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【発明の名称】 誘導飛しょう体
【発明者】 【氏名】広嶋 文哉

【要約】 【課題】飛行中の航空機から後方へ向けて飛しょうさせる誘導飛しょう体では、機体後方に飛しょうしている間は迎え角を増大させる頭上げのモーメントが発生し空力的に不安定な状態が生じて、機体の姿勢安定の確保が困難になるという問題があった。

【解決手段】複数の平面翼が交差して格子形状を成す格子翼を機体後部に配する。母機から分離された誘導飛しょう体が機体後方へ飛しょうする間は、格子翼を機体軸に対して垂直になる向きに格子翼の舵角範囲を固定して揚力を小さくする。飛しょう速度が零近傍になった時に格子翼の舵角範囲を90度回転させ、その後誘導飛しょう体が機体前方へ向かって飛しょうする時は格子翼に大きな揚力を発生させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 飛行中の航空機から分離され、前部を当該航空機の後方へ向けて飛しょうさせる誘導飛しょう体において、前記誘導飛しょう体の機体前部に配設された安定翼と、前記機体の後部に配設され、複数の平面翼が交差して格子形状を成す格子翼と、前記機体の推力を偏向させる推力偏向手段と、機体の飛しょう速度が零近傍であることを検知する検知手段と、前記検知手段での検知に応じて前記格子翼の舵角範囲を切り替えて操舵する操舵翼駆動装置とを具備したことを特徴とする誘導飛しょう体。
【請求項2】 機体後部に配設され、母機搭載時には前記格子翼の抵抗を低減し、発射直後には機体軸まわりに回転して前記格子翼の操舵による揚力の偏向を妨げることを回避するフィンとを具備したことを特徴とする請求項1記載の誘導飛しょう体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ヘリコプター、飛行機などの航空機に搭載され、当該航空機の後方に位置する他の航空機、誘導弾などの目標体に向けて発射もしくは投下されて、後方へ向けて飛しょう可能な誘導飛しょう体に関するものであり、さらに詳しく述べると、前記誘導飛しょう体が気流を機体の後方から受ける誘導の初期段階と、気流を機体の前方から受ける誘導の中期および後期段階において、機体の姿勢を安定に保つ誘導飛しょう体を提案するものである。
【0002】
【従来の技術】航空機(以下母機とする)に搭載され、後方発射可能な誘導飛しょう体に関する従来の技術を図を用いて説明する。図7は母機から母機後方にある所定の目標体に向けて発射される従来の誘導飛しょう体の概念図である。図において1は後方発射可能な誘導飛しょう体、2は母機、3は母機2の後方で脅威となる航空機、誘導弾などの目標体である。誘導飛しょう体1は、その機体前方が飛行中の母機2の後方(図の右方向)を向くようにして母機2に搭載される。母機2の後方に目標体3が存在した場合、誘導飛しょう体1は、母機2から発射指令が与えられ、母機2から分離されて目標体3へ向けて飛しょうする。
【0003】図8(a)は従来の誘導飛しょう体1の構成要素を示す図であり、図において、4は母機2に搭載される誘導飛しょう体1の機体、5は機体4の前部(図の右側)に配置され、その前部に電波センサ、光波センサなどのシーカ部6を有する誘導装置、7は機体4の前部に装着されたドーム、8は機体4の後部(図の左側)に固定された安定翼である後翼、9は機体4に回動可能に支持された操舵翼、10は前部に固定された前翼、11は誘導飛しょう体1に推進力を発生する推進装置、12は推進装置11を覆うように機体4の後部に装着されたカバーを示す。また、図8(b)は推進装置11の内部構成を示すものであり、図において、13は推進装置11の内部に設けられ機体4の後方向(図の左方向)に燃焼ガスを噴出して推進力を発生するノズル、14は機体4の推力を偏向する推力偏向装置、15はベーンを示す。
【0004】このような誘導飛しょう体1の各構成要素は、次のように作用する。後翼8、操舵翼9、前翼10は、それぞれ機体4の胴体外周を機軸方向から見て4等分する各位置に1枚づつ計4枚が各一組となって装着され、後翼8、操舵翼9、および前翼10と推力偏向装置14によって、誘導飛しょう体1の姿勢安定が確保される。ドーム7は、電波や光波を透過する素材で形成され、誘導装置5のシーカ部6を保護するとともに、機体4の空気抵抗を低減する作用を持つ。また誘導飛しょう体1は、発射してからしばらくは推進装置11を先頭としてドーム7から推進装置11に向かう方向(機体後方)に飛しょうし、推進装置11が点火されるまでの間はカバー12が装着される。また、推力偏向装置14は、ノズル13の噴出口の周辺にベーン15を設けて構成されるものであり、後述する推力偏向角指令に応じてベーン15を所望の位置に駆動し、ノズル13から噴出される推進薬の燃焼ガスを偏向させることによって、機体4に所望の回転モーメントを発生させることができる。
【0005】図9は従来の誘導飛しょう体1を目標体3へ誘導するとともに、機体の姿勢を安定させる制御系の構成を示す図である。図において、16は慣性装置、17は航法計算回路、18はゲイン計算回路、19は舵角および推力偏向角指令計算回路、20は操舵翼9を回動させる操舵翼駆動装置である。
【0006】次に、この制御系の動作について説明する。誘導飛しょう体1は、発射時に母機2から目標体3の位置、速度などを示す目標情報が与えられる。発射後は、その目標情報に基づいて誘導装置5が目標体3の捜索を行い、シーカ部6が目標体3を補足してその追尾が行われる。また誘導装置5は、誘導飛しょう体1と目標体3との間に成される目視線角度の変化率を推定し、誘導飛しょう体1の目標体3への誘導方向や目標速度を示す目標誘導信号を発生する。慣性装置16では、その内部に有する慣性センサ部で機体4の角速度と加速度が計測され、その計測結果が慣性情報信号として航法計算回路17と、舵角および推力偏向角指令計算回路19に出力される。航法計算回路17では、誘導装置5からの目標誘導信号と慣性装置16からの慣性情報信号に基づいて、誘導に必要な加速度指令および角速度指令が計算される。また、誘導飛しょう体1が母機2から発射される時に、慣性装置16は、母機2から誘導飛しょう体1の初期高度と初期速度が与えられる。慣性装置16では、この初期高度および速度と、発射後に内部の慣性センサ部で計測される機体4の角速度および加速度に基づいて内部に有する計算部で誘導飛しょう体1の高度と速度が計算される。さらにゲイン計算回路18では、慣性装置16で計算された高度と速度に応じてオートパイロット系ゲインが計算される。舵角および推力偏向角指令計算回路19では、航法計算回路17から与えられる加速度指令と慣性装置16から与えられる加速度の計測データとから加速度偏差を算出し、この偏差にゲイン計算回路18で計算されたオートパイロット系ゲインの乗数を掛け合わせ、またこの掛け合わせた結果と慣性装置16から与えられる角速度に基づいて、誘導飛しょう体1が目標体3に会合するまでの所定の航法を実現する舵角指令および推力偏向角指令を計算する。この舵角指令は操舵翼駆動装置20に出力され、操舵翼9が操舵されて誘導飛しょう体1において所要の舵角が取られる。また、舵角および推力偏向角指令計算回路19からの推力偏向角指令は、推力偏向装置14に入力され、所要の方向に誘導飛しょう体1の推力が偏向される。
【0007】次に、従来の誘導飛しょう体1が、母機2から発射されてから目標体3に会合するまでの誘導過程について説明する。
【0008】図10は、母機2から発射され後方に向けて飛しょうする誘導飛しょう体1の挙動を示す図である。図において、21は、誘導飛しょう体1が例えば速度V0で飛行中の母機2から後方に向けて発射され、機体後方に向かう速度Vbで飛しょうしている段階、22は推進装置11が点火され、誘導飛しょう体1が機体後方を向いた速度Vcで飛しょうしている段階、23は誘導飛しょう体1が推進装置11からドーム7に向かう方向(機体前方)の速度Vaで飛しょうしている段階を示す。
【0009】母機2に対して脅威となる目標体3の存在が確認された後、母機2から発射された誘導飛しょう体1は、推進装置11が点火される前の段階21のように、母機2の速度V0とほぼ同じ機体後方に向かう飛しょう速度Vbで飛しょうする。その後、推進装置11が点火されると、初期には機体後方に向かう速度Vcを持つ段階22を経過する。その後誘導飛しょう体1は加速され、最終的に機体前方に向かう飛しょう速度Vaを持つ段階23に至って目標体3まで誘導される。このような過程を経る間に、誘導飛しょう体1は空力的に不安定な速度領域である機体後方に向かう速度Vcを持つ段階22を経過し、さらに機体速度がゼロ近傍となる速度領域も経過していく。
【0010】図11は従来の誘導飛しょう体1に作用する空力的なモーメントを示す図であり、図11(a)は機体前方へ飛しょうする場合、図11(b)は機体後方へ飛しょうする場合をそれぞれ示す。図11(a)において、Vaは機体前方へ飛しょうする段階23の誘導飛しょう体1の速度ベクトル、αは機体周囲の気流に対する迎え角、L1は前翼10の揚力、Xc1は重心CG1から前翼10の空力中心までの距離、L2は後翼8の揚力、Xc2は重心CG1から後翼8の空力中心までの距離、Maは機体前方へ飛しょうする段階23の場合の重心CG1周りの回転モーメント、Vairは気流の速度ベクトル(対気速度)を示す。
【0011】誘導飛しょう体1が機体前方へ向かう速度Vaを持つ段階23においては、空力的な静安定性を確保するために、例えば迎え角αの場合に数1に示すように、前翼10の揚力L1、重心CG1からの距離Xc1、後翼8の揚力L2および重心CG1からの距離Xc2との関係から、ドーム7側で迎え角αを低減させる頭下げのモーメントMaが発生するように構成する。(モーメントは頭上げ正とする。)
【0012】
【数1】

【0013】すなわち、機体周囲の気流の乱れによって気流の方向が変化するなどの外乱が作用して迎え角αが発生しても、それを打ち消すモーメントMaが生じて機体4の気流に対する静安定が確保できる。なお、この時誘導飛しょう体1の空力中心は重心CG1よりも気流に対して下流側にある。
【0014】一方、母機2から発射直後には、誘導飛しょう体1は機体後方に向かう速度を持つ段階21になる。ここで誘導飛しょう体1が迎え角αをとる時に、操舵翼9および推力偏向装置14が作動しない状態を仮定すると、段階23における誘導飛しょう体1の場合と同様に、図11(b)に示すように前翼10の揚力L1、後翼8の揚力L2が発生する。その場合に重心位置がほぼ同一とすると、段階23の場合と同様に揚力によってモーメントが発生するが、ここでのモーメントMbは数2に示すようになるため、推進装置11側で頭上げのモーメントとなり迎え角αを更に増大させる方向に作用する。
【0015】
【数2】

【0016】その結果、前翼10と後翼8のみでは気流に対する姿勢の維持が困難になり、絶えず推力偏向装置14や操舵翼9を用いて迎え角αによって生ずるモーメントを打ち消すモーメントを常に発生させる必要がある。なお、この時の誘導飛しょう体1の空力中心は重心CG1よりも気流に対して上流側にある。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】誘導飛しょう体が母機から後方に向けて発射された場合、その飛しょう過程において飛しょう速度が機体後方(負の速度)から前方(正の速度)に変化する。このとき、最初の従来例で示した図8のような推力偏向装置を用いた誘導飛しょう体1においては、次のような問題があった。
【0018】誘導飛しょう体1では機体後方に飛しょうしている間は前翼10と後翼8にそれぞれ作用する揚力のバランスにより、迎え角αを増大させる頭上げのモーメントが発生し空力的に不安定な状態が生じて、機体4の姿勢安定の確保が困難になるという問題があった。
【0019】また、機体4の姿勢安定を確保するために、推力偏向装置14および操舵翼9を用いて推力や揚力を偏向させ、この頭上げのモーメントを打ち消す方向にモーメントを発生させるような機体4の姿勢制御を行ったとしても、その制御力を上回る外乱が加わった場合には制御不能となるという問題があった。
【0020】また、推力偏向装置14は機体4が母機2から発射された直後のように推進装置11が作動しない場合には推力を偏向させることが不可能であるため、この頭上げのモーメントを打ち消すモーメントを発生させることは不可能であり、なんらかの原因で推進装置11が作動しない場合には制御不能となるという問題があった。
【0021】また、内部に推力偏向装置14を備えた推進装置11においては、機体後方に向かう速度で飛しょう中に頭上げのモーメントによって常に姿勢の不安定な状態が生じるので、機軸方向の推力に加えて、推力偏向のために機軸に垂直な方向の推力を絶えず発生させて機体4の姿勢を常に維持する必要がある。このため、機体4に大容量の推進薬を搭載するとともに、高出力のノズルを実装する必要があり、機体4が大型化するという問題があった。また誘導飛しょう体1を搭載するための航空機は、一般に搭載物の質量や大きさに制限があるため、このような機体4の大型化によって搭載母機にも問題が生じる可能性があった。
【0022】この発明は係る課題を解決するためになされたものであり、推力偏向装置のみ、あるいは空力特性変更装置のみを利用した従来のものと比較して、機体後方から前方に向かうまでの全ての速度領域で、より安定な飛しょうを確保できる誘導飛しょう体を得ることを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】第1の発明による誘導飛しょう体は、飛行中の航空機から分離され、前部を当該航空機の後方へ向けて飛しょうさせる誘導飛しょう体において、前記誘導飛しょう体の機体前部に配設された安定翼と、前記機体の後部に配設され、複数の平面翼が交差して格子形状を成す格子翼と、前記機体の推力を偏向させる推力偏向手段と、機体の飛しょう速度が零近傍であることを検知する検知手段と、前記検知手段での検知に応じて前記格子翼の舵角範囲を切り替えて操舵する操舵翼駆動装置とを具備したものである。
【0024】第2の発明による誘導飛しょう体は、第1の発明において、機体後部に配設され、母機搭載時には前記格子翼の抵抗を低減し、発射直後には機体軸まわりに回転して前記格子翼の操舵による揚力の偏向を妨げることを回避するフィンとを具備したものである。
【0025】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1、図2、図3、図4および図5を用いてこの発明に係る実施の形態1について説明する。図1はこの実施形態における誘導飛しょう体24の制御系の構成を示す図であり、図において25は格子翼回転判定回路を示し、その他は図13の従来例と同じものである。また図2はこの実施の形態における誘導飛しょう体24の構成要素を示す図であり、図2(a)は機体後方へ飛しょうする場合、図2(b)は機体前方へ飛しょうする場合をそれぞれ示す。図において、26は機体4の後部(図の左側)に設けられ、複数の平面翼が交差して格子形状を成す格子翼を示す。格子翼26は機体4の胴体外周を機軸方向から見て4等分する各位置に1枚づつ計4枚が一組となって装着される。また、図3は母機2から発射もしくは投下された誘導飛しょう体24の挙動を示す図である。
【0026】次に動作について説明する。図3において、誘導飛しょう体24が速度V0(例えば超音速領域)で飛行する母機2に搭載されいる段階を27とする。母機2から発射もしくは投下された誘導飛しょう体24は、段階28に示すように、分離直後には速度Vbで母機2の進行方向に向かって飛しょうする。この時、図2(a)に示すように誘導飛しょう体24は、機体4のドーム7を後方にし、機体4に保持されたカバー12を先頭にして機体後方に飛しょうする。この段階28では、機体4の空気抵抗の働きにより母機2と同じ方向に向かう速度Vbは減速される。この時カバー12を備えることによって推進装置11内部への気流の流入を防ぐことができる。
【0027】その後、母機2より分離されてからtr1秒後には、図3の段階29に示すように推進装置11が点火されるとともに、カバー12の保持部材が外れてカバー12が機体後方に放出される段階に至る。この段階29では、推進装置11の推進力と機体4の空気抵抗の働きにより、母機2と同じ方向、すなわち機体後方に向かう速度Vc(たとえば亜音速領域)は減速され、母機2から分離されてからtw1秒後には、母機2の進行方向とは逆の方向、すなわち機体前方に向かう速度Vaを持つようになり、段階30に示す飛しょう状態に至る。また、誘導飛しょう体24は、母機2から分離される時に母機2より点火時間tr1を設定するための情報が与えられ、推進装置11において予め点火時間tr1が設定される。格子翼26は段階29までは操舵翼駆動装置20により図2(a)中のアからイの範囲に舵角範囲を固定されており、段階30においては図2(b)中のウからエの範囲に舵角範囲を固定されている。
【0028】ここで、図4により格子翼26の空力特性について説明する。図4(a)は平板翼の空力特性の様子を示している。31は迎角ゼロ付近の状態、32は迎角90度付近の状態を示す。平板翼は迎角が小さいときは抵抗D5に比べ揚力L5が大きいが、迎角が大きくなると、失速して揚力L6は抵抗D6に比べ非常に小さくなる。一方、格子翼26は図4(b)に示すように、図4(a)の平板翼が平行に列を成したものである。33は迎角ゼロ付近の状態、34は迎角90度付近の状態を示す。状態33は図2(b)中の舵角範囲がウからエの状態に相当し、状態34は図2(a)中のアからイの状態に相当する。状態33では各々の平板翼は揚力L5を発生するが、状態34では各々の平板翼は列を成しているため失速しにくく、単独の平板翼の揚力L6より大きな揚力L7が発生する。したがって、格子翼26は単独の平板翼では失速してしまう高迎角であっても揚力を確保することができる。ただし、状態34で発生する揚力L7は状態33で発生する揚力L5に比べて小さい。
【0029】次に、図1により格子翼26の回転制御とその原理を説明する。機体4の速度が減速されていく過渡の段階29、30では、飛しょう速度の変化により機体4の制御に必要な回路のゲインなどが大幅に変化する。そこで図9に示した従来の誘導飛しょう体1と同様に、誘導装置5では目標追尾信号に基づいて目標誘導信号が計算される。慣性装置16では、その慣性センサ部で機体4の角速度と加速度が計測されて慣性装置16と舵角および推力偏向角指令計算回路19に出力されるとともに、その計算部で飛しょう高度と速度などが計算されてゲイン計算回路18に出力され、ゲイン計算回路18においてこの高度と速度に応じたオートパイロット系ゲインの乗数が計算される。また、航法計算回路17では、誘導装置5からの目標誘導信号と慣性装置16からの角速度と加速度に基づいて加速度指令あるいは角速度指令が計算される。舵角および推力偏向角指令計算回路19では、航法計算回路17からの角速度指令、加速度指令と、慣性装置16からの角速度、加速度の観測データと、ゲイン計算回路18からの乗数によって、所定の航法を実現する舵角および推力偏向角指令が計算され、その舵角指令を操舵翼駆動装置20に出力し、またその推力偏向角指令を推力偏向装置14に出力する。この出力された舵角指令、および推力偏向角指令に基づいて、操舵翼駆動装置20および推力偏向装置14は機体4に対して時々刻々と所要の姿勢制御を行う。例えば図2(a)において、カバー12の先端を上げる方向に誘導飛しょう体24の機体4を傾ける舵角指令が出力された場合は、操舵翼駆動装置20が格子翼26を図に向かって左回り(図の矢印アの方向)に回し、またカバー12の先端を下げる方向に誘導飛しょう体24の機体4を傾ける舵角指令が出力された場合は、操舵翼駆動装置20が格子翼26を図に向かって右回り(図の矢印イの方向)に回すようにして操舵が行なれる。また、例えば図2(b)において、ドーム7の先端を上げる方向に誘導飛しょう体24の機体4を傾ける舵角指令が出力された場合は、操舵翼駆動装置20が格子翼26を図に向かって右回り(図の矢印エの方向)に回し、またカバー12の先端を下げる方向に誘導飛しょう体24の機体4を傾ける舵角指令が出力された場合は、操舵翼駆動装置20が格子翼26を図に向かって左回り(図の矢印ウの方向)に回すようにして操舵が行なれる。さらに、ドーム7の先端を上げる方向に誘導飛しょう体24の機体4を傾ける推力偏向角指令が出力された場合は、推力偏向装置14が図の下方向(図の矢印カの方向)に推力を与え、ドーム7の先端を下げる方向に誘導飛しょう体24の機体4を傾ける推力偏向角指令が出力された場合は、推力偏向装置14が図の上方向(図の矢印オの方向)に推力を与えるようにして推力偏向が行なわれる。
【0030】さらに、この実施の形態においては、慣性装置16で観測された飛しょう速度が格子翼回転判定回路25へ与えられる。格子翼回転判定回路25において、この観測された飛しょう速度が、速度零近傍の所定の速度基準値(例えば時速50km)を下回り、機体後方から前方へと飛しょう速度が逆転することが検知されると、舵角回転指令が発生される。操舵翼駆動装置20では、格子翼回転判定回路25から舵角回転指令を与えられて格子翼26を90度回転動作させる。その結果図4(b)に示すように、格子翼26の発生する揚力が大きくなり、飛しょう経路における機体4の静安定性が確保される。
【0031】ここで飛しょう速度と静安定との関係を詳細に説明する。図5(a)は格子翼26の舵角範囲がウからエの範囲に制限されている時に誘導飛しょう体24に作用する空力的なモーメントを示し、図5(b)は格子翼26の舵角範囲がアからイの範囲に制限されている時に誘導飛しょう体24に作用する空力的なモーメントを示す図である。
【0032】誘導飛しょう体24が機体後方に向かう速度Vbで飛しょうする図3の段階28の場合、誘導飛しょう体24が気流に対して迎え角αをとったと仮定すると、図5(b)に示すように、格子翼26で揚力L4が発生する。この揚力L4と前翼10が発生する揚力L1、格子翼26の空力中心と重心CG2との距離Xc3、前翼10の空力中心と重心CG2との距離Xc1との間に数3に示すモーメントバランスの関係が成り立つ。
【0033】
【数3】

【0034】段階28では、格子翼26の迎角範囲をアからイの範囲に制限するため、発生する揚力L4を小さくできる。したがって、迎え角αをとった場合、機体4の重心CG2まわりにカバー12側で迎え角αを低減させる頭下げのモーメントMd(Md<0)を発生することが可能となる。(モーメントは頭上げを正とする。)なお、誘導飛しょう体24が機体後方に向かう速度Vcで飛しょうする段階29の場合も、段階28の場合と同様のモーメントを発生する。よって、誘導飛しょう体24が機体後方に向けて飛しょうする場合には、迎え角αが発生した時にそれを打ち消すモーメントMdが発生し、気流に対する機体4の静安定が確保できる。
【0035】また、推進装置11の推力と空気抵抗の作用により、誘導飛しょう体24の飛しょう速度が逆転し、速度Vaで機体前方へ飛しょうする図3の段階30に至る場合には、格子翼26の迎角範囲はウからエの範囲に制限される。ここで誘導飛しょう体24が気流に対して図5(b)の場合と同じ迎え角αをとったと仮定すると、図5(a)に示すように、格子翼26で揚力L3が発生する。この揚力L3と前翼10が発生する揚力L1、格子翼26の空力中心と重心CG2との距離Xc3、前翼10の空力中心と重心CG2との距離Xc1との間に数4に示すモーメントバランスの関係が成り立つ。
【0036】
【数4】

【0037】段階30では、格子翼26の迎角範囲をウからエの範囲に制限するため、発生する揚力L3を大きくできる。したがって、機体4の重心CG2まわりにドーム7側で迎え角αを低減させる頭下げのモーメントMc(Mc<0)を発生することが可能となる。その結果、誘導飛しょう体24が機体前方に向けて飛しょうする場合でも、空力的な静安定が確保され、気流に対する機体4の姿勢を安定に保つことができる。
【0038】一方、誘導飛しょう体24は、飛しょう速度が機体後方から機体前方へと変化する過渡期で、速度が零近傍となる速度領域を通過する。この速度領域では、各翼に作用する揚力が小さくなり、誘導飛しょう体24にとって空力的に不安定な状態が発生する。
【0039】このため、この実施の形態の誘導飛しょう体24では、推力偏向装置14によって機体4の姿勢を安定に保つように制御を行う。例えば、図1に示す舵角および推力偏向角指令計算回路19は、慣性装置16で観測される飛しょう速度の大きさが所定値より小さくなった(例えば速度の大きさが30m/s以下になった)ことが検知されると、慣性装置16で観測される速度と加速度に基づいて、機体4を空間安定させるように機軸に対して垂直な方向の推力を与える推力偏向指令を発生する。推力偏向装置14では、舵角および推力偏向角指令計算回路19から推力偏向角指令を与えられて、その間は絶えず推力偏向装置14によって推力偏向制御が行われて機体4の姿勢が安定に保たれる。
【0040】実施の形態2.図6はこの実施の形態における誘導飛しょう体24の構成要素を示す図である。図において、35はカバー12に取り付けられたフィンであり、他はこの発明に係わる実施の形態1と同様である。図6(a)は誘導飛しょう体24が図3中に示す母機2に搭載されている状態27での形態を示し、図6(b)は母機2から発射直後の状態28での形態、図6(c)は推進装置11が点火された状態29での形態を示す。
【0041】母機2に搭載されているとき、図6(a)に示すように、フィン35は機体4の胴体外周を機軸方向から見て4等分する各位置に1枚づつ計4枚が一組となって格子翼26と同じ位置に装着され、格子翼の空気抵抗を低減して、母機2の誘導飛しょう体24を搭載時の抵抗の増大による航続距離短縮等の影響を小さくしている。
【0042】誘導飛しょう体24が発射され、推進装置11が点火されるまでの間、図6(b)に示すように、フィン35はカバー12とともに油圧やモーター等の動力によって機体軸まわりに45度回転する。このことによって、誘導飛しょう体24が機体後方に向けて飛しょうする状態28において、格子翼26の操舵による揚力偏向を妨げることを回避する。
【0043】さらに、推進装置11が点火されると図6(c)に示すように、カバー12の保持部材が外れて、フィン35はカバー12とともに機体後方に放出される。
【0044】
【発明の効果】この発明に係る誘導飛しょう体は上記のように構成されているので、以下に記載するような効果を奏する。
【0045】第1の発明によれば、航空機から分離され後方に向け航空機後方に飛しょうする誘導飛しょう体において、飛しょう体速度が機体後方のときは格子翼を機体に垂直な方向に向けて操舵することにより静安定を確保し、飛しょう体速度が機体前方のときは格子翼を機体に平行な方向に向けて操舵することにより静安定を確保することによって、機体後方から前方に向かうまでの全ての速度領域で、より安定な飛しょうを確保できる誘導飛しょう体を得ることができる。
【0046】第2の発明によれば、航空機から分離され後方に向け航空機後方に飛しょうする誘導飛しょう体において、格子翼の機体後方に機軸方向に回転可能なフィンを装着することで、航空機に搭載されている誘導飛しょう体の抵抗を低減して航空機の抵抗増大を抑え、かつ発射直後の格子翼の操舵による制御を妨げることを回避できる。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成11年12月21日(1999.12.21)
【代理人】 【識別番号】100102439
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 金雄 (外1名)
【公開番号】 特開2001−174198(P2001−174198A)
【公開日】 平成13年6月29日(2001.6.29)
【出願番号】 特願平11−362759