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【発明の名称】 加熱炉の雰囲気制御装置
【発明者】 【氏名】伊藤 毅

【氏名】北村 雅則

【要約】 【課題】

【解決手段】セラミックス成形体wを加熱焼成する加熱炉1の雰囲気制御装置4において、上記セラミックス成形体を加熱しながら重量を常時測定し、該測定された重量の変化から重量変化速度実測値を求め、該実測値が所定の重量変化速度目標値となるように炉内雰囲気を制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 セラミックス成形体を加熱焼成する加熱炉の雰囲気制御装置において、上記セラミックス成形体を加熱しながら重量を常時測定し、該測定された重量の変化から重量変化速度実測値を求め、該実測値が所定の重量変化速度目標値となるように炉内雰囲気を制御することを特徴とする加熱炉の雰囲気制御装置。
【請求項2】 請求項1において、上記重量変化速度目標値と重量変化速度実測値との偏差、及び重量変化速度実測値の変化率をもとにファジィ推論により目標雰囲気を求め、炉内雰囲気を該目標雰囲気に制御することを特徴とする加熱炉の雰囲気制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セラミックス成形体を加熱焼成する加熱炉に関し、より詳細には重量変化速度実測値を重量変化速度目標値(設定値)に制御できるようにした雰囲気制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】セラミックス成形体の製造工程においては、成形のために原料粉末にバインダが添加されており、セラミックス成形体を加熱焼成する段階で、このバインダが急激に分解することがある。そしてこの分解の際の発生ガス等が原因となってセラミックス成形体に割れ、クラックが生じることがあり、また積層体の場合には層間剥離などを生じることがある。このような問題を防止するために長時間をかけて脱バインダ処理を行っているが、効率の良い最適な脱脂条件を決定するには長時間を要し、困難な作業を伴う。
【0003】上記問題を解決する一つの手段として、従来、例えば特開昭63−316104号公報に記載されたものがある。この従来例では、セラミックス成形体を加熱炉で加熱し、該成形体の物理的性質の変化、例えば寸法の収縮,重量変化の時間的微分値を検出し、温度調節器により、成形体の収縮速度あるいは減量速度が上記割れ,クラック,剥離を生じない最大収縮速度あるいは最大減量速度以下となるように炉内温度あるいは成形体の温度制御を行うようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記公報記載の従来技術では、最大収縮速度あるい最大減量速度を越えないようにセラミックス成形体の温度を制御しているが、最大減量速度等に影響を与えるのは温度だけではなく、例えば、炉内雰囲気も、上記割れ,クラック,層間剥離を回避できる脱バインダ処理の実現に大きな影響を与えることが判明した。
【0005】本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、上記公報記載のものと異なる制御方式により割れ,クラック,層間剥離等の生じない脱バインダ処理を実行できるようにした加熱炉の雰囲気制御装置を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、セラミックス成形体を加熱焼成する加熱炉の雰囲気制御装置において、上記セラミックス成形体を加熱しながら重量を常時測定し、該測定された重量の変化から重量変化速度実測値を求め、該実測値が所定の重量変化速度目標値となるように炉内雰囲気を制御することを特徴としている。
【0007】請求項2の発明は、請求項1において、上記重量変化速度目標値と重量変化速度実測値との偏差、及び重量変化速度実測値の変化率をもとにファジィ推論により目標雰囲気を求め、炉内雰囲気を該目標雰囲気に制御することを特徴としている。
【0008】
【発明の作用効果】請求項1の発明によれば、セラミック成形体の脱バインダ処理において、セラミックス成形体の重量変化速度実測値が目標値となるように炉内雰囲気を制御するようにしたので、所定の重量変化速度目標値でもってバインダを分解させることができ、バインダの分解が速すぎることによる割れ,クラック,層間剥離の発生を防止でき、効率的に高品質なセラミックス成形体を得ることができる。
【0009】請求項2の発明によれば、ファジィ推論に基づいた適切な目標雰囲気の設定が可能となり、重量変化速度実測値をより目標値に精度良く制御することができ、割れ,クラック,層間剥離の発生をより確実に防止して高品質なセラミックス成形体を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態を説明するためのブロック構成図である。図において、1はセラミックス成形体wを加熱焼成する加熱炉、2は炉内に配置されたセラミックス成形体wの重量を常時計測する電子天秤、3はセラミックス成形体wを加熱する電熱式ヒータ、4は炉内雰囲気を所望の雰囲気に調整可能の雰囲気調整装置である。
【0011】上記天秤2で計測された上記セラミックス成形体wの重量データはCPU5に入力される。該CPU5は、入力された重量データの変化に基づいて、重量変化速度実測値を求め、該実測値が予め設定された所定の重量変化速度目標値になるような所要の目標雰囲気を計算し、該計算結果を、雰囲気調整装置4に出力する。
【0012】ここで、上記目標雰囲気の計算は、具体的には、炉内に投入される雰囲気ガスの空気/窒素ガスの混合比(Air/N2 比) として計算される。そして上記雰囲気整装置4は、加熱炉1内に投入する雰囲気ガス中の空気と窒素ガスとの混合比が上記計算された混合比となるように空気,窒素ガスの流量比率を調整するように構成されている。より具体的には、上記重量変化速度(減量速度)実測値が目標値より大なる場合には空気の割合が減少され、小なる場合には空気の割合が増大される。即ち、空気(又は酸素の分圧値)の割合が多いほど上記バインダの分解が促進される。
【0013】なお本実施形態では、雰囲気ガスを空気と窒素ガスで構成しているが、他にもH 2 OとAr等バインダの分解速度に影響を与えるガスであれば構成可能である。また本実施形態では総流量を一定としてガスの混合比を変化させているが、ガスの混合比を一定として総流量を変化させる方法でも同様の制御が可能である。
【0014】次に本実施形態の動作及び作用効果について説明する。図2に示すように、加熱炉1内の温度をバインダの分解領域の温度Toまで昇温させた後、一定時間該温度Toをキープし、該温度をキープしている間に以下の制御を行う。
【0015】上記CPU5は、電子天秤2によるセラミックス成形体wの重量測定値からセラミックス成形体の重量変化速度実測値、該実測値と上記目標値との偏差、及び該偏差の変化率を計算し、これらの計算結果から、上記実測値を上記目標値にするための所定の目標雰囲気(空気/窒素ガスの混合比又は酸素分圧値)を表1に基づいて算出する。
【0016】
【表1】

【0017】具体的には、表1に示すように、例えば重量変化速度実測値と重量変化速度目標値の偏差が+0.005%/min より大きく、かつ該重量変化速度実測値の変化率が+0.01%/min2より大きい場合には空気流量を−20%とし、上記差が−0.005%/min より小さくかつ変化率が−0.01%/min2より小い場合には空気流量を+20%とし、その間の場合には空気流量を−20%から+20%に徐々に増加していく。
【0018】なお、本第1実施形態では、上記表1に基づいた目標雰囲気の設定を行った場合を説明したが、表による設定ではなくPID制御等により雰囲気を計算する方法でも制御可能である。
【0019】上記雰囲気調整装置4により、上記算出された目標雰囲気となるよううに空気/窒息ガスの混合割合が調整され、該混合割合の雰囲気ガスが炉内に投入される。そして一定時間が経過するまで一定時間間隔で上記手順を繰り返すことにより、セラミックス成形体の重量変化速度実測値が上記所定の重量変化速度目標値に制御される。その後加熱炉1を常温まで降温させて、脱バインダ処理を完了する。
【0020】このように本第1実施形態によれば、セラミック成形体wの脱バインダ処理において、セラミックス成形体wの重量変化速度実測値が目標値となるように、炉内雰囲気、即ち空気/窒素ガス混合比を制御したので、所定の重量変化速度目標値でもってバインダを分解させることができる。これによりセラミックス整形体wの割れ,クラック,層間剥離を防止でき効率的に高品質な成形体を得ることができる。
【0021】ちなみに従来は、所定の重量変化速度でバインダを分解させるために温度制御を行うようにしていたが、本実施形態は、これと異なる方式によって同様の効果を得ることができる。本実施形態制御方式による重量変化速度の制御結果を、図2に示す。例えば重量変化速度の目標値を0.05%/min に設定して脱バインダ処理の制御を行った結果、脱バインダ中の重量変化速度実測値の平均値は0.0468%/min であった。即ち重量変化速度の制御精度は±10%以内であり、実用上十分といえる。
【0022】次に本発明の第2実施形態を説明する。
【0023】本第2実施形態は、上記第1実施形態と同様の図1に示す構成でもって実行される。そして本第2実施形態では、上記所要の雰囲気の算出を、セラミックス成形体の重量変化速度の実測値と目標値との偏差,及び重量変化速度実測値の変化率からファジィ推論に基づいて行うようにしている。
【0024】まず加熱炉1内をバインダの分解領域の温度Toまで上昇させた後、一定割合で温度を上昇させ、この温度上昇している期間中において、空気/窒息ガスの混合比を上記ファジィ推論によって求め、炉内雰囲気がこの求めた混合比となるように雰囲気調整装置4で制御する。
【0025】上記ファジィ推論による雰囲気の計算の一具体例を以下に示す。この例では、入力値が 重量変化速度実測値の目標値との偏差=+0.006%/min 重量変化速度実測値の変化率 =+0.00012%/min2である場合を例にとって空気混合比を計算する。
【0026】まず図4(a)において、入力=+0.006%/min から、
であり、また図4(b)において、入力=+0.00012%/min2から
である。
【0027】
【表2】

【0028】そして表2のファジィルールより、上記入力1,2に対する出力値は、 入力1=「+■」,入力2=「通常」の場合には、出力値=−10% 入力1=「+■」,入力2=「大」 の場合には、出力値=−80% 入力1=「+■」,入力2=「通常」の場合には、出力値=−20% 入力1=「+■」,入力2=「大」 の場合には、出力値=−100%となる。
【0029】上記の結果をまとめると、0.6×0.9×(−10%) =−5.4%0.6×0.1×(−80%) =−4.8%0.4×0.9×(−20%) =−7.2%0.4×0.1×(−100%)=−4.0%従って、ファジィ推論による出力値は(−5.4%)+(−4.8%)+(−7.2%)+(−4.0%)=−21.4%よって、空気の混合比を21.4%減少させる。
【0030】このように本実施形態では、ファジィ推論に基づいた適切な目標雰囲気の設定が可能であるため、重量変化速度をより目標値に精度良く制御することができる。本実施形態による実験結果を図3に示す。この例では、重量変化速度の目標値を0.05%/min に設定して脱バインダ処理の制御を行った結果、脱バインダ中の重量変化速度の平均値は0.0518%/min であった。ファジィ推論を用いたことにより、重量変化速度の制御精度は±5%以内に向上した。
【出願人】 【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
【出願日】 平成11年12月16日(1999.12.16)
【代理人】 【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
【公開番号】 特開2001−174161(P2001−174161A)
【公開日】 平成13年6月29日(2001.6.29)
【出願番号】 特願平11−358081