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【発明の名称】 水素貯蔵装置
【発明者】 【氏名】鈴木 貴紀

【要約】 【課題】単位容積当りの水素吸,放出面積を大にして単位容積当りの水素吸蔵量を増加させる。

【解決手段】水素吸蔵装置1は,水素を吸蔵し,またその水素を放出する複数の水素貯蔵用筒状体3を備えている。それら筒状体3は,それらの線接触外周部8を接合されている。1つの線接触外周部8両側の一方の空間は水素用通路9として,また他方の空間は加熱用流体通路10としてそれぞれ機能する。筒状体3は,水素吸蔵材12を内蔵する収容部Sと,外周側に在って少なくとも1つの水素用通路9に臨む少なくとも1つの水素出入口Eと,その軸線方向に延びる冷却用流体通路19とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水素を吸蔵し,またその水素を放出する複数の水素貯蔵用筒状体(3)を,それらの軸線が平行し,且つ相隣る両筒状体(3)の外周部が線接触するように並べて,各線接触外周部(8)を接合することにより形成された,3つ以上の線接触外周部(8)により囲まれる複数の空間を有し,1つの線接触外周部(8)両側の一方の空間は水素用通路(9)として,また他方の空間は加熱用流体通路(10)としてそれぞれ機能し,各水素貯蔵用筒状体(3)は,水素吸蔵材(12)を内蔵する収容部(S)と,外周側に在って少なくとも1つの前記水素用通路(9)に臨む少なくとも1つの水素出入口(E)と,軸線回りに在ってその軸線方向に延びる冷却用流体通路(19)とを有することを特徴とする水素貯蔵装置。
【請求項2】 各水素用通路(9)および各加熱用流体通路(10)はそれぞれ3つの前記水素貯蔵用筒状体(3)により形成されている,請求項1記載の水素貯蔵装置。
【請求項3】 複数の前記水素貯蔵用筒状体(3)は断熱ハウジング(2)内に密閉され,その断熱ハウジング(2)に,各水素用通路(9),各加熱用流体通路(10)および各冷却用流体通路(19)にそれぞれ連通する水素流通用導管(27),加熱用流体流通用導管(28)および冷却用流体流通用導管(29)を付設した,請求項1または2記載の水素貯蔵装置。
【請求項4】 各水素貯蔵用筒状体(3)は,前記水素吸蔵材(12)を加熱および冷却すべく,前記加熱用流体通路(10)に一方の開口部(24)を,また前記冷却用流体通路(19)に他方の開口部(26)をそれぞれ連通させた複数の流体通路(23)を有する,請求項1,2または3記載の水素貯蔵装置。
【請求項5】 前記水素貯蔵用筒状体(3)は,積層された複数の偏平な環状ユニット(U)を有し,各環状ユニット(U)は,前記水素吸蔵材(12)を内蔵し,且つ少なくとも1つの前記水素出入口(14)を有する環状ケース(15)と,その環状ケース(15)の両外端面にそれぞれ設けられて前記流体通路(23)を有する2つの環状加熱−冷却体(16)とを有する,請求項1,2,3または4記載の水素貯蔵装置。
【請求項6】 前記水素吸蔵材(12)はMg合金である,請求項1,2,3,4または5記載の水素貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,水素を吸蔵し,またその水素を放出する水素貯蔵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来,この種の水素貯蔵装置としては,例えば,複数の二重円筒型タンクを用いたものが知られている。このタンクは,内筒内に水素吸蔵材を収容すると共にその軸線回りに水素用通路を設け,内,外筒間を加熱用流体および冷却用流体の通路としたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来装置は,各タンクにおける水素用通路が細いことに起因して単位容積当りの水素吸,放出面積が小さいため,単位容積当りの水素吸蔵量が少ない,という問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は,単位容積当りの水素吸,放出面積を大にして単位容積当りの水素吸蔵量を増加し得るようにした前記水素貯蔵装置を提供することを目的とする。
【0005】前記目的を達成するため本発明によれば,水素を吸蔵し,またその水素を放出する複数の水素貯蔵用筒状体を,それらの軸線が平行し,且つ相隣る両筒状体の外周部が線接触するように並べて,各線接触外周部を接合することにより形成された,3つ以上の線接触外周部により囲まれる複数の空間を有し,1つの線接触外周部両側の一方の空間は水素用通路として,また他方の空間は加熱用流体通路としてそれぞれ機能し,各水素貯蔵用筒状体は,水素吸蔵材を内蔵する収容部と,外周側に在って少なくとも1つの前記水素用通路に臨む少なくとも1つの水素出入口と,軸線回りに在ってその軸線方向に延びる冷却用流体通路とを有する水素貯蔵装置が提供される。
【0006】前記のように構成すると,水素出入口は水素貯蔵用筒状体の外周側に在るので,その軸線回りに水素用通路を設けた場合に比べて,単位容積当りの水素吸,放出面積を大にすることが可能であり,これにより単位容積当りの水素吸蔵量を増加させることができる。
【0007】また各水素貯蔵用筒状体の軸線回りに冷却用流体通路が在り,一方,水素吸蔵時においては,外周側から軸線側に向って水素の吸蔵が進行する関係から,その水素吸蔵に伴う発生熱が水素未吸蔵の水素吸蔵材を通じて冷却用流体へスムーズに伝播され,これにより水素吸蔵材における蓄熱を回避して水素吸蔵効率を向上させると共に水素吸蔵量を増加させることができる。
【0008】さらに水素吸蔵用筒状体の増減により,装置全体の水素吸蔵量の増減を簡単に行うことができ,また1つの水素用通路および1つの加熱用流体通路を3つ以上の筒状体により共有するので,装置の簡素化を図る上で有効である。
【0009】
【発明の実施の形態】図1〜6において,水素貯蔵装置1は,断熱ハウジング2と,その断熱ハウジング2内に密閉され,且つ水素を吸蔵し,またその水素を放出する複数の水素貯蔵用筒状体3よりなる集合体とを備えている。断熱ハウジング2は密閉型器体4と,その全外面を覆う断熱層5とよりなる。器体4はステンレス鋼より構成されたもので,器体本体6と蓋体7(図7参照)とよりなる。この場合,筒状体3の集合体は,断熱ハウジング2内に,その内面から離間して設置されており,これにより両者2,3間に断熱空間sが形成されている。この断熱空間sおよび断熱ハウジング2は,筒状体3の集合体および外部間の熱伝導を大いに抑制して,筒状体3の水素吸蔵時における冷却効率および水素放出時における加熱効率を高めることができる。それら水素貯蔵用筒状体3は,横断面円形であって,それらの軸線が平行し,且つ相隣る両筒状体3の外周部が線接触するように並べられて,各線接触外周部8をろう接等の手段で接合されている。これにより筒状体3の集合体は,3つ以上,実施例では3つの線接触外周部8により囲まれる複数の空間を有し,1つの線接触外周部8両側の一方の空間は水素用通路9として,また他方の空間は加熱用流体通路10(図面には,便宜上複数の線を付した。)としてそれぞれ機能する。したがって,各水素用通路9および各加熱用流体通路10はそれぞれ3つ以上,実施例では3つの水素貯蔵用筒状体3により形成されている,つまり,複数の筒状体3は最密充填構造を持つように並べられて,それら筒状体3よりなる集合体の小型化が図られている。
【0010】各水素貯蔵用筒状体3は,複数の偏平な環状ユニットUを積層し,その積層物の両外端面にそれぞれ環状断熱板11を接合したものである。各環状ユニットUは,水素吸蔵材12を内蔵し,且つ外周壁13に在って水素用通路9に臨む少なくとも1つの開口部14を有する環状ケース15と,その環状ケース15の両外端面にそれぞれ設けられた薄い環状加熱−冷却体16とを有する。それら環状加熱−冷却体16は環状ケース15の外端面と同等の広い伝熱面積を持つ。複数の環状ユニットUの中心孔17には管体18が挿通され,その管体18の内部は冷却用流体通路19として機能する。
【0011】各環状ユニットUにおける環状ケース15はステンレス鋼より構成され,外周壁13およびそれと一体の両端壁20を有するケース本体21と,そのケース本体21の内周面に嵌着された水素吸蔵材用保持筒22とよりなる。図5に明示するように,各環状ケース15の外周壁13には,それが臨む水素用通路9の数に応じて開口部14が形成される。即ち,実施例においては,1つの水素用通路9に臨む外周壁13には1つの開口部14が,また2つの水素用通路9に臨む外周壁13には2つの開口部14が,さらに3つの水素用通路9に臨む外周壁13には3つの開口部14がそれぞれ形成されている。保持筒22は,水素が出入りし得る多数の微細孔,例えば数nm〜0.1μmの孔を有する。管体18も,同様にステンレス鋼より構成される。
【0012】水素吸蔵材12としては,Mg合金等の水素貯蔵合金,炭素材等が用いられ,Mg合金には,例えばMg97Ni2 Fe1 (数値の単位は原子%)が該当する。
【0013】これにより各水素貯蔵用筒状体3は,水素吸蔵材12を内蔵する複数の環状ケース15よりなる収容部Sと,外周側に在って少なくとも1つの水素用通路9に臨む,複数の開口部14よりなる少なくとも1つの水素出入口Eと,軸線回りに在ってその軸線方向に延びる冷却用流体通路19とを有する。
【0014】環状加熱−冷却体16は,流体通路23として機能する連続気孔を有するNi多孔質体よりなり,図1,6に明示するように,それの,加熱用流体通路10に臨む部位以外の外周部にはろう材等によるマスクmが設けられる。即ち,加熱−冷却体16の外周部は加熱用流体通路10に臨む開口部24のみを残して,他は閉鎖される。実施例においては,開口部24が1つのものはそれを除いて,また開口部24が2つのものはそれらを除いて,さらに開口部24が3つのものはそれらを除いて,それぞれマスクmを有する。冷却用流体通路19を形成する管体18において,加熱−冷却体16との対向部には複数の連通孔25が形成され,その連通孔25を介して加熱−冷却体16内周部の開口部26が冷却用流体通路19に連通する。実施例では,1つの筒状体3において,相隣る両環状ユニットUは1つの加熱−冷却体16を共用しており,また両端の加熱−冷却体16の外端面はそれぞれ環状断熱板11によりシールされる。
【0015】これにより,各水素貯蔵用筒状体3は,水素吸蔵材12の加熱および冷却を効率良く行うべく,加熱用流体通路10に一方の開口部24を,また冷却用流体通路19に他方の開口部26をそれぞれ連通させた,加熱用流体および冷却用流体の流通が可能な複数の流体通路23を有する。
【0016】図7に示すように,断熱ハウジング2には各水素用通路9,各加熱用流体通路10および各冷却用流体通路19にそれぞれ連通する水素流通用導管27,加熱用流体流通用導管28および冷却用流体流通用導管29が付設され,図には省略したが,これらの導管27〜29にはそれらの所定位置に所定の弁が設けられている。実施例では,図1,左右方向に並ぶ2列の水素用通路9に対応する2本の水素流通用導管27が蓋体7外面(実際は断熱層5外面,これは以下同じ)に配設される。各導管27は吸蔵される水素の導入および放出された水素の導出に兼用される。加熱用流体流通用導管28は2本の導入管部30および2本の導出管部31を有する。2本の導入管部30は,それぞれ図1,左右方向に並ぶ2列の加熱用流体通路10に対応して蓋体7外面に配設される。一方,2本の導出管部31は,それぞれ図1,左右方向に並ぶ2列の加熱用流体通路10に対応して器体本体6の底壁外面(実際は断熱層5外面,これは以下同じ)に配設される。冷却用流体流通用導管29は3本の導入管部32および3本の導出管部33を有する。3本の導入管部32は,それぞれ図1,左右方向に並ぶ3列の冷却用流体通路19に対応して蓋体7外面に配設される。一方,3本の導出管部33は,それぞれ図1,左右方向に並ぶ3列の冷却用流体通路19に対応して器体本体6の底壁外面に配設される。
【0017】相隣る2本の冷却用流体流通用導入管部32と,それらの間に存する1本の加熱用流体流通用導入管部30とは,加熱用流体通路10,冷却用流体通路19およびそれら両流体通路10,19間に在る加熱−冷却体16の流体通路23(便宜上,線で示す)により形成される中継路を介して相互に連通する。
【0018】加熱用流体としては,例えば加熱された水,水蒸気が用いられ,また冷却用流体としては例えば水が用いられる。
【0019】次に,水素貯蔵装置1による水素の吸蔵および水素の放出について説明する。
【0020】A.水素の吸蔵図8に示すように,冷却用流体流通用導管29の各導入管部32に冷却用流体を供給し,また各水素流通用導管27に水素を供給する。冷却用流体は,導入管部32→冷却用流体通路19→導出管部33の経路および冷却用流体通路19→加熱−冷却体16の流体通路23→加熱用流体通路10→加熱用流体流通用導管28の導出管部31の経路で流通する。水素用通路9から加熱−冷却体16内への水素の流入はマスクmにより阻止される。
【0021】この場合,1つの水素用通路9に対応する1つの水素出入り口Eは水素貯蔵用筒状体3の外周側に在るので,その軸線回りに水素用通路を設けた場合に比べて,単位容積当りの水素吸,放出面積を大にすることが可能であり,これにより単位容積当りの水素吸蔵量を増加させることができる。
【0022】また各水素貯蔵用筒状体3の軸線回りには冷却用流体が流通する冷却用流体通路19が在ると共に各環状ユニットUの上,下部には,冷却用流体が流通する,広い伝熱面積を持つ加熱−冷却体16が在るので水素吸蔵材12が効率良く冷却され,一方,水素吸蔵時においては,外周側から軸線側に向って水素の吸蔵が進行する関係から,その水素吸蔵に伴う発生熱が水素未吸蔵の水素吸蔵材12を通じて通路19の冷却用流体へスムーズに伝播され,これにより水素吸蔵材12における蓄熱が回避される。
【0023】このような装置1によれば,水素吸蔵速度を向上させると共に水素吸蔵量を増加させることができる。また水素吸蔵材12から冷却用流体への発生熱の伝播効率がよいので,冷却用流体通路19の小径化を図り,水素吸蔵材12の増量が可能である。
【0024】B.水素の放出図9に示すように,加熱用流体流通用導管28の各導出管部31の入口側を閉じて,各導入管部30に加熱用流体を供給する。加熱用流体は,導入管部30→加熱用流体通路10→加熱−冷却体16の流体通路23→冷却用流体通路19→冷却用流体流通用導管29の導入管部32の経路で流通する。加熱用流体通路10から,水素吸蔵材12を内蔵した環状ケース15内への加熱用流体の流入は外周壁13によって阻止される。
【0025】この場合,各環状ユニットUの上,下部には加熱用流体が流通する,広い伝熱面積を持つ加熱−冷却体16が在り,また外周には加熱用流体通路10が在るので,水素吸蔵材12が効率良く加熱され,これにより水素の放出が迅速に行われる。 また水素の吸蔵時において,加熱用流体通路10および加熱用流体流通用導管28の導出管部31を冷却用流体の排出路として用い,一方,水素の放出時においては,冷却用流体通路19および冷却用流体流通用導管29の導入管部32を加熱用流体の排出路として用いると,構造の簡素化を図ることができる。
【0026】
【発明の効果】本発明によれば前記のように構成することによって,単位容積当りの水素吸蔵量を増加し,また水素吸蔵効率を向上させ,さらに装置全体の水素吸蔵量の増減が簡単で,その上,構造の簡素化を図られた水素貯蔵装置を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成12年2月28日(2000.2.28)
【代理人】 【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健 (外1名)
【公開番号】 特開2001−241600(P2001−241600A)
【公開日】 平成13年9月7日(2001.9.7)
【出願番号】 特願2000−56059(P2000−56059)