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【発明の名称】 車両灯具用レンズ構造体およびその製造方法
【発明者】 【氏名】花咲 真吾

【要約】 【課題】破損による応力緩和構造が可能であると共に、レンズ構造体のリサイクルも可能な車両灯具用レンズ構造体を提供すること。

【解決手段】透明樹脂材で成形されランプハウジング2の開口部を覆うようにして取り付けられるレンズ体3と、このレンズ体3の外表面に積層して形成される透明保護膜4とからなり、レンズ体3が、ポリカーボネートで成形されると共に、透明保護膜4は、脂肪族熱可塑性ウレタンで成形されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明樹脂材で成形されランプハウジングの開口部を覆うようにして取り付けられるレンズ体と、このレンズ体の外表面に積層して形成される透明保護膜とからなる車両灯具用レンズ構造体において、前記レンズ体が、透明熱可塑性樹脂材で成形されると共に、前記透明保護膜は、熱可塑性ポリウレタンで成形されていることを特徴とする車両灯具用レンズ構造体。
【請求項2】 請求項1に記載の車両灯具用レンズ構造体であって、前記レンズ体が、ポリカーボネートで成形されると共に、前記透明保護膜は、脂肪族熱可塑性ウレタンで成形されていることを特徴とする車両灯具用レンズ構造体。
【請求項3】 請求項1または2に記載の車両灯具用レンズ構造体であって、前記レンズ体が、厚み方向に食い込む溝部からなるキャラクターラインを設けて形成されていることを特徴とする車両灯具用レンズ構造体。
【請求項4】 請求項2または3に記載の車両灯具用レンズ構造体の製造方法であって、脂肪族熱可塑性ウレタンフィルムをセットした金型内に、ポリカーボネートを射出するフィルムインモールド成形法によりレンズ構造体を成形することを特徴とする車両灯具用レンズ構造体の製造方法。
【請求項5】 請求項4に記載の車両灯具用レンズ構造体の製造方法であって、前記ポリカーボネートは、分子量20000以下のものを用いたことを特徴とする車両灯具用レンズ構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば、車両のヘッドランプのアウタレンズとして適用される車両灯具用レンズ構造体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の車両灯具用レンズ構造体は、透明樹脂材で成形されランプハウジングの開口部を覆うようにして取り付けられるレンズ体と、このレンズ体の外表面に積層して形成される透明保護膜とで構成されている。
【0003】具体的には、従来の車両灯具用レンズ構造体は、レンズ体を、ポリカーボネートで成形すると共に、このレンズ体の外表面に、保護膜としてのハードコートを、塗装(特開平10−158420号公報参照)またはフィルムインモールド成形法(特開平10−282889号公報参照)により積層して形成することにより構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この種の車両灯具用レンズ構造体は、通常状態で充分な剛性を維持すると共に、一定の応力(例えば、交通事故などの衝撃)下で容易に破損して、応力の緩和がなされることが望ましい。
【0005】しかしながら、従来の車両灯具用レンズ構造体は、破損した場合、エッジとなって飛散するため、むしろ前記した応力の緩和を犠牲にして非破損構造で構成されている。すなわち、従来の車両灯具用レンズ構造体のレンズ体は、割れにくい材料である分子量21000〜25000のポリカーボネートを用いて、ある程度の肉厚(例えば、2.5mm)でもって形成されると共に、キャラクターラインも内面に突出する突条で形成される。
【0006】その上、従来の車両灯具用レンズ構造体は、レンズ体と保護膜との剥離が困難であるため、レンズ体のリサイクルが困難である、と言う課題をも有している。
【0007】また、その製造方法についても次のような課題を有している。
【0008】まず、ハードコートを塗装により形成する場合は、設備費が嵩んで大投資を招く。
【0009】また、ハードコートをフィルムインモールド成形法により形成する場合は、ハードコートとなるフィルム材が硬質であるため、金型形状への追従性が悪く、このため形成できるのは、レンズ体がフラットな形状のものに限定され、レンズ構造体の設計自由度の拡大を妨げている。
【0010】そこで、この発明は、破損による応力緩和構造が可能であると共に、レンズ構造体のリサイクルも可能な車両灯具用レンズ構造体、および設備費の高騰、並びにレンズ体の形状限定を伴うことなく容易にレンズ構造体を成形することができる車両灯具用レンズ構造体の製造方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、請求項1の発明は、透明樹脂材で成形されランプハウジングの開口部を覆うようにして取り付けられるレンズ体と、このレンズ体の外表面に積層して形成される透明保護膜とからなる車両灯具用レンズ構造体において、前記レンズ体が、透明熱可塑性樹脂材で成形されると共に、前記透明保護膜は、熱可塑性ポリウレタンで成形されていることを特徴とする。
【0012】このため、請求項1の発明では、熱可塑性ポリウレタン製保護膜により、レンズ体は、チッピングや、砂等による打撃系の傷付きや破損、および化学薬品による腐食等から保護される。
【0013】また、レンズ体は、熱可塑性ポリウレタン製保護膜により、レンズ体破損時の破損片の飛散を有効に防止することができ、ひいては破損による応力緩和構造が可能となる。
【0014】また、レンズ体および保護膜は、共に熱可塑性樹脂材で形成されているので、レンズ構造体を再成形する等のリサイクルが可能となる。
【0015】また、請求項2の発明は、請求項1に記載の車両灯具用レンズ構造体であって、前記レンズ体が、ポリカーボネートで成形されると共に、前記保護膜は、脂肪族熱可塑性ウレタンで成形されていることを特徴とする。
【0016】このため、請求項2の発明では、熱可塑性エラストマーの中でも、特に耐摩耗性、強度、耐薬品性、および耐候性に優れている脂肪族熱可塑性ウレタンで保護膜を形成したので、レンズ体は、チッピングや、砂等による打撃系の傷付きや破損、および化学薬品による腐食等から有効に保護される。
【0017】また、脂肪族熱可塑性ウレタンは、ポリカーボネートとの間で相溶性を有しているので、脂肪族熱可塑性ウレタンの保護膜は、ポリカーボネート製レンズ体上に充分な密着性を有して形成されることになり、これによりレンズ体破損時の破損片の飛散を有効に防止することができる。
【0018】また、脂肪族熱可塑性ウレタンおよびポリカーボネートは、共に熱可塑性であると共に、相溶性を有しているので、レンズ構造体を再成形する等のリサイクルが可能となる。
【0019】また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載の車両灯具用レンズ構造体であって、前記レンズ体が、厚み方向に食い込む溝部からなるキャラクターラインを設けて形成されていることを特徴とする。
【0020】このため、請求項3の発明では、レンズ構造体の表面に外部から応力が加わると、キャラクターラインの形成部分に応力が集中し、該形成部分のノッチ効果によりレンズ体を容易に破損させることができ、これにより応力の緩和を図ることができる。
【0021】また、キャラクターラインを、その断面形状、形成深さ、および形成箇所を適宜選択して形成することにより、応力負荷時のレンズ体の破損開始のポイントを制御することができる。
【0022】また、請求項4の発明は、請求項2または3に記載の車両灯具用レンズ構造体の製造方法であって、脂肪族熱可塑性ウレタンフィルムをセットした金型内に、ポリカーボネートを射出するフィルムインモールド成形法によりレンズ構造体を成形することを特徴とする。
【0023】このため、請求項4の発明では、ポリカーボネートからなるレンズ体の外表面に、脂肪族熱可塑性ウレタンフィルムからなる保護膜を充分な密着力で積層形成してなるレンズ構造体を、有機溶剤不使用のフィルムインモールド成形法により容易に形成することができる。
【0024】また、脂肪族熱可塑性ウレタンフィルムは、軟質で金型形状への追従性が高く、これによりハードコートシートでは不可能であった3次元形状のインモールド成形が可能となる。
【0025】また、請求項5の発明は、請求項4に記載の車両灯具用レンズ構造体の製造方法であって、前記ポリカーボネートは、分子量20000以下のものを用いたことを特徴とする。
【0026】このため、請求項5の発明では、ポリカーボネートの金型内での高い流動性が得られ、これによりレンズ体の厚みを薄くしたレンズ構造体の成形性を向上させることができると共に、ポリカーボネート素材自体の低衝撃強度により、前記レンズ構造体を破損し易い応力緩和体として形成することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0028】図1は、この発明の第1実施の形態としての車両灯具用レンズ構造体1を示す。このレンズ構造体1は、透明樹脂材で成形されランプハウジング2の開口部を覆うようにして取り付けられるレンズ体3と、このレンズ体3の外表面に積層して形成される透明保護膜4とから構成されている。レンズ構造体1は、レンズ体3の脚部3aを、ランプハウジング2の開口部の外周に沿って形成された取付溝部2aに挿入してホットメルト接着することによりランプハウジング2に取り付けられている。なお、図1中、符号5は、バルブ(光源)である。
【0029】このとき、レンズ体3が、透明熱可塑性樹脂材、好ましくはポリカーボネートで成形されると共に、透明保護膜4は、熱可塑性ポリウレタン、好ましくは脂肪族熱可塑性ウレタンで成形されている。
【0030】このように構成されたレンズ構造体1は、熱可塑性エラストマーの中でも、特に耐摩耗性、強度、耐薬品性、および耐候性に優れている脂肪族熱可塑性ウレタンで保護膜4を形成したので、レンズ体3は、チッピングや、砂等による打撃系の傷付きや破損、および有機溶剤等の化学薬品による腐食等から有効に保護される。
【0031】また、脂肪族熱可塑性ウレタンとポリカーボネートは、相溶性を有しているので、脂肪族熱可塑性ウレタン製保護膜4は、ポリカーボネート製レンズ体3上に充分な密着性を有して積層形成されることになり、これによりレンズ体3の破損時の破損片の飛散を有効に防止することができる。このためレンズ構造体1は、通常状態で充分な剛性を維持すると共に、一定の応力(例えば、交通事故などの衝撃)下で容易に破損して、応力の緩和が図れる応力緩和構造として構成することができ、これにより安全性を一層向上させることができる。
【0032】また、脂肪族熱可塑性ウレタンおよびポリカーボネートは、共に熱可塑性であると共に、相溶性を有しているので、レンズ構造体1を再成形する等のリサイクルが可能である。
【0033】図2は、この発明の第2実施の形態としての車両灯具用レンズ構造体10を示す。このレンズ構造体10は、応力緩和機能を備えたキャラクターライン6を設けた点が相違するだけで、その他の構造は、レンズ構造体1と同様にして構成されている。
【0034】すなわち、レンズ構造体10のレンズ体3は、厚み方向に食い込む溝部からなるキャラクターライン6を設けて形成されている。
【0035】本実施形態では、キャラクターライン6は、図2(b)および(c)に示すように、レンズ体3の厚みT(例えば、T=3.0mm)に対して、深さt(=T/2)に達する断面V字形状の溝部を、レンズ体3の中央部を横切るように形成して構成されている。
【0036】このように構成されたレンズ構造体10においては、レンズ構造体10の表面に外部から応力が加わると、キャラクターライン6の形成部分に応力が集中し、該形成部分のノッチ効果によりレンズ体3を容易に破損させることができ、これにより応力の緩和を図ることができる。
【0037】また、レンズ構造体10は、キャラクターライン6を、その断面形状、形成深さ、および形成箇所を適宜選択して形成することにより、応力負荷時のレンズ体3の破損開始のポイントを制御することができる。例えば、レンズ体3の形状、肉厚が変化しても、キャラクターライン6のデザイン(形状)を適宜設計することにより、破壊する応力を一定にできるし、キャラクターライン6の設定位置を適宜変更することにより、安全な場所から破壊させることも可能となる。
【0038】その上、キャラクターライン6による応力緩和構造は、工程、素材に特別なものを必要とすることなく形成することができるので、コスト高を伴うこともない。
【0039】図3は、この発明の第3実施の形態としての車両灯具用レンズ構造体20を構成するレンズ体3を示す。このレンズ構造体20は、レンズ体3が他の応力緩和構造を備えて構成されている点が相違するだけで、その他の構造は、レンズ構造体1と同様にして構成されている。
【0040】すなわち、本実施形態におけるレンズ体3の応力緩和構造は、薄肉部Aで構成されている。この薄肉部Aは、応力を受けたときに変形させる場所を最薄肉部aとし、その周囲の肉厚を最薄肉部aに向かって徐々に薄くなるように形成して構成される(図3(b)参照)。本実施形態では、薄肉部Aは、肉厚dが1.5mmの最薄肉部aと、肉厚Dが2.5mmの周囲部分とで構成され、レンズ体3の正面中央部分に形成されている。
【0041】このレンズ構造体20によれば、その表面に外部から応力が加わると薄肉部Aに応力が集中して大きく変形(あるいは破損)することになり、これにより応力の緩和を図ることができる。このため、薄肉部Aは、変形させる応力、および製品の形状やデザイン等によって、その大きさ、数、および設定箇所等を適宜設計することになる。
【0042】また、薄肉部Aによる応力緩和構造は、全体的に薄肉化するのではないので、レンズ構造体としての必要な剛性が得られることは勿論のこと、成形工程、素材に特別なものを必要とすることなく形成することができるので、コスト高を伴うこともない。
【0043】次ぎに、これらレンズ構造体1,10,20の製造方法について説明する。この製造方法は、脂肪族熱可塑性ウレタンフィルムをセットした金型内に、ポリカーボネートを射出するフィルムインモールド成形法によりレンズ構造体1,10,20を成形するものである。このフィルムインモールド成形法は、成形工程そのものは特開平10−282889号公報にも開示されている従来公知のものである。
【0044】すなわち、本実施形態では、脂肪族熱可塑性ウレタンフィルムを、雌雄金型間に所定ピッチだけ供給して停止させると共に、所望の温度に加熱した後、雌金型に真空吸着する。その後、型締めすると共に、金型内にポリカーボネートを射出して成形する。これにより、ポリカーボネートからなるレンズ体3の外表面に、脂肪族熱可塑性ウレタンフィルムからなる保護膜4を充分な密着力で積層形成してなるレンズ構造体1(または10,20)を成形することができる。
【0045】このように、本実施形態の製造方法では、成形のみの工程でレンズ構造体1(または10,20)が形成可能なため、生産性が高く、かつ設備費の高騰を伴うこともない。さらには、脂肪族熱可塑性ウレタンフィルムは、軟質で金型形状への追従性が高く、これによりハードコートシートでは不可能であった3次元形状のインモールド成形が可能となり、レンズ体3の形状限定を伴うことなく容易にレンズ構造体1(または10,20)を成形することができるので、設計自由度の拡大をも図ることができる。
【0046】なお、レンズ構造体1の製造方法としては、他にディッピング加工やドープ加工が考えられる。
【0047】また好ましくは、本実施形態の製造方法では、ポリカーボネートは、分子量20000以下のものが用いられる。
【0048】この構成によれば、ポリカーボネートの金型内での高い流動性が得られ、これによりレンズ体3の厚みを薄くしたレンズ構造体(例えば、前述したレンズ構造体20)の成形性を向上させることができると共に、ポリカーボネート素材自体の低衝撃強度により、前記レンズ構造体を破損し易い応力緩和体として形成することができる。
【0049】ポリカーボネートは、通常、分子量21000〜25000のものが用いられるが、この分子量範囲のものは、金型内の流動性が低く薄肉成形には不向きであるばかりでなく、衝撃強度が高く割れにくいため応力緩和体の成形には不向きであるが、分子量20000以下のものは、金型内の流動性が高く薄肉成形に向いているばかりでなく、衝撃強度が低く割れ易いため応力緩和体の成形には向いており、かつ素材価格が比較的に低いため、コスト低減化をも図ることができる。
【0050】
【発明の効果】以上説明してきたように、請求項1の発明によれば、ポリカーボネート製レンズ体の表面に、脂肪族熱可塑性ウレタンの保護膜を積層形成したので、レンズ体を、チッピングや、砂等による打撃系の傷付きや破損、および化学薬品による腐食等から有効に保護することができ、かつレンズ構造体を破損による応力緩和構造に成形することが可能となると共に、レンズ構造体を再成形する等のリサイクルも可能な車両灯具用レンズ構造体を提供することができる。
【0051】また、請求項2の発明によれば、レンズ構造体の表面に外部から応力が加わると、キャラクターラインの形成部分に応力が集中し、該形成部分のノッチ効果によりレンズ体を容易に破損させることができるので、請求項1の発明の効果に加えて、応力緩和性能を一層向上させることができる。
【0052】また、請求項3の発明によれば、脂肪族熱可塑性ウレタンフィルムをセットした金型内に、ポリカーボネートを射出するフィルムインモールド成形法によりレンズ構造体を成形するようにしたので、有機溶剤による環境の悪化、設備費の高騰、およびレンズ体の形状限定を伴うことなく容易にレンズ構造体を成形することができる車両灯具用レンズ構造体の製造方法を提供することができる。
【0053】また、請求項4の発明によれば、原料素材として分子量20000以下のポリカーボネートを用いたので、請求項3の発明の効果に加えて、ポリカーボネートの金型内での高い流動性が得られ、これによりレンズ体の厚みを薄くしたレンズ構造体の成形性を向上させることができると共に、ポリカーボネート素材自体の低衝撃強度により、前記レンズ構造体を破損し易い応力緩和体として容易に形成することができる。
【出願人】 【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
【出願日】 平成12年3月24日(2000.3.24)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和 (外8名)
【公開番号】 特開2001−266618(P2001−266618A)
【公開日】 平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願番号】 特願2000−85263(P2000−85263)