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【発明の名称】 大型タンクのガス置換方法及びそれを用いるタンク構造
【発明者】 【氏名】宮川 茂

【氏名】加藤 謙治

【要約】 【課題】被置換ガスとの境界層を破壊することなく置換ガスの大流量での注入を可能とし、短時間で効率良くガス置換を行うことのできる大型タンクのガス置換方法を提供する。

【解決手段】置換ガスの比重が被置換ガスより小さい場合には、タンク10の内部上部に上向きに配設された多数のノズル孔22から置換ガスをタンク内部に上向きに注入すると共に下部補助バルブ13Lから被置換ガスを排出し、置換ガスの比重が被置換ガスより大きい場合には、タンク10の内部下部に下向きに配設された多数のノズル孔22から置換ガスをタンク10内部に下向きに注入すると共に上部補助バルブ13Uから被置換ガスを排出することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 大型タンク内部のガスを他のガスに置換する方法であって、置換ガスの比重が被置換ガスより小さい場合には、タンクの内部上部に上向きに配設された多数のノズル孔から置換ガスを前記タンク内部に上向きに注入すると共に、前記タンクの下部の開口部から前記被置換ガスを排出し、置換ガスの比重が被置換ガスより大きい場合には、タンクの内部下部に下向きに配設された多数のノズル孔から置換ガスを前記タンク内部に下向きに注入すると共に、前記タンクの上部の開口部から前記被置換ガスを排出することを特徴とする大型タンクのガス置換方法。
【請求項2】 タンクの内部の上部に上向きのノズル孔を有する上部ノズル部材が配設されると共に、タンクの内部の下部に下向きのノズル孔を有する下部ノズル部材が配設され、被置換ガスより比重の小さい置換ガスを前記上部ノズル部材からそのノズル孔を介してタンク内に上向きに注入して前記被置換ガスと置換し得ると共に、被置換ガスより比重の大きい置換ガスを前記下部ノズル部材からそのノズル孔を介してタンク内に下向きに注入して前記被置換ガスと置換し得るように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の大型タンクのガス置換方法を用いるタンク構造。
【請求項3】 上記上部ノズル部材及び下部ノズル部材は、円環状の管部材によって形成され、上記タンクの内面に沿って水平に配設されて構成されていることを特徴とする請求項2に記載のタンク構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガスホルダーとして用いられる球形タンクや液化天然ガスの貯蔵タンク等の大型タンクの内部を点検する際に、内部の可燃性ガスを空気に置換する大型タンクのガス置換方法及びそれを用いるタンク構造に関する。
【0002】
【従来の技術】液化天然ガスの貯蔵タンクや、供給経路中でガスホルダーとして用いられる球形タンク等の大型タンクでは、定期的に内部を開放して内側からの検査が行われる。
【0003】このような内側からの検査の際には、内部に充満している可燃性ガス(CH4)を空気に置換する必要があるが、可燃性ガスと空気が混合しては危険であるため、まず可燃性ガスを窒素ガスに置換し、次いで窒素ガスを空気に置換する。また、検査終了後には空気を窒素ガスに置換した後、窒素ガスを可燃性ガスに置換する。
【0004】ここで、可燃性ガス,窒素ガス及び空気にはそれぞれ比重差があるため、これら比重差を利用した置換操作が行われる。
【0005】即ち、各気体の比重は、可燃性ガス(CH4)<窒素(N2)<空気となっており、可燃性ガスを比重の大きな窒素ガスに置換する場合には、図5に球形タンクの例を示すように、タンク10′の上部に設けられた上部予備ノズル13U′を開放して下部に設けられた下部予備ノズル13L′を介して窒素ガスを注入する。これにより、比重の大きな窒素ガス:Nがタンク10′の下部から徐々に溜まって可燃性ガス:CHを押し上げて上部予備ノズル13Uから排出させ、最終的に全量を窒素ガス:N置換するものである。窒素ガスを空気に置換する際も同様である。
【0006】また、空気をより比重の小さな窒素ガスに置換する場合には、下部予備ノズル13Lを開放して上部予備ノズル13Uを介して窒素ガスを注入する。これにより、比重の小さな窒素ガスはタンク10′の上部に溜まって徐々に空気を押し下げて下部予備ノズル13Lから排出させ、最終的に全量を置換する。窒素ガスを可燃性ガスに置換する際も同様である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のごとくタンクの上下に配設された上部予備ノズル及び下部予備ノズルを利用したガス置換構成では、置換ガスを被置換ガスとの境界層を破壊することのない流量で徐々に注入しなければならず、ガス置換に長い時間(例えば、容積10万m3程度のタンクのガス置換に約2週間)を要するという問題があった。
【0008】即ち、開口面積の限られた予備ノズルから置換ガスを注入するものであるため、置換ガスの流入流量を多くすると流速が速くなって置換ガスがタンク内に噴出し、被置換ガスとの境界層を破壊して被置換ガスと混合してしまい、その結果、多量の置換ガスが必要となってコストアップとなると共にガス置換に一層長い時間を要することとなってしまう。このため、前述のごとく境界層を破壊しない流速で徐々に注入するのが最も効率が良いこととなるが、それでも長時間を要するものである。
【0009】本発明は、上記解決課題に鑑みてなされたものであって、被置換ガスとの境界層を破壊することなく置換ガスの大流量での注入を可能とし、短時間で効率良くガス置換を行うことのできる大型タンクのガス置換方法及びそれを用いるタンク構造を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明の大型タンクのガス置換方法は、大型タンク内部のガスを他のガスに置換する方法であって、置換ガスの比重が被置換ガスより小さい場合には、タンクの内部上部に上向きに配設された多数のノズル孔から置換ガスを前記タンク内部に上向きに注入すると共に、前記タンクの下部の開口部から前記被置換ガスを排出し、置換ガスの比重が被置換ガスより大きい場合には、タンクの内部下部に下向きに配設された多数のノズル孔から置換ガスを前記タンク内部に下向きに注入すると共に、前記タンクの上部の開口部から前記被置換ガスを排出することを特徴とする。
【0011】また、そのガス置換方法を用いるタンク構造として、タンクの内部の上部に上向きのノズル孔を有する上部ノズル部材が配設されると共に、タンクの内部の下部に下向きのノズル孔を有する下部ノズル部材が配設され、被置換ガスより比重の小さい置換ガスを前記上部ノズル部材からそのノズル孔を介してタンク内に上向きに注入して前記被置換ガスと置換し得ると共に、被置換ガスより比重の大きい置換ガスを前記下部ノズル部材からそのノズル孔を介してタンク内に下向きに注入して前記被置換ガスと置換し得るように構成されていることを特徴とする。また、上記上部ノズル部材及び下部ノズル部材は、円環状の管部材により形成され、上記タンクの内面に沿って水平に配設されて構成されていることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】図1は本発明に係る大型タンクのガス置換方法を適用してガス置換を行うことのできるタンクの一構成例である球形タンクの概念構成を示す断面図である。
【0014】図示タンク10は、ガスホルダーとして用いられる球形タンクであって、最下部にガス導管11が接続され、頂部にはマンホール12が設けられている。また、頂部近傍にバルブを備えた上部予備ノズル13Uが、最下部近傍にバルブを備えた下部予備ノズル13Lがそれぞれ配設されている。これら上部予備ノズル13U及び下部予備ノズル13Lが本構成例における開口部を構成している。
【0015】タンク10の内部には、その上部及び下部に、それぞれノズルリング20(上部ノズル部材としての上部ノズルリング20U,下部ノズル部材としての下部ノズルリング20L)がステー15によってタンク10の内面に内接するように水平に配設されている。
【0016】ノズルリング20は、上部ノズルリング20Uの平面図を図2に示すように所定内径の管21が所定径の環状に形成され、その断面図である図3に示すように、上下面の一方側(図は上側)に複数のノズル孔22が所定間隔で開口形成されている。
【0017】上部ノズルリング20Uは、タンク10の上半球の内部に、ノズル孔22を上側に向けて、タンク10の内面に内接するように水平に設けられている。
【0018】下部ノズルリング20Lは、上タンク10の下半球の内部に、ノズル孔22を上側に向けて、タンク10の内面に内接するように水平に設けられている。
【0019】各ノズルリング20(20U,20L)には、それぞれタンク10の壁面を貫通して配設された供給管23(23U,23L)が接続されており、これら供給管23(23U,23L)を介してそれぞれ置換ガスが供給されるようになっている。
【0020】而して、上記のごとく構成されたタンク10では、ガス置換の際には、上部ノズルリング20U又は下部ノズルリング20Lに供給管23U,23Lを介して置換ガスを所定圧力で供給し、上部ノズルリング20U又は下部ノズルリング20Lのノズル孔22U,22Lを介してタンク10内に置換ガスを注入する。
【0021】即ち、図4に示すように、タンク10内に充満する被置換ガス:Aを、より比重の大きな置換ガス:Bで置換する場合には、タンク10の上部に設けられた上部予備ノズル13Uを開放して下部ノズルリング20Lに供給管23Uを介して置換ガス:Bを供給する。これにより、置換ガス;Bが下部ノズルリング20Lのノズル孔22Lからタンク10内に注入され、その比重差によってタンク10の下部から順次溜まって被置換ガス:Aを押し上げて上部予備ノズル13Uから排出させ、最終的に全量を置換ガス:Bに置換することができる。
【0022】ここで、置換ガス:Bは、下部ノズルリング20Lの下側に向かう多数のノズル孔22から流出するため、速い流速で噴出することなくタンク10の周面に沿って円滑にタンク10の底部に向かう。これにより、被置換ガス:Aとの境界層を破壊することなく安定を保って置換ガス:Bを注入することができ、効率良いガス置換を行うことができる。また、注入流量を増大させてガス置換に要する時間を短縮化することが可能となるものである。尚、ノズルリング20のノズル孔22は、その開口面積の総計がノズルリング20の管径と略等しくなるように設定することが好ましく、これにより、ノズルリング20内部の圧力を略一定に保って各ノズル孔22から緩やか且つ均等に置換ガスを注入できる。
【0023】被置換ガスを、より比重の小さな置換ガスで置換する場合には、前述の場合とは逆に、タンク10の下部に設けられた下部予備ノズル13Lを開放して上部ノズルリング20Uに供給管23Lを介して所定圧力で置換ガスを供給する。これにより、置換ガスは上部ノズルリング20Uのノズル孔22からタンク10内に注入され、その比重差によってタンク10の上部から順次溜まって被置換ガスを押し下げて下部予備ノズル13Lから排出させ、最終的に全量を置換ガスに置換することができる。この場合でも、境界層の安定を保ってガス置換を円滑で効率良く迅速に行うことができるものである。
【0024】尚、上記構成例では、上部ノズル部材及び下部ノズル部材として環状の上部ノズルリング20U及び下部ノズルリング20Lを設け、その上側又は下側に形成されたノズル孔22から置換ガスを注入するように構成したものであるが、上部ノズル部材及び下部ノズル部材の構成はこれに限るものではなく、板状のノズル部材に多数のノズル孔を形成したものを配設する等、適宜変更可能なものである。また、対象とするタンクも球形タンクに限るものではないことは勿論である。
【0025】
【発明の効果】以上述べたように、本発明による大型タンクのガス置換方法によれば、置換ガスの比重が被置換ガスより小さい場合には、タンクの内部上部に上向きに配設された多数のノズル孔から置換ガスをタンク内部に上向きに注入すると共に、タンクの下部の開口部から被置換ガスを排出し、置換ガスの比重が被置換ガスより大きい場合には、タンクの内部下部に下向きに配設された多数のノズル孔から置換ガスをタンク内部に下向きに注入すると共に、タンクの上部の開口部から被置換ガスを排出することにより、ノズル孔から注入された置換ガスは、被置換ガスとの比重差に基づいて被置換ガスとの境界層を破壊することなく円滑にタンクの上部又は底部に向かうこととなるため、境界層の安定を保って置換ガスを注入することができ、効率良いガス置換を行うことができる。これにより、注入流量を増大させてガス置換に要する時間を短縮化することが可能となるものである。
【0026】また、上記ガス置換方法を用いるタンク構造として、タンクの内部の上部に上向きのノズル孔を有する上部ノズル部材が配設されると共に、タンクの内部の下部に下向きのノズル孔を有する下部ノズル部材が配設され、被置換ガスより比重の小さい置換ガスを上部ノズル部材からそのノズル孔を介してタンク内に上向きに注入して被置換ガスと置換し得ると共に、被置換ガスより比重の大きい置換ガスを下部ノズル部材からそのノズル孔を介してタンク内に下向きに注入して被置換ガスと置換し得るように構成されていることにより、ノズル孔から置換ガスを被置換ガスとの境界層を破壊することなく円滑にタンクの上部又は底部に向かうように注入することができ、境界層の安定を保って効率良いガス置換を行うことができる。これにより、注入流量を増大させて短時間でガス置換を行うことができるものである。
【0027】また、上部ノズル部材及び下部ノズル部材は、円環状の管部材により形成され、タンクの内面に沿って水平に配設されて構成されていることにより、ノズル孔から注入される置換ガスをタンクの周面に沿って円滑にタンクの上部又は底部に導くことができ、境界層の安定を保った置換ガスの円滑な注入が可能となって短時間で効率の良いガス置換を行うことができるものである。
【出願人】 【識別番号】000000099
【氏名又は名称】石川島播磨重工業株式会社
【出願日】 平成11年7月23日(1999.7.23)
【代理人】 【識別番号】100070747
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 徹 (外1名)
【公開番号】 特開2001−32998(P2001−32998A)
【公開日】 平成13年2月6日(2001.2.6)
【出願番号】 特願平11−208408