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【発明の名称】 熱交換器の修理方法
【発明者】 【氏名】長屋 隆彦

【氏名】福田 淳

【氏名】鈴木 善文

【要約】 【課題】高価な設備を必要とすることなく、短時間でアルミニウム製コア部10のチューブ4の穴明き部14の修理を行うことで、品質の安定した修理を行うことを可能とするアルミニウム製熱交換器の修理方法を提供する。

【解決手段】チューブ4とコルゲートフィン5とを交互に複数積層してなるアルミニウム製コア部10のチューブ4の穴明き部14の周辺をハンマーでたたき凹み部15を形成する。このとき、凹み部15は、凹み部15の直径が穴明き部14の穴径の約2倍〜20倍程度の凹状となるように、しかも凹み部15の深さが1mm〜8mm程度の凹状となるように成形する。そして、エポキシ系接着剤よりも硬化時間の短いアクリル系接着剤13を、凹み部15およびその凹み部15の周辺のコルゲートフィン5の内部へ所定の膜厚(例えば5mm)以上供給できるように塗布することで、アクリル系接着剤13の流出を防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】(a)アルミニウム製熱交換器の破損箇所の周辺を凹ませて凹み部を形成する第1工程と、(b)前記熱交換器の破損箇所の周辺に設けた凹み部およびその周辺に接着剤を塗布する第2工程とを備えた熱交換器の修理方法。
【請求項2】請求項1に記載の熱交換器の修理方法において、前記接着剤は、主剤および硬化剤よりなるアクリル系接着剤を使用することを特徴とする熱交換器の修理方法。
【請求項3】請求項1または請求項2に記載の熱交換器の修理方法において、前記凹み部は、前記熱交換器の破損箇所の2倍以上20倍以下の直径で、且つ1mm以上8mm以下の深さの凹状となるように成形することを特徴とする熱交換器の修理方法。
【請求項4】請求項1ないし請求項3のうちいずれかに記載の熱交換器の修理方法において、前記熱交換器は、アルミニウムを主体とする金属により形成されたチューブとアルミニウムを主体とする金属により形成されたコルゲートフィンとを交互に複数積層してなるアルミニウム製コア部を備え、前記熱交換器の破損箇所は、前記アルミニウム製コア部のチューブに開いた穴であることを特徴とする熱交換器の修理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジン冷却装置のラジエータ、あるいは車両用空調装置のコンデンサまたはヒータコア等の熱交換器の修理方法に関するもので、特にアルミニウム製コア部に開いた穴を接着剤によって塞ぐようにしたアルミニウム製熱交換器の修理方法に係わる。
【0002】
【従来の技術】近年、アルミニウム製熱交換器の展開に伴い市場でのアルミニウム製コア部の穴明き修理において、アルミニウムを主体とする金属は低融点であるため、銅製熱交換器のようなガスバーナ等による半田付け修理が不可能である。そこで、アルミニウム製コア部のチューブに明いた穴をエポキシ系接着剤によって塞ぐようにした修理方法が一般に成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来のアルミニウム製コア部の穴明き修理方法においては、エポキシ系接着剤の硬化に2〜3時間と非常に時間がかかってしまう。また、短時間でエポキシ系接着剤を硬化させようとすると、高温槽等の設備を必要としてしまう。したがって、穴明き修理作業に長時間かかる、もしくは高価な専用の設備を導入する必要があるといった問題がある。
【0004】また、穴明き修理方法においても、図5(a)、(b)に示したように、直接エポキシ系接着剤101を、アルミニウム製コア部のチューブ102の穴明き部103に塗布しているため、エポキシ系接着剤101が流れることで膜厚が薄くなり、穴明き部103が塞がらなかったり、穴明き修理後に、短期間に洩れが再発生するといった問題が生じている。
【0005】
【発明の目的】本発明は、上記問題点に鑑み、品質の安定した修理を行うことを可能とすることを目的とする。また、高価な設備を必要とすることなく、短時間で熱交換器の破損箇所の修理を行うことを可能とすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明によれば、アルミニウム製熱交換器の破損箇所の周辺を凹ませることにより設けた凹み部およびその凹み部の周辺に接着剤を塗布することにより、アルミニウム製熱交換器の破損箇所の周辺から接着剤が流れ出すことはなく、接着剤の膜厚が薄くなることはない。それによって、接着剤が硬化した後の剥離等の不具合を防止することができるので、短期間で流体の洩れが再発生することを防止でき、品質の安定した修理を行うことができる。
【0007】請求項2に記載の発明によれば、アルミニウムを主体とする金属により製造された熱交換器の破損箇所の周辺を凹ませることにより設けた凹み部に、主剤および硬化剤よりなるアクリル系接着剤を塗布することにより、高価な設備を必要とすることなく、常温で短時間に修理作業を完了することができる。
【0008】請求項3に記載の発明によれば、熱交換器の破損箇所の2倍以上20倍以下の直径で、且つ1mm以上8mm以下の深さの凹状となるように凹み部を形成することにより、接着剤が凹み部およびその凹み部の周辺に所定の膜厚以上供給できるようになる。
【0009】請求項4に記載の発明によれば、アルミニウム製コア部のチューブに開いた穴の周辺を凹ませることにより設けた凹み部に接着剤を塗布することにより、接着剤が硬化した後の剥離等の不具合を防止することができるので、短期間にチューブ内を流れる流体の洩れが再発生することを防止できる。
【0010】
【発明の実施の形態】〔実施形態の構成〕図1ないし図4は本発明の実施形態を示したもので、図1はアルミニウム製熱交換器を示した図である。
【0011】本実施形態のアルミニウム製熱交換器1は、図示しないエンジンの冷却水を空気によって冷却するエンジン冷却装置のラジエータである。このアルミニウム製熱交換器1は、下方の出口タンクであるロアタンク2、上方の入口タンクであるアッパータンク3、この2つのタンク2、3を連通する複数のチューブ4、および隣設する2つのチューブ4間に配されたコルゲートフィン5等から構成される周知の構造のもので、一体ろう付けにより製造されている。
【0012】ロアタンク2およびアッパータンク3は、アルミニウムを主体とするアルミニウム合金板(金属板)をプレス加工することによって略半円弧状に形成されている。そして、ロアタンク2の側面には、出口パイプ6が接続され、アッパータンク3には、入口パイプ7が接続されている。なお、アッパータンク3には、加圧弁と負圧弁とを内蔵したアルミニウム製キャップ8が着脱自在に取り付けられる円管形状の補給管9が設けられている。
【0013】ここで、チューブ4は、アルミニウムを主体とするアルミニウム合金板(金属板)をプレス加工することによって略長円形状に形成されている。また、コルゲートフィン5は、アルミニウムを主体とするアルミニウム合金板(金属板)をローラ加工することによって略波形形状に形成されて、表面に熱交換効率を高めるためのルーバ(図示せず)が形成されている。
【0014】そして、本実施形態では、このようなチューブ4とコルゲートフィン5とを交互に複数積層することによってアルミニウム製コア部10が構成される。そのアルミニウム製コア部10は、チューブ4とコルゲートフィン5とを交互に積層した積層方向の両外側にそれぞれサイドプレート11を配置している。このサイドプレート11は、アルミニウム製コア部10を補強する補強材として働くと共に、車両への取り付けを行うためのブラケットとして働く。
【0015】〔実施形態の修理方法〕次に、本実施形態のアルミニウム製熱交換器1のアルミニウム製コア部10の破損箇所の修理方法を図1ないし図4に基づいて簡単に説明する。
【0016】車両に搭載されるアルミニウム製熱交換器1、例えばエンジン冷却装置に組み込まれるラジエータ、あるいは車両用空調装置の冷凍サイクルに組み込まれるコンデンサ(冷媒凝縮器)は、車両の走行風を受け易い場所に設置されている関係上、車両の走行中に車輪が道路上の石を巻き上げてその石がアルミニウム製コア部10に当たってチューブ4に穴を明けてしまう可能性がある。また、エンジンルーム内の車両搭載部品を修理中に誤って工具等をアルミニウム製コア部10に当ててしまい、チューブ4に穴を明けてしまう可能性もある。
【0017】そこで、アルミニウム製熱交換器1のアルミニウム製コア部10の破損箇所を修理する場合に、アルミニウム製コア部10のチューブ4に明けられた穴明き部(破損箇所)14を塞ぐ接着剤として、エポキシ系接着剤よりも硬化時間が短く、主剤、硬化剤からなるアクリル系接着剤13を使用する。
【0018】先ず、アルミニウム製コア部10のチューブ4に明けられた穴明き部14の周辺をハンマー等の工具(図示せず)を使用してたたき、図2(a)、(b)に示したような凹み部15を形成する。このとき、凹み部15は、その凹み部15の直径が穴明き部14の穴径の約2倍〜20倍程度の凹状となるように、しかも凹み部15の深さが1mm〜8mm程度の凹状となるように成形することが望ましい。
【0019】アルミニウム製コア部10に凹み部15を設ける理由は、アクリル系接着剤13の硬化後の剥離防止、アルミニウム製コア部10に塗布したアクリル系接着剤13に所定の膜厚を確保するため、更には、アクリル系接着剤13の接着面積を拡大するため、およびアクリル系接着剤13が溜まる凹み部(溜まり部)15を確保するためである。
【0020】そして、アルミニウム製コア部10をアルコールで脱脂した後に、アルミニウム製コア部10を洗浄して自然乾燥した後に、接着剤カプセル(図示せず)を取り出して接着剤カプセル内に封入されているペースト状のアクリル系接着剤13を注入機(図示せず)にセットする。
【0021】そして、注入機内にセットされたペースト状のアクリル系接着剤13を、図3(a)、(b)に示したように、凹み部15およびその凹み部15の周辺のコルゲートフィン5内部へ所定の膜厚(例えば約5mm)以上供給できるように塗布する。アルミニウム製コア部10に設けた凹み部15に塗布されたペースト状のアクリル系接着剤13は、凹み部15から流れ出すことなく、凹み部15に留まる。
【0022】そして、アクリル系接着剤13が凹み部15およびその凹み部15の周辺のコルゲートフィン5内部に塗布されたアルミニウム製コア部10を室内温度(常温)で所定時間(例えば約20分間程度)自然乾燥させることにより、アクリル系接着剤13が硬化して、チューブ4の穴明き部14が塞がれる(図4参照)。これにより、アルミニウム製コア部10の破損箇所の修理作業が完了する。
【0023】なお、本実施形態では、ロアタンク2およびアッパータンク3をアルミニウム製コア部10に接続した状態で修理作業を行ったが、ロアタンク2およびアッパータンク3をアルミニウム製コア部10から外した状態で修理作業を行っても良い。
【0024】〔実施形態の効果〕以上のように、本実施形態のアルミニウム製熱交換器1のアルミニウム製コア部10は、穴明き部14を塞ぐ接着剤として主剤、硬化剤からなるアクリル系接着剤13を使用することで、アルミニウム製コア部10の穴明き部14にペースト状のアクリル系接着剤13を塗布した後に、自然乾燥による硬化が約20分間程度で完了する。
【0025】したがって、アルミニウム製コア部10の修理作業がトータルの作業時間(凹み部15を設けてからアクリル系接着剤13の自然乾燥が完了するまでに要する時間)が約30分間程度となり、室内温度(常温)での短時間でのアルミニウム製コア部10の修理作業が可能となる。
【0026】また、アルミニウム製コア部10の穴明き部14の周辺を凹ませて凹み部15を設け、その凹み部15およびその凹み部15の周辺のコルゲートフィン5内部へ所定の膜厚(例えば約5mm)以上供給されるようにアクリル系接着剤13を塗布することで、アクリル系接着剤13が流れ出すことはなく、アクリル系接着剤13の硬化後の剥離を防止することができる。
【0027】さらに、アルミニウム製コア部10の穴明き部14に塗布したアクリル系接着剤13に所定の膜厚(例えば約5mm)を確保することができるので、アクリル系接着剤13の膜厚が薄くなり、穴明き部14が塞がらないような不具合を回避できる。これにより、冷媒の洩れが再発生せず、品質の安定した修理が可能となる。
【0028】〔他の実施形態〕本実施形態では、アルミニウム製熱交換器1としてエンジン冷却装置のラジエータに本発明を適用した例を説明したが、アルミニウム製熱交換器として車両用空調装置のコンデンサやヒータコアに本発明を適用しても良い。
【0029】本実施形態では、アルミニウム製コア部10のチューブ4の穴明き部が1つの場合を説明したが、アルミニウム製コア部10のチューブ4の穴明き部が2つ以上の場合には本発明の修理方法をそれぞれの穴明き部で行うようにしても良い。また、近い場所にチューブ4の穴明き部がある場合には、2つ以上の穴明き部に渡って凹状に凹み部を設けて修理するようにしても良い。
【0030】本実施形態では、アルミニウム製コア部10のチューブ4の破損箇所を塞ぐ接着剤としてアクリル系接着剤13を使用したが、アルミニウム製熱交換器1の流路部の破損箇所を塞ぐ接着剤としてエポキシ系接着剤等の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂製の接着剤を使用しても良い。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成11年9月17日(1999.9.17)
【代理人】 【識別番号】100080045
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
【公開番号】 特開2001−91177(P2001−91177A)
【公開日】 平成13年4月6日(2001.4.6)
【出願番号】 特願平11−262956