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【発明の名称】 低温タンク
【発明者】 【氏名】金城 鉄男

【氏名】仲地 唯渉

【氏名】烏野 信美

【要約】 【課題】地震等による内槽の破損時に低温液化ガスが外槽外部にまで漏れ出すことを防止し、安価に、施工管理も容易に、かつ保守も容易に実現する低温タンクを提供する。

【解決手段】内槽2とこの内槽2を包囲する外槽3とからなる二重殻構造の低温タンク21において、外槽側板4及び外槽底板5を内槽2と同様の低温用材料により構成し、外槽3及び内槽2のそれぞれを基礎6に対し低温収縮時の相対変位を許容し得るように連結し、外槽底板5の外周を全周にわたり包囲する着脱可能な構造の腐食防止ジャケット26を設け、この腐食防止ジャケット26内に不活性ガスを充填する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内槽とこの内槽を包囲する外槽とからなる二重殻構造の低温タンクにおいて、外槽側板及び外槽底板を内槽と同様の低温用材料により構成し、外槽及び内槽のそれぞれを基礎に対し低温収縮時の相対変位を許容し得るように連結し、外槽底板の外周を全周にわたり包囲する着脱可能な構造の腐食防止ジャケットを設け、この腐食防止ジャケット内に不活性ガスを充填することを特徴とする低温タンク。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内槽と外槽とからなる二重殻構造の低温タンクに関する。
【0002】
【従来の技術】図6はLNG,LPG等の低温液化ガス12を貯蔵する低温タンク1の一例を示すもので、この種の低温タンク1は、内槽2とこの内槽2を包囲する外槽3とからなる二重殻構造となっており、内槽2と外槽3との間には、パーライト等の保冷材が充填されてタンク内外の断熱が図られている。
【0003】外槽3は、その胴部分をなす円筒状の外槽側板4の下面を外槽底板5により閉塞されて基礎6上に設置され、かつ外槽側板4の上面をドーム型の外槽屋根7により閉塞された構造になっている。内槽2は、胴部分をなす円筒状の内槽側板8の下面を内槽底板9により閉塞され、外槽底板5上に底部保冷層10を介して設置され、かつ内槽側板8の上面をドーム型の内槽屋根11により閉塞された構造となっており、直接的に低温液化ガス12に接触することになる内槽側板8、内槽底板9、内槽屋根11については脆化遷移温度が低い低温用材料により構成されている。なお、外槽3は内槽2と断熱構造を隔てて配置されているので、外槽側板4、外槽底板5、外槽屋根7は通常の常温用材料で構成されている。
【0004】図7は図6に示す低温タンクの基礎との取り合いを示す図である。内槽2の基礎6に対する連結は、低温液化ガス12の貯蔵により低温収縮する内槽2の基礎6に対する相対変位を許容し得るよう複数本の可撓性を有するアンカーストラップ13により行われており、このアンカーストラップ13は基礎6に埋設されたアンカーストラップボックス14の底部に下端を固定して縦方向に伸びかつ上端を内槽側板8の下側部分における円周方向複数箇所にそれぞれ固定されている。
【0005】一方、外槽3の基礎6に対する連結は、通常において外槽3の低温収縮を考慮する必要がないため、外槽側板4の下側部分における円周方向複数箇所に突設された孔あきブラケット15に対し、基礎6に設けられたアンカーボルト16を通してナット17で締結固定している。
【0006】なお、図7に詳細に図示されている如く、底部保冷層10は、外槽底板5上に打設したパーライトコンクリート層10aと、このパーライトコンクリート層10a上面の外周部分に環状に配列されたパーライト角形ブロック10bと、このパーライト角形ブロック10bに囲まれた中央部分にレンガ状に敷き詰められた泡ガラス10cと、この泡ガラス10cの上層部に蓋状に嵌め込まれたALC断熱材10dにより構成されており、各アンカーストラップ13が通過する部位を切り欠いた構造としている。
【0007】また、図中19は内槽側板8の外周面に内槽2の低温収縮時の相対変位を許容し得るよう装着された伸縮自在なグラスウールブランケット、20は内槽2と外槽3との間に充填された粒状パーライトを示す。
【0008】このように構成された低温タンク1においては、大型の地震が発生した場合、内部に低温液化ガス12を貯蔵している内槽2には大きな慣性力が作用することになるので、外槽3側が地震力に耐えうる十分な強度を有していたとしても、内槽2側が破損して低温液化ガス12が漏れ出すおそれがある。
【0009】万一、低温液化ガスが漏れ出した場合には、常温用材料からなる外槽側板4や外槽底板5が急激に冷却されて低温脆化により破損したり、あるいは、アンカーボルト16及びナット17により孔あきブラケット15を介して基礎6に固定されている部分に外槽底板5の急激な低温収縮による応力が集中して破損し、外槽3の外部にまで低温液化ガス12が漏れ出す可能性がある。
【0010】このため、一般的には、周辺環境の汚染等の二次災害を未然に防止するため、低温タンク1の周囲を図6で示す防液堤18により距離を隔てて取り囲むか、あるいは図8に示すように、PC(プリストレスコンクリート)製の防液堤18aを低温タンク1の外槽側板4に極力近づけて配置するようにしていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者のように、低温タンク1の周囲を防液堤18により距離を隔てて取り囲むようにした場合には、防液堤18によって占有される敷地面積が広くなり、土地代や防液堤18内の安全対策費が高騰するという問題があった。
【0012】一方後者のように、PC製の防液堤18aを低温タンク1の外槽側板4に極力接近させて配置するようにした場合には、PC製の防液堤18a自体の建設費が高くつく上に、その建設時に土木工事と機械工事とが錯綜するために施工管理が困難であるという問題があった。
【0013】本発明は上述の問題に鑑みてなされたもので、地震等による内槽の破損時に低温液化ガスが外槽外部にまで漏れ出すことを防止し、安価に、施工管理も容易に、かつ保守も容易に実現する低温タンクを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明では、内槽とこの内槽を包囲する外槽とからなる二重殻構造の低温タンクにおいて、外槽側板及び外槽底板を内槽と同様の低温用材料により構成し、外槽及び内槽のそれぞれを基礎に対し低温収縮時の相対変位を許容し得るように連結し、外槽底板の外周を全周にわたり包囲する着脱可能な構造の腐食防止ジャケットを設け、この腐食防止ジャケット内に不活性ガスを充填する。
【0015】従って、本発明では、地震等による内槽の破損時に低温液化ガスが内槽から漏れ出しても、外槽側板及び外槽底板が低温用材料で構成されているので、これら外槽側板及び外槽底板が低温脆化により破損することはなく、低温タンクの外部に漏れ出すことはない。
【0016】しかも、外槽についても内槽と同様に低温収縮時における基礎に対する相対変位を許容し得るよう基礎に連結してあるので、外槽底板の低温収縮による応力集中で外槽に破損が生じることもなくなる。
【0017】また、内部を不活性雰囲気とした腐食防止ジャケットにより外槽底板の外周が包囲されているので、基礎と外槽底板との隙間に雨水が浸透するのが防止され、外槽底板の腐食防止が確実に図られる。この腐食防止ジャケットは取り外し可能なので、内部の点検と保守を確実に行なうことができる。
【0018】そして、これらの有効な作用によって、外槽側板を支障なく防液堤として機能させることが可能となり、内槽から漏れ出した低温液化ガスを外槽内に溜めて低温タンクの外部への漏れ出しを防止することが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1及び図2は本発明の実施形態の一例を示すもので、図6、図7と同一の符号は同一のものを表すものとする。前述した図6、7の低温タンク1と略同様に構成した二重殻構造の低温タンクにおいて、外槽側板4及び外槽底板5を内槽2と同様の脆化遷移温度が低い低温材料により構成し、外槽側板4の内面から内槽2周囲の外槽底板5上面に到る範囲を冷熱抵抗緩和材22により被覆する。
【0020】ここで、冷熱抵抗緩和材22には、地震等による内槽2の破損時に漏れ出した低温液化ガス12が外槽側板4の内周面や内槽2周囲の外槽底板5上面に対し直接的に接触せず徐々に浸透してゆくようにしたポリウレタンフォーム等のような材質のものを採用すればよく、これ以外にも外槽側板4の内周面や内槽2周囲の外槽底板5上面が急激に低温収縮することを回避し得て冷熱衝撃を緩和できるものであれば適宜な材質のものを選定することが可能である。
【0021】また、冷熱抵抗緩和材22の下端部分については、図示の如く、滑らかなカーブを描きながら上向きに折り返すようにモルタル23を下側に打設し、これにより冷熱衝撃が集中し易い角部の形成を回避するようにし、その終端をパーライトコンクリート層10aの側面に沿わせて固定する。
【0022】内槽2の基礎6に対する連結については、従来と同様にアンカーストラップ13を用いるが、従来アンカーボルトにより締結固定されていた外槽3についても、内槽2側と同様に複数本のアッカーストラップ24を用いて基礎6に連結し、低温収縮時における基礎6に対する相対変位を許容し得るようにする。
【0023】即ち、外槽3を基礎6に連結しているアンカーストラップ24は、基礎6に埋設されたアンカーストラップボックス25の底部に下端を固定して縦方向に伸び且つ上端を外槽側板4の下側部分における円周方向複数箇所にそれぞれ固定している。
【0024】外槽側板4の下端の周囲をアンカーストラップ24を含み全周にわたり包囲し得るように腐食防止ジャケット26を設け、この腐食防止ジャケット26内に窒素ガス等の不活性ガスを充填する。
【0025】腐食防止ジャケット26は炭素鋼等の常温用材料からなる屋根板26aと側板26bから構成され、屋根板26aは、一端を外槽側板4に溶接されたリング状受板26cとボルト27により接合され、他端は側板26bの上端とボルト27で接合されている。側板26bの下端は基礎6に埋設された埋設板26dとボルト27により接合されている。屋根板26aはリングを半径方向に切断した複数の部分リングより構成され、隣接する各部分リングはボルト27により接合されている。また側板26bは円弧板よりなり、隣接する各側板26bは端部に設けられたフランジをボルト27により接合するようになっている。なお屋根板26a及び側板26bが接合する全ての接合面にはパッキングが設けられ、気密に接合するようになっている。
【0026】図2は腐食防止ジャケット26の外観を示す。黒丸はボルト27による接合位置を示す。リング状受板26cと埋設板26dにはネジが切られており、ボルト27をネジ込むようになっている。屋根板26aどうし、側板26bどうしの接合、屋根板26aと側板26bとの接合はボルト27とナットにより行なわれる。
【0027】腐食防止ジャケット26には図示しない不活性ガス導入管が接続され、不活性ガスを充填するが、この不活性ガス導入管は、内槽2と外槽3との間の不活性雰囲気の圧力を外気温に応じて調整する従来周知のブリージングタンク(図示せず)に接続さており、腐食防止ジャケット26内の圧力が内槽2と外槽3との間の圧力と常に同圧となるようになっている。
【0028】腐食防止ジャケット26は薄い常温材等をボルトで接合する構造になっているので、外槽側板4や外槽底板5の低温収縮を拘束するようなことはない。収縮時ジャケットが破壊し側板、底板を破損させない。また腐食防止ジャケット26はボルトによる接合構造なので、取付け取り外しが容易にでき、内部の点検や保守が容易に行える。
【0029】次に腐食防止ジャケットの別の実施形態について説明する。図3は腐食防止ジャケット30のアンカーストラップ24のある位置の断面図を示し、図4は腐食防止ジャケット30のアンカーストラップ24のない位置の断面図を示す。図5は腐食防止ジャケット30の平面図を示す。腐食防止ジャケット30は外槽底板5の外周部と基礎6との接触面に雨水等の腐食物質が入るのを防止するもので、外槽底板5の外周の外側の基礎6にリング状の埋設板31を埋設し、外槽底板5の外周端と埋設板31との上部にリング状に覆い板30aを設け、外槽底板5と埋設板31とパッキングを介してボルト32で接合する。
【0030】覆い板30aはリングを半径方向に切断した複数の部分リングより構成され、隣接する各部分リングはパッキングを介してボルト32により接合されている。アンカーストラップ24は覆い板30aを貫通しており、貫通部は溶接またはパッキングでシールされている。外槽底板5の外周部と埋設板31にはネジ孔が設けられ、ボルト32により覆い板30aと接合される。図5において黒丸はボルトによる接合位置を示す。アンカーストラップ24が貫通する覆い板30aは短く、貫通しない覆い板30aを長くしている。覆い板30aは常温材等の薄い板で構成され、アンカーストラップ24が貫通しない覆い板30aは取り外しが容易にできるように構成されている。
【0031】本腐食防止ジャケット30への不活性ガス導入とブリージングタンクによる圧力調整は図1で示した腐食防止ジャケット26の場合と同様に行われる。また、本腐食防止ジャケット30も薄い常温材等をボルトで接合する構造になっているので、低温収縮時自らが破壊し、外槽側板4や外槽底板5、アンカーストラップの低温収縮を拘束するようなことはない。またボルトによる接合構造でかつ単純な構成なので、取付け取り外しが容易にでき、内部の点検や保守が容易に行える。
【0032】以上の各実施形態で説明したように、本発明の低温タンク21は、地震等による内槽2の破損時に低温液化ガスが外槽3に漏れ出しても、外槽側板4及び外槽底板5が低温用材料で構成されているので、これら外槽側板4及び外槽底板5が低温脆化により破損することがなく、また、外槽側板4の内周面と内槽2周囲の外槽底板5上面とが冷熱抵抗緩和材22により被覆されているので、これらが低温液化ガス12との直接的な接触により急激に低温収縮することが回避されて冷熱衝撃が大幅に緩和される。
【0033】さらに、外槽3についても内槽2と同様にアンカーストラップ24を用いて低温収縮時における相対変位を許容し得るよう基礎6に連結してあるので、外槽底板5の低温収縮による応力集中で破損が生じることもなくなる。
【0034】また、内部を不活性雰囲気とした腐食防止ジャケット26,30により外槽底板5の外周部が包囲されているので、基礎6と外槽底板5との間隙に雨水が浸透し腐食環境を形成するのを防止できる。この腐食防止ジャケット26,30はボルト結合等により取り付け、取り外しができる着脱可能な構成になっているので、外槽3の低温収縮に対して、基礎6と外槽3の相対変位を拘束することがなく、さらに、内部の点検や保守作業が容易にできるようになっている。
【0035】このような有効な作用により、外槽側板4を支障なく防液堤として機能させることが可能になり、内槽2から漏れ出した低温液化ガス12を外槽3内に溜めて低温タンク21の外部への漏出を防止することが可能となる。
【0036】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明の低温タンクによれば、低温タンクの構成要素である外槽側板を防液堤として機能させることにより、地震等による内槽の破損時に低温液化ガスが外槽外部に漏出することを防止できるので、低温タンクの周囲に距離を隔てて防液堤を設けた場合のように、防液堤によって占有される敷地面積が広くなることにより土地代や防液堤内の安全対策費が高騰するという問題を回避でき、PC製の防液堤を低温タンクの外槽側板に極力近づけて配置する場合のように、建設時土木工事と機械工事とが錯綜し、建設費も高くなるという不具合を回避できる。また外槽底板の腐食を防止する腐食防止ジャケットを着脱可能な構造にしたので、内部の点検や保守を容易に行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000000099
【氏名又は名称】石川島播磨重工業株式会社
【出願日】 平成11年8月30日(1999.8.30)
【代理人】 【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実 (外1名)
【公開番号】 特開2001−65791(P2001−65791A)
【公開日】 平成13年3月16日(2001.3.16)
【出願番号】 特願平11−244076