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【発明の名称】 潜熱蓄熱材の融解方法および潜熱蓄熱装置
【発明者】 【氏名】黒坂 俊雄

【氏名】田頭 成能

【氏名】内木 幸夫

【氏名】中谷 勧

【要約】 【課題】潜熱蓄熱材を融解する際に、液相が閉じこめられることに起因する熱応力の発生を解消する。

【解決手段】貯留タンク10の内部に、上部空間12を確保して固相の方が液相よりも比重が高い潜熱蓄熱材11が貯留され、その潜熱蓄熱材11の相変態を利用して放熱または蓄熱が行われる潜熱蓄熱装置において、潜熱蓄熱材11に上側から少なくともその下部を挿入して熱伝達部材2を設けておき、潜熱蓄熱材11が固相のとき、熱伝達部材2の少なくとも潜熱蓄熱材11への挿入部分において発熱密度が上側の方が下側よりも高くなるように熱伝達部材2に電気ヒータ1により熱を付与し、固相の潜熱蓄熱材11aをその上面から熱伝達部材2に沿って融解させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 貯留タンクの内部に、上部空間を確保して固相の方が液相よりも比重が高い潜熱蓄熱材が貯留され、その潜熱蓄熱材の相変態を利用して放熱または蓄熱が行われる潜熱蓄熱装置における潜熱蓄熱材の融解方法であって、上記潜熱蓄熱材に熱伝達部材の少なくとも一部を挿入しておき、潜熱蓄熱材が固相のとき、上記熱伝達部材の少なくとも潜熱蓄熱材への挿入部分において発熱密度が上側の方が下側よりも高くなるように上記熱伝達部材に熱を付与し、固相の潜熱蓄熱材をその上面から熱伝達部材に沿って融解させることを特徴とする潜熱蓄熱材の融解方法。
【請求項2】 上記熱伝達部材にその上側から熱を付与することを特徴とする請求項1に記載の潜熱蓄熱材の融解方法。
【請求項3】 上記熱伝達部材を、上下で異なる熱量にて加熱することを特徴とする請求項1に記載の潜熱蓄熱材の融解方法。
【請求項4】 上記熱伝達部材を、その上部と下部とでタイミングを異ならせて加熱することを特徴とする請求項1に記載の潜熱蓄熱材の融解方法。
【請求項5】 貯留タンクの内部に、上部空間を確保して固相の方が液相よりも比重が高い潜熱蓄熱材が貯留され、その潜熱蓄熱材の相変態を利用して放熱または蓄熱が行われる潜熱蓄熱装置において、少なくとも下部が潜熱蓄熱材に挿入される熱伝達部材と、この熱伝達部材の上部に接続され、その上部に熱を付与する加熱源とを備えたことを特徴とする潜熱蓄熱装置。
【請求項6】 上記熱伝達部材を複数有すると共に、これら熱伝達部材がその上部を単一の加熱源に接続していることを特徴とする請求項5に記載の潜熱蓄熱装置。
【請求項7】 上記熱伝達部材は、少なくとも下部が潜熱蓄熱材に挿入される複数の潜熱蓄熱材挿入部と、これら潜熱蓄熱材挿入部を上部で連結する連結部とからなり、連結部に加熱源が接続されることを特徴とする請求項5に記載の潜熱蓄熱装置。
【請求項8】上記熱伝達部材は一体成形により形成されていることを特徴とする請求項7に記載の潜熱蓄熱装置。
【請求項9】 貯留タンクの内部に、上部空間を確保して固相の方が液相よりも比重が高い潜熱蓄熱材が貯留され、その潜熱蓄熱材の相変態を利用して放熱または蓄熱が行われる潜熱蓄熱装置において、上記潜熱蓄熱材に少なくともその下部が挿入されている熱伝達部材と、熱伝達部材の内部に設けられ、熱伝達部材の下側より上側の方を発熱量が大となるような加熱が可能となるよう配された加熱源とを具備することを特徴とする潜熱蓄熱装置。
【請求項10】 上記加熱源は、その下側より上側の方をヒータの配設密度を大として構成されていることを特徴とする請求項9に記載の潜熱蓄熱装置。
【請求項11】 上記加熱源は、熱伝達部材の上下方向に2又は3以上の領域に分割され、各領域の加熱源毎に発熱量が制御されるようになっていることを特徴とする請求項9に記載の潜熱蓄熱装置。
【請求項12】 内部に熱交換用液体を通流する熱交換配管を備え、その熱交換配管が上記熱伝達部材と熱伝達可能に設けられていることを特徴とする請求項5乃至11のいずれかに記載の潜熱蓄熱装置。
【請求項13】 上記熱交換配管は、潜熱蓄熱材の上方に設けられていることを特徴とする請求項12に記載の潜熱蓄熱装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば夜間電力を活用する電気温水器の代用品として、或いは給湯器または蒸気発生器などに適用される潜熱蓄熱装置および潜熱蓄熱材の融解方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年においては、夜間電力を活用して昼間の電力使用量を削減し、電力平準化を図ることが行われている。夜間電力を利用した電気機器としては、例えば蓄熱材としての水を夜間電力を活用して加熱し温水として貯留する電気温水器、或いは所定の温度で凝固し融解する潜熱蓄熱材を用いる氷蓄冷装置や給湯器が知られている。
【0003】上記氷蓄冷装置は凝固・融解する温度が低温側でのものであり、給湯器はその温度が高温側でのものである。給湯器については、糖類の一種であるエリスリトールを潜熱蓄熱材に利用した潜熱蓄熱装置が提案されている(特願平7−318450等)。この提案の潜熱蓄熱装置における潜熱蓄熱材は、固体の比重(密度)の方が液体の比重(密度)よりも相当大きく、固体を液体に融解する際に大きな体積膨張がある。この現象は、氷から水に相変態するときとは全く逆である。
【0004】ところで、給湯器に適用される従来の潜熱蓄熱装置は、夜間電力を活用して液相にした潜熱蓄熱材に、外部から水を供給することにより、その水を温水に熱交換でき、また、この熱交換により外部からの供給水により冷却されて固相に相変態した潜熱蓄熱材を、夜間電力を活用して電気ヒータ等により液相に戻す、つまり融解するようにして使用される。
【0005】このようにして使用される上記従来の潜熱蓄熱装置において、固相の潜熱蓄熱材を融解する方式は、図12に示すように潜熱蓄熱材102の中に電気ヒータ105を直接浸漬させて融解する方式、或いは、潜熱蓄熱材102に浸漬された熱回収を行う熱交換用の温水加熱管104に、熱回収時に本来用いる水の代わりに高温流体を供給して潜熱蓄熱材を加熱する方式が一般的である。なお、図12中の101は貯留タンクであり、103は上部空間、102aは固相の潜熱蓄熱材、102bは液相の潜熱蓄熱材である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記融解方式により固相の潜熱蓄熱材を融解させる場合は、下側から融解すると液相が固相の下側に閉じこめられ、上述した潜熱蓄熱材の融解時に起こる体積膨張に伴って固相の潜熱蓄熱材に大きな熱応力が発生し、潜熱蓄熱装置に過大な熱応力が発生するという問題がある。
【0007】この問題の解決のためには、固相の潜熱蓄熱材を上方部分から下方部分へ徐々に融解させていき、常に貯留タンク101の上部空間103に、融解により生じた液相の潜熱蓄熱材が繋がるようにすることが望ましい。
【0008】このように上部空間に液相の潜熱蓄熱材が繋がるように、図13に示すように主ヒータ105の他に、貯留タンク101の天井板101aから副ヒータ110を吊り下げた状態に設け、副ヒータ110により固相の潜熱蓄熱材102aに、これを上下方向に貫通する液相の潜熱蓄熱材102cを形成し、固相の潜熱蓄熱材102aに発生する熱応力を低減する方法が提案されている(特開平3−11266)。なお、図13の各部分のうち図12と同一部分には、同一番号を付している。
【0009】しかしながら、この提案技術による場合においても、副ヒータ110がその近傍に存在する固相の潜熱蓄熱材を上下方向にわたってほぼ均一に加熱するため、必ずしも固相の潜熱蓄熱材がその上方部分から融解するとは限らず、一時的に過大な熱応力が固相の潜熱蓄熱材に発生することを確実に防止できないという欠点があった。また一方、熱回収を行う際においては、温水加熱管104(図13参照)を送られる水との熱交換にて冷却されて固相になった潜熱蓄熱材が、熱交換が実質的に行われる部分に固着すると、熱交換効率が低下するという問題があった。
【0010】本発明は、このような従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、液相の潜熱蓄熱材が閉じこめられることに起因する熱応力の発生を解消することができる潜熱蓄熱材の融解方法および潜熱蓄熱装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の潜熱蓄熱材の融解方法は、貯留タンクの内部に、上部空間を確保して固相の方が液相よりも比重が高い潜熱蓄熱材が貯留され、その潜熱蓄熱材の相変態を利用して放熱または蓄熱が行われる潜熱蓄熱装置における潜熱蓄熱材の融解方法であって、上記潜熱蓄熱材に熱伝達部材の少なくとも一部を挿入しておき、潜熱蓄熱材が固相のとき、上記熱伝達部材の少なくとも潜熱蓄熱材への挿入部分において発熱密度が上側の方が下側よりも高くなるように上記熱伝達部材に熱を付与し、固相の潜熱蓄熱材をその上面から熱伝達部材に沿って融解させることを特徴とする。
【0012】この発明方法による場合は、少なくとも下部を潜熱蓄熱材に挿入した熱伝達部材に、発熱密度が上側の方が下側よりも高くなるように熱を付与するので、固相の潜熱蓄熱材が熱伝達部材に沿って上側から融解(蓄熱)していく。よって、融解部分が固相の潜熱蓄熱材中を通って熱伝達部材に沿って長く形成されても、その融解部分は上部空間に常に繋がった状態となるため、固相から液相への相変態に際して体積膨張が起こっても、体積膨張分が上部空間へ逃げ得るので、固相の潜熱蓄熱材に熱応力が作用せず、熱応力の発生を解消させることができる。
【0013】ここで、熱伝達部材の潜熱蓄熱材への挿入形態は、潜熱蓄熱材の上面を通るように熱伝達部材の少なくとも一部を挿入すること、また、熱伝達部材の上端と潜熱蓄熱材の上面とが一致するように熱伝達部材を潜熱蓄熱材に挿入すること、或いは熱伝達部材の上に加熱源が連結されている場合には、加熱源の少なくとも一部が潜熱蓄熱材に漬かるように、つまり熱伝達部材の上端が潜熱蓄熱材の上面より下側に位置するように熱伝達部材を潜熱蓄熱材に挿入することを含む。
【0014】上記のような発熱密度の勾配をもった加熱をするには、上記熱伝達部材にその上側から熱を付与するようにしてもよい。或いは、上記熱伝達部材を、上下で異なる熱量にて加熱するようにしてもよい。或いは、上記熱伝達部材を、その上部と下部とでタイミングを異ならせて加熱するようにしてもよい。
【0015】本発明の潜熱蓄熱装置は、貯留タンクの内部に、上部空間を確保して固相の方が液相よりも比重が高い潜熱蓄熱材が貯留され、その潜熱蓄熱材の相変態を利用して放熱または蓄熱が行われる潜熱蓄熱装置において、少なくとも下部が潜熱蓄熱材に挿入される熱伝達部材と、この熱伝達部材の上部に接続され、その上部に熱を付与する加熱源とを備えた構成である。
【0016】この本発明装置にあっては、加熱源が熱伝達部材の上部に熱を付与するので、加熱源からの熱が熱伝達部材をその上側から下側へ伝達し、上から下に向かって発熱密度が小さくなる勾配が形成される。その結果、上記熱伝達部材を介して固相の潜熱蓄熱材が上側から熱伝達部材に沿って下側へと融解されていくことになる。この場合において、請求項6のように、上記熱伝達部材を複数有すると共に、これら熱伝達部材がその上部を単一の加熱源に接続している構成とすることができる。このようにすると、少ない加熱源で広範囲の加熱が可能になる。また、請求項7のように、熱伝達部材は、少なくとも下部が潜熱蓄熱材に挿入される複数の潜熱蓄熱材挿入部と、これら潜熱蓄熱材挿入部を上部で連結する連結部とからなり、連結部に加熱源が接続される構成とすることができる。この場合、上記熱伝達部材は一体成形により形成されている構成とすることができる。この一体成形によると、熱伝達部材を容易に作製することが可能になる。このとき用いる金属としては、アルミニウム等の加工性のよい材料を使用することが好ましい。
【0017】また、本発明の潜熱蓄熱装置は、貯留タンクの内部に、上部空間を確保して固相の方が液相よりも比重が高い潜熱蓄熱材が貯留され、その潜熱蓄熱材の相変態を利用して放熱または蓄熱が行われる潜熱蓄熱装置において、上記潜熱蓄熱材に少なくともその下部が挿入されている熱伝達部材と、熱伝達部材の内部に設けられ、熱伝達部材の下側より上側の方を発熱量が大となるような加熱が可能となるよう配された加熱源とを具備する構成である。
【0018】この本発明装置にあっては、潜熱蓄熱材に少なくともその下部が挿入された熱伝達部材が、その上側の方が下側よりも発熱密度が大となるので、固相の潜熱蓄熱材が上側から熱伝達部材に沿って下側へと融解されていくことになる。このようにするには、上記加熱源は、その下側より上側の方をヒータの配設密度を大として構成してもよいし、或いは、上記加熱源は、熱伝達部材の上下方向に2又は3以上の領域に分割され、各領域の加熱源毎に発熱量が制御されるように構成してもよい。後者の構成にあっては、固相の潜熱蓄熱材の融解初期において潜熱蓄熱材の上側程、発熱量を大にして、上方から徐々に融解させて熱応力の発生を防止できる。加えて、熱伝達部材と接触する潜熱蓄熱材部分の全域が融解した後は、今度は潜熱蓄熱材の下側に相当する熱伝達部材部分の発熱量を大にして、液相の潜熱蓄熱材における熱による対流の発生を推進させるようにすると、これによって融解速度の向上が図れることになる。
【0019】また、本発明の潜熱蓄熱装置において、内部に熱交換用液体を通流する熱交換配管が上記熱伝達部材と熱伝達可能に設けられている構成とすることができる。
【0020】この構成にあっては、熱交換配管には潜熱蓄熱材からだけでなく熱伝達部材からも熱が伝達されるため、熱交換効率が向上する。また、熱交換配管は、少なくともその一部を潜熱蓄熱材中を通して設けてもよい。この場合には、熱取り出し速度が速くなり、熱交換効率を向上させ得る。また、請求項13のように、熱交換配管を潜熱蓄熱材の上方に設けるようにしてもよい。このようにすると、熱交換配管に亀裂や穴が生じても潜熱蓄熱材が熱交換配管に流れ込むことを防止できる利点がある。
【0021】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて具体的に説明する。
(実施形態1)図1は実施形態1に係る潜熱蓄熱装置を示す模式的正面図(断面図)であり、図2はその右側面図である。
【0022】この潜熱蓄熱装置は、貯留タンク10と、貯留タンク10を覆う断熱材14と、貯留タンク10に貯留された潜熱蓄熱材11と、加熱源としての電気ヒータ1と、熱交換配管としての温水加熱管13と、熱伝達部材2とを備える。なお、図1中の11aは固相の潜熱蓄熱材、11bは液相の潜熱蓄熱材である。
【0023】貯留タンク10は、円筒部材10bの両端が円形蓋10aにて塞がれたものであり、その内部に上部空間12を残して潜熱蓄熱材11が貯留されている。潜熱蓄熱材11としては、固相の方が液相よりも比重が高い材料、例えばエリスリトールが使用されている。
【0024】上部空間12には、電気ヒータ1と温水加熱管13とが設けられている。電気ヒータ1は、図3に示すように、例えば途中を曲折したU字状をしたステンレス製の管材1aの内部に、ヒータ線1bが通されたものであり、両端側は円形蓋10aに設けた貫通孔10cからタンク外へ導出されている。
【0025】上記温水加熱管13は、図3に示すように、途中がU字状に曲折されていて、両端部13aも曲折されている。両端部13aは貯留タンク10の円筒部材10bよりタンク外へ導出されていて、その両端の一方から水が供給され、熱回収のときにはその水は他方から温水として排出される。
【0026】この電気ヒータ1および温水加熱管13に吊り下げられて複数、この例では6枚の熱伝達部材2が設けられており、その下部が潜熱蓄熱材11に挿入されている。熱伝達部材2は、例えば中実の矩形状をした銅やアルミニウム等の熱伝達性のよい金属からなる平板であり、水平方向2箇所に電気ヒータ用貫通孔2aと同様に温水加熱管用貫通孔2bとが設けられ、その電気ヒータ用貫通孔2aに電気ヒータ1を挿通し、温水加熱管用貫通孔2bに温水加熱管13を挿通することにより取付けられている。また、各熱伝達部材2は広面側を対向するように配設されている。
【0027】上記断熱材14は、電気ヒータ1の両端部と、温水加熱管13の両端部13aとを除き、貯留タンク10のほぼ全体を覆って設けられ、外部雰囲気との間で熱交換され難いようになっている。
【0028】このように構成された潜熱蓄熱装置における、潜熱蓄熱材の融解内容につき説明する。
【0029】潜熱蓄熱材11が固相にされた状態において、電気ヒータ1を加熱状態にすると、加熱した電気ヒータ1からの熱が熱伝達部材2の上端部に伝達され、その後、熱伝達部材2の上側から下側に向かって熱が伝導する。そのため、固相の潜熱蓄熱材11aが融解される部分は、その上表面側から熱伝達部材2に沿って下側へと進行していく。
【0030】よって、固相の潜熱蓄熱材11aが融解された部分11bは、固相の潜熱蓄熱材11a中において、熱伝達部材2に沿って鉛直方向に長い状態に形成され、その融解部分11bの上部は貯留タンク10の上部空間12に解放されている。このため、潜熱蓄熱材11として固相の方が液相よりも比重が高いものを使用している故に、固相から液相に相変態することにより体積膨張が起こっても、その膨張分を貯留タンク10の上部空間に逃がすことができる。そして、この状態の融解部分が各熱伝達部材2の横方向に広がっていき、潜熱蓄熱材11の全体が融解されることになる。
【0031】したがって、本実施形態1による場合には、上述したように固相の潜熱蓄熱材11aを融解する際に体積膨張が起こっても、その膨張分を貯留タンク10の上部空間12に逃がすことができるので、液相部分が固相部分を押圧する熱応力の発生を解消できる。また、本実施形態1では、温水加熱管13を潜熱蓄熱材11の上方に設けているので、温水加熱管13に亀裂や穴が生じても潜熱蓄熱材11が温水加熱管13に流れ込むのを防止できる。
【0032】ところで、図4に示すように熱伝達部材2の電気ヒータ1より下側部分の長さhと厚みbとは、適当な寸法関係に設定することが好ましい。その理由は、潜熱蓄熱材11を熱伝達部材2の下端部においても融解させつつ、熱伝達部材2の電気ヒータ1寄りの高温部(熱伝達部材2の上部)が潜熱蓄熱材11の耐熱温度を越えないようにするためである。このことは、熱伝達部材の上部に加熱源を設ける、後述の実施形態2においても同様である。
(実施形態2)図5は、本実施形態2に係る潜熱蓄熱装置の構成を示す模式的正面図(断面図)であり、図6はその平面図である。図1と同一部分には同一番号を付している。
【0033】この潜熱蓄熱装置は、貯留タンク20と、その貯留タンク20に貯留された潜熱蓄熱材11と、その潜熱蓄熱材11の中を通すように配設された熱交換配管としての温水加熱管23と、上記貯留タンク20の上部開口を覆う状態に設けられた熱伝達部材22と、熱伝達部材22の上側に設けた加熱源としての電気ヒータ21とを備えた構成である。また、このように構成された貯留タンク20の外側は、ほぼ全体(電気ヒータ21と温水加熱管23の端部を除く。)が図示しない断熱材にて覆われており、外部雰囲気との間で熱交換が行われ難いようになっている。
【0034】上記貯留タンク20は、断面コの字状をしたものであり、その内部に上部空間12を残すように潜熱蓄熱材11が貯留されている。上記熱伝達部材22は、貯留タンク20の上部開口を覆う蓋を兼ねる中実の平板部22aと、平板部22aの片側にほぼ垂直に固着された中実の矩形板状をしたフィン部22bとからなる。上記平板部22aは、フィン部22bを連結する連結部としても機能する。
【0035】フィン部22bは潜熱蓄熱材挿入部として用いられ、その下部側が潜熱蓄熱材11に挿入されている。フィン部22bは広面側を対向して6枚設けられており、その長さと厚みとは、適当な寸法関係に設定するのが、上述の理由により好ましい。各フィン部22bの潜熱蓄熱材11に挿入されている部分には、上下2箇所に貫通孔22c、22dが設けられ、その貫通孔22c、22dを通すようにして温水加熱管23が設けられている。なお、上記熱伝達部材22は、材料としてアルミニウム等の加工性のよい金属を用い、例えば押出し加工成形により一体成形するようにしてもよい。そのようにすると、溶接やねじ等を用いて平板部22aとフィン部22bとを連結する手間を省くことができる。上記押出し加工成形は、例えば有底の矩形筒体の底部にフィン部22bの数および大きさに応じたスリットを開設したダイスを用い、そのダイスの内部に上記金属のブロックをポンチ等にて押圧することにより行われる。
【0036】温水加熱管23の端部側は、平板部22aに設けた貫通孔22e、22fより外部へ導出されており、温水加熱管23の両端部の一方より水が供給され、他方側から熱回収のときには温水として取り出される。
【0037】上記熱伝達部材22の上側に電気ヒータ21が取付けられている。電気ヒータ21は、例えばステンレス製の管材21aの内部にヒータ線21bを配した構成のものであり、曲折箇所の数は本実施形態では3箇所としている。
【0038】このように構成された本実施形態2に係る潜熱蓄熱装置においても、実施形態1と同様に固相の潜熱蓄熱材11を融解する際に体積膨張が起こっても、その膨張分を貯留タンク20の上部空間12に逃がすことができるので、液相部分が固相部分を押圧する熱応力の発生を解消できる。加えて、本実施形態2では、温水加熱管23を潜熱蓄熱材11の中を通すように設けているので、実施形態1のように温水加熱管を上部空間を通るように設けた場合よりも、熱取り出し速度が向上して熱交換効率を高めることができる。更に、潜熱蓄熱材11に接触しているフィン部22bが温水加熱管23と連結されているので、熱回収する際に熱伝達部材22、特にフィン部22bが熱回収の効率を向上させる働きを有する。よって、本実施形態2の構成にあっては、熱応力発生の解消と熱回収効率の向上とが図れる利点がある。
【0039】なお、上述した実施形態1、2では温水加熱管13、23の両端を、上部空間12の存在するタンク上部側からタンク外へ導出するようにしているが、本発明はこれに限らない。図7に示すように、貯留タンク10(20)の横側から温水加熱管13(23)のリンク右端をタンク外へ導出するようにしてもよい。
【0040】また、図5および図6に示す実施形態の場合、電気ヒータ21は熱伝達部材22の平板部22aに組み込むようにしても実施できる。
【0041】また、上述した実施形態1、2では電気ヒータ1、21は潜熱蓄熱材11の上方に配設しているが、本発明はこれに限らない。一部の潜熱蓄熱材11が電気ヒータに接触したり、或いは潜熱蓄熱材11が液相となって体積が増加したときに電気ヒータがその潜熱蓄熱材11の中に入るような構成としてもよい。また、実施形態2においては平板部22aの内部に電気ヒータを設けてもよい。
(実施形態3)本実施形態3は、上述した実施形態1および2とは異なり、熱伝達部材の内部に加熱源を内蔵させる場合である。
【0042】図8は本実施形態3に係る潜熱蓄熱装置を示す正面図である。図9(a)は本実施形態3で使用する熱伝達部材を示す正面図、図9(b)はその熱伝達部材の側面図(断面図)である。なお、断熱材は、潜熱蓄熱装置の外側を覆うように設けているが、図示を省略している。
【0043】この実施形態3の潜熱蓄熱装置は、図8に示すように貯留タンク30の側面30aに形成した貫通孔30b、30cを通して温水加熱管33が設けられ、この温水加熱管33は貫通孔30b、30cの周辺部と溶接等により固定されている。この温水加熱管33にて支持されて複数(図示例では5つ)の平板状の熱伝達部材6が設けられている。
【0044】各熱伝達部材6は、図9に示すように外観が直方体状をした枠体7の内部に、加熱源としての電気ヒータを構成するヒータ線8が蛇行状態に設けられている。本実施形態3の電気ヒータは、前述の管材1a、21aが無いものである。このヒータ線8は、図8に破線にて示すように天井板30dから外部へ導出されている。また、枠体7内にはヒータ線8を除く部分に充填材9が配設されている。充填材9としては、熱伝達部材6の使用目的を考慮すると、熱伝導性に優れるものを使用することが望ましい。
【0045】上記ヒータ線8は、熱伝達部材6の上側を下側よりも上下間隔sを短くして、つまり熱伝達部材6の上部における単位面積当たりの発熱量を大にし、熱伝達部材6の下部における単位面積当たりの発熱量を小にするように配設されている。また、上記枠体7のヒータ線8の無い部分には、貫通孔7a、7bが設けられ、その貫通孔7a、7bを挿通するようにして温水加熱管33が取付けられている。
【0046】このように構成された本実施形態3に係る潜熱蓄熱装置による場合には、単位面積当たりの発熱量が、熱伝達部材6の上部を大、下部を小としてあるので、実施形態1や2と同様に固相の潜熱蓄熱材11を融解させ得る。また、潜熱蓄熱材11と接触する熱伝達部材6が温水加熱管33に連結されているので、熱回収効率を向上できることになる。
(実施形態4)本実施形態4は、上記実施形態3のようにヒータ線の上下間隔sを上下方向で調整するのではなく、電気ヒータを熱伝達部材の上下方向で分割して上側の電気ヒータと下側の電気ヒータの加熱タイミングを調整する場合である。
【0047】図10は本実施形態4に係る潜熱蓄熱装置に用いる熱伝達部材を示す正面図である。この熱伝達部材6Aには、上部と下部とに別々のヒータ線8a、8bが設けられている以外は実施形態3と同様に構成されている。上記ヒータ線8aと8bとには、各々独立して通電が行われるようになっている。なお、潜熱蓄熱材の上表面が上側ヒータ線8aにて加熱される部分の最高温度が得られる箇所近傍に位置するように、潜熱蓄熱材と熱伝達部材6Aとを相対的に配置させるようにしておく。
【0048】この実施形態4の場合においては、固相の潜熱蓄熱材の融解初期において潜熱蓄熱材の上側程、発熱量を大にして、つまりヒータ線8aへの通電量(例えば電圧)を大にし、ヒータ線8bへの通電量(例えば電圧)を小にして、潜熱蓄熱材を上方から徐々に融解させる。すると、上述した実施形態1〜3と同様に熱応力の発生を防止した融解が可能である。そして、熱伝達部材6Aと接触する潜熱蓄熱材部分の全域が融解した後は、今度は潜熱蓄熱材の下側に相当する熱伝達部材部分の発熱量を大にして、つまりヒータ線8bへの通電量(例えば電圧)を大にし、ヒータ線8aへの通電量(例えば電圧)を小にする。すると、液相の潜熱蓄熱材における熱による対流の発生が推進される。これによって固相の潜熱蓄熱材の融解速度を向上させることが可能になる。
【0049】なお、本実施形態4においては、熱伝達部材6Aに2つのヒータ線8aと8bを設けている、つまり電気ヒータを2分割した構成としているが、本発明はこれに限らず、3以上に分割しても同様に実施できることは勿論である。
【0050】また、上述した実施形態3、4では図8に示すように、縦長の貯留タンク30を用いているが、そのタンクとしては断面形状が円形のものを使用するのが好ましい。その理由は、縦長タンクの場合には、潜熱蓄熱材の高さが高くなってタンクに与える圧力も高くなるため、断面円形のタンクを使用することにより、その圧力に耐えるようにすることができるからである。また、このようなタンクを使用する場合、図11(a)、(b)に示すように円筒状の貯留タンク30の天井板30dを利用して、温水加熱管33および熱伝達部材6(6A)の少なくとも一方を支持する構成とするのが好ましい(図11では断熱材の図示を省略している。)。より詳細には、図11(a)に示す場合は、熱伝達部材6(6A)を天井板30dに連結して支持し、また、温水加熱管33は天井板30dと熱伝達部材6(6A)とに連結させて支持している。図11(b)に示す場合は、温水加熱管33を天井板30dに連結して支持し、その温水加熱管33に熱伝達部材6(6A)を連結して支持している。
【0051】なお、上述した実施形態1〜4では、熱伝達部材を電気ヒータや天井(蓋)部材、或いは温水加熱管等にて支持する構成としたり、温水加熱管を貯留タンクにて支持する構成としているが、本発明はこれに限らず、これらとは別体の支持部材を用いて支持する構成としてもよいことは勿論である。
【0052】また、上述した実施形態1〜4では、各種熱伝達部材を鉛直方向に沿って設けるようにしているが、本発明は必ずしもそのように設ける必要はなく、固相の潜熱蓄熱材を上側から熱伝達部材に沿って下側へと融解でき、その融解により液相となった部分が常に上部空間に繋がっている状態を確保できれば、熱応力の発生を解消できるので、斜め方向であっても支障はなく、更にはほぼ水平に近い傾きであってもよい。また、このようにした場合は、仮に熱伝達部材を水平方向に沿って設けたときにおいて、熱回収の際に起こる液相から固相への相変態に伴う熱収縮により、熱伝達部材の下側に隙間が発生して熱伝達性能が低下するのを防止できる利点もある。
【0053】また、上述した実施形態において熱伝達部材としては、4乃至6個使用しているが、本発明はこれに限らず、3個以下であっても、7個以上用いてもよい。また、熱伝達部材としては平板状のものに限らず、固相の潜熱蓄熱材を融解して液相となった部分が常に上部空間に繋がる状態を確保できれば、波板状や他の形状であってもよい。また、上述した実施形態においては平板状の熱伝達部材を使用しているが、本発明はこれに限らず、その幅寸法を狭くした縦長の短冊状をしたものを複数一列に配してもよく、或いはランダムな位置に配してもよい。
【0054】また、本発明において用いる熱伝達部材の形状は、貯留タンクの断面形状に応じた形状、例えば貯留タンクの断面が円形であれば熱伝達部材も円形としてもよく、また、任意の形状としてもよい。
【0055】また、上述した実施形態1〜4では加熱源にヒータ線からなる電気ヒータを使用しているが、本発明はこれに限らず、面ヒータを箱体で囲んだものや、面ヒータのみからなる電気ヒータ、或いは管材(1a、21a)の無い棒状の電気ヒータを使用してもよい。また、本発明は、夜間電力の活用を考慮しない場合には、加熱源として電気ヒータを用いることに代えて、他の加熱手段、例えば蒸気や熱気を熱源とする加熱源を使用してもよい。
【0056】また、上述した実施形態では潜熱蓄熱材としてエリスリトールを用いているが、本発明はこれに限らず、糖アルコールや、糖アルコールを主成分とする蓄熱材を用いることも可能である。この場合において、相変態が起こる温度が高い潜熱蓄熱材を用いる場合には、水を蒸気に交換して取出すことも可能となる。
【0057】また、上述した実施形態では貯留タンクを密封状態としているが、本発明はこれに限らない。例えば、貯留タンクの上部の全域または一部が開放された構成としてもよく、また、貯留タンクの上部の一部が開口されていると共にその開口部がガス等でパージされた構成、或いはタンク内を外側より負圧にした構成とすることができる。
【0058】また、上述した実施形態では電気ヒータのターン数(曲折回数)や長さ等は明言していないが、任意である。但し、実施形態3や4の場合には、所定の発熱状態が確保できることを条件とする。
【0059】
【発明の効果】以上詳述したように本発明による場合には、潜熱蓄熱材に少なくとも下部を挿入した熱伝達部材に、発熱密度が上側の方が下側よりも高くなるように熱を付与するので、固相の潜熱蓄熱材が熱伝達部材に沿って上側から融解していき、よって融解部分が固相の潜熱蓄熱材中を通って熱伝達部材に沿って長く形成されても、その融解部分は上部空間に常に繋がった状態となるため、固相から液相への相変態に際して体積膨張が起こっても、体積膨張分が上部空間へ逃げ得るので、固相の潜熱蓄熱材に熱応力が作用せず、熱応力の発生を解消させることができる。
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
【出願日】 平成11年6月22日(1999.6.22)
【代理人】 【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司 (外2名)
【公開番号】 特開2001−4290(P2001−4290A)
【公開日】 平成13年1月12日(2001.1.12)
【出願番号】 特願平11−175836