| 【発明の名称】 |
潤滑油の劣化予測方法およびこれを用いた補充延命方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】横山 文彦
【氏名】羽石 正
|
| 【要約】 |
【課題】潤滑油の補充条件の把握により、補充後の劣化段階を予測することができる潤滑油の劣化予測方法および補充条件を定めてある劣化進行度に抑えることができる潤滑油の補充延命方法を提供すること。
【解決手段】実機の運転条件での潤滑油の動粘度の劣化速度を予め求めた後、潤滑油の動粘度を測定し、この測定時からある時間経過後の動粘度を劣化速度に基づいて算出し、この潤滑油に新油を補充する場合の補充率と補充間隔とを定めて補充後の潤滑油の劣化を予測する。これにより、新油の補充率と補充間隔を設定することで、潤滑油の劣化段階を予測することができるようになる。また、新油の補充率と補充間隔を制御することによって、潤滑油の劣化段階がサチレートするので、その劣化段階を保持したまま長時間使用することができ、延命化を図ることができるようになる。さらに、所定の補充率と補充間隔の条件を満たせば、通常の使用温度より高温での使用環境でも使用することが可能となる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 使用中の潤滑油の性状の劣化を予測するに際し、実機の運転条件での潤滑油の性状の劣化速度を予め求めた後、潤滑油の前記性状を測定し、この測定時からある時間経過後の性状を前記性状の劣化速度に基づいて算出し、この潤滑油に新油を補充する場合の補充率と補充間隔とを定めて補充後の潤滑油の性状劣化を予測するようにしたことを特徴とする潤滑油の劣化予測方法。 【請求項2】 前記潤滑油の性状を動粘度とするようにしたことを特徴とする請求項1記載の潤滑油の劣化予測方法。 【請求項3】 前記請求項1または2記載の潤滑油の性状の劣化の予測結果に基づき、一定の性状に収束するように新油の補充率と補充間隔とを定めて潤滑油を補充延命するようにしたことを特徴とする潤滑油の補充延命方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、潤滑油の劣化予測方法およびこれを用いた補充延命方法に関し、潤滑油に新油を補充する場合の性状の劣化を予測できるようにし、これにより補充間隔と補充率を定めて所定の性状に延命できるようにしたものである。 【0002】 【従来の技術】一般に回転軸を支持する軸受に潤滑油を供給し、潤滑油膜を形成して支持することが行われており、例えば航空用ガスタービンでも圧縮機およびタービンなどの回転部分を支持する主軸受、燃料ポンプや油ポンプなどの補機軸受、さらに補機駆動用歯車や動力伝達用の減速歯車などに潤滑油が供給されている。 【0003】このような潤滑油は使用時間の経過とともに劣化することから、その劣化状態を知り、焼付きなどの重大な損傷に至らないように管理する必要があり、例えば潤滑油が劣化した場合に全量を交換することが行われる。 【0004】一方、潤滑油の全量を交換することが困難な機種では、随時新油を補充することで延命する方法が採られている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】ところが、これまでの潤滑油を補充して延命を図る場合には、特に定められた補充率や補充間隔によって補充を行うものでないため、必要以上に補充しコストがかかったり、補充を忘れるなどの人為的なミスによるトラブルが懸念される。また、潤滑油の補充量の把握もほとんど行われていないため、潤滑油の性状分析を行って正常性を確認しているのが現状である。 【0006】さらに、高温での使用条件下では、潤滑油の劣化進行が早くなるため、高温で安定な高価な合成潤滑油を使用しなければならないという問題がある。 【0007】この発明はかかる従来技術の有する課題を解決するためになされたもので、潤滑油の補充条件の把握により、補充後の劣化段階を予測することができる潤滑油の劣化予測方法を提供しようとするものである。 【0008】また、この発明は補充後の劣化段階を予測できることに基づき、補充条件を定めてある劣化進行度に抑えることができる潤滑油の補充延命方法を提供しようとするものである。 【0009】 【課題を解決するための手段】潤滑油の性状劣化について種々実験検討を行ったところ、潤滑油の劣化速度は潤滑油の状態(劣化程度)によらずどの劣化段階でも一律であることが分かるとともに、この劣化速度は潤滑油の使用温度に大きく依存することも分かった。 【0010】そこで、使用温度での劣化速度を初期段階などで把握することができれば、新油の補充率と補充間隔を定めることで劣化進行度(例えば動粘度の変化率)を予測できることに基づきこの発明を完成したもので、上記従来技術が有する課題を解決するため、この発明の請求項1記載の潤滑油の劣化予測方法は、使用中の潤滑油の性状の劣化を予測するに際し、実機の運転条件での潤滑油の性状の劣化速度を予め求めた後、潤滑油の前記性状を測定し、この測定時からある時間経過後の性状を前記性状の劣化速度に基づいて算出し、この潤滑油に新油を補充する場合の補充率と補充間隔とを定めて補充後の潤滑油の性状劣化を予測するようにしたことを特徴とするものである。 【0011】この潤滑油の劣化予測方法によれば、実機の運転条件での潤滑油の性状の劣化速度を予め求めた後、潤滑油の前記性状を測定し、この測定時からある時間経過後の性状を前記性状の劣化速度に基づいて算出し、この潤滑油に新油を補充する場合の補充率と補充間隔とを定めて補充後の潤滑油の性状劣化を予測するようにしており、潤滑油の劣化速度が求められ、新油の補充率と補充間隔を設定することで性状の劣化段階が予測できるようになる。 【0012】これにより、これまでの性状分析などを行うことなく、潤滑油の効率的な延命化が図れるようになる。 【0013】また、この発明の請求項2記載の潤滑油の劣化予測方法は、請求項1記載の構成に加え、前記潤滑油の性状を動粘度とするようにしたことを特徴とするものである。 【0014】この潤滑油の劣化予測方法によれば、潤滑油の性状を動粘度とするようにしており、動粘度の劣化速度等により動粘度の変化率(劣化進行度)を予測できるようになる。 【0015】一方、所定の補充率および補充間隔で新油の補充を継続すると、ある劣化進行度で収束することが分かり、この発明を完成したもので、上記従来技術が有する課題を解決するため、この発明の請求項3記載の潤滑油の補充延命方法は、前記請求項1または2記載の潤滑油の性状の劣化の予測結果に基づき、一定の性状に収束するように新油の補充率と補充間隔とを定めて潤滑油を補充延命するようにしたことを特徴とするものである。 【0016】この潤滑油の補充延命方法によれば、潤滑油の性状の劣化の予測結果に基づき、一定の性状に収束するように新油の補充率と補充間隔とを定めて潤滑油を補充延命するようにしており、所定の補充率と補充間隔とを定めて新油を補充すると、ある劣化進行度にサチレートすることから、サチレートさせる性状の値を設定して新油の補充率と補充間隔を定めることで、動粘度などの性状を一定に保つことができるようになる。 【0017】これにより、高価な合成潤滑油を使用せずに高温での長時間の潤滑油の使用も可能となる。 【0018】 【発明の実施の形態】以下、この発明の一実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この発明の潤滑油の劣化予測方法およびこれを用いた補充延命方法では、次のようにして潤滑油の劣化を予測したり、潤滑油の補充による延命が行われる。 【0019】1) 実機において、ある期間の潤滑油の性状の劣化進行度を測定する。 【0020】ここでは、潤滑油の性状として動粘度をとらえ、動粘度の増加率を劣化進行度とし、時間との比率を求める。 【0021】潤滑油の性状の劣化について種々の検討を行うため、実験室で潤滑油の酸化加速試験を行った。 【0022】試験には、航空機用ガスタービン油(MIL−L−23699適合油)を用い、FEDERAL−STD−791に準じて加速試験を行い、試験条件を表1に示す通りとした。 【0023】さらに、試験では、新油の補充率と補充間隔とを変化させ、潤滑油の性状に及ぼす影響を検討した。 【0024】 【表1】
【0025】このような加速試験から得られた結果などを示したものが図1、図2、図3である。 【0026】これら劣化試験の結果から明らかなように、新油を補充しない場合(図中のnoaddition の場合)には、動粘度の変化率が直線的に変化しており、試験温度が150℃、200℃、240℃の場合で傾きは異なるものの一律に変化することが分かる。 【0027】また、この動粘度の変化率は、潤滑油の状態(劣化程度)によらず、新油状態からの変化も、相当使用した途中状態からの変化も同一直線状を変化し、一律であることが分かった。 【0028】さらに、動粘度の変化率は、潤滑油の使用温度に大きく依存し、図1、図2、図3から試験温度が150℃、200℃、240℃と高くなる程劣化速度が大きくなる。 【0029】以上のような試験結果から、実機での使用温度における初期段階等の劣化速度を測定することができれば、この劣化速度に基づいてこれからの性状の劣化、例えば動粘度の増加率を予測することができ、これによって性状の劣化が予測できる。 【0030】そこで、次のようにして劣化進行度を測定する。 【0031】動粘度による劣化進行度(動粘度の増加率)を求めるため、図4に示すように、ある時点T1 での動粘度μ1 を測定した後、ある時間が経過した時点T2 での動粘度μ1 を測定する。 【0032】これらの測定値から動粘度の変化率Δμ(%)を次式1で求めることができるとともに、この動粘度の変化率Δμ(%)を用いて劣化進行の勾配αを次式2で求めることができる。 【0033】 【数1】
【0034】 【数2】
【0035】2) 動粘度の劣化の予測動粘度の劣化進行の勾配αが求められたので、図5に示すように、現在などある時点Tn で動粘度μn の潤滑油の時間Tn+1 での動粘度μn+1 は次式3で求めることができる。 【0036】 【数3】
【0037】したがって、ある時点Tn を動粘度の劣化進行度の測定時T1 またはT2 とすれば、これら測定時T1 またはT2 の動粘度μ1 またはμ2 を基準としてある時間経過後の動粘度を予測することができる。 【0038】3) 新油を補充する場合の動粘度の変化一方、通常の実機では、潤滑油の全量を交換することができない場合には、新油を補充することが行われる。 【0039】そこで、動粘度μ0 の新油の補充率をAとし、その補充間隔をTn+1 −Tn として新油の補充を繰り返すとした場合には、実際の動粘度μn+1 ´は次式4で求めることができる。 【0040】ここで、補充率Aは、0<A<1の範囲である。 【0041】 【数4】
【0042】4) 新油を補充する場合の動粘度の変化率新油を補充した後の実際の動粘度μn+1 ´と新油の動粘度μ0 と比較した場合の動粘度の変化率をΔCとすれば、次式5で表わすことができ、図6に示すように、新油を補充する場合と補充しない場合で差異があることが分かる。 【0043】 【数5】
【0044】したがって、実機において、潤滑油を採取・分析して劣化速度を表わすαを求めておけば、新油の補充率Aとその補充間隔Tn+1 −Tn を設定入力することで、動粘度の変化率ΔCを求めることができ、これによって劣化段階を知ったり、予測することができる。 【0045】5) 潤滑油の延命に必要な新油の補充率および補充間隔既に説明した潤滑油の酸化加速試験の結果を示した図1〜図3から明らかなように、潤滑油に、所定の補充率および補充間隔で新油の補充を継続して繰り返すと、潤滑油の性状の劣化進行度がある値でサチレートすることが分かる。 【0046】また、新油の補充率と補充間隔によって、サチレートするまでの時間および劣化段階(動粘度の変化率)が異なることも分かる。 【0047】そこで、新油の性状に対して許容できる性状の変化率、例えば動粘度の許容できる変化率ΔCを設定し、この値ΔC以下となるように新油の補充率Aとその補充間隔Tn+1 −Tn を求め、これにしたがって新油を補充する。 【0048】これにより、新油を必要以上に補充することがなく、常に所定の性状の変化率以下に潤滑油の性状を保持することができ、交換しない潤滑油の延命化を図ることができる。 【0049】また、使用温度が高い場合にも新油の補充率と補充間隔を適性に定めることで、動粘度の変化率を所定の範囲内に保持することができ、例えば図2に示すように、使用温度が200℃の場合やさらに高温の240℃の場合でもこれまでの潤滑油をそのまま使用することができ、合成潤滑油などの高級潤滑油を使用することなく潤滑することができる。 【0050】以上のように、この発明の潤滑油の劣化予測方法およびこれを用いた延命方法によれば、実機での潤滑油の採取・分析により劣化速度を測定することで、新油の補充率と補充間隔を把握することによって、潤滑油の劣化段階を予測することができる。 【0051】また、新油の補充率と補充間隔を制御することによって、潤滑油の劣化段階がサチレートするので、その劣化段階を保持したまま長時間使用することができ、延命化を図ることができる。 【0052】さらに、所定の補充率と補充間隔の条件を満たせば、通常の使用温度より高温での使用環境でも使用することが可能となる。 【0053】なお、上記実施の形態では、航空機用ガスタービン油の場合を例に説明したが、これに限らず他の潤滑油の場合にも適用できるものである。 【0054】また、潤滑油の劣化する性状として動粘度を対象として説明したが、これに限らず、潤滑油の他の性状を用いるようにしても良い。 【0055】 【発明の効果】以上、一実施の形態とともに具体的に説明したように、この発明の潤滑油の劣化予測方法によれば、実機の運転条件での潤滑油の性状の劣化速度を予め求めた後、潤滑油の前記性状を測定し、この測定時からある時間経過後の性状を前記性状の劣化速度に基づいて算出し、この潤滑油に新油を補充する場合の補充率と補充間隔とを定めて補充後の潤滑油の性状劣化を予測するようにしたので、潤滑油の劣化速度が求められ、新油の補充率と補充間隔を設定することで性状の劣化段階を予測することができる。 【0056】これにより、これまでの性状分析などを行うことなく、潤滑油の効率的な延命化を図ることができる。 【0057】また、この発明の請求項2記載の潤滑油の劣化予測方法によれば、潤滑油の性状として動粘度を用いるようにしたので、動粘度の劣化速度等により動粘度の変化率(劣化進行度)を予測することができる。 【0058】さらに、この発明の請求項3記載の潤滑油の補充延命方法によれば、潤滑油の性状の劣化の予測結果に基づき、一定の性状に収束するように新油の補充率と補充間隔とを定めて潤滑油を補充延命するようにしたので、所定の補充率と補充間隔とを定めて新油を補充すると、ある劣化進行度にサチレートすることから、サチレートさせる性状の値を設定して新油の補充率と補充間隔を定めることで、動粘度などの性状を一定に保つことができる。 【0059】これにより、高価な合成潤滑油を使用せずに高温での長時間の潤滑油の使用も可能となる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000000099 【氏名又は名称】石川島播磨重工業株式会社
|
| 【出願日】 |
平成11年12月17日(1999.12.17) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100104329 【弁理士】 【氏名又は名称】原田 卓治 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2001−173888(P2001−173888A) |
| 【公開日】 |
平成13年6月29日(2001.6.29) |
| 【出願番号】 |
特願平11−358373 |
|