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【発明の名称】 電気信管用発電機構
【発明者】 【氏名】山口 俊輔

【氏名】西口 重雄

【氏名】佐藤 豊

【要約】 【課題】砲弾の外部または内部に装着でき、小さな発射加速度や着弾時の小さな衝撃加速度を検知し、起爆に必要な十分な電気エネルギーを得ることができる、小型軽量で信頼度の高い電気信管の発電機構を提供する。

【解決手段】楔形の凹部を有するケースと、凹部に嵌合する楔形機構と、ケースと楔形機構との嵌合する面に配設され起電力を発生する圧電素子と、発射時の加速度やガス圧または弾着時の加速度による圧力を前記楔形機構に作用させる重錘とで構成し、楔形機構の角度を適切に選定することにより、圧電素子に加わる力を増幅するとともに、圧電素子の大きさ、厚さ、枚数、配列を適切にすることにより電気エネルギーを増大させ、不発弾の発生を防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 楔形の凹部を有するケースと、前記凹部に嵌合する楔形機構と、前記ケースと前記楔形機構との嵌合する面に配設され起電力を発生する圧電素子と、発射時の加速度やガス圧または弾着時の加速度による圧力を前記楔形機構に作用させる重錘とからなることを特徴とする電気信管用発電機構。
【請求項2】 前記圧電素子を、前記ケースと前記楔形機構との嵌合するそれぞれの面に配設することを特徴とする請求項1記載の電気信管用発電機構。
【請求項3】 前記圧電素子を、並列に接続することを特徴とする請求項2記載の電気信管用発電機構。
【請求項4】 前記嵌合する面と前記圧電素子とを、摩擦係数を小さくするため、表面仕上げをなめらかにすることを特徴とする請求項1または2記載の電気信管用発電機構。
【請求項5】 前記表面仕上げを、メッキ処理で行うことを特徴とする請求項4記載の電気信管用発電機構。
【請求項6】 前記圧電素子を、発生エネルギーを増加するため、複数重ねて貼り合わせることを特徴とする請求項1ないし5記載の電気信管用発電機構。
【請求項7】 前記圧電素子を、並列接続かまたは並列、直列の組合せ接続かを選択可能とすることを特徴とする請求項6記載の電気信管用発電機構。
【請求項8】 前記楔形機構および前記重錘とを、一体構造として構成することを特徴とする請求項1ないし8記載の電気信管用発電機構。
【請求項9】 前記楔形の凹部を四角錐形の凹部、前記楔形機構を四角錐形機構とし、前記圧電素子を、前記楔形の凹部と前記四角錐形機構との嵌合する面に配設することを特徴とする請求項1ないし9記載の電気信管用発電機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、砲弾、ロケット弾、爆弾、ミサイルや擲弾等に使用される電気信管用発電機構に係わり、特に発射時や弾着時の加速度またはガス圧を有効に利用し、エネルギー効率を高める電気信管用発電機構に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、砲弾、ロケット弾、爆弾、ミサイルや擲弾等に使用する信管の発電機構は、発射時のガス圧や加速度を利用し圧電体を圧縮し、その時に発生する電気エネルギーをコンデンサに蓄電する方法と、弾薬の先端部に圧電体を装着し、目標に弾着した時の弾着衝撃で圧電体を圧縮し起電力を得る方法とがあった。従来例を図5に基づいて説明する。図5は対戦車砲弾の例で、(a)は発電機構の構造の基本概念示す図である。31はケース部で、32は重錘で、33は圧電素子である。ケース部31と重錘32とは様々な形態をとり得るが、両者は平行面であり、間に圧電素子33を配設し、発射時および弾着時の加速度や発射時のガス圧を圧電素子33に作用させ、機械的歪みを加えることによって発電する形態となっている。(b)は発射時の加速度やガス圧を利用する砲弾の例である。34は発射発電用電源機構であり、発電機構とともに砲弾の内部に装着される。(c)は弾着時の衝撃加速度を利用する砲弾の例である。35は弾着発電用電源機構であり、発電機構は弾頭部に装着される。発射時の加速度を利用する前者の方法は、発射時の加速度が数万Gに達するような野戦砲用信管の発電機構として既に実用化され、使用されている。しかしながら、発射時の加速度が数千Gと小さい場合には、起爆に必要な十分な電力を得ることが難しかった。また、弾着時の加速度を利用する後者の方法は、目標と弾との弾着角度が小さい場合には、弾着時の衝撃によって発生する衝撃力の分力が小さくなるため、起爆に必要な十分な起電力を得ることが難しく、いずれの場合も不発火を起こし易くなるという欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】以上の問題点に鑑み、本発明は砲弾の外部または内部に装着でき、小さな発射加速度や弾着時の小さな衝撃加速度を検知し、起爆に必要な十分な電気エネルギーを得ることができる、小型軽量で信頼度の高い電気信管の発電機構を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上述の課題を解決するため、楔形の凹部を有するケースと、前記凹部に嵌合する楔形機構と、前記ケースと前記楔形機構との嵌合する面に配設され起電力を発生する圧電素子と、発射時の加速度やガス圧または弾着時の加速度による圧力を前記楔形機構に作用させる重錘とから電気信管を構成する。
【0005】また、前記圧電素子を、前記ケースと前記楔形機構との嵌合するそれぞれの面に配設する。
【0006】また、前記圧電素子を、並列に接続する。
【0007】また、前記嵌合する面と前記圧電素子とを、摩擦係数を小さくするために、表面仕上げをなめらかにする。
【0008】また、前記表面仕上げを、メッキ処理で行う。
【0009】また、前記圧電素子を、発生エネルギーを増加するため、複数重ねて貼り合わせる。
【0010】また、前記圧電素子を、並列接続かまたは並列、直列の組合せ接続かを選択可能とする。
【0011】また、前記楔形機構および前記重錘とを、一体構造として構成する。
【0012】また、前記楔形の凹部を四角錐形の凹部、前記楔形機構を四角錐形機構とし、前記圧電素子を、前記楔形の凹部と前記四角錐形機構との嵌合する面に配設する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明による電気信管の発電機構を説明する。図1は本発明による電気信管の発電機構の一実施例を示す図である。図1に基づいて説明する。実施例の電気信管の発電機構1は、楔形の凹部を有するケース2と、該凹部に嵌合する楔形機構3と、ケース2と楔形機構3との嵌合する面に配設され起電力を発生するチタン酸バリウム等で形成される圧電素子4と、発射時の加速度やガス圧または弾着時の減加速度による力を前記楔形機構3に作用させる重錘5とで構成し、楔形機構3の角度を適切に選定することにより、圧電素子4に加わる力を増幅し機械的歪を効率的に発生させるとともに、圧電素子4の大きさ、厚さ、枚数、配列を適切にし、電気エネルギーを増大させることで小さな発射加速度や弾着時の小さな衝撃加速度をも検知し、起爆に必要な十分な電気エネルギーを得ることを可能としている。
【0014】なお、図1では圧電素子4は楔形機構3に装着されているように図示しているが、実施例では圧電素子4はケース2に固着されている。原理的にはどちらも同じ効果がある。6は安全解除ピンであり、楔形機構3と重錘5の荷重が通常時には圧電素子に加わらないようにし、発射直前までには解除されるようにしている。
【0015】次に発射時の動作について説明する。発射時、加速し飛翔しようとするケース2に対し、楔形機構3および重錘5は静止しようとするため、ケース2を強く押す力を生じる。このため、ケース2と楔形機構3との間に配設された圧電素子4は強く押され、機械的歪により起電力を発生する。この時、圧電素子4に加わる力は、楔形機構3および重錘5とを楔形構造とすることで、楔形構造の特性により力が増幅され、圧電素子4を平面に配設した場合に比べて大きな力を発生する。従って、より大きな電気エネルギーが得られるという効果を生じる。この理由については、以下に説明する。なお、弾着時については、力の向きは異なるが同様に説明できるので省略する。
【0016】図2は楔の力を説明するための概念的説明図である。図2はケースと楔形機構とが嵌合状態と同様の状態を示している。例えば、ある物体に対し、力Fを楔に加えると、物体を引き裂こうとする力が働く。逆に物体には引き裂こうとする力に対し、抗力Rが発生する。この引き裂こうとする力と抗力Rとが圧電素子を押す圧力となるが、この関係は一般的に以下の式で表されている。

ここで、F:楔に加える力R:物体を引き裂く力α:楔の頂角の1/2Φ:摩擦角である。(1)式を変形すると、
ここで sinΦ/cosΦは摩擦係数を表すのでμと置き換え、さらにRについて解くと、物体を引き裂く力Rについては、以下の式で表される。

(3)式は楔の角度(α)が小さく、かつ、摩擦係数が小さい方が物体を引き裂く力R、即ち圧電素子4を押す力は大きくなることを示している。
【0017】以上のことから、楔形機構3と圧電素子4との接触面はなめらかな表面仕上げとし、摩擦係数を小さくすることが望ましい。摩擦を軽減するために、いずれもメッキ仕上げとしてもよい。楔の頂角は許容される全体の大きさ、圧電素子4の大きさなどによりなるべく小さな角度を選定するとよい。なお、α=24°、摩擦係数=0.1の場合、約2倍の力を得ることができる。
【0018】次に圧電素子の電気エネルギーについて説明する。面積Aの圧電素子に力Rが作用し、電圧が発生する場合、圧電素子の厚さをtとすれば、発生する電気エネルギーは次式で表される。

ここでCは静電容量であり、この場合、圧電素子自体が持っている静電容量と回路が持つ静電容量とによるコンデンサ容量を示しているが、実際には圧電素子自体の静電容量が大きい。この式から圧電素子は面積が小さく、厚さが厚い程発生エネルギーが大きく、かつ容量が大きい程蓄積できるエネルギーも大きいことも示している。即ち圧電素子自体は面積を小さく、厚さを厚く、かつ全体としての静電容量を大きくするように形成すれば良いことがわかる。ただし、形状には製造上の制約があるため、実際には圧電素子の数を増やすことと積み重ねることが有効であることがわかる。
【0019】図3は圧電素子を複数用いる場合の説明図である。図3(a)は圧電素子が1個の場合であり、(b)は2個の場合である。2個の場合の電極の接続方法として並列に接続する場合と直列にする場合が考えられるが、本発明の実施例では並列接続としている。並列にすることで、例え一方の圧電素子が不良であった場合にもフェイルセーフとしての効果があると同時に発生電圧は1個の場合と同じであるが、電気エネルギーとしては2倍となり、電気的容量も増加し、安定的に電荷を蓄積することが可能となる。図3(c)は圧電素子を2個積み重ねた場合を示している。2個積み重ねたことで、同一面積に加わる力を有効に使うことが可能となる。2個積み重ねた場合の電極の接続は直列に接続する場合と並列に接続する場合が考えられる。図3(c)は直列接続する場合の例であり、電極同志自体を+側とー側とを接触させている。図3(d)は2個積み重ねた圧電素子を並列接続する場合で、2個の圧電素子のそれぞれの電極を+側と+側あるいは−側と−側とを接触させ、引き出したリード線を並列接続するようにすればよい。いずれの場合も得られる電気エネルギーは2倍となるが、直列接続する場合には発生する電圧が2倍となり、並列接続の場合には電圧は同じであるがさらにフェイルセーフの効果が期待できる。以上のように複数の圧電素子を使用する場合には並列に接続する場合と並列と直列を組み合わせて接続する場合が考えられ、目標に応じてそれらを切換えて使用する構成とすることも可能となる。図3(e)は圧電素子を2個積み重ねた場合の発電機構の構成例を示す図である。なお、ケース2、楔形機構3および重錘5とは、圧電素子を押す力を減衰することなく伝達させるため、比重が重く、変形しにくい固い金属材料で構成している。鋼鉄などの金属材料を使用する場合には、前述のようにメッキ処理を行うことで、防錆と摩擦係数とを減らす効果がある。また、ステンレス鋼を使用する場合には防錆の面でのメッキ処理は行わなくてもよい。タングステン鋼やそれらの合金であってもよい。また、楔形機構3および重錘5とは、一体型構造とし、楔形の圧電素子を押す部分と重錘とを兼用する構成とすることも可能である。
【0020】図4は別の実施例を示す図である。図4に基づいて説明する。4は圧電素子であり、前述の例と同じものである。13は四角錐機構である。前述の実施例との差異は楔形機構が四角錐機構となり、圧電素子が四角錐の4面それぞれに配設されていることである。なお、ケースも四角錐型凹部をもつものとなっている(図示せず)。ケースの形状を四角錐の凹部とし、楔形機構を四角錐形機構とし、それぞれ嵌合する面を4面構造とし、4面それぞれに圧電素子を配設することで電気エネルギーのさらなる増加と信頼性の向上をはかることが可能となる。また、この四角錐の構造とすることで、例えば弾着角度が緩く、重錘および四角錐機構に加わる重力が浅い角度を持ち、浅い角度の圧電素子には起電力が不足する場合も、いずれかの面に対しては深い角度となり、起電力がとれるので感度が向上するという効果がある。以上のように圧電素子を配設する面を楔形を基本とする構成としたので、電気エネルギーの増加と同時に楔形の角度も小さく、従って圧電素子を増加しても全体が小さく構成できるという効果もある。なお、本発明の電気信管の発電機構に採用した圧電素子は、通常の保管状態ではエネルギーを保持しておらず、長期間不活性状態を保持でき、信頼性、安全性が高いものであり、安全装置についても、安全ピンによる構造的な安全機構と発射前には回路電流が接続されないようにする電気的な安全機構との2重の安全機構を備えており、感度の上昇に対する安全性を高めている。本発明による電気信管の発電機構は、対戦車砲弾に限らず、砲弾、ロケット弾、爆弾、ミサイルや擲弾等の発射発電用信管および弾着発電用信管のいずれにも応用できるものである。
【0021】
【発明の効果】本発明は、以上説明した形態で実施され、以下に述べる効果を奏する。楔形の凹部を有するケースと、凹部に嵌合する楔形機構と、ケースと楔形機構との嵌合する面に配設され起電力を発生する圧電素子と、発射時の加速度やガス圧または弾着時の加速度による圧力を前記楔形機構に作用させる重錘とで構成した電気信管の発電機構によれば、楔形機構の角度を適切に選定することにより、圧電素子に加わる力を増幅するとともに、圧電素子の大きさ、厚さ、枚数、配列を適切にすることにより電気エネルギーを増大することが可能である。また、複数の圧電素子を組み合わせることで、不発弾の発生を防止し信頼度が向上するメリットがある。さらに、砲弾の外部または内部に装着でき、小さな発射加速度や弾着時の小さな衝撃加速度をも検知し、起爆に必要な十分な電気エネルギーを得ることを可能とする、小型軽量で信頼性の高い電気信管の発電機構を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
【出願日】 平成11年9月20日(1999.9.20)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−91199(P2001−91199A)
【公開日】 平成13年4月6日(2001.4.6)
【出願番号】 特願平11−264934