| 【発明の名称】 |
易重合性化合物の熱交換方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】岡崎 和人
【氏名】松本 行弘
【氏名】中原 整
【氏名】岩戸 博夫
|
| 【要約】 |
【課題】液状易重合性化合物(例えば、アクリル酸エステル)、あるいは易重合性化合物含有液(例えば、アクリル酸水溶液)を熱交換するにあたり、熱交換器内での重合を効果的に防止して、長期にわたり安定して熱交換を行えるようにした、易重合性化合物の熱交換方法を提供する。
【解決手段】熱交換器として、液流路間隔が6mm以上の竪型スパイラル式熱交換器を使用し、液の平均流速が0.2m/秒以上であり、かつ液の滞留時間が100秒を超えない条件下に熱交換を行う。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 易重合性化合物を熱交換するにあたり、熱交換器として、液流路間隔が6mm以上の竪型スパイラル式熱交換器を使用し、液の平均流速が0.2m/秒以上であり、かつ液の滞留時間が100秒を超えない条件下に熱交換を行うことを特徴とする易重合性化合物の熱交換方法。 【請求項2】 易重合性化合物が(メタ)アクリル酸およびそのエステルから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の熱交換方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は易重合性化合物の熱交換方法に関し、詳しくは(メタ)アクリル酸エステルなどの液状易重合性化合物、または易重合性化合物含有液を熱交換するにあたり、熱交換器内での易重合性化合物の重合を効果的に防止する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】液の加熱・冷却用の熱交換器としては一般に多管式熱交換器が用いられている。しかし、この多管式熱交換器を用いて、(メタ)アクリル酸などの易重合性化合物を含有する液を熱交換すると、熱交換器内で易重合性化合物の重合が発生して、熱交換能力の低下、ひいては熱交換器内部の閉塞に至り、長期にわたる安全運転ができなくなる。 【0003】上記多管式熱交換器での重合は次のようにして起こるものと考えられている。易重合性化合物含有液(以下、単に「液」ということもある)を胴側へ流して熱交換を行うと、邪魔板周辺において生じる液滞留部により重合物が生成し、その周辺のチューブ外面に付着する。その結果、伝熱抵抗が増加して熱交換能力が低下する。また、易重合性化合物含有液をチューブ側へ流した場合も、仕切り室において生じる液滞留部にて重合物が生成し、チューブ内面などに付着して、熱交換能力が低下する。さらに、胴、チューブのいずれの側も流路が単一でないため、重合物が付着した箇所では液の流れが滞り、その結果、付着重合物は連鎖成長して、これが更なる熱交換能力の低下、そして最後には熱交換器内部の閉塞に至ることになる。 【0004】このように、多管式熱交換器を用いては、易重合性化合物含有液を長期にわたり安定して熱交換することは困難であった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技術の問題を解決し、液状易重合性化合物、あるいは易重合性化合物含有液を熱交換するにあたり、その重合を効果的に防止して、長期にわたり安定して熱交換を行えるようにした、易重合性化合物の熱交換方法を提供することを目的とするものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】熱交換器内における易重合性化合物の重合が原因となる、熱交換器の熱交換能力の低下、および熱交換器内部の閉塞は、前記のとおり、1)液滞留部において重合物が形成され、2)この重合物が伝熱面へ付着し、3)付着重合物が連鎖成長することにより引き起こされる。 【0007】本発明者らの研究によれば次のことがわかった。 (1)熱交換器内での閉塞原因1)〜3)の防止には、液流路を単一流路とし、かつ、熱交換器内部での液滞留部を極力低減することが望ましい。 (2)単一流路の熱交換器の例としては二重管式熱交換器およびスパイラル式熱交換器があるが、前者は設置スペースの極端な増加を伴うため、工業的に採用するには後者のスパイラル式熱交換器のほうが好ましい。 (3)一般に、スパイラル式熱交換器には、竪型および横型があり、いずれも熱交換を行う二流体の流路は単一、かつ、渦巻流路であり、また、向流にて熱交換を行う。なお、蒸気やガス等の密度の小さい流体を、加熱または冷却媒体に使用する場合は、これらを軸方向に流す直交流式の竪型スパイラル式熱交換器が使用されることもある。 (4)スパイラル式熱交換器の特徴として、スパイラルプレート付着物への流体の衝突エネルギーによる自己浄化作用が知られている。従って、熱交換器内部にて閉塞等のトラブルを起こしやすいスラリー含有液の熱交換に該熱交換器が使用されることも多々ある。また、自己洗浄作用は一般に横型のほうが大きいとされている。 (5)しかし、易重合性化合物含有液の熱交換においては、生成、付着した重合物の粘着性が強く、スパイラルプレートに付着した該重合物に対しては、自己洗浄作用を十分に発揮できない。 (6)従って、易重合性化合物の熱交換時における閉塞等の防止には熱交換内での重合物の生成を抑制すると同時に、生成した重合物のスパイラルプレートへの付着防止が必要となる。 (7)従来、スラリー含有液に対しては、横型のほうが閉塞防止に、より有利であるとされていたが、易重合性化合物含有液の場合には、むしろ竪型のほうにその効果が認められた。 (8)また、熱交換器内における重合を効果的に防止し、長期間の安定運転を可能にするには、液側の流路間隔が6mm以上の竪型スパイラル式熱交換器を使用し、流路断面積あたりの液の平均流速が0.2m/秒以上、好ましくは0.4〜1m/秒であり、かつ、液の熱交換器における滞留時間を100秒以下、好ましくは60〜15秒の条件にて熱交換を行うことが必要である。 【0008】本発明は、上記知見に基づき完成されたものである。 【0009】すなわち、本発明は、易重合性化合物を熱交換するにあたり、熱交換器として、液流路間隔が6mm以上の竪型スパイラル式熱交換器を使用し、液の平均流速が0.2m/秒以上であり、かつ液の滞留時間が100秒を超えない条件下に熱交換を行うことを特徴とする易重合性化合物の熱交換方法である。 【0010】なお、液の平均流速および液の滞留時間は次のように定義されるものである。 平均流速(m/秒)=(スパイラル式熱交換器入口での流量(m3/秒))/(流路間隔(m)×流路幅(m)) 滞留時間(秒)=(伝熱面積(m2)×流路間隔(m))/(スパイラル式熱交換器入口での流量(m3/秒)) 【0011】 【発明の実施の形態】図1は竪型向流式のスパイラル式熱交換器の縦断面概念図である。図2は横型向流式のスパイラル式熱交換器の縦断面概念図である。また、図3は、竪型直交流式のスパイラル式熱交換器の縦断面概念図である。 【0012】図1〜3において、1は液状易重合性化合物(または易重合性化合物含有液)の流路、2は熱交換用媒体の流路、3は流路間隔、4は流路幅を示す。 【0013】スパイラル式熱交換器は一般に市販されており、本発明ではこれら市販のものを使用することができる。例えば、(株)クロセ製のKSH−1V型などを挙げることができる。流路形式については、液側の流路においてスパイラルフローが得られる限り向流式、直交流式のいずれでもよい。 【0014】本発明において、液の流路間隔は6mm以上、好ましくは8〜15mmであり、流路間隔が6mm未満では重合を防止することはできない。液の平均流速は0.2m/秒、好ましくは0.4〜1m/秒であり、平均流速が0.2m/秒未満では重合を防止することができない。また、液の滞留時間は100秒を超えず、好ましくは60〜15秒である。100秒を超えると重合を防止することができない。 【0015】本発明の易重合性化合物とは熱交換の際に重合する化合物を意味する。その代表例としては、(メタ)アクリル酸およびそのエステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、ヒドロキシエチルエステルなどを挙げることができる。 【0016】本発明の易重合性化合物の熱交換とは、上記のような易重合性化合物のうちの、熱交換の際に液状である易重合性化合物、あるいは易重合性化合物を含有する液(例えば、水溶液)の熱交換を意味する。もちろん、易重合性化合物は単独でも、あるいは2種以上の混合物であってもよい。 【0017】 【発明の効果】本発明により、竪型スパイラル式熱交換器を用いて熱交換を行うことにより、熱交換器内の重合を効果的に防止することができる。これにより、熱交換器、ひいては装置全体を長期にわたり安定して運転することができる。 【0018】 【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。 実施例1アクリル酸を60質量%含有する水溶液を35℃から70℃まで加熱するために、流路間隔8mmの竪型スパイラル式熱交換器(型式KSH−1V(株)クロセ製)を使用し、アクリル酸水溶液を平均流速0.6m/秒、滞留時間28秒の条件下に通して熱交換を行った。運転開始から約6ヶ月後、運転を停止し、熱交換器内部の点検を行ったが、スパイラルプレート表面には重合物の付着は認められなかった。 比較例1実施例1において、熱交換器として多管式熱交換器を用い、胴側に蒸気、チューブ側にアクリル酸水溶液を平均流速0.7m/秒で流した以外は実施例1と同様にして熱交換を行った。運転開始から約2ヶ月後、チューブ内ではアクリル酸の重合が起こり、閉塞、運転中止に至った。 比較例2実施例1において、実施例1で使用したものと同じ流路間隔の横型スパイラル式熱交換器を使用し、アクリル酸水溶液の導入条件を平均流速0.5m/秒、滞留時間35秒に変更した以外は、実施例1と同様にして熱交換を行った。運転開始から約4ヶ月後、アクリル酸水溶液を所定量供給することが不可能となり、運転を停止し、内部の点検を行ったところ、スパイラルプレート全面にわたって重合物が付着していた。 実施例2アクリル酸ブチルエステルを70℃から40℃まで冷却するために、実施例1で用いたものと同じ流路間隔の竪型スパイラル式熱交換器を使用し、アクリル酸ブチルエステルを平均流速0.24m/秒、滞留時間75秒の条件下に通して熱交換を行った。運転開始から約4ヶ月後、運転を停止し、内部点検を行ったが、スパイラルプレートにおける重合物の付着は認められなかった。 比較例3実施例2において、条件を平均速度0.15m/秒、滞留時間120秒に変更した以外は、実施例2と同様に熱交換を行った。運転開始から約1ヶ月後には、アクリル酸エステルを所定量供給することが不可能となり、運転を停止した。内部を点検したところ、スパイラルプレート表面には重合物が付着していて閉塞を起こしかけていた。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000004628 【氏名又は名称】株式会社日本触媒
|
| 【出願日】 |
平成11年12月28日(1999.12.28) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2001−194077(P2001−194077A) |
| 【公開日】 |
平成13年7月17日(2001.7.17) |
| 【出願番号】 |
特願平11−374094 |
|