| 【発明の名称】 |
セラミックスの焼成用治具 |
| 【発明者】 |
【氏名】福田 寛
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| 【要約】 |
【課題】大量のセラミックスを焼成する場合でも治具内での分解ガスの滞留によるバインダ分解むらや汚染などの発生を防止し、均一な焼成を行なうことができるセラミックスの焼成用治具を提供する。
【解決手段】被焼成セラミックスを収容するための上部が開口した収容室12を有する治具本体10と、治具本体10の上部開口部11を閉じるとともに、上下方向に配置された2枚の蓋20,30とを備え、各蓋20,30には互いに上下方向に異なる位置に通気穴21,31が分散形成される。蓋20,30の間には、脱バインダ処理温度より高く本焼成温度より低い温度で分解し、かつ蓋20,30の間に上下方向の隙間を設けるためのスペーサ40が配置されている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】セラミックスの焼成に用いる焼成用治具において、セラミックスを収容するための上部が開口した収容室を有する治具本体と、治具本体の上部開口部を閉じるとともに、上下方向に配置された複数の蓋体とを備え、各蓋体には互いに上下方向に異なる位置に通気穴が分散形成され、各蓋体の間には、脱バインダ処理温度より高く本焼成温度より低い温度で分解し、かつ蓋体の間に上下方向の隙間を設けるためのスペーサが配置されていることを特徴とする焼成用治具。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はセラミック成形体のように揮発成分を含むセラミックスに対し、その脱バインダ処理と本焼成処理とを連続的に行なうのに適した焼成用治具に関するものである。 【0002】 【従来の技術】一般に、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ホウ素などの揮発しやすい成分を含むセラミックス生材料は、200℃〜500℃の低温で含有しているバインダを放散させ、600℃以上の高温で被焼成セラミックスの周囲をある一定の雰囲気が保てる状態、つまり有用な組成成分が放散しないような状態で本焼成を行なう。そのため、例えば蓋付きの焼成用治具の中に被焼成セラミックスを配置して焼成を行うのが通例である。 【0003】図1に従来の焼成用治具の一例を示す。この治具は被焼成セラミックスを収容する器型の本体1と蓋2とからなり、本体1または蓋2の部分に本体1と蓋2との間に隙間を設けるための突起3が設けられている。この突起3は被焼成セラミックス中に含まれるバインダ成分よりも高い温度で分解する物質で形成されている。そのため、低温度域では本体1と蓋2との間に突起3による隙間が形成され、この隙間からバインダ分解ガスが治具の外部へ放出される。また、高温度域では突起3が焼失し、本体1と蓋2との間が密閉され、有用成分の放散を防ぎ、セラミックスを所定雰囲気で焼結させるようになっている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】量産性を高めるため大型の焼成用治具を用いた場合、治具の中に配置した被焼成セラミックスの量が増えることに伴い、バインダ分解ガスの量も増加する。ところが、従来の治具の構造をそのまま大型化すると、発生した分解ガスが本体1と蓋2との隙間に到達するまでの距離が長くなり、治具内でガスの滞留が起こり、効率よくガスを排出できなくなる。その結果、脱バインダ時に治具の中心部と周辺部とでバインダ分解ガスの抜けが異なり、中心部に配置されたセラミックスの残炭素量が多くなる。このように、治具内での位置によるバインダ分解むらや、不要成分の付着による汚染などが発生するという問題がある。 【0005】そこで、本発明の目的は、大量のセラミックスを焼成する場合でも治具内での分解ガスの滞留によるバインダ分解むらや汚染などの発生を防止し、均一な焼成を行なうことができるセラミックスの焼成用治具を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、セラミックスの焼成に用いる焼成用治具において、セラミックスを収容するための上部が開口した収容室を有する治具本体と、治具本体の上部開口部を閉じるとともに、上下方向に配置された複数の蓋体とを備え、各蓋体には互いに上下方向に異なる位置に通気穴が分散形成され、各蓋体の間には、脱バインダ処理温度より高く本焼成温度より低い温度で分解し、かつ蓋体の間に上下方向の隙間を設けるためのスペーサが配置されていることを特徴とする焼成用治具を提供する。 【0007】上下方向に重なりあわない位置に通気穴を設けた複数の蓋体を上下方向に配置し、その間にスペーサを配置して蓋体の間に隙間を設ける。そのため、治具本体の収容室は蓋体に設けた通気穴を介して外部に連通している。常温〜脱バインダ処理温度まで昇温する過程では、治具本体の中に収容された被焼成セラミックスから発生する分解ガスは、その発生箇所に近い通気穴を通って外部へ排気される。そのため、大型の治具を用いた場合でもバインダ分解ガスの滞留が生じず、治具内での位置によるバインダ分解むらや不要成分の付着による汚染などが発生しない。さらに本焼成温度まで温度上昇すると、スペーサが分解して焼失し、蓋体が重なり合い、一方の蓋体の通気穴を他方の蓋体が閉じる形となる。そのため、治具の内部に密閉雰囲気を作り、有用な組成成分の飛散を防ぐことができる。 【0008】スペーサとしては、例えばカーボンを使用することができる。例えば矩形の2枚の蓋体を用い、蓋体に通気穴を分散形成した場合、通気穴を流れる分解ガスの流れを阻害しないように、スペーサは通気穴が設けられていない蓋体の4隅部に配置するのがよい。 【0009】 【発明の実施の形態】図2,図3は本発明にかかる焼成用治具の一例を示す。被焼成用セラミックス(図示せず)を収容した治具本体10は耐熱性セラミックスなどで形成され、上面に開口部11を有し、内部に被焼成用セラミックスを収容するための収容室12を有する箱型形状に形成されている。上記開口部11上には下蓋20が配置され、その上に上蓋30が配置されている。これら下蓋20と上蓋30も治具本体10と同様に耐熱性セラミックスなどで方形状に形成されている。下蓋20と上蓋30には上下方向に異なる位置に複数の通気穴21,31が分散形成されている。 【0010】下蓋20と上蓋30の間には、4隅部に一定厚みのスペーサ40が配置されている。これらスペーサ40はカーボンなどの被焼成セラミックスの脱バインダ処理温度より高く本焼成温度より低い温度で分解する材料で形成されており、下蓋20と上蓋30の間に一定の隙間を設けてある。 【0011】次に、上記構成よりなる焼成用治具によって被焼成セラミックスを焼成する動作を説明する。室温から徐々に昇温すると、被焼成セラミックスはバインダとして、例えばポリビニルブチラールやアクリルなどを含んでいるので、これらバインダが300℃〜500℃の低温度域で分解し、分解ガスが発生する。この温度域では上下の蓋20,30に挟まれたスペーサ40は固体状態で存在しているので、下蓋20と上蓋30の間に一定の隙間が設けられ、発生したバインダ分解ガスは図3の(a)に示すように互いの通気穴21,31を通って外部に放散される。特に、通気穴21,31が分散形成されているので、バインダ分解ガスを治具本体10内部で滞留させることなく、発生した位置から速やかに外部に放散させることができる。このようにして脱バインダ処理が実施される。 【0012】さらに温度が上昇して約900℃に達すると、カーボンの燃焼反応であるC+O2 →CO2 又はC+1/2O2 →COにより、スペーサ40は焼失する。これにより、図3の(b)のように上下の蓋20,30は重なりあい、それぞれに形成された通気穴21,31は対向する蓋によって閉じられ、治具本体10の内部と外部の雰囲気が遮断される。この状態で、さらに約1000℃まで昇温させることで本焼成処理を行なう。この時、収容室12の内部が密閉されているので、雰囲気を一定にすることができ、被焼成セラミックス中の蒸発しやすい有用成分の飛散を防ぎ、均一に焼結することができる。 【0013】次に、被焼成セラミックスの焼成に上記焼成用治具を用いた場合の具体例を示す。被焼成セラミックスとして、200mm角のセラミックス基板を用いた。焼成用治具としては、一辺が250mm、厚さ1.5mmの正方形の蓋を2枚用い、それぞれにL×W=10mm×2mmの長方形の通気穴をL方向に10mmピッチで10列、W方向に2mmピッチで50列設けた。それぞれの蓋の通気穴は、2枚の蓋を一致させるように重ねた際には上下方向に一致しないような位置に設けた。スペーサとしては、3mmφ×2mmの円盤形のカーボンペレットを用いた。そして、一辺が250mm、高さが10mmの直方体形状の治具本体に上記被焼成セラミックスを収納し、焼成を行なった。 【0014】温度プロファイルとしては、約5℃/minで500℃まで昇温し、500℃において1時間の温度キープを取り、さらに約3℃/minで1000℃まで昇温し、1000℃において1時間の温度キープを取り、その後約3℃/minで降温を行なった。このようにして焼成を行なった後、セラミックス基板の残留カーボンを赤外線吸収法により分析し、従来の焼成用治具(図1参照)を用いた場合との比較を行なった結果が表1である。 【0015】 【表1】
なお、ばらつきは最大値と最小値との差である。 【0016】表1から明らかなように、本発明による焼成用治具を用いた場合、従来に比べて残留カーボンを最大約35%に低減でき、また基板中央部と周辺部との差を42%から9%に縮めることができた。この結果から、本発明の焼成用治具では従来に比べて中央部と周辺部とのバインダ分解むらが少なく、かつ残炭素量も少なくなることがわかる。 【0017】表2は、焼成時間による効果を比較したものである。上記の焼成プロファイルにおいて、500℃の温度キープ時間を1時間から4時間に延長した場合の残留カーボン量を測定したものである。 【0018】 【表2】
【0019】上記結果より、脱バインダ処理時間を長くすることにより、従来/本発明のいずれの場合も残留カーボン量が減少していることがわかる。しかし、本発明による焼成用治具を用いた場合、脱バインダ処理時間が1時間であっても、4時間に延長した従来例より残留カーボン量が少なく、かつ残留カーボン量のばらつきも少ない。つまり、本発明では、従来に比べて短時間で均一な脱バインダ処理が行なえることがわかる。 【0020】本発明において、通気穴の形状は、長方形,円形その他如何なる形状であってもよい。通気穴は蓋のほぼ全面に均等に分散形成する方が、脱バインダ処理の均質性が得られるので、望ましい。上記実施例では2枚の蓋体の間にスペーサを配置したが、これに加えて、スペーサを下蓋と治具本体との間にも配置してもよい。この場合には、治具本体の収容室の周辺部に滞留する分解ガスを効率よく排気できるので、周辺部の残炭素量を低減できる効果がある。さらに、蓋体の枚数は2枚に限らず、3枚以上であってもよい。例えば3枚の蓋体を使用する場合には、上下に隣合う蓋体の通気穴の位置を互いに上下方向に異なる位置とすればよく、最上の蓋体と最下の蓋体の通気穴は同一位置に設けられていてもよい。 【0021】 【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明によれば、治具本体の上部開口部を閉じる複数の蓋体に上下方向に異なる位置に通気穴を分散形成し、蓋体の間に脱バインダ処理温度より高く本焼成温度より低い温度で分解するスペーサを配置したので、脱バインダ処理温度に昇温する過程ではスペーサによって蓋体の間に隙間が形成され、治具本体の中に収容された被焼成セラミックスから発生する分解ガスは、その発生箇所に近い通気穴を通って外部へ排気される。そのため、大型の治具を用いた場合でもバインダ分解ガスの滞留が生じず、治具内での位置によるバインダ分解むらや不要成分の付着による汚染などが発生しない。また、本焼成温度まで温度上昇すると、スペーサが分解して焼失し、蓋体が重なり合い、一方の蓋体の通気穴を他方の蓋体が閉じる形となるので、有用成分の放散を防ぎ、均質な焼成を行なうことができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006231 【氏名又は名称】株式会社村田製作所
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| 【出願日】 |
平成11年11月18日(1999.11.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100085497 【弁理士】 【氏名又は名称】筒井 秀隆
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| 【公開番号】 |
特開2001−141373(P2001−141373A) |
| 【公開日】 |
平成13年5月25日(2001.5.25) |
| 【出願番号】 |
特願平11−327697 |
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