トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F25 冷凍または冷却;加熱と冷凍との組み合わせシステム;ヒ−トポンプシステム;氷の製造または貯蔵;気体の液化または固体化




【発明の名称】 極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造
【発明者】 【氏名】湯村 洋康

【氏名】加藤 武志

【氏名】藤上 純

【氏名】向井 英仁

【要約】 【課題】液体酸素を含む冷媒を用いた極低温機器の冷却システムにおいて、酸素濃度の増加に伴う爆発の危険性を回避できる冷媒濃度の管理構造を提供する。

【解決手段】液体酸素を含む冷媒を用いた極低温機器の冷却システムにおいて、この冷媒の物理的特性を測定して冷媒の濃度を検出する手段を具える。測定する物理的特性としては、冷媒の粘性や冷媒の色相変化、磁化率、比重が挙げられる。この物理的特性の変化から酸素濃度の変化を検知し、爆発の危険性を伴う酸素濃度とならないように調整を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の成分を混合した冷媒を使用する極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造であって、前記冷媒の物理的特性を計測する手段と、この計測結果に基づいて冷媒の濃度を検出する手段とを具えることを特徴とする極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造。
【請求項2】 前記冷媒は液体酸素を含むことを特徴とする請求項1に記載の極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造。
【請求項3】 計測する物理的特性が冷媒の粘性であることを特徴とする請求項1に記載の極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造。
【請求項4】 計測する物理的特性が冷媒の色相であることを特徴とする請求項1に記載の極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造。
【請求項5】 計測する物理的特性が気化した冷媒のガス組成であることを特徴とする請求項1に記載の極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造。
【請求項6】 計測する物理的特性が冷媒の磁化率であることを特徴とする請求項1に記載の極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造。
【請求項7】 計測する物理的特性が冷媒の比重であることを特徴とする請求項1に記載の極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造。
【請求項8】 冷媒流路における長手方向の少なくとも2ヶ所の圧力損失から冷媒の粘性を計測することを特徴とする請求項3に記載の極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造。
【請求項9】 冷媒流路中に冷媒の流通により回転されるプロペラを設け、このプロペラのトルクの変化から冷媒の粘性を計測することを特徴とする請求項3に記載の極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造。
【請求項10】 冷媒循環用のポンプを具え、このポンプのトルクの変化から冷媒の粘性を計測することを特徴とする請求項3に記載の極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造。
【請求項11】 冷媒に磁界を印加するコイルと、冷媒の磁化を測定するピックアップコイルとを具え、これらのコイルにより磁化率の測定を行うことを特徴とする請求項6に記載の極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造。
【請求項12】 冷媒流路の途中にタンクを設け、このタンク内の冷媒の体積と重量とから冷媒の比重を計測することを特徴とする請求項7に記載の極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造。
【請求項13】 冷媒における酸素濃度が10体積%以上25体積%以下であることを特徴とする請求項2に記載の極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造。
【請求項14】 超電導機器が超電導ケーブルであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、極低温機器における冷媒濃度の管理構造に関するものである。特に、超電導ケーブルの冷却システムにおいて、液体酸素と液体窒素との混合冷媒の濃度を管理する構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】超電導ケーブルなど、超電導機器の冷媒としては液体窒素(凝固点63k)が広く知られている。一方、液体空気(凝固点57k)や液体窒素と液体酸素の混合冷媒は液体窒素に比べて凝固点が低いと言う特徴がある。そのため、このような冷媒は冷凍機を用いて容易に低温液体状態を実現でき、超電導機器の大容量化などの利点を有することが報告されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、液体空気や液体窒素と液体酸素の混合冷媒は、酸素濃度が高くなったときに火気があると爆発する危険性を有しており、実用化への大きな障害となっていた。
【0004】液体空気の場合、窒素79体積%、酸素21体積%であり、この成分の場合は危険性はない。しかし、冷媒温度が上昇すると、沸点の低い窒素が先に気化し、液体冷媒中の酸素濃度が高くなる。一般に酸素濃度が30体積%を超えると火気により爆発の危険性がある。
【0005】また、液体酸素および液体窒素の混合冷媒の場合、凝固点が最も低く(50k程度)なるのは酸素濃度が80体積%程度のときであるが、このような高酸素濃度では爆発の危険性が非常に高い。さらに、最初に低酸素濃度に設定した場合でも、その後も低酸素濃度を維持しつづける必要があり、温度上昇が起こると先に液体窒素が気化して酸素濃度が上昇することは先に述べた通りである。
【0006】特に、高電圧が印加される超電導ケーブル等の電力用機器への使用を考えると、放電などによる爆発の危険性がある。
【0007】従って、本発明の主目的は、冷媒中の特定成分(例えば酸素)濃度を検知して所定の冷媒濃度に維持できる極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、複数の成分が混合された冷媒の物理的特性を計測し、冷媒中の特定成分濃度を検出することで上記の目的を達成する。
【0009】すなわち、本発明は複数の成分が混合された冷媒を用いた極低温機器の冷却システムにおける冷媒濃度の管理構造であって、前記冷媒の物理的特性を計測する手段と、この計測結果に基づいて冷媒の濃度を検出する手段とを具えることを特徴とする 。
【0010】ここで、冷媒としては、液体空気など酸素を含むものが挙げられる。冷媒の物理的特性は、冷媒の特定成分濃度と相関関係のある特性を選択する。例えば、特定成分を酸素とする場合、粘性、色相、ガス化した冷媒のガス成分、磁化率、比重が挙げられる。各物理的特性を計測する具体的手段を以下に説明する。
【0011】(1)粘性を計測するには、次のいずれかが好適である。
■冷媒流路における長手方向の少なくとも2ヶ所の圧力損失から冷媒の粘性を計測する。これは、冷媒流路中の少なくとも2箇所に圧力計を設置しておき、この測定圧力を元に圧力損失を求め、さらに圧力損失から冷媒の粘性を求める。圧力計を設置する個所としては、例えば一区間の超電導ケーブルにおける両端部などが挙げられる。
■冷媒流路中に冷媒の流通により回転されるプロペラを設け、このプロペラのトルクの変化から冷媒の粘性を計測する。通常、冷媒はポンプなどで圧送されているため、ある一定のポンプ出力において冷媒の粘性が変われば回転されるプロペラのトルクも変わるため、トルク変化から冷媒濃度を求める。
■冷媒循環用のポンプを具え、このポンプのトルクの変化から冷媒の粘性を計測する。冷媒の粘性が変われば冷媒を循環するポンプの負荷も変わるため、ポンプの負荷変化に伴うトルクの変化から冷媒の粘性を求めることができる。
【0012】(2)色相を計測するには、冷媒のスペクトルを測定することが挙げられる。液体窒素と液体酸素の混合冷媒の場合、液体酸素の濃度が高くなると、青味がかってくる。そのため、色相を計測することで冷媒の濃度を求めることができる。
【0013】(3)気化した冷媒の成分測定は、自然気化した冷媒のガス成分を計測しても良いし、ヒータなどで冷媒を加熱して、強制的に気化してからガス成分を計測しても良い。ヒータを設ける場合、被冷却体となる超電導機器自体ではなく、冷媒流路における超電導機器以外の個所に設けることが望ましい。
【0014】(4)磁化率を測定するには、冷媒に磁界を印加するコイルと、冷媒の磁化を測定するピックアップコイルとを具え、これらのコイルにより磁化率の測定を行うことが好ましい。酸素は他の気体と異なって常磁性である。そこで、冷媒の磁化率を測定することで、酸素濃度を検知することができる。
【0015】(5)比重を測定するには、冷媒流路の途中にタンクを設け、このタンク内の冷媒の体積と重量とから冷媒の比重を計測する。このタンクも前述したリザーバタンクを利用すれば良い。
【0016】計測結果に基づいて冷媒濃度を演算する手段は、各物理的特性と冷媒濃度との相関関係を予め求めておき、その相関関係に基づいて演算を行えば良い。
【0017】そして、冷媒における酸素濃度は10体積%以上25体積%以下であることが望ましい。10体積%以上としたのは、冷媒の凝固点を60k以下とするためである。冷媒の凝固点を60k以下とすれば、臨界電流を液体窒素温度における臨界電流の2倍程度とできる。また、25体積%以下としたのは、冷媒の初期状態で爆発の危険性がない濃度を選択したためである。上記の酸素濃度測定手段による計測は、超電導機器の運転中に行って、酸素濃度が上記規定範囲から外れそうになった場合は、冷媒温度を下げて窒素の気化を抑制するなどして冷媒の酸素濃度を調整し、爆発の危険性を解消する。
【0018】なお、上記の冷媒濃度の管理構造を適用する対象は、特に限定されない。ただし、危険性を回避する必要性の高さから、高電圧が印加される超電導ケーブル等の電力用機器に利用することが望ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明実施例の概略説明図である。ここでは超電導ケーブルを冷却対象とし、冷媒の粘性係数、トルク、ガス成分、磁化率、比重、色相から冷媒濃度を求める管理構造について順次説明する。
【0020】通常、超電導ケーブル1は内側から順にフォーマー、超電導導体、絶縁層からなり、その上に磁気遮蔽層、保護層を被覆したコアを具えている。このコアは内外管からなる断熱管内に配置されている。そして、フォーマーの内側と、内管と各ケーブルコアとの間隙が冷媒流路となっている。冷媒には液体空気を用いる。
【0021】このような超電導ケーブル1の両端部には、冷媒のリザーバタンク2、3が設けられている。一端側のリザーバタンク2には冷媒循環用のポンプ4が接続され、さらに冷媒の圧力計5、6が一対設けられている。一方、他端側のリザーバタンク3には冷媒の圧力計7が設けられると共に冷媒の流通により回転されるプロペラ(図示せず)が設けられており、このプロペラにはトルク計8が装着されている。さらに、冷媒の一部を分岐させ、ヒータ9により強制的に気化して、気化したガス成分を分析するガス成分計10も具えている。
【0022】(粘性測定による冷媒濃度検知)このような冷却システムにおいて、2つの圧力計の測定結果から圧力損失を求め、さらに粘性係数を求める。圧力損失ΔPは上記3つの圧力計のうち、2つの圧力計の測定結果から求められる。すなわち、「圧力計6の測定結果−圧力計5の測定結果」または「圧力計7の測定結果−圧力計6の測定結果」を用いる。この圧力損失ΔPは、ΔP=32fm2L/π25ρで表される。また、f=0.0140+0.125Re0.32であり、Re=mr/Aνであることから、粘性係数νを求める。なお、mは冷媒質量流量、ρは冷媒密度、Lは冷媒流路の管路長、Aは管路断面積、rは管路半径、νは冷媒動粘性係数である。粘性係数と冷媒の酸素濃度との相関関係を予め求めておけば、演算で求めた粘性係数から酸素濃度を検知することができる。
【0023】(トルク測定による冷媒濃度検知)ここではトルクを測定する手段として、異なる2つの方法を挙げる。そのうちの一つは、冷媒流路中に設けたプロペラのトルク変化をトルク計8で測定して、冷媒の粘性係数を求める。もう一つは、冷媒を圧送するポンプのトルクを計測して、同様にトルクの変化から粘性係数を求める。なお、ここではポンプやプロペラのトルクから冷媒の粘性を求めているが、これらポンプやプロペラは冷媒流路中のいずれかにあれば良く、その設置個所は特に限定されない。すなわち、冷媒流路のいずれかに冷媒の流通に伴って回転する回転体を装着し、その回転体のトルクを計測すれば良い。
【0024】(気化したガス成分測定による冷媒濃度検知)ガス成分の分析は、ヒータ9により冷媒の一部を気化し、気化したガスの成分を分析することで行う。冷媒を気化させるための温度は液体酸素の沸点よりも高い温度として、窒素および酸素の双方が気化するようにする。気化したガスの成分は、直接ガス成分計10により計測できるため、ガス成分より液体空気の酸素濃度を求めることができる。
【0025】(磁化率測定による冷媒濃度検知)酸素は他の気体と異なって常磁性であるため、冷媒の磁化率を求めることで、冷媒の酸素濃度を求めることができる。冷媒の磁化率を求めるには、図2に示す磁界印加用コイル20と、磁化測定用ピックアップコイル21を用いる。図2は超電導機器の冷却システム中における冷媒流路の縦断面図である。冷媒22は断熱管23内を流通されている。この断熱管23の外側に磁界印加用のコイル20を螺旋状に配置し、内側に磁化測定用のピックアップコイル21を配置する。そして、冷媒の磁化率を測定することで冷媒の酸素濃度を求める。測定値の校正は、液体窒素および酸素濃度の判明している液体窒素と液体酸素の混合冷媒の磁化測定値を用いれば良い。
【0026】(比重測定による冷媒濃度検知)酸素と窒素は比重が異なるため、液体酸素と液体窒素の混合冷媒の比重を測定することで酸素濃度を求めることができる。その測定例を図3に示す。これは超電導ケーブル30を冷却する冷却システムの概略図である。リザーバタンク31に冷媒32が貯留され、ここから冷凍機33を経て超電導ケーブル30に冷媒が供給される。超電導ケーブル30を通った冷媒は、復路配管を通って再度リザーバタンク31に戻される。ここで、リザーバタンク31には、液面計34と重量計35が設けられている。すなわち、液面計34よりリザーバタンク内の冷媒の体積を求めることができる。また、重量計35によりリザーバタンクの重量(もちろん空重量も測定しておく)を求めることができ、測定値から空重量を差し引けば冷媒重量を求めることができる。従って、冷媒の体積と重量とから比重を求め、酸素濃度を求めることができる。
【0027】(色相測定による冷媒濃度検知)液体窒素と液体酸素の混合冷媒において、液体酸素の濃度が高くなると、青味がかってくる。そのため、色相を計測することで冷媒の濃度を求めることができる。冷媒の色相を測定するには、冷媒のリザーバタンクなどにスペクトル測定器を装着し、冷媒のスペクトル分布を計測すれば良い。一方、予め酸素濃度のわかっている冷媒についてスペクトル分布の測定を行っておき、スペクトル分布と冷媒における酸素濃度との相関関係を求めておけば、冷媒のスペクトル分布結果より冷媒の酸素濃度を求めることができる。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、冷媒中の特定成分濃度の検知を行うことで、冷媒濃度を所定の範囲に調整し、超電導機器を安全に運転させることができる。特に、酸素を含む冷媒の場合、爆発の危険が少ない濃度に調整できて好適である。従って、超電導ケーブルなど、高電圧が印加される機器の冷媒濃度管理に最適である。
【出願人】 【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
【出願日】 平成11年12月15日(1999.12.15)
【代理人】 【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏 (外1名)
【公開番号】 特開2001−174114(P2001−174114A)
【公開日】 平成13年6月29日(2001.6.29)
【出願番号】 特願平11−356668