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【発明の名称】 水冷パネルセグメント用ユニット部材、及び、保護被覆付水冷パネルセグメントの製造方法
【発明者】 【氏名】松原 洋一

【氏名】曽地 義信

【要約】 【課題】

【解決手段】上記保護被覆4の形成を、パネルセグメント11の形態に仕立てた母材に対して行うのではなく、パネル化する前のユニット部材5の段階で済ませておく構成により、被覆材料の溶融処理に伴う熱歪を僅少に抑えた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属管の両脇に金属板製の縦フィンを立設した構造のフィン付管体であって、該フィン付管体の少なくとも片面側の少なくとも金属管部分の外面に、溶融処理を済ませた自溶合金系の保護被覆を形成したことを特徴とする水冷パネルセグメント用ユニット部材。
【請求項2】 請求項1に記載のユニット部材の複数体を、その縦フィンの先端を継ぎ口として溶接接続してパネル化することを特徴とする保護被覆付水冷パネルセグメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水熱ボイラーの心臓部に当る火炉(燃焼室兼熱交換器)のハウジングを形成するための部材である水冷パネルセグメントを、歪みの少ない形で得るための技術に関し、具体的には、腐食や摩耗を防ぐための保護被覆が施された水冷パネルセグメントを低歪で製造するのに有用なユニット部材、及び、該部材を利用して行う、上記セグメントを低歪で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】上記火炉のハウジングは、火炉を囲うという役割に加えて、火炉からの放散熱を回収する役割を担っている。このためハウジングの壁パネルには熱回収用の水路が仕込まれており、この水路を流れ上記放散熱を吸収して温められた水を、火炉を貫通する主管群(本来の熱交換用チューブ)に供給する仕組により、熱収支を向上させている。
【0003】上記ハウジングの壁パネルは、図10に平面図を、図11に側断面図を示した方形のパネルセグメント11を、溶接などにより繋ぎ合わせて形成されている。上記パネルセグメントは、前記水路を形成するための金属管11aと、これらを繋ぐ金属板製のウエブ11bとが互い違いに並んだ構造をしている。
【0004】火炉のハウジングは、本体はさしたる耐食性や耐摩耗性を要求されるものではなく、弱酸性の結露水による湿食に強い低合金鋼を用いる程度の対策で長期の使用に耐えていた。しかしながら、近年は、ごみ焼却発電などの展開によって高度の耐食性や耐摩耗性が要求されるケースが増えて、新たな対策が必要になってきた。有力な対策の一つとして、Ni−Cr基などの自溶合金系の材料による被覆が挙げられる。上記被覆は、溶射法などによって上記被覆材料の層を形成し、これに溶融処理を加えることによって施すことができる。溶融処理は、被覆を加熱溶融させることにより被覆中の気孔を追出して、被覆を緻密化させるとともに、下地に融着させる処理である。
【0005】上記溶融処理は、1000℃に及ぶ高温加熱を要するものであり、前記水冷パネルセグメントが複雑な断面形状を有する上、5m前後の長尺のものもあることから、加熱・冷却に伴って熱歪を生じやすく、これを避けるために、たとえば、温度分布の十分平坦な加熱炉内で昇温速度を抑えて均熱加熱するといった、設備コストを要し且つ非能率な作業を余儀なくされていた。更には、上記のように対策しても、なお、熱歪をmmオーダーに抑えるのは容易でなかった。しかも、上記熱歪は一方向に一様に湾曲したような単純な形態のものではなく、形状矯正には多大な工数を要した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ボイラー火炉用の水冷パネルセグメントに自溶合金系の被覆を施した保護被覆付水冷パネルセグメントの製造に係る上記問題点に鑑みてなされたものであって、上記被覆の施されたセグメントを歪の少ない形で得ることのできる技術の提供を課題とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべくなされた本発明の第一発明の要旨は、金属管の両脇に金属板製の縦フィンを立設した構造のフィン付管体であって、該フィン付管体の少なくとも片面側の少なくとも金属管部分の外面に、溶融処理を済ませた自溶合金系の保護被覆を形成したことを特徴とする水冷パネルセグメント用ユニット部材である。
【0008】こヽで、金属管の両脇とは、図6に示すように、金属管1の外周面上に管軸に関して略対称な位置関係で対峙する稜線対{1a,1b}の位置を指しており、金属管の任意方位の径線上に位置設定されてよい。又、フィン付管体の片面側とは、図7に示すフィン付管体3において、図中の矢印A側,B側のいずれか一方に露呈する側を指している。図7において、2は金属板製の縦フィンである。図1,図2は、上記第一発明のユニット部材5の一例を示したものであって、4は、緻密化された自溶合金系の被覆である。
【0009】次に、第二発明の要旨は、上記第一発明のユニット部材5の複数体を、その縦フィン2の先端2aを継ぎ口として溶接接続してパネル化することを特徴とする保護被覆付水冷パネルセグメントの製造方法である。図3は、上記第二発明によって製造された保護被覆付水冷パネルセグメント7の一例を示すものであって、隣り合うユニット部材5の縦フィン2が溶接接続されたウエブ6を有する。
【0010】ここで、図7に示すフィン付管体3、ないしは、図1,図2に示す第一発明のユニット部材5は、図10,図11に示す完成されたセグメント11と異なって、熱的な異方性の小さい断面形状を有していて均等に加熱・冷却されやすい。又、縦フィンの先端2aは開放されていて金属管1に対する縦フィン2の形状拘束作用が弱く、前記溶融処理の加熱・冷却過程において温度差が生じたとしても熱歪を生じにくい。更には、管軸を中心に回転させながら加熱・冷却することもできる。更に又、上記歪が長手方向に反った単純な形態のものであることから、冷間ないし熱間で容易に矯正できるので、更なる歪の低減が可能である。よって、保護被覆を有する歪の少ないユニット部材製品が容易に得られる。
【0011】しかして、上記ユニット部材5の複数体を溶接接続してパネル化する第二発明の製造方法によれば、隣り合う縦フィン2の先端2aを継ぎ口とする板材間の溶接を歪が生じないように行うのは容易であるから、ユニット部材の低い歪レベルを概ね維持した低歪の保護被覆付水冷パネルセグメントが容易に得られる。又、ユニット部材の歪を溶接による歪が打消す方位関係で溶接を行うことにより、溶接後の歪を更に軽減できる。
【0012】
【発明の実施の形態】水冷パネルセグメントの金属管部分及び金属板部分の材質は、通常は、炭素鋼,低合金鋼(Cr−Mo鋼など),ステンレス鋼などの鋼材であるが、限定はされない。金属管部分の管体寸法は外径20〜80×肉厚3〜15(mm)程度、金属板部分の寸法は巾10〜60×肉厚3〜15(mm)程度である。上記金属管部分と金属板部分とが夫々5〜20体程度集積されて、図10,図11に例示したパネルセグメント11(巾1〜2×長さ2〜6(m)程度)が形成されている。
【0013】上記水冷パネルセグメントの表面に被覆施工される自溶合金系の被覆材料としては、フラックス生成成分であるBやSiを配合して自溶性を付与したNi−Cr基合金,Co基合金、あるいは、これらに耐摩耗性向上目的でWCなどの硬質セラミックスを配合したサーメット類を例示できる。被覆の厚さは溶融処理後で0.5〜3mm程度に設定される。
【0014】図1,図2に例示した本発明第一発明の水冷パネルセグメント用ユニット部材5の仕様は、求められているパネルセグメントの仕様に対応して設定される。即ち、ユニット部材5の縦フィン2の巾を、セグメントの金属板部分の巾の1/2ないしは更に小さく設定し、縦フィン2の先端2a同志を、直接に又は巾出し材を介して溶接接続したときに前記ウエブ(図10,図11の11bに相当)が所定の巾に形成されるようにする。
【0015】本発明ユニット部材は、図7のフィン付管体3の表面の所望領域に自溶合金系の保護被覆4を形成して成るが、高度の耐久性が要求されるのはボイラの内面側であるから、通常は、ユニット部材の片面側(たとえば、図4のA面側)のみに保護被覆4を形成すればよい。但し、被覆施工時の母材表面の高温酸化防止あるいは製造後の長期防食などの目的で、図4に例示するように裏面側(B面側)にも保護被覆4′を形成するようにしてもよい。この場合、裏面被覆4′は薄膜でもよい。
【0016】上記被覆4あるいは4′は、ユニット部材5の、縦フィンを含む全域に形成してもよいが、図2,図4に例示したように、溶接に供されるフィン2の先端2aの近傍を未被覆のまヽに残して溶接しやすくしておくことが望ましい。但し、ボイラー内での水冷パネルに対する摩耗などの侵襲作用は、パネルの金属管部分に強く及ぶので、この部分には必ず被覆が施されていなければならない。よって、図5に示す、金属管部分1のみに被覆4を形成した態様が未被覆領域形成の許容限度となる。
【0017】以上述べた本発明ユニット部材は、以下のようにして製造することができる。先ず、図7の形式のフィン付管体を用意し、この外面の所望領域に前記自溶合金系被覆材料の定着層を形成する。定着層形成手段としては、溶射法あるいはスラリー塗布法(バインダーを配合した自溶合金粉体スラリーを塗布した後、分散媒及びバインダーを加熱などにより逸散させて自溶合金成分を定着させる)を例示できる。上記定着層は、前記未被覆領域にマスキング処理を施すなどして、所望領域のみに形成する。
【0018】次に、上記定着層を有するフィン付管体を被覆材料の融点(固相線)以上の温度に加熱して溶融処理を施す。溶融処理の加熱温度は、Ni−Cr基自溶合金(WC入りを含む)の場合で1000〜1250℃程度である。加熱手段としては均一加熱の行いやすい炉加熱あるいは誘導加熱が推奨される。図8,図9は移動方式の誘導加熱を例示したものであって、電源装置9から高周波電流が通電されている誘導子10による電磁誘導によってフィン付管体3の、主として金属管部分を管周方向に周回する誘導電流を生じさせて誘導子10の作用区間を加熱する。しかして、該加熱操作を、誘導子10をフィン付管体の長手方向に相対移動させることで、フィン付管体の全長に適用している。フィン付管体3を回転させずに誘導加熱する場合には、図8に例示したように誘導子をフィン付管体(特に金属管部分)に沿わせた形状とすることにより、効率のよい誘導加熱が行える。又、歪を極小化するために回転させながら誘導加熱する場合には、図5に例示したフィン付管体のように、縦フィン2の巾を小さく設定して(巾の不足分は、パネル化のための溶接時に前記巾出し材を介在させて補う)誘導子をフィン付管体になるべく近づけることにより、誘導加熱の効果を向上させることができる。
【0019】上述のユニット母材を溶接接続して行う本発明第二発明の保護被覆付水冷パネルセグメントの製造方法においては、溶接接続によって新たな歪が生じないよう、1.溶接入熱、2.ワイヤーの大きさ、3.パス間の冷却時間、4.部分冷却について考慮する。
【0020】なお、未被覆部分を有するユニット部材を用いて製造されたパネルセグメントには、図3の例のように、ウエブ部分6内に未被覆領域8が残るが、前述のように、摩耗などの侵襲作用がウエブ部分には強く及ばないので、ウエブ部分には軽度の保護処理が施されゝばよい。この保護処理としては、低入熱で行える自溶合金系被覆の薄膜施工、あるいは、耐熱塗膜施工を例示できる。上記保護処理は新たな歪形成を伴わずに行える。水冷パネルのウエブ部分は、万一損傷した場合の補修が金属管部分に比べて行いやすいので上記保護処理の仕様は施工性本位で選定されてよい。
【0021】(実施例)本発明のユニット部材を製作し、次いで、該部材を溶接接続してパネル化する本発明方法により、水冷パネルセグメントに仕立てゝ、各段階での歪レベルを調査した。
<ユニット部材仕様>・母材全長:4m金属管部分の材料・寸法 :JIS STBA22,外径43mm×肉厚4.0mm縦フィン部分の材料・寸法:JIS S25C,巾6.0mm×肉厚5.0mm・被覆施工領域:縦フィンの先端部の、巾4.0mmの部分を除く、表裏面の全域膜厚(溶融処理後):A面に1.5mm,B面に0.3mm定着層形成方法:ガスフレーム溶射法溶融処理条件 :移動方式の誘導加熱を適用して順次1050℃に加熱<パネルセグメントの製造>・ユニット部材配置数:15体(製品巾:0.82m)
・溶接法:炭酸ガスアーク溶接法<歪レベル(金属管部分の最大高低差)>■フィン付管体(被覆前):0.5mm■フィン付管体(被覆後)=本発明ユニット部材:4mm■被覆付パネルセグメント(■を溶接接続)=本発明方法によるパネルセグメント製品:7mm(■の歪を2mmに矯正した上で、この歪を溶接時の歪発生で打消す方位関係で溶接したものでは2mm)
(以下は比較例)
■パネルセグメント(■を溶接接続):3mm■被覆付パネルセグメント(■に■と同仕様の被覆を炉加熱によって施工):20mm上記■と■の歪量の差異に見る通り、本発明パネルセグメント製造方法の優位性が、ひいては、本発明ユニット部材の有用性が明らかである。
【0022】
【発明の効果】本発明は、上述のように、自溶合金系の被覆を有する水冷パネルセグメントを、熱歪の少ない形で得ることができる技術を提供したものであって、上記被覆の施工をパネルセグメントの形態に仕立てた母材に対して行うのではなく、パネル化する前の、未だ溶接接続されていないユニット部材の段階で済ませておく構成により、上記熱歪を僅少に抑えた。
【0023】ごみ問題の解決手段として、前述の高温燃焼型のごみ焼却発電が有力視されているが、苛酷な腐食・摩耗条件に耐える装置材料が現実的な価格で得られないことが、上記技術の展開を阻んでいた。特に、ボイラー火炉の熱交換用チューブと水冷パネルが難題であったが、前者については、形状が単純なこともあり、自溶合金系被覆の利用が既に進んでいる。
【0024】此度、本発明によって、水冷パネルへの自溶合金系被覆の利用が有利に行えるようになったことから、ボイラー火炉に係る装置材料問題は払拭された。この例をはじめとして、本発明の産業界及び環境事業に対する貢献は絶大である。
【出願人】 【識別番号】000208695
【氏名又は名称】第一高周波工業株式会社
【出願日】 平成11年6月23日(1999.6.23)
【代理人】 【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助 (外1名)
【公開番号】 特開2001−4101(P2001−4101A)
【公開日】 平成13年1月12日(2001.1.12)
【出願番号】 特願平11−177181