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【発明の名称】 誘導弾
【発明者】 【氏名】佐藤 幸一

【要約】 【課題】射程距離を延伸させるための主翼を有する誘導弾においては、誘導弾前部に大きな主翼を有することから前方投影面積が大きくなり、空気摩擦抵抗による飛しょう速度の低下や、衝突面積増加による貫通力の低下を招くという課題があった。

【解決手段】翼分離判定装置7において、誘導装置4からの誘導信号s1に基づいて、誘導信号が十分小さくなったことなどから大きな揚力を出すための主翼を必要としなくなったことを判定して翼分離信号s4を出力し、それを受けて主翼分離機構8が主翼を分離する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 航空機から投下され目標体に向けて誘導飛しょうする誘導弾において、射程距離を延伸させるための主翼と、その飛しょう経路を制御するための操舵翼と、目標体を捕捉・追尾し目標体に向かって飛しょうするための誘導信号を出力する誘導装置と、前記誘導弾の加速度や角速度を計測する慣性センサと、この慣性センサからの情報と前記誘導装置からの誘導信号に基づいて操舵翼の操舵指令を計算するオートパイロット装置と、前記誘導装置からの誘導信号に基づいて主翼を分離するタイミングを判定する翼分離判定装置と、この翼分離判定装置からの信号により主翼を分離する手段とを備えたことを特徴とする誘導弾。
【請求項2】 目標体を捕捉・追尾し目標体に向かって飛しょうするための誘導信号および目標体との距離を出力する電波センサを用いた誘導装置と、前記誘導装置からの誘導信号および目標体との距離情報に基づいて主翼を分離するタイミングを判定する翼分離判定装置とを備えたことを特徴とする請求項第1項に記載の誘導弾。
【請求項3】 目標体を捕捉・追尾し目標体に向かって飛しょうするための誘導信号および目標体の大きさを出力する光学センサを用いた誘導装置と、前記誘導装置からの誘導信号および目標体の大きさの情報に基づいて主翼を分離するタイミングを判定する翼分離判定装置とを備えたことを特徴とする請求項第1項に記載の誘導弾。
【請求項4】 航空機から投下され目標体に向けて誘導飛しょうする誘導弾において、射程距離を延伸させるための主翼であって展開・格納機構を備えた展開翼と、その飛しょう経路を制御するための操舵翼と、目標体を捕捉・追尾し目標体に向かって飛しょうするための誘導信号を出力する誘導装置と、前記誘導弾の加速度や角速度を計測する慣性センサと、この慣性センサからの情報と前記誘導装置からの誘導信号に基づいて操舵翼の操舵指令を計算するオートパイロット装置と、前記誘導装置からの誘導信号に基づいて展開翼を格納するタイミングを判定する翼格納判定装置と、この翼格納判定装置からの信号により展開翼を格納することを特徴とする誘導弾。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、航空機に搭載され、地上の構造物や車両または海上の船舶などの目標体に向けて投下される誘導弾に関するものである。
【0002】
【従来の技術】航空機(以下母機という)に搭載され、射程距離を延伸させるため主翼を有する誘導弾に関する従来例について説明する。図8は従来の誘導弾の構成要素を示す図であり、誘導弾を上から見たものである。図において10は誘導弾、2は射程距離を延伸させるための主翼、3は飛しょう方向を制御する操舵翼、4は目標体を捕捉・追尾し目標体に向かって飛しょうするための誘導信号を出力する誘導装置、5は誘導弾4の加速度や角速度を計測する慣性センサ、6は慣性センサ5からの情報と誘導装置4からの誘導信号に基づいて操舵翼の操舵指令を計算するオートパイロット装置を示す。
【0003】図9は従来の誘導弾が、母機から投下されてから目標体へ衝突するまでの飛しょう状況を示す図である。(a)において10は誘導弾、20は目標体、21は誘導弾10の飛しょう経路、22は目標体20の移動経路である。(b)は投下から会合までの時間シーケンスを示しており、t0は誘導弾10が目標体20を捕捉する時間、t3は誘導弾10と目標体20が会合する時間、t1、t2は目標捕捉時間t0から会合時間t3までのある時間である。また、(a)でxm0〜xm3、xs0〜xs3をそれぞれ時間t0〜t3における誘導弾と目標体の位置とすると、誘導弾10は母機から投下された後、誘導装置4が位置xs0の目標体20を捕捉する位置xm0までは、なるべく射程距離を長く取るために揚抗比が大となる姿勢および流速を保って定常滑空を行い、その後、衝突速度を上げるために急角度な姿勢をとって目標体20に向かって誘導飛しょうする。誘導弾10は、誘導飛しょう中に目標体20を追尾しながら位置xm1、位置xm2を通過して、時間t3において位置xm3で会合する。このときの誘導方法には、一般的に比例航法が使われる。
【0004】誘導弾が飛しょうする際には空気による抵抗力を受けるが、空気密度をρ、速度をV、気流に対する断面積をSB、空気抵抗係数をCdとするとその抵抗力Dは数1のように示される。また、誘導弾が目標体を貫通するために費やされるエネルギーは、衝突の際に誘導弾の持つ運動エネルギーに等しく、貫通力を単位衝突面積当たりに及ぼされる運動エネルギーと定義すると、衝突直前に誘導弾10の持つ質量をM、速度をV、目標体20との衝突面積をSCとしたときの貫通力Kは数2のように示される。
【0005】
【数1】

【0006】
【数2】

【0007】この抵抗力Dが小さいほど、誘導弾の飛しょう中の減速の割合が小さくなり、会合までの飛しょう速度が大きくなる。また、貫通力Kが大きいほど、誘導弾が目標体のより内部にまで到達し、弾頭の威力を高めることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記のように構成された誘導弾においては、射程距離の短い通常の誘導弾に比べ誘導弾前部に翼長の長い主翼を有することから前方投影面積が大きくなるため、衝突面積Sが大きくなる。ゆえに、数2に示すように目標体への貫通力が、主翼を持たない誘導弾に比べて小さくなるという問題があった。また、図9で示したように、終末誘導時には貫通力を高めるために急な姿勢をとって増速するが、翼面積の大きな主翼は大きな空気摩擦抵抗を受けるため、衝突速度を上げるには不利となるという問題があった。さらに、この空気摩擦抵抗により飛しょう速度が低下すると誘導弾の運動時定数が大きくなり、衝突までの誘導制御性能が劣化するという問題があった。
【0009】この発明は係る課題を解決するためのものであり、射程距離を延伸させるための主翼を有する誘導弾において、弾頭の威力を高めたり終末誘導時の誘導性能を向上させることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明に係わる第1の発明の誘導弾は、目標体を捕捉・追尾し目標体に向かって飛しょうするための誘導信号を出力する誘導装置と、この誘導装置からの誘導信号に基づいて主翼を分離するタイミングを判定する翼分離判定装置と、この翼分離判定装置からの信号により主翼を分離する手段とを備える。
【0011】この発明に係わる第2の発明の誘導弾は、目標体を捕捉・追尾し目標体に向かって飛しょうするための誘導信号および目標体との距離を出力する電波センサ等を用いた誘導装置と、前記誘導装置からの誘導信号および目標体との距離情報に基づいて主翼を分離するタイミングを判定する翼分離判定装置と、この翼分離判定装置からの信号により主翼を分離する手段とを備える。
【0012】この発明に係わる第3の発明の誘導弾は、目標体を捕捉・追尾し目標体に向かって飛しょうするための誘導信号および目標体の大きさを出力する光学センサ等を用いた誘導装置と、前記誘導装置からの誘導信号および目標体の大きさの情報に基づいて主翼を分離するタイミングを判定する翼分離判定装置と、この翼分離判定装置からの信号により主翼を分離する手段とを備える。
【0013】この発明に係わる第4の発明の誘導弾は、射程距離を延伸させるための主翼であって展開・格納機構を備えた展開翼と、目標体を捕捉・追尾し目標体に向かって飛しょうするための誘導信号を出力する誘導装置と、この誘導装置からの誘導信号に基づいて展開翼を格納するタイミングを判定する翼格納判定装置と、この翼格納判定装置からの信号により展開翼を格納する手段とを備える。
【0014】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1の構成を示す図であり、図において1は本発明による誘導弾、7は誘導装置4からの誘導信号s1に基づいて主翼を分離するタイミングを判定する翼分離判定装置、8は翼分離判定装置7からの信号により主翼を分離する爆発ボルト等の分離機構を示す。その他の構成要素は従来の誘導弾の形態と同じである。
【0015】図2は終末誘導時の誘導弾と目標体との位置関係および誘導信号の状況を示したものである。ここで、図2を用いて比例航法を用いた誘導飛しょうの状況について説明する。目標に向かって飛しょうする場合の理想的な方法は、目標方向の角度(以下目視線角という)を常に一定に保ちながら予想され会合点に向かうことである。(a)において23はこのときの誘導弾の理想的な経路、xm1’は時間t1における誘導弾の理想経路23上の位置、a1〜a4は誘導弾20の各位置における目視線角である。誘導弾10が理想経路23上を飛しょうしているとすると、誘導飛しょう中の時間t1、t2における誘導弾位置xm1’、xm2において、そのときの目視線角a1、a2は一定であり、ほとんど経路の変更をすることなく、時間t3に位置xm3、xs3において会合することができる。ただし、この航法は誘導弾10と目標体20の位置と速度を正確に知る必要がある。一方、比例航法は、飛しょう経路を目視線角の変化率(以下誘導信号という)に比例させるように変更することでその経路を理想経路23に漸近させ、位置と速度の情報がなくても最終的には位置xm3、xs3において会合できるものである。
【0016】誘導弾10が位置xm0において位置xs0の目標体20を捕捉する時点では、一般に飛しょう経路21と理想経路23との差が大きく、その目視線角a3は位置xm1に移動するまでに目視線角a4に変化する。誘導弾10はその変化率を誘導信号として経路を制御することによって、位置xm2までの間に理想経路23に漸近することができる。図2の(b)はこのときの誘導信号の波形である。目標を捕捉する時間t0から理想経路にのる時間t2までは、経路の変更のために大きな誘導信号が出力され、その後会合時間t3の直前までは大きな経路変更がないため、誘導信号は小さくなる。
【0017】図3はこの発明の実施の形態1の誘導弾内部の信号の流れを示すブロック図であり、図においてs1は誘導装置4からの誘導信号、s2は慣性センサ5が検出した誘導弾の加速度および角速度、s3は誘導信号s1と加速度および角速度s2に基づいてオートパイロット装置で計算された操舵指令、s4は誘導信号s1に基づいて翼分離判定装置7で判定された主翼分離タイミングを指示する分離信号である。この翼分離判定装置7においては、誘導弾が理想経路上を飛しょう中であり大きな揚力を必要としない状況であること、すなわち図2(a)における位置xm2の状態にあることを、誘導信号s1が図2(b)の時間t2での値のように十分小さくなった状態であることから判定し、分離信号s4を出力する。主翼分離機構8はこの分離信号s4を受けて作動し、主翼2が分離される。これにより、誘導弾の前方投影面積が小さくなり空気摩擦抵抗による速度の低下を低減させて相対的に飛しょう速度が大きくなる。飛しょう速度が大きくなると誘導弾10の運動時定数が小さくなるため、会合直前に比較的大きな誘導信号が出力された場合でも追従性が良くなる。また、衝突時には速度の増加と衝突面積の減少により、弾頭の貫通力を増加することができる。
【0018】実施の形態2.図4はこの発明の実施の形態2の誘導弾内部の信号の流れを示すブロック図であり、図において11は電波センサ等を用いて目標との距離情報を測定できる電波誘導装置、s5は電波誘導装置11からの目標との距離情報、12は誘導装置4からの誘導信号s1および距離情報s5に基づいて主翼を分離するタイミングを判定する翼分離判定装置である。翼分離判定装置12においては、誘導弾が理想的な誘導経路上を飛しょう中であり今後は大きな揚力を必要としない状況であること、すなわち図2における位置xm2の状態にあることを、誘導信号s1が十分小さくなった状態であることに加え目標体との距離s5が所定の値より小さくなったことから判定し、分離信号s4を出力する。この場合、誘導信号s1のノイズが大きく単独での判定が困難な場合でも、測定した距離情報s5を用いることで、相対的に飛しょう速度を大きくしたり衝突面積を減少させるための分離タイミングが判定可能である。
【0019】実施の形態3.図5はこの発明の実施の形態3の誘導弾内部の信号の流れを示すブロック図であり、図において13は光学センサ等を用いて目標の大きさの情報を測定できる誘導装置、s6は誘導装置4からの目標の大きさの情報、14は誘導装置4からの誘導信号s1および大きさの情報s6に基づいて主翼を分離するタイミングを判定する翼分離判定装置である。翼分離判定装置14においては、誘導弾が理想的な誘導経路上を飛しょう中であり今後は大きな揚力を必要としない状況であること、すなわち図2における位置xm2の状態にあることを、誘導信号s1が十分小さくなった状態であることに加え目標体の大きさs6が所定の値より大きくなることから適切な距離に近づいたことを推定し、分離信号s4を出力する。この場合、誘導信号s1のノイズが大きく単独での判定が困難な場合でも、大きさ情報s6から推定した距離情報を用いることで、相対的に飛しょう速度が大きくしたり衝突面積を減少させるための分離タイミングが判定可能である。
【0020】実施の形態4.図6はこの発明の実施の形態4の構成を示す図であり、図において16は射程距離を延伸させるための主翼であって翼展開・格納機構を備えた展開翼、17は展開翼16の翼展開・格納機構、18は誘導装置4からの誘導信号s1に基づいて主翼を格納するタイミングを判定する翼格納判定装置を示す。その他の構成要素は実施の形態1と同じである。展開翼16は寸法上の制限等により点線で示したように閉じた状態で母機に搭載され、投下後に展開するものである。図7はこの発明の実施の形態4の誘導弾内部の信号の流れを示すブロック図であり、図においてs7は翼格納判定装置18で判定された主翼格納タイミングを指示する格納信号である。翼分離判定装置18においては、誘導弾が理想的な誘導経路上を飛しょう中であり今後は大きな揚力を必要としない状況であること、すなわち図2における位置xm2の状態にあることを、誘導信号s1が十分小さくなった状態であることから判定し、格納信号s7を出力する。翼展開・格納機構17はこの格納信号s7を受けて作動し、展開翼16が格納される。
【0021】
【発明の効果】第1の発明によれば、射程距離を延伸させるための主翼を有する誘導弾において、終末誘導中の大きな揚力を必要としなくなった後に主翼を分離し、空気抵抗を減らして飛しょう速度を上げることにより誘導弾の運動時定数を小さくでき、誘導制御性能を向上させる効果がある。また、飛しょう速度が増加することと主翼が目標体への貫通の障害とならないことにより誘導弾の貫通力を増加することができ、弾頭の威力を高めることができる。
【0022】第2の発明によれば、電波センサで検出した目標体との距離情報を用いることにより、終末誘導中の目標体との距離が適切な位置にまで近づいた後に主翼を分離できるため、誘導信号ノイズによるタイミングの誤判定を防止できたうえで、第1の発明と同様の効果がある。
【0023】第3の発明によれば、光学センサで検出した目標体の大きさの情報を用いることにより、目標体との距離を検出できなくても終末誘導中の目標体との距離が適切な位置にまで近づいた後に主翼を分離できるため、誘導信号ノイズによるタイミングの誤判定を防止できたうえで、第1の発明と同様の効果がある。
【0024】第4の発明によれば、終末誘導中の大きな揚力を必要としなくなった後に展開翼を格納することにより、分離した翼が誘導弾に衝突して損傷を与えるリスクを生じることなく、第1の発明と同様の効果がある。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成11年11月17日(1999.11.17)
【代理人】 【識別番号】100102439
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 金雄 (外2名)
【公開番号】 特開2001−141398(P2001−141398A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−326630