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【発明の名称】 マイクロ波加熱可能潜熱蓄熱体
【発明者】 【氏名】鶴来 充啓

【氏名】岸本 隆

【要約】 【課題】潜熱蓄熱体全体を均一に加熱できるようにする。潜熱蓄熱材が外部へ漏洩するのを防止する。

【解決手段】マイクロ波による加熱が可能な潜熱蓄熱体1である。外側容器5と潜熱蓄熱材2を封入した内側容器6との多重構造で構成され、外側容器5の破壊強度を外側容器5の弾性領域内で内側容器6の破壊強度よりも高くした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 マイクロ波による加熱が可能な潜熱蓄熱体であって、外側容器と潜熱蓄熱材を封入した内側容器との多重構造で構成され、外側容器の破壊強度を外側容器の弾性領域内で内側容器の破壊強度よりも高くしたことを特徴とするマイクロ波加熱可能潜熱蓄熱体。
【請求項2】 外側容器に補強用のリブまたはボスの少なくとも一方が設けられていることを特徴とする請求項1記載のマイクロ波加熱可能潜熱蓄熱体。
【請求項3】外側容器が上下に分割されると共に、リブもしくはボスを貫通する止め具にて外側容器の対面する2面が拘束されていることを特徴とする請求項2記載のマイクロ波加熱可能潜熱蓄熱体。
【請求項4】 外側容器の対面部分に空間または弾性体を設けたことを特徴とする請求項3記載のマイクロ波加熱可能潜熱蓄熱体。
【請求項5】 外側容器が繊維強化ゴムで構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロ波加熱可能潜熱蓄熱体。
【請求項6】 マイクロ波加熱時における内側容器の膨張時、もしくは外側からの圧縮により内側容器に圧力が掛かった時に、外側容器と接していない内側容器の曲率半径が減少するように外側容器の内壁形状が構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロ波加熱可能潜熱蓄熱体。
【請求項7】 内側容器の任意の部分の耐圧強度を曲率半径で制御するように外側容器の内壁形状が構成されていることを特徴とする請求項6記載のマイクロ波加熱可能潜熱蓄熱体。
【請求項8】 マイクロ波加熱時において、外側容器の膨張時もしくは温度上昇時にマイクロ波をシールドするためのマイク口波シールド手段を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のマイクロ波加熱可能潜熱蓄熱体。
【請求項9】 マイクロ波の非シールド部を有する潜熱蓄熱体とマイクロ波反射板とを具備しており、マイクロ波加熱による潜熱蓄熱体の膨張時に非シールド部分がマイクロ波反射板に密着するように構成されていることを特徴とする請求項8記載のマイクロ波加熱可能潜熱蓄熱体。
【請求項10】 潜熱蓄熱材が溶媒成分と溶質成分からなり、溶媒成分に可溶で且つ溶質成分と反応して他の成分を生成しない材料を含むことを特徴とする請求項1記載のマイクロ波加熱可能潜熱蓄熱体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロ波により均一に加熱蓄熱できるマイクロ波加熱可能潜熱蓄熱体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、潜熱蓄熱材自身或いはそれを含む潜熱蓄熱体をマイクロ波により加熱し蓄熱する際、以下のような問題点があった。マイクロ波はその性質上誘電損失係数の低いものは透過し易く、高いものには吸収されやすい。つまり潜熱蓄熱材料においては、固体状態よりも液体状態の方が誘電損失係数が高いためマイクロ波による加熱段階において部分的に融解が始まると、そこに集中してマイクロ波が吸収されるため、液体部分はさらに加熱され、融け残っている固体部分との温度差は非常に大きくなる傾向がある。殊に潜熱蓄熱材が水和物の相変化を利用したものであればこの傾向はさらに顕著になり、加熱ムラが生じたままで潜熱蓄熱体全体の温度を上昇させようとする場合、液体部分は異常加熱状態になり、この場合、容器自身が損傷したり、潜熱蓄熱体自身の部分的な異常昇温により変質してしまう場合もあり得る。
【0003】また、無機水和物に代表されるような過冷却を起こしやすい潜熱蓄熱材を封入し、同時に潜熱蓄熱材の過冷却状態(結晶が完全に融解した状態)を解放するトリガー素子を設置して潜熱蓄熱体を構成し、この潜熱蓄熱体を加熱して過冷却状態にしたのち、トリガー素子にて解放して発熱させるタイプの潜熱蓄熱体の加熱に関しては、全体の完全融解が上記過冷却状態に至るための必要条件である。そのため上記マイクロ波加熱による加熱ムラがある場合、全体的に完全融解させようとすると部分的に非常に温度が上がり、容器の損傷を招く可能性がある。
【0004】その他の問題点として潜熱蓄熱材のマイクロ波加熱による加熱ムラ、もしくはユーザーの誤使用によって潜熱蓄熱体が損傷した場合、内部の潜熱蓄熱材が外部へ漏洩し、周囲機器を破損・汚染・付臭の恐れがあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、マイクロ波加熱による部分的な加熱ムラが引き起こす異常昇温を防止し、全体を均一に加熱できるようにし、さらに万が一ユーザーの加熱時における誤使用(加熱したまま忘れて長時間放置する等)による潜熱蓄熱体の損傷が生じた際にも内部潜熱蓄熱材が外部へ漏洩するのを防止できるマイクロ波蓄熱式加熱器を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために請求項1記載の発明にあっては、マイクロ波による加熱が可能な潜熱蓄熱体であって、外側容器5と潜熱蓄熱材2を封入した内側容器6との多重構造で構成され、外側容器5の破壊強度を外側容器5の弾性領域内で内側容器6の破壊強度よりも高くしたことを特徴としており、このように構成することで、多重構造の潜熱蓄熱体1によってマイクロ波加熱による部分的な加熱ムラが引き起こす異常昇温を防止し、全体を均一に加熱できるようになると共に、万が一ユーザーの誤使用(加熱したまま忘れて長時間放置する等)により長時間加熱しても潜熱蓄熱体1全体が破裂することなく内側容器6のみの破損で済み、潜熱蓄熱材2が外部に漏洩するのを防ぐことができる。
【0007】また請求項2記載の発明は、請求項1において、外側容器5に補強用のリブ3またはボスの少なくとも一方が設けられているのが好ましく、この場合、リブ3やボスの存在により外側容器5の耐圧縮強度がアップすることで、容器への飛び降り等による破損を防止できる。
【0008】また請求項3記載の発明は、請求項2において、外側容器5が上下に分割されると共に、リブ3もしくはボスを貫通する止め具40にて外側容器5の対面する2面が拘束されているのが好ましく、この場合、リブ3等を通して外側容器5を連結することにより、更に大きい容器圧力に対して外側への変形が少なくなる。
【0009】また請求項4記載の発明は、請求項3において、外側容器5の対面部分に空間または弾性体4を設けるのが好ましく、この場合、外側容器5への圧縮に対して弾性体4等が減少することによってクッション性が得られる。
【0010】また請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかにおいて、外側容器5が繊維強化ゴムで構成されているのが好ましく、この場合、繊維強化ゴムからなる外側容器5が内側容器6の膨張にあわせてある程度まで伸びることができ、これにより内側容器6を外側容器5より十分大きくしておくとその分だけ破損は遅延されると共に、繊維が働いて容積が一定になった段階で全体容積は拘束され、潜熱蓄熱体1のクッション性及び頑強性が向上する。
【0011】また請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかにおいて、マイクロ波加熱時における内側容器6の膨張時、もしくは外側からの圧縮により内側容器6に圧力が掛かった時に、外側容器5と接していない内側容器6の曲率半径Rが減少するように外側容器5の内壁形状を構成するのが好ましく、この場合、全体として内側容器6に掛かる応力は非常に小さくなり、外側容器5さえ頑強にしておけば内側容器6の破損を遅延させることができる。
【0012】また請求項7記載の発明は、請求項6において、内側容器6の任意の部分の耐圧強度を曲率半径Rで制御するように外側容器5の内壁形状を構成するのが好ましく、この場合、外側容器5の内壁形状によって内側容器6の破損個所の制御ができ、破損後の漏洩防止など安全対策もそこに集中して行うことができる。
【0013】また請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれかにおいて、マイクロ波加熱時において、外側容器5の膨張時もしくは温度上昇時にマイクロ波をシールドするためのマイク口波シールド手段20を設けるのが好ましく、この場合、例えば電子レンジで加熱する段階において必要以上のマイクロ波エネルギーの侵入を防ぐことができる。
【0014】また請求項9記載の発明は、請求項8において、マイクロ波の非シールド部を有する潜熱蓄熱体1とマイクロ波反射板30とを具備しており、マイクロ波加熱による潜熱蓄熱体1の膨張時に非シールド部分がマイクロ波反射板30に密着するように構成されているのが好ましく、この場合、マイク口波加熱により膨張した潜熱蓄熱体1とマイク口波反射板30とが密着した段階で完全なマイクロ波シールドができる。
【0015】また請求項10記載の発明は、請求項1において、潜熱蓄熱材2が溶媒成分と溶質成分からなり、溶媒成分に可溶で且つ溶質成分と反応して他の成分を生成しない材料を含むのが好ましく、この場合、潜熱蓄熱材2の沸点が上昇することにより、潜熱蓄熱材2の気化までの時間が延長される。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0017】本実施形態のマイクロ波による加熱が可能な潜熱蓄熱体1は、図1に示すように、潜熱蓄熱材2を封入した内側容器6と、内側容器6を収納する外側容器5との多重構造で構成されている。
【0018】ここでは、外側容器5の破壊強度が外側容器5の弾性領域内で内側容器6の破壊強度よりも高くなるように設定されている。そのために、外側容器5は硬質容器からなり、一方、内側容器6は外側容器5の内壁形状に沿うような形状の可撓性容器からなる。外側容器5の材質として例えばポリカーボネート、ポリプロピレン、エラストマ、繊維強化ゴム等が適している。また、内側容器6の材質としてラミネートフィルム等を用いることができる。
【0019】また潜熱蓄熱材2として、溶媒成分と溶質成分とで構成し、溶媒成分に可溶で且つ溶質成分と反応して他の成分を生成しない材料を含むものを用いることができる。この場合、沸点が上昇することにより、潜熱蓄熱材2の気化までの時間が延長されるので、破損時間が遅延される。例えば水和物形の潜熱蓄熱材2は結晶水が溶媒成分、塩基が溶質成分とみなせる。そして潜熱蓄熱材2の沸点は水に溶け込んでいる塩基のモル濃度数に比例して上昇することからその溶媒成分に更に塩基に影響を及ぼさない物質を溶解させることにより、沸点は更に上昇する。例えばCH3COONa・3H20の場合、溶媒成分H20に溶出成分CH3COONaが溶け、更にイオン化し、CH3COO-、Naとなる、これに更に食塩NaClを加えると水に可溶で、さらに、Na、Cl-にイオン化する。これらイオンは溶出成分CH3COO-、Naと未反応なので、沸点は上昇させるが、潜熱蓄熱材2の基本性能には影響を及ぼさないものである。
【0020】なお、潜熱蓄熱材2の他例として、例えば、マイク口波の加熱による冷却後、比較的安定良く過冷却状態(結晶が完全に融解した状態)に至る物質を用いてもよい。このような比較的安定に過冷却状態に至る材料として、無機水和物が挙げられる。具体的には水酸化バリウム八水和物、酢酸ナトリウム三水和物、チオ硫酸ナトリウム五水和物、リン酸水素ナトリウム十二水和物、硫酸ナトリウム十水和物、塩化カルシウム六水和物が挙げられる。水和物を潜熱蓄熱材2として使用する場合、水蒸気透過率及び酸素透過率が非常に低いポリエチレンやポリプロピレンやPETが有効であり、ラミネートフィルムにおいては蒸着PETを使用することで更にその効果が上がる。なお、このような無機水和物に代表されるような過冷却を起こしやすい潜熱蓄熱材を用いた場合は、潜熱蓄熱材の過冷却状態(結晶が完全に融解した状態)を解放するためのトリガー素子を潜熱蓄熱材2内部に設置し、トリガー素子にて潜熱蓄熱体の過冷却状態を解放して発熱させる構造を採用してもよい。
【0021】しかして、外側容器5と潜熱蓄熱材2を封入した内側容器6との多重構造で構成されているので、多重構造の潜熱蓄熱体1によってマイクロ波加熱による部分的な加熱ムラが引き起こす異常昇温を防止し、全体を均一に加熱できるようになる。さらに、外側容器5の破壊強度を外側容器5の弾性領域内で内側容器6の破壊強度よりも高くしたので、つまり、外側容器5を硬質容器で構成し、内側容器6をラミネートフィルム等の可撓性容器で構成したので、潜熱蓄熱材2が封入された内側容器6が加熱により膨張していくと、外側容器5に圧力が掛かり始め、図1(b)のように外側容器5が弾性領域内で変形していく。このとき万が一ユーザーの誤動作により長時間加熱しても、外側容器5が破壊するまでの間に、図1(c)のように内側容器6が破損することとなる。従って、潜熱蓄熱体1全体が破裂することなく内側容器6のみの破損で済み、従って、潜熱蓄熱材2が外部に漏洩するのを防ぐことができる。また内側容器6の破壊限界より外側の弾性領域限界を大きくすることで、通常の使用状態では決して外側容器5が変形することなく元の形に戻ることができ、使い勝手が良好となる。
【0022】また、上記外側容器5が繊維強化ゴムで構成されている場合にあっては、マイク口波加熱時において外側容器5が内側容器6の膨張にあわせてある程度まで伸びることができる。それによって内側容器6を外側容器5より十分大きくしておくとその分だけ破損は遅延されることとなり、さらに繊維が働き容積が一定になった段階で全体容積は拘束されることによって、全体としてクッション性及び頑強性を備えた潜熱蓄熱体1が得られるようになる。
【0023】図2は外側容器5を上部の外側容器5aと下部の外側容器5bとで構成し、外側容器5の上下面に補強用の長尺のリブ3を設けた場合を示している。外側容器5aの下面から突出させたリブ3と外側容器5bの上面から突出させたリブ3とが突き当てられることによって、上下のリブ3,3間でラミネートフィルム等からなる内側容器6のシール部分6aを上下から圧着する。これにより、リブ3の存在により外側容器5の耐圧縮強度がアップし、例えば容器への飛び降りによる破損等を防ぐだけでなく、内側容器6への圧縮応力を低減させることができると共に、リブ3の存在は大きな面の圧力に対するたわみを低減するのにも役立ち、さらに面の変形を押さえる役割も果たし、そのうえリブ3は内側容器6を外側容器5内に位置決めする役割も果たす。なお、図2の例では、リブ3を設けた場合を示したが、リブ3に代えて、もしくはリブ3と併用してボスを設けるようにしてもよい。
【0024】図3は、図2においてリブ3に貫通孔3aを設け、このリブ3を貫通する断面H形状の止め具40にて両外側容器5a,5bの対面する2面が拘束されている場合を示している。ここでは、リブ3の貫通孔3aは止め具40に沿った断面H形状に形成され、止め具40の両フランジ43が外側容器5a,5bの表面から突出しないようにしてある。しかして、貫通孔3a内に止め具40のピン部41を貫通することで、外側容器5a,5bの対向する面同士を確実に連結できるようになり、より大きな圧力に対しても外側容器5a,5bの変形を少なくすることができる。なお、図3では、リブ3を設けた場合を示したが、リブ3に代えてボスを設け、このボスを貫通して止め具40を取り付けるようにしてもよいものである。また、断面H形状の止め具40を貫通孔3aに貫通させる方法として、例えば図3に示す一方のフランジ43をピン部41にネジ止めあるいは固着等によって後から取り付け可能としてもよい。もちろん、止め具40の構造はこれに限定されるものではない。
【0025】図4は、図3の構造に加えて、リブ3の間に空間または弾性体4を設けた場合を示している。図4(a)では弾性体4はコイルバネからなり、外側容器5a,5bの圧縮時にコイルバネが圧縮することによりクッション性が得られ、これにより強度とクッション性を兼ね備えた容器が得られる。または図4(b)は弾性体4の他例として空間を設け、空間によりクッション性を得るようにしてある。このとき空間の距離は外側容器5a,5bの弾性歪み限度内に収まるように設計する。
【0026】図5は、外側容器5を、弾性変形しない左右の硬質ブロック部7と弾性変形可能な上下の弾性シート部8とで構成した場合を示している。弾性シート部8は、本例ではゴム8aと繊維8bとからなる2重シートで構成されており、おしり9を乗せたときに弾性シート部8が撓むことによって、クッション性が得られ、これにより強度とクッション性を兼ね備えた容器を得ることができる。また、弾性シート部8を両面に設けることで、外側容器5が上下両面使用可能となり、使い勝手が向上する。
【0027】図6はマイクロ波加熱時における内側容器6の膨張時、もしくは外側からの圧縮により内側容器6に圧力が掛かった時に、外側容器5と接していない内側容器6の曲率半径Rが減少するように外側容器5の内壁形状を構成した場合を示している。ここで、ラミネートフィルム容器のように柔軟性のある内側容器6を解放状態にして膨張させた場合は、図6(a)に示すように、かなり大きい曲率半径Rを持つこととなり、これによりσが大きくなる。
【0028】ここで、図6(a)に示すような内側容器6の膨張時に内側容器6自身に掛かる応力σは以下の式から得られる。
【0029】σ=P・R尚、σは容器に掛かる応力、Pは内圧、Rは容器の曲率半径Rである。
【0030】上記内側容器6を構成するラミネートフィルムが非弾性体の場合、その応力σが直接シール部分に掛かるため簡単に破損してしまうが、図6(b)に示すように、内側容器6を外側容器5で拘束すると接触面は反発力が働くので、内圧Pは打ち消され、結局、非接触面(図6(b)の6bで示す部分)の曲率半径Rから計算される応力がこの内側容器6自身に掛かることとなる。これにさらに図6(c)に示すように、曲率半径Rを小さくするための突起10,11を外側容器5の上下面及び横壁からそれぞれ突出させることによって、内側容器6の非接触面イの曲率半径Rは突起10,11に追随してさらに小さくなる。すると全体として内側容器6に掛かる応力σは非常に小さくなるため、外側容器5さえ頑強にしておけば内側容器6の破損を遅延させることができるものとなる。
【0031】さらに図7は図6の変形例として、ラミネートフィルム等の内側容器6の任意の部分の耐圧強度を曲率半径Rで制御するように外側容器5の内壁形状を構成した場合を示している。つまり、内側容器6の膨張時において、突起10,11の存在する部分(図7の中央から右側部分)では、内側容器6の曲率半径Rが小さくなるが、突起10,11の存在しない部分(図7の左側部分ロ)では曲率半径Rが大きくなる。このようにあえて外側容器5内に曲率半径Rの大きなところを作っておけば、そこが最初に破損しやすくなるので、破損個所を制御できる。つまり、外側容器5の内壁形状によって曲率半径Rの大きさを任意に制御できるようになるので、破損後の漏洩防止など安全対策もそこに集中して行うことができる。
【0032】図8は、マイクロ波Aによる加熱時において、外側容器5の膨張時もしくは温度上昇時にマイクロ波Aをシールドするためのマイク口波シールド手段20を設けた場合を示している。ちなみに電子レンジで加熱する段階において熱(温度)と膨張という二つのエネルギーが生じるが、これらいずれかのエネルギーを利用してマイクロ波シールドが働く機構を得ることで、必要以上のマイクロ波エネルギーの侵入を防ぐことができて過加熱を防止できるようになる。図8の例では、上方に開口した容器本体5a´の左右上縁部から左右2枚のシールド用蓋21をそれぞれ倒れ可能に立設し、内側容器6の中央上面に熱感知装置22を設置し、この熱感知装置22とシールド用蓋21の内面との間に形状記憶バネ23(蓄熱材温度の熱伝達により90℃で作動するもの)を連結してある。図中の21aは隙間閉塞板である。しかして、90℃以上になると形状記憶バネ23が収縮して図8(b)に示すように、シールド用蓋21が潜熱蓄熱材2を上方から覆うように倒れるようにようになる。このように温度を利用する方式、つまり潜熱蓄熱体1の温度の上昇を感知して収縮する形状記憶バネ23を利用する方式を用いることによって、適温でシールド用蓋21を閉めて全体シールドすることが可能となり、過熱防止により効果的となる。
【0033】図9はマイクロ波Aの非シールド部41を有する潜熱蓄熱体1と、マイクロ波反射板30とを具備しており、マイクロ波加熱による潜熱蓄熱体1の膨張時に非シールド部41がマイクロ波反射板30に密着するように構成されている場合を示している。図9の例では、外側容器5の下部側面に横方向に開口したマイク口波進入通路42を設け、マイク口波進入通路42内部の上方にマイクロ波進入用の開口部40と非シールド部41とを設け、マイク口波進入通路42の下方にマイク口波反射板30を設置してある。このとき、開口部40のある面に柔軟性のある材料を使用すればマイク口波反射板30によって跳ね返ったマイクロ波Aもしくは直接進入してきたマイクロ波Aのエネルギーによって加熱膨張した内側容器6の圧力により外側容器5が膨張し、最終的には図9(b)に示すように、非シールド部41がマイク口波反射板30と密着した段階で完全なマイクロ波シールドができるようになっている。
【0034】
【実施例】以下に本発明を実施例によって詳述する。尚、本発明は以下の実施例に限られるものではない、[実施例1〜10、比較例1〜2]以下の実施例1〜10において、外側ケース(硬質)と内側容器(可撓性フィルム)を図2のように組み合わせた2重容器において、本発明の機能を付加させたときのマイクロ波加熱による加熱状況を比較例と比較を行い、その結果を以下の表1、表2に示す。加熱、ケースについての共通条件は潜熱蓄熱材容量:500g、電子レンジ500Wとした。
【0035】実施例1では、外側容器として、図2(a)に示す断面形状を有し、内寸190mm×190mm×20mm、肉厚2mmのPP製中空容器の上下板に、50mm間隔で高さ10mm、幅6mm、長さ190mmのリブを3本設置したものを用いた。内側容器として180mm×180mmの4方シールからなるラミネート袋を用い、その中に酢酸ナトリウム三水和物が100重量部、ピロリン酸ソーダ五水和物が1重量部の蓄熱主材を封入した。
【0036】実施例2では、外側容器として、図3に示す断面形状を有し、内寸190mm×190mm×20mm、肉厚2mmのPP製中空容器の上下板に、50mm間隔で高さ10mm、φ12のボスを5本設置し、繊維強化PCネジナットで貫通止めしたものを用いた。内側容器として180mm×180mmの4方シールからなるラミネート袋のφ15のシール面をボスに合わせて設置したものを用い、その中に実施例1と同様な蓄熱主材を封入した。
【0037】実施例3では、外側容器として、図4に示す断面形状を有し、内寸190mm×190mm×20mm、肉厚2mmのPP製中空容器の上下板に、50mm間隔で高さ6mm、φ12のボスを5本設置し、繊維強化PCネジナットで貫通止めしたものを用いた。内側容器として実施例2と同様なものを用い、その中に酢酸ナトリウム三水和物が100重量部の蓄熱主材を封入した。
【0038】実施例4では、外側容器として、図5に示す断面形状を有し、外寸200mm×200mm×20mm、肉厚10mmのPP製枠に繊維強化ゴムシート(t2)を上下2枚使用したものを用いた。内側容器として180mm×180mmの4方シールからなるラミネート袋を用い、その中に実施例1と同様な蓄熱主材を封入した。
【0039】実施例5では、外側容器として、図6(c)に示す断面形状を有し、内寸190mm×190mm×20mm、肉厚2mmのPP製中空容器の上下板に、40mm間隔で高さ6mm、幅3mm、長さ190mmのリブを3本設置し、さらに横壁にR=3形状になるように凹凸を設けたものを用いた。内側容器として実施例1と同様のものを用い、その中に実施例3と同様な蓄熱主材を封入した。
【0040】実施例6では、外側容器として、図7に示す断面形状を有し、実施例5のリブの配置に対して図7のように左側の1本のリブと左側の横壁の凹凸を削除して平面化したものを用いた。内側容器として実施例1と同様のものを用い、その中に実施例3と同様な蓄熱主材を封入した。
【0041】実施例7では、外側容器として、図8(a)(b)に示す断面形状を有し、外寸200mm×200mm×20mm、肉厚10mmのアルミ箔を付着したPP製枠の下面に、200mm×200mm、肉厚3mmのアルミ箔を付着し、さらに、アルミ板(100mm×200mm)を2枚枠に立て、形状記憶合金(蓄熱材温度の熱伝達により90℃で作動するもの)により蓋が潜熱蓄熱材を覆うように倒れるように構成した。内側容器として、実施例1と同様のものを用い、その中に実施例3と同様な蓄熱主材を封入した。
【0042】実施例8では、外側容器として、図9に示す断面形状を有し、外寸200mm×200mm×20mm、肉厚10mmのアルミ箔を付着したPP製枠の上面全体に、200mm×200mm、肉厚3mmのアルミ箔を付着し、さらに、下面の繊維強化ゴムの中央に130mm×130mmの部分のみにマイク口波が貫通する孔を設けた。内側容器として、実施例1と同様のものを用い、その中に実施例3と同様な蓄熱主材を封入した。
【0043】実施例9では、外側容器として、図2(a)に示す断面形状を有し、内寸190mm×190mm×20mm、肉厚2mmのPP製中空容器の上下板に、50mm間隔で高さ10mm、幅6mm、長さ190mmのリブを3本設置したものを用いた。内側容器として実施例1と同様のものを用い、その中に実施例3と同様な蓄熱主材を封入した。
【0044】実施例10では、外側容器として、図1に示す断面形状を有し、内寸190mm×190mm×20mm、肉厚2mmのPP製中空容器を用いた。内側容器として実施例1と同様のものを用い、その中に実施例3と同様な蓄熱主材を封入した。
【0045】比較例1では、外側容器として、図1に示す断面形状を有し、内寸180mm×180mm×12mm、肉厚2mmのPP製中空容器を用いた。内側容器として実施例1と同様のものを用い、その中に実施例2と同様な蓄熱主材を封入した。
【0046】比較例2では、実施例1と同様の内側容器を図6(a)に示す断面形状にし、その中に実施例2と同様な蓄熱主材を封入した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】尚、上記表1,表中2中において、注1)は完全溶解するまでに達した部分的最高温度であり、注2)は完全溶解するまでの潜熱蓄熱体の最高温度と最低温度の差であり、注3)は振らずに潜熱蓄熱体が過冷却に至る(結晶が完全に溶解する)最低時間であり、注4)は外部及び内部も含めて破損あるいは変形して元に戻らなくなった最低時間である。また、表1,2中の「過冷却解放トリガー内蔵」とは、潜熱蓄熱材として無機水和物に代表されるような過冷却を起こしやすい材質を使用し、この潜熱蓄熱材の過冷却状態(結晶が完全に融解した状態)を任意に解放するための手段としてトリガー素子を潜熱蓄熱材内部に設置し、外側容器の外部からトリガー素子を操作して過冷却を解放して発熱させるタイプのものをいう。
【0050】
【発明の効果】上述のように請求項1記載の発明にあっては、マイクロ波による加熱が可能な潜熱蓄熱体であって、外側容器と潜熱蓄熱材を封入した内側容器との多重構造で構成されているので、多重構造の潜熱蓄熱体によってマイクロ波加熱による部分的な加熱ムラが引き起こす異常昇温を防止し、全体を均一に加熱できるようになる。また、外側容器の破壊強度を外側容器の弾性領域内で内側容器の破壊強度よりも高くしたので、潜熱蓄熱材が封入された内側容器が加熱により膨張していくと、外側容器に圧力が掛かり始めて外側容器が弾性領域内で変形するが、弾性領域をすぎて外側容器が破壊するまでの間に、内側容器の方が破損することとなる。これにより、万が一ユーザーの誤動作により長時間加熱しても潜熱蓄熱体全体が破裂することなく内側容器のみの破損で済み、潜熱蓄熱材が外部に漏洩するのを防ぐことができると共に、通常の使用状態では外側容器が弾性変形しても元の形に戻ることができるので、使い勝手が良好となる。
【0051】また請求項2記載の発明は、請求項1記載の効果に加えて、外側容器に補強用のリブまたはボスの少なくとも一方が設けられているので、リブやボスの存在により外側容器の耐圧縮強度がアップすることで、容器への飛び降り等による破損を防止できるだけでなく、内側容器への圧縮応力が低減し、さらに、リブの存在は大きな面の圧力に対するたわみを低減したり、面の変形を押さえる効果もある。
【0052】また請求項3記載の発明は、請求項2記載の効果に加えて、外側容器が上下に分割されると共に、リブもしくはボスを貫通する止め具にて外側容器の対面する2面が拘束されているので、リブ等を通して外側容器を連結することにより、更に大きい容器圧力に対して外側への変形が少なくなる。
【0053】また請求項4記載の発明は、請求項3記載の効果に加えて、外側容器の対面部分に空間または弾性体を設けたので、外側容器への圧縮に対して弾性体等が減少することによってクッション性が得られる。これにより強度とクッション性を兼ね備えた容器が得られる。
【0054】また請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の効果に加えて、外側容器が繊維強化ゴムで構成されているので、繊維強化ゴムからなる外側容器が内側容器の膨張にあわせてある程度まで伸びることができ、これにより内側容器を外側容器より十分大きくしておくとその分だけ破損は遅延され、また繊維が働いて容積が一定になった段階で全体容積は拘束される。これにより全体としてクッション性及び頑強性を備えた潜熱蓄熱体が得られる。
【0055】また請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の効果に加えて、マイクロ波加熱時における内側容器の膨張時、もしくは外側からの圧縮により内側容器に圧力が掛かった時に、外側容器と接していない内側容器の曲率半径が減少するように外側容器の内壁形状を構成したので、例えばラミネートフィルム容器のように柔軟性のある内側容器にあっては解放状態にして膨張させた場合、かなり大きい曲率半径を持つことになるが、このときに内側容器を外側容器で拘束すると容器の接触面は反発力が働くので、圧力は打ち消され、結局、非接触面の曲率半径から計算される応力がこの内側容器自身に掛かり、全体として内側容器に掛かる応力は非常に小さくなり、外側容器さえ頑強にしておけば内側容器の破損を遅延させることができる。
【0056】また請求項7記載の発明は、請求項6記載の効果に加えて、内側容器の任意の部分の耐圧強度を曲率半径で制御するように外側容器の内壁形状を構成したので、外側容器の内壁形状によって内側容器の破損個所の制御ができ、従って、破損後の漏洩防止など安全対策もそこに集中して行うことができるようになる。
【0057】また請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の効果に加えて、マイクロ波加熱時において、外側容器の膨張時もしくは温度上昇時にマイクロ波をシールドするためのマイク口波シールド手段を設けたので、例えば電子レンジで加熱する段階において必要以上のマイクロ波エネルギーの侵入を防ぐことができ、過加熱を防止することができる。
【0058】また請求項9記載の発明は、請求項8記載の効果に加えて、マイクロ波の非シールド部を有する潜熱蓄熱体とマイクロ波反射板とを具備しており、マイクロ波加熱による潜熱蓄熱体の膨張時に非シールド部分がマイクロ波反射板に密着するように構成されているので、マイク口波加熱により膨張した潜熱蓄熱体とマイク口波反射板とが密着した段階で完全なマイクロ波シールドができ、過熱防止に効果的となる。
【0059】また請求項10記載の発明は、請求項1記載の効果に加えて、潜熱蓄熱材が溶媒成分と溶質成分からなり、溶媒成分に可溶で且つ溶質成分と反応して他の成分を生成しない材料を含むので、潜熱蓄熱材の沸点が上昇することにより、潜熱蓄熱材の気化までの時間が延長されるので、破損時間の遅延を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000005832
【氏名又は名称】松下電工株式会社
【出願日】 平成11年9月27日(1999.9.27)
【代理人】 【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清 (外1名)
【公開番号】 特開2001−91176(P2001−91176A)
【公開日】 平成13年4月6日(2001.4.6)
【出願番号】 特願平11−273396