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【発明の名称】 フッ化水素の除去方法
【発明者】 【氏名】津田 武英

【氏名】松本 竹雄

【氏名】田中 義紀

【氏名】小松 聡

【氏名】小山 哲

【要約】 【課題】フッ化水素とジクロロメタン、クロロフルオロメタンおよび/またはジフルオロメタンの混合物中からのフッ化水素の効率的な除去方法を提供する。

【解決手段】フッ化水素の除去は、混合物をフッ化水素に富む上部液相とフッ化水素に富まない下部液相に分液させた後に、それぞれの液相から、フッ化水素とジクロロメタン、フッ化水素とクロロフルオロメタンおよびフッ化水素とジフルオロメタンの2成分系共沸混合物を除去するように蒸留することにより効率的に行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくともフッ化水素とクロロフルオロメタンを含んで成る混合物を−20℃以下に冷却し、フッ化水素に富む上部液相とクロロフルオロメタンに富む下部液相に分離し、下部液相からフッ化水素の少ないクロロフルオロメタンを回収することを特徴とするフッ化水素の除去方法。
【請求項2】 少なくともフッ化水素、クロロフルオロメタンとジクロロメタンを含んで成る混合物を、フッ化水素に富む上部液相とクロロフルオロメタンとジクロロメタンに富む下部液相に分離し、下部液相からフッ化水素の少ないクロロフルオロメタンとジクロロメタンを回収することを特徴とするフッ化水素の除去法。
【請求項3】 少なくともフッ化水素、クロロフルオロメタンとジクロロメタンを含んで成る混合物にジクロロメタンを添加してこの混合液のジクロロメタン/クロロフルオロメタンのモル比を0.5以上とした混合液を60℃以下に冷却し、フッ化水素に富む上部液相と、クロロフルオロメタンとジクロロメタンに富む下部液相に分離し、下部液相からフッ化水素の少ないクロロフルオロメタンとジクロロメタンを回収することを特徴とするフッ化水素の除去方法。
【請求項4】 少なくともフッ化水素、ジフルオロメタン、クロロフルオロメタンとジクロロメタンを含んで成る混合物にクロロフルオロメタンとジクロロメタンの混合物またはジクロロメタンを添加してこの混合液のジクロロメタン/クロロフルオロメタンのモル比を0.5以上とした混合液を60℃以下に冷却し、フッ化水素に富む上部液相と、ジフルオロメタン、クロロフルオロメタンおよびジクロロメタンに富む下部液相に分離し、下部液相からフッ化水素の少ないジフルオロメタン、クロロフルオロメタンおよびジクロロメタンを回収することを特徴とするフッ化水素の除去方法。
【請求項5】 下部液相を蒸留することによりフッ化水素をフッ化水素とクロロフルオロメタン、ジクロロメタンおよび/またはジフルオロメタンの共沸混合物として除く請求の範囲第1〜4項のいずれかに記載のフッ化水素の除去方法。
【請求項6】 混合物を蒸留する時の圧力が0.5Kg/cm2absから30Kg/cm2absの範囲である請求の範囲第5項記載のフッ化水素の除去方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フッ化水素(以下、HFと称する。)とジクロロメタン(以下、R−30と称す。)の共沸混合物、HFとクロロフルオロメタン(以下、R−31と称す。)の共沸混合物、およびHFとジフルオロメタン(以下、R−32と称す。)の共沸混合物、ならびにHFとR−30、R−31および/またはR−32を含んで成る混合物からHFを除去する方法に関する。R−32はクロロジフルオロメタンの代替冷媒として着目されていて、R−30及びR−31はR−32の原料となる。
【0002】
【従来の技術】R−30、R−31および/またはR−32は、通常R−30などの塩化炭化水素とHFを反応させることにより製造される。これまでは、HF、R−30、R−31、R−32を主成分とする、反応により生成する混合物と未反応物を水性相により洗浄してHFを除去する方法が用いられているが、洗浄液の中和のために多量のアルカリを要し、また中和した廃水を処理する必要があるため有効な方法とは言えない。
【0003】
【発明の構成】本発明は、HFとR−30、R−31またはR−32が共沸混合物を形成することを利用することにより、場合により、HFとR−30との混合物および/またはHFとR−31との混合物が一定条件下で上部液相および下部液相とに分液することを利用して、HFまたは他の成分を濃縮または除去する方法を提供する。
【0004】本発明者らは、HFとR−30、R−31および/またはR−32を含んで成る混合物からHFを除去する方法について研究を重ねた結果、HFとR−30、HFとR−31、HFとR−32はそれぞれ最低混合共沸物を形成することを見いだし本発明を完成した。この混合物は、HFとR−30、R−31および/またはR−32を含んで成る混合物からHFを除去する際の蒸留操作の還流として使用することができ、それにより有効な分離が可能となる。
【0005】従って、第1の要旨において、本発明は、HFとR−30、HFとR−31、HFとR−32の共沸混合物を提供する。これらの共沸混合物の沸点は、大気圧下において、それぞれ約12℃、約−11℃と約−53℃である。
【0006】更に、第2の要旨において、本発明は、上述の共沸の現象を利用して、いずれかの成分を濃縮または除去する方法を提供する。
【0007】本明細書において、「濃縮」および「除去」なる用語は、相対する概念を意味するものとして使用している。即ち、混合物においてある成分を濃縮することは、該ある成分以外の他の成分を除去することになる。
【0008】即ち、HFとR−30を含んで成る混合物を蒸留することにより、HFをR−30との共沸混合物として除去し、実質的にHFを含まないR−30を、または実質的にR−30を含まないHFを得ることにより、R−30またはHFを濃縮または除去する方法を提供する。
【0009】また、HFとR−31を含んで成る混合物を蒸留することにより、HFをR−31との共沸混合物として除去し、実質的にHFを含まないR−31を、または実質的にR−31を含まないHFを得ることにより、R−31またはHFを濃縮または除去する方法を提供する。
【0010】更に、HFとR−32を含んで成る混合物を蒸留することにより、HFをR−32との共沸混合物として除去し、実質的にHFを含まないR−32を、または実質的にR−32を含まないHFを得ることにより、R−32またはHFを濃縮または除去する方法を提供する。
【0011】また、本発明は、上述のそれぞれの濃縮方法を組み合わせて、HFとR−30、R−31および/またはR−32を含んで成る混合物を蒸留することにより、HFとR−30との共沸混合物、HFとR−31との共沸混合物および/またはHFとR−32との共沸混合物としてHFまたは他の成分を除去し、実質的にHFを含まないR−30、R−31および/またはR−32を得ること、あるいは実質的にR−30、R−31および/またはR−32を含まないHFを得ることにより、HFを除去または濃縮する方法を提供する。
【0012】前述のごとく、HFとR−30、HFとR−31およびHFとR−32の2成分系には(最低)共沸混合物が存在する。これらの共沸混合物は、本発明者らが初めて見いだした。
【0013】HFとR−30との混合物を大気圧下で蒸留すると、HF/R−30のモル比で約86/14以上にHFを濃縮することはできないことが見いだされた(共沸温度12℃)。言い替えると、この組成比の液相は平衡状態にある気相の組成比と同一となる。尚、HFとR−30の共沸組成は圧力によりそのモル比が変化し、3.0Kg/cm2GにおけるHF/R−30のモル比は約80/20、15Kg/cm2GにおけるHF/R−30のモル比は約77/23である。
【0014】また、HFとR−31との混合物を大気圧下で蒸留すると、HF/R−31のモル比で約22/78以上にR−31を濃縮することはできないことが見いだされた(共沸温度−11℃)。言い替えると、この組成比の液相は平衡状態にある気相の組成比と同一となる。尚、HFとR−31の共沸組成は圧力によりそのモル比が変化し、5.8Kg/cm2GにおけるHF/R−31のモル比は約20/80、15Kg/cm2GにおけるHF/R−31のモル比は約19/81である。
【0015】また、HFとR−32との混合物を大気圧下で蒸留すると、HF/R−32のモル比で約1.2/98.8以上にR−32を濃縮することはできないことが見いだされた(共沸温度−53℃)。言い替えると、この組成比の液相は平衡状態にある気相の組成比と同一となる。尚、HFとR−32の共沸組成は圧力によりほとんど変化しない。
【0016】HFとR−30の混合物は、蒸留装置を用いて直接蒸留することによりHFを除去することができる。HFとR−30は共沸混合物を形成することが見いだされているので、混合物中のR−30の組成が、共沸組成より小さい場合、R−30とHFの共沸混合物を還流として用いると、塔低からR−30を実質的に含まないHFを効率的に得ることが可能となる。
【0017】逆に、混合物中のR−30の組成が、共沸組成より大きい場合、R−30とHFの共沸混合物を還流として用いると、塔低からHFを実質的に含まないR−30を効率的に得ることが可能となる。
【0018】また、HFとR−31の混合物は、蒸留装置を用いて直接蒸留することによりHFを除去することができる。HFとR−31は共沸混合物を形成することが見いだされているので、混合物中のR−31の組成が、共沸組成より大きい場合、R−31とHFの共沸混合物を還流として用いると、塔低からHFを実質的に含まないR−31を効率的に得ることが可能となる。
【0019】逆に、混合物中のR−31の組成が、共沸組成より小さい場合、R−31とHFの共沸混合物を還流として用いると、塔低からR−31を実質的に含まないHFを効率的に得ることが可能となる。
【0020】また、HFとR−32の混合物は、蒸留装置を用いて直接蒸留することによりHFを除去することができる。HFとR−32は共沸混合物を形成することが見いだされているので、混合物中のR−32の組成が、共沸組成より大きい場合、R−32とHFの共沸混合物を還流として用いると、塔低からHFを実質的に含まないR−32を効率的に得ることが可能となる。
【0021】逆に、混合物中のR−32の組成が、共沸組成より小さい場合、R−32とHFの共沸混合物を還流として用いると、塔低からR−32を実質的に含まないHFを効率的に得ることが可能となる。
【0022】これらの共沸蒸留に必要な装置は、通常の蒸留に必要な機能を備えていればどのようなものでも使用可能である。棚段塔や、充填塔などの精留装置の場合が特に好ましい結果となる。また、バッチ蒸留または連続蒸留のいずれでも実施可能である。
【0023】本発明は、R−30を触媒の存在下気相または液相でHFによりフッ素化して得られるR−31とR−32および未反応原料であるR−30とHFを含む混合物からHFを除去するのに最も有効である。本発明の最も好ましい実施態様を以下に示す。
【0024】本発明に用いられる分離装置の一例をフローシートにて図1に示す。通常、前記の反応では生成物を気相で抜き出す。得られる混合物中にはR−30、R−31、R−32、HFおよび塩化水素の他に少量の有機物が含まれている。この混合物から予め塩化水素を蒸留により除去したR−30、R−31、R−32およびHFを主成分とする混合物(ストリーム11)は、蒸留装置14に導かれる。
【0025】この場合、この混合物中のR−31/HFのモル比が4より小さい時は、この混合物中にR−31を加えて(ストリーム12)、前記モル比が4以上となるようにすることが好ましいことが見いだされた。それは、R−31/HFの共沸組成が大気圧下において約78/22のため、R−31/HFのモル比が4以下の場合、塔底にHFが濃縮されるという理由による。この蒸留装置14において、塔頂より留出したHFと共沸したR−32および/またはR−31の一部を還流(ストリーム16)として蒸留装置の塔頂に戻す。蒸留装置の塔底部には実質的にHFを含まないR−30および/またはR−31が存在し、これを缶出物(ストリーム17)として抜き出す。このようにして、前記混合物中より、HFを効率的に除去することが出来る。このような操作は、バッチ式に行うことも可能であるが、連続操作により行うことが好ましい。
【0026】第3の要旨において、本発明は、分液操作を利用してHFとR−30、R−31および/またはR−32を含んで成る混合物からHFを除去する方法を提供する。この方法は、HFとR−30との混合物が容易にHFに富む上部液相とR−30に富む下部液相に分離し、またHFとR−31との混合物が−20℃以下でHFに富む上部液相とR−31に富む下部液相に分離することを利用するものである。また、HF、R−30および/またはR−31(場合によりR−32も含む)の混合物についても、80℃以下でHFに富む上部液相およびHFに富まない下部液相に分離する。この分離を行わせる分液操作により、HFとR−30および/またはR−31(場合によりR−32をも含む)との混合物中よりHFまたは他の成分を濃縮または除去することが可能となる。
【0027】第4の要旨において、本発明は、上述のようにして分液操作により得られた上部液相および/または下部液相を、少なくとも1つの成分が他の成分より優先的に濃縮または除去するための適当な処理、例えば蒸留、抽出、吸収等の処理に付すことにより、分液により得られた濃縮されたまたは濃度が低下した上部液相および/または下部液相を更に濃縮または濃度を低下させる方法を提供する。この場合において、特に好ましい処理は、上述の共沸蒸留処理である。
【0028】従って、本発明は、HFとR−30の混合物を、HFに富む上部液相とR−30に富む下部液相に分離し、HFまたはR−30を優先的に除去する適当な処理方法、例えば蒸留により、いずれかの成分について少なくとも濃縮して、好ましくは実質的に他方の成分から除去することを含んで成るいずれかの成分の濃縮または除去方法を提供する。
【0029】本明細書において、「濃縮」するとは、混合物のいずれか一方の成分の濃度を相対的に増やし、他方の成分の濃度を相対的に減らすことを意味し、また、「除去」するとは、混合物のいずれか一方の成分の濃度を相対的に減らし、他方の成分の濃度を相対的に増やすことを意味するものとして使用している。従って、上述の分液操作のみであっても、濃縮または除去することになる。
【0030】また、本発明は、R−30の場合と同様に、HFとR−31の混合物を、HFに富む上部液相とR−31に富む下部液相に分離し、HFまたはR−31を優先的に除去する適当な処理方法により、いずれかの成分について少なくとも濃縮して、好ましくは実質的に他方の成分から分離することを含んで成るいずれかの成分の濃縮または除去方法を提供する。
【0031】従って、本発明の第4の要旨においては、HFとR−30の混合物、またはHFとR−31の混合物を前述の方法で分液し、それぞれの上部液相または下部液相を別々に蒸留することにより、HFをR−30との共沸混合物、またはHFをR−31との共沸混合物として留出させて除去し、蒸留処理への仕込みの組成に応じて、HFを含まないR−30もしくはR−30を含まないHFを、あるいはHFを含まないR−31もしくはR−31を含まないHFを塔底から得ることにより、HF、R−30またはR−31の少なくとも1つについて濃縮または除去する方法を提供する。
【0032】この場合、HFとの混合物中にR−30およびR−31(場合によりR−31を含む)が同時に存在してもよく、その場合も同様に分液させて、上部液相および下部液相をそれぞれ蒸留して、塔頂から共沸混合物を留出させて、各液相の組成に応じてHFを実質的に含まないR−30およびR−31(場合によりR−32を含むことがある)を、あるいはR−30、R−31およびR−32を含まないHFを塔底から得ることができる。更に、上述のように、R−32が混合物中に存在してもよく、この場合、R−32はR−31とほぼ同じ挙動をするので、R−31の一部分がR−32により置換されていると考えればよい。
【0033】HFとR−30の混合物は、容易にR−30に富む下部液相およびHFに富む上部液相に分液する。また、HFとR−31の混合物を冷却することにより、R−31に富む下部液相およびHFに富む上部液相に分液する。即ち、単に冷却することにより、元の混合物の濃度と比較して、少なくともいずれか1つの成分の濃度に富む上部液相および該成分に富まない(従って、他の成分に富む)下部液相を得ることが出来る。得られたHFに富まない下部液相の、混合物から主としてHFを効果的に除去できる適当な処理(例えば蒸留、抽出、吸収、吸着、アルカリによる中和などの反応による処理など)によりHFを除去するとR−30またはR−31の濃度を更に大きく出来る。即ち、R−30またはR−31を濃縮してHFを除去できる。
【0034】逆に、上部液相については、HFに富むので、これについても同様に、R−30またはR−31を主として除去する適当な処理、例えば、蒸留、抽出、吸収などを施すことにより、HFの濃度を大きくして更に濃縮して、R−30および/またはR−31を除去できる。
【0035】更に、HF、R−30、R−31および/またはR−32を含んで成る混合物を冷却することにより、R−30、R−31および/またはR−32の有機物に富む下部液相およびHFに富む上部液相が得られる。これらについても同様に、下部液相の混合物から主としてHFを効果的に除去する適当な処理を施すことにより、有機物濃度を大きくして濃縮することによりHFを除去できる。上部液相についても同様の処理が可能であり、HFを更に濃縮することができる。
【0036】HFとR−31の混合物を冷却相分離する温度として−20℃以下の温度が用いられる。−20℃以上ではHFとR−31の比にかかわらず相分離現象は認められない。好ましい範囲は−25℃以下である。−25℃以上では上下部液相間の組成差が小さく、従って比重差も近いため分離が十分でないことがある。温度の下限は、R−31の凝固点(−133℃)以上であればとくに限定されないが、概ね−50℃程度以上である。この温度以下では冷却に多くのエネルギーを要し、経済的に効率的ではなくなる。特に好ましい温度は、−30℃〜−50℃の範囲である。
【0037】HFがR−30および少なくともR−31を含む場合、特に好ましい分液温度は、60〜−30℃の範囲である。更に、R−32が含まれている場合も同様の温度範囲が一般的に好ましい。
【0038】HF、R−30、R−31および/またはR−32の混合物を冷却すると、全混合物の組成に応じて有機物に富む下部液相およびHFに富む上部液相が得られる。相分離する温度は有機物の組成比により大きく変化し、R−30が多いほど、また、R−30とHFの組成比率が同じであればR−31が多いほど分液を開始する温度は高く、例えば60℃程度である【0039】上述のように、HFとR−30、HFとR−31およびHFとR−32は共沸混合物を形成するので、HFとR−30、R−31および/またはR−32との混合物(例えば、分液により得られる上部液相および下部液相)中よりHFまたは有機物(R−30、R−31および/またはR−32)を除去することは、分液操作に共沸蒸留操作を組み合わせることにより実施可能である。ここで、共沸蒸留装置は蒸留に必要な機能を備えていればどのようなものでも使用可能である。棚段塔や、充填塔などの精留装置の場合が特に好ましい結果となる。また、バッチ蒸留または連続蒸留のいずれでも実施可能である。
【0040】この組み合わせは、R−30を触媒の存在下気相または液相でHFによりフッ素化して得られるR−31とR−32および未反応原料であるR−30とHFを含む混合物からHFを除去するのに最も有効である。本発明の最も好ましい実施態様の1つを以下に示す。
【0041】本発明に用いられるHFの除去方法の別の一例をフローシートにて図2に示す。通常、前記の反応では生成物を気相で抜き出す。得られる混合物中にはR−30、R−31、R−32、HFおよび塩化水素の他に少量の有機物が含まれている。この混合物から塩化水素を蒸留により予め除去したR−30、R−31、R−32およびHFを主成分とする混合物は、冷却器を通して−20℃以下に冷却され、液分離装置21(液液分離装置、例えばデカンターのような分液装置)に導かれる。分液装置において分離した有機物に富む下部液相を蒸留装置23に供給し、蒸留装置の上部からHFと有機物との共沸混合物25を留出させる。この際、蒸留装置23には留出したHFと有機物の共沸混合物の一部を還流27として蒸留装置の頂部に戻し、残りの共沸混合物は、クーラー31にて−20℃以下に冷却された後、液相分離装置21に送られ、上述の処理が繰り返される。但し、この繰り返す操作はR−32の濃縮により、クーラー31の圧抜きが必要となる場合もある。蒸留装置23の塔底部には実質的にHFを含まない有機物が存在しこれを缶出物29として抜き出す。
【0042】一方、HFに富む液分離装置21の上部液相は、それが可能な場合には反応系に循環することができる。不可能な場合には、もう一つの蒸留装置が必要である。図2における蒸留装置33に導かれた上部液相は、ここで有機物とHFの共沸混合物と実質的に有機物を含まないHFに分離される。蒸留装置33においても同様に留出するHFと有機物の共沸混合物35の一部を蒸留装置の塔頂部に還流37として戻す。残りの共沸混合物は、クーラー41にて−20℃以下に再度冷却された後、液液分離装置21に戻される。実質的に有機物を含まないHF39は再利用される。このようにして全てのHFを有効に利用しながら有機物を分離することができる。このような操作は、バッチ式に行うことも可能であるが、連続操作により行うことが好ましい。
【0043】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
実施例1真空にしたSUS製充填蒸留塔(直径:25mm、充填物:マクマホン、有効充填高さ:1500mm)にHFを300g(15mol)およびR−30を254.7g(3mol)仕込み、全還流で蒸留を開始し、スチル温度を徐々に上げた。塔頂圧力が3.0Kg/cm2G、塔頂温度が50℃となった時に還流液(留出液と同等である)をサンプリングした。このサンプルを分析すると、HF/R−30のモル比は80/20であった。
【0044】この分析結果から、HFより高い沸点を有するR−30(HFの大気圧下沸点19℃<R−30の大気圧下沸点40℃)が塔頂部に濃縮されることが明らかとなり、HFとR−30は共沸混合物を形成することが確認された。
【0045】実施例2実施例1と同じ装置を真空にして、HFを20g(1mol)およびR−31を548g(8mol)仕込み、全還流で蒸留を開始し、スチル温度を徐々に上げた。塔頂圧力が5.8Kg/cm2G、塔頂温度が40℃となった時に還流液をサンプリングした。このサンプルを分析すると、HF/R−31のモル比は20/80であった。
【0046】この分析結果から、R−31より高い沸点を有するHF(R−31の大気圧下沸点−9℃<HFの大気圧下沸点19℃)が塔頂部に濃縮されることが明らかとなり、HFとR−31は共沸混合物を形成することが確認された。
【0047】実施例3実施例1と同じ装置を真空にして、HFを2g(0.1mol)およびR−32を520g(10mol)仕込み、全還流で蒸留を開始し、スチル温度を徐々に上げた。塔頂圧力が22Kg/cm2G、塔頂温度が40℃となった時に環流液をサンプリングした。このサンプルを分析すると、HF/R−32のモル比は1.2/98.8であった。
【0048】この分析結果から、R−32より高い沸点を有するHF(R−32の大気圧下沸点−52℃<HFの大気圧下沸点19℃)が塔頂部に濃縮されることが明らかとなり、HFとR−32は共沸混合物を形成することが確認された。
【0049】実施例4真空にしたSUS製の気液平衡測定装置(容量75ml)に実施例1、2および3においてサンプリングした液(還流)と同じ組成のHFとR−30、HFとR−31およびHFとR−32のそれぞれの混合物(約60g)を別々に入れ、系の圧力が順に3.0、5.8、22Kg/cm2Gとなるよう加熱した。系の状態が平衡になってから、気相および液相をサンプリングした。サンプリングした気相と液相のHF濃度を以下の表1に示す。
【0050】
【表1】
混合物 液相HF組成 気相HF組成 圧力 温度 mol% mol% Kg/cm2G ℃ HFとR−30 80 81 3.0 50 HFとR−31 20 19 5.8 40 HFとR−32 0.1 0.1 22 40 【0051】この結果から、明らかなように、気相と液相の組成は実験誤差の範囲内でほぼ等しく、HFとR−30、HFとR−31およびHFとR−32はそれぞれ共沸混合物を形成することが判った。
【0052】実施例5実施例1と同じ装置を真空にして、HFを120g(6mol)およびR−30を509.4g(6mol)仕込み、全還流で蒸留を開始し、スチル温度を徐々に上げた。塔頂圧力が3.0Kg/cm2G、塔頂温度が50℃となった時に還流液をサンプリングした(2g)。このサンプルを分析すると、HF/R−30のモル比は79.2/20.8であった。
【0053】再び、全還流状態でスチル温度を上げると、塔頂圧力が15Kg/cm2G、塔頂温度が112℃となり、この時にサンプリングした(2g)。サンプルを分析したところ、HF/R−30のモル比は76.2/23.8であった。このように、HFとR−30の共沸組成は圧力により僅かに影響を受ける。
【0054】再度、圧力を3.0Kg/cm2Gに戻して全還流で蒸留塔を安定させた。安定後、塔頂からの流出液を徐々に抜き出して行くと、塔頂温度が徐々に上昇し、塔頂温度がスチル温度と同じになった時に加熱を停止した。塔頂から抜きだした液量は、約400gとなり(途中サンプリング分を含む)、スチルからはHF約10ppmを含むR−30約220gを得た。
【0055】実施例6実施例1と同じ装置を真空にして、HFを10g(0.5mol)およびR−31を548g(8mol)仕込み、全還流で蒸留を開始し、スチル温度を徐々に上げた。塔頂圧力が5.8Kg/cm2G、塔頂温度が40℃となった時に還流液をサンプリングした(2g)。このサンプルを分析すると、HF/R−31のモル比は20.2/79.8であった。
【0056】再び、全還流状態にしてスチル温度を上げると、塔頂圧力が15Kg/cm2G、塔頂温度が64℃となり、この時にサンプリングした(2g)。サンプルを分析したところ、HF/R−31のモル比は19.5/80.5であった。このように、HFとR−31の共沸組成は圧力により僅かに影響を受ける。
【0057】再度、圧力を5.8Kg/cm2Gに戻して全還流で蒸留塔を安定させた。安定後、塔頂からの流出液を徐々に抜き出して行くと、塔頂温度が徐々に上昇し、塔頂温度がスチル温度と同じになった時に加熱を停止した。塔頂から抜きだした液量は、約300gとなり(途中サンプリング分を含む)、スチルからはHF約13ppmを含むR−31約250gを得た。
【0058】実施例7実施例1と同じ装置を真空にして、HFを0.05g(0.0025mol)およびR−32を520g(10mol)仕込み、全還流で蒸留を開始し、スチル温度を徐々に上げた。塔頂圧力が22Kg/cm2G、塔頂温度が40℃となった時に還流液をサンプリングした(2g)。このサンプルを分析すると、HF/R−32のモル比は1.2/98.8であった。
【0059】再び、全還流状態でスチル温度を下げ、塔頂圧力が15Kg/cm2G、塔頂温度が35℃となり、この時にサンプリングした(2g)。サンプルを分析したところ、HF/R−32のモル比は1.2/98.8であった。このように、HFとR−32の共沸組成は圧力によりほとんどに影響を受けない。
【0060】再度、圧力を22Kg/cm2Gに戻して全還流で蒸留塔を安定させた。安定後、塔頂からの流出液を徐々に抜き出して行くと、塔頂温度が徐々に上昇し、塔頂温度がスチル温度と同じになった時に加熱を停止した。塔頂から抜きだした液量は、約300gとなり(途中サンプリング分を含む)、スチルからはHF約30ppmを含むR−32約210gを得た。
【0061】実施例8実施例1と同じ装置を真空にして、HF、R−30、R−31とR−32の混合物を仕込み、蒸留操作を行った。この時、蒸留塔の還流液とスチル液をサンプリングして分析した。尚、混合液中のR−31/HFのモル比を、6(表2)、2(表3)およびモル比が2の場合にR−31を加えてこの比を5(表4)とした場合の混合液を個別に蒸留塔への仕込み、全還流状態にして還流液とスチル液の組成について、それぞれ、表2〜表4に分析結果と合わせて(単位:mol%)示す。
【0062】
【表2】
仕込み液 還流液 スチル液 HF 10 15 トレース R−30 20 トレース 56 R−31 60 69 44 R−32 10 16 トレース 温度(℃) 28 55 圧力(Kg/cm2G) 5 5 【0063】
【表3】
仕込み液 還流液 スチル液 HF 20 19 22 R−30 30 トレース 78 R−31 40 65 トレース R−32 10 16 トレース 温度(℃) 28 68 圧力(Kg/cm2G) 5 5 【0064】
【表4】
初期 R-31追加後 仕込み液 仕込み液 還流液 スチル液 HF 20 12.5 17 トレース R−30 30 18.75 トレース 72 R−31 40 62.5 75 28 R−32 10 6.25 8 トレース 温度(℃) 30 66 圧力(Kg/cm2G) 5 5 【0065】以上より、HF、R−30、R−31とR−32の混合物中でR−31/HFのモル比が4以上であれば、HFを混合物中より除去できる。
【0066】実施例9真空にしたフッ素樹脂製容器にHFとR−30をそれぞれモル比50/50になるように充填して混合した後、温度を20℃に保って静置して相分離させた。この状態における下部液相のHFとR−30のモル比を測定した。その結果、HF/R−30のモル比は3/97であった。上部液相のHF/R−30のモル比は、95/5であった。
【0067】実施例10実施例9と同じ装置を真空にしてHFとR−31をそれぞれモル比50/50になるように充填して混合した後、温度を−40℃に保って静置して相分離させた。この状態における下部液相のHFとR−31のモル比を測定した。その結果、HF/R−31のモル比は10/90であった。上部液相のHF/R−31のモル比は、88/12であった。
【0068】実施例11実施例9と同じ装置を真空にしてHF、R−30、R−31とR−32をそれぞれモル比50/20/20/10になるように充填して混合した後、温度を0℃に保って静置して相分離させた。この状態における下部液相のHFとR−30、R−31およびR−32のモル比を測定した。その結果、HF/R−30/R−31/R−32のモル比は約5/41/36/18であった。上部液相のHF/R−30/R−31/R−32のモル比は、約91/1/5/3であった。
【0069】実施例12実施例9と同じ装置を真空にしてHF、R−30、R−31とR−32をそれぞれモル比50/10/30/10になるように充填して混合した後、温度を0℃に保って静置して相分離させた。この状態における下部液相のHFとR−30、R−31およびR−32のモル比を測定した。その結果、HF/R−30/R−31/R−32のモル比は約9/21/53/17であった。この下部混合物を蒸留塔に仕込み、蒸留操作を行った。この時、全還流状態にして蒸留塔の還流液とスチル液をサンプリングして分析した。この分析結果を表5に示す。(単位:mol%)示す。
【0070】
【表5】
仕込み液 還流液 スチル液 HF 9 16 Trace R−30 21 Trace 50 R−31 53 55 50 R−32 17 29 Trace 温度(℃) 25 52 圧力(Kg/cm2G) 5 5 【0071】以上より、HF、R−30、R−31とR−32の混合物より、分液操作と蒸留操作により、混合物中よりHFを除去することができる。
【0072】実施例13実施例9と同じ装置を真空にして、HF、R−30、R−31の混合物を仕込み、温度を60℃に保って静置して相分離させた。この状態における下部液相と上部液相のHFとR−30、R−31のモル比を測定した。 混合液中のHF/R−30/R−31の組成(モル比)を76/8/16とし、従って、R−30/R−31のモル比を0.5とした場合、分液は確認できたが、下相のサンプリングができず、組成分析はできなかった。又、この混合液の組成を76/12/12とし、従って、R−30/R−31のモル比を1とした場合について、表6に分析結果と合わせて(単位:mol%)に示す。
【0073】
【表6】
仕込み液 上部液相 下部液相 HF 76 82 9 R−30 12 8 56 R−31 12 10 35 温度(℃) 60 60 圧力(Kg/cm2G) 7.8 7.8 【0074】以上より、本発明の好ましい態様には、少なくともHF、R−31とR−30を含んで成る混合物にR−30を添加してこの混合液のR−30/R−31のモル比を0.5以上とした混合液を60℃以下に冷却し、HFに富む上部液相とR−31とR−30に富む下部液相に分離し、下部液相からHFの少ないR−31とR−30を回収することを特徴とするHFの除去法が含まれる。
【0075】実施例14実施例9と同じ装置を真空にして、HF、R−30、R−31、R−32の混合物を仕込み、温度を60℃に保って静置して相分離させた。この状態における下部液相と上部液相のHFとR−30、R−31およびR−32のモル比を測定した。
【0076】混合液中のHF/R−30/R−31/R−32の組成(モル比)を70/9/18/3とし、従って、R−30/R−31のモル比を0.5とした場合、分液は確認できたが、下相のサンプリングができず、組成分析はできなかった。又、この混合液の組成を70/13.5/13.5/3とし、従って、R−30/R−31のモル比を1とした場合について、表7に分析結果と合わせて(単位:mol%)示す。
【0077】
【表7】
仕込み液 上部液相 下部液相 HF 70 77 14 R−30 13.5 9 47 R−31 13.5 11 31 R−32 3 2 7 温度(℃) 60 60 圧力(Kg/cm2G) 9.8 9.8 【0078】以上より、本発明の好ましいもう1つの態様には、少なくともHF、R−32、R−31とR−30を含んで成る混合物にR−31とR−30の混合物またはR−30を添加してこの混合液のR−30/R−31のモル比を0.5以上とした混合液を60℃以下に冷却し、HFに富む上部液相とR−32とR−31およびR−30に富む下部液相に分離し、下部液相からHFの少ないR−32とR−31およびR−30を回収することを特徴とするHFの除去法が含まれる。
【出願人】 【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
【出願日】 平成5年4月9日(1993.4.9)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆 (外2名)
【公開番号】 特開2001−174147(P2001−174147A)
【公開日】 平成13年6月29日(2001.6.29)
【出願番号】 特願2000−316594(P2000−316594)