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【発明の名称】 光学装置
【発明者】 【氏名】富永 健二

【氏名】近藤 吉輝

【要約】 【課題】極めて高い水銀蒸気圧で点灯されるショートアーク型高圧放電ランプが破裂しても、放電ランプを取り囲む凹面反射鏡や凹面反射鏡の前面開口を覆う光透過性ガラス板の破片が落下して飛散することのない光学装置を提供する。

【解決手段】放電容器11内に0.16g/mm以上の水銀が封入された高圧水銀放電ランプ10を取り囲むガラス製の凹面反射鏡20の外表面に高分子材料、例えばフッ素系樹脂からなる飛散防止膜40を施す。また、高圧水銀放電ランプの軸線に直交する方向に対して±40゜以内の範囲の光が直射する領域の凹面反射鏡の外表面に飛散防止膜を施す。光透過性ガラス板30の周辺部に飛散防止膜に施す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 石英ガラスからなる放電容器内に0.16mg/mm以上の水銀を封入され、放電容器の両端に封止部が形成されたショートアーク型高圧水銀放電ランプと、この高圧水銀放電ランプの一方の封止部をその頂部の支持筒に取り付けて該高圧水銀放電ランプを取り囲むガラス製の凹面反射鏡よりなる光学装置において、前記凹面反射鏡の外表面に高分子材料からなる飛散防止膜が施されたことを特徴とする光学装置。
【請求項2】 前記高圧水銀放電ランプのアーク輝点から放射される光の内、該高圧水銀放電ランプの軸線に直交する方向に対して±40゜以内の範囲の光が直射する領域の凹面反射鏡の外表面に該飛散防止膜が施されたことを特徴とする請求項1記載の光学装置。
【請求項3】 前記高分子材料はフッ素系樹脂であることを特徴とする請求項1又は2記載の光学装置。
【請求項4】 前記凹面反射鏡は、その前面開口が光透過性ガラス板で覆われたことを特徴とする請求項1,2,3のいずれかに記載の光学装置。
【請求項5】 前記光透過性ガラス板の周辺部に該飛散防止膜が施されたことを特徴とする請求項4記載の光学装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば液晶プロジェクタ装置に使用される光源装置に関し、更には、放電容器内に0.16mg/mm以上の水銀が封入されたショートアーク型高圧放電ランプを使用する光源装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液晶プロジェクタ装置には、通常、硼珪酸ガラスからなる凹面反射鏡の中にショートアーク型放電ランプを取り付けた光源装置が使用される。また、液晶プロジェクタ装置内には、光源装置以外にも種々の部品、特にプラスチック製の部品が数多く組み込まれているが、小型化の要請から、これらの部品が密集して組み込まれている。
【0003】ところで、液晶プロジェクタ装置は、スクリーン上に、均一で、かつ十分な演色性をもった画像を投映することが要求されるので、光源ランプとしては、従来は水銀と金属ハロゲン化物を封入した演色性のよいメタルハライドランプが使用されていた。しかし最近では、より一層の小型化、点光源化が進められ、電極間距離が極めて短いものが要求されるようになった。しかし、水銀より励起エネルギーの低い金属を封入したメタルハライドランプでは、ある程度以下の電極間距離になると、放電の集中に限界が起り、より小さな点光源化への対応が難しくなってきた。
【0004】このため、メタルハライドランプに代えて、点灯時に水銀蒸気圧が極めて高い値、例えば20MPa以上になるショートアーク型高圧放電ランプが注目されている。点灯時の水銀蒸気圧をこのような高い値にするために、放電容器内に0.16mg/mm以上の水銀が封入されるが、かかるショートアーク型高圧放電ランプは、アークの広がりが抑制されるとともに、より一層の光出力の向上、および演色性の改善を図ることができる。かかるショートアーク型高圧放電ランプを開示したものとして、例えば特開平2−148561号公報や特開平6−52830号公報がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このように極めて高い水銀蒸気圧で点灯される放電ランプは、点灯中に放電容器が破損し、著しい場合は破裂することがある。そして、ランプが破裂するとその衝撃によってガラス製の凹面反射鏡をも破壊させ、凹面反射鏡の破片が落下して飛散することがある。また、破裂したランプの破片が飛散するのを防止するために、凹面反射鏡の前面開口を光透過性ガラス板で覆うことがあるが、この光透過性ガラス板もランプの破裂による衝撃によって破壊することがある。そして、凹面反射鏡や凹面反射鏡の前面開口を覆う光透過性ガラス板が破壊して破片が飛散すると、当然のことながら、密集して組み込まれた他の部品に悪影響を及ぼす。
【0006】そこで本発明は、極めて高い水銀蒸気圧で点灯されるショートアーク型高圧放電ランプが破裂しても、放電ランプを取り囲む凹面反射鏡や凹面反射鏡の前面開口を覆う光透過性ガラス板の破片が落下して飛散することのない光学装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するため、請求項1の発明は、石英ガラスからなる放電容器内に0.16mg/mm以上の水銀を封入し、放電容器の両端に封止部が形成されたショートアーク型高圧水銀放電ランプと、この高圧水銀放電ランプの一方の封止部をその頂部の支持筒に取り付けて高圧水銀放電ランプを取り囲むガラス製の凹面反射鏡よりなる光学装置において、凹面反射鏡の外表面に高分子材料からなる飛散防止膜を施す。そして、この高分子材料からなる飛散防止膜によって、万一放電ランプが破裂しても凹面反射鏡に亀裂が発生する程度の被害に抑えることができ、凹面反射鏡の破片の落下を防止することができる。
【0008】高分子材料からなる飛散防止膜は高価なものであり、飛散防止膜を施す面積を小さくするのが好ましいが、鋭意検討した結果、放電ランプが破裂した場合の凹面反射鏡の亀裂開始位置は限られた領域であることを見出した。そこで請求項2の発明は、高圧水銀放電ランプのアーク輝点から放射される光の内、高圧水銀放電ランプの軸線に直交する方向に対して±40゜以内の範囲の光が直射する領域の凹面反射鏡の外表面に飛散防止膜を施し、少ない飛散防止膜で効率よく凹面反射鏡の破片の落下を防止する。また、飛散防止膜を構成する高分子材料は、請求項3の発明のように、フッ素系樹脂であることが好ましい。
【0009】次に、請求項4の発明のように、破裂したランプの破片が凹面反射鏡の前面開口から飛散するのを防止するために、凹面反射鏡の前面開口を光透過性ガラス板で覆う場合は、請求項5の発明のように、光透過性ガラス板の周辺部に飛散防止膜を施すと、光束をあまり減衰させることなく、光透過性ガラス板の破片の落下を防止できて好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に、図面に基づいて本発明の実施の形態を具体的に説明する。図1において、ショートアーク型高圧水銀放電ランプ10の放電容器11は、石英ガラスからなる略球状体であり、放電容器11の内部には、一対の電極、つまり陽極13と陰極14が対向配置されている。また、放電容器11の内部には水銀と希ガスが封入されている。そして、放電容器11の両端には封止部12が一体に連設されている。封止部12は、放電容器11の両端から伸びる石英ガラスのパイプ体を溶融状態にして内部を減圧することにより形成されたものであり、つまりシュリンクシール法により形成されたものであり、封止部12の内部には電極13,14と外部リード15とを電気的に接続するモリブデン箔(図示せず)が埋設されている。なお、直流点灯型の陽極13と陰極14の極性は図1に示す状態と逆でもよく、更には、交流点灯型であってもよい。また、封止部12は石英ガラスのパイプ体を溶融状態にして圧潰するピンチシール法により形成してもよい。
【0011】ショートアーク型高圧水銀放電ランプ10の具体的な数値例をあげると、水銀の封入量は0.20mg/mmであり、希ガスとしてアルゴンガスが10KPaの圧力で封入されている。また、電極間距離は1.5mm、放電容器11の内容積は260mmであり、定格電圧が82V、定格消費電力が200Wである。数値例がこれらに限られるものでないことは当然であるが、ショートアーク型高圧水銀放電ランプ10を液晶プロジェクタ装置用の光源ランプとして使用するには、水銀は0.16mg/mm以上封入する必要がある。
【0012】凹面反射鏡20は、ガラス、例えば硼珪酸ガラスからなり、その前面開口の内径は120mm程度である。凹面反射鏡20の反射面21は回転曲面であり、その表面には反射特性の優れたチタニア−シリカなどの蒸着膜が形成されている。凹面反射鏡20の頂部には支持筒22が形成されており、放電ランプ10の一方の封止部12が支持筒22に挿入されている。そして、放電ランプ10は、その軸線が凹面反射鏡20の光軸と一致し、かつ点灯時に電極13,14間に形成されるアーク輝点が凹面反射鏡20の第1焦点に位置した状態で、支持筒22に充填された接着剤23により凹面反射鏡20に固定されている。凹面反射鏡20の前面開口は、高圧水銀放電ランプ10が万一破裂したときに、その破片が前方開口から飛散しないように、例えば硼珪酸ガラスからなる光透過性ガラス板30で覆われているが、この光透過性ガラス板30は必ずしも必要ではない。
【0013】凹面反射鏡20の外表面には、高分子材料からなる飛散防止膜40が施されている。飛散防止膜40の膜厚は、例えば0.05mmであるが、飛散防止膜40は高分子材料からなるので靱性に富む。従って、放電ランプ10が万一破裂したときの衝撃で凹面反射鏡20が破壊しても、亀裂が入る程度であり、破片は飛散防止膜40で食い止められて飛散することを防止できる。
【0014】飛散防止膜40を構成する高分子材料としては、フッ素系樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂などが使用でき、更にはガラス繊維にこれらの高分子材料を含浸させたものなどを使用することができる。これらの高分子材料の内、フッ素系樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン(登録商標名:PFA樹脂)は、揮発分が少なく、点灯時に凹面反射鏡20の外表面が200℃を超える温度になっても飛散防止膜40から揮発する不純物が少なくて好ましい。また、耐熱性と耐光性がよくて経時的な劣化が少なく、更には、熱可塑性樹脂であるので、飛散防止膜40が高温になる点灯時において、可撓性が大きくなって強靱になり、破片の飛散防止には特に有効である。
【0015】図1に示す実施例においては、飛散防止膜40を凹面反射鏡20の外表面の全面に施したが、高分子材料からなる飛散防止膜40は高価であるので、凹面反射鏡20が破損する可能性の高い領域の外表面にのみ施すのが好ましい。そこで本発明者らは鋭意検討した結果、放電容器11内に0.16mg/mm以上の水銀が封入された高圧水銀放電ランプ10の場合は、電極13,14の間で形成されるアーク輝点から放射される光の内、高圧水銀放電ランプ10の軸線に直交する方向に対して±40゜以内の範囲の光が直射する領域の凹面反射鏡20の外表面に飛散防止膜40を施せばよいことを見出した。
【0016】図2は、高圧水銀放電ランプ10に過負荷に電力を供給して故意に破裂させたときに、凹面反射鏡20の破損状況を示したものである。(A)は凹面反射鏡20の横断面図であり、(B)は凹面反射鏡20を前方開口側から光透過性ガラス板30を外して見た図である。図2において、符号50を付した黒丸は、高圧水銀放電ランプ10が破裂したときの凹面反射鏡20の亀裂開始点を示す。これから分かるように、亀裂開始点50は、凹面反射鏡20の光軸に直交する面で切截した円R1と円R2の間に発生し、円R1と円R2の外側の領域には発生しなかった。
【0017】そして、亀裂開始点50から亀裂51が放射状に走り、また、亀裂51が閉ループ状になって点線の円で示す破片52が形成されるが、亀裂51や破片52は円R1と円R2の外側にも延び出すこともある。しかし、亀裂51や破片52が、アーク輝点から放射される光の内、高圧水銀放電ランプ10の軸線に直交する方向に対して±40゜以内の範囲の光が直射する領域の外側に生じる可能性は極めて小さい。従って、この領域の凹面反射鏡20の外表面にのみ飛散防止膜40を施せば、破片52の飛散を十分に防止することができ、かつコスト的にも有利である。
【0018】万一高圧水銀放電ランプ10が破裂したとき、その破片が凹面反射鏡20の全面開口から飛散するのを防止するために、凹面反射鏡20の前面開口を光透過性ガラス板30で覆う場合、この光透過性ガラス板30も放電ランプ10の破裂による衝撃によって破壊することがある。そして、光透過性ガラス板30の破片が落下して飛散する。そこで光透過性ガラス板30にも高分子材料からなる飛散防止膜40を施すのが有効である。しかし、光透過性ガラス板30の全面に飛散防止膜40を施すと、高圧水銀放電ランプ10から放射される光の透過性が阻害され、光束が減衰する。
【0019】そこで、図3の網目斜線で示すように、光透過性ガラス板30の周辺部に飛散防止膜40を施すのがよい。放電ランプ10の破裂によって発生する光透過性ガラス板30の亀裂開始位置が、光透過性ガラス板30の中央部であっても、この亀裂は光透過性ガラス板30の周縁に伝播して周辺部の破片が落下するが、光透過性ガラス板10の周辺部に飛散防止膜40に施すと、亀裂の伝播は光透過性ガラス板40の周辺部で阻止され、光透過性ガラス板30の破片は落下して飛散することはない。そして、光透過性ガラス板30の中央部には飛散防止膜40を施さないので、光透過性ガラス板30の光の透過が飛散防止膜40によって阻害されることが少なく、光束の減衰を阻止できる。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の光学装置は、石英ガラスからなる放電容器内に0.16mg/mm以上の水銀が封入された高圧水銀放電ランプを取り囲むガラス製の凹面反射鏡の外表面に高分子材料、例えばフッ素系樹脂からなる飛散防止膜を施したので、万一放電ランプが破裂しても、凹面反射鏡に亀裂が生じる程度であり、凹面反射鏡の破片が落下して飛散することを防止できる。そして、高圧水銀放電ランプのアーク輝点から放射される光の内、高圧水銀放電ランプの軸線に直交する方向に対して±40゜以内の範囲の光が直射する領域の凹面反射鏡の外表面に飛散防止膜を施すと、コスト的に有利であり、かつ凹面反射鏡の破片の飛散を十分に防止することができる。また、破裂したランプの破片が凹面反射鏡の前面開口から飛散するのを防止するために、凹面反射鏡の前面開口を光透過性ガラス板で覆う場合は、光透過性ガラス板の周辺部に飛散防止膜に施すと、光束をあまり減衰させることなく、光透過性ガラス板の破片の落下を防止できる。
【出願人】 【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
【出願日】 平成11年12月16日(1999.12.16)
【代理人】 【識別番号】100084113
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 寅之助
【公開番号】 特開2001−176302(P2001−176302A)
【公開日】 平成13年6月29日(2001.6.29)
【出願番号】 特願平11−356760