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【発明の名称】 多管式熱交換器
【発明者】 【氏名】西村 武

【氏名】松本 行弘

【氏名】中村 大介

【氏名】森 正勝

【氏名】百々 治

【要約】 【課題】伸縮継手を設けた多管式熱交換器における胴側流体の循環効率を向上させて温度分布の均一化を図る。

【解決手段】胴側流体の侵入防止板を胴の周方向に設けた伸縮継手部に取り付けてなることを特徴とする多管式熱交換器およびかかる熱交換器をもちいる接触気相酸化反応により達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 胴側流体の侵入防止板を胴の周方向に設けた伸縮継手部に取り付けてなることを特徴とする多管式熱交換器。
【請求項2】 さらに、胴側流体の短絡防止板が胴と邪魔板との間に設置されてなることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の多管式熱交換器を用いることを特徴とする接触気相酸化反応。
【請求項4】 請求項1または請求項2に記載の多管式熱交換器胴内を一枚以上の遮蔽板にて、反応管長さ方向に対して2以上の空間に仕切られてなることを特徴とする反応器。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多管式熱交換器、かかる熱交換器を用いる接触気相酸化反応および反応器に関する。
【0002】
【従来の技術】多管式反応器では、反応管束(シェル側)に溶融塩などの熱媒を充填して循環させるとともに、ガス状の反応原料を反応管内に供給して反応を行い、その際に発生する熱を上記熱媒で回収することにより所定の接触気相酸化反応条件を維持することが行われている。
【0003】接触気相酸化反応としては、プロピレンからアクロレイン、イソブチレンからメタクロレイン、ベンゼンから無水マレイン酸、キシレンおよび/またはナフタレンから無水フタル酸、アクロレインからアクリル酸、メタクロレインからメタクリル酸等を例示できる。
【0004】これらの接触気相酸化反応は、極めて多量の発熱をともない、しばしば局部的に異常高温帯(ホットスポット)が発生する。このような発熱により、反応器自体が熱歪の影響を受けることがある。
【0005】特に、仕切板を備えて複数の温度差のある部屋をもつ反応器では、仕切板の両側の2室の温度差が大きいと、その部分に大きな熱応力が発生し、温度差がある水準以上になると、胴板の許容応力を越えた熱応力が発生し、反応器が破損する恐れがある。そこで、発熱による反応器への影響を低減するため、胴のほぼ水平に一周するように、断面形状が略半円形である長尺物を内面を反応器の内側に向けて、略半円状の上端および下端をそれぞれ溶接などの公知の方法で、ほぼ水平に切断された反応器の胴に接合した、胴側流体などの熱の上昇または下降により生ずる歪を吸収可能な伸縮継手等が採用されている。
【0006】しかしながら、この方法では胴側流体が伸縮継手内に侵入して胴側流体の移動方向が妨げられ、反応により生じた熱が十分に除去できないという問題点がある。
【0007】また、モリブデン−ビスマス−鉄からなる複合酸化物触媒などのモリブデンを含む触媒の欠点の一つとして反応系に水蒸気が存在する場合、モリブデン成分が昇華し易く、特に高温において、モリブデン成分の昇華は助長される(特開昭55−113730号公報)。また、プロピレンの酸化反応の如く発熱を伴う反応においては、触媒層に局部的に異常高温部(ホットスポット)が発生し、よりモリブデンが昇華し易い環境を与える結果となる。さらに、これら昇華したモリブデン成分は温度の低い部位に蓄積し、触媒層の圧力損失の上昇を招く。その結果として、ホットスポットを更に挙げることになる。すなわち、反応温度の制御が困難であるという問題点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的は、上記の事情に着目してなされたものであって、熱交換器内の胴側流体の移動が伸縮継手に妨害されることがない多管式熱交換器、胴側流体の温度分布が低減された熱交換器を用いる接触気相酸化反応および反応器を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、胴側流体の侵入防止板を胴の周方向に設けた伸縮継手部に取り付けてなることを特徴とする多管式熱交換器によって達成される。
【0010】また、本発明の目的は、上記の多管式熱交換器を用いることを特徴とする接触気相酸化反応によって達成される。
【0011】さらに、本発明の目的は、上記多管式反応器胴内を一枚以上の遮蔽板にて、反応管長さ方向に対して2以上の空間に仕切られていることを特徴とする反応器によって達成される。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明に用いる多管式熱交換器は、竪型または横型であって、円筒形の胴の内部に、多数の伝熱管を配置した構造で、伝熱管の内部と外部との間で熱交換を行う形式のものであれば特に制限されることなく用いることができる。熱交換器は竪型が好ましく、接触気相酸化反応などの反応器として用いることが望ましい。さらに、反応器の周囲から熱媒などの胴側流体の導入、排出するための複数の開口部を有する環状導管を備え、反応器の胴側流体出入口のある水平面付近の温度分布を低減する手段を有するものがより好ましい。胴側流体の温度分布の低減を図る観点から、上下の管板付近にそれぞれ環状導管を設けることが好ましい。
【0013】熱交換器には、胴を周方向に一周するように、断面形状が略半円状である長尺物の内面を熱交換器の内側に向けて、略半円状の上端および下端をそれぞれ溶接などの公知の方法で、ほぼ水平に切断された熱交換器の胴に接合した、熱媒などの熱の上昇または下降により生ずる歪を吸収可能な伸縮継手が設けられている。このような伸縮継手は、熱交換器胴部の可撓性を増すために、熱交換器胴部と同一材質の板で製作することができる。伸縮継手は、必要により複数設けてもよい。伸縮継手は、胴側流体と管側流体の温度差が大きい場合、管材と胴材の熱膨脹率との差が著しい場合に特に効果的である。
【0014】胴側流体の侵入防止板は、胴側流体が胴の周方向に設けられた伸縮継手に熱媒などの流体が侵入することを防止する機能を備えていれば特に制限されることはないが、通常、伸縮継手全体またはおよそ全体を覆う板状物であり、伸縮継手と反応器の胴との二つの接合部付近のいずれかで、溶接などの公知の方法で固定することが好ましい。通常、かかる固定は、循環する胴側流体の移動を妨げないように、上記二つの接合部付近のうち胴側流体の流れ方向に対し、上流側が好ましい。固定は、伸縮継手の全周にわたってもよいが、侵入防止板が固定できれば、部分的な固定方法でもよい。このような胴側流体の侵入防止板を設けると、胴側流体の伸縮継手内への侵入が妨げられるので、胴側流体が熱交換器内を順調に流れることとなる。
【0015】熱交換器内には、主に胴側流体を横方向に移動させる邪魔板を設けることが好ましい。ここで、邪魔板とは、円板および穴あき円板、欠円形、オリフィス形など公知の邪魔板を一つまたは複数組み合わせたものである。
【0016】さらに、熱交換器の胴と例えば穴あき円板の外径との隙間に短絡防止板を設けることが好ましい。短絡防止板としては、かかる隙間をなくすことができれば特に制限されることはないが、環状型のものを例示できる。かかる短絡防止板は、例えば胴と溶接し、ボルトで短絡防止板と邪魔板を固定するなど公知の方法を採用できる。短絡防止板は、邪魔板の上下いずれに設置してもよい(図1は邪魔板上部に設置されている。)。かかる短絡防止板を採用すると、胴側流体は設定通り邪魔板に沿って進行するので、熱交換内の胴側流体の温度の分布も減少し、反応温度を従来より狭い範囲で制御することが可能である。
【0017】このような多管式熱交換器、特に竪型多管式熱交換器は、反応により熱が発生したとしてもその熱を効果的に回収可能なので、接触気相酸化反応に用いることができる。
【0018】上記多管式熱交換器胴内を一枚以上の遮蔽板にて、反応管長さ方向に対して2以上の空間に仕切られている熱交換器を反応器、特に接触気相酸化用反応器として使用することが可能である。遮蔽板を用いて胴内を2以上に空間に仕切る場合には、各空間の温度分布の低減を図る観点から、胴内流体ができる限り漏れないように中間管板を用いて仕切ることが好ましい。中間管板には複数、例えば二条の溝が設けられており、この溝に反応管が拡管法により、堅く取り付けられている。
【0019】仕切られた空間の胴側流体(熱媒)温度差は100℃以下(零を含まない)であることが、熱歪を避ける点からもより好ましい。
【0020】このような仕切られた反応器においては、少なくとも一つの空間に対し、さらに好ましく全部の空間に対して胴側流体の侵入防止板を胴の周方向に設けた伸縮継手部に取り付けてなることが望ましい。
【0021】このように仕切られた各空間は一つの熱交換器に相当するので、各空間には熱交換器と同様にまたはそれに準じてそれぞれ一対の環状導管、邪魔板、短絡防止板などを適宜設けることが好ましい。
【0022】以下、図面を用いて本発明をより詳細に説明する。ここでは、竪型多管式反応器を代表例として説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】図1は本発明の竪型多管式反応器の一例の縦断面図を示す。図1において、反応器1の内部に多数の反応管3が装填されており、各反応管はそれらの上端で上管板5aに、それらの下端で下管板5bに、拡管法または溶接などの公知の方法で固着されている。反応器1の中央部は上下方向の溶融塩などの公知の胴側流体の流れを改良するために反応管を除いてあるが、必要により、反応管を密に充填することも可能である。反応器1には、その胴周りに伸縮継手7が全周にわたって設けられている。伸縮継手7には胴側流体の侵入防止板9が設けられている。図2は、図1のA部を拡大した図面である。伸縮継手7の入口部の下端部に胴側流体の侵入防止板9が取り付けられており、胴側流体の侵入を防止する。しかし、侵入防止板9が全面的に伸縮継手7に固着されているわけではないので、侵入防止板9の上部からは胴側流体が伸縮継手7内に入り込む。
【0024】また、反応器1内には、上から、穴あき円板11、円板12、穴あき円板13、円板14、穴あき円板15、円板16、穴あき円板17の順に邪魔板が設けられている。穴あき円板11、13、15、17の外径と反応器1の胴部との間には環状板などの短絡防止板18、19、20、21がそれぞれ設けられている。
【0025】接触気相酸化反応用の触媒(図示せず)が反応管3に必要量充填されている。充填に先立ち、反応管3の下端には、触媒が落下しないように、触媒の落下防止用に金網や受器10が設置される。触媒の充填前に、必要により、反応時に原料ガスを予熱するために不活性耐火物を充填してもよい。
【0026】不活性耐火物としては、α−アルミナ、アランダム、ムライト、カーボランダム、ステンレススチール、炭化珪素、ステアタイト、陶器、磁器、鉄および各種セラミックなどを挙げることができる。
【0027】触媒としては、従来公知の触媒を用いることが可能であるが、次の触媒を例示できる。
【0028】プロピレンを含有する原料を酸化してアクロレインを得る触媒としては、一般式Moa−Bib−Fec−Ad−Be−Cf−Dg−Ox(式中、Mo、Bi、Feはそれぞれモリブデン,ビスマスおよび鉄を表し、Aはニッケルおよびコバルトから選ばれる少なくも一種の元素を表し、Bはアルカリ金属およびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Cはリン、ニオブ、マンガン、セリウム、テルル、タングステン、アンチモンおよび鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表し、Dはケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびチタニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、Oは酸素を表し、a、b、c、d、e、f、gおよびxは、それぞれMo、Bi、Fe、A、B、C、DおよびOの原子比を表し、a=12としたとき、b=0.1〜10、c=0.1〜10、d=2〜20、e=0.001〜5、f=0〜5、g=0〜30であり、xは各元素の酸化状態により定まる値である)で示されるものが例示できる。
【0029】アクロレインを含有する原料を酸化してアクリル酸を得る触媒としては、一般式Moa−Vb−Wc−Cud−Ae−Bf−Cg−Ox(式中、Moはモリブデン、Vはバナジウム、Wはタングステン、Cuは銅、Aはアンチモン、ビスマス、スズ、ニオブ、コバルト、鉄、ニッケルおよびクロムから選ばれる少なくも一種の元素を表し、Bはアルカリ金属、アルカリ土類金属およびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Cはケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびセリウムから選ばれた少なくとも1種の元素を表し、Oは酸素を表し、a、b、c、d、e、f、gおよびxは、それぞれMo、V、W、Cu、A、B、CおよびOの原子比を表し、a=12としたとき、b=2〜14、c=0〜12、d=0.1〜5、e=0〜5、f=0〜5、g=0〜20であり、xは各元素の酸化状態により定まる値である)で示されるものが例示できる。
【0030】イソブチレンを含有する原料を酸化してメタクロレインを得る触媒として、一般式Moa−Wb−Bic−Fed−Ae−Bf−Cg−Dh−Oxで表されるものが好ましい(式中、Mo、W、Biはそれぞれモリブデン,タングステンおよびビスマスを表し、Feは鉄を表し、Aはニッケルおよび/またはコバルトを表し、Bはアルカリ金属、アルカリ土類金属およびタリウムから選ばれる少なくとも1種の元素を表し、Cはリン、テルル、アンチモン、スズ、セリウム、鉛、ニオブ、マンガンおよび亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表し、Dはシリコン、アルミニウム、チタニウムおよびジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表し、Oは酸素を表す。また、a、b、c、d,e、f,g,hおよびxは、それぞれMo,W、Bi,Fe,A、B、C、DおよびOの原子数を表し、a=12としたとき、b=0〜10、c=0.1〜10、d=0.1〜20、e=2〜20、f=0.001〜10、g=0〜4、h=0〜30、およびxは各々の元素の酸化状態によって定まる数値をとる。)
メタクロレインを含有する原料を酸化してメタクロレインを得る触媒は、モリブデンおよびリンを主成分として含有する1種または2種以上の酸化物触媒であれば、特に限定はされないが、たとえば、リンモリブデン酸系ヘテロポリ酸あるいはその金属塩が好ましく、一般式Moa−Pb−Ac−Bd−Ce−Df−Oxで表されるものが好ましい。(式中、Moはモリブデンを表し、Pはリンを表し、Aはヒ素、アンチモン、ゲルマニウム、ビスマス、ジルコニウムおよびセレンからなる群の中から選ばれた少なくとも1種の元素を表し、Bは銅、鉄、クロム、ニッケル、マンガン、コバルト、スズ、銀、亜鉛、パラジウム、ロジウムおよびテルルからなる群の中から選ばれた少なくとも1種の元素を表し、Cはバナジウム、タングステンおよびニオブからなる群の中から選ばれた少なくとも1種の元素を表し、Dはアルカリ金属、アルカリ土類金属およびタリウムからなる群の中から選ばれた少なくとも1種の元素を表し、Oは酸素を表す。また、a、b、c、d、e、fおよびxはそれぞれMo、P、A、B、C、DおよびOの原子比を表し、a=12と固定した時、b=0.5〜4、c=0〜5、d=0〜3、e=0〜4、f=0.01〜4およびxは各々の元素の酸化状態により定まる数値である。)
なお、触媒は、それぞれ単一な触媒である必要はなく、例えば活性の異なる複数種の触媒を用いて順に充填し、または必要により触媒の一部を不活性担体などの不活性材料で希釈してもよい。
【0031】また、触媒の形状についても特に限定されず、ラシヒリング状、球状、円柱状、リング状などとすることができ、成形方法も担持成形、押し出し成形、打錠成形などを用いることができ、更に耐火用担体にこれらの触媒物質を担持させた形態のものも有用である。
【0032】反応条件としては、従来公知の条件を採用できるが、次のものを例示できる。
【0033】プロピレンやイソブチレンの分子状酸素による気相接触酸化反応の条件は、従来公知の方法で行うことができる。例えばプロピレンを例にとれば、原料ガス中のプロピレン濃度は3〜15容量%、プロピレンに対する分子状酸素の比は1〜3であり、残りは窒素、水蒸気、酸化炭素、プロパンなどである。
【0034】分子状酸素の供給源としては空気が有利に用いられるが、必要により酸素富化空気、純酸素を用いることもでき、ワンパス法あるいはリサイクル法が用いられる。反応温度は250℃〜450℃、反応圧力は常圧から5気圧、空間速度500〜3000h-1(STP)の範囲で行うことが好ましい。
【0035】次いで、アクリル酸を生成させるために、例えば上記反応で得られたアクロレイン含有ガスに必要に応じて2次空気、2次酸素または水蒸気を追加してなる混合ガスを、反応温度(反応器熱媒温度)100〜380℃、好ましくは150〜350℃および空間速度300〜5,000hr-1(STP)で供給し、反応させて、アクリル酸を得るようにする。
【0036】イソブチレンを含む原料ガスを触媒の存在下において気相接触酸化反応によりメタクロレインを得る場合には、原料ガス中のイソブチレン濃度は1〜10容量%、イソブチレンに対する分子状酸素の濃度は3〜20容量%であり、水蒸気を0〜60容量%、残りは窒素、水蒸気、酸化炭素などである。分子状酸素の供給源としては空気が有利に用いられるが、必要により酸素富化空気、純酸素を用いることもできる。反応温度は、250〜450℃、反応圧力は常圧から5気圧、空間速度300〜5000h-1(STP)の範囲で行うことが好ましい。
【0037】また、メタクリル酸を生成させるために、例えば前記反応で得られたメタクロレイン含有ガスに必要に応じて2次空気、2次酸素または水蒸気を追加してなる混合ガスを、反応温度(反応器熱媒温度)100〜380℃、好ましくは150〜350℃および空間速度300〜5,000hr-1(STP)で供給し、反応させて、メタクリル酸を得るようにする。
【0038】胴側流体は、反応器1の外周に設けられた、反応器1と導通する複数の開口部を備える環状導管22から排出された胴側流体は、熱交換器23により冷却される。冷却された胴側流体は渦巻きポンプ、軸流ポンプなどの公知のポンプ24を利用して、反応器1の外周に設けられた、反応器1と導通する複数の開口部を備える環状導管25から反応器1内に導入される。反応器1内では、胴側流体は反応器の内周部のほぼ全周から反応器1内に入り、反応管3束と接触しながら、反応が発熱反応の場合には発生した熱を回収しながら、反応器の中心に向かい、穴あき円板17の穴あき部で上昇する。さらに、胴側流体は円板16に沿ってほぼ水平に、上記と同様に反応管3束と接触しながら反応熱を回収して、反応器内周部のほぼ全域に向かって進み、円板16の外周部で上昇する。穴あき円板17の外径には短絡防止板21が設けられているので、反応器1との間に隙間がなく、胴側流体は漏れることなく円板および穴あき円板に沿って進み、反応器1内の温度分布を低減することができる。さらに、反応器1に設けられた伸縮継手7付近においても、胴側流体は胴側流体の侵入防止板9が設けられているので、伸縮継手7内に侵入することなく、胴側流体の流れに沿って進み、反応器1内の温度分布の低減に貢献できる。以下、この方法を繰り返し、胴側流体は反応器1の外周に設けられた環状導管22に進む。
【0039】この例では、原料ガスを反応器1の下方から上方に、胴側流体を原料ガスと並流で流した例を説明したが、原料ガス、胴側流体は任意の方向で流してもよい。
【0040】なお、本発明の反応器を用いて、ベンゼンまたはブタン含有ガスを原料ガスとして公知の触媒及び反応系によって無水マレイン酸を、キシレンおよび/またはナフタレン含有ガスを原料ガスとして公知の触媒及び反応系によって無水フタル酸を製造することもできる。
【0041】さらに、中間管板、仕切板などで反応器を上下に仕切るより複雑な反応器では、伸縮継手の効果がより顕著であるとともに胴側流体の侵入防止板および短絡防止板を設ける効果が認められる。
【0042】
【実施例】以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0043】実施例1および比較例1長さ4m、内径25.0mm、外径29.0mmの鋼鉄製の管6400本を有し、胴側に円板および穴あき円板からなる邪魔板および伸縮継手が設けられた竪型多管式熱交換器を用い、プロピレンから主としてアクロレインを製造する触媒を3000mm充填し、元圧98066.5Pa(1.0kg/cm2)の空気35N−Liter/minで反応器の圧力損失の測定を行ったところ下記の表1に示す通りであった。
【0044】熱媒としては硝酸カリウム50質量%、亜硝酸ナトリウム50質量%の混合物を用い、上下一対の環状導管を用いて循環量3000m3/hrで反応器内を下方から上方に循環させた。
【0045】かかる反応器にプロピレン7vol%、酸素12.6vol%、水蒸気10vol%,窒素等70.4vol%からなる原料ガスを触媒接触時間が2.5秒となるように投入した。実施例1の装置は図1(ただし、邪魔板部短絡防止板はない。)に相当する。
【0046】なお、ここで用いた触媒は、一般に知られている方法に準じて下記組成物(酸素を除く)で表される触媒を調製した:純水1500L(リットル)を加熱、撹拌しながらモリブデン酸アンモニウム1000kg、パラタングステン酸アンモニウム64kgを添加・溶解させた。この液に、別に硝酸コバルト687kgを1000Lの純水に、硝酸第二鉄191kgを300Lの純水に、硝酸ビスマス275kgを濃硝酸60Lを加えた純水300Lに溶解させた後、混合して調整した硝酸塩水溶液を滴下した。引き続き、20質量%のシリカゾル溶液142kgおよび硝酸カリウム2.9kgを150Lの純水に溶解した溶液を加えた。このようにして得られた懸濁液を加熱、撹拌して蒸発乾固した後、乾燥、粉砕した。これを繰り返すことで所定の触媒量を得た。
【0047】得られた粉体を直径5mmに円柱状に成型し、460℃で6時間空気流下で焼成して触媒を得た(組成:Mo 12、Bi 1.2、Fe 1、Co 5、W0.5、Si 1、K 0.06の組成モル比)。
【0048】図3は反応管と反応管番号との関係を説明するための、反応器の横断面を一部破断した説明図である。図3において、反応管番号は反応器半径方向の中央側より胴側へ順に付けた。
【0049】伸縮継手部侵入防止板の有り・無しの条件にて8000時間にわたってプロピレンの酸化反応を継続した後、反応を停止し、同じ条件で反応管の圧力損失を測定した。その結果は、下記の表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】伸縮継手部侵入防止板有りの反応では、いずれの反応管にも同程度の白色針状結晶が触媒層内に見られた。一方、防止板無しでは反応管38から反応管1に向かって触媒層内に堆積している白色の針状結晶の量が増加していた。この針状結晶の増加に伴い、圧力損失が高くなっていた。また、この針状結晶を分析したところ、酸化モリブデンであることが判明した。
【0052】さらに、表1の結果を基に圧力損失の増加の割合を、反応前を1として下記表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】表2から、伸縮継手侵入防止板を用いると圧力損失が相対的に低く、さらに圧力損失が平均化されていることがわかる。
【0055】実施例2短絡防止板および伸縮継手部侵入防止板に関する条件を除いては、実施例と同一条件で8000時間にわたってプロピレンの酸化反応を継続した後、反応を停止し、同じ条件で反応管の圧力損失を測定した。その結果は、下記の表3に示す。
【0056】ただし、実施例2の装置は図1に相当する。
【0057】
【表3】

【0058】邪魔板部短絡防止板および伸縮継手部侵入防止板有りの反応では、いずれの反応管にも同程度の白色針状結晶が触媒層内に見られた。一方、防止板無しでは反応管38a(38aは図3における38と同位置を示す。aについては同様である。)から反応管1aに向かって触媒層内に堆積している白色の針状結晶の量が増加していた。この針状結晶の増加に伴い、圧力損失が高くなっていた。また、この針状結晶は酸化モリブデンであった。
【0059】表3の結果を基に圧力損失の増加の割合を、反応前を1として下記表4に示す。
【0060】
【表4】

【0061】さらに、邪魔板短絡防止板を設けることにより、実施例1の場合よりも明らかに圧力の損失が均等であり、圧力損失の程度も減少していた。
【0062】なおこれらの実施例においては、反応器半径方向の中央側より胴側の一列に相当するものであるが、この反応器では上記のように、熱媒を上下一対の環状導管を用いて反応器内周面のほぼ全域から熱媒を導入し、さらに反応器内周面のほぼ全域から排出する手段により循環させていることから、反応器横断面全域において同様の結果が得られると推測される。
【0063】また、本発明では圧力損失の程度が反応器半径方向の中央側より胴側においてほぼ同じで、触媒成分の昇華量は全体的に均一であることから、触媒の劣化もほぼ同程度であると推測される。触媒の劣化が部分的に発生する場合には触媒の劣化の大きな領域を基準として、必要により、触媒全体の交換が検討されるが、それに対し、触媒の劣化の程度が全体的に均一であれば相対的に触媒寿命が長くなるといえる。
【0064】
【発明の効果】本発明によれば、胴側流体の侵入防止板を設けることにより、胴側流体の移動を伸縮継手部で妨害することなく実施でき、熱交換器内の温度分布の低減された多管式熱交換器を提供できる。
【0065】本発明の方法によれば、長期間反応後の反応管の圧力損失が均一化できるとともに、モリブデンなどの触媒成分の昇華量が均一化されるので、反応器内の胴側流体の温度分布を低減し、触媒全体の寿命の延長も可能である。
【0066】本発明によれば、多管式熱交換器胴内を一枚以上の遮蔽板で、反応管長さ方向に対して2以上の空間に区切られており、それぞれの空間に対応して異なる反応を行っても、胴側流体の侵入防止板を設けることにより、胴側流体の移動が伸縮継手部で妨害されないことから、反応器内の温度分布の低減された反応器を提供できる。
【出願人】 【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
【出願日】 平成11年12月28日(1999.12.28)
【代理人】 【識別番号】100072349
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 幹雄 (外3名)
【公開番号】 特開2001−194076(P2001−194076A)
【公開日】 平成13年7月17日(2001.7.17)
【出願番号】 特願平11−374636