| 【発明の名称】 |
ポリケトン繊維よりなる防弾防刃チョッキ |
| 【発明者】 |
【氏名】藤田 敏也
【氏名】加藤 仁一郎
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| 【要約】 |
【課題】湿潤状態、高温でも高強度高弾性率を維持することができ、且つ安価な防弾防刃チョッキを提供する。
【解決手段】繰り返し単位の90モル%以上が下記の構造式(1)で示されるポリケトンから構成されたポリケトン繊維を用いたことを特徴とする防弾防刃チョッキ。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 繰り返し単位の90モル%以上が下記の構造式(1)で示されるポリケトンから構成されたポリケトン繊維を用いたことを特徴とする防弾防刃チョッキ。
【請求項2】 ポリケトン繊維の織物により構成されることを特徴とする請求項1記載の防弾防刃チョッキ。 【請求項3】織物の経糸および緯糸の少なくとも一方のカバーファクターが5以上であり、かつ経糸と緯糸のカバーファクターの積が50以上になるように構成されている高密度織物であることを特徴とする請求項2記載の防弾防刃チョッキ。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術的分野】本発明は、高強度高弾性率を有するポリケトン繊維からなる耐貫通性に優れた防弾防刃チョッキに関する。 【0002】 【従来の技術】近年、高分子化学及び紡糸技術の発展により、アラミド繊維や高分子量ポリエチレン繊維等の高強度高弾性率繊維が製造されるようになり、従来金属でしか製造されなかった防弾、防護性等の耐貫通性が要求される分野でもその高強度高弾性率繊維が利用されるようになった。しかし、この高強度高弾性率繊維の利用は、確かに軽量化という点では大きな改善が見られるが、種々の性能の点においては未だ必ずしも十分満足されるとは言えない。 【0003】アラミド繊維においては吸水性が高く、寸法安定性に問題がある。これは、水にぬれた時の繊維の強度低下、織物の織り密度の変化を引き起こし耐貫通性の低下につながる。高分子量ポリエチレンにおいては寸法安定性が良いが、融点が120℃と低いために高温になると物性低下を起こす。たとえば製鉄現場などで防護服として使用した場合、周囲の高温な雰囲気のために物性低下を起こし耐貫通性、耐擦過性を発揮できない。また、これらの物性面の問題のほかにも、いずれの繊維も高価であり汎用性に乏しいという問題がある。 【0004】 【本発明が解決しようとしている課題】本発明が解決しようとしている課題は、湿潤状態、高温でも高強度高弾性率を維持することができ、且つ安価な防弾防刃チョッキを提供することである。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題について鋭意研究した結果、上記課題はポリケトンよりなる高強度高弾性率繊維を用いることにより解決されることを見出した。すなわち本発明は繰り返し単位の90モル%以上が下記の構造式(1)で示されるポリケトンから構成されたポリケトン繊維を用いたことを特徴とする防弾防刃性チョッキに関するものである。 【0006】
本発明のポリケトン繊維は、繰り返し単位の90モル%以上が下記の構造式(1)で示されるポリケトンから構成される。10モル%未満の範囲で下記の構造式(1)以外の繰り返し単位、例えば下記の構造式(2)に示したもの等を含有していても良い。 【0007】
Rはエチレン以外の1〜30の有機基であり、例えばプロピレン、ブチレン、1−フェニルエチレン等が例示される。これらの水素原子の一部または全部が、ハロゲン基、エステル基、アミド基、水酸基、エーテル基で置換されていてもよい。もちろん、Rは2種以上であってもよく、例えば、プロピレンと1−フェニルエチレンが混在していてもよい。高強度、高弾性率が達成可能で、高温での安定性が優れるという観点で繰り返し単位の97モル%以上が上記構造式(1)で示されるポリケトンであるこことが好ましく、最も好ましくは100モル%である。 【0008】また、これらのポリケトンには必要に応じて、酸化防止剤、ラジカル抑制剤、他のポリマー、艶消し剤、紫外線吸収剤、難燃剤、金属石鹸等の添加剤を含んでいてもよい。本発明の防弾防刃チョッキはポリケトン繊維を用いることにより、湿潤状態、高温での使用が可能となり、且つ安価なものとなる。防弾防刃チョッキの構成はポリケトン繊維からなされておれば良く、その構成比率は10重量%以上、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上であり、最も好ましくは100重量%である。チョッキの構成は公知のもので良く、織物、編物、それらの複合物、樹脂加工物、積層物で良いが、中でも織物が好ましい。 【0009】本発明に言う織物とは平織、斜文織、朱子織等である。最終用途から要求される織物の諸性質の基礎となる構造力学特性は、通常、組織と経および緯糸の配列間隔の両面から推論され、一般に、平織組織が最も締まりがきつく強く、朱子織組織が柔軟性に富む。本発明に言うカバーファクターKとは、これらの傾向を数値化したもので織物表面から見える糸間の間隔の大きさを表すパラメーターである。すなわち、経糸(もしくは緯糸)の織物密度n(本/2.54cm)と糸の番手S(英式綿番手数)の平方根との比で定義され、K=n/S1/2で求められる。番手Sをデシテックスdtexに換算すると、K=n/(0.5906×10000/dtex)1/2となる。経糸、緯糸について求めたカバーファクターを各々Kw、Kfとし、その積KwfをKwf=Kw×Kfとして求める。 【0010】本発明においては、経糸および緯糸の少なくとも一方のカバーファクターが5以上であり、かつ経糸と緯糸のカバーファクターの積が50以上になるように織物を構成することが肝要点である。このKwfが設定値から外れると、耐貫通性が劣ることとなる。尚織物に用いる経・緯糸は、ともに本発明で規定するポリケトン繊維が好ましいが、耐貫通性が劣らない範囲で、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール等の繊維を経・緯糸として1本以上混ぜ合わせ(例えば、本発明で規定する繊維特性を満足するポリケトン繊維556dtex×2本とナイロン繊維556dtex×1本の合糸)たりしてもよい。また、目的に合わせてシート状物を1層以上積層して用いてもよいことは無論である。 【0011】本発明で用いるポリケトン繊維の性能には特に制限はないが、強度が7cN/dtex以上、弾性率が88cN/dtex以上であることが好ましい。さらに好ましくは強度8.8cN/dtex以上、弾性率132cN/dtex以上、最も好ましくは強度13cN/dtex以上、弾性率176cN/dtex以上である。繊維の強度が7cN/dtex未満では前述した織物とした時、要求される耐貫通性を満足できない場合が生じ、好ましくない。また、弾性率が88cN/dtex未満でも衝撃時の繊維変形量(伸度)が同一強度の高弾性率繊維に比べ大きくなり、結果として耐貫通性に要求される性能に達せず、好ましくない。 【0012】本発明で用いる上述のポリケトン繊維の製造は公知の紡糸方法で可能である。湿式紡糸、溶融紡糸、乾式紡糸が可能であり、好ましくは湿式紡糸、溶融紡糸である。最も好ましくは湿式紡糸法である。湿式紡糸で物性を発現させるためには、特開平2−112413号公報、特開平4−228613号公報、特表平4−505344号公報に記載の溶剤、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール、m−クレゾール、クロロフェノール、レゾルシン/水、フェノール/アセトン、プロピレンカーボネート/ヒドロキノン、ピロール、レゾルシン/プロピレンカーボネート、ピリジン、ギ酸等の有機溶剤を用いた湿式紡糸を適用することもできるが、これらの溶剤は高価または毒性が高いものであったり、引火性の高い凝固剤を使用する必要がある等、工業的に使用するには問題がある。また、米国特許第5929150号明細書、国際特許出願第99/18143号では、例えば亜鉛塩溶液、リチウム塩の溶液が溶剤として使用できることが開示されている。リチウム塩の溶液は高価で工業的には使用できないが、亜鉛塩の溶液は安価で安定な湿式紡糸が可能となる。しかし、ポリケトンを亜鉛塩の溶液に溶した場合、工業的に必要な長期な時間安定に保つことは困難である。一方、本発明者らが発見したポリケトン溶液であるハロゲン化亜鉛とハロゲン化アルカリ金属または/及びハロゲン化アルカリ土類金属の混合塩の水溶液は、安価で安全である上に、長期安定性も優れており、工業的な溶剤であるという点で、最も好ましい溶剤である。従って、本発明に用いるポリケトン繊維はハロゲン化亜鉛とハロゲン化亜鉛とハロゲン化アルカリ金属及び/またはハロゲン化アルカリ土類金属の混合塩の水溶液を溶剤とした湿式紡糸法を用いて製造することが最も好ましく、その方法は国際特許出願第99/04235号に従うことによりできる。 【0013】上記のようにして得られた繊維中には、重合触媒として使用したパラジウムが含まれる。このパラジウム元素の量は100ppm以下であることが好ましく、さらに好ましくは10ppm以下であることが好ましい。パラジウムの量を低減する方法としては、特に制限はないが、ポリケトンの重合終了時に重合溶媒を用いて1〜20回洗浄すればよい。また、紡糸溶剤として使用した亜鉛元素も残留しており、その含量は10000ppm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、3000ppm以下である。これらの元素が残留したまま長期に渡り湿潤状態、高温での使用を続けると防弾防刃性の低下を引き起こすため、紡糸時に充分な洗浄を施してから使用を行う必要が有る。溶融紡糸法としては、例えば特開平1−124617号公報の方法をそのまま適用できる。 【0014】 【実施例】本発明を以下の実施例によりさらに詳しく説明するが、これらは本発明の範囲に限定されるものではない。実施例の説明中に用いられる各測定値の測定方法は、次の通りである。 (1)極限粘度極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求めた。 [η]=lim(T−t)/(t・C) [g/dl] C→0定義式中のt及びTは、純度98%以上のヘキサイソプロパノール及び該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流下時間である。また、Cは上記100ml中のグラム単位による溶質重量値である。 【0015】(2)繊維の強力、強度、伸度、弾性率JIS−L−1013に準じて測定した。 (3)耐貫通性耐貫通性試験には、織物シートの表裏表面を厚さ1mmのポリエチレンシートで狭み、150℃で熱プレスしたものを使用した。耐貫通性の評価は、図1に示す重量270gの鉄錘を高さ1.7mより落下させることにより、異常無しを○、貫通したものを×として、判定することで実施した。 (4)パラジウム、亜鉛の元素の量高周波プラズマ発光分光分析により、公知の方法を用いて測定した。 【0016】 【実施例1】塩化亜鉛/塩化ナトリウム/水(65/10/25重量%)の水溶液に、極限粘度5.6のポリ(3−オキソトリメチレン)(上記構造式(1)で示されるポリケトン)を8重量%濃度になるように溶解した。このドープを孔数200個、孔径0.2mmの紡口から吐出線速度6.3m/分でエアギャップ長10mmを介して凝固浴に押し出した。凝固浴長は1.2mで水のみで満たした。次に2%の硫酸水溶液を入れた2mの洗浄浴を通し、水を連続的に吹きかけるネルソンロールを通してから、定長で240℃の乾燥を行った。その後、ホットプレートを2つのフィードロールの間に備えた延伸機を用いて240℃で第一段目延伸、255℃で第二段目延伸、265℃で第三段目延伸を行い、次いで巻き取った。得られたポリケトン繊維の物性は次のようなものであった。 【0017】強度=13.9cN/dtex伸度=5.2%弾性率=306cN/dtexこのポリケトン繊維を用いて合糸により、経1667dtex、緯556dtexとし経密度40本/インチ、緯密度25本/インチ、カバーファクターKw=21.2、Kf=7.7、Kwf=163の平織り組織を得た。この組織の耐貫通性試験の結果とパラジウム(Pd)元素含量、亜鉛(Zn)元素含量を表1に示す。 【0018】 【実施例2】実施例1と同様の糸を用い、経1667dtex、緯556dtexとし、織り組織を経密度25本/インチ、緯密度を25本/インチ、カバーファクターKw=13.3、Kf=7.7、Kwf=102の平織り組織を得た。この組織の耐貫通性試験の結果とパラジウム(Pd)元素含量、亜鉛(Zn)元素含量を表1に示す。 【0019】 【実施例3】実施例1と同様の糸を用い、経1667dtex、緯1667dtexとし、織り組織を経密度13本/インチ、緯密度を32本/インチ、カバーファクターKw=6.9、Kf=17.0、Kwf=117の平織り組織を得た。この組織の耐貫通性試験の結果とパラジウム(Pd)元素含量、亜鉛(Zn)元素含量を表1に示す。 【0020】 【比較例1】実施例1と同様の糸を用い、経1667dtex、緯1667dtexとし、織り組織を経密度8本/インチ、緯密度を32本/インチ、カバーファクターKw=4.2、Kf=17.0、Kwf=71の平織り組織を得た。この組織の耐貫通性試験の結果とパラジウム(Pd)元素含量、亜鉛(Zn)元素含量を表1に示す。 【0021】 【比較例2】実施例1と同様の紡糸を行い、延伸を1段目延伸でとどめた。その結果得られたポリケトン繊維の物性は次のようなものであった。 強度=6.6cN/dtex伸度=7.2%弾性率=86cN/dtexこのポリケトン繊維を用いて合糸により、経1667dtex、緯556dtexとし経密度40本/インチ、緯密度25本/インチ、カバーファクターKw=21.2、Kf=7.7、Kwf=163の平織り組織を得た。この組織の耐貫通性試験の結果とパラジウム(Pd)元素含量、亜鉛(Zn)元素含量を表1に示す。 【0022】 【表1】
【0023】 【実施例4】実施例1と同様な方法で得られた平織り組織を用いて、100℃の熱風乾燥機中で1 0日間熱処理する前後での耐貫通性を評価した。また、平織り組織を作成するのに用いた繊維についても、100℃の熱風乾燥機中で1 0日間熱処理する前後での強度、弾性率を評価した。その結果を表2に示す。 【0024】 【比較例3】ポリケトンの重合終了時に、メタノールによる洗浄を十分に行わず、パラジウム元素含量の高いポリケトンを得た。このポリケトンを用いて、実施例1と同様な方法で得られた平織り組織を100℃の熱風乾燥機中で1 0日間熱処理する前後での耐貫通性を評価した。また、平織り組織を作成するのに用いた繊維についても、100℃の熱風乾燥機中で1 0日間熱処理する前後での強度、弾性率を評価した。その結果を表2に示す。 【0025】 【比較例4】比較例3と同様な方法で得たポリケトンを用いて、2%の硫酸水溶液による洗浄を行わなかった以外は実施例1と同様な方法でパラジウム元素含量、および亜鉛元素含量の高い平織り組織を得た。この平織り組織を100℃の熱風乾燥機中で1 0日間熱処理する前後での耐貫通性を評価した。また、平織り組織を作成するのに用いた繊維についても、100℃の熱風乾燥機中で1 0日間熱処理する前後での強度、弾性率を評価した。その結果を表2に示す。 【0026】 【表2】
【0027】 【発明の効果】これまでの防弾防刃チョッキでは使用環境の制約があったが、本発明により湿潤状態、高温でも高強度高弾性率を維持でき、且つ安価な防弾防刃チョッキを提供することが可能となった。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000033 【氏名又は名称】旭化成株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年12月20日(1999.12.20) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100108693 【弁理士】 【氏名又は名称】鳴井 義夫 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−174195(P2001−174195A) |
| 【公開日】 |
平成13年6月29日(2001.6.29) |
| 【出願番号】 |
特願平11−361272 |
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