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【発明の名称】 爆破装置
【発明者】 【氏名】阿波野 照幸

【氏名】飛田 栄治

【氏名】黒木 賢二

【要約】 【課題】実質的に密閉された空間容積を有する容器中に装薬された爆薬により破片を飛散させる装置に於いて、その飛散速度を爆薬のエネルギー効率化を図ることにより高速化させる。

【解決手段】実質的に密閉された容器の中を飛翔する飛翔体と、該飛翔体を飛翔させるための駆動爆薬と、該飛翔体の衝突により起爆される主爆薬とからなり、該容器の一部あるいは破片を高速で飛散させ対象物体を破壊することを特徴とする爆破装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 実質的に密閉された容器の中を飛翔する飛翔体と、該飛翔体を飛翔させるための駆動爆薬と、該飛翔体の衝突により起爆される主爆薬とからなり、該容器の一部あるいは破片を高速で飛散させ対象物体を破壊することを特徴とする爆破装置。
【請求項2】 駆動爆薬と主爆薬の少なくとも一方が、雷管起爆による爆轟速度が少なくとも6,000m/秒の爆薬である請求項1記載の爆破装置。
【請求項3】 駆動爆薬と主爆薬の少なくとも一方は、PBX爆薬である請求項1記載の爆破装置。
【請求項4】 飛翔体の飛翔方向に関して、密閉容器の内部軸長に対する主爆薬の装填厚さが0.2〜0.8である請求項1記載の爆破装置。
【請求項5】 飛翔体が板状の金属であり、密閉容器の内部軸長に対する飛翔体の厚さが0.005〜0.1である請求項1記載の爆破装置。
【請求項6】 容器内における飛翔体の飛翔距離が密閉容器の内部軸長に対して0.01〜0.5である請求項1記載の爆破装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、爆薬に金属飛翔体を高速で衝突させて起爆させることにより、通常の雷管起爆で得られる爆轟速度よりも高い爆轟速度が達成できる過大爆発技術を利用して対象物体の破壊又は破損させるための装置に関するものである。本発明は、一般民需の産業に向けて広範囲の用途を有するのみならず、特に平和目的の防衛のために優れた破壊装置として新しい用途を開拓するものであり、たとえばミサイル弾頭、魚雷や機雷等の水雷、砲弾、或いは成型炸薬弾、自己鍛造弾等へ効果的に利用されるものである。
【0002】
【従来の技術】爆薬の有する爆薬エネルギーをより効率的に利用するために様々な改良手段が提案されてきている。例えば、爆薬による衝撃波を一定の角度で衝突させるマッハ爆発方法、発生した爆轟ガスを収束させる爆轟ガス収束方法、或いは本発明の技術分野である過大爆発方法等である。爆薬に対して金属の飛翔体を高速で衝突させるとその多大な起爆エネルギーによって爆薬は起爆され、そのとき爆薬の爆轟速度は通常の雷管起爆等で得られる爆轟速度よりも高い過大爆発(over-driven detonation)と呼ばれる特殊な爆発形態が生じることが知られている。
【0003】飛翔板の運動エネルギーによって過大爆発が生じる作用は必ずしも明らかではないが、通常の爆轟反応における先行衝撃波よりも過大な衝撃波が生じ未反応物質の密度を上昇させる結果として過大爆発に至るものと考えられる。通常、爆薬は爆轟理論のC−J(チャップマン−ジュゲー)状態による定常状態で進行するのであるが、この過大爆発の現象は、多大な起爆エネルギーによってC−J状態より高い反応が生じるものと考えられるのである。また、この過大爆発の現象は過渡的な現象であるために、ある距離反応が進むと最終的にC−J状態で安定する。この特殊な爆発形態による超高圧発生技術は、ダイヤモンドの合成方法、高圧窒化ホウ素の合成或いは種々物質の超高圧下における物性解明等において用いられてきており、また得られる爆轟速度も10,000m/秒〜15,000m/秒に達したことがあると報告されている(「化学総説」No.22,p.31-46 1979)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、かかる過大爆発の現象を対象物体を効果的に破壊する目的のために利用した例はない。また、過大爆発現象を利用した装置の構成条件について装置の寸法条件或いは使用する爆薬の量的条件等に関して、反復可能に実施できる程度に解明し、利用方法を開拓した例は見当たらない。本発明は、特に平和目的の防衛のために効果的に利用できる程度に過大爆発現象を利用した装置について構成条件を研究解明して提供するものである。しかし、本発明が、民需の種々の分野においても利用可能であることはいうまでもない。
【0005】たとえば、従来のミサイル弾頭或いは砲弾等は、ある一定の且つ密閉された空間に炸薬と呼ばれる爆薬が装薬されており、その爆薬を爆轟させることにより容器を破片化して周囲に飛散させるものである。爆薬の爆轟速度は、通常6,000m/秒〜8,000m/秒の程度である。本発明は、過大爆発現象を利用して9,000m/秒以上の爆轟速度を実現する装置を得ることを目的とするものである。本発明はまた、より好ましい条件において10,000m/秒以上の爆轟速度を実現する技術を提供するものである。
【0006】過大爆発現象、即ち通常起爆の爆轟速度より高い爆轟速度現象を生じさせるためには、金属飛翔板を飛翔させるための駆動爆薬が必要となり、しかも、主爆薬に対して理論的にC−J状態以上の圧力での爆発が起るように飛翔板をある一定速度以上で飛翔させてやる必要がある。反面、前述した砲弾等は実質的に爆薬を装薬するための空間容積が限定されているために、駆動薬量の分だけ主爆薬が少なくなる。そのように、過大爆発を起こさせることには種々の困難が伴うものである。
【0007】特に問題として、飛翔体が飛翔する爆轟方向に対して垂直な側面方向の破片速度は比較的容易に速くすることができるが、飛翔の進行方向すなわち前面方向の破片速度を高速化させるためには更に困難が伴う。本発明者等は、雷管起爆による爆轟速度として異なった値を有する種々の炸薬、飛翔板の材質・厚さ、又は飛翔板を飛翔させるための駆動爆薬の組成・量を変えて、過大爆発現象によって得られる爆轟速度の計測実験を重ね、本発明をなすに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、実質的に密閉された容器の中を飛翔する飛翔体と、該飛翔体を飛翔させるための駆動爆薬と、該飛翔体の衝突により起爆される主爆薬とからなり、該容器の一部あるいは破片を高速で飛散させ対象物体を破壊することを特徴とする爆破装置である。爆薬は、雷管起爆による爆轟速度が少なくとも6,000m/秒のものであることが必要である。爆薬は、高威力化のために雷管起爆による爆轟速度が少なくとも7,000m/秒のものであることが望ましい。爆薬は、雷管起爆による爆轟速度が少なくとも8,000m/秒のものであることが更に望ましい。
【0009】主爆薬がトリニトロトルエン等の場合には、より高性能な爆薬であるヘキソーゲン等を駆動爆薬として用いる等、主爆薬の組成によっては適宜、より高性能な爆薬を駆動爆薬として用いることが好ましい。すなわち駆動爆薬と主爆薬の少なくとも一方、望ましくは両方は、高性能爆薬と言われるPBX(Plastic BondedExplosive)爆薬であることが好ましく、具体的にはオクトーゲン、ヘキソーゲン、ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタンの少なくとも一つを有するPBX爆薬が好ましい。また、PBX爆薬のバインダーとしては、ポリエチレングリコール、ポロプロピレングリコール、末端水酸基ポリブタジエン、末端カルボキシル基ポリブタジエン、グリシジルアジドポリマ、3,3−ビス(アジドメチル)オキセタンとエーテルの共重合物の少なくとも一つを有するものが好ましい。更に、爆発生成物質におけるガス成分を増加させるために、過塩素酸アンモニウム、硝酸アンモニウムを加えることが望ましい。
【0010】飛翔体の飛翔方向に関して、密閉容器の内部軸長に対する主爆薬の装填厚さは0.2〜0.8であることが望ましい。主爆薬としてある程度の量は必要であるが、容器中の限られた空間の中に過多の主爆薬が装填されると金属飛翔体に駆動衝突を行わせる空間が限られることになる。飛翔体の飛翔方向に関して、密閉容器の内部軸長に対する主爆薬の装填厚さは0.4〜0.6であることが更に望ましい。容器内で金属飛翔板を飛翔させる場合、得られる飛翔速度は使用する駆動爆薬の重量と飛翔板の重量比に比例して高くなり、ある一定の比率を超えると一定の速度になることが実験的に確認された。従って、駆動爆薬に用いる量を最小限に抑え、用いる飛翔板として密度及び板厚、更には衝撃インピーダンス等を考慮した材料を適宜選択することが好ましい。
【0011】飛翔体は金属のものであることが望ましい。また、金属飛翔体は板状であり、密閉容器の内部軸長に対する飛翔体の厚さは0.005〜0.1であることが望ましい。飛翔体の質量が小さすぎるときは十分な衝突効果が得られず、また同質量が大き過ぎるときは容器内の限られた空間において十分な加速が得られないからである。密閉容器の内部軸長に対する飛翔体の厚さは0.01〜0.05であることが望ましい。爆薬によって飛翔する飛翔板は、加速領域、定速領域及び減速領域と距離によって、その飛翔速度が変わる。従って、飛翔板と主爆薬の距離、即ち最も高い速度が得られるように飛翔距離を最適化することが好ましい。
【0012】具体的には、容器内における金属飛翔体の飛翔距離は密閉容器の内部軸長に対して0.01〜0.5であることが望ましい。飛翔距離は、ある程度必要であるが、限られた空間における飛翔距離が長すぎると容器自体を長くせざるを得ず、破片高速化装置として長大なものとなる。容器内における金属飛翔体の飛翔距離は、密閉容器の内部軸長に対して0.02〜0.4であることが更に望ましい。容器内における飛翔体の飛翔距離は密閉容器の内部軸長に対して0.05〜0.2であることが更に望ましい。かくして本発明は、防衛用爆破装置を用途とする装置としても提供可能なものとなるのである。
【0013】本発明について、その一実施態様である図1及び比較としての図2を用いて更に詳細に説明する。先ず図2は、前方面容器器壁5、側面容器器壁6、上面容器器壁7からなる密閉された容器中に薬径d、薬厚t0 の爆薬10を装填し、電気雷管によって起爆される従来の破片高速化装置を示す。該装置を本発明に従って、過大爆発を利用して破片高速化装置にしたのが図1である。駆動爆薬1、駆動爆薬によって飛翔距離4を飛翔し、衝突エネルギーにより薬厚t1 の主爆薬2を起爆するための飛翔板3、駆動爆薬を起爆するための起爆装置8が前方面容器器壁5、側面容器器壁6、上面容器器壁7から構成される容器に密閉されている。
【0014】主爆薬2を過大爆発させるための飛翔板3は、設定された駆動爆薬2の薬量と爆発の性能条件を考慮して密度、引張強度・靱性・耐熱性等の機械的性質などの観点から、アルミニウム、銅、鋼、タンタル、タングステン、モリブデン等の全ての金属材料の少なくとも一つが選択される。前方面容器器壁5、側面容器器壁6、上面容器器壁7から構成される容器材質は鋼材を主に用いるが、目的によっては他の金属材料を用いても良い。また、前方面容器器壁5及び側面容器器壁6が一体で成型された容器でも良い。
【0015】また、特に前方向に指向性を持たせる場合においては、銅材、タンタルを用い、形状も円盤状、円錐状、半球面状を用いても良い。主爆薬2の上面にはバッファーとしての金属板9を設けることは優れた設計である。該金属板9は、2つの目的を持って使用される。一つは飛翔板3が主爆薬2に衝突した後、生じる希薄な衝撃波が主爆薬2に進入することを時間的に遅らせる為であり、その結果として、過大爆発の継続距離が大きくなる。このことは、飛翔板の3の板厚が薄い時ほど効果として期待される。二つめは主爆薬2の外力に対する変形を防止する働きである。この金属板9に用いられる材料は、衝撃波の特性を考慮して飛翔板3と同一材料或いはより密度の大きいものが好ましい。駆動爆薬2の起爆は、通常、ブースターを介在して電気雷管8等により点起爆されるが、平面波発生装置を用いて起爆しても良い。この平面起爆波発生装置とは、異なった爆轟速度を有する2種類の爆薬から構成されるもので構成されてよく、飛翔板3に到達する駆動爆薬1爆轟波を平面且つ同時にするためのものである。以下、実施例などに基づいて、本発明を更に具体的に説明する。
【0016】
【実施例1】外径72mm、高さ119mm、肉厚3mmから成る鋼製の密閉容器中に、ヘキソーゲン78重量%から成る駆動爆薬を厚さ40mm、飛翔板として厚さ3mmの銅板、飛翔距離10mm、ヘキソーゲン78重量%から成る主爆薬を厚さ60mmにして破片高速化装置を製作し、ペンスリット主成分のブースターを装着した電気雷管6号により起爆した。駆動爆薬及び主爆薬の爆轟速度を光ファイバー法により間隔30mmで測定し、前面方向の破片速度をX線撮像によって求めた。その結果、駆動爆薬の爆轟速度は7,390m/秒、主爆薬の爆轟速度は11,200m/秒であり、前面方向の破片速度は2,810m/秒であった。
【0017】
【実施例2】外径72mm、高さ119mm、肉厚3mmから成る鋼製の密閉容器中に、ヘキソーゲン78重量%から成る駆動爆薬を厚さ50mm、飛翔板として厚さ3mmの銅板、飛翔距離10mm、ヘキソーゲン78重量%から成る主爆薬を厚さ50mmにして破片高速化装置を製作し、ペンスリット主成分のブースターを装着した電気雷管6号により起爆した。駆動爆薬及び主爆薬の爆轟速度を光ファイバー法により間隔30mmで測定し、前面方向の破片速度をX線撮像によって求めた。その結果、駆動爆薬の爆轟速度は7,440m/秒、主爆薬の爆轟速度は10,800m/秒であり、前面方向の破片速度は2,390m/秒であった。
【0018】
【実施例3】外径33mm、高さ102mm、肉厚2mmから成る銅製の密閉容器中に、ヘキソーゲン78重量%から成る駆動爆薬を厚さ30mm、飛翔板として厚さ2mmの銅板、飛翔距離20mm、ヘキソーゲン78重量%から成る主爆薬を厚さ50mmにした本願発明の破片高速化装置と、比較として外径33mm、高さ102mm、肉厚2mmから成る銅製の密閉容器中にヘキソーゲン78重量%から成る爆薬を装薬した装置を作製した。側面方向の破片速度を計測する変わりに、水中に於ける衝撃波速度をストリークカメラにより測定した。その結果、本願発明の破片高速化装置による水中衝撃波速度は距離5mmの時点で3,600m/秒、比較装置による衝撃波速度は3,250m/秒であった。
【0019】
【比較例1】外径72mm、高さ119mm、肉厚3mmから成る鋼製の密閉容器中に、ヘキソーゲン78重量%から成る爆薬を装薬した装置を製作し、ペンスリット主成分のブースターを装着した電気雷管6号により起爆した。爆薬の爆轟速度を光ファイバー法により間隔30mmで測定し、前面方向の破片速度をX線撮像によって求めた。その結果、爆薬の爆轟速度は7,430m/秒であり、前面方向の破片速度は2,451m/秒であった。
【0020】
【発明の効果】本願発明の破片高速化装置によれば、実質的に密閉され、且つ限定された空間容積において装薬される爆薬のエネルギーをより効率的に利用することが可能である。
【出願人】 【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
【出願日】 平成12年1月13日(2000.1.13)
【代理人】 【識別番号】100103436
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 英夫 (外3名)
【公開番号】 特開2001−194093(P2001−194093A)
【公開日】 平成13年7月17日(2001.7.17)
【出願番号】 特願2000−4472(P2000−4472)