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【発明の名称】 伝熱管への煤塵又は水滴の付着防止装置
【発明者】 【氏名】石黒 淑亮

【氏名】仲尾 元六

【氏名】福田 祐治

【氏名】浜田 幾久

【要約】 【課題】ボイラ燃焼排熱を利用する伝熱管における煤塵又は凝縮結露水の付着を防止すること。

【解決手段】外面側に気体の流れる熱交換器における伝熱管への煤塵又は水滴の付着を防止する装置において、伝熱管12の外面に撥水性皮膜を形成し、且つ伝熱管に振動を与える煤塵又は水滴の付着防止装置。また、常時又は間欠的に伝熱管に機械的振動14を与える、又は音源からの音波によって常時又は間欠的に伝熱管に振動を与えること。また、外面側に気体の流れる熱交換器における伝熱管への煤塵又は水滴の付着を防止する装置において、複数の伝熱管を機械的に一体化して1組の伝熱管群35とし、伝熱管群と熱交換器のダクトとの間に伝熱管群とダクトの相対移動を可能とする中継物を介在させ、中継物又は伝熱管群に加振装置によって振動を与えること。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 外面側に気体の流れる熱交換器における伝熱管への煤塵又は水滴の付着を防止する装置において、前記伝熱管の外面に撥水性皮膜を形成し、且つ前記伝熱管に振動を与えることを特徴とする煤塵又は水滴の付着防止装置。
【請求項2】 請求項1に記載の付着防止装置において、常時又は間欠的に伝熱管に機械的振動を与えることを特徴とする煤塵又は水滴の付着防止装置。
【請求項3】 請求項1に記載の付着防止装置において、音源からの音波によって常時又は間欠的に伝熱管に振動を与えることを特徴とする煤塵又は水滴の付着防止装置。
【請求項4】 外面側に気体の流れる熱交換器における伝熱管への煤塵又は水滴の付着を防止する装置において、複数の伝熱管を機械的に一体化して1組の伝熱管群とし、前記伝熱管群と前記熱交換器のダクトとの間に前記伝熱管群とダクトの相対移動を可能とする中継物を介在させ、前記中継物又は前記伝熱管群に加振装置によって振動を与えることを特徴とする煤塵又は水滴の付着防止装置。
【請求項5】 請求項4に記載の煤塵又は水滴の付着防止装置において、熱交換器に設けられた複数組の伝熱管群毎に加振装置を設け、各伝熱管群の振動の位相又は振動の方向を他の伝熱管群と異ならせて、複数組の伝熱管群の振動を互いに打ち消し合うようにすることを特徴とする煤塵又は水滴の付着防止装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、火力発電設備に係わり、特に低温熱交換器における伝熱管への煤塵又は水滴の付着を防止する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】火力発電設備は、発電効率及び排煙処理効率を向上させるため、ボイラ排ガス系統に燃焼排熱を利用した熱交換器を設置することが多い。
【0003】図2は石炭焚きボイラの排ガス処理系統の一例を表したものである。ボイラ1を出た排ガスは、ボイラ燃焼用空気を予熱するため、空気予熱器2で熱交換される。石炭焚きボイラでは、排ガス中に多くの煤塵や硫黄酸化物が含まれるため、電気集塵機6や脱硫装置8が必須であるが、これらの装置の運転効率や構成材料の健全性、煙突からの排出に必要な排ガス温度などを総合的に考慮して、空気予熱器出口からの排ガス温度を一旦低下させ、煙突からの排出前に適切な温度まで昇温するため、ガス−ガスヒータ3(Gas−Gas−Heater以下、GGHと表す)が設置される。
【0004】GGHと電気集塵機、通風機7及び9の排ガス処理系統上の設置位置は、使用燃料や運用条件などに応じてプラントにより異なるが、図2の例では、脱硫装置前流にGGHの熱回収部4、脱硫装置後流にGGHの再加熱部5が配置されている。
【0005】GGHでは、熱回収部と再加熱部の間が連結され、通常、熱媒11で熱伝達が行われる。GGH熱回収部のガス温度は、入口で約100〜160°C、出口で約60〜110°C、再加熱部のガス温度は、入口で約40〜70°C、出口で約70〜110°C程度である。
【0006】熱回収部及び再加熱部の伝熱管には伝熱効率の高いフィンチューブが多用される。伝熱管やフィンの材質は、管内の水や空気の温度や圧力の条件及び管外(ガス側)の温度条件によって使い分けられるが、経済性、施工性及び汎用性の点から一般的な炭素鋼されることが多い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このようにGGHにおける大きな課題として以下の3つが挙げられる。第1の課題は、低温で温度差の小さい熱交換器であるため、大きな伝熱面積を必要とし、装置が大型となることで、第2の課題は、熱回収部においては主に煤塵の付着、再加熱部においては、主に凝縮水滴の付着による伝熱の阻害及び通風抵抗の増大が起こりやすいことである。第3の課題は、低温であるため、排ガス中に含まれる酸や水分の凝縮、あるいは飛散灰に含まれる塩化物により伝熱管の腐蝕が起こりやすいことである。
【0008】装置が大型化することに対しては伝熱管配置及びフィンの山数を密にする。煤塵や水滴の付着による伝熱の阻害及び通風抵抗増大の課題に対しては、ブロアや鋼球を用いたショットクリーニングによる除塵の実施。腐蝕に対しては伝熱管表面を樹脂等で被覆するといった対策がとられる。
【0009】しかしながら、伝熱管配置及びフィンの山数を密にすると、煤塵や水滴の付着が起こりやすくなるため、除塵の重要性が増すが、伝熱管配置及びフィンの山数が密な状態においては除塵効果が低下するため、ブロアでは十分な除塵ができない。ショットクリーニングは、ブロアに比べて除塵性能は高いが、樹脂等による伝熱管の被覆や伝熱管材料自体の表面に形成される保護性の酸化皮膜を損傷させるため、腐蝕が問題となる環境では実施しにくい。
【0010】伝熱管材料の腐蝕は、腐蝕損傷そのもののみならず、腐蝕生成物が煤塵等の付着を加速させることからも望ましくない。しかし、実用上十分な耐食性を持つステンレス鋼の適用は、装置規模が大きいこともあり、コスト増加が膨大なものとなる。
【0011】したがって、従来技術では上述の3つの課題を同時に解決することができなかった。
【0012】本発明の目的は、上記従来技術の課題に対して、経済上や性能上の問題を引き起すことなくボイラ燃焼排熱を利用する伝熱管における煤塵又は凝縮結露水の付着を防止する技術を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
【0014】外面側に気体の流れる熱交換器における伝熱管への煤塵又は水滴の付着を防止する装置において、前記伝熱管の外面に撥水性皮膜を形成し、且つ前記伝熱管に振動を与える煤塵又は水滴の付着防止装置。
【0015】また、前記付着防止装置において、常時又は間欠的に伝熱管に機械的振動を与える、または音源からの音波によって常時又は間欠的に伝熱管に振動を与える煤塵又は水滴の付着防止装置。
【0016】また、外面側に気体の流れる熱交換器における伝熱管への煤塵又は水滴の付着を防止する装置において、複数の伝熱管を機械的に一体化して1組の伝熱管群とし、前記伝熱管群と前記熱交換器のダクトとの間に前記伝熱管群とダクトの相対移動を可能とする中継物を介在させ、前記中継物又は前記伝熱管群に加振装置によって振動を与える煤塵又は水滴の付着防止装置。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態に係る伝熱管への煤塵又は水滴の付着防止装置について、図面を用いて以下説明する。
【0018】「第1の実施形態」本発明の第1の実施形態を図1、図3、図4及び図5を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る伝熱管への煤塵または水滴の付着防止方法を実施するための装置の組み合わせの概略図であり、図3は撥水性皮膜を形成したフィンチューブの正面図及び断面図であり、図4は撥水性皮膜を形成した伝熱管及び皮膜のない伝熱管上に凝縮した水滴と伝熱管表面との接触角を示す図であり、図5は加振装置の構造を示す図である。
【0019】ここで、12はフィンチューブ、13は管寄せ、14は加振装置、15はフィン、16は母材、17は皮膜、18は水滴、19は接触角、20は交流電源、21はリード線、22はダクト、23はガス流路、24はコイル、25は磁石、26は振動子、27は架台、35は伝熱管群、36は管板、37はガス流れ方向、をそれぞれ表す。
【0020】図1に示す実施形態において、図示の例では、3本のフィンチューブ12が1つの管寄せ13に管板36で束ねられて結合されている。ガスの流れ方向37に沿って3つの管寄せが配置され、それぞれの管寄せはダクト22に設置された架台27により支持されている。伝熱管であるフィンチューブ12は、図1の紙面に垂直な方向において、管寄せ毎の前記3本のフィンチューブが1組となって複数の組が配置されていて、管寄せ毎のフィンチューブ群をここでは伝熱管群と称する。従って、図1の例では、3つの伝熱管群が配置されていることになり、各伝熱管群はその動きがそれぞれ独立しているものである。
【0021】図1において、フィンチューブ12には加振装置14が取り付けられ、リード線21を介して電源20と接続されている。本実施形態は、電源からリード線を通じて加振装置へ交流電流を流して振動を発生させる。図1は、フィンチューブが直管である例を示しているがU字管でも良く、また、伝熱管群がダクト内に直立するものを示しているが直立に限らず、水平又は傾斜させて配置してもよい。
【0022】図3は、フィンチューブの正面図及び断面図を示すものであり、フィンチューブ12及び管寄せ13の構成材料は、炭素鋼であり、フィン15及び管表面16には撥水性皮膜17が形成されている。本実施形態における皮膜材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂を用いる。
【0023】一般にフッ素樹脂は、撥水性が高く、耐熱性に優れ、酸やアルカリに対しても耐性が高いことから、伝熱管の保護被覆として適している。施工は、樹脂焼き付け塗装、テープ被覆後焼き付けなどによる。また、撥水性があり、適用箇所における耐熱性を有しているものであれば皮膜の種類を問わない。
【0024】加振装置14は、フィンチューブ表面上の煤塵及び水滴を振動によって振るい落すものであり、その構造の例を図5に示す。
【0025】加振装置内のコイル24は、リード線21を介して電源20に接続されており、交流電流が流れると磁束の変化に従い、コイル内の磁石25と磁石の一端に設けられた振動子26が振動する。ここで、磁石を固定し、コイルと一体化して振動子が振動する構成としてもよく、実質的にフィンチューブに振動を与えられるものであればその構成を問わない。
【0026】本実施形態における振動子は振動に伴い、フィンチューブ12と接触又は非接触の状態を繰り返すものを示したが、他に常時フィンチューブに接触しているもの、あるいは常時非接触で空気を媒体として音波を伝えるものも適用できる。
【0027】振動を作用させる箇所は、図5に示すフィンチューブの管表面に限らず、伝熱管群を構成する部材、すなわち管板36、フィン15、管寄せ13、架台27のいずれに対して行ってもよい。
【0028】加振装置の設置は、煤塵及び水滴の付着に必要な振動が得られる範囲内に必要台数ずつ設置すればよい。
【0029】加振装置の動作は、本実施形態における電気的な手法のほか、機械的な手法によっても行うことが出来、振動の付与方法、周波数、振幅、振動の方向を問わない。また、振動の方向は単一のほか、複数の加振装置によって異なる方向への異なる時間での振動としてもよく、更に、異なる方向への同時的な複合振動でもよく、常時または間欠的に振動させてもよい。
【0030】「第2の実施形態」次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、図6に示すように、第1の実施形態における加振装置14をスピーカとして、音波により伝熱管に振動を与えるものであり、スピーカ14は、リード線21を介して信号出力装置38に接続されている。信号出力装置はスピーカ14に音響信号を送るためのもので、音響信号の周波数、波形等に限定はないが、騒音が問題とならぬよう可聴周波数帯域外とするのが望ましい。
【0031】図6におけるスピーカ14は伝熱管群35のガス流路23における上流側に設けたスピーカ案内部材、例えば軌条39に従い上下に移動可能なものを示しているが、さらに左右方向へ移動するものや、固定式のものでもよい。また、音波の放射方向を可変としてもよい。
【0032】本実施形態では加振装置と伝熱管が常時非接触であり、振動子の質量を軽くできるので高周波振動を発生できる。高周波振動では振幅が小さくても伝熱管表面の付着物に対して大きな加速度を与えることができ、付着物を脱離させやすいという利点がある。
【0033】「第3の実施形態」更に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では第1の実施形態または第2の実施形態における伝熱管群を複数に分割し、分割された伝熱管群又はこの伝熱管群の管寄せと、これを支持する架台との間に中継物40、具体的にはバネ、ゴムもしくは樹脂などの弾性体またはベアリング類などを介在させて、加振装置で中継物又は管寄せを振動させることによって、分割された伝熱管群が振動しやすい構成として、それぞれ独立に振動させるものである。
【0034】図7は、ダクトの断面を表わす図である。伝熱管群35は、管寄せ13をジョイント管31で左右に2分割して構成される。それぞれの管寄せの間及び管寄せから外部への配管との接続部に伸縮性のあるジョイント管31が設けられている。加振装置は、分割された伝熱管群の管寄せ13とこれを支持する架台27との間に設けられた中継物40を振動させるように、図8、図9に示されるような構成をとる。また、図10では架台と管寄せに中継物40として弾性体30を介在させ、加振装置を管寄せに設けて伝熱管群を振動させている。
【0035】図8は、架台27と管寄せ13との中継物40にボールベアリング32を複数用いた構成を示す。ボールベアリングは管寄せの底部に固定され、架台27の上を転がることができる。架台27にはモータ架台33を介してモータ28を設置し、モータ軸の先にカム29を設け、前記カムは2個のボールベアリングの間に挿入される。モータでカムを駆動することにより、伝熱管群を振動させることができる。
【0036】図9は、図8と同様に架台と伝熱管群又は管寄せとの中継物40にボールペアリングを用い、モータの回転運動をクランク34を介して往復運動に変換するものである。
【0037】図10は、架台27と伝熱管群又は管寄せ13との中継物40を弾性体30(具体的にはバネ)とし、加振装置を管寄せに設けて電気的に振動させる構成を示す。管寄せの底部に固定されて一体化された磁石のまわりにコイルを巻き、コイルはリード線を介して電源に接続される。振動は、電源からの交流電流によって生じる磁束の変化に従って、管寄せを介して磁石と一体化した伝熱管群に発生する。
【0038】本実施形態によれば分割された複数の伝熱管群のそれぞれに異なる位相の振動を付与し、それらが振動を打ち消しあってGGH全体又はダクトとしては最も振動が小さくなるように制御しやすいという利点がある。すなわち、ダクト内に設置されたそれぞれの伝熱管群の振動がそれぞれ同一方向に同時間的に振動すれば、ダクトに掛かる振動荷重は過大となるので、ダクトへの荷重に偏りを無くするように各伝熱管群への振動を打ち消し合うのである。
【0039】また、一つの架台に対して複数の加振装置を用いても振動の方向をダクトの前後、左右もしくは上下またはそれらを組み合わせた方向としてもよい。
【0040】以上説明したように、本発明の実施形態は、次のような構成と機能並びに作用を奏するものを含むものである。
【0041】伝熱管の表面に撥水性皮膜を形成して母材を腐蝕から保護すると同時に、煤塵や水滴が付着しにくいようにする。さらに、伝熱管に振動を与えることにより、管表面に付着した煤塵や水滴の除去を行うものである。
【0042】図4には、伝熱管表面に形成した撥水性皮膜上の水滴と皮膜のない伝熱管母材上の水滴とを模式的に示し、これによると、接触角が大きく、球状に近い撥水性皮膜上の水滴は、扁平な形状である母材上の水滴に比べ、伝熱管表面との接触面積が小さいため、外力により表面上を移動しやすいので、鉛直面に付着している水滴は流下しやすい。また、伝熱管表面に対して垂直な方向への加速度が生じたときには脱離しやすい。
【0043】本発明は、このような撥水性皮膜を伝熱管表面に形成して、煤塵や水滴の脱離が容易に起こる状態として、伝熱管自体を加振させることにより、煤塵及び水滴等を脱離させ、それらの付着を防止するものである。
【0044】伝熱管自体を振動させるため、ショットクリーニングのように伝熱管表面を損傷させることがなく、伝熱効率を高めるために伝熱管配置やフィンチューブのフィン山数を密にした場合でもブロアやショットクリーニングに比べ、除塵効果の低下が少ない。
【0045】
【発明の効果】本発明は、以上のような構成を採用することから、火力発電設備における低温熱回収部の伝熱効率向上、材料の腐蝕防止及び通風損失の低減が図れ、装置の小型化並びにプラントの運用効率の向上に多大な効果がある。
【出願人】 【識別番号】000005441
【氏名又は名称】バブコック日立株式会社
【出願日】 平成11年6月28日(1999.6.28)
【代理人】 【識別番号】100078134
【弁理士】
【氏名又は名称】武 顕次郎
【公開番号】 特開2001−12896(P2001−12896A)
【公開日】 平成13年1月19日(2001.1.19)
【出願番号】 特願平11−181852