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【発明の名称】 断熱箱体
【発明者】 【氏名】天良 智尚

【氏名】鈴木 正明

【要約】 【課題】消費電力量を増加することなく断熱箱体の内部を透視可能にすることを目的とする。

【解決手段】多孔度が80%以上で、平均孔径が100nm以下の多孔体からなる透明断熱体を少なくとも断熱壁の一部に備え、断熱箱体の内部が透視可能である断熱箱体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 多孔度が80%以上で、平均孔径が100nm以下の多孔体からなる透明断熱体を少なくとも断熱壁の一部に備えた断熱箱体であり、断熱箱体の内部が透視可能であることを特徴とする断熱箱体。
【請求項2】 透明断熱体が、ゾルゲル法からなる湿潤ゲルを乾燥させた乾燥ゲルで構成されていることを特徴とする請求項1記載の断熱箱体。
【請求項3】 透明断熱体が、対向して設けた2枚の透明板の間に配設され、透明断熱体と透明板との外周部を囲んで設けられる固定枠とで構成されていることを特徴とする請求項1および請求項2記載の断熱箱体。
【請求項4】 断熱箱体が扉体を備え、扉体の少なくとも一部の多孔度が80%以上で、平均孔径が100nm以下の多孔体からなる透明断熱体を備えたことを特徴とする請求項2および請求項3記載の断熱箱体。
【請求項5】 断熱箱体が、内材と、外材と、内材と外材で構成される中空部に充填されたウレタン発泡断熱材とからなる断熱箱体であり、透明断熱体が、内材と外材とウレタン発泡断熱材とから構成される断熱箱体の断熱壁に備えられたことを特徴とする請求項1から4記載の断熱箱体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷蔵庫,冷凍庫,冷凍冷蔵ショーケース,販売機,ワインセラー等の筐体として使用できる断熱箱体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】冷蔵庫,冷凍庫,冷凍冷蔵ショーケース,販売機、およびワインセラー等の筐体である断熱箱体には、内部が透視できるようにその断熱壁に透明部材を使用したものがある。しかし、内部が透視できる透視部材を断熱箱体に使用した冷蔵庫,冷凍庫,冷凍冷蔵ショーケース,販売機、およびワインセラーといった機器を高温多湿雰囲気に設置し使用した場合、設置した部屋と断熱箱体庫内との温度差により、空気中の水分が結露して透明部材の表面に水滴や曇りが生じて断熱箱体庫内が見えにくくなることがある。
【0003】そこで、たとえば特公平4−35674号公報においては、断熱空気層を有する3枚の透明板からなる透明断熱板に、透視可能な加熱源被膜からなるヒーターが貼着されている。これは、透明板表面近傍部の温度差を低減することにより透明板表面での結露を抑制するものである。また同時に、防露ヒーターの庫内側の面には透明樹脂ベース層と熱線反射層とからなる熱線反射透明被膜が貼着されており、これにより庫内へ向かう輻射熱の大部分である赤外線が熱線反射透明被膜で反射され、防露ヒーターの発熱容量をその分だけ小さくし省エネルギーを達成することが提案されている。
【0004】また、特開平9−229546号公報においては、冷蔵ショーケース用扉基材表面に、実質的に透明な光触媒粒子を含有する表面層を備え、表面に結露による水滴が付着しても、光触媒の作用により表面に一様に広がり、ヒーターによる乾燥が促進され、省エネルギーが達成できると共に、透明性を維持することが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、断熱箱体に透明部材を適用した場合は、透明部材の断熱性能が低いこと、或いは透明部材境界部からのヒートリークが大きいことから断熱箱体の断熱性能が悪化する。また冷蔵庫等、低温用の断熱箱体に透明部材を適用した場合は、透明部材表面に結露による水滴や曇りが生じ、透明部材の透明性が低下し、断熱箱体内部の視認性が悪化するという課題があった。
【0006】また、その透明部材の結露を防ぐための対応策としては、ヒーター等の加熱により温度差を低減する、或いは加熱により結露水を乾燥するというものであった。そのため、ヒーターの消費電力量と、断熱箱体内部へ漏洩するヒーターの熱負荷により、機器の消費電力量の増加を引き起こしていた。このような理由から、断熱箱体に透明部材を適用した場合は、如何にヒーターの乾燥効率等を改善した場合にも、機器の消費電力量が増加するという課題があった。
【0007】上記の課題を鑑み、本発明は、優れた透明性と優れた断熱性能とを有する透明断熱体を提供することで、結露を生じさせることなく、更に、消費電力量を増加することなく断熱箱体の内部を透視可能とすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の断熱箱体は、多孔度が80%以上で、平均孔径が100nm以下の多孔体からなる透明断熱体を少なくとも断熱壁の一部に備えた断熱箱体であり、断熱箱体内部が透視可能であることを特徴とするものである。
【0009】従って、透明断熱体の断熱性能が優れていることから、透明断熱体を適用しても断熱箱体の断熱性能が低下することはなく、消費電力量を増加することなく断熱箱体の内部が透視可能となる。またその結果、室内温度と断熱箱体庫内の温度差によって生じる結露が起こりにくく、防露ヒーター等の適用も必要としないため、防露ヒーター等に起因する消費電力量の増加も起こらない。
【0010】また、断熱箱体に備えられた透明断熱体が、ゾルゲル法からなる湿潤ゲルを乾燥させた乾燥ゲルから構成されていることを特徴とするものである。
【0011】従って、容易に多孔度が80%以上で、平均孔径が100nm以下の多孔体からなる優れた透明性と優れた断熱性能とを有する透明断熱体が得られる。また、作製する透明断熱体は、経時的な断熱性能の低下等の問題もない。その結果、透明部材を適用しても断熱箱体の断熱性能、および品質は低下することはない。
【0012】また、断熱箱体は、透明断熱体が対向して設けた2枚の透明板の間に配設され、透明断熱体と透明板との外周部を囲んで設けられる固定枠とで構成された構造を有していることを特徴とするものである。
【0013】その結果、透明断熱体の強度が弱い場合にも、透明断熱体を安定的に保持することが可能となると共に、透明断熱体表面の傷付きを防止することができる。また、断熱箱体の構造強度の低下を生じることがなく、経時的にも高品質の断熱箱体が得られる。
【0014】また、断熱箱体は、扉体を備え、扉体の少なくとも一部の多孔度が80%以上で、平均孔径が100nm以下の多孔体からなる透明断熱体を備えたことを特徴とするものである。
【0015】その結果、断熱箱体の庫内に保持されている品物を取り出す場合にも、予め、庫内の品物の所在を確認することが可能となるため、断熱箱体の扉体を開放する時間が短縮され、機器の消費電力量を一層低減することが可能となる。
【0016】また、断熱箱体は、内材と、外材と、内材と外材で構成される中空部に充填されたウレタン発泡断熱材とからなるものであり、前記透明断熱体が、内材と外材とウレタン発泡断熱材とから構成される断熱箱体の断熱壁に備えられたことを特徴とするものである。
【0017】この時、透明断熱体は、ウレタン発泡断熱材と同等以上の断熱性能を有している。その結果、優れた断熱性能を有するウレタン発泡断熱材からなる断熱箱体に厚みの薄い透明断熱体を適用した場合にも、熱貫流率はウレタン発泡断熱材部と比較して極端に悪くならず、透明断熱体表面に結露により生じる水滴や曇りを生じることはない。
【0018】また、透明断熱体はウレタン発泡断熱材と一体発泡成形が可能になるため、透明断熱体とウレタン発泡断熱材との境界部で生じるヒートリークも抑制できる。
【0019】このように本発明によれば、消費電力量を増加させることなく断熱箱体の内部が透視可能な高品質な断熱箱体を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明は、多孔度が80%以上で、平均孔径が100nm以下の多孔体からなる透明断熱体を少なくとも断熱壁の一部に備えた断熱箱体であり、断熱箱体内部が透視可能であることを特徴とするものである。
【0021】従って、透明断熱体の断熱性能が優れているため、透明断熱体を適用しても断熱箱体の断熱性能は低下することはなく、機器の消費電力量の増加もない。また、その結果、室内温度と断熱箱体庫内の温度差により生じる結露を原因とする水滴や曇りの発生が起こりにくく、更には、防露ヒーター等の適用も必要としない。
【0022】更には、優れた透明性を有するため、従来、板ガラスを適用した断熱箱体の断熱壁としても適用できる。
【0023】なお、多孔度とは、多孔体である透明断熱体の全空孔容積と見かけ容積との比であり、多孔度が100%に近い程、多孔体中に占める空孔の全容積が大きく優れた断熱体であることを示す。また、平均孔径は、BET法により測定した多孔体の比表面積から算出できる。
【0024】請求項2に記載の発明は、断熱箱体に備えられた透明断熱体が、ゾルゲル法からなる湿潤ゲルを乾燥させた乾燥ゲルから構成されていることを特徴とするものであり、容易に多孔度が80%以上で、平均孔径が100nm以下の多孔体からなる優れた断熱性能の透明断熱体を得ることができる。従って、透明部材を適用しても断熱箱体の断熱性能は低下することはない。また、透明断熱体は、経時的な断熱性能の低下がなく、長期に亘って品質が安定している。
【0025】請求項3に記載の発明は、透明断熱体が、対向して設けた2枚の透明板の間に配設され、これら透明断熱体と透明板の外周部を囲んで設けられる固定枠とで構成された構造を有していることを特徴とする断熱箱体であり、透明断熱体の構造強度が弱い場合にも、断熱箱体の構造強度の低下を生じることがない。また、透明断熱体の強度補強や、表面の傷つき防止に対しても優れている。
【0026】更には、透明断熱体の取り扱い性が改善されるため、冷蔵庫,冷凍庫,冷凍冷蔵ショーケース,販売機、およびワインセラー等の各種断熱箱体の筺体を構成する断熱壁に適用できる。
【0027】請求項4に記載の発明は、断熱箱体が扉体を備え、扉体の少なくとも一部の多孔度が80%以上で、平均孔径が100nm以下の多孔体からなる透明断熱体を備えたことを特徴とする断熱箱体であり、断熱箱体の庫内に保存されている品物を取り出す場合にも、予め、容易に庫内の品物の所在を確認することが可能となるため、断熱箱体の扉体を開放する時間が短縮され、消費電力量を低減することが可能となる。
【0028】請求項5に記載の発明は、断熱箱体が、内材と、外材と、内材と外材で構成される中空部に充填されたウレタン発泡断熱材とからなるものであり、前記透明断熱体が、内材と外材とウレタン発泡断熱材とから構成される断熱箱体の断熱壁に備えたことを特徴とするものである。従って、優れた断熱性能を有するウレタン発泡断熱材からなる断熱箱体に透明断熱材を適用した場合にも、透明断熱体がウレタン発泡断熱材と同等以上の断熱性能を有するため、透明断熱体表面に結露による水滴や曇りを生じることはない。また、透明断熱体はウレタン発泡断熱材と一体発泡成形が可能であり、透明断熱体とウレタン発泡断熱材との境界部が生じるヒートリークも抑制できる。
【0029】以下、実施の形態について、図1から5を用いて説明する。
【0030】(実施の形態1)図1は本発明の一実施形態における断熱箱体からなる冷蔵庫の概略図である。1はウレタン断熱材を発泡充填して成型した断熱箱体であり、冷却システム(図示せず)を具備して冷蔵庫2を構成している。また、断熱箱体1は、断熱性を有する開閉自在のドア3を断熱壁として備え、そのドア3の一部に透明断熱体4を備えている。透明断熱体4は、樹脂製の固定枠5によりガラス製の透明板6で透明断熱体の表裏面に積層し一体化され、ドア3の中心部にウレタン一体発泡により固定されている。
【0031】なお、透明断熱体4は、乾燥ゲルと呼ばれる多孔体であり、多孔度が80%以上で、平均孔径が100nm以下の多孔体特性を有している。また、前記乾燥ゲルは、ゾルゲル法で合成された湿潤ゲルを超臨界乾燥により、ゲル内溶媒を除去乾燥して作製したものであり、エアロゲルとも呼ばれる。
【0032】このように、断熱箱体の断熱壁に多孔度が80%以上で、平均孔径が100nm以下の多孔体からなる透明断熱体を適用した場合には、断熱箱体内部が透視可能になると共に透明部材の断熱性能が他の断熱壁部位より大きく低下することはない。また、透明断熱体は、樹脂製の固定枠でガラス製の透明板と固定一体化され、ウレタン発泡断熱材発泡充填時に一体成型されているため、透明断熱体とウレタン断熱材との境界部のヒートリークもない。その結果、断熱箱体の透明断熱体表面部にて結露が生じにくくなり、透明断熱体表面に水滴や曇りが生じることはない。
【0033】(実施の形態2)図2は本発明の一実施形態における断熱箱体からなる冷蔵用ショーケースの概略図であり、7は板ガラスからなる断熱パネルを主断熱壁とする断熱箱体である。8は冷蔵用ショーケースであり、断熱箱体7に冷却システム(図示せず)を備え構成する。また、断熱箱体7は、開閉自在のドア9からなる断熱壁を備えている。開閉自在のドア9は、透明断熱体4とガラス製の透明板6とを金属製の固定枠10により積層一体化して構成されている。
【0034】また、この時、透明断熱体4は、複数の透明断熱体を並びつなげて、ドア9の全面を覆うように構成されている。
【0035】その結果、ドア9の断熱性能は大幅に改善され、ドア表面の近傍部での温度差が低減されドア表面に結露による水滴や曇りの付着は起こらない。また、防露ヒーターを具備する必要がなく、断熱箱体の断熱性能も改善されるため、大幅な消費電力量の低減が達成できる。
【0036】(実施の形態3)図3は本発明の一実施形態における断熱箱体を構成する透明断熱体の正面図である。また、図4は図3に示した透明断熱体の断面図である。
【0037】4は透明断熱体であり、ガラス製の透明板6aとガラス製の透明板6bにより積層され、樹脂製の固定枠5により固定一体化されている。
【0038】これにより、透明断熱体の強度が弱い場合にも、断熱箱体の構造強度の低下を生じることがない。また、透明断熱体の強度補強や、表面の傷つき防止の対応策としても効果的である。
【0039】なお、本実施の形態では透明板に板ガラスを使用したが、アクリルやポリエチレンテレフタレート等の樹脂板やフィルムであっても何ら問題ない。また、2枚の透明板のうち、一方を通電の有無により遮光と透光との切り替えが可能な液晶板とすることにより、庫内内部を任意に遮蔽することが可能となる。更には、熱線反射フィルムや紫外線遮蔽フィルム等の機能性フィルムを透明板に貼着することにより、透明断熱体に輻射熱の遮蔽や紫外線の遮蔽のような新たな機能を付加することができる。
【0040】また、固定枠は、金属製、および樹脂製いずれでも適用できるが、ヒートリークを抑制するため、熱伝導の小さい材料を適用することが望ましく、より望ましくは樹脂で形成された固定枠が適している。また、固定枠の構造についてもヒートリークを抑制するため、固定枠の材料厚みは可能な限り薄くすることが望しい。一方、製品の強度低下や、透明断熱体の歪みといった問題がなければ、特に、固定枠を取り付けずに製品に適用しても何ら問題はない。
【0041】(実施の形態4)図5は本発明の一実施形態における断熱箱体の扉体の構成を示す断面図であり、11は冷蔵庫の扉体であり、冷蔵室用ドアの断面図を示している。
【0042】透明断熱体4は、ガラス製の透明板6aとガラス製の透明板6bにより積層され、その外周を樹脂製の固定枠5により固定している。
【0043】また、ABS樹脂製の内材12と金属製の外材13は、透明断熱体4を固定する固定枠5と化粧枠14とを介して形成される中空体内部にウレタン発泡断熱材15を充填して断熱構造体を形成する。なお、予め、内材12と外材13には、透明断熱体をはめ込むための切り欠き部16を有している。
【0044】更に、固定枠5の内材および外材の接合部には、ウレタン断熱材の発泡充填時のウレタン漏れを抑制するため、L型、或いは凹型のウレタン漏れストッパーが備えられており、内材、或いは外材の端部をウレタン漏れストッパーに挿入固定することによって、ウレタン発泡成形時のウレタン漏れを抑制でき、容易に透明断熱体を有する冷蔵庫用ドアを成型出来る。
【0045】従って、優れた断熱性能を有するウレタン発泡断熱材からなる断熱箱体に透明断熱体を適用した場合にも、透明断熱体がウレタン発泡断熱材と同等以上の断熱性能を有するため、透明断熱体表面に結露による水滴や曇りを生じることはない。また、透明断熱体はウレタン発泡断熱材と一体発泡成形が可能になると共に、固定枠5が熱伝導率の低い樹脂から成形されているため透明断熱体とウレタン発泡断熱材との境界部で生じるヒートリークも抑制できる。
【0046】更に、固定枠にはL型、或いは凹型のウレタン漏れストッパーを有していることから、容易に透明断熱体の一体発泡成形が可能になり、生産性においても優れたものである。
【0047】本発明の透明断熱体として適用可能な多孔体としては、シリカエアロゲル,アルミナエアロゲルなどの無機系エアロゲルや、ポリウレタンエアロゲル,ポリイソシアネートエアロゲル,フェノール系エアロゲルなどの有機系エアロゲル、および無機系と有機系エアロゲルとのハイブリッド体のいずれでもよく、透明性が高く断熱性に優れた多孔体が適用できる。透明性は、より望ましくは可視光透過率が厚み10mmあたり70%以上である透明断熱体が好適である。
【0048】これらを形成する原料成分についても、特に、限定するものではない。一例としては、無機系では、珪酸ソーダ(水ガラス)、テトラメトキシシラン,テトラエトキシシラン、およびトリエトキシメチルシランなどのケイ素のアルコキシドや、アルミニウム−2−ブトキシドなどのアルミニウムのアルコキシドなどを用いることができる。また、有機系としては、ウレタン系,イソシアヌレート系,フェノール系,メラミン系などの化合物が利用できる。
【0049】また、本発明の透明断熱体の製造方法は、ゾルゲル法により湿潤ゲルを作製後、ゲル骨格を収縮させずに前記湿潤ゲルに含まれる溶媒を乾燥させるものである。湿潤ゲルの合成方法は特に限定するものでなく常法のゾルゲル法で形成できる。乾燥方法も特に限定するものではなく、凍結乾燥,加熱乾燥、および超臨界乾燥等により乾燥できる。より望ましくは、工業的に一般的に利用される水ガラスを用いてゾルゲル法により湿潤ゲルを作製し、湿潤ゲルを乾燥させる方法である。
【0050】具体的な製造方法の一例としては、ナトリウム−水ガラス溶液を、陽イオン交換樹脂(スチレン/ジビニルベンゼンコポリマー)を含むジャッケト付きカラムにてイオン交換させ、pH2.0程度のシリカ溶液として回収する。その後、前記回収溶液を規定度1.0のアンモニア水溶液を用いて、pH7.2に調整し、24時間50℃でエージングし、湿潤ゲルを作製する。次に、湿潤ゲル中の水分をアセトンにより抽出しアセトン含有ゲルとし、トリメチルクロロシランによりシリル化処理を施し、超臨界乾燥によりアセトンを抽出し乾燥ゲルを作製する。この時、より望ましくは、常圧に近い圧力下で加熱乾燥するのがより適している。
【0051】なお、ゾルゲル法とは、分散媒中に超微粒子(コロイド粒子)が粒子相互間に働く反発力と引力の相対的な大きさにより安定に均一分散したゾルと呼ばれる懸濁溶液を形成後、分散媒中の超微粒子を凝集させ、ゾル全体の流動性を消失(ゲル化)させることにより構造体を形成する合成方法である。この時、分散媒を含んだままコロイド成分が3次元の網目構造に形成された構造体を湿潤ゲルと呼ぶ。
【0052】また、透明断熱体となる乾燥ゲルは、平均孔径は少なくとも400nm以下とするのが望ましい。これにより、光の乱反射による白濁を防止でき、実質的に透明となる。しかし、光の干渉による発色を防止するためには、平均孔径を200nm以下とすることが望ましい。更に、ウレタン発泡断熱材と同等以上の断熱性能を発揮させるためには、多孔度を80%以上、平均孔径を100nm以下とするのが望ましい。多孔度が80%を下回る場合、および平均孔径が100nm越える場合には、高性能な断熱箱体に適用可能な透明断熱体は得られない。
【0053】従って、多孔度が80%以上で、平均孔径が100nm以下の場合においてのみ、透明度,断熱性能共に優れた透明断熱体となる。また、このようにして作製した透明断熱体の可視光透過率は、厚み10mmあたり少なくとも80%以上を有している。
【0054】また、断熱箱体は、冷蔵庫,冷凍庫,冷凍冷蔵ショーケース,販売機、およびワインセラー等の筐体として使用するものであり、断熱箱体とは、断熱箱体内部と外部の温度差を維持することを目的として何らかの断熱手段を具備する断熱構造体を指す。従って、断熱箱体の少なくとも一部に多孔度が80%以上で、平均孔径が100nm以下の多孔体からなる透明断熱体を備えておれば断熱箱体を構成する他の断熱壁およびその断熱材料は、特に限定するものではない。透明断熱体と同時に併用できる断熱材料の一例としては、発泡スチロール,発泡ポリエチレン,フェノールフォーム,ウレタンフォーム,ウレタン粉末,グラスウール,ロックウール,非晶質シリカ,真空断熱材,ガラス等が使用できる。しかし、冷蔵庫の場合には、ウレタンフォームを発泡充填した断熱箱体に乾燥ゲルからなる透明断熱体を適用するのがより適している。
【0055】一方、断熱箱体は、低温から常温域の断熱を目的とするものだけではなく、結露による問題を考える必要のない常温から高温域の断熱を目的としても何ら問題ない。特に、透明断熱体である多孔体として無機系のシリカ乾燥ゲルを使用した場合には、200℃以上の耐熱性を有している。更に、シリカ乾燥ゲルからなる透明断熱体は常温から高温域においても、温度依存性の小さい優れた断熱体であり、高温断熱時においても優れた透明断熱体として機能する。また、高温断熱の場合には、その断熱温度に応じて、グラスウールやロックウールとの併用も可能である。
【0056】また、本実施の形態では、断熱箱体の扉体に透明断熱材を適用した例を示したが、断熱箱体の全面に透明断熱体を適用しても何ら問題ない。
【0057】このように、多孔度が80%以上で、平均孔径が100nm以下の多孔体からなる断熱性能の優れた透明断熱体を少なくとも断熱壁の一部に備えた断熱箱体を適用した場合には、断熱性能の低下や結露を生じさせることなく、更には、消費電力量の増加を引き起こすことなく断熱箱体の内部を透視可能とすることができる。
【0058】
【実施例】次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】(実施例1)シリカ乾燥ゲルである透明断熱体は、工業的に利用される水ガラスを用い、ゾルゲル法による湿潤ゲルの形成と湿潤ゲルの乾燥からなる製造方法にて作製した。
【0060】このようにして得られた乾燥ゲルからなる透明断熱体は、高い透明性を有していた。この透明断熱体の可視光透過率は、厚み10mmあたり91%であった。また、透明断熱体の熱伝導率は11mW/mKであった。BET比表面積は900m2/gであり、平均細孔直径は18nmであった。また、多孔度は90%であった。なお、熱伝導率は、透明断熱体を所定サイズに切り出し英弘精機(株)社製のAuto−λにて測定した。BET比表面積は、日本ベル社製のベルソープにて測定した。
【0061】この透明断熱体は、表裏面をガラス製の透明板で積層し、前記積層体の外周部をABS樹脂製の固定枠で固定し、ウレタン発泡断熱材を充填して形成した断熱箱体を構成するドア体へ適用した。
【0062】なお、透明断熱体の取り付け方法は、予め所定サイズに切り欠いた金属製の外材に透明断熱体の固定枠をはめ込んだ後、予め所定サイズに切り欠いたABS樹脂製の内材と共に、ウレタン断熱材を発泡充填させ接着一体化している。
【0063】このようにして作製した断熱箱体を用いて冷凍冷蔵庫を試作し、庫内の視認性と結露による水滴および曇りの発生を確認した。
【0064】その結果、庫内の視認性は十分であり(但し、庫内灯を点灯)、30℃90%RHの設置条件においても、結露は発生しなかった。
【0065】(実施例2)実施例1と同様の方法でシリカ乾燥ゲルを作製し、乾燥ゲルの特性を測定した。乾燥ゲルは実施例1と同じ性能を有していた。
【0066】この乾燥ゲルからなる透明断熱体は、透明断熱体の表裏面をポリエチレンテレフタレート樹脂製のフィルムで積層し、前記積層体に固定枠を取り付けずに、ウレタン発泡断熱材を充填して形成した断熱箱体を構成するドア体へ適用した。
【0067】なお、透明断熱体の取り付け方法は、予め所定サイズに切り欠いた金属製の外材にポリエチレンテレフタレート樹脂製のフィルムで積層した透明断熱体を配置した後、予め所定サイズに切り欠いたABS樹脂製の内材と共に、ウレタン断熱材を発泡充填させ接着一体化している。
【0068】このようにして作製した断熱箱体を用いて冷凍冷蔵庫を試作し、庫内の視認性と結露による水滴および曇りの発生を確認した。
【0069】その結果、庫内の視認性は十分であり(但し、庫内灯を点灯)、30℃90%RHの設置条件においても、結露は発生しなかった。
【0070】(比較例1)湿潤ゲル合成条件およびエージング条件の一部を変更した以外は、実施例1と同様の方法で乾燥ゲルを作製し、乾燥ゲルの特性を測定した。また、実施例1と同様の方法で乾燥ゲルからなる透明断熱体を冷蔵室のドア体に適用し冷凍冷蔵庫を試作し評価を行った。
【0071】得られた乾燥ゲルからなる透明断熱体は、比較的良好な透明性を有していた。この透明断熱体の可視光透過率は、厚み10mmあたり88%であった。また透明断熱体の熱伝導率は20mW/mKであった。BET比表面積は300m2/gであり、平均細孔直径は150nmであった。また、多孔度は90%であった。なお、熱伝導率は、透明断熱体を所定サイズに切り出し英弘精機(株)社製のAuto−λにて測定した。BET比表面積は、日本ベル社製のベルソープにて測定した。
【0072】このようにして作製した断熱箱体を用いて冷凍冷蔵庫を試作し、庫内の視認性と結露による水滴および曇りの発生を確認した。
【0073】その結果、30℃90%RHの条件下に設置した場合は、初期的に透明断熱体部は透明性を有し内部の視認性は良好であったが、次第に透明断熱体表面部に結露による曇りが生じ庫内の視認性は低下した(但し、庫内灯を点灯)。
【0074】(比較例2)湿潤ゲル合成条件およびエージング条件の一部を変更した以外は、実施例1と全く同様の方法で乾燥ゲルを作製し、乾燥ゲルの特性を測定した。また、実施例1と同様の方法で透明断熱体を冷蔵室用のドア体に適用し冷凍冷蔵庫を試作し評価を行った。
【0075】得られた乾燥ゲルは透明性が悪く、可視光の透過率は乾燥ゲルの厚み10mmあたり60%であった。また透明断熱体の熱伝導率は22mW/mKであった。BET比表面積は300m2/gであり、平均細孔直径は200nmであった。また、多孔度は90%であった。なお、熱伝導率は、透明断熱体を所定サイズに切り出し英弘精機(株)社製のAuto−λにて測定した。BET比表面積は、日本ベル社製のベルソープにて測定した。
【0076】この透明断熱体を適用して作製した断熱箱体を用いて冷凍冷蔵庫を試作し、庫内の視認性と結露による水滴および曇りの発生を確認した。
【0077】その結果、透明断熱体部は透明性が悪く庫内は確認できなかった。また、次第に透明断熱体表面部に水滴が生じ、視認性が低下した。
【0078】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、優れた透明性と優れた断熱性能とを有する透明断熱体を提供することで、結露による水滴や曇りを生じさせることなく、更に、消費電力量を増加することなく断熱箱体の内部を透視可能とする断熱箱体を提供できるという有利な効果が得られる。
【出願人】 【識別番号】000004488
【氏名又は名称】松下冷機株式会社
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成11年12月17日(1999.12.17)
【代理人】 【識別番号】100097445
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 文雄 (外2名)
【公開番号】 特開2001−174140(P2001−174140A)
【公開日】 平成13年6月29日(2001.6.29)
【出願番号】 特願平11−359263