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【発明の名称】 車両用灯具のレンズおよび該レンズを用いた車両用灯具とその製造方法
【発明者】 【氏名】飯塚 俊一

【氏名】永野 浩一

【氏名】杉本 勝則

【氏名】宮崎 尚二郎

【要約】 【課題】本発明は、意匠リブ等のパターンをレンズ面に有する車両用灯具であってもグレア光の発生を低減した車両用灯具のレンズおよび車両用灯具を提供することを目的とする。

【解決手段】開放した外面を有すると共に内側にバルブを装着するハウジングと、該バルブを覆うように上記ハウジング開放面に設けたレンズと、を含む車両用灯具に取り付ける樹脂成形品のレンズであって、上記レンズのバルブ側表面に、レーザ光を用いて凹溝のマークを形成する。また、凹溝の深さは0.5mm未満とする。このようにして得たレンズを用いた車両用灯具においては、金型に溝を形成してレンズ表面に意匠リブ等のマークを形成する必要がなくなり、成形を終えたレンズに別途レーザ光を照射して凹溝からなる意匠リブ等を形成しているので、金型形成に起因するグレア光を低減した車両用灯具を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 開放した外面を有すると共に内側にバルブを装着するハウジングと、該バルブを覆うように上記ハウジング開放面に設けたレンズと、を含む車両用灯具に取り付けるレンズであって、上記レンズのバルブ側表面には、レーザ光を用いて凹溝のマークが形成されていることを特徴とする、車両用灯具のレンズ。
【請求項2】 前記レンズが樹脂成形品であることを特徴とする、請求項1に記載の車両用灯具のレンズ。
【請求項3】 前記凹溝が、0.5mm未満の深さであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車両用灯具のレンズ。
【請求項4】 前記請求項1から請求項3の何れかに記載の車両用灯具のレンズを用いた車両用灯具。
【請求項5】 樹脂性のレンズを成形する工程と、開放した外面を有すると共に内側にバルブの取付を行うハウジングに該レンズを取り付ける工程と、を含む車両用灯具の製造方法において、前記レンズ取付工程は、レンズを成形する工程と、レンズ成形工程の後に、該レンズのバルブ側表面にレーザ光を照射して凹溝を形成するマーキング工程と、マーキング工程を行ったレンズをハウジングに取り付ける取付工程とを有し、前記マーキング工程におけるレーザ光照射方向を、前記取付工程を終えた車両用灯具の照射方向と、マーキング工程で形成した凹溝の車両取付状態における上側の側面とが、ほぼ平行となるように調整して照射したことを特徴とする、車両用灯具の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば走行ビーム、すれ違いビーム等の機能を有する車両用前照灯やフォグランプ等の車両用灯具に関するもので、特に車両用灯具のレンズに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、このような車両用灯具は、例えば図1および図2に示すように構成されている。
【0003】図1及び図2において、車両用灯具1は、例えば走行・すれ違いビーム及び方向指示器の三つの機能を有するように構成されており、自動車の車体(図示せず)に対して取り付けられるハウジング2と、ハウジング2の開放した前面を覆うレンズ3と、ハウジング2内の走行・すれ違いビーム部2a及び方向指示器部2bの各領域にて、それぞれハウジング2の後端にソケット4a,4bを介して装着されるバルブ5a,5bと、バルブ5aの周囲に配設されたリフレクタ6と、走行・すれ違いビーム部2aと方向指示器部2bの領域を仕切るエクステンション7a,7b,7cと、から構成されている。
【0004】走行・すれ違いビーム用のバルブ5aは、内部に主線と副線の2本の図示しないフィラメントを有し、そのフィラメントの点灯状態を切り換えることで走行ビームとすれ違いビームとを切り換えるものとしている。また、走行・すれ違いビーム用のソケット4aは、図示の場合、ハウジング2内に配設されている。上記リフレクタ6は、走行・すれ違い用バルブ5aからの光を反射して自動車の前方に導くように構成されている。上記エクステンション7a,7b,7cは、走行・すれ違いビーム部2a及び方向指示器部2bの各領域を仕切ることにより、各領域間の相互の光の洩れを防止するように構成されている。
【0005】上記レンズ3は、ポリカーボネート等の樹脂を成形することにより形成され、これをホットメルト接着剤を介してハウジング2に対して取り付けており、ハウジング2の内部空間が密閉されている。レンズ3の走行・すれ違いビーム部2aのバルブ5aの取付位置に対向する位置には、バルブ5aの中心取付位置を示す目印であるセンターマーク31が形成されており、また配光特性に大きな悪影響を与えない位置、例えばレンズ下隅には品番等を表示する文字マーク32も形成されている。
【0006】このような構成の車両用灯具1によれば、バルブ5aまたは5bが所定の点灯状態で点灯することにより、各国の法規に対応した走行ビーム,すれ違いビームまたは方向指示器の夫々の機能に応じた所定配光を満足するように照射する。走行・すれ違いビーム配光等の所定の配光特性を満足させるためには、例えばリフレクタ6を複数の反射面からなるマルチリフレクタとして形成してレンズ3にレンズカットを形成しないものとしたり、リフレクタ6を回転放物面として形成し、且つレンズ3にプリズムカットを設ける等の手段がある。
【0007】ここで、レンズ3にプリズムカットを設けずに、リフレクタ6をマルチリフレクタとして形成して反射面の設計により所定の配光特性を満足するように車両用灯具1を構成した場合には、図1に示すようにデザイン上の要請から配光特性に悪影響を与えない大きさで、レンズ3を横断するアクセントラインと称する小さな意匠リブ33を設けることが多い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、意匠リブ33を設けた車両用灯具1においては上記意匠リブ33の存在により配光特性が乱れ、時には上向き光であるグレア光を生じる問題があった。意匠リブ33により生じるグレア光は僅かではあるものの対向者にとっては不快な光線であり、グレア光を低減することが望ましい。
【0009】そこで、グレア光が発生する原因について検討を実施した。意匠リブ33は図6に示すように所定のレンズ形状に対応した空洞(キャビティ)を設けた金型42に対し、ボールエンドミル41にて彫り込みを行うことで意匠リブに対応する凹溝43を形成している。凹溝43がボールエンドミル41の先端よりも大きな溝の場合には、複数回の彫り込み加工を実施する。ボールエンドミル41の先端は一般に矩形ではなく曲面形状を有している。複数回の彫り込みを実施した場合には、凹溝43内には取り残し部44が形成されることが多い。彫り込みを終えた金型42は、表面仕上げ処理を行って表面の平滑性を向上させる。表面仕上げ処理としてはみがきが一般的に多用される。みがき作業の際に、前記した取り残し部44部分を平滑にしようとしてして境界部45を過度に磨き過ぎることが多い。境界部45を過度に磨くと境界部45の箇所が凹溝43側にへこんだ状態となる。
【0010】このようにして作製した金型42を用いて射出成形したレンズ3の意匠リブ33の部分を拡大して示す断面が図7および図8である。図8は意匠リブ33の部分のレンズ断面を光学顕微鏡にて観察した状態を示すものある。図7に示したように、凹溝43に対応する意匠リブ33の上辺33aは取り残し部44に対応するようなへこみもなく略平坦に仕上がっている。
【0011】しかし、ボールエンドミル41の先端部形状に依存する傾斜部33bから連続する裾野の部分においては、みがきダレ33cが存在する。これは、金型42の凹溝43との境界部45の箇所が表面仕上げ処理によりへこんでしまったことが原因と考えられる。このようにして形成されたみがきダレ33c部はレンズ3の厚みが設計値より厚くなり、傾斜部33bと共に厚みの相違に基づく屈折作用が生じるものとなる。従って、レンズ3を成形する金型42に形成した意匠リブ33を形成する凹溝43の形状が金型42の表面仕上げ処理等により崩れることにより、グレア光が発生する。
【0012】また、グレア光は他の箇所からも発生する。図9は、図1の車両用灯具1の走行・すれ違いビーム部2aの部分をレンズ3正面から見た状態において、問題点を強調して示した説明図である。
【0013】走行・すれ違いビーム部2aの部分のレンズ3の略中央部には、バルブ5aの固定位置を示す円形のセンターマーク31が、隅部には品番、認可番号等の文字マーク32が、前記した意匠リブ33と同様の手段により形成されている。レンズ3を射出成形で形成する場合には、例えば、レンズ下端に射出成形するためのゲートGを設け、このゲートを介して溶解した樹脂を金型に設けた空洞内に高圧で射出することで所定形状のレンズを成形している。その際、高圧で射出した溶解樹脂は金型に設けた空洞内を流れてセンターマーク31や、文字マーク32の箇所にも到達してレンズ3を成形する。このとき、溶解樹脂の流れ方向に沿って溶解樹脂がセンターマーク31や文字マーク32からはみ出た状態のまま硬化して、コールドフロー35と称する樹脂流れダレが生じることもある。
【0014】図10は、センターマーク31の部分を拡大して示す断面図で、円形の突起であるセンターマーク31の上方の傾斜部分がコールドフロー35である。文字マーク32においても溶解樹脂の流れ方向、すなわち文字マーク32の上方にコールドフロー35が存在し、断面の図示はしないが、センターマーク31上方のコールドフロー35と同様に傾斜部分を有す。なお、センターマーク31の境界部においても、前記した意匠リブ33の場合と同様に傾斜部およびみがきダレが存在するが、ここでは図面を判りやすくするために省略して示している。コールドフロー35も、意匠リブ33におけるみがきダレ33cと同様にグレア光を生じる。また外観品質上の問題もある。
【0015】さらに、前記した文字マーク32は、車両用灯具1の仕向け先の国において、認可番号や製造者名の表示など異なる内容の表示が義務付けられている場合があり、仕向け先国別に異なった情報を表示する必要がある。そのため、文字マーク32を成形する金型の箇所を公知の入れ子構造の金型としてレンズ3を成形することが一般的に実施される。具体的には、図11に示すように、レンズ外側表面に相当する金型46aと、レンズ内側表面に相当する金型46b、46cによりレンズ3に相当する空洞47を構成し、該空洞47内に溶解樹脂を注入することによりレンズ3を成形する。その際、仕向け先の国別に異なる内容の文字マークが彫り込んである金型46cを入れ子の金型とし、該入れ子金型を固定金型46bにセットして成形するなどの手順により実施する。入れ子金型46cと固定金型46bとの境界線PL部において、厚みムラを生じ、この箇所でグレア光を生じることもある。これは、夫々の金型を別個に表面みがき処理等を施す際に、その取扱の関係から、金型の端部である縁部をみがき過ぎて曲率を有するようにしてしまい、境界線PLに沿って空洞47内の厚みムラが生じ、結果としてグレア光を発生したものと思われる。
【0016】本発明は、以上の点から、グレア光の発生を低減し得る車両用灯具のレンズを提供することを第1の目的としている。また、他の目的として金型構造を簡略化することを目的とする。更に他の目的として任意な形状の溝を金型に彫刻することなくレンズ面に容易にマークを形成することを目的とする。更にその他の目的としてグレア光の発生を低減した車両用灯具を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的は、本発明の第一の態様によれば、開放した外面を有すると共に内側にバルブを装着するハウジングと、該バルブを覆うように上記ハウジング開放面に設けたレンズと、を含む車両用灯具に取り付けるレンズであって、上記レンズのバルブ側表面には、レーザ光を用いて凹溝のマークが形成されていることを特徴とする、車両用灯具のレンズにより達成される。
【0018】この第一の態様では、レーザ光によりレンズのバルブ側表面に凹溝のマークが形成されているので、金型に溝を設けて該溝を設ける必要がない。従って、金型を用いることに起因するグレア光は発生せず、グレア光を低減可能な車両用灯具のレンズが提供されることになる。
【0019】本発明の他の態様による車両用灯具のレンズでは、前記レンズが樹脂成形品であることを特徴とする。これにより効果的に凹溝を形成することができる。また、前記凹溝が、0.5mm未満の深さであることを特徴とする。これにより凹溝の深さが深いことに起因するグレア光の発生を予防することができる。
【0020】また、上記レンズを用いることで、前記した目的を達成した車両用灯具を得ることができる。これにより車両用灯具から発生するグレア光を低減することができる。
【0021】さらに、上記した目的は、樹脂性のレンズを成形する工程と、開放した外面を有すると共に内側にバルブの取付を行うハウジングに該レンズを取り付ける工程と、を含む車両用灯具の製造方法において、前記レンズ取付工程は、レンズを成形する工程と、レンズ成形工程の後に、該レンズのバルブ側表面にレーザ光線を照射して凹溝を形成するマーキング工程と、マーキング工程を行ったレンズをハウジングに取り付ける取付工程とを有し、前記マーキング工程におけるレーザ光照射方向を、前記取付工程を終えた車両用灯具の照射方向と、マーキング工程で形成する形成した凹溝の車両取付状態における上側の側面とが、ほぼ平行となるように調整して照射したことを特徴とする、車両用灯具の製造方法により製造することにより、凹溝から生じる上向きのグレア光をより一層低減することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、この発明の好適な実施形態を図1乃至図5を参照しながら、詳細に説明する。なお、本発明の車両用灯具1は、レンズ3の換りにレンズ10を用いている点を除いて、従来例にて説明した車両用灯具と重複するので、同じ図1および図2を用い、同一の機能を有する箇所については同一の符号を付して本発明の実施形態について説明を行う。
【0023】簡単に説明すると、レンズ10は、例えばポリカーボネイト等の透明樹脂から構成されており、その周縁が、ホットメルト等の接着剤を介してハウジング2に対して取り付けられており、ハウジング2の内部空間が密閉されている。
【0024】上記バルブ5a,5bは、ハウジング2に対して気密的に取り付けられており、外部から適宜の公知の手段(図示せず)により給電されることにより点灯させるように構成されている。
【0025】上記リフレクタ6は、例えばポリエステル系の熱硬化性樹脂にアルミ蒸着等が施されており、バルブ5aからの光を反射して自動車の前方に導くように構成されている。また、リフレクタの反射面は複数の異なる反射領域からなる複合反射面からなる、いわゆるマルチリフレクタとして構成されており、各反射領域毎に所定の反射特性を具備し、反射面全体として所望の配光特性を満足するように形成されており、レンズ10にプリズムカットを積極的に設けてはいない。
【0026】次に本実施形態で用いるレンズ10について図3ないし図5を参照しながら、その製造方法に沿って詳細に説明する。
【0027】図3はレンズ10の成形工程を示すもので、符号21が金型である。金型21は上側の金型21aと下側の金型21bとからなり、それぞれの金型21a,21bにはレンズ10に応じた形状の彫り込みが施されて空洞(キャビティ)22を形成している。両金型21a,21bの型締めを行ってレンズ10を成形する空洞22を固定する。空洞22にはゲート23が設けられており、ゲート23はランナー24を介して射出成形機25と繋がっている。
【0028】ポリカーボネート等の溶解樹脂を射出成形機25からランナー24、ゲート23を通して空洞22内に射出してレンズ10を形成する。形成を終えたレンズ10は金型21を開いた後に取出す。
【0029】次に成形を終えたレンズ10にレーザ光を照射してマーキングを行う。図4は、マーキング工程を示すもので、符号26がレーザ光、符号27がレーザ照射装置である。レーザ照射装置27は、レーザ光発生装置27a、制御装置27b、出力鏡27c、スキャンミラー27dおよびfθレンズ27eとからなる。例えばレーザ光発生装置27a内のCOガスに高電圧を加えることで発生した光を共振器で強めた後に出力鏡27cを通して取出し、fθレンズ27eによって照射する対象物であるレンズ10表面でレーザスポットが小さくなるように集光してレーザ光26を照射する。レーザ光26をスキャンミラー27dによる走査とレーザ光のON/OFFを制御することにより、レンズ10の表面に所定の文字等を印字することができる。また、レーザ光26を照射する際には、レーザスポットが最小になるようにしてレーザ光26をレンズ10に対して相対的にx、yおよびz方向に制御しながら移動可能にすることが好ましい。このようなレーザ照射装置27としては、例えばキーエンス社のレーザマーカML−9100を用いることができる。
【0030】レーザ光を照射することにより樹脂レンズ10の表面に凹溝14が形成される。レーザ光の照射パワー、照射時間、照射角度ψ等を調整することで凹溝14の深さ等を適宜調整することができる。
【0031】図5はこのようにしてマーキングを実施したレンズ10の凹溝14部を説明するもので、(a)は意匠リブ13の断面斜視図を、(b)はセンターマーク11部の断面図をそれぞれ示している。
【0032】まず、意匠リブ13について説明する。図5(a)に示したように、意匠リブ13をレンズ10の内側表面に所定条件下でマーキングを行うことで深さ約0.2mmの凹溝14を形成している。レーザ光にて凹溝14のマーキングを施した意匠リブ13は、金型に溝を設けることにより形成したものではないので、金型に形成した溝を磨く工程が存在せず、当然にみがきダレも発生しない。よって、みがきダレに起因するグレア光は一切発生しない。
【0033】なお、意匠リブ13はデザイン上の要請から車両用灯具1の走行・すれ違いビーム部2aのみならず車体側面に回り込んでいる方向指示器部2bの部分にも統一して形成する。よって、湾曲したレンズ10表面に凹溝14を設けることが必要なため、レンズ10をレーザ光照射装置27に対し相対的に移動しながらレーザ光26を照射して形成している。 レーザ光26は、前記したレーザマーカML−9100にて、波長10.6μmの12WのCOレーザを用いて、レーザパルスの点灯デューティー比、レーザビーム移動速度等を調整して、凹溝14の深さが略0.2mmとなるようにして照射した。
【0034】また、レンズ10は通常、鉛直方向に対し傾いた状態で車体に取り付けられており、いわゆるスラント角を持っている。一方、ポリカーボネート樹脂製のレンズ10に上記した条件で照射した場合には、断面が矩形ではなく湾曲した凹溝14となった。そこで、レーザ光26を照射する際に、照射角度ψをほぼ90度とし、凹溝14の断面においてスラントしたレンズ10における図面上側の傾斜面13aが、照射方向に対してほぼ平行となるようにした。これにより、意匠リブ13の凹溝14の側面において、上向きのグレア光が発生することを予防している。なお、図面下側の意匠リブ側面13bにおいては、下向きの光が発生するが、この光は路面を照射するものであって、グレア光として機能しない。
【0035】凹溝14の深さは厚くても0.5mm未満、好ましくは0.3mm未満とすることが好ましい。0.5mmよりも深い溝を形成すると、その側面におけるグレア光の影響が大きくなり実用的ではないからである。
【0036】また、意匠リブ13の側面による屈折光は、従来の凸形状の意匠リブの側面においても同様に発生している問題である。しかし、従来のボールエンドミルを用いた彫り込みでは樹脂成形の際のアンダーカット等も考慮して形成する必要があり、金型に形成する際の角度を任意に調整することは容易ではない。例えば高価な5軸加工機を用いて大型のレンズ金型に加工を施さなければ厳密に制御することが難しく、現実的ではなかった。しかし、本発明においては、成形の終えたレンズ表面にレーザマーキングを施すものなので、かかる問題はなく照射角度ψを変更することで容易に調整することができる。
【0037】次にセンターマーク11について説明する。図5(b)は、レンズ10の内側表面にマーキング工程を実施したセンターマーク11の断面を示したものである。レーザ光にて凹溝14を形成したセンターマーク11も金型に溝を設けるものではないので、従来のようにレンズ成形工程に起因するコールドフローが発生することがない。また、前記した意匠リブ13と同様にみがきダレも発生しない。よって、これらに起因するグレア光は一切発生しない。
【0038】なお、センターマーク11の凹溝14を形成する際には、前述した意匠リブ13の照射条件に比べ、凹溝14の深さが浅くなるようにしてレーザ光を照射した。さらに、凹溝14の形状が矩形に近い形状となるようにして、深さが約0.1mmとなるようにしてマーキング工程を実施してセンターマーク11を形成した。これは、センターマーク11がレンズ中心に存在すること、意匠的に目立たないものが好ましいこと等の理由から浅い凹溝14として目立ちにくくしたものである。このようなセンターマーク11とするためには、マーキング工程におけるレーザの同一箇所のレンズに対して照射している時間を実質的に短縮したレーザ照射条件とすることで実現できる。これにより車両用灯具1を点灯した際に、バルブ5aから発した光がセンターマーク11の凹溝14側面でグレア光となることを予防している。また、文字マーク12についても同様に実施して形成した。
【0039】本発明実施形態による車両用灯具1は、以上のようにして製造されたレンズ10を備えた構成とされており、バルブ5aまたは5bが所定の点灯状態で点灯することにより、走行ビーム,すれ違いビームまたは方向指示器の機能に応じた配光特性で照射するようになっている。ここで、例えばバルブ5aが点灯してすれ違いビーム用のフィラメントが点灯した場合には、バルブ5aからの光はマルチリフレクタとしたリフレクタ6bにて所定の方向に反射した後、レンズ10を通して所定の配光特性となって車両前方を照射する。
【0040】前述したように本実施形態においては、レンズ10を形成する際の金型に意匠リブ13、センターマーク11および文字マーク12に対応する溝が形成されていない。従って、樹脂レンズを形成する際に生じるコールドフロー、みがきダレ及び入れ子金型による厚みムラが実質的に防止され得ることになる。更に、レンズ10の表面に形成する凹溝11の形成条件、具体的には照射方向、照射時間等のレーザ光照射条件を適宜調整することで、意匠リブ13、センターマーク11、文字マーク12に応じた条件にて作製でき、グレア光の発生をより低減することができる。
【0041】なお、本実施形態においてはレンズ10の材料としてポリカーボネートを用いたが、アクリル系のレンズを用いた場合においても、同様の効果を示した。ストップランプとして機能するようにレンズカットを設けた赤色のアクリルレンズに、前述した工程と同一のマーキング工程にてセンターマークを設けて車両用灯具を作製した。この場合も図5(b)に示したように良好な凹溝が形成され、グレア光の発生を低減できた。樹脂成形を実施する際に金型に溝を設けてマークを形成していたレンズ成形品について、本願のレーザ光を用いた凹溝のマークを設ける場合には、特にグレア光の低減等の効果が顕著に表れるが、樹脂レンズに限られるものではなくガラス製のレンズであっても使用するレーザ光を適宜調整することで適用可能である。
【0042】上述した実施形態においては、本発明を走行・すれ違いビーム及び方向指示器の三つの機能を有し二つの灯室からなる車両用灯具に適用した場合について主に説明したが、これに限らず、走行ビーム及びすれ違いビームの二つのみの機能を有する車両用灯具や、それぞれの機能別に三つの灯室からなる車両用灯具、他の種類の機能を組み合わせた車両用灯具、さらにフォグランプ,車幅灯、リアコンビネーションランプ等にも本発明を適用し得ることは明らかである。
【0043】また、上述した実施形態においては、レンズ面にプリズムカットを設けない例で主に説明したが、レンズ面にレンズカットを形成したレンズに対してもレーザマーキング処理を行うことで意匠リブ等を形成することができる。さらに灯室内にインナーレンズを設け外側にアウターカバーを設けた灯具において、そのアウターカバー(レンズ)に本発明を適用し得ることも明らかである。
【0044】尚、上記した実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲はこれらの態様に限られるものではなく、例えば金型に溝を設けて形成した凸状の意匠リブと本発明による凹状の意匠リブとを並設するなどの適用例も本発明に含まれる。
【0045】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、レンズを成形する際の金型に溝を形成する必要がないので溝を形成することに起因するグレア光の発生を無くし、意匠リブ等を設けた際のグレア光を低減した、極めて優れた車両用灯具が提供され得る。
【出願人】 【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
【出願日】 平成11年9月3日(1999.9.3)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−76509(P2001−76509A)
【公開日】 平成13年3月23日(2001.3.23)
【出願番号】 特願平11−250727