥離または摩耗による目盛及び数字や標識等の脱落、あるいは高温高湿下での長期使用にも耐え、しかも安価な製品を提供できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 焼入鋼帯に隠ぺい性を有する塗料で塗装し、印刷用インキで印刷した巻尺帯、または、金属面に印刷用インキで印刷した巻尺帯を、飽和ポリエステル系樹脂で被覆したことを特徴とする巻尺。
【請求項2】 焼入鋼帯に隠ぺい性を有する塗料で塗装し、印刷用インキで印刷した巻尺帯、または、金属面に印刷用インキで印刷した巻尺帯を、予め160〜280℃の範囲で加熱した後、溶融した飽和ポリエステル系樹脂で被覆することを特徴とする巻尺の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、焼入鋼帯に目盛及び数字や標識等を印刷した後、樹脂で被覆した巻尺とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】元来、金属製の巻尺は、次の特性を有する必要がある。
(1) 目盛が鮮明で読み取りが容易であること。
(2) 目盛精度が高く、温度や湿度の影響で伸縮が少ないこと。
(3) 耐摩耗性があり、目盛が容易に剥落しないこと。
(4) 充分な防錆性を有すること。
(5) 安価であること。
等である。
【0003】しかるに従来の鋼芯巻尺は、焼入鋼帯にアクリル酸系樹脂塗料やエポキシ樹脂塗料を焼付塗装した表面に目盛及び数字や標識等を印刷し、同系統の透明樹脂塗料を被覆したものが多く、安価であるが耐摩耗性が悪く、塗装被膜の摩耗による発錆する等により充分な使用耐久性が得られない。そこで、耐摩耗性を良くする手段として透明樹脂塗料の硬度を上げると樹脂と鋼帯の剥離やひび割れが生じ、逆に発錆の要因となる等で使用耐久性は改良されていない。
【0004】また、焼入鋼帯にポリアミド樹脂を被覆し、その上に目盛及び数字や標識等を印刷した巻尺は、ポリアミド樹脂の温度や湿度変化による目盛精度が悪くなる場合がある。さらに、焼入鋼帯にアクリル酸系樹脂塗料やエポキシ樹脂塗料を焼付塗装した表面に目盛及び数字や標識等を印刷し、または、金属面に印刷用インキで印刷した鋼帯にポリアミド樹脂で被覆した巻尺は、目盛及び数字や標識等が金属面、または、焼付塗装した樹脂面上にあり、目盛及び数字や標識等の精度や耐摩耗性も良いものであるが、ポリアミド樹脂はポリエステル系樹脂に比較して吸水率の高いものが多く、高温高湿下で長期に使用した場合、樹脂中に含まれる水分の影響で鋼帯の発錆の原因となることがある。
【0005】そこで、鋼帯の発錆を防止する方法として、予め青色酸化被膜(Fe23 )処理やリン酸塩処理等による防錆性を付与する方法や比較的錆にくい芯材としてステンレス材が用いられる。さらに、発錆を押さえる目的で、ポリアミド樹脂の中でも比較的吸水率の低いナイロン11やナイロン12を使用することが多いが、ナイロン6や飽和ポリエステル系樹脂に比較して高価な樹脂でありコストダウンが難しい。さらに、ポリアミド樹脂はぬめり感があり、フィット感を良くするために表面を梨地にする等の工夫が必要であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかるに本発明の巻尺は、合成樹脂の中でも吸水率が低く、しかも安価でありフィット感に優れる飽和ポリエステル系樹脂を用い、焼入鋼帯等に印刷用インキで印刷した巻尺を被覆するので剥離または摩耗による目盛及び数字や標識等の脱落、あるいは高温高湿下での長期使用にも耐え、しかも安価な製品を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本発明の巻尺は、焼入鋼帯に隠ぺい性を有する塗料で塗装し、印刷用インキで印刷した巻尺帯、または、金属面に印刷用インキで印刷した巻尺帯を、飽和ポリエステル系樹脂で被覆したものである。
【0008】また、その製造にあたって、焼入鋼帯に隠ぺい性を有する塗料で塗装し、印刷用インキで印刷した巻尺帯、または、金属面に印刷用インキで印刷した巻尺帯を、予め160〜280℃の範囲で加熱した後、溶融した飽和ポリエステル系樹脂で被覆するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下実施例により説明するが、該実施例により制限されるものではない。金属巻尺の素材である焼入鋼帯の表面を脱脂洗浄を施した後乾燥した鋼帯に、隠ぺい性を有する塗料、例えば白色のアクリル酸系樹脂塗料を常法に従い塗布し焼付塗装を行う。次に、紫外線硬化用印刷インキにより目盛や数字・標識等を印刷し紫外線照射によりインキを硬化する。次いで、熱風オーブンで加熱した鋼帯に押出機で溶融した飽和ポリエステル系樹脂をプレッシャーダイから押出しつつある金型を通し、引き続き冷却ロールで徐冷し、成形被覆する。
【0010】ここで云う隠ぺい性を有する塗料とは、酸化チタン等を含有するアクリル酸系樹脂塗料やエポキシ樹脂塗料・フッ素樹脂塗料等の有機溶剤系の塗料でも良く、同系統の水溶性の塗料でも良い。また、環境問題を考慮すれば紫外線硬化塗料でも良く、色相についても、白色及び黄色を多く使用するが、その範囲を制限するものではない。
【0011】また、印刷用インキについても、塗料と同様で有機溶剤型や紫外線硬化型・熱硬化型・水溶性インキ等があり、色相については、通常黒色及び赤色が多く用いられるが、蛍光色やメタリック色等その範囲を制限するものではない。
【0012】次いで、印刷した焼入鋼帯を160〜280℃の範囲で加熱するが、加熱方法としては高周波誘導加熱でも良く、熱風オーブン等による外部直接加熱の方法でも良い。さらに、印刷した焼入鋼帯の加熱温度は160〜280℃の範囲が良く、望ましくは、180〜260℃の範囲がよい。加熱温度が160℃以下の場合は、塗料及び印刷インキあるいは焼入鋼帯及び印刷インキと被覆する樹脂の密着性が悪く実用に挙せない。また、加熱温度が280℃以上の場合は、被覆する樹脂の熱分解や焼付塗料等の劣化により着色や樹脂の粘度低下が発生し、外観が悪くなる。
【0013】次に、鋼帯を被覆する飽和ポリエステル系樹脂は、一般に知られている結晶性ポリエステル樹脂で良く、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)・ポリ1,4シクロへキシルジメチレンテレフタレート(PCT)・ポリエチレンナフタレート(PEN)等が考えられるが、価格面を考慮すれば、PETあるいは、PBTが望ましい。
【0014】さらに、被覆する飽和ポリエステル系樹脂は、押出機を用いて溶融し、金型により鋼帯と袋状押出流に合流するが、金型の形状は、プレッシャーダイやクロスヘッドダイが考えられる。しかし、鋼帯と樹脂の密着力を上げるためにはプレッシャーダイが望ましい。金型を介して鋼帯の表面に被覆した樹脂は、冷却ロールによって徐冷及び成形を行うが、樹脂の被覆表面は、梨地状の艶消しでも良く、鏡面状の光沢のあるものでも良く、使用用途により選ぶべきである。
【0015】従って、本発明の巻尺は、隠ぺい性のある塗料を焼き付け塗装に目盛・数字・標識等を印刷し、比較的吸水率の低い飽和ポリエステル系樹脂で完全に被覆しているので、目盛は外気の湿度の影響を受けることなく、芯材の鋼帯の熱膨張による伸縮の影響を受けるにすぎず目盛精度の良い巻尺となる。
【0016】さらに、被覆する飽和ポリエステル系樹脂の水分率は、第1表に示す如く、ポリアミド樹脂の水分率に比較して低く、被覆する樹脂の含有水分の影響をほとんど受けず、焼入鋼帯の防錆処理をしなくても発錆を抑えることができる他、寸法安定性にも優れている。
【0017】
【表1】

【0018】本発明で被覆する飽和ポリエステル系樹脂は、他のプラスチックに比較して、流動性も良好で成型性に優れ塗料や金属との密着力も良好であり、ポリアミド樹脂のようなぬめり感もなく、からっとしたフィット感のある巻尺となる。
【0019】また、耐油性・耐溶剤性に優れ、ほとんどの薬品に侵されず、摩擦・摩耗特性に優れ、前述の金属性巻尺が具備しなければならない事項を具備した理想的なものである。
【0020】本発明は、上記の如く優れた金属巻尺を大量に生産できるので生産コストを著しく低減できる方法である。さらに、焼入鋼帯を被覆する樹脂は、吸水率のきわめて低い樹脂であるので精度の高い目盛が温度や湿度の影響をほとんど受けることなく錆にも強い良質の巻尺を多量にしかも安価に供することができる極めて有効な製造方法を提供するものである。
【0021】
【実施例1】13mm巾焼入平鋼帯(SK材)の表面を脱脂一洗浄一乾燥の工程を経て、白色アクリル樹脂塗料(A社アクリルホワイト)を常法に従い、塗布し焼付塗装を行った。次に紫外線硬化用インキ(B社黒色UVインキ)で目盛を印刷し、同系統のインキ(B社赤色UVインキ)で数字及び標識を印刷した後、紫外線照射炉で固着させた。次いで、予め熱風オーブン装置にて230℃に加熱した焼付鋼帯を押出機で溶融したPBTで充満する金型(プレッシャーダイ)の間を通し、引き続き鏡面表面の冷却ロールで徐冷し成型被覆した。得られた巻尺は厚さ約50μmのPBTで全体を覆ったものであった。巻尺ケースに入れ1,000回に引き出しテストを行ったが、表面の傷も見られず、180日の屋外暴露テストを行ったが異常は見られなかった。
【0022】
【実施例2】半円形を有する19mm巾焼入鋼帯(SK材)を常法で脱脂洗浄乾燥を行った後、表に黄色アクリル樹脂塗料(A社アクリルイエロー)裏に白色アクリル樹脂塗料(A社アクリルホワイト)を塗布し焼付塗装を行った。次に紫外線硬化用インキ(B社黒色UVインキ)で目盛を印刷し、同系統のインキ(B社赤色UVインキ)で数字及び標識を印刷した後、紫外線照射炉で固着させた。次いで、予め熱風オーブン装置にて240℃に加熱した焼付鋼帯を押出機で溶融したPETで充満する金型(クロスヘッドダイ)の間を通し、引き続き梨地表面の冷却ロールで徐冷し成型被覆した。得られた巻尺は厚さ約70μmのPETで全体を覆ったものであった。巻尺ケースに入れ1,000回に引き出しテストを行ったが、表面の傷も見られず、180日の屋外暴露テストを行ったが異常は見られなかった。
【0023】
【比較例1】半円形を有する19mm巾焼入鋼帯(SK材)を常法で脱脂洗浄乾燥を行った後、白色アクリル樹脂塗料(A社アクリルホワイト)を塗布し焼付塗装を行った。次に紫外線硬化用インキ(B社黒色UVインキ)で目盛を印刷し、同系統のインキ(B社赤色UVインキ)で数字及び標識を印刷した後、紫外線照射炉で固着させた。次いで、予め熱風オーブン装置にて150℃に加熱した上記鋼帯を押出機で溶融したPETで充満する金型(クロスヘッドダイ)の間を通し、引き続き梨地表面の冷却ロールで徐冷し成型被覆した。得られた巻尺は厚さ約70μmのPETで全体を覆ったものであったが、塗料や印刷インキと樹脂との密着が悪く、使用に耐えがたい巻尺であった。
【0024】
【比較例2】13mm巾焼入平鋼帯(SK材)を常法で脱脂洗浄乾燥を行った後、白色アクリル樹脂塗料(A社アクリルホワイト)を塗布し焼付塗装を行った。次に紫外線硬化用インキ(B社黒色UVインキ)で目盛を印刷し、同系統のインキ(B社赤色UVインキ)で数字及び標識を印刷した後、紫外線照射炉で固着させた。次いで、予め熱風オーブン装置にて280℃に加熱した上記鋼帯を押出機で溶融したPBTで充満する金型(クロスヘッドダイ)の間を通し、引き続き梨地表面の冷却ロールで徐冷し成型被覆した。得られた巻尺は塗料の劣化により、鋼帯と塗料の密着も悪く、使用に耐えがたいものであった。
【0025】
【発明の効果】従って、本発明の巻尺は、比較的吸水率の低い飽和ポリエステル系樹脂で完全に被覆しているので、目盛は外気の湿度の影響を受けることなく、芯材の鋼帯の熱膨張による伸縮の影響を受けるにすぎず目盛精度の良い巻尺となる。さらに、焼入鋼帯の防錆処理をしなくても発錆を抑えることができる他、寸法安定性にも優れている。飽和ポリエステル系樹脂は、成型性に優れ塗料や金属との密着力も良好であり、ポリアミド樹脂のようなぬめり感もなく、からっとしたフィット感のある巻尺となる。また、耐油性・耐溶剤性に優れ、ほとんどの薬品に侵されず、摩擦・摩耗特性に優れ、前述の金属性巻尺が具備しなければならない事項を具備した理想的なものである。
【0026】本発明の製造方法は、上記の如く優れた金属巻尺を大量に生産できるので生産コストを著しく低減できる方法であり、良質の巻尺を安価に供することができる極めて有効な製造方法を提供するものである。
【出願人】 【識別番号】000161943
【氏名又は名称】株式会社ケイディエス
【出願日】 平成11年6月25日(1999.6.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−4301(P2001−4301A)
【公開日】 平成13年1月12日(2001.1.12)
【出願番号】 特願平11−180076