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【発明の名称】 放熱器又は蒸発器用のチューブ
【発明者】 【氏名】太田 稔

【氏名】山本 憲

【氏名】山内 芳幸

【氏名】小林 修

【氏名】沖ノ谷 剛

【要約】 【課題】超臨界冷凍サイクルに適した放熱器用及び蒸発器用のチューブを提供する。

【解決手段】放熱器用のチューブの相当直径Dを0.25mm〜0.8mmとし、蒸発器用のチューブの相当直径deを0.46mm〜0.72mmとする。これにより、熱交換能力を高く維持することができるので、超臨界冷凍サイクルに適した放熱器用及び蒸発器用のチューブを得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルに適用される放熱器用のチューブであって、冷媒が流通する冷媒通路(111a)の相当直径(D)が略0.15mm以上、略0.8mm以下であることを特徴とする放熱器用のチューブ。
【請求項2】 前記冷媒通路(111a)の断面形状は、略円形であることを特徴とする請求項1に記載の放熱器用のチューブ。
【請求項3】 高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルに適用される蒸発器用のチューブであって、冷媒が流通する冷媒通路(211a)の相当直径(de)が略0.46mm以上、略0.72mm以下であることを特徴とする蒸発器用のチューブ。
【請求項4】 請求項3に記載の蒸発器用のチューブ(211)を複数本有する蒸発器であって、前記チューブ(211)間に配設されて、熱交換を促進するフィン(212)を有するとともに、前記フィン(212)の高さ寸法(h)が5mm以上、8mm以下であることを特徴とする超臨界冷凍サイクル用の蒸発器。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルに適用される放熱器又は蒸発器用のチューブに関するもので、車両用冷凍サイクルに用いて有効である。
【0002】
【従来の技術】フロンを冷媒とする通常の冷凍サイクル(以下、通常サイクルと呼ぶ。)の凝縮器用に適用されるチューブとして、例えば特公平5−87752号公報に記載の発明では、冷媒が流通する冷媒通路の相当直径Dを0.015インチから0.07インチの範囲としている。
【0003】なお、相当直径Dとは、図11に示すように、チューブの長手方向に延びる複数本の冷媒通路T1…Tk…Tnを1つの円形断面を有する冷媒通路に換算したときの直径を言うものであり、具体的には、下記数式1により定義される。
【0004】
【数1】D=4×(S1+…+Sk+…+Sn)/(L1+…Lk+…+Ln)
Sk:冷媒通路Tkの通路断面積Lk:冷媒通路Tkの濡れ縁長さ(冷媒通路の外周長さ)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、通常サイクルの高圧側(凝縮器)では、冷媒は温度一定で気相状態から液相状態に変化するのに対して、超臨界冷凍サイクルでは、相変化を伴わないで温度が変化していく。このため、凝縮器用に最適化された上記相当直径Dは、超臨界冷凍サイクルの放熱器に対しては、そのまま適用することができない。
【0006】同様に、超臨界冷凍サイクルの蒸発器に対しても、凝縮器用に最適化された上記相当直径Dをそのまま適用することができない。
【0007】本発明は、上記点に鑑み、超臨界冷凍サイクルに適した放熱器及び蒸発器用のチューブを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、発明者等は種々の検討を行ったところ、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルに適用される放熱器用のチューブにおいて、冷媒が流通する冷媒通路(111a)の相当直径(D)が略0.15mm以上、略0.8mm以下とすれば、放熱能力を高く維持することができ、超臨界冷凍サイクルに適した放熱器用のチューブを得ることができることを発見した。
【0009】また、超臨界冷凍サイクルに適用される蒸発器用のチューブにおいては、冷媒通路(211a)の相当直径(de)が略0.46mm以上、略0.72mm以下とすれば、熱交換能力を高く維持することができ、超臨界冷凍サイクルに適した蒸発器用のチューブを得ることができることを発見した。
【0010】なお、超臨界冷凍サイクル用の蒸発器においては、相当直径(de)が略0.46mm以上、略0.72mm以下とし、かつ、フィン(212)の高さ寸法(h)を5mm以上、8mm以下とすることが望ましい。
【0011】因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0012】
【発明の実施の形態】本実施形態は、本発明に係る放熱器用のチューブを二酸化炭素(CO2)を冷媒とする超臨界冷凍サイクルに適用したものであって、図1は本実施形態に係る放熱器100の斜視図である。
【0013】そして、図1中、111は冷媒が流通する複数本の偏平チューブ(以下、チューブと略す。)であり、これらチューブ111はアルミニウム合金を押し出し加工にて成形したものである。そして、チューブ111内には、図2に示すように、チューブ111の長手方向に延びるとともに、冷媒が流通する円形断面形状の冷媒通路111aが複数本形成されており、これら冷媒通路111aの相当直径Dは、0.15mm以上、0.8mm以下となるように選定されている。
【0014】ここで、相当直径Dは、前述した数式1により定義されるものであるが、本実施形態では、複数本の冷媒通路111aは、全て円形断面形状を有しているとともにその直径は全てd0であるので、相当直径Dは冷媒通路111aの直径d0に等しい。
【0015】なお、複数本のチューブ111間には、図1に示すように、波状にローラ成形されたアルミニウム製のフィン112が配設されており、これらフィン112及びチューブ111により冷媒と空気との間で熱交換を行うコア部110が構成されている。
【0016】また、113はコア部110の補強部材をなすサイドプレートであり、このサイドプレート113は、フィン112の表裏両面に被覆されたろう材によりチューブ111と共にフィン112にろう付け接合されている。そして、各チューブ111の長手方向両端には、チューブ111の長手方向と直交する方向に延びて各チューブ111に連通するヘッダタンク(以下、ヘッダと略す。)120が接合されている。
【0017】因みに、図1中、右側のヘッダ120は各チューブ111に冷媒を分配するものであり、左側ののヘッダ120は各チューブ111から流出した冷媒を集合させるものである。また、131は超臨界冷凍サイクルの圧縮機(図示せず)側に接続するための接続ブロックであり、132は超臨界冷凍サイクルの減圧器(図示せず)側に接続するための接続ブロックである。
【0018】次に、相当直径Dの放熱器100の放熱能力について述べる。
【0019】放熱器100の放熱能力とは、チューブ111からコア部110を通過する空気へ移動する熱量であるので、放熱能力は、チューブ111と冷媒との熱伝達率αによって決定される。ここで、熱伝達率αは、下記数式2により表すことができる。
【0020】
【数2】
α=0.023・Re0.8・Pr0.3・(λ/d)
=C1・(v・d/ν)0.8・(λ/d)
但し、C1≡0.023・Pr0.3=C1・v0.8/d0.2・λ/ν0.8Re:レイノルズ数Pr:プラントル数ν:動粘度係数v:冷媒の流速λ:冷媒の熱伝導率d:冷媒通路の通路直径そして、上記数式2から明らかなように、通路直径dが大きくなるほど、熱伝達率αが小さくなるので、通路直径dが大きくなるほど、放熱能力が低下する。
【0021】一方、冷媒通路111aの圧力損失ΔPは、下記数式3により表すことができる。
【0022】
【数3】ΔP=f・ρ・v2・L/dここで、冷媒通路内の摩擦係数fは下記数式4と表すことができる。
【0023】
【数4】
f=0.046/Re0.2=C2/(v・d/ν)0.2但し、C2≡0.046ここで、数式4を数式3代入すれば、下記数式5が得られる。
【0024】
【数5】
ΔP=C2/(v・d/ν)0.2・ρ・v2・L/d=C3・v1.8・/d1.2但し、C3≡C2・ρ・L・ν0.2したがって、通路直径dが大きくなるほど、冷媒通路111aの圧力損失ΔPが小さくなり、冷媒の流速vが小さくなるので、数式2より熱伝達率αが低下する。このため、通路直径dが大きくなるほど、放熱能力が低下する。
【0025】そこで、発明者等は、上記熱伝達率αについての考察を基に、コア部110の幅寸法W(≒チューブ111の長径寸法)をパラメータとして、相当直径Dと放熱能力(性能)Qとの関係を電子計算機にてシミュレーションしたところ、図3に示すような結果を得た。
【0026】次に、本実施形態の特徴を述べる。
【0027】上述の考察及び図3から明らかなように、冷媒通路111aの相当直径Dは、0.15mm以上、0.8mm以下とすれば、放熱能力を高く維持することができ、超臨界冷凍サイクルに適した放熱器用のチューブを得ることができる。
【0028】そこで、本実施形態では、相当直径Dは、略0.15mm以上、略0.8mm以下とした。
【0029】ところで、凝縮器用のチューブでは、一般的に、図4に示すように、矩形断面形状を有する冷媒通路111bが採用されている。これは、凝縮器用のチューブでは、冷媒通路111b内を冷媒が流通しながら、冷媒が凝縮(液化)していくため、通路断面の矩形とすると、図4に示すように、冷媒通路111b内の角部に液化した冷媒が溜まりやすいので、冷媒通路111bの内壁面に薄い液冷媒の膜を形成しやすく、気相冷媒を液化し易い。
【0030】しかし、超臨界冷凍サイクルでは、前述のごとく、高圧側(放熱器100内)で冷媒が相変化しないので、冷媒通路111aの断面形状を矩形とする必要がない。
【0031】また、冷媒通路を矩形状とすると、図5に示すように、各角部で発生した温度境界層が冷媒流れ後流側で重なってしまうため、熱伝達率αが低下してしまうという問題が新たに発生する。
【0032】これに対して、本実施形態のごとく、冷媒通路111aを円形状とすると、温度境界層が発生し難いので、熱伝達率αが低下してしまうことを防止できる。したがって、放熱能力を高く維持することができ、超臨界冷凍サイクルに適した放熱器用のチューブを得ることができる。
【0033】(第2実施形態)本実施形態は、車両用空調装置の蒸発器に適用したものであって、図6(a)は本実施形態に係る蒸発器200の斜視図であり、図2は蒸発器200の正面図である。なお、この蒸発器200は、車室内に吹き出す空気の通路を構成する空調ケーシング(図示せず)内に配設されて、空調ケーシング内を流通する空気を冷却するものである。
【0034】図6(a)、7中、211は冷媒(流体)が流通する複数本のチューブであり、これら複数本のチューブ211間には、冷媒と空気との熱交換を促進する波状の冷却フィン(以下、フィンと略す。)212が配設されている。そして、このフィン212とチューブ211とがチューブ211の長手方向及び空気の流通方向と直交する方向(紙面左右方向)に交互に積層されて、冷媒と空気とを熱交換する熱交換コア(以下、コアと略す。)210が構成されている。
【0035】ここで、チューブ211内には、図8に示すように、チューブ211の長手方向に延びるとともに、冷媒が流通する円形断面形状の冷媒通路211aが複数本形成されており、これら冷媒通路211aの相当直径deは、0.46mm以上、0.72mm以下となるように選定されている。
【0036】ここで、相当直径deは、前述した数式1により定義されるものであるが、本実施形態では、複数本の冷媒通路211aは、全て円形断面形状を有しているとともにその直径は全てd0であるので、相当直径deは冷媒通路211aの直径d0に等しい。
【0037】なお、本実施形態では、チューブ221は、アルミニウム材を押し出し加工又は引き抜き加工にて一体成形されたものであり、このチューブ221は、図9に示すように、空気流れに直列に並んだ2本のチューブ221を2組として、フィン222とチューブ221との積層方向(紙面左右方向)に2列に並んでいる。
【0038】また、チューブ221の長手方向両端側それぞれには、図6(a)、7に示すように、フィン222とチューブ221との積層方向に延びるとともに、各チューブ221の冷媒通路に連通する第2、2タンク222、222が接合されており、これらタンク222、222(以下、第2、2タンク222、222を総称してタンク220と総称する。)は、図9に示すように、空気流れに直列に並んだ一対のチューブ221それぞれに対応する(連通する)2つのタンク空間220a、220bが形成されている。
【0039】なお、本実施形態に係るタンク220は、コア220側のコアプレート220cと、コアプレート220cとともにタンク空間220a、220bを構成するタンク本体220dとをろう付け接合することにより形成したものである。
【0040】ところで、コア220のうち積層方向両端側には、図6(a)、7に示すように、チューブ221と平行な方向に延びるサイドプレート230が配設されており、このサイドプレート230の長手方向端部には、図6(c)に示すように、タンク220の長手方向端部を閉塞するキャップ部232が形成されている。
【0041】なお、サイドプレート230は、コア220のうち積層方向両端側に位置するフィン222を保護する(潰れることを防止する)とともに、ろう付け工程時にコア220をワイヤにて仮固定する際に、その両端側に位置するフィン222をチューブ221に押さえ付ける押圧治具を兼ねるものである。
【0042】ここで、チューブ221及びサイドプレート230は、フィン222の表裏両面にクラッド(被覆)されたろう材によりろう付け接合され、チューブ221は、コアプレート220cの表裏両面にクラッド(被覆)されたろう材により、タンク本体220dと共にコアプレート220cにろう付け接合され、キャップ部232は、タンク220に塗布又は溶射等の手段により被覆されたろう材により接合されている。なお、ここで述べたろう付け方法は一例であり、その他の方法にろう付けしても良いことは、言うまでもない。
【0043】因みに、サイドプレート230のうちキャップ部232以外の部位には、波トタン状に凹凸232に形成されており、この凹凸230によりサイドプレート230の曲げ剛性を高めるとともに、蒸発器200を空調ケーシング内に配設(固定)した際に、凹凸232と空調ケーシングの内壁に設けられた凸部とが噛み合うことにより迷路構造(ラビリンス構造)を形成し、蒸発器200と空調ケーシングの内壁との隙間から空気が漏れることを防止している。また、図6(b)中、230aは冷媒流入口であり、230bは冷媒流出口である。
【0044】次に、本実施形態の特徴を述べる。
【0045】図10は、蒸発器200の外形寸法(高さH、幅W、厚みT)、蒸発器200の通風抵抗、蒸発器200内の圧力を一定とした場合において、フィン212のフィン高さhをパラメータとして相当直径deと蒸発器200の熱交換能力との関係をコンピュータシミレーションした結果であり、この図から明らかなように、実用的なフィン高さh範囲(5mm以上、8mm以下)では、冷媒通路211aの相当直径deが略0.46mm以上、略0.72mm以下の範囲内に熱交換能力が最大となる相当直径deが存在することが判る。したがって、相当直径deが略0.46mm以上、略0.72mm以下に設定することが望ましい。
【0046】因みに、二酸化炭素を冷媒とする超臨界冷凍サイクルの蒸発器用チューブの相当直径deとして、「INTERNATIONAL JOURANAL OFREFRIGERATION」のVolume21 Number 3 1998に0.79mmという記載があるが、この学会誌には、0.79mm以下において、熱交換能力の最大値が存在するといった記載はなく、また、それを示唆する記載もない。そして、相当直径deが略0.46mm以上、略0.72mm以下とすることが望ましいという結論は、発明者等の検討により、今回初めて見い出されたものである。
【0047】なお、図10から明らかなように、フィン高さhを5mmとした場合には、相当直径deが略0.3mm以上、略0.78mm以下に設定し、フィン高さhを6mmとした場合には、相当直径deが略0.36mm以上、略0.78mm以下に設定し、フィン高さhを7mmとした場合には、相当直径deが略0.4mm以上、略0.78mm以下に設定すれば、フィン高さhを8mm以上とした場合の最大熱交換能力の99%レベルの性能を確保することができる。つまり、相当直径deを略0.46mm以上、略0.72mm以下に設定すれば、実用的なフィン高さである5mm以上、8mm以下において、その性能を十分に発揮することができる。
【0048】(その他の実施形態)ところで、上述の実施形態では、二酸化炭素を冷媒としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、エチレン、エタン、酸化窒素等を冷媒とする超臨界サイクルの放熱器又は蒸発器にも適用することができる。
【0049】また、冷媒通路111a、211aは、上述の実施形態のごとく、丸状に限定されるものではなく、その他形状であってもよい。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成12年2月25日(2000.2.25)
【代理人】 【識別番号】100100022
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋二 (外2名)
【公開番号】 特開2001−194081(P2001−194081A)
【公開日】 平成13年7月17日(2001.7.17)
【出願番号】 特願2000−54425(P2000−54425)