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【発明の名称】 平板状ヒートパイプ
【発明者】 【氏名】益子 耕一

【氏名】望月 正孝

【氏名】斎藤 祐士

【要約】 【課題】多孔構造のウィックを備えた平板状ヒートパイプにおけるウィックの圧潰を防止する。

【解決手段】平板状ヒートパイプ1であって、コンテナ4の厚さ方向で対向する平板部3,5のうちの少なくとも一方5に、他方の平坦部3に向けて突出し、かつ先端面11が平板部3の内面に対して接触した複数本の支柱7が設けられている。更に各平板部3,5の内面のうち支柱7の先端面11との接合箇所を除く全域に、毛細管圧力を生じる多孔質層8,10がそれぞれ設けられている。また多孔質層8,10同士を連結する多孔構造の液還流用部材9が、隣接する一対の支柱7同士を結ぶ線上に配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 中空平板状の金属製のコンテナの内部に、脱気した状態で凝縮性流体を作動流体として封入した平板状ヒートパイプにおいて、前記コンテナの厚さ方向で対向する平板部のうちの少なくとも一方に、他方の平坦部に向けて突出し、かつ先端面が該平板部の内面に対して接触した複数本の支柱が設けられ、更に各前記平板部の内面のうち前記先端面との接合箇所を除く全域に、毛細管圧力を生じる多孔質層がそれぞれ設けられるとともに、該多孔質層同士を連結する多孔構造の液還流用部材が、隣接する一対の前記支柱同士を結ぶ線上に配置されていることを特徴とする平板状ヒートパイプ。
【請求項2】 前記多孔質層と前記液還流用部材とが同じ材料によって一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載した平板状ヒートパイプ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、作動流体の潜熱として熱輸送するヒートパイプに関し、特にコンテナが中空平板状を成す平板状ヒートパイプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】平板状ヒートパイプは、中空平板構造のコンテナの内部に密閉した空間部を形成し、その空間部に空気などの非凝縮性ガスを脱気した状態で凝縮性の流体を作動流体として封入したものである。この種のヒートパイプでは、表面が平坦になるので、熱交換対象物との接触面積が広くなり、熱伝達性能あるいは熱交換性能が向上する利点がある反面、面方向での広がりを有する蒸発部が空間部を介して凝縮部と対向しているから、トップヒートモードでの良好な動作を可能にするためには何等かの手段を講じる必要がある。
【0003】その一例が、特願平8−106293号公報に記載されている。この平板状ヒートパイプのコンテナは、平板状の加熱部とこの加熱部と対向しかつ面積の小さい平板状の放熱部とを備えており、このコンテナの内壁面の全域には所定厚さの溶射皮膜が形成されている。更に放熱部の内面と加熱部の内面との間には、焼結金属または発泡金属からなるスペーサが配置されている。このスペーサの両端部が、加熱部の内面と放熱部の内面に対してそれぞれ接触していて、すなわちスペーサによって加熱部と放熱部とが連結されている。
【0004】したがってこの平板状ヒートパイプによれば、コンテナの底部にある液相作動流体がスペーサに生じる毛細管圧力によって汲み上げられた後、溶射皮膜に浸透して、その面方向に拡散される。つまりスペーサと溶射皮膜とがウィックとして機能するから、トップヒートモードでも良好に動作する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来の構成では、溶射皮膜とスペーサとが共に多孔構造を成していて、それ自体の機械的強度が比較的低いばかりか、平板状に形成されている加熱部および放熱部が、元来、特にコンテナの内部圧力が真空圧となる非動作時に撓み易いために、コンテナ外側からの荷重によってスペーサおよび溶射皮膜が圧潰されるおそれが多分にあった。
【0006】この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、多孔構造を成すウィックの圧潰を未然に防止することのできる平板状ヒートパイプを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用】上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明は、中空平板状の金属製のコンテナの内部に、脱気した状態で凝縮性流体を作動流体として封入した平板状ヒートパイプにおいて、前記コンテナの厚さ方向で対向する平板部のうちの少なくとも一方に、他方の平坦部に向けて突出し、かつ先端面が該平板部の内面に対して接触した複数本の支柱が設けられ、更に各前記平板部の内面のうち前記先端面との接合箇所を除く全域に、毛細管圧力を生じる多孔質層がそれぞれ設けられるとともに、該多孔質層同士を連結する多孔構造の液還流用部材が、隣接する一対の前記支柱同士を結ぶ線上に配置されていることを特徴とするものである。
【0008】したがって請求項1の発明によれば、例えば一対の平板部を上下方向に向かい合う状態にコンテナを配置して、上側の平板部を加熱部として動作させると、その内面に備えられている多孔質層において液相の作動流体が蒸発し、その作動流体蒸気が、支柱間および液還流用部材間の空間を通じて内部圧力の低い他方の平板部側に流動するとともに、多孔質層に放熱して凝縮する。そしてその熱が平板部の外面から外部に向けて放出される。
【0009】他方、液相に戻った作動流体が、多孔質層に生じる毛細管圧力によって下側の平板部の内面から各液還流用部材の基端部側に移動するとともに、液還流用部材に生じる毛細管圧力によって先端部側に向けて移動し、そこから更に多孔質層の広範囲に拡散されつつ、加熱されて蒸発する。つまり液還流用部材と各多孔質層とがウィックとして作用する。
【0010】このように作動流体が、複数の液還流用部材を通じて上側の蒸発部に対して直接供給される。そのうえ作動流体が、蒸発部の表面上に薄膜状に広げられていわゆる濡れ性の良好な状態となるから、蒸発部の実効面積が大きくなる。その結果、トップヒートモードでも熱輸送が良好に行なわれる。
【0011】また請求項1の発明の平板状ヒートパイプでは、元来、撓み易い一対の平板部が複数の支柱によって内側から支持されているから、ヒートパイプ動作しておらずにその内部圧力が真空圧であっても、コンテナが所期の中空平板形状に維持され、またそれに伴って多孔質層の損傷が未然に防止される。更に請求項1の発明によれば、各液還流用部材が、平面図上で一対の支柱の間に配置されているから、各液還流用部材に対する平板部外側からの荷重が過度には大きくならず、したがって各液還流用部材および各多孔質層のうち各液還流用部材との当接箇所が圧潰するおそれがない。
【0012】請求項2に記載した発明は、前記多孔質層と前記液還流用部材とが同じ材料によって一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】したがって請求項2の発明によれば、平板部の外側からの荷重が集中し易い部分である多孔質層と液還流用部材との境界部分の連結強度が向上し、それに伴ってウィック全体として圧潰に対する強度が向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照してこの発明の一具体例について説明する。平板状ヒートパイプ1は、本体部2と封止板3とからなる中空平板状の密閉金属容器によってコンテナ4が構成されている。コンテナ4の内部には、非凝縮性ガスを脱気した状態で図示しない作動流体が封入されている。
【0015】より詳細には、本体部2は矩形状の平板体からなる底壁部5と、その底壁部5の4つの辺(縁部)からそれぞれ立ち上がる平板状の側壁部6とによって構成されたカップ状の部材である。各側壁部6は、高さが一定となっていて、底壁部5の長さおよび幅のいずれよりも小さく設定されている。すなわち本体部2は、その深さ以上の開口幅を有している。また底壁部5には、各側壁部6と同じ方向(図1での上方)に向けて突出する4本の支柱7が備えられている。すなわち底壁部5が、この発明の平板部に相当する。
【0016】一例として各支柱7は、底壁部5を鉛直上方に向けて円筒状または円錐状に窪ませた構造であり、各側壁部と同じ高さに設定されている。また各支柱7は、図2に示すように、対向するコーナー同士を結ぶ対向線上で、かつ底壁部5の4辺(側壁部との境界部分)よりも中央側の部分にそれぞれ配置されている。なお各支柱7は、本体部2の材料である金属板材に対してプレス加工または鍛造成形を施すことによって簡単に形成することができる。
【0017】また一方、底壁部5のうち各支柱7を除いた範囲の表面には、所定厚さの溶射皮膜8が設けられている。この溶射皮膜8は、互いに結合する溶射粒子同士の間に気孔を備えた多孔構造であり、大きい毛細管圧力が生じるようになっている。つまり溶射皮膜8が、この発明の多孔質層に相当する。
【0018】溶射皮膜8の上部には、一例として円柱状を成す粉末焼結ブロック9が5個設けられている。この発明の液還流用部材に相当する各粉末焼結ブロック9は、例えば多数の銅粒子またはブロンズ粒子を焼結させて結合させた多孔構造であり、大きい毛細管圧力が生じるようになっている。なお各粉末焼結ブロック9の上端面は、封止板3の内面に備えられた後述する溶射皮膜10に接触している。
【0019】各粉末焼結ブロック9の配置について説明すると、底壁部5の平面図上での中央位置、図2での右側に位置する一対の支柱7の中心軸線同士を結んだ線上から僅かに右側にずれた位置、図2での左側に位置する一対の支柱7の中心軸線同士を結んだ線上から僅かに左側にずれた位置に、粉末焼結ブロック9がそれぞれ1個ずつ設けられている。また図2での上側に位置する一対の支柱7の中心軸線同士を結んだ線上から僅かに上側にずれた位置、図2での下側に位置する一対の支柱7の中心軸線同士を結んだ線上から僅かに下側にずれた位置に、粉末焼結ブロック9がそれぞれ1個設けられている。つまりいずれの粉末焼結ブロック9も隣接する一対の支柱7同士に挟まれた配置となっている。
【0020】これに対して封止板3は、底壁部5と平面図上で一致する大きさの金属平板であり、各側壁部6の上縁部からなる開口部分を閉じる状態で本体部2に組み付けられている。すなわち封止板3の内面と各支柱7の先端面11とが互いに密着している。また封止板3と本体部2との接合部分が、例えば溶接によって密閉されていて、矩形平板状を成すコンテナ4が形成されている。なお封止板3が、この発明の平板部に相当する。
【0021】更に封止板3の内面のうち各支柱7の先端面11との突合せ部分および各側壁部との突合せ部分を除いた箇所には、溶射皮膜10が形成されている。この溶射皮膜10は、本体部2に備えられるものと同じ組成となっている。つまり溶射皮膜10が、この発明の多孔質層に相当している。なお特には図示しないがコンテナ4には、従来知られた構造の注入ノズルが取り付けられている。
【0022】ここで溶射皮膜8,10は、例えば本体部2と封止板3とを組み付ける以前にプラズマ溶射あるいはガス溶射等を行うことによって、簡単に形成することができる。すなわち解放された空間において溶射工程が実施されるために、溶射トーチの操作性が良好であること、あるいは熱が籠らないこと、更には洗浄が容易であること等の利点がある。また溶射材料としては、熱伝導性および耐熱性に優れるものであれば異種金属またはセラミックスあるいはそれらを混合したサーメットでもよく、好ましくはそれ自体が熱伝導性および耐熱性に優れ、かつ長期に亘って作動流体と接触させても溶解しないものを採用する。
【0023】つぎに上記具体例の作用について説明する。例えば封止板3を水平に向けた姿勢にコンテナ4を保持し、その状態で底壁部5の下側を加熱させると、コンテナ4における本体部2の底部に溜まる作動流体が加熱されて蒸発する。したがって底壁部5の内面が蒸発部16となる。蒸気となった作動流体が、圧力および温度の低い上方に向けて各支柱7と液還流用部材との間の空隙を流動して、封止板3の内面に設けられた溶射皮膜10に放熱して凝縮する。したがって封止板3側の溶射皮膜10が凝縮部17となる。放出された熱は、封止板3の外面から周囲の空間などに放散される。
【0024】凝縮した作動流体は、溶射粒子同士の隙間に生じる毛細管圧力によって封止板3の内面に保持されつつ、近傍の粉末焼結ブロック9の端部に流動し、そのまま毛細管圧力によって粉末焼結ブロック9の他端部、つまり底壁部5側に向けて流動する。更にその作動流体が、各粉末焼結ブロック9の端部からその周囲の溶射皮膜8に浸透するとともに、蒸発部の面方向に拡散される。そして5個の粉末焼結ブロック9が、底壁部5の面方向に分散されて配置されているから、必要充分な量の作動流体が蒸発部の全域に供給され、その結果、熱輸送能力が良好になる。
【0025】更に上記具体例によれば、平板状を成す封止板3と底壁部5とが支柱7によって内側から支持されているから、コンテナ4の内部圧力が真空となる状態、つまり非動作状態でも、封止板3と底壁部5とが接近する方向に撓むことがなく、コンテナ4の所期形状を維持することができる。また上記具体例によれば、互いに隣接する支柱7と支柱7との中間部に各粉末焼結ブロック9が配置されているから、液還流用部材に対する底壁部5および封止板3の外側からの荷重が過度には大きくならず、そのため各粉末焼結ブロック9および各多孔質層8,10のうち各粉末焼結ブロック9と当接する部分の圧潰を未然に防ぐことができる。
【0026】なお各支柱7が、プレス加工または鍛造成形等によって底壁部5を窪ませてなる構造であるから、簡単に形成することができ、それに伴って平板状ヒートパイプとしての生産性を向上させることができる。また各支柱7がコンテナ4の一部分を構成しているから、平板状ヒートパイプとして軽量になる利点も生じる。
【0027】なお支柱と粉末焼結ブロックとの数ならびに底壁部5の平面図上での配置は、上記具体例には限定されず、対象とするコンテナの大きさなどに基づいて適宜設定することができる。更に多孔質層は溶射皮膜に限定されず、例えば金属粒子を焼結させたものであってもよく、また一方、液還流用部材は粉末焼結ブロックには限定されず、例えば溶射皮膜によって形成してもよい。つまり液還流用部材と多孔質層とを例えば焼結金属または溶射皮膜によって一体に形成してもよく、このように構成することによって両者の境界部分における連結強度が向上し、その結果、ウィック全体としての圧潰に対する強度が向上する。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、いずれの請求項に記載した発明においても、コンテナの厚さ方向で対向する平板部の少なくとも一方に、他方に向けて突出しかつ先端面がその平板部の内面に接触した複数本の支柱が設けられ、各平板部の内面のうち先端面との接合箇所を除く全域に多孔質層が設けられ、多孔質層同士を連結する多孔構造の液還流用部材が隣接する一対の支柱同士を結ぶ線上に配置されていて、平板部を内側から支持する支柱同士の間に液還流用部材が配置されているから、液還流用部材に対して過度の荷重が作用せず、したがって液還流用部材および多孔質層のうち各液還流用部材との当接箇所の圧潰を未然に防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
【出願日】 平成11年9月21日(1999.9.21)
【代理人】 【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 丈夫
【公開番号】 特開2001−91172(P2001−91172A)
【公開日】 平成13年4月6日(2001.4.6)
【出願番号】 特願平11−267283